(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086774
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】半導体素子の製造方法及び縦型MOSFET素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220602BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220602BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220602BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20220602BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01L29/78 652L
H01L29/78 658F
H01L29/78 658K
H01L29/78 652Q
H01L29/50 M
H01L21/285 301
H01L29/78 658Z
H01L29/78 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198963
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】509012577
【氏名又は名称】有限会社MTEC
(71)【出願人】
【識別番号】505220929
【氏名又は名称】アスカコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光治
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 兆
(72)【発明者】
【氏名】古澤 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】砂入 幹土
【テーマコード(参考)】
4M104
5F140
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104BB05
4M104BB14
4M104BB17
4M104CC01
4M104DD22
4M104DD31
4M104FF02
4M104FF16
4M104GG09
4M104HH15
5F140AA29
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5F140AC21
5F140AC23
5F140BA01
5F140BB02
(57)【要約】
【課題】半導体素子が形成されている薄いSi層と金属材料からなる基体部とからなり、フェースダウン実装に適した半導体素子の製造方法及び縦型MOSFET素子を提供する。
【解決手段】半導体素子の製造方法は、表層部に半導体素子の構成要素が形成されているSi基板100の主面側と仮基板6とを接合する第1接合工程と、前記表層部の深さに対応する厚さを残してSi基板の裏面側を除去することにより、その主面11側に半導体素子の構成要素が形成されているSi薄膜10を形成するSi薄膜化工程と、半導体素子の使用温度の上限を超えない温度においてSi薄膜の裏面と金属基板20とを接合する第2接合工程と、仮基板を除去する剥離工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層部に半導体素子の構成要素が形成されているSi基板の主面側と仮基板とを接合する第1接合工程と、
前記表層部の深さに対応する厚さを残して前記Si基板の裏面側を除去することにより、その主面側に前記半導体素子の構成要素が形成されているSi薄膜を形成するSi薄膜化工程と、
前記半導体素子の使用温度の上限を超えない温度において前記Si薄膜の裏面側と金属基板とを接合する第2接合工程と、
前記仮基板を除去する剥離工程と、
を含むことを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記Si薄膜の厚さは100μm以下である請求項1記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記金属基板は銅基板である請求項1又は2に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記Si薄膜化工程を行った後、前記Si薄膜の前記裏面にバリアメタルからなるバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程を含み、
前記第2接合工程は、前記バリアメタル層を介して前記Si薄膜と前記金属基板とを接合する請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記剥離工程を行った後に前記半導体素子を個別のチップに分離する分離工程を含み、
前記金属基板の裏面には樹脂からなる基材に粘着剤が塗布された粘着テープが貼り合わされており、
前記分離工程において分離された前記チップは前記粘着テープにより固定される請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記半導体素子は縦型構造のMOSFETであり、前記Si基板の前記主面にソース電極、ゲート電極及びドレイン電極が形成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記半導体素子は縦型構造のMOSFETであり、前記Si基板の前記主面にソース電極及びゲート電極が形成されており、裏面側にドレイン電極が形成される請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記半導体素子は縦型構造のMOSFETであり、前記Si基板の前記主面に少なくとも二つの独立したソース電極及びゲート電極が形成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
その主面に少なくともソース電極及びゲート電極が形成され、前記主面側の表層部にソース部及びゲート部が形成されているSi薄膜と、
前記Si薄膜の裏面にバリアメタル層を介して接合されている金属基板と、
を備え、
前記Si薄膜の厚さは100μm以下であり、前記金属基板が素子を支持する基体であることを特徴とする縦型MOSFET素子。
【請求項10】
前記金属基板は銅基板である請求項9記載の縦型MOSFET素子。
【請求項11】
前記Si薄膜の前記主面にソース電極、ゲート電極及びドレイン電極が形成されている請求項9又は10に記載の縦型MOSFET素子。
【請求項12】
前記Si薄膜の前記主面に少なくとも二つの独立したソース電極及びゲート電極が形成され、裏面にドレイン電極が形成されている請求項9又は10に記載の縦型MOSFET素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造方法及びMOSFET素子に関する。詳しくは、半導体素子が形成されている薄いSi層と金属材料からなる基体部とからなり、フェースダウン実装に適した半導体素子の製造方法及び縦型MOSFET素子に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)半導体素子の実装の小型化が進んでいる。小型化のためには、Si半導体素子はチップサイズパッケージとして形成されることが好ましい。例えば、縦型構造のMOSFET素子のチップサイズパッケージには、縦型素子の裏面に薄い金属層を形成し、貫通電極を形成することにより、縦型素子の裏面にあるドレイン電極を主面にもってくる構造とされているものがある。この構造においてはドレイン部の抵抗損失の最小化が重要であり、そのためには、Si層の厚さを薄くすることが重要となる。
【0003】
図11(a)は、従来の縦型MOSFET素子のチップサイズパッケージの構造の例を示している。縦型MOSFET素子300は、素子の基体となるSi基板310の素子主面311にソース電極301、ゲート電極302が設けられており、ドレイン303はSi基板310の裏面側にある。素子裏面には金属層320が形成されている。ドレイン303は金属層320を通じて素子主面のドレイン電極304に至り、ソース電極301、ゲート電極302及びドレイン電極304が素子主面に存在する構造とされている。NチャンネルMOSFETにおいて、電流iはドレイン電極304から金属層320を介してソース電極301に流れる。MOSFET素子の重要な特性であるドレイン電極からソース電極に至るインピーダンスは、ドレイン電極から裏面のドレイン金属に至るバルク部抵抗r1と、裏面金属部の抵抗r2と、ドレイン303からMOSゲート部に至るドリフト抵抗r3と、チャンネル抵抗r4(図示せず)の総和である。バルク部抵抗r1はSi基板310の厚さに依存する。裏面金属部抵抗r2は金属層320の厚さが一定以上あれば無視できる。ドレイン303からMOSゲート部に至るドリフト抵抗r3は、ドリフト部の素子耐圧で定まるSi層の不純物濃度とSi基板310の厚さに依存する。チャンネル抵抗r4はMOSFETの耐圧等で定まる値である。同図(b)は、チップサイズパッケージの縦型MOSFET素子300がフェースダウン技術でプリント基板200に実装されている例を示している。
このような素子構造において、ドレイン電極304からソース電極301に至る抵抗値の総和であるr1+r2+r3+r4のうち、構造的な要素はr1とr3であり、これを低減するにはSi基板310の厚さを薄くすることが重要となる。
【0004】
しかし、Si基板の厚さを薄くしようとすると、Si基板の強度が低下して反りが大きくなってしまう。一方、裏面の金属層であるメッキの厚さを厚くすると、成膜金属層の応力のために反りが大きくなってしまう。Si半導体素子の基体部に金属を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1では、金属に高融点のモリブデンを用いて1000℃という高温で貼り合わせ、界面のモリブデンとSiの相互拡散により接合が行われている。この他、高融点半田を用いてSi基板の貼り合せ面をメタライズし、銅基板と400℃程度で接合する方法も考えられるが、フェースダウンボンディングは220℃程度の半田付けで行われるために、Si基板と銅基板の半田付けは一層温度が高い高融点半田を用いた半田付けを要する。しかし、モリブデン基板とSi基板とを1000℃で接合するにしても、銅基板とSi基板とを400℃で接合するにしても、フェースダウン実装される素子の実用温度は、一般的には-40℃~+85℃程度であるため、接合時の温度と実用状態における温度の差により応力が発生し、反りが発生してしまう。また、接合界面で大きな応力が発生することは、接続界面の接続寿命や素子寿命のためには好ましくない。特にSi層を薄くすればするほど張り合わせ界面にて発生する内部応力は大きくなり、Si表面に形成された素子に対する影響は大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MOSFET素子に必要な耐電圧とSi基板の厚さとは比例の関係にある。すなわち高い耐電圧が求められる場合には、Si基板の厚さを厚くする必要がある。また耐電圧が低い場合には、Si基板の厚さは薄い方が諸特性のためには良い。近年携帯機器の進化に伴って、20Vという低い耐電圧の素子の需要が高まってきており、耐電圧20Vの場合、Si基板の厚さは10μm程度と薄くすることが好ましい。
前記のとおり、例えばMOSFET素子では抵抗損失を低減するためにSi基板の厚さを薄くすることが重要である。しかし、Si基板の厚さを薄くしようとすると、Si基板の強度が低下して反りが大きくなってしまう。
図12は、Si基板の厚さDとMOSFET素子の直列抵抗分(r1+r3)の値との関係を表した図である。抵抗分(r1+r3)の値は、Si基板の厚さが100μmの場合を1として相対値で表している。Si基板の厚さが100μmから10μmに薄くなるのに比例してMOSFET素子の直列抵抗成分(r1+r3)は小さくなり、好ましい特性を得ることができる。
また、
図13は、Si基板の厚さDと基板の反りの大きさdとの関係をシミュレーションした結果を示している。素子の大きさは3mm×6mmであり、基本となる素子構造は、Si基板の厚さが100μmであり、裏面の金属層の厚さは10μmである。裏面の金属層は銀メッキにより形成されており、その厚さが厚くなればなるほど応力によりSi基板に反りを発生させ、また裏面電極の抵抗成分からみると10μm以上は不要であるため、本例の素子構造においては銀メッキの厚さを10μmとしている。そして同図では、Si基板の厚さDを100μmから10μmまで変化させた場合のSi基板の反りの大きさdを示している。Si基板の厚さDが100μmの場合、反りの大きさdは10μm程度であるが、Si基板の厚さDを10μmとした場合には、Si基板の強度が低下して反りdが100μm程度まで大きくなる。特にSi基板の厚さが50μm以下になると、反りの大きさは顕著になる。反りの発生によりチップサイズパッケージのMOSFET素子がフェースダウン実装できなくなる問題が生じるため、反りを低減することが重要である。
また、裏面の金属層であるメッキの厚さを厚くすると、成膜金属層の応力のために反りが大きくなってしまう。更に、チップサイズパッケージのフェースダウン実装においては、温度上昇により素子の反りが大きくなり実装できないという事態にも至る。したがって、フェースダウン実装する前に素子の反りを少なくすること、反りが小さくても温度上昇により反りがより大きくならないような素子構造とすることが必要である。
【0007】
本発明は、半導体素子が形成されている薄いSi層と金属材料からなる基体部とからなり、フェースダウン実装に適した半導体素子の製造方法及び縦型MOSFET素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するための着眼点は、Si基板が基体であり、その裏面に金属層が付帯されている構造ではなく、金属層を基体としてSi層が付帯する構造に転換することである。すなわち金属基板を基体とすることによりSi層が薄く(例えば10μm程度に)なっても反りが発生しない構造とすることである。
また、Si層と金属基板との接合界面に生じる応力を小さくするために、その接合温度を半導体素子の使用温度範囲である-40℃~+85℃の範囲とすることにある。この常温に近い接合により、接合界面において発生する応力は、実用温度では殆ど発生せず、素子寿命や界面接合寿命に対して良好な効果を生む。
更に、半導体素子が形成されるSi層の厚さを最小限とするために、半導体素子の形成後に仮基板を貼り合わせ、素子機能を創出することができる極限までSi層を薄く研磨し、その後に金属基板と接合することにある。
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.表層部に半導体素子の構成要素が形成されているSi基板の主面側と仮基板とを接合する第1接合工程と、
前記表層部の深さに対応する厚さを残して前記Si基板の裏面側を除去することにより、その主面側に前記半導体素子の構成要素が形成されているSi薄膜を形成するSi薄膜化工程と、
前記半導体素子の使用温度の上限を超えない温度において前記Si薄膜の裏面側と金属基板とを接合する第2接合工程と、
前記仮基板を除去する剥離工程と、
を含むことを特徴とする半導体素子の製造方法。
2.前記Si薄膜の厚さは100μm以下である前記1.記載の半導体素子の製造方法。
3.前記金属基板は銅基板である前記1.又は2.に記載の半導体素子の製造方法。
4.前記Si薄膜化工程を行った後、前記Si薄膜の前記裏面にバリアメタルからなるバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程を含み、
前記第2接合工程は、前記バリアメタル層を介して前記Si薄膜と前記金属基板とを接合する前記1.乃至3.のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
5.前記剥離工程を行った後に前記半導体素子を個別のチップに分離する分離工程を含み、
前記金属基板の裏面には樹脂からなる基材に粘着剤が塗布された粘着テープが貼り合わされており、
前記分離工程において分離された前記チップは前記粘着テープにより固定される前記1.乃至4.のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
6.前記半導体素子は縦型構造のMOSFETであり、前記Si基板の前記主面にソース電極、ゲート電極及びドレイン電極が形成されている前記1.乃至5.のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
7.前記半導体素子は縦型構造のMOSFETであり、前記Si基板の前記主面にソース電極及びゲート電極が形成されており、裏面側にドレイン電極が形成される前記1.乃至5.に記載の半導体素子の製造方法。
8.前記半導体素子は縦型構造のMOSFETであり、前記Si基板の前記主面に少なくとも二つの独立したソース電極及びゲート電極が形成されている前記1.乃至5.のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
9.その主面に少なくともソース電極及びゲート電極が形成され、前記主面側の表層部にソース部及びゲート部が形成されているSi薄膜と、
前記Si薄膜の裏面にバリアメタル層を介して接合されている金属基板と、
を備え、
前記Si薄膜の厚さは100μm以下であり、前記金属基板が素子を支持する基体であることを特徴とする縦型MOSFET素子。
10.前記金属基板は銅基板である前記9.記載の半導体素子。
11.前記Si薄膜の前記主面にソース電極、ゲート電極及びドレイン電極が形成されている前記9.又は10.に記載の縦型MOSFET素子。
12.前記Si薄膜の前記主面に少なくとも二つの独立したソース電極及びゲート電極が形成され、裏面にドレイン電極が形成されている前記9.又は10.に記載の縦型MOSFET素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体素子の製造方法によれば、表層部に半導体素子の構成要素が形成されているSi基板の主面側と仮基板とを接合する第1接合工程と、前記表層部の深さに対応する厚さを残して前記Si基板の裏面側を除去することによりSi薄膜を形成するSi薄膜化工程とを含むため、仮基板により反りが防止され、半導体素子が形成されているSi基板の表層部の深さに対応して、素子機能を発揮することができる最小限の厚さのSi薄膜を得ることができる。そして、前記半導体素子の使用温度の上限を超えない温度において前記Si薄膜の裏面と金属基板とを接合する第2接合工程と、前記仮基板を除去する剥離工程とを含むため、Si薄膜の裏面と金属基板との接合界面に生じる応力が極めて小さくなるように接合され、接合界面の品質を向上させることができ、反りの発生を抑制することができる。また、接合界面に生じる応力によるSi半導体素子の劣化を抑制することができる。
また、本発明の縦型MOSFET素子は、その主面に少なくともソース電極及びゲート電極が形成され、前記主面側の表層部にソース部及びゲート部が形成されているSi薄膜と、前記Si薄膜の裏面にバリアメタル層を介して接合されている金属基板と、を備え、前記Si薄膜の厚さは100μm以下であり、前記金属基板が素子を支持する基体であるため、フェースダウン実装に適した縦型構造のMOSFET素子を構成することができる。また、金属基板により反りの発生が抑制され、更に接合温度を素子使用温度の上限以下とすることにより、素子使用中におけるSi薄膜と金属基板との接合界面に生じる応力を小さくすることができ、それにより接合界面の信頼性向上とSi素子の品質向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施形態に係る半導体素子の製造方法により製造される縦型MOSFET素子の構造を表す断面図である。
【
図2】半導体素子の製造方法における第1接合工程を説明するための断面図である。
【
図3】半導体素子の製造方法におけるSi薄膜化工程を説明するための断面図である。
【
図4】半導体素子の製造方法における第2接合工程を説明するための断面図である。
【
図5】半導体素子の製造方法における剥離工程を説明するための断面図である。
【
図6】半導体素子の製造方法における第2接合工程の別の例を説明するための断面図である。
【
図7】半導体素子の製造方法における剥離工程の別の例を説明するための断面図である。
【
図8】FABガンを用いた接合方法を説明するための模式図である。
【
図9】Si薄膜と金属基板との接合部のTEM画像である。
【
図10】実施形態に係る半導体素子の製造方法により製造されたチップサイズパッケージのMOSFET素子のフェースダウン実装を説明するための断面図である。
【
図11】従来の縦型MOSFET素子の構造とフェースダウン実装の例を示す断面図である。
【
図12】従来の縦型MOSFET素子の抵抗成分(r1+r3)とSi基板の厚さとの関係を示すグラフである。
【
図13】従来のチップサイズMOSFET素子の反りの大きさとSi基板の厚さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0013】
本実施形態に係る半導体素子の製造方法は、表層部に半導体素子の構成要素が形成されているSi基板(100)の主面(11)側と仮基板(6)とを接合する第1接合工程と、前記表層部の深さに対応する厚さを残してSi基板(100)の裏面側(92)を除去することにより、その主面(11)側に前記半導体素子の構成要素が形成されているSi薄膜(10)を形成するSi薄膜化工程と、前記半導体素子の使用温度の上限を超えない温度においてSi薄膜(10)の裏面(12)と金属基板(20)とを接合する第2接合工程と、仮基板(6)を除去する剥離工程と、を含むことを特徴とする(
図1~5参照)。
ここで、前記半導体素子の構成要素が形成されているSi基板(100)の前記表層部の深さは、半導体素子を構成する不純物層の不純物濃度、求められる耐電圧等に応じて決定される。一般に、8インチのウエーハの場合、Si基板の厚さは725μmが標準とされている。また、不純物層による空乏層の深さは、低耐電圧素子では10μm程度であり、高耐電圧素子では100μm程度である。前記表層部の深さは、この空乏層の深さに対応している。よって、Si基板(100)を薄く加工することによって得られるSi薄膜(10)の厚さは、素子の耐電圧に応じて、10~100μm程度とすることが好ましい。一方、前記のとおり、Si基板の厚さが100μm以下となると反りが増大するが、本製造方法における仮基板(6)の使用と金属基板(20)との接合により、Si基板を薄膜化しても反りは防止される。このため、本実施形態において、前記表層部の深さに対応する厚さ、即ちSi薄膜(10)の厚さは100μm以下(10~100μm)、低耐電圧素子の場合には50μm以下(10~50μm)とすることができる。また、金属基板(20)の厚さは、素材の強度とSi薄膜(10)の厚さに応じて適宜設定されればよく、例えば、金属基板(20)として銅基板を用いた場合、厚さを50~300μm程度とすることができる。
以下の説明及び図においては、半導体素子としてMOSFET素子を例に挙げているが、これに限られるものではない。
【0014】
前記半導体素子は、例えば、縦型構造のMOSFET素子(50、51、52)とすることができる。
縦型構造MOSFET素子(50)は、その主面(11)にソース電極(1)及びゲート電極(2)が形成され、主面(11)側の表層部にソース部及びゲート部が形成されているSi薄膜(10)と、Si薄膜(10)の裏面(12)にバリアメタル層(8)を介して接合されている金属基板(20)と、を備え、Si薄膜(10)の厚さは50μm以下であり、金属基板(20)が素子を支持する基体となる(
図1(a)参照)。Si薄膜(10)の主面(11)には、ソース電極(1)及びゲート電極(2)の他、ドレイン電極(4)が設けられてもよい。また、Si薄膜(10)の厚さは、前記表層部の深さに対応し且つ必要な耐電圧が確保される厚さにまで薄くすることができる。
また、縦型構造MOSFET素子(51)は、Si薄膜(10)の主面(11)に少なくとも二つの独立したソース電極及びゲート電極を備える(
図1(b)参照)。本例の縦型MOSFET素子(51)では、Si薄膜(10)の主面(11)に、1つのソース電極(1a)及びゲート電極(2a)と、別のソース電極(1b)及びゲート電極(2b)が、それぞれ独立して形成されており、それぞれ表層部にはソース部及びゲート部が形成されている。
更に、縦型構造MOSFET素子(52)は、金属基板(20)の裏面に、粘着剤と基材からなる粘着テープ(22)が貼り合わされている(
図1(c)参照)。この粘着テープ(22)により、ウエーハ状態で形成された半導体素子を個別のチップに分離する際に半導体素子を支持固定することができる。各々のチップに分離した後に粘着テープ(22)を剥離すれば、同図(a)、(b)に示した素子と同様の構造となる。
【0015】
図1は、前記製造方法により製造される、チップサイズパッケージのNチャンネル縦型MOSFET素子(50、51、52)の構造の例を表している。Si薄膜10には、N
+層、P層等からなるMOSFETの構成要素であるソース部、ゲート部、ドリフト(N
-)層が形成されている。縦型MOSFET素子(50、51、52)は、素子の耐電圧を確保して機能を発揮し得る最小限の厚さ(例えば10μm程度)のSi薄膜10と、基体として実装に必要な厚さを有する金属基板20とが接合されている複層素子構造である。
同図(a)に示す縦型MOSFET素子50は、Si薄膜10の主面11上にソース電極1、ゲート電極2、が形成されており、ドレイン3はSi薄膜10の裏面12側のゲート部と対向する部位にある。Si薄膜10の裏面12には金属基板20が接合されている。ドレイン3は金属基板20を通じてSi薄膜10の主面11に形成されたドレイン電極4に至り、ソース電極1、ゲート電極2、ドレイン電極4、がSi薄膜10の主面11に存在する構造である。例えば、金属基板20として銅基板を用いる場合、接合後の銅のSi層への拡散を防止するために、Si薄膜10の裏面12にバリアメタル層8を形成しておくことが好ましい(図示せず)。
【0016】
MOSFETの重要な特性であるドレイン電極からソース電極に至るインピーダンスは、ドレイン電極4から裏面に接合されている金属基板20に至るバルク部抵抗r1と、金属基板20部の抵抗r2と、ドレイン3からMOSゲート部に至るドリフト抵抗r3と、チャンネル抵抗r4(図示せず)の総和である。バルク部抵抗r1はSi薄膜10の厚さに依存し、Si薄膜10の厚さを最小限まで薄くすることにより最小化できる。金属基板20部の抵抗r2は小さいので無視できる。ドレイン3からMOSゲート部に至るドリフト抵抗r3は、ドリフト部の素子耐圧で定まるSi薄膜10の不純物濃度と、Si薄膜10の厚さに依存するが、Si薄膜10の厚さを薄くすることにより最小化することができる。チャンネル抵抗r4は、MOSFETの耐圧等で定まる値である。このように、Si薄膜10の厚さを素子耐圧で定まる値まで薄くすることにより、r1+r2+r3+r4を最小化することが可能である。
【0017】
図1(b)に示すNチャンネル縦型MOSFET素子51は、MOSFETのドレイン部が共通で、ソースとゲートが独立した二つのMOSFETが形成されている例である。MOSFETの構成要素(N
+層、P層によって形成されているソース部、ゲート部、ドリフト(N
-)層)が独立に二つ形成されている。縦型MOSFET素子51は、MOSFET素子の耐電圧を確保して機能を発揮し得る最小限の厚さ(例えば10μm程度)のSi薄膜10と、基体として実装に必要な厚さを有する金属基板20とが接合されている複層素子構造である。縦型MOSFET素子51は、Si薄膜10の主面11上にソース電極(1a、1b)とゲート電極(2a、2b)が形成されており、ドレイン3はSi薄膜10の裏面12側の、ゲート部と対向する部位にある。Si薄膜10の裏面12側には金属基板20が接合されている。ドレイン(3a、3b)は金属基板20を通じて共通電位となっている。それぞれ独立した2つのソース電極(1a、1b)とゲート電極(2a、2b)が、Si薄膜10の主面11に存在する構造である。金属基板20として銅基板を用いる場合、接合後の銅のSi層への拡散を防止するために、Si薄膜10の裏面12にバリアメタル層8を形成しておくことが好ましい(図示せず)。
【0018】
図1(b)に示した縦型MOSFET素子51では、ドレインが共通で、二つのソース、ゲートが独立して形成されている。このような素子構造は、ドレインを電流源として使用する場合や、ドレインをフローティングで使用する場合に適合している。ドレインを電流源として使用する場合には、縦型MOSFET素子51は小型の面実装パッケージに封止され、裏面のドレインと表面のソース及びゲートが同一面になるように実装され、二つのMOSFET素子が同一ドレインを有することとなる。二つのMOSFETは、ソース、ドレインを共通にして一つのMOSFET素子とする構成であってもよい。また、ドレインをフローティングとして使用する場合には、一つのソースと一つのゲートが一方の端子となり、もう一つのソースともう一つのゲートが他方の端子となる双方向素子とすることができる。これにより、逆流防止機能付きスイッチとして電源用素子に適した構造となる。
【0019】
裏面に金属層を有し、Si基板が基体の役割を果たすという従来の構造では、Si基板の厚さを薄くすることにより発生する反りが問題であった。本半導体素子の製造方法により、素子構造を支える基体がSi基板ではなく金属基板であり、基体となる金属基板にSi薄膜が接合されたMOSFET素子を製造することができる。この構造によって、Si薄膜の厚さを薄くしても反りは大幅に抑制される。
本例のMOSFET素子(50、51、52)では、支持基体である金属基板20は150μm程度の厚さで、Si薄膜10は10μm程度の厚さである。また、金属基板20とSi薄膜10との接合を、素子の使用温度の上限を超えない温度(常温)で行うことにより、素子使用時における金属基板20とSi薄膜10との接合界面に発生する応力を小さくすることができ、これにより基板の反りを大幅に小さくすることができ、更に実用状態で生じる温度サイクル等により接合界面に発生する応力を小さくすることができ、接合の信頼性を高めることが可能である。
【0020】
図2~7を参照しつつ、本実施形態に係る半導体素子の製造方法における製造工程を説明する。各製造工程はウエーハ(例えば8インチサイズのウエーハ)の状態で処理を行うが、各図には1つの縦型MOSEFT素子(50、51、52)に相当する部分の断面を表している。基本的な製造工程は、縦型MOSFET素子51、52の場合も同様である。
(第1接合工程)
第1接合工程は、表層部に半導体素子の構成要素が形成されているSi基板(100)の主面(11)側と仮基板(6)とを接合する工程である。半導体素子の構成要素は、半導体素子を構成する不純物層、酸化膜層、導体層(電極)等である。Si基板(100)の厚さは、例えば8インチのウエーハの場合には725μmが標準である。
図2は、Si基板100の主面11側の表面上及び表層部に半導体素子が形成されており、第1接合工程において、その主面11側と仮基板6とが接合された状態を示している。本例では半導体素子として縦型MOSFETを形成する例を示しており、N型のSi基板100の主面11にソース電極1、ゲート酸化膜層及びゲート電極2、ドレイン電極4が設けられており、その表層部にはソース部を構成する不純物層(N
+層、P層)が形成されている。
仮基板6の材質は特に問わず、例えば、透明なガラス基板を用いることができる。Si基板100の主面11側と仮基板6とは、その接合面に接合材として紫外光で剥離するUV剥離樹脂を塗布して貼り合わせることができる。後の工程においてSi基板100を薄く研磨するために貼り合わせの平坦度が必要であるが、UV剥離樹脂を塗布後に平行を保って加圧することにより平坦度を確保することができる。
また、仮基板6として、粘着性を持った樹脂テープを用いることも可能である。樹脂テープの剛性により、続くSi薄膜化工程においてSi基板100を薄く研磨することができる。
【0021】
(Si薄膜化工程)
Si薄膜化工程は、前記表層部の深さに対応する厚さを残してSi基板(100)の裏面(92)側を除去することにより、Si薄膜(10)を形成する工程である。
図3(a)は、Si薄膜化工程により、仮基板6と接合されたSi基板100の裏面側92を除去することにより、Si基板100を母材とするSi薄膜10が形成された状態を表している。Si基板100の裏面側を除去する方法は特に問わず、例えば、仮基板6を支持体としてSi基板100の裏面側を研削、研磨することにより、厚さを10μm程度にすることができる。前記のとおり、前記表層部の深さに対応する厚さは素子に必要な耐電圧に依存し、低耐電圧素子では10μm程度であり、高耐電圧素子では100μm程度である。よって、例えば8インチのウエーハの場合、厚さ725μmのSi基板(100)から、その主面側の厚さ10~100μmの表層部分をSi薄膜(10)として残すこととなる。
このように残されたSi基板100の主面11側の一定の厚さの部分がSi薄膜10となる。Si薄膜10の裏面12は、後の金属基板20との接合のために、表面粗さRaが0.5nm程度に研磨される。
【0022】
(バリアメタル層形成工程)
バリアメタル層形成工程は、Si薄膜化工程を行った後、Si薄膜(10)の裏面(12)にバリアメタルからなるバリアメタル層(8)を形成する工程である。
例えばSi薄膜10と接合される金属基板20として銅基板を用いる場合、接合後の銅のSi層への拡散を防止するため、
図3(b)に示すように、Si薄膜10の裏面12にバリアメタル層8を形成しておくことが好ましい。バリアメタルとしてNi、Ta等を使用することができ、Si薄膜10の裏面12にスパッタ等により厚さ数10nm程度のバリアメタル層8を形成することができる。
【0023】
(第2接合工程)
第2接合工程は、目的とする半導体素子の使用温度の上限を超えない温度において、Si薄膜(10)の裏面側と金属基板(20)とを接合する工程である。
図4(a)は、第2接合工程において、Si薄膜10の裏面12と金属基板20とが接合された状態を表している。一般に、半導体素子の使用温度は、-20℃~+85℃程度とされる。このため、Si薄膜10と金属基板20との接合は、その使用温度範囲の上限である85℃以下にて行う。実際上、常温にて接合を行うことが好ましい。金属基板20の素材は特に問わないが、例えば、安価で熱伝導性に優れた銅基板を使用することができる。Si薄膜10の裏面にバリアメタル層8が形成されている場合には、同図(b)に示すように、Si薄膜10と金属基板20とはバリアメタル層8を介して接合される。
金属基板20とSi薄膜10との接合のためには、それぞれの接合面の表面粗さが0.5nm程度となるように研磨しておくことが好ましいが、近年の研磨技術によれば容易である。
【0024】
常温で接合する方法は特に問わないが、例えば、FAB(Fast Atomic Beam)ガンを用いて、アルゴンビームにより接合する両面を活性化して接合する手法を適用することができる。
図8に示すように、Si薄膜10と金属基板(銅基板)20とは、FABガンを用いて接合することができる。同図に示すように、接合する両面をアルゴンビーム源200から得られるアルゴンビームを照射して活性化した後、常温で加圧して接合する。この接合手法の特徴は、接合面が0.5nmレベルの平坦度であれば常温で直接接合できる点にある。同図はその貼り合せ装置の要部の模式図であり、真空室内で貼り合わせる2枚の基板を一定の間隔で対向するように配置し、その側方から両表面に対して、FABガン200によりアルゴンビーム(201、202)を走査して照射する。真空室内の真空度は、1×10
-4~1×10
-6Pa程度である。この照射により、両基板の表層(20b、10b)が活性化され、常温で貼り合わせることができる。FABガンによらず、イオンガンにより活性化して接合することも可能である。
図9に、Si薄膜10と銅基板20との接合界面のTEM(透過型電子顕微鏡)画像を示す。Si薄膜10と銅基板20とは原子レベルで接合されていることが分かる。
【0025】
その他、接合のために、10nm程度の厚さの金薄膜を表面に形成する手法も開発されている。Si薄膜10と金属基板20とは、そのような金薄膜を介して接合することもできる。
【0026】
(剥離工程)
剥離工程は、仮基板(6)を除去する工程である。
透明ガラスからなる仮基板6とSi薄膜10の主面11側がUV剥離樹脂で接合されている場合、その接合界面を、ガラス基板側から紫外線を照射することにより分離させることができる。これにより、半導体素子が形成されている薄いSi層10と、支持基板となる金属基板20とによって構成される複層素子構造となる。透明ガラス基板は再利用が可能である。
また、仮基板6として粘着性を持った樹脂テープを用いた場合には、樹脂テープの端面からピーリングして剥離することができ、樹脂テープは使い捨てとすることができる。
図5(a)は、前記第2接合工程の後、Si薄膜10の主面11側に接合されていた仮基板6を剥離した状態を示している。これにより、金属基板20を基体として、その基体上にMOSFETが形成されたSi薄膜10が接合されている縦型MOSFET素子50が形成される。同図(b)は、Si薄膜10がバリアメタル層8を介して金属基板20と接合されている縦型MOSFET素子50を示している。
【0027】
本半導体素子の製造方法は、前記剥離工程を行った後に半導体素子(50、51、52)を個別のチップに分離する分離工程を含み、金属基板(20)の裏面には樹脂からなる基材に粘着剤が塗布された粘着テープ(22)が貼り合わされており、分離工程において分離された前記チップは粘着テープ(22)により固定されるように構成することができる。
仮基板6を除去した後、Si薄膜10と金属基板(20)はウエーハ状態で接合されている。この状態から個別のチップに分離するため、先ずSi薄膜10を分離(所謂スクライブカット)し、その後金属基板20を分離(スクライブカット)し、個別の半導体素子(50、51、52)のチップが形成される。金属基板20の裏面に粘着テープ22が貼り合わされている場合には、このスクライブカットを行うときの支持体(下地)として粘着テープ22を用いることができる。分離された各チップがピックアップされた後、下地の粘着テープ22は不要となる。
【0028】
図6(a)は、前記第2接合工程により、Si薄膜10の裏面側と金属基板20とが接合された状態を表している。金属基板20の裏面(Si薄膜10とは反対側の面)には、粘着テープ(22)が貼り合わされている。Si薄膜10の裏面にバリアメタル層8が形成されている場合には、同図(b)に示すように、Si薄膜10と金属基板20とはバリアメタル層8を介して接合されている。
図7(a)は、前記剥離工程により、Si薄膜10の主面11側に接合されていた仮基板6が剥離された状態を示している。金属基板20上にSi薄膜10が接合されており、金属基板20の裏面に粘着テープ22が貼り合わされている縦型MOSFET素子52が、ウエーハ状態で形成されている。同図(b)は、Si薄膜10がバリアメタル層8を介して金属基板20と接合されている縦型MOSFET素子52を示している。
このように金属基板20の裏面に粘着テープ22を貼り合わせた構成とすれば、素子製造工程において粘着テープ22を支持体とすることができ、粘着テープ22の剛性により金属基板20の厚さを薄くすることも可能である。
【0029】
以上のように製造されたMOSFET素子50、51は、フェースダウンによりプリント基板に実装して使用することができる。
図10は、チップサイズパッケージの縦型MOSFET素子50を、プリント基板200にフェースダウン実装する例を表している。本例では金属基板20として銅基板を使用しており、その厚さは150μmである。またMOSFETが形成されているSi薄膜10の厚さは10μmである。Si薄膜10は金属基板20と接合されているため反りはなく、フェースダウン実装においても安定的に半田付けが可能である。
【0030】
Si基板を基体として裏面の金属層をメッキにより成膜している従来例においては、Si基板の厚さを薄くすると反りが増大してしまう(
図13参照)。これに対し、厚い金属基板を基体として薄いSi層が接合される本実施形態では、反りを大幅に減らすことができる。また、常温において金属基体にSi層が接合された半導体素子は、高温で金属基板にSi層が接合された場合に比べて、半導体素子の使用時に接合界面に生じる応力の影響を大幅に抑制することができる。
例えば、銅からなる金属基板の厚さが300μm、Si層(Si薄膜)の厚さが10μmであり、半導体素子の使用温度が85℃であるとして、常温接合の効果を試算する。
線膨張係数は、銅:16.8×10
-6、Si:2.4×10
-6であり、その差は14.4である。
従来、Si層と銅基体とは高温状態で接合されていた。Si層と銅基体とが400℃で接合されたとすると、接合時の温度と半導体素子の使用時の温度85℃とは315℃の温度差が生じる。そうすると、厚い銅基体によりSi層に反りは発生しないものの、接合時と使用時の間で線膨張係数の差は315×14.4×10
-6=4.5×10
-3となり、この線膨張係数の差により銅とSiとの界面応力が発生し、Si層に応力の影響が発生して素子特性上好ましくない。
これに対して、Si層(Si薄膜)と銅基体とが25℃で接合される場合、半導体素子の使用時の温度85℃とは60℃の温度差に止まる。そうすると、厚い銅基体によりSi薄膜に反りは発生せず、接合時と使用時の間で線膨張係数の差は60×14.4×10
-6=0.86×10
-3となる。よって、接合時の温度が400℃であった場合に比べて線膨張係数の差がはるかに小さく、使用時に銅とSiとの界面に生じる応力は小さく、Si薄膜側に発生する応力の影響は軽微となる。
このようにして、安価な金属である銅を用いて接合界面で発生する応力を小さくすることができる。
【0031】
尚、本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
半導体の高密度実装技術の進展とともにチップサイズパッケージが採用されるようになってきた。本発明により、これまでのSi基板を素子の基体とする素子構造ではなく、金属基板を基体とする複層素子構造がチップサイズパッケージのために有効となる。
【符号の説明】
【0033】
1、1a、1b;ソース電極、2、2a、2b;ゲート電極、3;ドレイン、4;ドレイン電極、
6;仮基板、8;バリアメタル層、
10;Si薄膜、100;Si基板、20;金属基板(銅基板)、22;粘着テープ、
50、51、52;半導体素子(縦型MOSFET素子)、200;プリント基板。