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特開2022-86667金属製貯留槽および金属製貯留槽の検査方法
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  • 特開-金属製貯留槽および金属製貯留槽の検査方法 図1
  • 特開-金属製貯留槽および金属製貯留槽の検査方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086667
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】金属製貯留槽および金属製貯留槽の検査方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/08 20060101AFI20220602BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20220602BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
B65D90/08
C02F11/00 A ZAB
C02F11/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198810
(22)【出願日】2020-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】巣瀬 伸一
【テーマコード(参考)】
3E070
3E170
4D059
【Fターム(参考)】
3E070AA03
3E070AB04
3E070BA10
3E070BB10
3E070DA01
3E070DA07
3E070DA09
3E070KA01
3E070KA20
3E070KB02
3E070KB05
3E070KB10
3E070KC01
3E070SA01
3E070SA02
3E070VA30
3E070WA10
3E170AA03
3E170AB04
3E170BA01
3E170DA01
3E170DA07
3E170DA09
3E170KA01
3E170KA10
3E170KB02
3E170KB04
3E170KB10
3E170KC01
3E170SA01
3E170SA02
3E170VA20
4D059AA00
4D059BA11
4D059BA48
4D059BJ03
4D059BK30
4D059CB15
4D059EB08
(57)【要約】
【課題】腐食性ガスを発生する内容物を貯留する金属製貯留槽の腐食を防止する金属製貯留槽と、金属製貯留槽の検査方法を提供する。
【解決手段】本発明の金属製貯留槽は、円筒状の側板2と、側板2の外周面2osの上部に沿って設けられた略円環状の補強部材30と、側板2を上から覆うように設けられ、外周縁3oeがトップチャンネル30上に第1接合部C1において接合されるとともに中心部よりも前記外周縁3oeが下側に位置する屋根板3と、側板2の内周面2isの上部に沿って設けられ、上端部40Uが屋根板3の内面3isに第2接合部C2において接合されている略円環状の閉塞部材40と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の側板と、
前記側板の外周面の上部に沿って設けられた略円環状の補強部材と、
前記側板を上から覆うように設けられ、外周縁が前記補強部材上に第1接合部において接合されるとともに中心部よりも前記外周縁が下側に位置する屋根板と、
前記側板の内周面の上部に沿って設けられ、上端部が前記屋根板の内面に第2接合部において接合される略円環状の閉塞部材と、を備えることを特徴とする金属製貯留槽。
【請求項2】
前記屋根板に設けられ、前記屋根板、前記補強部材、前記閉塞部材、および前記側板に囲まれる空間に連通する貫通孔と、
前記貫通孔に連通し前記貫通孔を外部に対して開口可能な管路と、
前記管路に設けられるとともに前記管路を外部に対して開閉可能な開閉部材と、をさらに備え、
前記管路が閉の時に前記空間は気密空間であることを特徴とする請求項1に記載の金属製貯留槽。
【請求項3】
前記補強部材の内周を構成する内周部の下端部は第3接合部において前記側板の前記外周面に接合され、
前記閉塞部材の下端部は第4接合部において前記側板の前記内周面に接合されており、
前記第3接合部と前記第4接合部とは、前記側板の厚さの略3倍から略5倍以上の距離だけ前記側板の高さ方向に沿って離間していることを特徴とする請求項2に記載の金属製貯留槽。
【請求項4】
前記屋根板の前記内面と、前記閉塞部材の内周面と、前記第2接合部とに、耐食塗装が施されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の金属製貯留槽。
【請求項5】
前記屋根板の前記内面と、前記閉塞部材の内周面と、前記第2接合部とに、フレークラ
イニングが施されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の金属製貯留槽。
【請求項6】
前記金属製貯留槽は汚泥消化槽であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の金属製貯留槽。
【請求項7】
前記空間に圧縮ガスを注入する圧縮ガス注入ステップと、
前記第1接合部、前記第2接合部、前記第3接合部、および前記第4接合部に発泡液を塗布する発泡液塗布ステップと、
塗布された前記発泡液からの発泡の有無を観察する観察ステップと、を備えることを特徴とする、
腐食性ガスを発生する内容物を貯留する請求項3に記載の金属製貯留槽の検査方法。
【請求項8】
前記圧縮ガスの圧力は、略3.0kPaGから略5.0kPaGの範囲であることを特徴とする請求項7に記載の金属製貯留槽の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食性ガスを発生する内容物を貯留する金属製貯留槽および金属製貯留槽の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食性ガスを発生する内容物を貯留する金属製貯留槽としては、例えば下水処理場から発生する下水汚泥等の有機性廃棄物よりなる汚泥を消化処理するための汚泥消化槽が知られている。汚泥消化槽は、特許文献1に示されるように、円筒状の側板部と、この側板部の上部を覆う屋根板部と、側板部の上部に設けられ屋根板部を支持する屋根板部支持部と、側板部内の底部に配置される底板部とを備えた槽本体と、槽本体を外部から覆う断熱層と、を有する。なお、特許文献2には汚泥消化槽と明記されていないが、屋根板部支持部を含む貯留槽の構造が開示されている。
【0003】
このような槽本体を適温に保ちながら、槽本体の内部に汚泥を貯留すると、汚泥が嫌気的に微生物に分解されることで汚泥が消化処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6259535号公報
【特許文献2】実公平5-16157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
汚泥消化槽の槽本体内で、汚泥が嫌気的に微生物に分解される過程、つまり汚泥がメタン発酵される過程で、メタンガスなどの消化ガスが発生する。
【0006】
汚泥から発生する消化ガスには、メタンガスに加えて腐食性の硫化水素ガスが含まれている。
【0007】
汚泥消化槽の槽本体内は、水分を多量に含む汚泥が貯留されるとともに微生物の活性を増すため高温に保たれているので高温多湿となる。そのため、槽本体の屋根板部の内面や側板部の内面には、常に水滴が付着している。
【0008】
このような水滴に汚泥から発生した硫化水素ガスが溶け込み、この水滴が屋根板部支持部に向かって下向きに傾斜している屋根板部の内面を伝って、屋根板部支持部と屋根板部の内面との間の隙間に滞留する可能性がある。この場合、屋根板部支持部と屋根板部とが鋼板等の金属で形成されていると、屋根板部と屋根板部支持部との溶接等による接合箇所が槽本体の内側から腐食され、消化ガスが汚泥消化槽の外部に漏洩する可能性がある。なお、屋根板部と屋根板部支持部との接合は通常外側からの溶接のみで行われるため、内側からの腐食には弱い構造となっている。また、鋼板製の、屋根板部の内面と屋根板部支持部とには通常防食塗装が施されているが、塗膜が劣化すると、上記のように屋根板部と屋根板部支持部との溶接等による接合箇所が槽本体の内側から腐食され、消化ガスが汚泥消化槽の外部に漏洩する可能性がある。
【0009】
本発明は、このような背景の下になされたもので、腐食性ガスを発生する内容物を貯留する金属製貯留槽の腐食を防止する金属製貯留槽の構造と、このような金属製貯留槽の腐食箇所の有無を容易に検査可能な検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様は、円筒状の側板と、前記側板の外周面の上部に沿って設けられた略円環状の補強部材と、前記側板を上から覆うように設けられ、外周縁が前記補強部材上に第1接合部において接合されるとともに中心部よりも前記外周縁が下側に位置する屋根板と、前記側板の内周面の上部に沿って設けられ、上端部が前記屋根板の内面に第2接合部において接合される略円環状の閉塞部材と、を備えることを特徴とする金属製貯留槽である。
【0011】
本発明の第一の態様によれば、腐食性ガスを発生する内容物が貯留された場合に、屋根板の内面に付着しているとともに硫化水素のような腐食性ガスが溶け込んだ水滴は、補強部材と屋根板との間の隙間に滞留することなく、閉塞部材と側板とを伝って貯留槽内の内容物の上に落下する。そのため、補強部材と屋根板との接合箇所である第1接合部が、腐食性ガスによって貯留槽の内側から腐食されることがない。そのため、腐食箇所から消化ガスが外部に漏洩することがない。また、屋根板が補強部材に加えて閉塞部材によっても支持されるため、安定して屋根板を支持することができる。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様において、前記屋根板に設けられ、前記屋根板、前記補強部材、前記閉塞部材、および前記側板に囲まれる空間に連通する貫通孔と、前記貫通孔に連通し前記貫通孔を外部に対して開口可能な管路と、前記管路に設けられるとともに前記管路を外部に対して開閉可能な開閉部材と、をさらに備え、前記管路が閉の時に前記空間は気密空間であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第二の態様によれば、前記開閉部材を開として前記貫通孔を外部に対して開口してから前記空間に圧縮ガスを注入し、さらに前記開閉部材を閉として前記貫通孔を外部に対して閉とすることで、前記空間を気密かつ外部に対して高圧な空間とすることができる。そのため、前記空間からの圧縮ガスの漏れの有無を確認することができる。
【0014】
本発明の第三の態様は、第二の態様において、前記補強部材の内周を構成する前記内周部の下端部は第3接合部において前記側板の前記外周面に接合され、前記閉塞部材の下端部は第4接合部において前記側板の内周面に接合されており、前記第3接合部と前記第4接合部とは、前記側板の厚さの略3倍から略5倍以上の距離だけ前記側板の高さ方向に沿って離間していることを特徴とする。
【0015】
本発明の第三の態様によれば、第3接合部と第4接合部とが十分に離間しているため、第4接合部が第3接合部からの熱的影響を受けることが無く、また第3接合部が第4接合部からの熱的影響を受けることが無い。そのため、第3接合部と第4接合部の強度を適切に保つことができる。
【0016】
本発明の第四の態様は、第一から第三の何れか一つの態様において、前記屋根板の前記内面と、前記閉塞部材の内周面と、前記第2接合部とに、耐食塗装が施されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第四の態様によれば、前記屋根板の前記内面、前記閉塞部材の前記内周面、および前記第2接合部が腐食することを防止可能である。
【0018】
本発明の第五の態様は、第一から第三の何れか一つの態様において、前記屋根板の前記内面と、前記閉塞部材の内周面と、前記第2接合部とに、フレークライニングが施されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第五の態様によれば、前記屋根板の前記内面、前記閉塞部材の前記内周面、および前記第2接合部が腐食することをより確実に長期間にわたり防止可能である。
【0020】
本発明の第六の態様は、第一から第五の何れか一つの態様において、前記金属製貯留槽は汚泥消化槽であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第六の態様によれば、汚泥消化槽に対して、第一から第五の態様による効果と同じ効果を得ることができる。
【0022】
本発明の第七の態様は、第三の態様において、前記空間に圧縮ガスを注入する圧縮ガス注入ステップと、前記第1接合部、前記第2接合部、前記第3接合部、および前記第4接合部に発泡液を塗布する発泡液塗布ステップと、塗布された前記発泡液からの発泡の有無を観察する観察ステップと、を備えることを特徴とする、腐食性ガスを発生する内容物を貯留する金属製貯留槽の検査方法である。
【0023】
本発明の第七の態様によれば、腐食性ガスを発生する内容物を貯留する金属製貯留槽の腐食箇所の有無を目視で容易に検査することができる。また、金属製貯留槽の製作時における溶接箇所の不良の有無の検査においても、溶接不良箇所の有無を目視で容易に検査することができる。特に、大気圧よりも十分に高い圧縮ガスを注入するため、大気圧のガスの下では前記空間からのガスの漏れが分からないような腐食箇所も検出することができる。
【0024】
本発明の第八の態様は、第七の態様において、前記圧縮ガスの圧力は、略3.0kPaGから略5.0kPaGの範囲であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第八の態様によれば、大気圧よりも十分に高く、かつ前記屋根板の設計圧力を超えない圧力の圧縮ガスを注入するため、適切に発泡の有無を検査することができる。特に、大気圧よりも十分に高い圧縮ガスを注入するため、大気圧のガスの下では前記空間からのガスの漏洩が分からないような腐食箇所も検出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、腐食性ガスを発生する内容物を貯留する金属製貯留槽の腐食を防止することと、このような金属製貯留槽の腐食箇所の有無を容易に検査することとが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態を示す部分断面図である。
図2図1におけるV部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施形態に係る金属製貯留槽1を、図1図2とを参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の金属製貯留槽(汚泥消化槽)1を示す部分断面図である。図2は、図1におけるV部の拡大断面図であり、屋根板3の外周縁3oe付近を示す。なお、本実施形態では金属製貯留槽1が汚泥消化槽の場合を一例として説明するが、後述の通り、金属製貯留槽1は汚泥消化槽に限定されない。
【0029】
金属製貯留槽1は、地面Gに垂直な中心線Oを中心とした円筒状の側板2と、側板2の外周面2osの上部に沿って設けられた略円環状のトップチャンネル(補強部材)30と、側板2を上から覆うように設けられ、外周縁3oeがトップチャンネル30上に第1接合部C1において接合されるとともに中心部よりも外周縁3oeが下側に位置する屋根板3と、側板2の内周面2isの上部に沿って設けられ、上端部40Uが屋根板3の内面3isに第2接合部C2において接合されている略円環状の閉塞部材40と、側板2内の底部を塞ぐように設けられている底板4と、を備える。これら側板2、トップチャンネル30、屋根板3、閉塞部材40、および底板4は金属製でありSS400などの鋼材やステンレス鋼などが用いられる。金属製貯留槽1は、地面Gに設けられた土台部13に載置されている。ここで、略円環状とは、厳密な円環状に限らず、おおよそ円環状と見なせる範囲であれば、例えば楕円環状であっても多角形環状であっても良い。
【0030】
側板2の外側はポリスチレンフォーム20に覆われており、ポリスチレンフォーム20の外側は保温外装板5によりさらに覆われている。側板2の最外郭である保温外装板5の表面に沿うように円周階段6が地面Gから屋根板3に向けて螺旋状に設けられている。
【0031】
屋根板3は、側板2の中心線O上に中心を有し、中心部よりも外周縁3oeが下側に位置する形状の断面が板状の屋根である。図示の屋根板3は、凸球面状のドーム形に形成されているが、例えば円錐面状であっても良い。屋根板3の中心部には回転駆動手段10が載置されており、回転駆動手段10から金属製貯留槽1内に向かって中心線Oに沿って回転軸11が伸び、底板4と間隔をあけて吊下げられている。この回転軸11には複数の撹拌羽根12が中心線O方向に間隔をあけて設けられている。回転軸11と撹拌羽根12が回転駆動手段10によって回転することにより、金属製貯留槽1内に保持された汚泥Wには、金属製貯留槽1の中心線O周辺に下向流が形成されるとともに、側板2の内周面2isには上向流が形成される。
【0032】
屋根板3上において回転駆動手段10よりも屋根板3の外周側には屋根板3の外周縁3oeから屋根板3の中心に向かって金属製貯留槽1の径方向内側に伸びる屋根中央階段8が設けられている。さらに屋根中央階段8の外周端から屋根板3の周方向に沿って屋根中央歩廊7が設けられている。屋根板3の外側はポリウレタンフォーム100に覆われている。
【0033】
閉塞部材40は、複数の略長方形の平鋼の短辺同士を繋ぎ合わせて略円環状に加工した部材である。一例として、短辺の長さが略100mm、長辺の長さが略2000mm、厚さが略6mmの平鋼の短辺同士を溶接により複数繋ぎ合わせることで、円周長が略72000mm程度となる閉塞部材40が使用される。閉塞部材のサイズはこの例に限定されず、適用される金属製貯留槽1のサイズに応じて変更しても良い。ここで、略長方形とは、厳密な長方形に限らず、おおよそ長方形であれば良い。略100mmとは、厳密な100mmに限らず、おおよそ100mmであると見なせる範囲(例えば99mmから101mm程度の範囲)を含む。
【0034】
トップチャンネル30は、側板2の外周面2osの上端側に接するような溝形鋼を、その溝部を下向きに略円環状に加工してある部材である。屋根板3の外周縁3oeは、周方向の一周に亘って、トップチャンネル30の上端部70に第1接合部C1において接合されて支持されている。なお、上端部70はトップチャンネル30を構成する一つの部材であるため、屋根板3の外周縁3oeは、周方向の一周に亘って、トップチャンネル30上に第1接合部において接合されて支持されていると言っても良い。本実施形態では、トップチャンネル30に溝形鋼を使用しているが、従来技術のように山形鋼を略円環状に加工して使用しても良い。
【0035】
上記のような金属製貯留槽1の構造によれば、トップチャンネル30の外周部85が無い従来技術の山形鋼を使用した屋根板部支持部に比べてトップチャンネル30の縦断面の面積が増す。そのため、回転駆動手段10、回転軸11、複数の撹拌羽根12を支持して重量の増した屋根板3をより安定して支持することができる。
【0036】
側板2の上端部2Uはトップチャンネル30の内周を構成する内周部60の内周面60isに第5接合部C5において接合され、内周部60の下端部60Lは側板2の外周面2osに第3接合部C3において接合され、閉塞部材40の下端部40Lは側板2の内周面2isに第4接合部C4において接合されている。
【0037】
本実施形態では、第1接合部C1、第2接合部C2、第3接合部C3、第4接合部C4、および第5接合部C5は溶接接合されているが、接合の形態は必ずしも溶接接合だけに限定されない。また、第1接合部C1と同様に、第2接合部C2、第3接合部C3、第4接合部C4、および第5接合部C5は、周方向の一周に亘って接合されている。
【0038】
第3接合部C3と第4接合部C4とは、側板2の高さ方向(中心線Oの方向)に沿って、側板2の厚さtの略3倍から略5倍以上離間している。このように、第3接合部C3と第4接合部C4とが十分に離間しているため、溶接接合される第3接合部C3からの熱的影響を受けて第4接合部C4の溶接強度が低下することが無く、また、溶接接合される第4接合部C4からの熱的影響を受けて第3接合部C3の溶接強度が低下することが無い。そのため、第3接合部C3と第4接合部C4とを溶接接合する際の溶接強度を適切に保つことができる。一例として、厚さtが6mmの側板2が使用される場合には、第3接合部C3と第4接合部C4とは、側板2に沿って、18mmから30mm以上離間している。なお、側板2の厚さtは6mmに限定されない。また、略3倍から略5倍以上とは、厳密な3倍から5倍以上ではなく、おおよそ3倍から5倍以上の間と見なせる範囲を指す。従って、厚さtが6mmの側板2が使用される場合は、第3接合部C3と第4接合部C4とは、側板2に沿って、例えば17.6mmから30.4mm程度以上離れていても良い。
【0039】
図2に示すように、屋根板3、トップチャンネル30、閉塞部材40、および側板2に囲まれる空間Aが存在する。また、図2に示すように、屋根板3には空間Aに連通する貫通孔50が設けられている。貫通孔50は管路55と連通し、管路55は屋根板3の上部に設けられるポリウレタンフォーム100を貫通して外部に開口している。そのため、空間Aは、貫通孔50と管路55とを介して外部に開口可能である。また、管路55の先端には開閉可能な開閉部材90が設けられているので、開閉部材90を開けることで空間Aを外部に開口したり、開閉部材90を閉めることで空間Aを外部から閉塞したりすることができる。空間Aが外部に閉塞されている場合、空間Aは気密となる。そのため、後述の腐食検査等を行う場合に、空間Aの気密性を検査することで腐食の有無を検査することができる。ここで、図2に示されるように、管路55は、平鋼80により支持されて、屋根板3に対して略直角に起立した状態で設けられている。また、開閉部材90は、例えば管路55の先端の外周面または内周面に嵌め込まれる樹脂製のキャップ、管路55の先端の外周面に螺合される螺合蓋、或いは金属製の開閉弁等である。ここで、略直角とは、厳密な直角に限らず、おおよそ直角と見なせる範囲(例えば89°から91°の範囲)を含む。
【0040】
屋根板3の内面3isと、閉塞部材40の内周面40isと、第2接合部C2には、防食処理が施されている。この防食処理は、耐食塗装を施すことで実現しても良いし、耐食塗装よりも耐食効果の高いフレークライニングを施すことで実現しても良い。フレークライニングとは、液状の樹脂に鱗片状のガラスフレークを混ぜたものを保護すべき母材表面に所定の厚みに塗布施工するものである。屋根板3の内面3isと、閉塞部材40の内周面40isと、第2接合部C2とに防食処理が施されることで、屋根板3の内面3isと、閉塞部材40の内周面40isと、第2接合部C2と、が腐食性ガスにより腐食されることを防ぐことができる。なお、屋根板3の内面3isと、閉塞部材40の内周面40isと、第2接合部C2に加え、さらに第4接合部C4に防食処理を施してもよい。
【0041】
次に、このような構造を備える金属製貯留槽1の作用を説明する。
金属製貯留槽1は、内部に有機性汚泥Wを貯留し、この有機性汚泥Wが嫌気的に微生物に分解される過程、つまり有機性汚泥Wがメタン発酵される過程で、メタンガスなどの消化ガスが発生する。ここで、消化ガスにはメタンガスに加えて腐食性の硫化水素ガスが含まれている。なお、以下の記載では、有機性汚泥Wを単に汚泥Wと記載する場合がある。
【0042】
金属製貯留槽1の内部は、水分を多量に含む汚泥Wが貯留されるとともに微生物の活性を増すため高温に保たれているため高温多湿となる。そのため、金属製貯留槽1の屋根板3の内面3isや側板2の内周面2isには、常に水滴が付着している。
【0043】
このような水滴に、汚泥Wから発生した硫化水素ガスが溶け込み、この水滴がトップチャンネル30に向かって下向きに傾斜している屋根板3の内面3isを伝って移動すると、この水滴は、第2接合部C2において屋根板3の内面3isに上端部40Uが接合されるとともに側板2に沿って下側に伸びる閉塞部材40に突き当たる。その後、さらに水滴は閉塞部材40を伝って側板2に沿って下側に移動し、閉塞部材40の下端部40Lと側板2の内周面2isとの接合箇所(第4接合部C4)を経て、さらに側板2の内周面2isを伝って側板2に沿って下側に移動し、やがて金属製貯留槽1の内部に貯留されている汚泥Wに落下して合流する。
【0044】
このため、閉塞部材40の無い従来技術のように、腐食性ガスが溶け込んだ水滴が屋根板と屋根板支持部との隙間に滞留することがないので、屋根板と屋根板支持部との接合箇所を内側から腐食することがない。そのため、屋根板と屋根板支持部との腐食した接合箇所から消化ガスが外部に漏洩することがない。また、トップチャンネル30に加えて、閉塞部材40も屋根板3を支持しているため、回転駆動手段10、回転軸11、複数の撹拌羽根12を支持して重量の増した屋根板3をより安定して支持することができる。
【0045】
次に、金属製貯留槽1の検査方法を説明する。
開閉部材90が閉の状態で空間Aが気密となる金属製貯留槽1の構造を利用して、以下のような腐食検査を行う。
【0046】
開閉部材90を開とし、管路55に接続された不図示の圧縮機の排出口から空間Aに圧縮ガスを注入する(圧縮ガス注入ステップ)。
【0047】
次に、第5接合部C5を除く、目視可能な第1接合部C1、第2接合部C2、第3接合部C3、および第4接合部C4の上から発泡液を塗布する(発泡液塗布ステップ)。発泡液の一例として、石鹸水を使用することができる。その後、塗布された発泡液からの発泡の有無を目視で観察する(観察ステップ)。これら一連の動作により腐食検査を行う。第1接合部C1、第2接合部C2、第3接合部C3、および第4接合部C4のいずれかにおいて塗布された発泡液からの発泡が観察された場合、第1接合部C1、第2接合部C2、第3接合部C3、および第4接合部C4のいずれかにおいて発泡が観察された箇所が腐食していると推定することができる。なお、発泡液塗布ステップと観察ステップを同時に実行しても良い。即ち、発泡液塗布ステップにおいて発泡液を塗布するのと同時に塗布した箇所からの発泡を目視で確認する観察ステップを実行しても良い。
【0048】
ここで、圧縮ガスの圧力は、略3.0kPaGから略5.0kPaGの範囲であることが好ましい。この場合、圧縮ガスの圧力が大気圧よりも十分高く、さらに屋根板3の設計圧力である略5.0kPaGを超えないため、屋根板3を損傷することなく発泡液からの発泡の有無を容易に観察することができる。特に、圧縮ガスの圧力が大気圧よりも十分高いため、僅かに腐食されている箇所が、外部との圧力差により空間Aから外部に向けて押圧される効果が得られる。そのため、大気圧の下では検出できないような僅かに腐食されている箇所からも圧縮ガスが外部に漏洩することで腐食箇所を検出できるため、消化ガスの漏洩を未然に防止することができる。ここで、略3.0kPaGから略5.0kPaGの範囲とは、厳密な3.0kPaGから5.0kPaGの範囲に限らず、おおよそ3.0kPaGから5.0kPaGの範囲と見なせる範囲(例えば2.9kPaGから5.1kPaG程度の範囲)も含む。なお、圧縮ガスとしては、通常は圧縮空気を使用するが、必ずしも圧縮空気に限定されなくとも良い。なお、ここでは金属製貯留槽の腐食検査として検査方法の説明をしたが、金属製貯留槽の製作時における溶接箇所の不良の有無の検査においても、同様の手順で検査することができる。
【0049】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態とその変形例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0050】
例えば、上記実施形態は、金属製貯留槽1が汚泥消化槽である場合を例に説明したが、この例に限定されない。例えば、本発明の金属製貯留槽1は、金属製貯留槽1の内部で腐食性ガスが発生する金属製貯留槽全般に適用することができる。従って、腐食性ガスが発生する内容物を貯留する金属製貯留槽1を使用する分野であれば、汚泥処理分野に限らず、例えば食品等の製造や加工の分野にも適用することができる。
ここで、金属製貯留槽とは、例えば、貯留槽を構成する側板2、トップチャンネル30、屋根板3、閉塞部材40、および底板4が金属製である場合が想定されるが、必ずしも全てが金属製である場合に限定されず、部分的に金属以外の材料で貯留槽が形成されている場合も含まれる。
【0051】
また、屋根板3に貫通孔50が1個設けられている例を示したが、貫通孔50を複数設けても良い。
【0052】
金属製貯留槽1の検査方法は上述の検査方法に限定されず、例えば、空間Aに圧縮ガスを注入し、日照による金属製貯留槽1内の温度変化が起きにくい夜間に、空間Aの圧力変化をモニターすることで、溶接接合箇所の腐食の有無を推定しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 金属製貯留槽
2 側板
3 屋根板
4 底板
10 回転駆動手段
11 回転軸
12 撹拌羽根
30 トップチャンネル
40 閉塞部材
50 貫通孔
60 内周部
70 上端部
85 外周部
90 開閉部材
C1 第1接合部
C2 第2接合部
C3 第3接合部
C4 第4接合部
C5 第5接合部
G 地面
図1
図2