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特開2022-86799メッキ工場における飛散物質の処理方法とこの処理方法に使用されるメッキプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086799
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】メッキ工場における飛散物質の処理方法とこの処理方法に使用されるメッキプラント
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/04 20060101AFI20220602BHJP
   C25D 21/18 20060101ALI20220602BHJP
   C25D 3/04 20060101ALI20220602BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20220602BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20220602BHJP
   B01D 47/02 20060101ALI20220602BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20220602BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
C25D21/04
C25D21/18 N
C25D3/04
C25D21/12 Z
B01D53/18 150
B01D47/02 A
F24F7/00 A
F24F9/00 C
F24F9/00 D
F24F9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199001
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】392032085
【氏名又は名称】睦技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】特許業務法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 睦
【テーマコード(参考)】
4D020
4D032
4K023
【Fターム(参考)】
4D020BA23
4D020BB03
4D020CB25
4D020CC06
4D020CD01
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB07
4D032AC09
4D032BB01
4D032CA01
4D032DA04
4K023BA04
4K023EA01
(57)【要約】
【課題】メッキ液の飛散物質を屋外に排出することなく、空気に含まれるメッキ液の飛散物質を回収して、飛散物質による公害を防止する。
【解決手段】メッキ工場における飛散物質の処理方法は、建物内のメッキ槽1から発生するメッキ液11の飛散物質の処理方法であって、メッキ槽1の上方開口部10に循環空気を送風してエアーカーテン20で閉塞し、上方開口部10を通過してエアーカーテン20から排出される循環空気をスクラバー3に案内し、スクラバー3でもって循環空気に回収液を散水して、メッキ液11の飛散物質を回収液31に吸収し、スクラバー3とエアーカーテン30とに循環空気を循環して建物内で循環して、メッキ液11の飛散物質を回収液31で回収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内のメッキ槽から発生するメッキ液の飛散物質の処理方法であって、
前記メッキ槽の上方開口部に循環空気を送風してエアーカーテンで閉塞し、
前記上方開口部を通過して前記エアーカーテンから排出される循環空気をスクラバーに案内し、
前記スクラバーでもって循環空気に回収液を散水して、メッキ液の飛散物質を前記回収液に吸収し、
前記スクラバーと前記エアーカーテンとに循環空気を循環して建物内で循環して、
メッキ液の飛散物質を前記回収液で回収することを特徴とするメッキ工場における飛散物質の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のメッキ工場における飛散物質の処理方法であって、
前記メッキ槽の下方に循環ダクトを設けて、前記エアーカーテンと前記スクラバーとを閉ループに連結してなるメッキ工場における飛散物質の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメッキ工場における飛散物質の処理方法であって、
前記スクラバーが、循環空気を前記回収液の液面に衝突する方向に送風して、飛散物質を前記回収液に接触させて回収するメッキ工場における飛散物質の処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載のメッキ工場における飛散物質の処理方法であって、
前記スクラバーが、前記循環空気を交互に上下方向に送風する上下ダクトを有し、
前記上下ダクトの底部に前記回収液を充填して、前記上下ダクトに送風する循環空気を前記回収液の液面に衝突させるメッキ工場における飛散物質の処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のメッキ工場における飛散物質の処理方法であって、
前記スクラバーを、互いに並列に連結してなる複数の前記エアーカーテンに連結して、
循環空気を複数の前記エアーカーテンと前記スクラバーとに循環するメッキ工場における飛散物質の処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のメッキ工場における飛散物質の処理方法であって、
前記スクラバーの前記回収液を前記メッキ槽に還流するメッキ工場における飛散物質の処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のメッキ工場における飛散物質の処理方法であって、
前記メッキ液に浸漬される被メッキ物が前記メッキ槽の前記上方開口部を通過するタイミングで、
循環空気の前記エアーカーテンを前記上方開口部に送風するのを抑制ないし停止することを特徴とするメッキ工場における飛散物質の処理方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のメッキ工場における飛散物質の処理方法であって、
メッキ液がクロームメッキ液であって、メッキ液の飛散物質がクロム酸であるメッキ工場における飛散物質の処理方法。
【請求項9】
上方開口のメッキ槽と、
前記メッキ槽の上方開口部に水平方向に循環空気を強制送風して、前記メッキ槽の前記上方開口部を循環空気のエアーカーテンで実質的に閉塞して、前記メッキ槽の前記上方開口部から排出される飛散物質を循環空気で搬送するするエアーカーテン機構と、
前記エアーカーテン機構の排出側に連結され、前記エアーカーテン機構から流入される循環空気に回収液を散水して、循環空気に含まれる飛散物質を前記回収液に吸収させて回収するスクラバーと、
前記エアーカーテン機構と前記スクラバーとを連結して、循環空気を前記エアーカーテン機構と前記スクラバーとに循環させる循環ダクトと、
循環空気を前記エアーカーテン機構と前記スクラバーと前記循環ダクトとに循環させる循環ファンとを備え、
循環空気が、前記スクラバーと前記エアーカーテン機構と前記循環ダクトと前記循環ファンとからなる閉ループの循環路に循環されて、メッキ液の飛散物質を前記回収液で回収してなることを特徴とするメッキプラント。
【請求項10】
請求項9に記載のメッキプラントであって、
前記エアーカーテン機構が、
循環空気を前記メッキ槽の前記上方開口部に水平方向に噴出する噴出ダクトと、
前記メッキ槽の前記上方開口部を通過した循環空気を吸入する吸入ダクトとを備え、
前記噴出ダクトと前記吸入ダクトが、前記メッキ槽の対向する側部に配置されてなることを特徴とするメッキプラント。
【請求項11】
請求項9または10に記載のメッキプラントであって、
前記循環ダクトが、前記メッキ槽の下に配置されてなることを特徴とするメッキプラント。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか一項に記載のメッキプラントであって、
前記スクラバーが、
前記回収液を循環空気中に散水するノズルと、
前記ノズルから噴射されて飛散物質を回収した前記回収液を前記ノズルに循環する循環ポンプとを備えることを特徴とするメッキプラント。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれか一項に記載のメッキプラントであって、
前記スクラバーに循環される前記回収液を前記メッキ槽に供給して再使用する還流ポンプを備えるメッキプラント。
【請求項14】
請求項13に記載のメッキプラントであって、
循環される前記回収液の飛散物濃度を濃度を検出して、前記還流ポンプを制御する濃度センサを備えるメッキプラント。
【請求項15】
請求項9ないし14のいずれか一項に記載のメッキプラントであって、
複数の前記エアーカーテン機構を備え、
複数の前記エアーカーテン機構が互いに並列に連結されて、前記スクラバーと直列に連結されてなるメッキプラント。
【請求項16】
請求項9ないし15のいずれか一項に記載のメッキプラントであって、
前記スクラバーが、
底部に前記回収液を充填してなり、かつ
内部に循環空気を交互に上下方向に送風する上下ダクトを設けてなる外装ケースを備え、
循環空気が前記上下ダクトを上から下に送風されて外装ケースの底部の前記回収液の液面に衝突させて、
飛散物質を前記回収液に吸収させることを特徴とするメッキプラント。
【請求項17】
請求項9ないし16のいずれか一項に記載のメッキプラントであって、
複数の前記メッキ槽と、
各々の前記メッキ槽に設けてなる複数の前記エアーカーテン機構と、
複数の前記エアーカーテン機構に連結してなる前記スクラバーとを備え、
前記スクラバーが複数の前記エアーカーテン機構に循環空気を循環して飛散物質を回収することを特徴とするメッキプラント。
【請求項18】
請求項9ないし17のいずれか一項に記載のメッキプラントであって、
メッキ液がクロームメッキ液で、メッキ液の飛散物質がクロム酸であることを特徴とするメッキプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ槽から発生するクロム酸などの飛散物質を屋外に排出することなく回収して環境を改善する飛散物質の処理方法とメッキプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
メッキ工程においては、メッキ槽からクロム酸の有害物質が飛散物質として発生する。飛散物質を回収するために、メッキ槽にダクトを設けて開口部の空気を吸入して飛散物質を含む空気を吸入し、スクラバーで散水して飛散物質を分離する装置が開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開S52-132369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、メッキ槽から発生する飛散物質のクロム酸を回収する装置を開示する。この公報は、メッキ槽の上方開口部から吸入した空気に含まれるクロム酸をスクラバーで回収して、スクラバーから排出される空気のクロム酸濃度を低下することを開示する。スクラバーは、屋外に排出する空気のクロム酸濃度を低下することができる。たとえば、以上の公報は、スクラバーでもってクロム酸濃度を4mg/mとする空気を吸収して、排出する空気のクロム酸濃度を0.03mg/mに低下してクロム酸濃度を1/100以下に減少しているが、メッキ工場では、スクラバーからは連続してクロム酸などの飛散物質を含む空気を排気するので、1立方メートルの空気に含まれるクロム酸量を少なくできるとしても、トータルの排出量は累積して相当に大きくなる。たとえば、クロム酸濃度を0.03mg/mとする空気を、1分間に1000mの風量で8時間連続して排気するメッキ工場は、一日に約15gものクロム酸を排気することになる。このことから、外部に排出する空気に含まれる飛散物濃度を低くすることは、単位時間に排気する飛散物質は少なくできるが、メッキ工場においては長期間、連続して排出してトータル量が相当な量となる。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたもので、メッキ液の飛散物質を屋外に排出することなく、空気に含まれるメッキ液の飛散物質を回収して、飛散物質による公害を防止する処理方法と、この処理方法に使用するメッキプラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明のある態様にかかるメッキ工場における飛散物質の処理方法は、建物内のメッキ槽から発生するメッキ液の飛散物質の処理方法であって、メッキ槽の上方開口部に循環空気を送風してエアーカーテンで閉塞し、上方開口部を通過してエアーカーテンから排出される循環空気をスクラバーに案内し、スクラバーでもって循環空気に回収液を散水して、メッキ液の飛散物質を回収液に吸収し、スクラバーとエアーカーテンとに循環空気を循環して建物内で循環して、メッキ液の飛散物質を回収液で回収する。
【0007】
以上のメッキ工場における飛散物質の処理方法は、メッキ液の飛散物質が混入する空気を工場外に排出することなくメッキ液の飛散物質を回収して、メッキ液の飛散物質に起因する公害を防止できる特長がある。それは以上の処理方法が、メッキ槽の上方開口部をエアーカーテンで閉塞し、このエアーカーテンの循環空気をスクラバーに案内して、スクラバーで飛散物質を回収液に吸収して回収し、循環空気を屋外に排出することなく、スクラバーとエアーカーテンとに循環するからである。スクラバーは、循環空気に回収液を散水して飛散物質を回収液に吸収して回収し、エアーカーテンはメッキ槽の上方開口部を実質的に閉塞して飛散物質の飛散を防止しながら、循環空気を搬送気体として飛散物質をスクラバーに流入させる。循環空気は、外部に排出されることなく、エアーカーテンとスクラバーに循環されて飛散物質を回収する。スクラバーで回収された飛散物質は、メッキ槽に供給して有効に再利用することもできるので、回収された飛散物質を再利用して、メッキのランニングコストを低減することもできる。
【0008】
本発明の他の態様にかかるメッキ工場における飛散物質の処理方法は、メッキ槽の下方に循環ダクトを設けて、エアーカーテンとスクラバーとを閉ループに連結している。
【0009】
以上の処理方法は、循環空気を循環する循環ダクトをメッキ槽の下に配置することで、エアーカーテンと循環ダクトとに循環空気を逆方向に送風して、循環空気を短い循環路で循環できるので、狭い領域にエアーカーテンとスクラバーとを配置して狭隘なメッキ工場にも設置できる特長がある。
【0010】
本発明の他の態様にかかるメッキ工場における飛散物質の処理方法は、スクラバーが、循環空気を回収液の液面に衝突する方向に送風して、飛散物質を回収液に接触させて回収する。
【0011】
以上の処理方法は、循環空気を回収液の表面に衝突して、飛散物質を回収液に吸収させるので、飛散物質を効率よく回収液で回収できる特長がある。とくにミスト状の飛散物質を効果的に回収液で回収できる特長がある。それは、ミスト状の飛散物質の比重が循環空気よりも大きいので、循環空気を回収液の液面に衝突する方向に送風することで、比重の大きい飛散物質ミストが効果的に回収液に接触して吸収されるからである。
【0012】
本発明の他の態様にかかるメッキ工場における飛散物質の処理方法は、スクラバーが、循環空気を交互に上下方向に送風する上下ダクトを有し、上下ダクトの底部に回収液を充填して、上下ダクトに送風する循環空気を回収液の液面に衝突させる。
【0013】
以上の構造は、スクラバーを簡単な構造として飛散物質を効果的に回収液で回収できる特長がある。それは、循環空気を上下ダクトに送風して、底部に充填している回収液の液面に衝突させて、飛散物質を効率よく回収液に吸収できるからである。
【0014】
本発明の他の態様にかかるメッキ工場における飛散物質の処理方法は、スクラバーを、互いに並列に連結してなる複数のエアーカーテンに連結して、循環空気を複数のエアーカーテンとスクラバーとに循環する。
【0015】
以上の処理方法は、ひとつのスクラバーで複数のエアーカーテンに循環する循環空気から飛散物質を回収できるので、多数のメッキ槽からの飛散物質を低コストに回収できる特長がある。
【0016】
本発明の他の態様にかかるメッキ工場における飛散物質の処理方法は、スクラバーの回収液をメッキ槽に還流する。
【0017】
以上の処理方法は、飛散物質を回収する回収液をメッキ槽に還流して有効に再利用してメッキのランニングコストを低減できる特長がある。
【0018】
本発明の他の態様にかかるメッキ工場における飛散物質の処理方法は、メッキ液に浸漬される被メッキ物がメッキ槽の上方開口部を通過するタイミングで、循環空気のエアーカーテンを上方開口部に送風するのを抑制ないし停止する。
【0019】
本発明の他の態様にかかるメッキ工場における飛散物質の処理方法は、メッキ液がクロームメッキ液であって、メッキ液の飛散物質がクロム酸である。
【0020】
以上の処理方法は、クロームメッキ工程で発生する有害なクロム酸を屋外に排出することなく有効に回収できる特長がある。
【0021】
本発明のある態様にかかるメッキプラントは、上方開口のメッキ槽と、メッキ槽の上方開口部に水平方向に循環空気を強制送風して、メッキ槽の上方開口部を循環空気のエアーカーテンで実質的に閉塞して、メッキ槽の上方開口部から排出される飛散物質を循環空気で搬送するするエアーカーテン機構と、エアーカーテン機構の排出側に連結され、エアーカーテン機構から流入される循環空気に回収液を散水して、循環空気に含まれる飛散物質を回収液に吸収させて回収するスクラバーと、エアーカーテン機構とスクラバーとを連結して、循環空気をエアーカーテン機構とスクラバーとに循環させる循環ダクトと、循環空気をエアーカーテン機構とスクラバーと循環ダクトとに循環させる循環ファンとを備え、循環空気が、スクラバーとエアーカーテン機構と循環ダクトと循環ファンとからなる閉ループの循環路に循環されて、メッキ液の飛散物質を回収液で回収している。
【0022】
以上のメッキプラントは、メッキ液の飛散物質を工場外に排出することなく、空気に含まれるメッキ液の飛散物質を回収して、メッキ液の飛散物質に起因する公害を防止できる特長がある。それは以上の処理装置が、メッキ槽の上方開口部をエアーカーテンで閉塞し、このエアーカーテンの循環空気をスクラバーに案内して、スクラバーで飛散物質を回収液に吸収して回収し、循環空気を屋外に排出することなく、スクラバーとエアーカーテンとに循環するからである。スクラバーは、循環空気に回収液を散水して飛散物質を回収液に吸収して回収し、エアーカーテンはメッキ槽の上方開口部を実質的に閉塞して飛散物質の飛散を防止しながら、循環空気を搬送気体として飛散物質をスクラバーに流入させる。循環空気は、外部に排出されることなく、エアーカーテンとスクラバーに循環されて飛散物質を回収する。スクラバーで回収された飛散物質は、メッキ槽に供給して有効に再利用することもできるので、回収された飛散物質を再利用して、メッキのランニングコストを低減することもできる。
【0023】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、エアーカーテン機構が、循環空気をメッキ槽の上方開口部に水平方向に噴出する噴出ダクトと、メッキ槽の上方開口部を通過した循環空気を吸入する吸入ダクトとを備え、噴出ダクトと吸入ダクトをメッキ槽の対向する側部に配置している。
【0024】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、循環ダクトを、メッキ槽の下に配置している。
【0025】
以上のメッキプラントは、循環空気を循環する循環ダクトをメッキ槽の下に配置することで、エアーカーテン機構と循環ダクトとに循環空気を逆方向に送風して、循環空気を短い循環路で循環できるので、狭い領域にエアーカーテン機構とスクラバーとを配置して狭隘なメッキ工場にも設置できる特長がある。
【0026】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、スクラバーが、回収液を循環空気中に散水するノズルと、ノズルから噴射されて飛散物質を回収した回収液をノズルに循環する循環ポンプとを備えている。
【0027】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、スクラバーに循環される回収液をメッキ槽に供給して再使用する還流ポンプを備えている。
【0028】
以上のメッキプラントは、飛散物質を回収した回収液をメッキ槽に還流して有効に再利用してメッキのランニングコストを低減できる特長がある。
【0029】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、循環される回収液の飛散物濃度の濃度を検出して、還流ポンプを制御する濃度センサを備えている。
【0030】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、複数のエアーカーテン機構を備え、複数のエアーカーテン機構を互いに並列に連結して、スクラバーと直列に連結している。
【0031】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、スクラバーが、底部に回収液を充填してなり、かつ内部に循環空気を交互に上下方向に送風する上下ダクトを設けてなる外装ケースを備え、循環空気を上下ダクトの上から下に送風して外装ケースの底部の回収液の液面に衝突させて、飛散物質を回収液に吸収させている。
【0032】
以上のメッキプラントは、スクラバーを簡単な構造として飛散物質を効果的に回収液で回収できる特長がある。それは、循環空気を上下ダクトに送風して、底部に充填している回収液の液面に衝突させて、飛散物質を効率よく回収液に吸収できるからである。
【0033】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、複数のメッキ槽と、各々のメッキ槽に設けてなる複数のエアーカーテン機構と、複数のエアーカーテン機構に連結してなるスクラバーとを備え、スクラバーが複数のエアーカーテン機構に循環空気を循環して飛散物質を回収している。
【0034】
本発明の他の態様にかかるメッキプラントは、メッキ液がクロームメッキ液で、メッキ液の飛散物質をクロム酸としている。
【0035】
以上のメッキプラントは、クロームメッキして発生する有害なクロム酸を屋外に排出することなく有効に回収できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係るメッキプラントの概略構成図である。
図2図1に示すメッキプラントのメッキ槽の平面図である。
図3】スクラバーの一例を示す断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るメッキプラントの概略平面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るメッキプラントの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0038】
(実施の形態1)
図1はメッキプラント100の概略構成図を示している。この図のメッキプラント100は、上方開口のメッキ槽1と、メッキ槽1の上方開口部10に水平方向に循環空気を強制送風して、メッキ槽1の上方開口部10を循環空気で実質的に閉塞して、メッキ槽1の上方開口部10から排出される飛散物質を循環空気で搬送するするエアーカーテン機構2と、エアーカーテン機構2の排出側に連結されて、エアーカーテン機構2から流入される循環空気に回収液31を散水して、循環空気に含まれる飛散物質を回収液31に吸収させて回収するスクラバー3と、エアーカーテン機構2とスクラバー3とを連結して、循環空気をエアーカーテン機構2とスクラバー3とに循環させる循環ダクト4と、循環空気をエアーカーテン機構2とスクラバー3と循環ダクト4とに循環させる循環ファン5とを備える。この図のメッキプラント100は、閉ループの循環路に循環空気を循環して、メッキ液の飛散物質を回収液31で回収する。循環空気は、スクラバー3とエアーカーテン機構2と循環ダクト4と循環ファン5とからなる閉ループに循環されて屋外に排出されることなく、飛散物質をスクラバー3で回収液31に回収する。
【0039】
[メッキ槽1]
図1の概略構成図と図2の概略平面図に示すメッキ槽1は、被メッキ物9を液中に浸漬してメッキし、メッキした被メッキ物9を吊り上げて次の工程に移動するので、被メッキ物9を通過できるように上方を開口している。図に示すメッキ槽1は、上方開口部10を細長い長方形とする箱形で、縦方向に複数に区画して、各々の区画領域1Aにメッキ液11、洗浄液12などを充填している。被メッキ物9は、次々と隣りの区画領域1Aの液体に浸漬されてメッキされる。上方を開口しているメッキ槽1は、メッキ液11の飛散物質が上方開口部10から排出されるのを防止できない。たとえば、クロームメッキ液を充填しているメッキ槽1は、クロム酸が飛散物質となってミストの状態で排出される。
【0040】
[エアーカーテン機構2]
エアーカーテン機構2は、メッキ槽1の上方開口部10に、一方の側面から他方の側面に向かって水平方向に循環空気を送風して、上方開口部10を循環空気で実質的に閉塞して、メッキ液11から分離された飛散物質を、搬送気体でもってスクラバー3に移送する。エアーカーテン機構2は、循環空気をメッキ槽1の上方開口部10に水平方向に噴出する噴出ダクト21と、メッキ槽1の上方開口部10を通過した搬送気体を吸入する吸入ダクト22とを備える。噴出ダクト21はメッキ槽1の側縁部に沿って長手方向に伸びる細長い噴出口21Aを有し、吸入ダクト22はメッキ槽1の他方の側縁部に沿って長手方向に伸びる細長い吸入口22Aを開口している。噴出口21Aと吸入口22Aは、メッキ槽1の長手方向の両端部まで伸びる長さとして、メッキ槽1の上方開口部10の全体をエアーカーテン20で閉塞できる。噴出ダクト21は、先端に向かって上下幅を狭く絞る形状として噴出する循環空気を高速で送風できる形状としている。吸入ダクト22は、先端開口部22Bに向かって上下幅を広くして、メッキ槽1の上方開口部10を通過した循環空気を循環空気を効率よく吸入する形状としている。噴出ダクト21と吸入ダクト22は、メッキ槽1の対向する側部に配置されて、一方の側縁に配置された噴出ダクト21から噴出された循環空気を、他方の側縁に配置している吸入ダクト22で吸入して、メッキ槽1の上方開口部10をエアーカーテン20で実質的に閉塞する。エアーカーテン機構2は、メッキ槽1の上方開口部10を被メッキ物9が移動するタイミングでは、循環空気の送風を抑制し、あるいは停止して、循環空気が被メッキ物9に衝突して室内に分散されるのを抑制できる。
【0041】
[スクラバー3]
スクラバー3は、循環される循環空気からメッキ液11の飛散物質を吸収して回収する。図1に示すスクラバー3は、外装ケース30内に流入する循環空気に回収液31を霧状に散水して飛散物質を吸収する。スクラバー3は、循環される循環空気に回収液31を散水するノズル32を外装ケース30の内部に配置している。スクラバー3は、ノズル32に回収液31を加圧して供給する循環ポンプ33も備える。循環ポンプ33は、外装ケース30の底部に蓄えている回収液31を吸収してノズル32に加圧して供給する。ノズル32から散水された霧状の回収液31は、循環される循環空気と広い面積で接触して飛散物質を吸収する。図1のスクラバー3は、上から下向きに、あるいは下から上向きに回収液31を散水して、飛散物質を吸収した後、外装ケース30の底部に落下させる。
【0042】
外装ケース30の底部に落下した回収液31は、繰り返し循環空気から飛散物質を吸収して次第に濃度が濃くなる。高濃度になった回収液31は、還流ポンプ34でメッキ槽1に還流して有効に再使用することができる。還流ポンプ34は、濃度センサ38で回収液31の飛散物濃度を検出し、濃度が設定値よりも高くなると回収液31をメッキ槽1に供給して有効に再使用できる。回収した飛散物質をメッキ槽1に還流して有効に再利用するメッキプラント100は、メッキ液11を有効利用してランニングコストを低減できる。
【0043】
図3のスクラバー3は、循環空気を交互に上下方向に送風する上下ダクト35を外装ケース30の内部に設けて、上下ダクト35の底部に回収液31を充填している。このスクラバー3は、上下ダクト35に上下にジグザグ状に送風される循環空気を、底部に蓄えている回収液31の液面に衝突させる。このスクラバー3は、飛散物質を効率よく回収液31に回収できる。循環空気が下向きに送風されて、空気よりも重い飛散物質のミストが、回収液31の液面に衝突して吸収されるからである。
【0044】
図3のスクラバー3は、外装ケース30の内部に、所定の間隔で垂直壁36を設けて、垂直壁36の間に上下ダクト35を設けている。垂直壁36は、上から下に伸びて回収液31の液面との間に送風隙間37を設けている第1の垂直壁36Aと、下から上に伸びて上端縁に送風隙間37を設けている第2の垂直壁36Bとからなる。スクラバー3は、第1の垂直壁36Aと第2の垂直壁36Bとを交互に配置して、隣接する垂直壁36の間に上下ダクト35を設けている。このスクラバー3は、簡単な構造で、循環空気を繰り返し回収液31の液面に衝突させるので、飛散物質を効率よく回収できる特長がある。
【0045】
[循環ダクト4]
循環ダクト4は、エアーカーテン機構2とスクラバー3とを連結して、循環空気を外部に排気することなく閉ループに循環する。図1のメッキプラント100は、メッキ槽1の下方に循環ダクト4を設けて、エアーカーテン機構2とスクラバー3とを閉ループに連結している。この構造のメッキプラント100は、メッキ槽1の横に隣接してスクラバー3を配置して、スクラバー3とエアーカーテン機構2とをコンパクトに配置できる。この構造のメッキプラント100は、複数のメッキ槽1を配置しているメッキ工場において、各々のメッキ槽1に設けているエアーカーテン機構2を、長いダクトで連結する必要がなく、工場内のダクト配置を簡単にできる特長がある。
【0046】
図4のメッキプラント200は、各々のメッキ槽1に設けている複数のエアーカーテン機構2を並列に連結してスクラバー3に連結している。このメッキプラント100は、ひとつのスクラバー3で複数のエアーカーテン機構2から循環される循環空気から飛散物質を回収できるので、スクラバー3のコストを低減できる特長がある。
【0047】
メッキプラント100は、スクラバー3と循環ダクト4とを一体構造とすることができる。図5のメッキプラント300は、メッキ槽1に沿って設けている循環ダクト4をスクラバー3と一体構造として、スクラバー3と循環ダクト4を一体構造としている。この循環ダクト4は、メッキ槽1の側面に配置している垂直姿勢の循環ダクト4と、メッキ槽1の下に水平姿勢に配置している循環ダクト4をスクラバー3に併用している。垂直姿勢の循環ダクト4は、内部にノズル32から回収液31を散水して、循環空気の飛散物質を回収液31に吸収して回収する。水平姿勢の循環ダクト4は、上下方向に伸びる垂直壁36を設けて、循環空気を上下方向にジグザグ状に送風する上下ダクト35を隣接する垂直壁36の間に設けて、底部に回収液31を蓄えている。垂直壁36は、交互に下端縁と上端縁に送風隙間37を設けて、循環空気をジグザグ状に送風させる構造としている。下端縁に送風隙間37を設けている垂直壁36は、回収液31の液面よりも上方に下端縁を配置して、液面との間に送風隙間37を設けている。
【0048】
図5の断面図に示すメッキプラント300は、メッキ槽1の両側に垂直姿勢に配置している、流入側と排出側の循環ダクト4に回収液31を散水するノズル32を設けて、両方をスクラバー3に併用している。この構造は、循環ダクト4の流入側と排出側の両方をスクラバー3として、飛散物質を効率よく回収液31に効率よく吸収して回収できる特長がある。
【0049】
[飛散物質の処理方法]
以上のメッキプラント100、200、300は、以下の工程で、メッキ槽1から発生するメッキ液11の飛散物質を処理して、飛散物質が屋外に排出をされるのを防止する。飛散物質の処理方法は、メッキ液11から発生する飛散物質を回収液31に吸収して回収して、飛散物質が屋外に排出されるのを防止する。本発明の処理方法は、例えば金属をクロームメッキするメッキ工場で発生する飛散物質のクロム酸を回収できる。クロームメッキ工場は、メッキ液11から飛散物質のクロム酸が屋内に飛散すると、作業環境が悪化し、屋外に排出される公害の原因となる。以下の処理方法は、クロームメッキ工場においては、飛散物質のクロム酸を回収して、屋内の作業環境を改善し、さらに飛散物質が屋外に排出される弊害を防止する。ただ、本発明の飛散物質の処理方法は、飛散物質をクロームメッキ工場で発生するクロム酸に特定するものでなく、他のメッキ工場においてメッキ液から分離する飛散物質を回収できるので、クロームメッキ以外のメッキ方法にも使用できる。
【0050】
飛散物質の処理方法は、飛散物質が屋内に飛散して作業環境を悪化させるのを防止するために、メッキ槽1の上方開口部10をエアーカーテン20で実質的に閉塞する。エアーカーテン20は、メッキ槽1の一方の側縁から他方の側縁に向かって循環空気を水平方向に送風して、上方開口部10を実質的に閉塞する。エアーカーテン20は、メッキ槽1の上方開口部10に送風される循環空気が飛散物質の搬送媒体となって、飛散物質をスクラバー3に移送する。スクラバー3は循環空気から飛散物質を分離する。スクラバー3は、飛散物質を循環空気から分離するために、循環空気にノズル32から回収液31を霧状に散水する。霧状の回収液31は循環空気の飛散物質に接触して、飛散物質を吸収して回収する。図3及び図5のスクラバー3は、循環空気を上下ダクトに送風し、底部に蓄えている回収液31に向かって循環空気を送風して、飛散物質を回収液31に衝突させて吸収する。飛散物質を吸収した霧状の回収液31を含む循環空気は、屋外に排出することなく、再びエアーカーテン20に循環される。
【0051】
エアーカーテン機構2は、メッキ槽1の上方開口部10を被メッキ物9が移動するタイミングにおいては、循環空気の送風を抑制し、あるいは停止して、循環空気が被メッキ物9に衝突して屋内に分散するのを防止する。メッキ槽1は、複数に区画されて、各々の区画領域1Aに洗浄液12、メッキ液11などを充填している。被メッキ物9は、次々と隣りの区画領域1Aの液体に浸漬されてメッキされるので、被メッキ物9がメッキ槽1の上方開口部10を通過するタイミングがある。このタイミングにおいて、板状の被メッキ物9にあっては、循環空気が表面に衝突して飛散することがある。被メッキ物9は、上方開口部10を通過するタイミングは極めて短いので、このタイミングでエアーカーテン20の送風を抑制ないし停止しても飛散物質の屋内飛散は極めて少ない。
【0052】
以上の処理方法は、エアーカーテン機構2のエアーカーテン20とスクラバー3を循環ダクト4で連結して閉ループに連結している。循環ダクト4は、途中に循環ファン5を連結している。循環ファン5は、循環空気を強制送風して、エアーカーテン機構2とスクラバー3と循環ダクト4に循環空気を循環させる。スクラバー3は、循環して循環空気と接触して飛散物質を吸収するので、飛散物質の濃度が次第に高くなる。飛散物濃度が高くなった回収液31は、還流ポンプ34でメッキ槽1に供給して再利用することができる。還流ポンプ34は、回収液31の飛散物濃度を検出する濃度センサ38で制御できる。濃度センサ38はスクラバー3に蓄えている回収液31の濃度が設定値を超えると、運転して回収液31をメッキ槽1に供給する。回収液31をメッキ槽1に供給して回収液31の液面レベルが低下したスクラバー3は、液面レベルが設定値となるまで水を供給する。スクラバー3は設定レベルの回収液31を循環ポンプ33で吸入してノズル32から散水する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、メッキ液から飛散物質が発生するメッキ工場において有効に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
100、200、300…メッキプラント
1…メッキ槽
1A…区画領域
2…エアーカーテン機構
3…スクラバー
4…循環ダクト
5…循環ファン
9…被メッキ物
10…上方開口部
11…メッキ液
12…洗浄液
20…エアーカーテン
21…噴出ダクト
21A…噴出口
22…吸入ダクト
22A…吸入口
22B…先端開口部
30…外装ケース
31…回収液
32…ノズル
33…循環ポンプ
34…還流ポンプ
35…上下ダクト
36…垂直壁
36A…第1の垂直壁
36B…第2の垂直壁
37…送風隙間
38…濃度センサ
図1
図2
図3
図4
図5