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特開2022-86721磁性ナノ粒子の洗浄分離方法及び洗浄分離システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086721
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】磁性ナノ粒子の洗浄分離方法及び洗浄分離システム
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/28 20060101AFI20220602BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
B03C1/28 107
B03C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198897
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】508067736
【氏名又は名称】マイクロ波化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 久夫
(72)【発明者】
【氏名】石塚 章斤
(72)【発明者】
【氏名】山内 智央
(72)【発明者】
【氏名】植村 和史
(72)【発明者】
【氏名】小林 達弥
(72)【発明者】
【氏名】今井 将太
(72)【発明者】
【氏名】塚原 保徳
(57)【要約】      (修正有)
【課題】磁性ナノ粒子の製造に必要な時間を短縮する磁性ナノ粒子の洗浄分離方法を提供する。
【解決手段】磁性ナノ粒子の洗浄分離方法は、処理装置47内で磁性ナノ粒子を洗浄する工程であって、磁性ナノ粒子が収容された処理装置に洗浄液を導入する工程と、導入された洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物を撹拌する工程と、磁界中に配置された前記混合物に沈降処理を行う工程と、沈降処理で得た上澄み液を処理装置から流し出す工程と、を含み、洗浄液を導入する工程と撹拌する工程とは複数回行われ、最後に撹拌する工程を行った後には沈降処理を行う工程と前記上澄み液を流し出す工程とを行わず、処理装置から導出された混合物を分離装置20の流路の一部に流し、混合物に含まれる磁性ナノ粒子を磁界中に配置された流路に堆積させる堆積工程とをさらに含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置内で磁性ナノ粒子を洗浄する工程であって、磁性ナノ粒子が収容された前記処理装置に洗浄液を導入する工程と、
導入された前記洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物を撹拌する工程と、
磁界中に配置された前記混合物に沈降処理を行う工程と、
前記沈降処理で得た上澄み液を前記処理装置から流し出す工程とを含み、
前記洗浄液を導入する工程と前記撹拌する工程とは複数回行われ、
最後に撹拌する工程を行った後には前記沈降処理を行う工程と前記上澄み液を流し出す工程とを行わず、
前記処理装置から導出された前記混合物を分離装置の流路に流し、前記混合物に含まれる磁性ナノ粒子を磁界中に配置された前記流路の一部に堆積させて分離する分離工程とをさらに含む磁性ナノ粒子の洗浄分離方法。
【請求項2】
前記流路を通過した前記混合物を前記処理装置に戻す工程をさらに含む、請求項1に記載の磁性ナノ粒子の洗浄分離方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗浄分離方法により前記流路の一部に堆積した磁性ナノ粒子を前記一部ごと所定場所に搬送する工程を含む、磁性ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記搬送する工程において、磁性ナノ粒子は乾燥装置に搬送され、
前記乾燥装置により磁性ナノ粒子を乾燥させる工程をさらに含む、請求項3に記載の磁性ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
磁性ナノ粒子を洗浄するための処理装置と、
磁性ナノ粒子を分離するための分離装置とを備え、
前記処理装置は、洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物が収容される処理容器と、前記処理容器の下方に配置され、前記混合物に作用する磁界を生成する磁石とを備え、
前記分離装置は、前記処理容器から導入された前記混合物が流れ、前記混合物に含まれる磁性ナノ粒子が堆積する流路の一部を構成する装置本体と、前記装置本体の下方に配置され、前記流路の前記一部を流れる前記混合物に作用する磁界を生成する磁石とを備える、磁性ナノ粒子の洗浄分離システム。
【請求項6】
前記分離装置の前記装置本体は、前記処理容器に接続されて前記混合物を導入する導入口と、前記導入口から導入された前記混合物が流される前記流路と、前記処理容器に接続されて前記流路を流れた前記混合物が前記処理容器に向けて導出される導出口とを備える、請求項5に記載の磁性ナノ粒子の洗浄分離システム。
【請求項7】
前記装置本体は、支持手段から取り外し自由に設けられる請求項6に記載の磁性ナノ粒子の洗浄分離システム。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の洗浄分離システムと、
前記分離装置の前記装置本体が収容され前記流路に堆積したナノ粒子を乾燥させる乾燥装置とを備える磁性ナノ粒子の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ナノ粒子の洗浄分離方法及び洗浄分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子の製造時には、一般にナノ粒子を沈降処理して分離することが行われている。特許文献1に記載の金属酸化物粒子の製造方法においては、電極間に提供された電解質溶液に定電圧パルス電解を行って、電極の第1の電極または第2の電極で金属酸化物粒子の形成を発生させ、金属酸化物粒子を電解質溶液から分離している。この分離工程では、粒子を重力により経時で電解質溶液中で沈降させ、電解質溶液を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-531832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された沈降処理は金属酸化物粒子を沈殿させるために長時間必要であり、ナノ粒子の製造に時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、磁性ナノ粒子の製造に必要な時間を短縮することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による磁性ナノ粒子の洗浄分離方法は、処理装置内で磁性ナノ粒子を洗浄する工程であって、磁性ナノ粒子が収容された前記処理装置に洗浄液を導入する工程と、導入された前記洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物を撹拌する工程と、磁界中に配置された前記混合物に沈降処理を行う工程と、前記沈降処理で得た上澄み液を前記処理装置から流し出す工程と、を含み、前記洗浄液を導入する工程と前記撹拌する工程とは複数回行われ、最後に撹拌する工程を行った後には前記沈降処理を行う工程と前記上澄み液を流し出す工程とを行わず、前記処理装置から導出された前記混合物を分離装置の流路に流し、前記混合物に含まれる磁性ナノ粒子を磁界中に配置された前記流路の一部に堆積させて分離する分離工程をさらに含む。
【0007】
好ましい形態においては、前記流路を通過した前記混合物を前記処理装置に戻す工程をさらに含む。
【0008】
本発明の他の形態は、上記の洗浄分離方法により前記流路の一部に堆積した磁性ナノ粒子を前記流路の一部ごと所定場所に搬送する工程を含む、磁性ナノ粒子の製造方法である。
【0009】
好ましい形態においては、前記搬送する工程において、磁性ナノ粒子は乾燥装置に搬送され、前記乾燥装置により磁性ナノ粒子を乾燥させる工程をさらに含む。
【0010】
本発明の他の態様は、磁性ナノ粒子を洗浄するための処理装置と、磁性ナノ粒子を分離するための分離装置とを備え、前記処理装置は、洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物が収容される処理容器と、前記処理容器の下方に配置され、前記混合物に作用する磁界を生成する磁石とを備え、前記分離装置は、前記処理容器から導入された前記混合物が流れ、前記混合物に含まれる磁性ナノ粒子が堆積する流路の一部を構成する装置本体と、前記装置本体の下方に配置され、前記流路の前記一部を流れる前記混合物に作用する磁界を生成する磁石とを備える、磁性ナノ粒子の洗浄分離システムである。
【0011】
好ましい形態においては、前記分離装置の前記装置本体は、前記処理容器に接続されて前記混合物を導入する導入口と、前記導入口から導入された前記混合物が流される前記流路と、前記処理容器に接続されて前記流路を流れた前記混合物が前記処理容器に向けて導出される導出口とを備える。
【0012】
好ましい形態においては、前記装置本体は、支持手段から取り外し自由に設けられる。
【0013】
本発明の他の形態は、上記の磁性ナノ粒子の洗浄分離システムと、前記分離装置の前記装置本体が収容され前記流路に堆積したナノ粒子を乾燥させる乾燥装置とを備える磁性ナノ粒子の製造システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、磁性体ナノ粒子の製造に必要な時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る磁性ナノ粒子の洗浄分離システムを含む製造システムの概略構成を示す説明図である。
図2】処理容器の概略構成を示す側面図である。
図3】分離装置の側面図である。
図4】分離装置の装置本体の蓋部の斜視図であり、(A)は蓋部を平面、側面、正面から見た斜視図、(B)は蓋部を底面、側面、正面から見た斜視図である。
図5】分離装置の装置本体の本体部の平面、側面、正面から見た斜視図である。
図6】分離装置の平面図である。
図7】分離装置の装置本体が乾燥装置の棚板に載置された状態を示す側面図である。
図8】磁性ナノ粒子の洗浄分離方法及び製造方法を説明するフローチャートである。
図9】反応溶媒と磁性ナノ粒子との混合物から磁性ナノ粒子を分離する工程を説明するためのフローチャートである。
図10】磁性ナノ粒子を洗浄する工程を説明するためのフローチャートである。
図11】磁性ナノ粒子を洗浄する工程を説明するためのフローチャートである。
図12】磁性ナノ粒子を洗浄する工程を説明するためのフローチャートである。
図13】磁性ナノ粒子を洗浄する工程を説明するためのフローチャートである。
図14】洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物から磁性ナノ粒子を分離する工程及び乾燥装置に搬送する工程を説明するためのフローチャートである。
図15】洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物から磁性ナノ粒子を分離する工程及び乾燥装置に搬送する工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本発明の一実施形態の磁性ナノ粒子の洗浄分離システム10は磁性ナノ粒子混入液から磁性ナノ粒子を分離洗浄して磁性ナノ粒子を製造するためのものであり、分離装置20と、処理装置47とを有する。洗浄分離システム10は、回収タンクを構成する第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60B、溶媒回収タンク61と、廃液タンク62と、溶媒廃棄タンク63と、洗浄液供給タンク64に接続されている。洗浄分離システム10、洗浄分離システム10に接続される各タンク、反応器12、コントローラ53、洗浄分離システム10により製造された磁性ナノ粒子を乾燥させるための乾燥装置50等により、図1に示す製造システム11が構成されている。
【0017】
処理装置47は、処理容器40と処理容器用磁石45とを有する。処理容器40は、反応器12に導管125を介して接続されており、反応器12で製造された磁性ナノ粒子混入液が処理容器40に導入される。反応器12から導入される磁性ナノ粒子混入液は、反応溶媒と磁性ナノ粒子との混合物(磁性ナノ粒子を含む反応液)である。磁性ナノ粒子は、例えば、ニッケルナノ粒子、鉄ナノ粒子、コバルトナノ粒子等、磁性を有する金属ナノ粒子であり、反応器12において、一級アミン類、脂肪酸類等の反応溶媒を用いて液相合成方法により製造されるものである。なお、反応溶媒はこれに限定されず、磁性ナノ粒子の製造に用いられる既知の反応溶媒であってよい。製造される磁性ナノ粒子の平均粒子径は、10nm~500nmのものが好ましい。
【0018】
処理容器40では、反応溶媒と磁性ナノ粒子との混合物に沈降処理を行う。沈降処理とは、混合物を静置して磁性ナノ粒子を処理容器40の底壁41の上面に沈降させる処理である。沈降処理による上澄み液を処理容器40から排出して沈降物である磁性ナノ粒子を得たのち、その沈降物に洗浄液を加えて撹拌、沈降処理、上澄み液の流し出しを行って、磁性ナノ粒子を洗浄する。洗浄液は、例えばイソプロピルアルコール(IPA)が用いられるが、ナノ粒子の洗浄時に用いられる既知の洗浄液であってよい。この洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物に沈降処理を行い、上澄み液を処理容器40から導出する。洗浄液の導入、撹拌、沈降処理、上澄み液の導出は複数回行われる場合がある。最後の回の撹拌の後には、沈降処理は行われずに洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物が処理容器40から導出される。すなわち、処理容器40からは、反応溶媒と磁性ナノ粒子との混合物の上澄み液、洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物の上澄み液、洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物(区別しない場合には「磁性ナノ粒子混入液」と言う。)が、分離装置20に向けて導出される。
【0019】
図2に示すように、処理容器40は、円筒形状であって、底壁41と、底壁41の周縁から立設する周壁42と、上壁43とを有する。底壁41は、水平面に対して斜めに傾斜している。本実施形態の処理容器40は1100Lの容量を有する。処理容器40内には電動モータ式の撹拌機44が設けられ、処理容器40内に収容される洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物を撹拌して磁性ナノ粒子の洗浄を行う。
【0020】
処理容器40の底壁41の下方には処理容器用磁石45が設けられている。処理容器用磁石45は、底壁41の底面に対応する大きさを有し、移動機構46により底壁41に対して近接、離反自由である。移動機構46は、例えば油圧式や電動式のジャッキやアクチュエータから構成されており、処理容器用磁石45の底壁41への近接時には、処理容器用磁石45の上面が底壁41に沿うように処理容器用磁石45を水平方向に対して傾斜させて上昇させる。処理容器用磁石45として、例えば、電磁石、永久磁石が用いられるが、磁界を生成して磁性ナノ粒子との間に吸引力を生じさせることができるものであればどのようなものでもよい。処理容器用磁石45が底壁41へ近接したときに、処理容器40に収容された磁性ナノ粒子混入液が磁界中に配置される。磁界処理容器用磁石45が生成する磁界の強さは、磁性ナノ粒子混入液が磁界中に配置された時に磁性ナノ粒子に吸引力を作用させることができる強さである。沈降処理を行う際に処理容器用磁石45を処理容器40の底壁41に近接させて処理容器用磁石45の吸引力を磁性ナノ粒子に作用させることにより、処理容器用磁石45を用いない場合に比べて沈降処理に必要な時間が大幅に短縮される。
【0021】
処理容器40の上壁には、処理容器40に洗浄液を供給するための洗浄液供給タンク64が導管120を介して接続されている。導管120には開閉弁101が設けられている。開閉弁101は電磁式、油圧式等の既知の自動バルブが用いられ、コントローラ53によりその動作が制御される。なお、後述する開閉弁102、106~108は開閉弁101と同様の構成を有する。本実施形態では洗浄液供給タンク64は約10Lの容量のものを用いているが、必要な量の洗浄液が収容できればよい。
【0022】
分離装置20は、詳細は後述するが、装置本体21を備えている。本実施形態では2つの装置本体21A、21B(区別する必要のないときは「装置本体21」という。)を備えており、装置本体21A、21Bは処理容器40と導管121により接続されている。なお、装置本体21の数は本実施形態には限定されず、1つでもよく、3つ以上設けられていてもよい。
【0023】
導管121は一端側の端部が、処理容器40の周壁42の下部であって、斜めに傾いた底壁41の最も下側に対応する位置に接続されている。導管121の他端側の端部は二股に分岐した分岐管121a、121bであり、分岐管121a、121bが装置本体21A、21Bの導入口24にそれぞれ接続されている。導管121の分岐箇所には切替手段を構成する切替弁100が設けられ、処理容器40から導出される磁性ナノ粒子混入液がいずれかの装置本体21A、21Bへ流れるように流れを切り替える。切替弁100は、既知の切替弁が用いられ、例えばボール式の三方弁である。本実施形態では手動の切替弁を用いており、作業者が切替弁を操作して磁性ナノ粒子混入液の流れの切替えを行っているが、コントローラ53により制御可能な自動切替弁を用いても良い。導管121の切替弁100と処理容器40の間の所定箇所にはポンプ110及び開閉弁102が設けられている。ポンプ110は例えばエア駆動ポンプ等の既知のポンプが用いられ、コントローラ53によりその動作が制御される。ポンプ110は、例えば50L/分の吐出量に設定されている。
【0024】
分離装置20の各装置本体21A、21Bは、導管122を介して第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60B、溶媒回収タンク61、廃液タンク62、処理容器40と接続されている。導管122の一端側の端部は二股に分岐した分岐管122a、122bであり、各分岐管122a、122bが各装置本体21A、21Bの導出口31に接続されている。さらに、導管122は第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60B、溶媒回収タンク61、廃液タンク62に接続する分岐管122c~122fを有している。導管122の各タンク60A、60B、61、62への分岐箇所にはそれぞれ三方弁103~105が設けられており、各三方弁103~105を制御して装置本体21を通過した磁性ナノ粒子混入液を各タンク60A、60B、61、62に向けて流すことができる。また、導管122は処理容器40に接続する導管126を有しており、分岐箇所には三方弁109が設けられている。三方弁109は三方弁103よりも上流側に設けられている。処理容器40、分離装置20、及びそれぞれを接続する導管121、導管122の一部、導管126により洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物が循環する循環路が形成される。なお、導管126は反応器126に接続されて、反応器126、導管125、処理容器40、分離装置20、及びそれぞれを接続する導管121、導管122の一部、導管126による循環路が形成されてもよい。三方弁103~105、109は電磁式であり、コントローラ53によりその動作が制御される。廃液タンク62と三方弁103との間には、廃液タンク62に装置本体21を通過した磁性ナノ粒子混入液を吸引するためのポンプ112が設けられている。
【0025】
第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60Bは処理容器40と導管123を介して接続されており、各タンク60A、60Bに収容された洗浄液を処理容器40に戻している。この導管123は、一端側が二股に分岐した分岐管123a、123bに形成されており、各分岐管123a、123bは第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60Bに接続され、各分岐管123a、123bには開閉弁106、107が設けられている。また、導管123の他端側が処理容器40の上壁に接続されており、導管123の処理容器40と分岐箇所との間にはポンプ111が設けられている。さらに、溶媒回収タンク61は溶媒廃棄タンク63に導管124で接続され、溶媒回収タンク61に収容された反応溶媒が溶媒廃棄タンク63へ向けて送られる。導管124には開閉弁108とポンプ113が設けられている。本実施形態では、第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60Bは約600Lの容量、溶媒回収タンク61は約1100Lの容量のものを用いているが、これに限定されない。なお、本実施形態では第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60Bは導管123により処理容器40に接続されているが、反応器12に接続されていてもよい。この場合、第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60Bに収容された洗浄液は反応器12、導管125を介して処理容器40に導入される。なお、ポンプ111~113は例えばエア駆動ポンプ等の既知のポンプが用いられる。
【0026】
分離装置20について説明する。図3図6に示すように、分離装置20は、磁性ナノ粒子混入液から磁性ナノ粒子を分離するためのものであって、装置本体21と、装置本体21を支持する支持手段である板状支持部材33と、装置本体21の下方に配置され装置本体21に対して近接、離反自由に設けられる磁石35と、磁石35を装置本体21に対して近接、離反させる移動機構36とを備える。
【0027】
装置本体21は、図6に示すように、一例として平面から見た形状が略矩形状であって、長手方向の一端側は2つの角部が切り落とされて略三角形の先細り形状の外形を有している。装置本体21の長手方向の他方側に磁性ナノ粒子混入液を導入する導入口24が形成され、一方側に磁性ナノ粒子混入液を導出する導出口31(図5)が形成されている。以下の説明では、導入口24が設けられる側を上流側、導出口31が設けられる側を下流側とも言う。図3においては、右側が上流側、左側が下流側であり、上流側から下流側に向かう方向が磁性ナノ粒子混入液が流れる方向である。
【0028】
装置本体21は、蓋部22と本体部30とを備えている。図4(A)、図4(B)に示すように、蓋部22は、上壁22aと、上壁22aの周縁に下向きに突出する縁部22bとを備えている。上壁22aの上流側には導入口24が形成されており、導入口24には導入管25が挿通されて導入管25の一端部が本体部30内に位置している。なお導入管25の一端部は、導入口24と連通するように上壁22aの上面に溶着等で取り付けられていてもよい。この導入管25の他端部は、コネクタ25aを介して、処理容器40と接続する導管121の分岐管121a、121bと着脱可能に連結される。また、上壁22aには、磁性ナノ粒子混入液から発生する気体を抜くための抜き孔26が形成され、上面に作業者が蓋部22を本体部30に着脱するための取っ手27が設けられている。
【0029】
図4(B)に示すように、蓋部22の上壁22aの下面には、縁部22bに沿って環状に突条部22cが設けられており、縁部22bと突条部22cとの間に後述する本体部30の周壁30b及びリブプレート30dが嵌め込まれる。蓋部22の幅方向の両側の突条部22cの間には、蓋部22の幅方向に伸びる円筒部材23が配置されている。円筒部材23の周壁に設けられた貫通孔(図示せず)は導入管25の一端部と連結されており、円筒部材23の中空部と導入管25の内部とが連通している。円筒部材23の周壁30bには、円筒部材23の長さ方向の全長にわたって中空部と連通するスリット23aが形成されている。スリット23aは、円筒部材23の断面において、円筒部材23の周壁の下流側に設けられており、導入管25を介して導入口24から導入された磁性ナノ粒子混入液が装置本体21の幅方向に広がって本体部30に落下するようになっている。
【0030】
本体部30は、図5に示すように、平面から見た形状が蓋部22に対応する形状であって、底壁30aと底壁30aの縁から上方に立設する周壁30bとを備えている。周壁30bの下流側の先端には導出口31が形成されており、円筒部材23から流れ出た磁性ナノ粒子混入液は本体部30の底壁30aを通って導出口31へ向かう。すなわち、本体部30内が磁性ナノ粒子混入液の流路を構成する。本体部30の内部、すなわち流路は、例えば50L/分の流量で磁性ナノ粒子混入液を流すことが出来る程度の大きさを有しており、例えば、本体部30の長手方向の長さが50cm、幅が20cm、本体部30の高さが30cmに設定される。後述する磁石35が底壁30aの下方に位置することで、磁性ナノ粒子混入液に含まれる磁性ナノ粒子が磁石35との間の吸引力により流路である底壁30aの一部に堆積する。装置本体21の長手方向に沿う幅方向両側の周壁30bの下部には装置本体21を板状支持部材33に係止するための板状の係止部材30cが一対に設けられている。周壁30bの下流側の上端縁及び上流側の上端縁の角部には補強用のリブプレート30dが設けられている。
【0031】
図3に示すように、導出口31の外側には略L字形状の導出管32の一端32bが溶接等の取り付け手段により接続されている。導出管32の他端32aは流路が水平方向に沿う姿勢において底壁30aよりも下方に位置するように設けられ、下向きに開口している。導管122の分岐管122a(または122b)の先端には上面が開口した広径部122gが設けられており、導出管32の他端32aは導管122の分岐管122a(または122b)の広径部122gに挿入されている。磁性ナノ粒子混入液は導出口31から導出管32を通って分岐管122a(または122b)の広径部122gに落下することで分岐管122a(または122b)を流れる。
【0032】
支持手段は、所定の間隔を空けて平行に設けられた一対(2本)の棒状の板状支持部材33であり、図3に示すように、水平方向に対して所定の角度θ傾いた姿勢で基台37に支持されている。装置本体21の係止部材30cを導出口31が下側、導入口24が上側になるように板状支持部材33の上面に載置することにより、装置本体21が板状支持部材33に着脱自由に支持される。装置本体21は板状支持部材33に支持された状態で、導入口24が導出口31よりも上位置で流路が水平方向に対して所定の角度θの傾きを有しており、磁性ナノ粒子混入液が導入口から導出口に向けて流れやすくなっている。板状支持部材33の水平方向に対する傾き角度θは、係止部材30cと板状支持部材33との間の摩擦力により装置本体21A、21Bが滑り落ちない角度に設定されており、1度以上、20度以下に設定される。なお、支持手段は本実施形態の板状支持部材33には限定されず、装置本体21を支持できれば任意の形態であってよい。
【0033】
図6に示すように、2本の板状支持部材33の間であって装置本体21の下方には、磁石支持板34に設けられた磁石35が配置されている。磁石支持板34は略矩形状の板部材であり、下流側の端部が基台37に設けられた軸37aに軸支されて、軸37a回りに回動自由である。磁石支持板34の上面であって本体部30の底壁30aの上流側及び下流側の2箇所に、棒状の磁石35が2つ接着剤等で取り付けられている。磁石35としては、例えば、電磁石、永久磁石が用いられるが、磁界を生成して磁性ナノ粒子との間に吸引力を生じさせることができるものであればどのようなものでもよい。磁石35が装置本体21に近接した時に、装置本体21を流れる磁性ナノ粒子混入液が磁界中に配置される。磁石35が生成する磁界の強さは、磁性ナノ粒子に吸引力を作用させることができる強さである。なお、図6においては、説明のために移動機構36の記載を省略している。
【0034】
移動機構36は、磁石35が取り付けられた磁石支持板34を装置本体21に対して近接、離反させるものであり、図3に示すように、ボルト36aと、ボルト36aと一体に設けられボルト36aを回転させるためのハンドル36bとを備えている。ボルト36a及びハンドル36bは基台37に回動自由に支持されている。磁石支持板34の上流側の端縁には突出片34aが連結されており、突出片34aには移動機構36のボルト36aが挿入されるネジ穴34bが形成されている。ハンドル36bの一方向への回転により磁石支持板34が軸37a回りに上向きに回動して磁石35が装置本体21の底壁30aに対して近接し、ハンドル36bの逆方向への回転により磁石支持板34が軸37a回りに下向きに回動して磁石35が装置本体21の底壁30aに対して離反する。作業者は、磁性ナノ粒子混入液が装置本体21の流路に流れるときに、ハンドル36bを操作して装置本体21に対して磁石35を近接させる。
【0035】
本実施形態では、分離装置20として、装置本体21と、板状支持部材33と、磁石35と、移動機構36とをそれぞれ1つずつ有する組を2組(組A、組B)備えており、組Aには装置本体21A、板状支持部材33Aと、磁石35Aと、移動機構36Aとが属し、組Bには装置本体21B、板状支持部材33Bと、磁石35Bと、移動機構36Bとが属する。分離装置20は、さらに取替用の装置本体21を備えていてもよい。本実施形態では3つの取替用の装置本体21A’、21A’’、21B’を備えている。装置本体21A’、21A’’は組Aの板状支持部材33Aに取付けられ、装置本体21B’は組Bの板状支持部材33Bに取付けられる。なお、分離装置20に含まれる組の数は2組に限らず、1組でもよく、3組以上含まれていてもよい。
【0036】
磁性ナノ粒子混入液が洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物の場合には、各組A、Bの2つの装置本体21A、21Bのうち一方(例えば装置本体21A)にのみ磁性ナノ粒子混入液を流し、装置本体21Aに磁性ナノ粒子が所定量堆積すると、切替弁100を切替えて、他方の装置本体21Bに磁性ナノ粒子混入液を流す。磁性ナノ粒子が堆積した装置本体21Aは板状支持部材33Aから取り外されて乾燥装置50に搬送され、板状支持部材33Aには取替用の装置本体21A’が取り付けられる。他方の装置本体21Bに磁性ナノ粒子が所定量堆積すると、切替弁100を切替えて板状支持部材33Aに取り付けられた一方の装置本体21A’に磁性ナノ粒子混入液を流す。磁性ナノ粒子が堆積した装置本体21Bは板状支持部材33Bから取り外されて乾燥装置50に搬送され、板状支持部材33Bには取替用の装置本体21B’が取り付けられる。この動作を繰り返して磁性ナノ粒子を分離し、取り外された装置本体21を順次乾燥装置50に搬送する。分離装置20に含まれる組の数が1組の場合には、切替弁100は設けられていなくてもよく、磁性ナノ粒子が装置本体21Aに所定量堆積すると、ポンプ110により混合物の流れを停止させて装置本体21Aを取り外して取替用の装置本体21A’を取付ける。また、分離装置20に含まれる組の数が3組以上の場合には、切替弁100により混合物が流れる組が順に切替えられて、2組の場合と同様に装置本体21の取替えが行われる。
【0037】
なお、装置本体21A、21Bの本体部30のみを取替用として備えていてもよい。この場合、蓋部22は2組のみ備え、洗浄分離システム10の動作開始時に板状支持部材33A、33Bそれぞれに取り付けられている装置本体21A、21Bと、取替用の装置本体21A’、21A’’、21B’とで蓋部22を共用する。また、上記の組を3組以上備えていてもよく、これらの組を2以上の群に分けて、切替弁100によりいずれかの群に磁性ナノ粒子混入液を流す構成であってもよい。
【0038】
乾燥装置50は、磁性ナノ粒子の製造工程において乾燥に用いられる既知の温風乾燥装置50であり、温風乾燥装置50の下部に設けられた空気流入口(図示せず)から空気を取り入れる構造となっている。温風乾燥装置50内には、図7に示すように棚板51が設けられており、棚板51の下面に取り付けられたコイル(図示せず)に蒸気を通すことにより加熱熱風が発生する。棚板51の上面にはスペーサー52が取り付けられている。スペーサー52は、合成樹脂等の素材から構成される。分離装置20の装置本体21のうち、本体部30のみが乾燥装置50の棚板51上に載置され、蓋部22は取り外される。本体部30は、底壁30aの上流側の側縁がスペーサー52上に当接し、導出管32の他端32aが棚板51に当接した姿勢で、スペーサー52の上方に底壁30a全体が位置するように棚板51に載置される。図7には堆積した磁性ナノ粒子mが示されている。
【0039】
本体部30の導出管32は底壁30aよりも下方に位置しているので、棚板51と本体部30との間に空間Sが形成され、この空間Sにより、空気により加熱された棚板51の熱が底壁30aに直接伝わるのを防いでいる。また、スペーサー52により棚板51と底壁30aとが直接接触するのを防ぎ、接触部分から熱が底壁30aに伝わるのを防いでいる。本体部30の底壁30aに直接棚板51が当接すると、底壁30aに堆積した磁性ナノ粒子の棚板51に近い側と遠い側とで温度が不均一となり磁性ナノ粒子の凝集の原因となるが、本実施形態では前記空間Sやスペーサー52により棚板51の熱が底壁30aに直接伝わらないようにして、磁性ナノ粒子の凝集を防いでいる。
【0040】
コントローラ53は、開閉弁101、102、106~108、三方弁103~105、109、磁石35、45の移動機構36、46、撹拌機44等の各部と図示しない通信線により接続されてこれらの動作の制御を行うものであり、制御部と記憶部とを有し、CPUやメモリなどを有するコンピュータにより実現される。記憶部には、運転操作や各部の動作のタイミング等を制御するためのプログラムや制御のためのパラメータが記憶されている。パラメータは、例えば、沈降処理に要する所定の時間、装置本体の設置確認、撹拌開始・停止、洗浄液の投入、払い出しなどである。また、コントローラ53は、作業者に上記内容を通知するための通知手段や、作業者からの動作続行指示が入力される入力手段として、図示しないタッチパネルやアラーム、ブザーを備えている。
【0041】
次に、図1に示す洗浄分離システム10を含む製造システム11を用いた磁性ナノ粒子の洗浄分離方法及び磁性ナノ粒子の製造方法を図8図15に示すフローチャートを用いて説明する。これらの動作(図中、各動作を「ST」で示す。)は、磁性ナノ粒子を製造する毎に繰り返し実行される。初期状態においては、第1の洗浄液回収タンク60A、第2の洗浄液回収タンク60Bには、前回の磁性ナノ粒子の製造において3回目と4回目の洗浄時に用いた洗浄液が回収されて収容され、洗浄液供給タンク64には未使用の洗浄液が収容され、開閉弁101、102、106~108は全て閉になっている。
【0042】
洗浄分離システム10の動作は、図8に示すように、反応溶媒と磁性ナノ粒子との混合物から磁性ナノ粒子を分離する工程(ST1)、反応溶媒から分離された磁性ナノ粒子を洗浄する工程(ST2)、洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物から磁性ナノ粒子を分離する工程及び乾燥装置50に搬送する工程(ST3)、乾燥工程(ST4)、の順に行われる。
【0043】
まず、反応溶媒と磁性ナノ粒子との混合物から磁性ナノ粒子を分離する工程(ST1)について図9のフローチャートを用いて説明する。反応器12から処理容器40に反応溶媒と磁性ナノ粒子との混合物が導入されると(ST11)、コントローラ53は、処理容器用磁石45の移動機構46を制御して、処理容器40の底壁41に下方から磁石45を近づけ(ST12)、所定時間静置して沈降処理を行う(ST13)。これにより、処理容器40の底壁41に堆積する磁性ナノ粒子と上澄み液とを得る。得られた上澄み液は、沈降処理により沈降しなかった磁性ナノ粒子を含む反応溶媒である。
【0044】
コントローラ53は、沈降処理に必要な所定の時間が経過したことを検知すると、タッチパネル等の通知手段により、作業者に沈降処理が終了し装置本体21を設置することを通知する(ST14)。作業者は通知を確認すると、装置本体21A、21Bを設置し、装置本体21Aに上澄み液が流れるように切替弁100を操作する。また、移動機構36Aのハンドル36bを操作して磁石35を装置本体21に近接させる(ST15)。作業者は、コントローラ53にタッチパネル等の入力手段により動作続行指示を出す。
【0045】
コントローラ53は、分離装置20から溶媒回収タンク61へ上澄み液が流れるように三方弁103、104、105、109を切り替える。そして、コントローラ53が開閉弁102を開とし、ポンプ110を駆動させると(ST16)、上澄み液は処理容器40から導管121に流れ、分離装置20の装置本体21Aに導入される。上澄み液に含まれる磁性ナノ粒子は装置本体21Aの底壁30aに近接した磁石35との間の吸引力により流路である底壁30aの一部に堆積する(ST17)。これにより、上澄み液に含まれる磁性ナノ粒子が分離される。装置本体21Aを通過した上澄み液は導管122を通って溶媒回収タンク61へ収容される。コントローラ53は処理容器40内に設けられたセンサにより、処理容器40内の上澄み液が全て導出されたことを検知すると(ST18)、開閉弁102を閉とし、ポンプ110を停止させて(ST19)、次の工程へ進む。上澄み液が処理容器40内から全て導出されたことを検知していない場合は、検知するまでST17に待機する。
【0046】
なお、ポンプの吸引速度は反応溶媒や処理容器の容量等に応じて適宜設定されている。また、溶媒回収タンク61へ収容された反応溶媒は、開閉弁108、ポンプ113により溶媒廃棄タンク63へ移送された後廃棄されるが、溶媒回収タンク61へ収容後に再利用してもよい。
【0047】
次に、反応溶媒から分離された磁性ナノ粒子を洗浄する工程(ST2)を図10図13のフローチャートを用いて説明する。この工程は、1~3回目の撹拌洗浄及び上澄み液から磁性ナノ粒子を分離する工程(図10~12)、4回目の撹拌洗浄をする工程(図13)を含む。本実施形態では、処理容器40に堆積した磁性ナノ粒子の撹拌を4回行って磁性ナノ粒子を洗浄しているが、撹拌回数は製造される磁性ナノ粒子や反応溶媒の種類により予め適宜設定されて、記憶部に記憶されている。
【0048】
1回目の撹拌洗浄及び上澄み液から磁性ナノ粒子を分離する工程について図10のフローチャートを用いて説明する。コントローラ53は、開閉弁106を開にしてポンプ111を動作させ、第1の洗浄液回収タンク60Aに収容された洗浄液を導管123を介して処理容器40に導入する(ST21)。コントローラ53は、図示しないセンサを用いて、洗浄液が全て第1の洗浄液回収タンク60Aから導出されたことを検知して開閉弁106を閉とする。次に、処理容器用磁石45の移動機構46を制御して、処理容器40の底壁41から処理容器用磁石45を離す(ST22)。そして、撹拌機44を動作させて磁性ナノ粒子と洗浄液とを撹拌して洗浄する(ST23)。コントローラ53は処理容器用磁石45の移動機構46を制御して、処理容器40の底壁41に磁石45を近接させ(ST24)、得られた洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物を所定時間静置して沈降処理を行う(ST25)。これにより、処理容器40の底壁41に堆積する磁性ナノ粒子と上澄み液とが得られる。得られた上澄み液は、沈降処理により沈降しなかった磁性ナノ粒子を含む洗浄液である。
【0049】
コントローラ53は、分離装置20から廃液タンク62へ上澄み液が流れるように三方弁103、104、105、109を切り替える。コントローラ53が開閉弁102を開とし、ポンプ110を駆動させると(ST26)、上澄み液が処理容器40から導出し、導管121を通って分離装置20の装置本体21Aに流れ、上澄み液に含まれる磁性ナノ粒子は装置本体21Aの底壁30aに近接した磁石35との間の吸引力により流路である底壁30aの一部に堆積する。これにより、上澄み液に含まれる磁性ナノ粒子が分離回収される。装置本体21Aを通過した上澄み液は導管122を通って廃液タンク62へ収容される(ST27)。コントローラ53は処理容器40内に設けられたセンサにより、処理容器40内の上澄み液が全て導出されたことを検知すると(ST28)、開閉弁102を閉とし、ポンプ110を停止させて(ST29)、次のステップST31へ進む。上澄み液が処理容器40内から全て導出されたことを検知していない場合は、検知するまでST28に待機する。
【0050】
次に、2回目の撹拌洗浄及び上澄み液から磁性ナノ粒子を分離する工程について図11のフローチャートを用いて説明する。コントローラ53は、開閉弁107を開にしてポンプ111を動作させ、第2の洗浄液回収タンク60Bに収容された洗浄液を導管123を介して処理容器40に導入する(ST31)。コントローラ53は、図示しないセンサを用いて、洗浄液が全て第2の洗浄液回収タンク60Bから導出されたことを検知して開閉弁107を閉とする。そして、ST32~ST39の動作を行うが、ST32~ST39の動作はST22~ST29と同じであるため、説明を省略する。
【0051】
次に、3回目の撹拌洗浄及び上澄み液から磁性ナノ粒子を分離する工程について図12のフローチャートを用いて説明する。コントローラ53は、開閉弁101を開にして洗浄液供給タンク64に収容された洗浄液を導管120を介して処理容器40に導入する(ST41)。コントローラ53は、図示しないセンサを用いて、必要な量の洗浄液が洗浄液供給タンク64から導出されたことを検知して開閉弁101を閉とする。次に、ST42~ST49の動作を行うが、ST42~ST45、ST48~ST49の動作はST22~ST25、ST27~ST29の動作と同様であるため説明を省略し、ST46、ST47の動作を以下に説明する。
【0052】
コントローラ53は、分離装置20から第1の洗浄液回収タンク60Aへ上澄み液が流れるように三方弁103、104、105、109を切り替える。コントローラ53が開閉弁102を開とし、ポンプ110を駆動させると(ST46)、上澄み液が処理容器40から導出される。このときの上澄み液は、導管121を通って分離装置20の装置本体21Aに流れ、上澄み液に含まれる磁性ナノ粒子は装置本体21Aの底壁30aに近接した磁石35との間の吸引力により流路である底壁30aの一部に堆積することで分離回収される。装置本体21Aを通過した上澄み液は導管122を通って第1の洗浄液回収タンク60Aへ収容される(ST47)。この第1の洗浄液回収タンク60Aへ収容された洗浄液は、次の磁性ナノ粒子の製造時の1回目の撹拌洗浄時に用いられる。
【0053】
図10図12に示す工程により、装置本体21Aの本体部30の底壁30aには磁性ナノ粒子が堆積する。作業者は、図10図12の工程が終了した後に、または図10図12の各工程が終了する毎に、装置本体21A内に回収された磁性ナノ粒子の量を確認する。もしその量が所定の量を超えていれば、装置本体21Aを板状支持部材33Aから取り外して磁性ナノ粒子を装置本体21Aごと搬送する。磁性ナノ粒子は装置本体21Aから取り出され、乾燥装置50に搬送する。以下の説明では、装置本体21Aが板状支持部材33Aから取り外されて板状支持部材33Aには取替用の装置本体21A’が取付けられたものとする。
【0054】
次に、図13に示すように4回目の撹拌洗浄の工程を行うが、ST51~ST53は3回目の洗浄のST41~ST43と同様であるため、説明を省略する。すなわち、洗浄液が導入されて撹拌機44により撹拌が行われると、4回目の撹拌洗浄の工程は終了する。
【0055】
次に、洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物から磁性ナノ粒子を分離する工程及び乾燥装置50に搬送する工程(ST3)について、図14図15のフローチャートを用いて説明する。ST43の終了時には、処理容器40には撹拌後の洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物が収容されている。
【0056】
コントローラ53は、分離装置20から処理容器40へ混合物が流れるように三方弁109を切り替える。そして、コントローラ53が開閉弁102を開とし、ポンプ110を駆動させると(ST61)、混合物が処理容器40から導出する。このとき混合物は、導管121を通って分離装置20の装置本体21A’に流れ、混合物に含まれる磁性ナノ粒子は装置本体21A’の底壁30aに近接した磁石35との間の吸引力により流路である底壁30aの一部に堆積する。これにより混合物に含まれる磁性ナノ粒子が分離される。装置本体21A’を通過した混合物は導管126を通って処理容器40へ流される。すなわち、混合物は、処理容器40、分離装置20、及びそれぞれを接続する導管121、導管122の一部、導管126により形成される循環路を循環する(ST62)。
【0057】
コントローラ53はタッチパネル等の通知手段により装置本体21を切替える必要があるか否かを作業者が確認するよう通知する(ST63)。作業者は装置本体21に堆積した磁性ナノ粒子の量を確認して装置本体21を切替える必要があるか否かを判断し(ST64)、切替えが必要と判断した場合には、装置本体21Bに混合物が流れるように切替弁100を操作する。また、移動機構36Bのハンドル36bを操作して磁石35を装置本体21Bに近接させる(ST65)。すると、混合物は、導管121を介して分離装置20の装置本体21Bに流れ、混合物に含まれる磁性ナノ粒子は装置本体21Bの底壁30aに近接した磁石35との間の吸引力により流路である底壁30aの一部に堆積し、磁性ナノ粒子が分離される。装置本体21Bを通過した混合物は導管126を通って処理容器40に戻される(ST66)。
【0058】
また、ST64において所定の量の磁性ナノ粒子が堆積していない場合、作業者は磁性ナノ粒子の分離が継続して行われる必要があるか又は分離が終了したかを判断する(ST72)。分離を継続して行う場合には所定量の磁性ナノ粒子が装置本体21A’に堆積するまでST64で待機する。作業者が分離が十分に行われて分離処理が終了したと判断した場合には、ST81に進む。
【0059】
装置本体21Bに混合物が流れている間に、作業者は、分離装置20の磁石35の移動機構36のハンドル36bを回転させて磁石35を装置本体21A’から離反させ、磁性ナノ粒子を装置本体21A’ごと板状支持部材33Aから取り外し、乾燥装置50へ搬送する(ST67)。また板状支持部材33には、取替用の装置本体21A’’を取り付ける。なお、装置本体21A’の蓋部22を取り外して磁性ナノ粒子を装置本体21A’の本体部30ごと乾燥装置50へ搬送してもよい。
【0060】
作業者は装置本体21Bに堆積した磁性ナノ粒子の量を確認して装置本体21を切替える必要があるか否かを判断し(ST68)、切替えが必要な場合には、装置本体21A’’に混合物が流れるように切替弁100を操作する。また、移動機構36Aのハンドル36bを操作して磁石35を装置本体21A’’に近接させる(ST69)。混合物は、導管121を介して分離装置20の装置本体21A’’に流れ、混合物に含まれる磁性ナノ粒子は装置本体21A’’の底壁30aに近接した磁石35との間の吸引力により流路である底壁30aの一部(底壁30aの磁石35に対応する部分やその周辺部分)に堆積し、磁性ナノ粒子が分離される。装置本体21A’’を通過した混合物は導管126を介して処理容器40に戻される(ST70)。
【0061】
また、ST68において所定の量の磁性ナノ粒子が堆積していない場合、作業者は磁性ナノ粒子の分離が継続して行われる必要があるか又は分離が終了したかを判断する(ST73)。分離を継続して行う場合には所定量の磁性ナノ粒子が装置本体21Bに堆積するまでST68で待機する。作業者が分離が十分に行われて分離処理が終了したと判断した場合には、ST81に進む。
【0062】
装置本体21A’’に混合物が流れている間に、作業者は、分離装置20の磁石35の移動機構36のハンドル36bを回転させて磁石35を装置本体21Bから離反させ、装置本体21Bを板状支持部材33Bから取り外し、乾燥装置50へ搬送する(ST71)。また板状支持部材33Bには、取替用の装置本体21B’を取り付ける。そして、ST64以降の動作を繰り返す。
【0063】
ST64,ST68において、作業者が磁性ナノ粒子の分離処理が終了したと判断した場合には、作業者はコントローラ53に動作終了の指令を出す。コントローラ53は、三方弁103,104,109を切替え、ポンプ110を駆動させ、導管121、装置本体21、導管122を介して第2の洗浄液回収タンク60Bに洗浄液を収容する(ST81)。第2の洗浄液回収タンク60Bに収容された洗浄液は、次の磁性ナノ粒子の製造時の2回目の撹拌洗浄時に用いられる。
【0064】
乾燥工程(ST4)においては、図7に示すように、乾燥装置50の棚板51に装置本体21並べられる。乾燥装置50は、設定された装置内の温度、時間等に基づき、磁性ナノ粒子の乾燥を行う。乾燥装置50の動作が完了すると、作業者は各装置本体21から磁性ナノ粒子を取り出して乾燥した磁性ナノ粒子を得る。このように、乾燥した磁性ナノ粒子が製造される。
【0065】
なお、上記の磁性ナノ粒子の洗浄分離方法及び磁性ナノ粒子の製造方法の説明では、分離装置20は装置本体21、磁石35,移動機構36等を含む組を2組有する例を説明しているが、組の数が1組の場合には、作業者は装置本体21に堆積した磁性ナノ粒子の量を確認して装置本体21を切替える必要があるか否かを判断し(ST64)、切替えが必要な場合には、ST65で切替弁100を操作する前に、ポンプ111の動作を停止させて混合物が処理容器40から流れ出ないようにする。装置本体21を切替えた後、ポンプ111の動作を再開させ、ST64に戻る。また、組の数が3組以上ある場合は、各組に順に混合物が流れるように切替弁100により混合物の流れを切替える。
【0066】
また、本実施形態の製造システム11は乾燥装置50を備え、分離装置20で分離された磁性ナノ粒子は乾燥装置50に搬送されるが、搬送される場所は乾燥装置50に限定されず、磁性ナノ粒子に次の処理を行うための処理容器など、任意の場所に搬送されてもよい。
【0067】
本実施形態の洗浄分離システム10によれば、磁性ナノ粒子の製造に要する時間を短縮することができる。
【0068】
本実施形態によれば、処理容器40での沈降処理時に処理容器用磁石45により磁性ナノ粒子混入液に吸引力を作用させることで、処理容器用磁石45がない場合に比べ、沈降処理に要する時間を短くすることができる。また、分離された磁性ナノ粒子を装置本体21ごと取り外して搬送できるため、従来技術のように、分離した磁性ナノ粒子を搬送容器に移し替える手間がなく、作業効率が向上し、製造時間が短縮される。また、分離装置20の装置本体21を複数設け、磁性ナノ粒子混入液を流す装置本体21を切替弁100により切替えており、他の装置本体21に磁性ナノ粒子混入液が流れている間に、すでに所定の量の磁性ナノ粒子が堆積した装置本体21を取り外して搬送することができるため、分離に要する時間を短縮できる。
【0069】
また、複数の装置本体21に小分けに磁性ナノ粒子を分離しているため、持ち運びがしやすい。さらに、分離する磁性ナノ粒子の量に応じて取替用の装置本体2を備えることで、所望の量の磁性ナノ粒子を分離することができる。
【0070】
洗浄が終了した後で洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物から磁性ナノ粒子を分離する際には、分離装置を通過した混合物は三方弁109および導管126を通って処理容器40に戻る。すなわち、混合物は、混合物は、処理容器40、分離装置20、及びそれぞれを接続する導管121、導管122の一部、導管126により形成される循環路を循環しており、混合物は分離装置20を何度も通過するため、磁性ナノ粒子を確実に分離装置20に堆積させることができる。また、分離装置20においては、磁石35を用いることで、流路に混合物や上澄み液を流しながら、混合物や上澄み液含まれる磁性ナノ粒子を確実に分離することができる。
【0071】
また、装置本体21を乾燥装置50内の棚板51に載置したときに、導管の一端が流路よりも下方に位置しているため、導管の一端により流路が持ち上げられて流路が棚板51に直接接触せず、堆積した磁性ナノ粒子に温度差が生じにくくなり、凝集を防ぐことができる。さらに、分離装置20の装置本体21の流路を傾けることで、混合物が導入口24から導出口31に向けて流れやすくなる。
【0072】
本実施形態の洗浄分離システム10は乾燥装置50を備えているため、磁性ナノ粒子を装置本体21ごと乾燥装置50に搬送して乾燥工程を行うことができる。
【0073】
また、本実施形態の洗浄分離システム10によれば、反応溶媒と磁性ナノ粒子との混合物の沈降処理で得られた上澄み液、または洗浄液と磁性ナノ粒子との混合物の沈降処理で得られた上澄み液を分離装置20に流し、上澄み液に含まれる磁性ナノ粒子を分離しているため、上澄み液から磁性ナノ粒子を分離しない場合に比べて磁性ナノ粒子の回収効率を向上させることができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 洗浄分離システム
11 製造システム
20 分離装置
21(21A、21B、21A’、21A’’、21B’) 装置本体
22 蓋部
24 導入口
30 本体部
31 導出口
32 導出管
33(33A、33B) 板状支持部材(支持手段)
35(35A、35B) 磁石
36(36A、36B) 移動機構
40 処理容器
45 処理容器用磁石
47 処理装置
100 切替弁(切替手段)
50 乾燥装置
51 棚板
53 コントローラ
60A第1の洗浄液回収タンク
60B第2の洗浄液回収タンク
61溶媒回収タンク
62 廃液タンク
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