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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086647
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】電動車両用サイドシル補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220602BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220602BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B60K1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198777
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB12
3D203CA04
3D203CA25
3D203CA52
3D203CA57
3D203CA74
3D203CB09
3D203DB05
3D235AA01
3D235BB03
3D235CC12
3D235CC14
3D235DD35
3D235FF07
3D235FF09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バッテリー保護性能を効率的に向上させる電動車両用サイドシル補強構造を提供する。
【解決手段】電動車両用サイドシル補強構造は、電動車両の車室Rの下部に配置された駆動用のバッテリーユニット10と、バッテリーユニット10の車幅方向の外側において車両前後方向に延びるサイドシル20と、バッテリーユニット10およびサイドシル20を接続する補強部材40とを備える。補強部材40は、アルミニウム合金製の押出材であり、車両前後方向に垂直な断面において車幅方向に複数の閉断面部が連なった閉断面部群40Aを有している。閉断面部群40Aは、車幅方向の最も内側に配置された第1閉断面部41と、第1閉断面部41に隣接して配置された第2閉断面部42とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の車室下部に配置された駆動用のバッテリーユニットと、
前記バッテリーユニットの車幅方向の外側において車両前後方向に延びるサイドシルと、
前記バッテリーユニットおよび前記サイドシルを接続する補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、アルミニウム合金製の押出材であり、前記車両前後方向に垂直な断面において前記車幅方向に複数の閉断面部が連なった閉断面部群を有し、
前記閉断面部群は、前記車幅方向の最も内側に配置された第1閉断面部と、前記第1閉断面部に隣接して配置された第2閉断面部とを含み、
前記第1閉断面部は、前記車幅方向に延び車両上下方向に互いに離れて対向配置された第1上壁および第1下壁を含み、
前記第2閉断面部は、前記車幅方向に延び前記車両上下方向に互いに離れて対向配置された第2上壁および第2下壁を含み、
前記第1上壁の厚みは前記第2上壁の厚みよりも大きく、前記第1下壁の厚みは前記第2下壁の厚みよりも大きい、電動車両用サイドシル補強構造。
【請求項2】
前記第1上壁の厚みは前記第2上壁の厚みの1.2倍以上であり、前記第1下壁の厚みは前記第2下壁の厚みの1.2倍以上である、請求項1に記載の電動車両用サイドシル補強構造。
【請求項3】
前記第1閉断面部は、前記バッテリーユニットとボルトによって接合されている、請求項1または請求項2に記載の電動車両用サイドシル補強構造。
【請求項4】
前記閉断面部群は、前記車幅方向の最も外側に配置された第3閉断面部と、前記第3閉断面部に隣接して車幅方向内側に配置された第4閉断面部とを含み、
前記第3閉断面部は、前記車幅方向に延び前記車両上下方向に互いに離れて対向配置された第3上壁および第3下壁を含み、
前記第4閉断面部は、前記車幅方向に延び前記車両上下方向に互いに離れて対向配置された第4上壁および第4下壁を含み、
前記第3上壁の厚みは前記第4上壁の厚みよりも大きく、前記第3下壁の厚みは前記第4下壁の厚みよりも大きい、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動車両用サイドシル補強構造。
【請求項5】
前記第1上壁の厚みは前記第3上壁の厚みよりも小さく、前記第1下壁の厚みは前記第3下壁の厚みよりも小さい、請求項4に記載の電動車両用サイドシル補強構造。
【請求項6】
前記第3閉断面部は、前記サイドシルとボルトによって接合されている、請求項4または請求項5に記載の電動車両用サイドシル補強構造。
【請求項7】
前記閉断面部群に含まれる各閉断面部は、前記車幅方向に延び前記車両上下方向に互いに離れて対向配置される上壁および下壁を含み、
前記上壁および前記下壁の厚みは、前記第1閉断面部を除いて前記車幅方向の外側から内側へ順に小さくなっている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電動車両用サイドシル補強構造。
【請求項8】
前記補強部材は、前記バッテリーユニットよりも下方に延出した下側延出部を有し、
前記バッテリーユニットの下方には、前記車幅方向に延びるクロスメンバが設けられ、
前記下側延出部は、前記クロスメンバに接合されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電動車両用サイドシル補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用サイドシル補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、バッテリーの保護の観点から一般の燃料駆動車両よりも高い衝突安全性能が求められる。電動車両では航続距離を確保するために車室の床下全面に広くバッテリーが配置されることが多いため、特に側面衝突(以降、側突ともいう。)の際の高い衝突安全性能が求められる。つまり、車体がスピンするなどして車体側部にポール等の物体が衝突した際に、バッテリーや車室が損傷することなく保護される必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、車室の変形を抑制でき、車体の側突性能を向上できる車体下部構造が開示されている。当該車体下部構造では、高い側突性能を得るために、サイドシルと称される車体下方側部の柱状部材の下側に補強部材を配置し、側突性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-74244号公報
【特許文献2】特開2013-256265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2の構造は、サイドシル下に押出形材製補強材を配置した構造であり、これらを用いることで側面衝突時のエネルギを吸収することを目的とした構造である。これらの構造では、当該補強材を構成する押出形材の断面肉厚は各部で同じに設定されているが、バッテリー保護性能の確保と部品重量軽減を両立するためには、押出形材の利点を活用し、各部の断面肉厚を最適化することが望ましいところ、これらを考慮した構造はあまり見当たらない。
【0006】
本発明は、電動車両用サイドシル補強構造において、バッテリー保護性能を効率的に向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
電動車両の車室下部に配置された駆動用のバッテリーユニットと、
前記バッテリーユニットの車幅方向の外側において車両前後方向に延びるサイドシルと、
前記バッテリーユニットおよび前記サイドシルを接続する補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、アルミニウム合金製の押出材であり、前記車両前後方向に垂直な断面において前記車幅方向に複数の閉断面部が連なった閉断面部群を有し、
前記閉断面部群は、前記車幅方向の最も内側に配置された第1閉断面部と、前記第1閉断面部に隣接して配置された第2閉断面部とを含み、
前記第1閉断面部は、前記車幅方向に延び車両上下方向に互いに離れて対向配置された第1上壁および第1下壁を含み、
前記第2閉断面部は、前記車幅方向に延び前記車両上下方向に互いに離れて対向配置された第2上壁および第2下壁を含み、
前記第1上壁の厚みは前記第2上壁の厚みよりも大きく、前記第1下壁の厚みは前記第2下壁の厚みよりも大きい、電動車両用サイドシル補強構造を提供する。
【0008】
この構成によれば、補強部材としてアルミニウム合金製の押出材を採用しているため、部分的に厚みを変更することができる。これにより、第1上壁および第1下壁の厚みを、第2上壁および第2下壁の厚みよりもそれぞれ大きくすることができる。特に、第1閉断面部は、閉断面部群において車幅方向の最も内側に配置されるため、バッテリーユニットに最も近接した閉断面部である。さらに、第1閉断面部の第1上壁および第1下壁は、車幅方向に延びるため、側突荷重を受ける部分である。従って、当該部分の厚みを大きくすることで、均一な厚みの補強部材を採用した場合に比べて重量増加やコストアップを抑制しつつバッテリー保護性能を効率的に向上させることができる。ここで、電動車両とは、車室の下側に駆動用バッテリーを有する車両を広く指す。また、バッテリーユニットとは、バッテリーおよびバッテリーケースを含むユニットである。
【0009】
前記第1上壁の厚みは前記第2上壁の厚みの1.2倍以上であってもよく、前記第1下壁の厚みは前記第2下壁の厚みの1.2倍以上であってもよい。
【0010】
この構成によれば、具体的に必要な厚みを規定することにより、十分なバッテリー保護性能を確保できる。
【0011】
前記第1閉断面部は、前記バッテリーユニットとボルトによって接合されてもよい。
【0012】
この構成によれば、相対的に大きな厚みを有する第1閉断面部がバッテリーユニットとボルトによって強固に接合されるため、高い結合剛性を確保できる。
【0013】
前記閉断面部群は、前記車幅方向の最も外側に配置された第3閉断面部と、前記第3閉断面部に隣接して車幅方向内側に配置された第4閉断面部とを含み、
前記第3閉断面部は、前記車幅方向に延び前記車両上下方向に互いに離れて対向配置された第3上壁および第3下壁を含み、
前記第4閉断面部は、前記車幅方向に延び前記車両上下方向に互いに離れて対向配置された第4上壁および第4下壁を含み、
前記第3上壁の厚みは前記第4上壁の厚みよりも大きくてもよく、前記第3下壁の厚みは前記第4下壁の厚みよりも大きくてもよい。
【0014】
この構成によれば、側面衝突の際に最初に変形を受ける車幅方向の最も外側部分(第3閉断面部)の強度を向上させることで、側面衝突初期に受ける変形荷重のピーク値を増加させることができる。このように変形初期段階に受ける変形荷重のピーク値を上昇させると、変形の進行に応じた荷重変動を抑制し、エネルギ吸収効率を向上できる。
【0015】
前記第1上壁の厚みは前記第3上壁の厚みよりも小さくてもよく、前記第1下壁の厚みは前記第3下壁の厚みよりも小さくてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1上壁および第1下壁が過度に厚くならないため、重量が過度に増加することを抑制できる。また、アルミニウム合金製の押出材において、厚みに著しく差を設けると、押し出し加工を安定して実行できないおそれがある。従って、上記のように厚みに上限を設けることで、押し出し加工を安定して実行できる。
【0017】
前記第3閉断面部は、前記サイドシルとボルトによって接合されてもよい。
【0018】
この構成によれば、相対的に厚みが大きな第3閉断面部がサイドシルとボルトによって強固に接合されるため、高い結合剛性を確保できる。
【0019】
前記閉断面部群に含まれる各閉断面部は、前記車幅方向に延び前記車両上下方向に互いに離れて対向配置される上壁および下壁を含み、
前記上壁および前記下壁の厚みは、前記第1閉断面部を除いて前記車幅方向の外側から内側へ順に小さくなってもよい。
【0020】
この構成によれば、側面衝突の進行に応じて変形領域が車両前後方向に拡大するのに合わせて、車幅方向外側から内側へ補強部材の変形強度を順に低くしているため、変形の進行に応じた荷重を一層均等にできる。従って、エネルギ吸収効率を一層向上できる。また、第1閉断面部に対しては適用を除外しているため、第1閉断面部よりも車幅方向外側の領域が圧壊した際にも変形し難いように構成できる。よって、より高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0021】
前記補強部材は、前記バッテリーユニットよりも下方に延出した下側延出部を有し、
前記バッテリーユニットの下方には、前記車幅方向に延びるクロスメンバが設けられ、
前記下側延出部は、前記クロスメンバに接合されてもよい。
【0022】
この構成によれば、側突荷重が第1閉断面部に加わった際、下側延出部を通じてクロスメンバに荷重を伝達できる。従って、より高いバッテリー保護性能を確保できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電動車両用サイドシル補強構造において、バッテリー保護性能を効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】電動車両の側面図。
図2】本発明の第1実施形態に係る電動車両用サイドシル補強構造の断面図。
図3図2の補強部材の断面図。
図4】第2実施形態に係る電動車両用サイドシル補強構造の補強部材の断面図。
図5】第3実施形態に係る電動車両用サイドシル補強構造の断面図。
図6】第3実施形態の第1変形例に係る電動車両用サイドシル補強構造の断面図。
図7】第3実施形態の第2変形例に係る電動車両用サイドシル補強構造の断面図。
図8】第4実施形態に係る電動車両用サイドシル補強構造の断面図。
図9図8の補強部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1を参照して、電動車両1は、バッテリー11から供給される電力によって不図示のモータを駆動させて走行する車両である。電動車両1は、車室Rの下側に駆動用バッテリーを有する車両を広く指し、例えば電気自動車またはプラグインハイブリッド車等であり得る。車両の種類については、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、またはその他のモビリティ等であり得る。以下では、電動車両1として、図1に示すように乗用車タイプの電気自動車の場合を例に挙げて、本実施形態の電動車両用サイドシル補強構造について説明する。
【0027】
図1では、電動車両1の前後方向をX方向で示し、上下方向をZ方向で示す。以降の図でも同表記とし、図2以降では車幅方向をY方向で示す。
【0028】
電動車両1は、車体中央部の車室Rの床下の概ね全面にバッテリーユニット10を搭載している。バッテリーユニット10は、駆動用のバッテリー11と、バッテリー11を収容したバッテリーケース12とを含む。
【0029】
図2を参照して、バッテリーケース12は、上ケース13と下ケース14とを有している。上ケース13は、上方向に向かって凹形状の収容部13aと、平面視において収容部13aの周囲に設けられたフランジ部13bとを有する。下ケース14は、下方向に向かって凹形状の収容部14aと、平面視において収容部14aの周囲に設けられたフランジ部14bとを有する。フランジ部13b,14bが貼り合わされることにより、上ケース13と下ケース14が接合されている。バッテリー11は、上ケース13の収容部13aと、下ケース14の収容部14aとによって画定される収容空間S1に収容されている。
【0030】
バッテリーユニット10の車幅方向における外側(図2において左側)には、車室Rの下方において車両前後方向に延びる中空状のサイドシル20が配置されている。サイドシル20は、電動車両1の下部の外側面を構成する強度部材である。
【0031】
本実施形態の電動車両用サイドシル補強構造では、サイドシル20は、車幅方向外側に配置されるアウター部材21と、車幅方向内側に配置されるインナー部材22とを有している。アウター部材21およびインナー部材22はともに板金をハット形に曲げ成形して構成されており、これらが内部空間S2を形成するように貼り合わされている。アウター部材21およびインナー部材22は、例えば鋼鉄製であり得る。代替的には、アウター部材21およびインナー部材22は、例えばアルミニウム合金製であってもよい。
【0032】
バッテリーユニット10の上方には、フロアパネル30が配置されている。フロアパネル30は、車室Rの下面を構成する板材である。フロアパネル30の上方には、車幅方向に延びるクロスメンバ31が配置されている。詳細を図示しないが、クロスメンバ31は、車両前後方向に間隔をあけて複数設けられている。複数のクロスメンバ31によって、車幅方向において車室Rの両外側に設けられた一対のサイドシル20の上部は、互いに接続されている。なお、図2では、一対のサイドシル20のうち一方のみが示されている。
【0033】
サイドシル20の下方には、アルミニウム合金製の押出材からなる補強部材40が配置されている。補強部材40は、バッテリーユニット10と、サイドシル20とを接続している。
【0034】
補強部材40は、サイドシル20に沿って車両前後方向に延びている。補強部材40は、車両前後方向に垂直な断面において、車幅方向に複数の閉断面部が連なった閉断面部群40Aを有している。
【0035】
本実施形態では、閉断面部群40Aは、車幅方向の最も内側(図2において右側)に配置された第1閉断面部41と、第1閉断面部41に隣接して配置された第2閉断面部42とを含んでいる。また、閉断面部群40Aは、車幅方向の最も外側(図2において左側)に配置された第3閉断面部43と、第3閉断面部43に隣接して配置された第4閉断面部44とを含んでいる。また、閉断面部群40Aは、第2閉断面部42と第4閉断面部44との間に配置された第5閉断面部45を含んでいる。即ち、閉断面部群40Aは、車幅方向に連なる5つの閉断面部41~45を含んでいる。5つの閉断面部41~45は、概ね同じ大きさの矩形である。
【0036】
図3を参照して、第1閉断面部41は、車幅方向に延び車両上下方向に互いに離れて対向配置された第1上壁41aおよび第1下壁41bを含んでいる。第1上壁41aは相対的に上側に配置され、第1下壁41bは相対的に下側に配置されている。第1上壁41aおよび第1下壁41bは、同じ厚みを有している。ただし、第1上壁41aおよび第1下壁41bの厚みは、異なっていてもよい。
【0037】
第2閉断面部42は、車幅方向に延び車両上下方向に互いに離れて対向配置された第2上壁42aおよび第2下壁42bを含んでいる。第2上壁42aは相対的に上側に配置され、第2下壁42bは相対的に下側に配置されている。第2上壁42aおよび第2下壁42bは、同じ厚みを有している。ただし、第2上壁42aおよび第2下壁42bの厚みは、異なっていてもよい。
【0038】
第3閉断面部43は、車幅方向に延び車両上下方向に互いに離れて対向配置された第3上壁43aおよび第3下壁43bを含んでいる。第3上壁43aは相対的に上側に配置され、第3下壁43bは相対的に下側に配置されている。第3上壁43aおよび第3下壁43bは、同じ厚みを有している。ただし、第3上壁43aおよび第3下壁43bの厚みは、異なっていてもよい。
【0039】
第4閉断面部44は、車幅方向に延び車両上下方向に互いに離れて対向配置された第4上壁44aおよび第4下壁44bを含んでいる。第4上壁44aは相対的に上側に配置され、第4下壁44bは相対的に下側に配置されている。第4上壁44aおよび第4下壁44bは、同じ厚みを有している。ただし、第4上壁44aおよび第4下壁44bの厚みは、異なっていてもよい。
【0040】
第5閉断面部45は、車幅方向に延び車両上下方向に互いに離れて対向配置された第5上壁45aおよび第5下壁45bを含んでいる。第5上壁45aは相対的に上側に配置され、第5下壁45bは相対的に下側に配置されている。第5上壁45aおよび第5下壁45bは、同じ厚みを有している。ただし、第5上壁45aおよび第5下壁45bの厚みは、異なっていてもよい。
【0041】
第1~第5閉断面部41~45は、車両上下方向に延びる4つの隔壁51~54によって区画されている。詳細には、第3閉断面部43および第4閉断面部44は、隔壁51を共有している。第4閉断面部44および第5閉断面部45は、隔壁52を共有している。第5閉断面部45および第2閉断面部42は、隔壁53を共有している。第2閉断面部42および第1閉断面部41は、隔壁54を共有している。第2閉断面部42および第1閉断面部41は隔壁54を共有している。4つの隔壁51~54は、車幅方向において等間隔に配置されている。
【0042】
補強部材40の車幅方向の最も内側には、内側側壁55が配置されている。内側側壁55は、第1閉断面部41に含まれ、第1上壁41aおよび第1下壁41bの車幅方向内端を接続するように車両上下方向に延びている。また、補強部材40の車幅方向の最も外側には、外側側壁56が配置されている。外側側壁56は、第3閉断面部43に含まれ、第3上壁43aおよび第3下壁43bの車幅方向外端を接続するように車両上下方向に延びている。
【0043】
図2を参照して、第1閉断面部41は、バッテリーユニット10とボルト60によって接合されている。ボルト60は、車両上下方向に延び、第1上壁41aと、第1下壁41bと、上ケース13のフランジ部13bと、下ケース14のフランジ部14bと、フロアパネル30とを貫通し、これらを接合している。ボルト60は、バッテリー交換の効率の観点から、下から上に向けて挿入されて締結されることが好ましい。また、高い接合強度を確保するために、ボルト60の周囲を被覆する円筒状のカラー61を使用し、ボルト60の締結部の変形を抑制することが好ましい。
【0044】
また、第3閉断面部43は、サイドシル20とボルト70によって接合されている。ボルト70は、車両上下方向に延び、第3上壁43aおよび第3下壁43bと、サイドシル20のアウター部材21とを貫通し、内部空間S2内で終端し、これらを接合している。前述と同様に、ボルト70は、下から上に向けて挿入されて締結されることが好ましく、ボルト70の周囲を被覆する円筒状のカラー71を使用することが好ましい。
【0045】
図3を参照して、第1上壁41aの厚みtu1は、第2上壁42aの厚みtu2よりも大きい(tu1>tu2)。また、第1下壁41bの厚みtl1は、第2下壁42bの厚みtl2よりも大きい(tl1>tl2)。
【0046】
好ましくは、第1上壁41aの厚みtu1は、第2上壁42aの厚みtu2の1.2倍以上である(tu1≧1.2×tu2)。好ましくは、第1下壁41bの厚みtl1は、第2下壁42bの厚みtl2の1.2倍以上である(tl1≧1.2×tl2)。このように具体的に必要な厚みを規定することにより、素材バラツキなどを考慮しても最内側の閉断面部の変形を防止でき、十分なバッテリー保護性能を確保できる。
【0047】
第3上壁43aの厚みtu3は、第4上壁44aの厚みtu4よりも大きい(tu3>tu4)。第3下壁43bの厚みtl3は、第4下壁44bの厚みtl4よりも大きい(tl3>tl4)。代替的には、第3上壁43aの厚みtu3は、第4上壁44aの厚みtu4と同じであってもよい。また、第3下壁43bの厚みtl3は、第4下壁44bの厚みtl4であってもよい。
【0048】
好ましくは、第1上壁41aの厚みtu1は第3上壁43aの厚みtu3よりも小さい(tu1<tu3)。また、好ましくは、第1下壁41bの厚みtl1は、第3下壁43bの厚みtl3よりも小さい(tl1<tl3)。このように規定することで、第1上壁41aおよび第1下壁41bが過度に厚くならないため、重量が過度に増加することを抑制できる。また、アルミニウム合金製の押出材において、厚みに著しく差を設けると、押し出し加工を安定して実行できないおそれがある。従って、上記のように厚みに上限を設けることで、押し出し加工を安定して実行できる。
【0049】
第2,第4,第5上壁42a,44a,45aの厚みtu2,tu4,tu5は、いずれも同じである(tu2=tu4=tu5)。また、第2,第4,第5下壁42b,44b,45bの厚みtl2,tl4,tl5は、いずれも同じである(tl2=tl4=tl5)。
【0050】
隔壁51~54の厚みtp1~tp4は、車幅方向外側から内側に向かって徐々に大きくなっている(tp1<tp2<tp3<tp4)。これにより、側突時の補強部材40の変形の進行に応じて変形度合いを均等化でき、エネルギ吸収効率を向上できる。
【0051】
本実施形態の電動車両用サイドシル補強構造によれば、以下の作用効果を奏する。
【0052】
補強部材40としてアルミニウム合金製の押出材を採用しているため、部分的に厚みを変更することができる。これにより、第1上壁41aの厚みtu1を第2上壁42aの厚みtu2よりも大きくすることができ(tu1>tu2)、第1下壁41bの厚みtl1を第2下壁42bの厚みtl2よりも大きくすることができる(tl1>tl2)。特に、第1閉断面部41は、閉断面部群40Aにおいて車幅方向の最も内側に配置されるため、バッテリーユニット10に最も近接した閉断面部である。さらに、第1閉断面部41の第1上壁41aおよび第1下壁41bは、車幅方向に延びるため、側突荷重を受ける部分である。従って、当該部分の厚みを大きくすることで、均一な厚みの補強部材を採用した場合に比べて重量増加やコストアップを抑制しつつバッテリー保護性能を効率的に向上させている。
【0053】
また、相対的に大きな厚みを有する第1閉断面部41がバッテリーユニット10とボルト60によって強固に接合されるため、高い結合剛性を確保できる。
【0054】
また、第3上壁43aの厚みtu3を第4上壁44aの厚みtu4よりも大きくし(tu3>tu4)、第3下壁43bの厚みtl3を第4下壁44bの厚みtl4よりも大きくしている(tl3>tl4)。これにより、側面衝突の際に最初に変形を受ける車幅方向の最も外側部分(第3閉断面部43)の強度を向上させ、側面衝突初期に受ける変形荷重のピーク値を増加させている。このように変形初期段階に受ける変形荷重のピーク値を上昇させると、変形の進行に応じた荷重変動を抑制し、エネルギ吸収効率を向上できる。
【0055】
また、相対的に大きな厚みを有する第1閉断面部41がバッテリーユニット10とボルト60によって強固に接合されているため、高い結合剛性を確保できる。
【0056】
また、相対的に厚みが大きな第3閉断面部43がサイドシル20とボルト70によって強固に接合されているため、高い結合剛性を確保できる。
【0057】
(第2実施形態)
図4に示す第2実施形態の電動車両用サイドシル補強構造の補強部材40は、第1~第5上壁41a~45aの厚みtu1~tu5および第1~第5下壁41b~45bの厚みtl1~tl5以外、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態と同じ部分については説明を省略する場合がある。
【0058】
第1~第5上壁41a~45aの厚みtu1~tu5および第1~第5下壁41b~45bの厚みtl1~tl5は、第1閉断面部41(第1上壁41aおよび第1下壁41b)を除いて、車幅方向外側から内側へ順に小さくなっている。即ち、第2~第5上壁42a~45aの厚みtu2~tu5は、車幅方向外側から内側へ順に小さくなっている(tu3>tu4>tu5>tu2)。また、第2~第5下壁42b~45bの厚みtl2~tl5は、車幅方向外側から内側へ順に小さくなっている(tl3>tl4>tl5>tl2)。
【0059】
また、第1上壁41aの厚みtu1は、第3上壁43aの厚みtu3よりも小さく、第4上壁44aの厚みtu4よりも大きい(tu4<tu1<tu3)。第1下壁41bの厚みtl1は、第3下壁43bの厚みtl3よりも小さく、第4下壁44bの厚みtl4よりも大きい(tl4<tl1<tl3)。
【0060】
本実施形態の電動車両用サイドシル補強構造によれば、側面衝突の進行に応じて変形領域が車両前後方向に拡大するのに合わせて、車幅方向外側から内側へ補強部材40の変形強度を順に低くしているため、変形の進行に応じた荷重を一層均等にできる。従って、エネルギ吸収効率を一層向上できる。また、第1閉断面部41に対しては適用を除外しているため、第1閉断面部41よりも車幅方向外側の領域が圧壊した際にも変形し難いように構成できる。よって、より高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0061】
(第3実施形態)
図5に示す第3実施形態の電動車両用サイドシル補強構造では、補強部材40に関する構成以外、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態と同じ部分については説明を省略する場合がある。なお、図5では、破線円で示す部分が拡大して示されている。
【0062】
本実施形態では、補強部材40は、バッテリーユニット10よりも下方に延出した下側延出部を有している。下側延出部40Bは、第1閉断面部41から下方に延出している。車両前後方向に垂直な断面において、下側延出部40Bは、矩形の第6閉断面部46を含んでいる。
【0063】
下側延出部40Bは、第6閉断面部46を構成するように、車両上下方向に延びる内側側壁57および外側側壁58と、それらを繋ぐ車幅方向に延びる第6上壁46aおよび第6下壁46bとを含んでいる。なお、第6閉断面部46の第6上壁46aおよび第1閉断面部41の第1下壁41bは、同じ部分である。即ち、第1閉断面部41および第6閉断面部46は、第1下壁41b(即ち第6上壁46a)を共有している。第6下壁46bは、内側側壁57を超えて車幅方向内側に延びるフランジ部46cを有している。
【0064】
バッテリーユニット10の下方には、車幅方向に延びる複数のクロスメンバ32が設けられている。クロスメンバ32は、バッテリーユニット10の下面に沿って、バッテリーユニット10の車幅方向に配置されている。
【0065】
下側延出部40Bは、フランジ部46cにおいてクロスメンバ32と接合されている。ボルト60は、車両上下方向に延び、第6下壁46bと、第6上壁46a(第1下壁41b)と、第1上壁41aと、上ケース13のフランジ部13bと、下ケース14のフランジ部14bと、フロアパネル30とを貫通し、これらを接合している。
【0066】
本実施形態の電動車両用サイドシル補強構造によれば、側突荷重が第1閉断面部41に加わった際、下側延出部40Bを通じてクロスメンバ32に荷重を伝達できる。従って、より高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0067】
図6を参照して、第3実施形態の第1変形例を説明する。なお、図6では、破線円で示す部分が拡大して示されている。
【0068】
車両前後方向に垂直な断面において、下側延出部40Bの第6閉断面部46の形状は、矩形に限らず、例えば台形であってもよい。図6の例では、内側側壁57は車両上下方向に沿って配置されているが、外側側壁58は車両上下方向から傾斜して配置されている。
【0069】
また、下側延出部40Bは、クロスメンバ32(図5参照)に接合されていなくてもよい。図6の例に示すように、バッテリーユニット10が車両上下方向に十分大きい場合には、第1閉断面部41および第6閉断面部46がバッテリーユニット10に当接するように配置されてもよい。この場合、クロスメンバ32ではなくバッテリーユニット10を構成する底板に、側面衝突荷重を伝達することで変形の抑制を図ることになる。
【0070】
図7を参照して、第3実施形態の第2変形例を説明する。
【0071】
車両前後方向に垂直な断面において、クロスメンバ32に接合するために、下側延出部40B(図5,6参照)を設けなくてもよい。例えば、第1閉断面部41がクロスメンバ32と接合されてもよい。
【0072】
図7の例では、クロスメンバ32の車幅方向外側の端部32aが押し潰し加工されている。端部32aは、第1閉断面部41とボルト60によって接合されている。ボルト60は、車両上下方向に延び、クロスメンバ32の端部32aと、第1下壁41bと、第1上壁41aと、上ケース13のフランジ部13bと、下ケース14のフランジ部14bと、フロアパネル30とを貫通し、これらを接合している。
【0073】
また、詳細を図示しないが、バッテリーケース12内にクロスメンバが配置される場合は、補強部材40から当該クロスメンバに側突荷重を伝達できるように、補強部材40を当該クロスメンバの車幅方向外側に配置してもよい。
【0074】
(第4実施形態)
図8,9に示す第4実施形態の電動車両用サイドシル補強構造は、補強部材40の形状および配置と、サイドシル20の形状とに関する構成以外、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態と同じ部分については説明を省略する場合がある。
【0075】
本実施形態では、補強部材40は、サイドシル20の車幅方向内側に配置され、サイドシル20のインナー部材22とボルト70によって接合されている。インナー部材22は、補強部材40と相補的な形状を有する段差部22aを有し、段差部22aに補強部材40が配置されている。
【0076】
このように補強部材40の配置は、第1~第3実施形態のようにサイドシル20の下方に限定されず、サイドシル20の車幅方向内側であってもよい。即ち、補強部材40は、サイドシル20とバッテリーユニット10とを任意の態様で接続するように配置されていればよい。
【0077】
また、本実施形態では、補強部材40の閉断面部群40Aは、3つの矩形の閉断面部41~43(44)を含んでいる。第1実施形態と比較すると、第5閉断面部45(図2参照)が省略され、第2閉断面部42(図2参照)および第4閉断面部44(図2参照)が一体化されている。従って、補強部材40の閉断面部群40Aは、車幅方向において最も内側に配置された第1閉断面部41と、車幅方向において最も外側に配置された第3閉断面部43と、第1閉断面部41と第3閉断面部43との間に配置された第2閉断面部42(即ち第4閉断面部44)とを含んでいる。
【0078】
第1~第3閉断面部41~43は、車両上下方向に延びる2つの隔壁51~52によって区画されている。第3閉断面部43および第2閉断面部42は隔壁51を共有している。第2閉断面部42および第1閉断面部41は隔壁52を共有している。
【0079】
第1閉断面部41は、バッテリーユニット10とボルト60によって接合されている。ボルト60は、車両上下方向に延び、第1上壁41aと、第1下壁41bと、上ケース13のフランジ部13bと、下ケース14のフランジ部14bとを貫通し、これらを接合している。
【0080】
第3閉断面部43は、前述のようにサイドシル20のインナー部材22とボルト70によって接合されている。ボルト70は、車両上下方向に延び、第3上壁43aと、第3下壁43bと、インナー部材22の段差部22aとを貫通し、内部空間S2内で終端し、これらを接合している。
【0081】
第1閉断面部41、第2閉断面部42(即ち第4閉断面部44)、および第3閉断面部43を構成する各壁の厚みの相対的な関係については第1実施形態と同じである。
【0082】
このように補強部材40に含まれる閉断面部の数は、特に限定されず、第1実施形態のように5個であってもよいし、第4実施形態のように3個でもあってもよいし、4個または6個以上であってもよい。
【0083】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態や変形例の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0084】
また、補強部材40の各閉断面部の形状は、上記各実施形態のような矩形や台形に限定されず、対向する上壁と下壁を有する任意の多角形(例えば六角形など)であり得る。
【符号の説明】
【0085】
1 電動車両
10 バッテリーユニット
11 バッテリー
12 バッテリーケース
13 上ケース
13a 収容部
13b フランジ部
14 下ケース
14a 収容部
14b フランジ部
20 サイドシル
21 アウター部材
22 インナー部材
22a 段差部
30 フロアパネル
31,32 クロスメンバ
32a 端部
40 補強部材
40A 閉断面部群
40B 下側延出部
41 第1閉断面部
41a 第1上壁
41b 第1下壁
42 第2閉断面部
42a 第2上壁
42b 第2下壁
43 第3閉断面部
43a 第3上壁
43b 第3下壁
44 第4閉断面部
44a 第4上壁
44b 第4下壁
45 第5閉断面部
45a 第5上壁
45b 第5下壁
46 第6閉断面部
46a 第6上壁
46b 第6下壁
46c フランジ部
51~54 隔壁
55,57 内側側壁
56,58 外側側壁
60 ボルト
61 カラー
70 ボルト
71 カラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9