(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086697
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】砕石杭形成用アタッチメント及びそれを備える砕石杭形成装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/08 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
E02D3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198851
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】507301486
【氏名又は名称】株式会社 尾鍋組
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾鍋 哲也
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043DA07
2D043DB02
2D043DB09
2D043DB29
(57)【要約】
【課題】アタッチメントの振れを抑制しながら損傷を抑制する。
【解決手段】砕石杭形成用のアタッチメントは、その側面に軸方向に沿って砕石投入孔が形成される円筒部12と、砕石投入孔を開閉する扉20と、円筒部を取り囲むように配置される包囲枠30を備えている。包囲枠30は、円筒部が地中に挿入されるときに地表面に対向又は当接する下端部58と、下端部から所定の高さの位置に配置され、円筒部が地中に挿入されるときに当該円筒部の外周面と接触して当該円筒部の振れを止める振れ止め部54dと、下端部と振れ止め部の間に位置し、円筒部と前記振れ止め部との隙間を通って落下する砕石を保持する保持空間を有する中間部60と、を備えている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石杭形成装置本体に取付けられ、地中に挿入されて空間を形成し、前記空間に砕石を投入することで砕石杭を形成する砕石杭形成用のアタッチメントであって、
その側面に軸方向に沿って砕石投入孔が形成される円筒部と、
前記円筒部に取付けられ、前記砕石投入孔を開閉する扉と、
砕石杭形成装置本体に固定されて砕石杭形成位置に保持されると共に前記円筒部を取り囲むように配置され、前記円筒部が前記地中に挿入されるときに前記円筒部の振れを抑制する振れ止め用の包囲枠と、を備え、
前記包囲枠は、
前記円筒部が前記地中に挿入されるときに地表面に対向又は当接する下端部と、
前記下端部から所定の高さの位置に配置され、前記円筒部が地中に挿入されるときに当該円筒部の外周面と接触して当該円筒部の振れを止める振れ止め部と、
前記下端部と前記振れ止め部の間に位置し、前記円筒部と前記振れ止め部との隙間を通って落下する砕石を保持する保持空間を有する中間部と、を備えていることを特徴とする、砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項2】
前記円筒部の軸線と前記包囲枠の軸線とが一致するように前記円筒部及び前記包囲枠が配置されたときに、前記中間部の内周と前記円筒部の外周との間の距離が、前記振れ止め部の内周と前記円筒部の外周との間の距離より、前記包囲枠の全内周において大きい、請求項1に記載の砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項3】
前記振れ止め部において、前記包囲枠を前記軸線に直交する断面で見たときに、前記振れ止め部の内周面の形状が多角形となっている、請求項1又は2に記載の砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項4】
前記円筒部は、当該円筒部が前記地中に挿入されるときに、前記地中内の土を地表面に排出しない無排土タイプの円筒部であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項5】
前記円筒部は、その内部に投入される砕石をその先端部に保持した状態で前記地中に挿入可能に構成されており、
前記包囲枠は、
前記円筒部の地中への挿入を開始した初期において前記砕石投入孔から前記円筒部の内部に砕石を投入する際に前記円筒部の内部に投入されなかった砕石が前記振れ止め部と前記円筒部の間の隙間を通過可能となっており、かつ、
前記振れ止め部と前記円筒部の間の隙間を通過した砕石が、前記中間部の前記保持空間に保持可能となっている、請求項1~4のいずれか一項に記載の砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のアタッチメントと、
正転方向と反転方向の回転駆動力を発生させて、前記アタッチメントを駆動する駆動装置と、を備える、砕石杭形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、砕石杭形成用アタッチメント及びそれを備える砕石杭形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状化対策等の地盤改良のために、地中に砕石杭を形成する方法が用いられている。地中に砕石杭を形成する方法としては、地中に挿入されて空間を形成し、地中から上昇しつつ空間に砕石杭を形成するアタッチメントを用いることがある。この種のアタッチメントは、その側面に軸方向に沿って砕石投入孔が形成される円筒部と、円筒部内に回転可能に配置され地中を掘削する螺旋部と、を備えている。螺旋部は、正転方向の回転によってアタッチメントを地中に挿入しながら地中を掘削する。そして、円筒部の側面に設けられる砕石投入孔から砕石が投入され、螺旋部は反転方向の回転によってアタッチメントを地中から引き抜きながら地中に砕石杭を形成する。例えば、特許文献1には、砕石杭形成用のアタッチメントの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のアタッチメントでは、地中にアタッチメントを挿入するとき、アタッチメント(詳細には、円筒部)の振れを抑制するために包囲枠が用いられる。包囲枠は、円筒部を取り囲むように配置され、円筒部と包囲枠の間には、わずかな隙間が形成される。円筒部が振れると、円筒部と包囲枠とが接触し、円筒部が所定の位置に戻される。これにより、地中の所望の位置に円筒部が挿入され、その位置に砕石杭を形成することができる。
【0005】
しかしながら、円筒部を取り囲むように包囲枠を配置すると、円筒部と包囲枠の間に侵入した砕石等によって、円筒部が損傷するといった問題が生じる。すなわち、地中にアタッチメントを挿入するとき、円筒部はその軸線周りに回転しながら地中に挿入される。一方、包囲枠は、その軸線周りに回転することなく停止した状態を維持する。このため、円筒部と包囲枠の隙間に砕石等が侵入すると、砕石が円筒部と包囲枠の間に挟まった状態で、円筒部だけが軸線周りに回転することになる。このため、砕石により円筒部の表面が損傷してしまう。
【0006】
本明細書は、地中にアタッチメントを挿入するときに、アタッチメント(円筒部)の振れを抑制しながら、アタッチメント(円筒部)の損傷を抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示する砕石杭形成用アタッチメントは、砕石杭形成装置本体に取付けられ、地中に挿入されて空間を形成し、その空間に砕石を投入することで砕石杭を形成する砕石杭形成用のアタッチメントである。このアタッチメントは、その側面に軸方向に沿って砕石投入孔が形成される円筒部と、円筒部に取付けられ、砕石投入孔を開閉する扉と、砕石杭形成装置本体に固定されて砕石杭形成位置に保持されると共に円筒部を取り囲むように配置され、円筒部が地中に挿入されるときに円筒部の振れを抑制する振れ止め用の包囲枠と、を備えている。包囲枠は、円筒部が地中に挿入されるときに地表面に対向又は当接する下端部と、下端部から所定の高さの位置に配置され、円筒部が地中に挿入されるときに当該円筒部の外周面と接触して円筒部の振れを止める振れ止め部と、下端部と振れ止め部の間に位置し、円筒部と振れ止め部との隙間を通って落下する砕石を保持する保持空間を有する中間部と、を備えている。
【0008】
上記のアタッチメントでは、包囲枠の振れ止め部は、包囲枠の下端部から所定の高さに位置する。そして、円筒部が地中に挿入されるときに、円筒部の外周面が振れ止め部と接触して、円筒部の振れを抑制する。一方、円筒部と包囲枠の隙間に侵入した砕石は、円筒部と振れ止め部との隙間を通って落下し、中間部に形成された保持空間で保持される。これによって、円筒部の表面に砕石が強く擦り付けられることが抑制され、円筒部の損傷を抑制することができる。
【0009】
また、本明細書は、上記のアタッチメントを備えた砕石杭形成装置を開示する。すなわち、本明細書に開示する砕石杭形成装置は、上記のアタッチメントと、正転方向と反転方向の回転駆動力を発生させて、アタッチメントを駆動する駆動装置と、を備えている。この砕石杭形成装置によると、円筒部の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に係る砕石杭形成装置の概略構成を示す図。
【
図3】
図1のIII-III線における断面図(砕石投入孔にホッパーの先端が挿入されていない状態(地中を掘削するときの状態))。
【
図4】
図1のIII-III線における断面図(砕石投入孔にホッパーの先端が挿入された状態(地中からアタッチメントを引き抜くときの状態))。
【
図5】円筒部の周囲に配置された包囲枠を拡大して示す縦断面図。
【
図6】
図5のVI‐VI線における断面図(振れ止め部における断面図)。
【
図8】円周方向の角度θとクリアランスC1,C2との関係を示すグラフ。
【
図9】掘削開始時における砕石を投入するときの状態を説明するための図。
【
図10】砕石杭を形成するときの手順を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(特徴1)本明細書が開示するアタッチメントでは、円筒部の軸線と包囲枠の軸線とが一致するように円筒部及び包囲枠が配置されたときに、中間部の内周と円筒部の外周との間の距離が、振れ止め部の内周と円筒部の外周との間の距離より、包囲枠の全内周において大きくてもよい。このような構成によると、振れ止め部において円筒部の振れ止めを行う一方、中間部において振れ止め部から落下する砕石を保持することができる。
【0012】
(特徴2)本明細書が開示するアタッチメントでは、振れ止め部において、包囲枠を軸線に直交する断面で見たときに、振れ止め部の内周面の形状が多角形となっていてもよい。このような構成によると、円筒部の外周面と振れ止め部の内周面との間に形成されるクリアランスが周方向に変化する。すなわち、クリアランスが大きくなる角度領域と、クリアランスが小さくなる角度領域が形成される。このため、クリアランスが小さくなる角度領域において円筒部の振れ止めを行う一方で、クリアランスが大きくなる角度領域において砕石を落下させることができる。
【0013】
(特徴3)本明細書が開示するアタッチメントでは、円筒部は、当該円筒部が地中に挿入されるときに、地中内の土を地表面に排出しない無排土タイプの円筒部であってもよい。掘削時に地中の土地を地表面に排出する排土タイプの場合、地表面に排出する土砂が円筒部と包囲枠の間に入り込み、潤滑剤として機能する。このため、円筒部と包囲枠の間に侵入した砕石等による円筒部の損傷が緩和される。一方、掘削時に地中の土地を地表面に排出しない無排土タイプの場合、地表面に排出する土砂がないため、円筒部と包囲枠の間に侵入した砕石等による円筒部の損傷が顕著に表れる。したがって、本明細書に開示するアタッチメントを使用することで、円筒部の損傷を好適に抑制することができる。
【0014】
(特徴4)本明細書が開示するアタッチメントでは、円筒部は、その内部に投入される砕石をその先端部に保持した状態で地中に挿入可能に構成されていてもよい。包囲枠は、円筒部の地中への挿入を開始した初期において砕石投入孔から円筒部の内部に砕石を投入する際に円筒部の内部に投入されなかった砕石が振れ止め部と円筒部の間の隙間を通過可能となっていてもよい。また、振れ止め部と円筒部の間の隙間を通過した砕石が、前記中間部の前記保持空間に保持可能となっていてもよい。このような構成によると、円筒部の地中への挿入開始初期に、砕石投入孔から円筒部内に砕石を投入し、円筒部の先端に砕石を保持した状態で円筒部を地中に挿入することができる。このため、地中の土砂が円筒部内に侵入することを抑制することができ、円筒部内に侵入した土砂で砕石柱の機械的強度が低下することを抑制することができる。また、砕石投入孔から円筒部内に砕石を投入する際に、砕石投入孔からこぼれた砕石が円筒部と包囲枠の間に侵入しても、侵入した砕石を包囲枠の保持空間に保持することができる。このため、円筒部の挿入開始初期に砕石投入孔から円筒部内に砕石を投入しても、円筒部の損傷を抑制することができる。
【実施例0015】
以下、本実施例に係る砕石杭形成装置100について説明する。
図1に示すように、砕石杭形成装置100は、建設機械としての地盤改良機40と、地盤改良機40に装着されたアタッチメント10を備えている。地盤改良機40は、
図1に示されるように、地盤改良機本体構造1と、運転席としてのキャビン7と、低接地圧で不整地を移動可能な無限軌道であるクローラ6と、施工時において地盤改良機40の揺動を抑制するアウトリガー5と、を備える。
【0016】
地盤改良機40は、さらに、アタッチメント10を操作するための構成として、アタッチメント10にモーター出力軸27を介して回転駆動力を供給する駆動装置11と、昇降ガイドレール9を有するリーダー4と、駆動装置11及びアタッチメント10を昇降ガイドレール9に沿って昇降する昇降台17と、リーダー4を支持するためのリーダー取付ベース2と、リーダー4の傾きを操作する油圧シリンダー3と、リーダー4の下端部においてリーダー4と一体的に形成されている延長脚柱8と、を備えている。
【0017】
図1及び
図2に示すように、アタッチメント10は、円筒部12と、螺旋部14と、円筒部12の振れ止め用の包囲枠30と、昇降台17に取り付けられるハンガーステー18と、トップカバーケース16と、砕石投入装置32と、包囲枠30を支持する取付プレート37と、砕石投入装置32を支持する支持アーム39と、アタッチメント10による施工状態を管理する施工管理装置41と、を備えている。
【0018】
円筒部12は円筒状の部材であり、その側面には砕石投入孔15が形成されている。本実施例では、円筒部12の外周面にはフィンが設けられておらず、地中を掘削する時に土砂が地上に排出されない。すなわち、円筒部12は無排土タイプの円筒部となっている。砕石投入孔15は、円筒部12の軸方向に伸びており、弾性変形可能なゴム製又は樹脂製の開閉扉20によって塞がれている。詳細には、
図3及び
図4に示すように、取付プレート28には砕石投入孔15が形成され、開閉扉20の一端辺はボルト29によって取付プレート28に固定されている。開閉扉20の他端側(取付プレート28に固定されていない側)が外側に折り曲げられることで(
図4に示す状態)、砕石投入孔15が開放されるようになっている。一方、開閉扉20が取付プレート28に当接することで(
図3の状態)、開閉扉20によって砕石投入孔15が塞がれるようになっている。
【0019】
砕石投入装置32は、ホッパー部33と、ホッパー部33の下部に配置されるシュート部34を備えている。砕石投入孔15は、アタッチメント10が地中を掘削する際には、開閉扉20によって閉じられている(
図3参照)。これによって、砕石投入孔15から円筒部12内に土砂が侵入することを防止できる。また、円筒部12内に砕石を投入する際には、開閉扉20が開けられる(
図4参照)。これによって、砕石投入装置32に投入した砕石を砕石投入孔15から円筒部12内に投入することができる。また、砕石投入孔15が軸方向に沿って長孔として設けられていることによって、円筒部12が上昇しても砕石投入位置を変更することなく、砕石を円筒部12内に投入することができる。
【0020】
図1及び
図2に示すように、螺旋部14は、円筒部12の先端に位置しており、コアロッド22(
図3、4に図示)及び回転入力軸26と一体的に構成されている。回転入力軸26は、駆動装置11のモーター出力軸27に接続されている。回転入力軸26は、モーター出力軸27の回転駆動力に応じて回転し、その回転駆動力を一体的に結合されたコアロッド22を介して螺旋部14に伝達する。螺旋部14の先端には掘削翼が設けられている。掘削翼は、螺旋部14の先端に向かうにしたがって径が大きくなる螺旋状に形成されている。掘削翼の略全体は円筒部12内に配置されており、掘削翼の先端の一部のみが円筒部12の先端から突出している。
【0021】
コアロッド22(
図3に図示)は、円筒部12に回転可能に結合され、円筒部12と回転軸を共通にしている。掘削する際には、円筒部12と螺旋部14は、同一方向に回転するように構成されている。ただし、円筒部12にはフィンが設けられていないため、螺旋部14で掘削された土砂は地表に運搬されない。すなわち、本実施例では、螺旋部14の掘削によって生じた掘削土砂が地表に排出されず、円筒部12の周囲に押し出される。
【0022】
トップカバーケース16は、円筒部12の後端部に取付けられており、円筒部12と一体化されている。コアロッド22は、トップカバーケース16の上面を貫通しており、トップカバーケース16に回転可能に支持されている。このため、コアロッド22が回転駆動されても、円筒部12はコアロッド22と共に回転することなく、フリーな状態が保たれる。
【0023】
アタッチメント10は、さらに、図示しない回転駆動力伝達部と反転防止部を備えている。回転駆動力伝達部は、ワンウエイクラッチ機構であり、掘削時の回転方向に螺旋部14を駆動する際は、自動的に螺旋部14と円筒部12を一体として回転させる。一方、回転駆動力伝達部は、掘削時の回転方向と逆方向に螺旋部14を駆動する際は、螺旋部14を反転方向に回転させることで砕石に圧力を印加すると共に、螺旋部14から円筒部12への動力伝達を遮断して円筒部12の回転を停止させる。反転防止部は、掘削時の回転方向と逆方向に螺旋部14を駆動する際は、回転を停止された円筒部12が、掘削時の回転方向にもその逆方向にも回転しないように、円筒部12の回転を規制する。以下、円筒部12と螺旋部14が同一方向に回転する方向、すなわち、掘削時の回転方向を「正転方向」といい、掘削時の回転方向と逆方向に回転する方向、すなわち、螺旋部14で砕石に圧力を印加する回転方向を「反転方向」ということがある。
【0024】
図1,2に示すように、包囲枠30は、地表面の近傍で円筒部12の周囲を取り囲んでいる。包囲枠30は、図示はされていないが、円周方向の少なくとも一ヵ所で分離可能となっており、円筒部12の周囲を取囲んだ状態と、円周方向の一部において円筒部12が包囲枠30の内側から外側へ通過可能な状態とに切り替えられるようになっている。例えば、包囲枠30は、円周方向の所定の位置で分離可能とされ、円周方向の他の位置で蝶番等によって連結されている。円筒部12によって砕石杭を形成するときは、包囲枠30は所定の位置で連結され、円筒部の周囲を取囲む状態とされる。円筒部12を地盤改良機40に着脱するときは、円周方向の所定の位置で分離され、円筒部12が包囲枠30を外側から内側に通過可能な状態とされる。なお、包囲枠30の上端面には、砕石落下防止板62が設置されている(
図9参照)。砕石落下防止板62については後で説明する。
【0025】
図5~7に示すように、包囲枠30は、本体フレーム52と、本体フレーム52に着脱可能に取付けられる外側カバー60を備えている。本体フレーム52は、下端に配置される下板部58(請求項でいう下端部の一例)と、上端に配置される上板部54aと、下板部58と上板部54aとを接続する複数の接続部(54b,54c)を備えている。接続部(54b,54c)の上端(すなわち、54bの上端)は、上板部54aに溶接によって固定され、接続部(54b,54c)の下端54cは下板部58に溶接によって固定されている。これにより、上板部54aと下板部58と接続部(54b,54c)は一体に形成されている。
【0026】
図7に示すように、下板部58は、平面視するとリング形状の板厚一定の板材であり、外周縁の形状が円形となる一方で、内周縁58aの形状は六角形となっている。すなわち、下板部58は、板厚一定の円形板の中心に六角形の貫通孔が形成された形状を有している。円筒部12によって砕石杭を形成するときは、円筒部12が下板部58の貫通孔内に位置すると共に、下板部58の下面は地表面に当接した状態又は地表面の近傍で地表面に対向した状態を維持される。これによって、包囲枠30(すなわち、円筒部12)の地表面に対する位置が保持される。
【0027】
図6に示すように、上板部54aは、平面視すると環状の板厚一定の板材であり、外周縁の形状が六角形となると共に、内周縁の形状も六角形となっている。すなわち、上板部54aは、板厚一定の六角形板の中心に六角形の貫通孔が形成された形状を有している。円筒部12によって砕石杭を形成するときは、円筒部12が上板部54aの貫通孔内に位置する。このとき、下板部58の下面が地表面に当接又は地表面の近傍に位置するため、上板部54aは地表面から所定の高さ(接続部(54b,54c)の高さ方向の寸法)だけ上方に位置することとなる。
【0028】
図5~7、9に示すように、複数の接続部(54b,54c)は、上板部54aの外周縁の近傍に周方向に間隔を空けて配置されている。詳細には、接続部(54b,54c)は、上板部54aの外周縁の6個のコーナー部のそれぞれに配置されている。接続部(54b,54c)は、その下端部54cが下板部58に固定され、その上端部54bが上板部54aに固定されている。接続部(54b,54c)の上端部54bが上板部54aの外周縁の近傍に固定されていることから、接続部(54b,54c)の下端部54cは、下板部58の貫通孔から所定の距離だけ外側に離れた位置に配置されている。
【0029】
図5,6,9に示すように、上板部54aの下面には振れ止め部54dが形成されている。振れ止め部54dは、筒状の形状を有しており、上板部54aの貫通孔の周縁から下方に伸びている。上板部54aの貫通孔が六角形を有しているため、振れ止め部54dを平面視したときの形状も六角形となっている。振れ止め部54dの長さは、接続部(54b,54c)の長さの略1/2となっている。このため、振れ止め部54dの下端は下板部58から離間しており、振れ止め部54dの下端と下板部58の間に開口部56が形成されている。また、図から明らかなように、振れ止め部54dと円筒部12の間にはクリアランスC1が形成されている。クリアランスC1については後で詳述する。
【0030】
図5,6,7,9に示すように、外部カバー60は、筒状の形状を有しており、下板部58の上面から上板部54aの下面まで伸びている。外部カバー60は、6個の接続部(54b,54c)を取り囲むように、接続部(54b,54c)の外側に配置されている。外部カバー60の軸線に直交する断面における内周面及び外周面の形状は、振れ止め部54dと同様に六角形となっている。
図7から明らかなように、振れ止め部54dの下端から下板部58までの間の位置(すなわち、開口部56が設けられた位置)では、外部カバー60は、空間S2を包囲枠30の外側の外部空間から隔離している。上述したように、外部カバー60は6個の接続部(54b,54c)を取り囲むように設けられているため、円筒部12と外部カバー60との間には比較的に大きなクリアランスC2が形成されている。なお、振れ止め部54dの下端から下板部58までの間の位置において、外側カバー60と円筒部12との間に形成される空間S2が「保持空間」の一例であり、この位置における外部カバー60が請求項でいう「中間部」の一例である。
【0031】
ここで、円筒部12と包囲枠30の上部(詳細には、振れ止め部54d)との間に形成されるクリアランスC1と、円筒部12と包囲枠30の下部(すなわち、外側カバー60)の間に形成されるクリアランスC2について詳述する。なお、本実施例において、クリアランスC1,C2は、円筒部12の軸線と包囲枠30の軸線とが一致するように包囲枠30に対して円筒部12を配置したときに、円筒部12と包囲枠30の間に形成されるクリアランスを意味している。なお、クリアランスC2は、厳密には接続部(54b,54c)が設けられた位置では、接続部(54b,54c)の分だけ小さくなる。しかしながら、例えば、上板部54aと下板部58とをそれぞれリーダー4(延長脚柱8)に独立して固定することで、接続部(54b,54c)を不要にすることができ、接続部(54b,54c)は、砕石を保持する保持空間を形成するためには必須の構成ではない。このため、本明細書において、クリアランスC2は、上板部54aと下板部58とを接続する接続部(54b,54c)を考慮することなく、包囲枠30の外側の外部空間から隔離する外側カバー60と円筒部12との間に形成されるクリアランスを意味することとする。
【0032】
クリアランスC1は、円筒部12と振れ止め部54dとの間に形成される。
図6に示すように、円筒部12の軸線に沿って見ると、円筒部12の外周面は円形であり、振れ止め部54dの内周面は六角形となる。このため、クリアランスC1は、円周方向の位置(すなわち、
図6に示す角度θ(軸線周りの角度))によって変化し、円周方向の位置θ(軸線周りの角度)を変数とする関数で表される。具体的には、
図8に示すように、クリアランスC1は、振れ止め部54dの内周面の六角形のコーナー部に対応する位置(θ=30°,90°,150°,210°,270°,330°)において極大値をとり、六角形の直線部の中央に対応する位置で極小値をとるように変化する。
【0033】
上述したように、クリアランスC2は、円筒部12と外側カバー60との間に形成される。
図7に示すように、円筒部12の軸線に沿って見ると、円筒部12の外周面は円形であり、外側カバー60の内周面は六角形となる。このため、クリアランスC2も、円周方向の位置(すなわち、
図7に示す角度θ(軸線周りの角度))によって変化し、円周方向の位置θ(軸線周りの角度)を変数とする関数で表される。具体的には、
図7,8に示すように、クリアランスC2は、外側カバー60の内周面の六角形のコーナー部に対応する位置(θ=30°,90°,150°,210°,270°,330°)において極大値をとり、六角形の直線部の中央に対応する位置で極小値をとるように変化する。
図7から明らかなように、クリアランスC2は、クリアランスC1と同様に変化し、包囲枠30の全内周においてクリアランスC1よりも大きな値をとる。
【0034】
上述したように、クリアランスC2は、全ての角度範囲においてクリアランスC1以上となる。これにより、本実施例においては、円筒部12と振れ止め部54dとの間に形成されるクリアランスC1が小さな値に設定され、振れ止め部54dによって円筒部12の振れ止めの機能を果たしている。一方、外側カバー60と円筒部12の間には、クリアランスC1より大きなクリアランスC2が形成され、外側カバー60と円筒部12の間に砕石を保持するための比較的に大きな空間S2が形成されている。
【0035】
次に、砕石杭形成装置100が砕石杭を形成する際の砕石杭形成装置100の動作について説明する。
【0036】
まず、アタッチメント10の位置合わせを行う。アタッチメント10の位置合わせは、クローラ6の駆動によって地盤改良機40の位置と方向とを調整することによって行われる。なお、地盤改良機40の位置と方向を調整した後、地盤改良機40は、アウトリガー5によって地面に固定されてもよい。これにより、施工時における地盤改良機40の揺動や位置ずれを抑制することができる。
【0037】
次いで、
図10(a)に示すように、アタッチメント10の先端を地中に挿入する。具体的には、地盤改良機40を地面に固定した後、駆動装置11を駆動させながらアタッチメント10を下降させる。この際、駆動装置11は、正転方向の回転駆動力を発生するように駆動する。上述したように、駆動装置11が正転方向の回転駆動力を発生すると、回転駆動力伝達部によって、螺旋部14及び円筒部12が正転方向に回転する。これによって、アタッチメント10の先端が地中に挿入される。
【0038】
次いで、
図10(b)に示すように、アタッチメント10の内部に砕石を投入する。具体的には、まず、
図3に示すように、円筒部12の周方向の位置を調整し、砕石投入装置32のシュート部34を砕石投入孔15と対向する位置に配置する。次いで、
図4,9に示すように、円筒部12に対して開閉扉20を開き、シュート部34から砕石を投入する。シュート部34から投入される砕石は、まず、円筒部12外の包囲枠30の上板部54aの上面に落下する。上板部54aの上面には砕石落下防止板62が配置されているため、上板部54aの上面に落下した砕石は、砕石落下防止板62によって包囲枠30の外側に落下することが防止される。これによって、上板部54a上に砕石が堆積され、その堆積された砕石によって、その後にシュート部34から投入される砕石が好適に円筒部12内に導かれる。円筒部12内に導かれた砕石は、円筒部12内を落下し、円筒部12の先端に充填される。また、上板部54aの上面に落下した砕石の一部は、包囲枠30と円筒部12の隙間に落下し、包囲枠30(すなわち、振れ止め部54d)と円筒部12の隙間に嵌まり込む。包囲枠30と円筒部12の隙間に落下した砕石の一部(すなわち、粒径のちいさなもの)は、さらに包囲枠30の下板部58まで落下し、空間S2に貯留される。上記の説明から明らかなように、砕石落下防止板62は、上板部54aの上面であって、シュート部34の下方に配置され、シュート部34からの砕石が上板部54aから落下することを防止する。シュート部34が周方向の一部の領域から砕石を投入するため、砕石落下防止板62は円筒部12の全周にわたって設置されている必要はなく、シュート部34を含む一部の領域に設けられている。なお、砕石落下防止板62としては、ゴム製の板材を用いることができる。
【0039】
円筒部12の先端に砕石が充填されると、
図10(c)に示すように、アタッチメント10を地中に挿入して、地中を掘削する。具体的には、正転方向の回転駆動力が発生するように駆動装置11を駆動しながら、アタッチメント10を下降させる。これによって、円筒部12及び螺旋部14は、正転方向に回転しながら、地中に挿入されてゆく。この際、円筒部12と包囲枠30の振れ止め部54dとの間のクリアランス(C1)が小さくされているため、包囲枠30の振れ止め部54dによって円筒部12の振れが防止され、円筒部12が所望の位置に安定した状態で挿入される。
【0040】
なお、本実施例では、アタッチメント10が無排土タイプであるため、地中を掘削した土砂は、円筒部12の先端からその周囲に押し出される。ここで、
図10(b)に示すように、円筒部12が地中を掘削する際は、円筒部12の先端に砕石が充填されている。これによって、螺旋部14によって掘削される土砂が、円筒部12内に進入することを防止することができる。また、包囲枠30(すなわち、振れ止め部54d)と円筒部12の隙間に嵌まり込んだ砕石は、円筒部12の回転に伴って周方向に移動する。上述したように、円筒部12と振れ止め部54dとのクリアランスC1は、円周方向に変化し、貫通孔(上板部54aの貫通孔)の六角形のコーナー部に対応する位置で大きな値をとる。このため、振れ止め部54dと円筒部12の隙間に嵌まり込んだ砕石は、円周方向に移動し、クリアランスC1が大きな値となるコーナー部で下方に落下する。振れ止め部54dと円筒部12の間から落下した砕石は、円筒部12と外側カバー60との間に形成された比較的に広い空間S2内に貯留(保持)される。空間S2に貯留された砕石は、空間S2内を自由に移動することができる。このため、円筒部12及び包囲枠30の損傷を抑制することができる。また、砕石が円筒部12と包囲枠(振れ止め部54d)に挟まった状態で回転し続けることはなく、また、振れ止め部54dから落下した砕石は空間S2で自由に移動できるため、騒音の発生が抑制される。なお、アタッチメント10が所定の深さまで到達すると、駆動装置11の正転回転の駆動を停止し、掘削を終了する。
【0041】
次いで、アタッチメント10を上昇させ、地中に砕石杭を形成する。砕石杭の形成は、以下の手順で行われる。まず、
図10(d)に示すように、開閉扉20を開き、砕石投入装置32から円筒部12内に砕石を投入する。砕石を投入する手順は、
図10(b)で砕石を投入した手順と同様に行われる。次に、反転方向の回転駆動力が発生するように、駆動装置11を駆動する。すると、螺旋部14は、反転方向に回転し、円筒部12内に投入された砕石を螺旋部14から押圧しながら円筒部12外に排出する。これによって、アタッチメント10が地中から押し出されると共に、円筒部12で形成した空間に砕石杭が形成される。上述したように、駆動装置11が反転方向の回転駆動力を発生すると、回転駆動力伝達部によって螺旋部14のみが反転方向に回転し、円筒部12は正転方向にも反転方向にも回転しない状態となる。このため、円筒部12に設けられる砕石投入孔15の位置が周方向に変化することを回避することができ、砕石投入装置32の位置を調整することなく円筒部12内へ砕石を投入することができる。そして、アタッチメント10が地表まで押し出されると、駆動装置11の反転方向の駆動を停止し、砕石杭の形成が終了する(
図10(e))。
【0042】
本実施例の砕石杭形成装置100では、振れ止め部54dにおいて円筒部12と包囲枠30の間に形成されるクリアランスC1が小さくされる一方で、振れ止め部54dの下方において、円筒部12と外側カバー60の間に形成されるクリアランスC2が大きな値とされる。これによって、円筒部12と包囲枠30の間に落下した砕石を、クリアランスC2で形成される比較的に広い空間S2に導いて保持することができる。このため、包囲枠30及び円筒部12の損傷を抑制し、かつ、円筒部12と包囲枠30の間に砕石が挟まった状態で円筒部12が回転することによる騒音を低減することができる。
【0043】
特に、本実施例においては、クリアランスC2は、全ての角度範囲でクリアランスC1より大きな値となっている。このため、包囲枠30の下部に大きな空間S2を確保することができ、包囲枠30及び円筒部12の損傷の抑制と騒音の低減を実現している。
【0044】
また、本実施例においては、包囲枠30の振れ止め部54dを平面視すると、振れ止め部54dの内周面は六角形となっている。このため、円筒部12と振れ止め部54dのクリアランスの小さい部分(直線部)で円筒部12の振れ止めを好適に行う一方で、円筒部12と振れ止め部54dのクリアランスの大きい部分(コーナー部)で砕石を落下し易くしている。これにより、円筒部12の振れ止め効果を得ながら、円筒部12の損傷の抑制を達成している。
【0045】
なお、本実施例では、包囲枠30の振れ止め部54dを平面視したときに、振れ止め部54dの内周面の形状が六角形となっていたが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、振れ止め部54dの内周面の形状は六角形以外の多角形(例えば、四角形、五角形、七角形、八角形等)であってもよいし、円形や楕円形であってもよい。振れ止め部54dの内周面の形状を多角形や楕円形とすることで、振れ止め部54dと円筒部12の間に形成されるクリアランスC1を周方向に変化させることができる。
【0046】
また、本実施例のアタッチメント10は、無排土タイプのアタッチメントであったが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、掘削時に土砂を地表面に排出する排土タイプのアタッチメントに適用することもできる。
【0047】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。