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特開2022-86775LSI素子の熱伝構造及びその熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086775
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】LSI素子の熱伝構造及びその熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
H01L23/12 J
H01L23/12 501P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198964
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】509012577
【氏名又は名称】有限会社MTEC
(71)【出願人】
【識別番号】505220929
【氏名又は名称】アスカコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光治
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 兆
(72)【発明者】
【氏名】古澤 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】砂入 幹土
(57)【要約】
【課題】薄いSi層と接合された金属基板によりLSIで発生した熱を外部に伝えるLSI素子の熱伝構造、及びその熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法を提供する。
【解決手段】熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法は、表層部にLSI1が形成されているSi基板100の主面11側と仮基板5とを接合する第1接合工程と、前記表層部の深さに対応する厚さを残してSi基板の裏面側を除去することによりSi薄膜10を形成するSi薄膜化工程と、LSIの使用温度の上限を超えない温度においてSi薄膜の裏面と少なくとも表層が金属基板20からなる第2基板25とを接合する第2接合工程と、仮基板5を除去する剥離工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層部にLSIが形成されているSi基板の主面側と仮基板とを接合する第1接合工程と、
前記表層部の深さに対応する厚さを残して前記Si基板の裏面側を除去することによりSi薄膜を形成するSi薄膜化工程と、
前記LSIの使用温度の上限を超えない温度において前記Si薄膜の裏面と少なくとも表層が金属基板からなる第2基板の金属表面とを接合する第2接合工程と、
前記仮基板を除去する剥離工程と、
を含むことを特徴とする熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
【請求項2】
前記Si基板の前記主面側にファンアウト用配線が形成されたファンアウト基板を実装するファンアウト実装工程を含み、
前記第1接合工程は、前記ファンアウト基板を介して前記Si基板と仮基板とを接合する請求項1記載の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
【請求項3】
前記Si薄膜化工程を行った後、前記Si薄膜の裏面にバリアメタルからなるバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程を含み、
前記第2接合工程は、前記バリアメタル層を介して前記Si薄膜と前記第2基板とを接合する請求項1又は2に記載の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
【請求項4】
前記Si薄膜の厚さは100μm以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
【請求項5】
前記金属基板は銅基板である請求項1乃至4のいずれかに記載の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
【請求項6】
その主面の表層部にLSIが形成されており、厚さが前記表層部の深さに対応して薄く形成されたSi薄膜と、
前記Si薄膜の裏面に接合されている少なくとも表層が金属基板からなる第2基板と、 を備え、
前記金属基板を介してLSIで発生した熱を外部に伝えることを特徴とするLSI素子の熱伝構造。
【請求項7】
ファンアウト用配線が形成されており、前記Si薄膜の前記主面側に接合されているファンアウト基板を備える請求項6記載のLSI素子の熱伝構造。
【請求項8】
前記Si薄膜の厚さは100μm以下である請求項6又は7に記載のLSI素子の熱伝構造。
【請求項9】
前記金属基板は銅基板である請求項6乃至8のいずれかに記載のLSI素子の熱伝構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI素子の熱伝構造及びその熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法に関する。詳しくは、Si薄膜と接合された金属基板によりLSIで発生した熱を外部に伝えるLSI素子の熱伝構造、及びその熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細化技術の進展に伴い、LSIの性能向上が著しい。近年では、AI用途等のLSIにおいて、20ワットの発熱を超えるような高性能LSIが実用化されてきている。Siを用いたLSI素子の使用温度範囲は、素子のPN接合部温度で概ね150℃以下とされている。このため、Siの表層部に形成されたLSIにおいて発生する熱をどのようにして外部へ伝送するのかが重要なこととなっている。
【0003】
図9(a)は、従来の代表的な高性能LSIの実装例を示している。シリコン(Si)基板310の主面(図中の下方の面)側の表層部にLSI100が形成されたチップサイズのLSI素子300が、プリント基板200上にフェースダウン技術で実装されている。LSI100の発熱は、フェースダウン実装されたLSI素子300の主面からフェースダウンボンディング端子120を経由してプリント基板200に放熱される。プリント基板200の裏面側に熱分散機能を持つ第1ヒートスプレッダ410等が設けられ、熱が外部に放射される。一方、LSI素子300の裏面(図中の上方の面)からは、熱伝シートや熱伝ゲル等の熱伝材料420を介して設けられた第2ヒートスプレッダ430により、外部へ熱が放熱される。LSI素子300の主面側に接続されるプリント基板200は一般に樹脂であるため、熱伝導性は良くない。プリント基板200を貫通する伝熱のための金属孔(サーマルビア)を設けることにより熱伝導は改善されるが、効果は限定的である。LSI100の発熱が大きくなるにつれて、LSI素子300の裏面側から熱伝材料420を介して第2ヒートスプレッダ430へ熱を伝達することが重要になる。通常、第2ヒートスプレッダ430はLSI100の制御系端子とケースの筐体を兼ねており、LSIの発熱を外部に放射しやすい構造となっている。
図9(b)は、ファンアウト構造の高性能LSIをフェースダウン実装する例を示している。LSI100の発熱は、LSI素子300の主面側に接合され、ファンアウト用配線を形成したファンアウト基板320と、その下面に設けられたフェースダウンボンディング端子を経由して、プリント基板200に伝熱され、第1ヒートスプレッダ410等により、外部に放射される。一方、LSI素子300の裏面からは、熱伝材料420を介して第2ヒートスプレッダ430から、外部へ熱が放熱される。プリント基板200は一般に樹脂であるため、熱伝導性は良くない。通常、第2ヒートスプレッダ430はLSI100の制御系端子とケースの筐体を兼ねており、LSIの発熱を外部に放射しやすい構造となっている。LSI100の発熱が大きくなるにつれて、LSI素子300の裏面側から熱伝材料420を介して第2ヒートスプレッダ430へ熱を伝達することが重要になる。
【0004】
図10は、放熱ファンを用いる場合を示している。LSI素子300はプリント基板200にフェースダウン実装されている。LSI100の発熱は、フェースダウンボンディング端子を経由してプリント基板200に伝熱され、第1ヒートスプレッダ410等から外部に放射される。一方、LSI100で発生する熱は、LSI素子300の裏面側から放熱ファン440を用いて外気へ放熱される。プリント基板200の熱伝導性は一般に良くないため、LSI100の発熱が大きくなるにつれて、LSI素子300の裏面側から放熱ファン440に熱を伝達することが重要になる。
【0005】
以上のように、高性能LSIの放熱が課題となっており、とりわけLSI素子の主面側の表層部に形成されているLSIから、その基体部であるSi基板を経由してLSI素子の裏面側に設けられるヒートスプレッダや放熱ファンに至る熱伝導を良くすることが重要である。
熱伝導性を向上させるため、Si基板に金属基板を貼り合わせる方法がある。例えば、Si半導体素子の基体部に金属を用いる方法が知られている(特許文献1を参照。)。特許文献1では、金属に高融点のモリブデンを用いて1000℃という高温で貼り合わせ、界面のモリブデンとSiの相互拡散により接合が行われている。この他、高融点半田を用いてSi基板の貼り合せ面をメタライズし、銅基板と400℃程度で接合する方法も考えられるが、フェースダウンボンディングは220℃程度の半田付けで行われるために、Si基板と銅基板の半田付けは一層温度が高い高融点半田を用いた半田付けを要する。しかし、モリブデン基板とSi基板とを1000℃で接合するにしても、銅基板とSi基板とを400℃で接合するにしても、フェースダウン実装される素子の実用温度は、一般的には-40℃~+85℃程度であるため、接合時の温度と実用状態における温度の差により応力が発生し、反りが発生してしまう。また、接合界面で発生する応力のために、接続界面の接続寿命や素子寿命のためには好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-42971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のとおり、高性能LSI素子の放熱が課題となっている。とりわけLSI素子がフェースダウン実装される場合、LSI素子が形成されているSi基板の主面の表層部から、基体部であるSi基板を経由してLSI素子の裏面側に設けられるヒートスプレッダや放熱ファンに至る熱伝導を向上させる必要がある。また、その場合、Si基板の厚さが薄いことが好ましい。
しかし、モリブデン基板とSi基板とを1000℃で接合したり、銅基板とSi基板とを400℃で接合したりする従来の技術では、一般にはLSI素子の使用温度は-40℃~+85℃程度とされるため、接合時の温度と実用状態における温度の差により接合界面に応力が発生し、反りが発生してしまう。また、接合界面で発生する応力のために、接続界面の接続寿命や素子寿命のためには好ましくない。特にSi層を薄くすればするほど張り合わせ界面にて発生する内部応力によりSi表面の素子に対する影響は大きい。
【0008】
本発明は、Si薄膜と接合された金属基板によりLSIで発生した熱を外部に伝えるLSI素子の熱伝構造、及びその熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するための着眼点は、その接合界面における応力を小さくするために、Si基板と金属基板との接合温度をLSI素子の使用温度範囲の温度とすることにある。この常温に近い接合により、LSI素子の使用状態において接合界面に発生する応力は小さく、素子寿命や界面接合寿命に対して良好な効果を得ることができる。
また、LSIが形成されているSi層の厚さを最小限とするために、LSIの形成後にSi基板の主面側に仮基板を貼り合わせ、LSI機能を創出することができる極限までSi層を薄く研磨し、その後に金属基板と接合することにある。
【0010】
更に、LSIがSi基板の表層部の数μmの領域に存在し、残りの数百ミクロンは基体としての役割だけであることから、基体部分を熱伝導性の良い金属(銅)材料とすることにある。これにより、LSIの発熱は、速やかに銅基体部に伝達され、銅基体部から外部のヒートスプレッダへ熱を伝えることができるようになる。
【0011】
本発明は、以下の通りである。
1.表層部にLSIが形成されているSi基板の主面側と仮基板とを接合する第1接合工程と、
前記表層部の深さに対応する厚さを残して前記Si基板の裏面側を除去することによりSi薄膜を形成するSi薄膜化工程と、
前記LSIの使用温度の上限を超えない温度において前記Si薄膜の裏面と少なくとも表層が金属基板からなる第2基板の金属表面とを接合する第2接合工程と、
前記仮基板を除去する剥離工程と、
を含むことを特徴とする熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
2.前記Si基板の前記主面側にファンアウト用配線が形成されたファンアウト基板を実装するファンアウト実装工程を含み、
前記第1接合工程は、前記ファンアウト基板を介して前記Si基板と仮基板とを接合する前記1.記載の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
3.前記Si薄膜化工程を行った後、前記Si薄膜の裏面にバリアメタルからなるバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程を含み、
前記第2接合工程は、前記バリアメタル層を介して前記Si薄膜と前記第2基板とを接合する前記1.又は2.に記載の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
4.前記Si薄膜の厚さは100μm以下である前記1.乃至3.のいずれかに記載の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
5.前記金属基板は銅基板である前記1.乃至4.のいずれかに記載の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法。
6.その主面の表層部にLSIが形成されており、厚さが前記表層部の深さに対応して薄く形成されたSi薄膜と、
前記Si薄膜の裏面に接合されている少なくとも表層が金属基板からなる第2基板と、 を備え、
前記金属基板を介してLSIで発生した熱を外部に伝えることを特徴とするLSI素子の熱伝構造。
7.ファンアウト用配線が形成されており、前記Si薄膜の前記主面側に接合されているファンアウト基板を備える前記6.記載のLSI素子の熱伝構造。
8.前記Si薄膜の厚さは100μm以下である前記6.又は7.に記載のLSI素子の熱伝構造。
9.前記金属基板は銅基板である前記6.乃至8.のいずれかに記載のLSI素子の熱伝構造。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法によれば、表層部にLSIが形成されているSi基板の主面側と仮基板とを接合する第1接合工程と、前記表層部の深さに対応する厚さを残して前記Si基板の裏面側を除去することによりSi薄膜を形成するSi薄膜化工程と、前記LSIの使用温度の上限を超えない温度において前記Si薄膜の裏面と少なくとも表層が金属基板からなる第2基板の金属表面とを接合する第2接合工程と、前記仮基板を除去する剥離工程と、を含むため、LSIが形成されているSi基板の主面側の表層部の深さに応じた薄いSi薄膜を形成し、Si薄膜と金属基板とは常温域において接合される。これにより、接合界面に発生する応力が極めて小さく、また接合時の温度と素子使用時の温度の差が小さいため、接合界面の剥離を防止し、応力によるLSI素子の劣化を最小限に抑制することができる。
【0013】
また、本発明のLSI素子の熱伝構造によれば、その主面の表層部にLSIが形成されており、厚さが前記表層部の深さに対応して薄く形成されたSi薄膜と、前記Si薄膜の裏面に接合されている少なくとも表層が金属基板からなる第2基板と、を備え、前記金属基板を介してLSIで発生した熱を伝えるため、LSIの発熱は速やかに金属基板からなる基体部に伝達され、金属基体部から外部のヒートスプレッダ等へ熱を伝えることができる。外部のヒートスプレッダ等にヒートパイプの機能を設けることにより金属基板からの熱を一層効率的に外部へ伝達することが出来る。金属基板として、熱伝導性に優れた銅基板を使用することができる。また、金属基板が基体となるため、フェースダウン実装に適したLSI素子を構成することができる。金属基板により反りの発生が抑制され、更に、金属基体とLSIが形成されているSi薄膜との接合を素子が使用される温度の上限以下で行うことにより、LSI素子使用時のSi薄膜と金属基板との接合界面に生じる応力による劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】実施形態に係るLSI素子の熱伝構造を表す模式的断面図である。
図2】熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法における各工程を説明するための模式的断面図である。
図3】ファンアウト構造を備えるLSI素子の熱伝構造を表す模式的断面図である。
図4】ファンアウト構造とする場合の、熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法における各工程を説明するための模式的断面図である。
図5】FABガンを用いた接合方法を説明するための模式図である。
図6】Si薄膜と金属基板との接合部のTEM画像である。
図7】熱伝構造を備えるLSI素子のフェースダウン実装を説明するための模式的断面図である。
図8】熱伝構造を備えるLSI素子のフェースダウン実装における各部の温度を示す図である。
図9】従来のLSI素子のフェースダウン実装を説明するための模式的断面図である。
図10】フェースダウン実装された従来のLSI素子に放熱ファンを使用する例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0016】
本実施形態に係るLSI素子の熱伝構造(50)は、主面(11)の表層部にLSI(1)が形成されており、厚さが前記表層部の深さに対応して薄く形成されたSi薄膜(10)と、Si薄膜(10)の裏面(12)に接合されている少なくとも表層が金属基板(20)からなる第2基板(25)とを備え、金属基板(20)を介してLSI(1)で発生した熱を外部に伝えることを特徴とする(図1参照)。LSIの種類は特に問わない。
また、別のLSI素子の熱伝構造(51)は、ファンアウト用配線が形成されており、Si薄膜(10)の主面(11)側に接合されているファンアウト基板(9)を更に備えることができる(図3(b)参照)。
【0017】
前記Si薄膜(10)の厚さは前記表層部の深さに対応し、LSI機能を創出することができる極限まで薄くされており、金属基板(20)がLSI素子の基体となる。前記表層部の深さは、LSIを構成する不純物層の不純物濃度、耐圧等に応じて設定される。通常、不純物層の深さは数μmである。このため、本実施形態においては、Si薄膜(10)の厚さは100μm以下(5~100μm)とすることができる。また、金属基板(20)の厚さは素材の強度とSi薄膜(10)の厚さに応じて適宜設定されればよく、例えば銅基板を用いた場合、50~300μm程度とすることができる。
尚、セラミックパッケージにLSIを実装する場合においても、Si素子からセラミックパッケージに至る熱伝導を良くするために、上記のようにSi素子の基体部を金属(銅)基板とすることは有効である。
【0018】
本実施形態に係る熱伝構造を備えるLSI素子(50)の製造方法は、表層部にLSI(1)が形成されているSi基板(100)の主面(11)側と仮基板(5)とを接合する第1接合工程と、前記表層部の深さに対応する厚さを残してSi基板(100)の裏面側を除去することによりSi薄膜(10)を形成するSi薄膜化工程と、LSI(1)の使用温度の上限を超えない温度においてSi薄膜(10)の裏面(12)と少なくとも表層が金属基板(20)からなる第2基板(25)の金属基板(20)とを接合する第2接合工程と、仮基板(5)を除去する剥離工程と、を含むことを特徴とする(図2参照)。
また、別のLSI素子の熱伝構造(51)の製造方法は、前記Si基板(100)の主面(11)側にファンアウト用配線が形成されたファンアウト基板(9)を実装するファンアウト実装工程を含み、前記第1接合工程は、ファンアウト基板(9)を介してSi基板(100)と仮基板(5)とを接合する(図4参照)。
【0019】
第2基板(25)の表層の金属基板(20)とSi薄膜(10)との接合は、LSI素子の使用温度の上限を超えない温度(常温)で行われるため、金属基板20とSi薄膜10との接合界面に発生する応力を小さくすることができ、基板の反りを大幅に小さくすることができ、更に実用状態で生じる温度サイクル等により接合界面に発生する応力を小さくすることができ、接合の信頼性を高めることが可能である。
【0020】
図1(a)は、本実施形態に係る熱伝構造を備えるLSI素子50の構造例を表している。LSI1が形成されている必要な厚さのSi薄膜10と、実装に必要な厚さを有する少なくとも表層が金属基板(20)からなる第2基板(25)とが接合された複層素子構造である。第2基板(25)の表層とはSi薄膜10との接合面を構成する一定の板厚の部分をいう。本例では、第2基板(25)の全体が1つの金属基板(20)で構成されている。金属基板(20)としては、熱伝導性に優れた銅基板を用いることが好ましい。
従来、LSI素子の表層に形成されたLSIで発生する熱は、同じ材料のSiの基体からヒートスプレッダを経て外部に伝導されている。これに対して、本例のLSI素子50は、Siからなる基体部における熱伝導を一層効率的に行うために、Si基体ではなく金属(銅)基体としている。この構造により、LSI1で発生する熱を、銅からなる金属基体20を経て外部に設けられるヒートスプレッダに効率的に伝導することが可能となる。
この熱伝構造は、ファンアウト構造と呼ばれるLSIの多端子対応構造においても適用することができ、銅基体を有するファンアウト構造素子51を構成することができる(図3(b)参照)。
【0021】
前記少なくとも表層が金属基板からなる第2基板25は、図1(b)に示すように、表層となる金属基板20と粘着テープ26とが貼り合わされて構成されてもよい。粘着テープ26は、金属基板20の板厚を薄く抑える場合に有効であり、加えてLSI素子をチップに分割する際に下地となる粘着テープを兼ねることができる。
また、第2基板25は、図1(c)に示すように、表層となる金属基板20と半田層27とにより形成されてもよい。半田層27は、LSI素子がセラミックパッケージに搭載される場合の接続手段として利用することができる。
また、第2基板25は、図1(d)に示すように、表層となる金属基板20と絶縁シート28とにより形成されてもよい。絶縁シート28は、LSI素子の金属基板電位がヒートスプレッダの電位と異なる場合の絶縁層の役割を果たすことができる。
その他、表層となる金属基板20の下地層となる材料は種々選択することができる。以下では、第2基板25を構成する下地層は省略して、第2基板25の全体が1つの金属基板20で構成されている例について説明する。
【0022】
図2を参照しつつ、本実施形態に係る熱伝構造を備えるLSI素子の製造方法における各工程を説明する。各製造工程はウエーハ(例えば8インチサイズのウエーハ)状態で処理を行うが、各図は1つのチップサイズパッケージのLSI素子に相当する部分の断面を表している。
同図(a)は、Si基板100の主面11側の表層部にLSI1が形成されている状態を示している。基体はLSIと同じSi基板である。Si基板100の主面11上には、フェースダウン実装のためのボンディング端子30が形成されている。Si基板(100)の厚さは、例えば8インチのウエーハの場合には725μmが標準である。
【0023】
(第1接合工程)
図2(b)は、第1接合工程により、表層部にLSI1が形成されているSi基板100の主面11側と、仮基板5とが接合された状態を示している。
仮基板5としては、例えば、透明なガラス基板を用いることができる。Si基板100の主面11側と仮基板5とは、その接合面に接合材として紫外光で剥離するUV剥離樹脂を塗布して貼り合わせることができる。後の工程においてSi基板100を薄く研磨するために貼り合わせの平坦度が必要であるが、UV剥離樹脂を塗布後に平行を保って加圧することにより平坦度を確保することができる。
また、仮基板5として、粘着性を持った樹脂テープを用いることも可能である。樹脂テープの剛性により、続くSi薄膜化工程においてSi基板100を薄く研磨することができる。
【0024】
(Si薄膜化工程)
Si薄膜化工程は、前記表層部の深さに対応する厚さを残してSi基板100の裏面側を除去することによりSi薄膜10を形成する工程である。
図2(c)は、Si薄膜化工程により、仮基板5と接合されたSi基板100の裏面側を除去することにより、Si基板100を母材とするSi薄膜10が形成された状態を表している。Si基板100の裏面側を除去する方法は特に問わず、例えば、仮基板5を支持体としてSi基板100の裏面側を研削、研磨することにより、厚さを5μm程度にすることができる。前記のとおり、前記表層部の深さに対応する厚さは素子に必要な耐電圧に依存し、低耐電圧素子では5μm程度であるため、Si薄膜10の厚さは5μm以上とすることができる。実際には、薄膜加工の容易性と熱伝導性の向上とのバランスにより選択され、薄膜加工の技術の面から、Si薄膜10の厚さを10μm以上としてもよい。よって、例えば8インチのウエーハの場合、標準的な厚さ725μmのSi基板100から、その主面側の厚さ10~100μmの表層部分をSi薄膜(10)として残すこととなる。
このように残されたSi基板100の主面11側の一定の厚さの部分がSi薄膜10となる。Si薄膜10の裏面12は、後の金属基板20との接合のために、表面粗さRaが0.5nm程度に研磨される。
【0025】
(バリアメタル層形成工程)
バリアメタル層形成工程は、Si薄膜化工程を行った後、Si薄膜の裏面にバリアメタルからなるバリアメタル層を形成する工程である(図示せず)。
Si薄膜10と接合される金属基板20として銅基板を用いる場合、接合後の銅のSi層への拡散を防止するため、Si薄膜10の裏面12にバリアメタル層8を形成しておくことが好ましい。バリアメタルとしてNi、Ta等を使用することができ、Si薄膜10の裏面12にスパッタにより厚さ数10nm程度のバリアメタル層8を形成することができる。
【0026】
(第2接合工程)
第2接合工程は、目的とするLSI素子の使用温度の上限を超えない温度において、Si薄膜の裏面と第2基板の金属基板とを接合する工程である。
図2(d)は、第2接合工程において、Si薄膜10の裏面12と少なくとも表層が金属基板20からなる第2基板25とが接合された状態を表している。第2基板25は、少なくとも表層が金属基板20からなる基板であるが、金属基板20以外は図示を省略している。
一般に、半導体素子の使用温度は、-20℃~+85℃程度とされる。このため、Si薄膜10と金属基板20との接合は、その使用温度範囲の上限である85℃以下にて行う。実際上、常温にて接合を行うことができる。金属基板20の素材は特に問わないが、例えば、安価で熱伝導性に優れた銅基板を使用することができる。Si薄膜の裏面にバリアメタル層8が形成されている場合には、Si薄膜10と金属基板20とはバリアメタル層8を介して接合される。
金属基板20とSi薄膜10との接合のためには、それぞれの接合面の表面粗さが0.5nm程度となるように研磨しておくことが好ましいが、近年の研磨技術では容易である。
【0027】
常温で接合する方法は特に問わないが、例えば、FAB(fast atomic beam)ガンを用いて、アルゴンビームにより接合する両面を活性化して接合する手法を適用することができる。図5に示すように、Si薄膜10と金属基板(銅基板)20とは、FABガンを用いて接合することができる。FABガンを用いる接合手法は、近年半導体基板の常温接合で普及してきている。同図に示すように、接合する両面をアルゴンビーム源200から得られるアルゴンビームを照射して活性化した後、常温で加圧して接合する。この接合手法の特徴は、接合面が0.5nmレベルの平坦度であれば常温で直接接合できる点にある。同図はその貼り合せ装置の要部の模式図であり、真空室内で貼り合わせる2枚の基板を一定の間隔で対向するように配置し、その側方から両表面に対して、FABガン200によりアルゴンビーム(201、202)を走査して照射する。真空室内の真空度は、1×10-4~1×10-6Pa程度である。この照射により、両基板の表層(20b、10b)が活性化され、常温で貼り合わせることができる。FABガンによらず、イオンガンにより活性化して接合することも可能である。
図6に、Si薄膜10と銅基板20との接合界面のTEM(透過型電子顕微鏡)画像を示す。Si薄膜10と銅基板20とは原子レベルで接合されていることが分かる。
【0028】
その他、接合のために、10nm程度の厚さの金薄薄膜を表面に形成する手法も開発されている。Si薄膜10と金属基板20とは、そのような金薄薄膜を介して接合することもできる。
【0029】
(剥離工程)
図2(e)は、剥離工程により仮基板が除去された状態を示している。Si薄膜10の裏面12にバリアメタル層8が形成されている場合には、Si薄膜10はバリアメタル層8を介して金属基板20と接合されている(図示せず)。
透明ガラスからなる仮基板5とSi薄膜10の主面11とがUV剥離樹脂で接合されている場合、その接合界面を、ガラス基板側から紫外線を照射することにより分離させることができる。これにより、LSI素子は、LSIが形成されている薄いSi層と、その支持基板である金属基板とによって構成される複層素子構造となる。透明ガラス基板は再利用が可能である。
また、仮基板5として粘着性を持った樹脂テープを用いた場合には、樹脂テープの端面からピーリングして剥離することができ、樹脂テープは使い捨てとすることができる。
【0030】
(ファンアウト構造のLSI素子)
LSI素子は、ファンアウト構造とすることができる。ファンアウト実装は、LSIの多ピン化により端子ピッチが微細化されてきたのに伴って実用化されてきた実装方式である。図3(a)は、従来のLSI素子300がファンアウト基板(Si基板)320に実装され、端子ピッチが広くされている様子を示す。ファンアウト基板320のLSI素子300側には、LSI素子300と同じピッチで端子が形成され、ファンアウト基板の内層において相互配線がなされて、ファンアウト基板の外部実装面端子13では広いピッチの端子が形成されている。外部実装面端子13はプリント基板にフェースダウン実装可能なように広いピッチの端子となっている。本例では、ファンアウト基板320にウエーハ状態でLSI素子300がフェースダウン実装され、その後樹脂14が充填され、ウエーハ状態で樹脂成型されている。LSI素子300の裏面側は、素子のSi基板が露出している。ファンアウト基板320としてはSi基板の他、樹脂基板が用いられる場合もある。
【0031】
図3(b)は、本実施形態のLSI素子の製造方法おいて、Si薄膜10の主面11側に、ファンアウト用配線を形成したファンアウト基板9が接合されているLSI素子51を示している。Si薄膜10の裏面には金属基板20が接合されており、LSI素子51の裏面側には金属基板20が露出している。Si薄膜10の厚さは、LSIの構成・作用に必要な最小限の厚さであり、その基体部である金属基板20の厚さは、ファンアウト構造の素子をフェースダウン実装するのに必要な厚さとされている。この構成によれば、LSIの発熱を素早く熱伝導性の高い基体部に伝導させ、基体部に接続されるヒートスプレッダを経て外部に効率的に伝導・放射することが可能となる。
【0032】
本実施形態においては、Si基板(100)の主面(11)側にファンアウト用配線が形成されたファンアウト基板(9)を実装するファンアウト実装工程を含み、前記第1接合工程は、ファンアウト基板(9)を介してSi基板(100)と仮基板(5)とを接合するように構成することができる。
図4を参照しつつ、ファンアウト実装可能なLSI素子の製造方法における各工程を説明する。各製造工程は8インチのウエーハ状態で処理を行うが、各図は1つのチップサイズパッケージのLSI素子に相当する部分の断面を表している。
【0033】
同図(a)は、Si基板100の主面11側の表層部にLSI1が形成されている状態を示している。基体はLSIと同じSi基板である。Si基板100の主面11上にはボンディング端子30が形成されており、この主面側にSiからなるファンアウト基板9が接合されている。ファンアウト基板9の内層において相互配線がなされて、ファンアウトの外部実装面には広いピッチのボンディング端子13が形成されている。
図4(b)は、第1接合工程により、ファンアウト基板9の上面に仮基板5を接合した状態を示している。
同図(c)は、Si薄膜化工程により、Si基板100の裏面側を研磨等により除去し、Si薄膜10を残した状態を示している。仮基板5が支持体になるため、Si薄膜10の厚さを5~10μm程度まで薄くすることができる。
同図(d)は、第2接合工程により、Si薄膜10の裏面12に金属基板20を接合した状態を示している。この接合には、FABガンを使用するなど常温接合技術を適用することができる。また10nm程度の厚さの金薄膜を介して接合することもできる。
同図(e)は、剥離工程により、仮基板5を剥離した状態を示す。
以上により、金属(銅)基体による素子構造を有するファンアウト構造素子51が完成する。各工程の具体的な内容は、図2により説明した各工程と同様である。
【0034】
以上のように製造されたLSI素子50及びファンアウト構造のLSI素子51は、フェースダウンによりプリント基板に実装して使用することができる。
図7(a)は、チップサイズパッケージのLSI素子50を、プリント基板200にフェースダウン実装する例を表している。同図(b)は、ファンアウト構造のLSI素子51をプリント基板200にフェースダウン実装する例を表している。本例では金属基板20として銅基板を使用しており、その厚さは300μmである。またLSIが形成されているSi薄膜10の厚さは10μmである。薄いSi薄膜10と金属基板20により、LSIの発熱を効率良く伝熱することができる。また、Si薄膜10は金属基板20と接合されているため反りはなく、フェースダウン実装においても安定的に半田付けが可能である。
図7(a)、(b)に示した例において、LSIの表面で発生した熱は、主として基体である銅基板20から筐体であるヒートスプレッダ430への伝導により放熱される。
【0035】
図8により、上記のように実装されたLSI素子50から筐体への熱伝導による放熱のシミュレーションを説明する。LSI素子50を構成するSi薄膜10の厚さは10μmであり、基体である銅基板の厚さは300μmである。
本実施形態に係る銅基体の素子構造で、20ワットの発熱があり周囲温度が25℃である場合、筐体を兼ねたヒートスプレッダ部Dの点においては30℃、ヒートスプレッダ部Cの点においては53℃、熱伝導樹脂部Bにおいては76℃、LSI部Aにおいては90℃となる。よって、周囲温度が85℃の条件下でも、LSI部Aを150℃とすることができる。ヒートスプレッダにヒートパイプの機能を設ける場合には、上記ヒートスプレッダ部Dから外部への熱伝導はさらに大きくなり、熱伝導樹脂部B、LSI部Aにおける温度はさらに低くなる。
一方、一般的なSi基体の素子構造(図9(a)参照)で、20ワットの発熱があり周囲温度が25℃である場合、筐体を兼ねたヒートスプレッダ部Dに当たる点においては30℃、ヒートスプレッダ部Cに当たる点においては75℃、熱伝導樹脂部Bに当たる点においては98℃、LSI部Aに当たる点においては135℃となる。
LSI部Aにおける上記温度差は本実施形態に係る素子構造の効果ということができ、素子を銅基体とすることによりSi基体の場合に比べて温度を45℃低くすることができる。逆に言えば、温度が45℃高い範囲まで使用することができる。使用温度が同じであれば、20ワット以上の高発熱の素子も使用可能であることを意味する。これはファンアウト基板を備えるLSI素子51の場合も同様である。
【0036】
また、本実施形態に係る金属基体の素子構造は、金属基体とLSIが形成されているSi層(Si薄膜)との接合を素子が使用される温度の上限以下で行うことにより、接合界面で発生する応力を最小限に抑えることができる。すなわち、常温において金属基体にSi層が接合されたLSI素子は、高温で金属基板にSi層が接合された場合に比べて、LSI素子の使用時に接合界面に生じる応力の影響を大幅に抑制することができる。
例えば、銅からなる金属基板の厚さが300μm、Si薄膜の厚さが10μmであり、LSI素子の使用温度が85℃であるとして、常温接合の効果を試算する。線膨張係数は、銅が16.8×10-6、Siが2.4×10-6であり、その差は14.4である。
従来、銅を素子の基体とする場合、Si層と銅基体とは高温状態で接合されていた。Si層と銅基体とが400℃で接合されたとすると、接合時の温度と半導体素子の使用時の温度85℃とは315℃の温度差が生じる。そうすると、厚い銅基体によりSi層に反りは発生しないものの、接合時と使用時の間で線膨張係数の差は315×14.4×10-6=4.5×10-3となり、この線膨張係数の差により銅とSiとの界面応力が発生し、Si層に応力の影響が発生して素子特性上好ましくない。
これに対して、Si層(Si薄膜)と銅基体とが常温(25℃)で接合される場合、LSI素子の使用時の温度85℃とは60℃の温度差に止まる。そうすると、厚い銅基体によりSi薄膜に反りは発生せず、接合時と使用時の間で線膨張係数の差は60×14.4×10-6=0.86×10-3となる。よって、接合時の温度が400℃であった場合に比べて線膨張係数の差がはるかに小さく、使用時に銅とSiとの界面に生じる応力は小さく、Si薄膜側に発生する応力の影響は軽微となる。
このようにして、安価で且つ熱伝導率が金属の中で極めて高い(401W/(m・K))銅材料を用いて、熱伝導性に優れたLSI素子を構成することができ、接合界面で発生する応力を小さくすることができる。
【0037】
尚、本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。樹脂パッケージとする場合に限らず、セラミックパッケージにLSIを実装する場合においても、LSI部からセラミックパッケージに至る熱伝導を良くするために、LSI素子の基体部を金属(銅)基板とすることは効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
半導体の微細化技術の進展とともにLSIは高性能化が進み、一方で高発熱となってきた。本発明の複層素子構造により、高発熱を有効に熱伝導することにより、一層環境温度が高い用途にも適用が出来るようになり、また、一層大きな発熱素子の実装も可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1;LSI、5;仮基板、8;バリアメタル層、9;ファンアウト基板、
10;Si薄膜、100;Si基板、20;金属基板(銅基板)、25;第2基板、
50~54;LSI素子、200;プリント基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10