(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086820
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20220602BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H02K3/04 J
H02K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199048
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小淵 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】竹味 智彦
【テーマコード(参考)】
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB03
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP14
5H615QQ03
(57)【要約】
【課題】スロットに配置される第1導体と第1導体同士を接続する第2導体とが別個に設けられている場合であっても、互いに同一の形状を有する第2導体を用いて、ステータを安価に製造することが可能なステータを提供する。
【解決手段】このステータ100のコイル部20は、スロット13に配置されるスロット導体210(第1導体)と、スロット導体210同士を接続する平板状の複数のエンド導体220(第2導体)とを含む。複数のエンド導体220は、互いに同一の形状を有している。同一のスロット13に配置される任意の二つのスロット導体210において、径方向内側に配置されるスロット導体210とエンド導体220との接続箇所のエンド導体220における周方向の位置と、径方向外側に配置されるスロット導体210とエンド導体220との接続箇所のエンド導体220における周方向の位置とが、互いに異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる複数のスロットが設けられているステータコアと、
前記ステータコアに配置され、スロット収容部とコイルエンド部とを含むコイル部と、を備え、
前記コイル部は、前記複数のスロットの各々において前記ステータコアの径方向に複数並んで配置されているとともに前記スロット収容部を構成する第1導体と、前記ステータコアに対して前記軸方向の少なくとも一方側において互いに異なる前記スロットに配置されている前記第1導体同士を接続するとともに前記コイルエンド部を構成する、平板状の複数の第2導体と、を含み、
前記複数の第2導体は、互いに同一の形状を有しており、
同一の前記スロットに配置される任意の二つの前記第1導体において、径方向内側に配置される前記第1導体と前記第2導体との接続箇所の前記第2導体における周方向の位置と、径方向外側に配置される前記第1導体と前記第2導体との接続箇所の前記第2導体における前記周方向の位置とが、互いに異なるように構成されている、ステータ。
【請求項2】
前記第2導体は、互いに異なる前記スロットに配置されている前記第1導体同士を接続する一対の第1部分と、前記一対の第1部分の前記ステータコアとは反対側の端部同士を接続する第2部分と、を含み、
前記第1部分の前記周方向における第1の幅は、前記第1導体の前記周方向における第2の幅よりも大きく、
径方向内側に配置される前記第1導体と前記第2導体との前記接続箇所の前記第1部分における前記周方向の位置と、径方向外側に配置される前記第1導体と前記第2導体との前記接続箇所の前記第1部分における前記周方向の位置とが、互いに異なるように構成されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記第1部分の前記周方向における前記第1の幅は、前記複数の前記第2導体のうち最も径方向外側に配置される前記第2導体に接続される前記第1導体同士の間の周方向距離と、前記複数の第2導体のうち最も径方向内側に配置される前記第2導体に接続される前記第1導体同士の間の周方向距離との差分の1/2を、前記第1導体の前記周方向における前記第2の幅に加算した値以上である、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
径方向内側に配置される前記第1導体と前記第2導体との前記接続箇所の前記第2導体における前記周方向の位置は、径方向外側に配置される前記第1導体と前記第2導体との前記接続箇所の前記第2導体における前記周方向の位置よりも、前記第2導体の前記周方向における中央部寄りに位置するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
前記第1導体は、前記第1導体の前記軸方向の端部に設けられ、接続される前記第2導体が配置される段差部を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のスロットが設けられるステータコアを備えるステータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、円筒状のステータコアを備えるステータが開示されている。このステータは、スロット内に配置される複数の辺部導体(第1導体)と、異なるスロット内に配置される辺部導体間を接続する複数の端部導体(第2導体)と、を含むコイルを備える。端部導体は、全体としてステータコアの軸方向端面に略平行な薄板状に形成されている。また、端部導体は、ステータコアに沿って周方向に延びる周方向導体部と、周方向導体部の周方向両端部において径方向に屈曲して延びる径方向導体部と、を含む。径方向導体部の径方向内側の内側端部には、辺部導体と接続される軸方向接続部が形成されている。軸方向接続部は、各径方向導体部において互いに同一の位置に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のステータでは、軸方向接続部が各径方向導体部において互いに同一の位置に形成されている。また、径方向内側の辺部導体(第1導体)間の距離と径方向外側の辺部導体間の距離とは互いに異なる。このため、形状(辺部導体間の距離)が互いに異なる複数種類の端部導体を準備する必要があり、生産コストが高い。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、スロットに配置される第1導体と第1導体同士を接続する第2導体とが別個に設けられている場合であっても、ステータを安価に製造することが可能なステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるステータは、軸方向に延びる複数のスロットが設けられているステータコアと、ステータコアに配置され、スロット収容部とコイルエンド部とを含むコイル部と、を備え、コイル部は、複数のスロットの各々においてステータコアの径方向に複数並んで配置されているとともにスロット収容部を構成する第1導体と、ステータコアに対して軸方向の少なくとも一方側において互いに異なるスロットに配置されている第1導体同士を接続するとともにコイルエンド部を構成する、平板状の複数の第2導体と、を含み、複数の第2導体は、互いに同一の形状を有しており、同一のスロットに配置される任意の二つの第1導体において、径方向内側に配置される第1導体と第2導体との接続箇所の第2導体における周方向の位置と、径方向外側に配置される第1導体と第2導体との接続箇所の第2導体における周方向の位置とが、互いに異なるように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面によるステータでは、上記のように、径方向に沿って並んで配置される互いに異なる第2導体同士において、同一のスロットに配置される第1導体との接続箇所のステータコアの周方向における位置が互いに異なるように構成されている。これにより、径方向内側に配置される一対の第1導体間の距離と、径方向外側に配置される一対の第1導体間の距離とが異なる場合であっても、同一形状の第2導体を用いてこれらの第1導体間を接続することができる。その結果、複数の第1導体間の距離に応じて複数種類の第2導体を準備する場合と比較して、部品コストや製造管理コストを下げることが可能となり、ステータを安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スロットに配置される第1導体と第1導体同士を接続する第2導体とが別個に設けられている場合であっても、互いに同一の形状を有する第2導体を用いて、ステータを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態によるステータの構成を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態によるステータの部分拡大平面図である。
【
図3】一実施形態によるステータのエンド導体を径方向外側から見た正面図である。
【
図4】
図2の1000-1000線に沿った断面図である。
【
図5】一実施形態によるステータのスロット導体とエンド導体との接続箇所の位置を説明するための図である。(
図5(a)は、径方向内側のスロット導体の図である。
図5(b)は、径方向外側のスロット導体の図である。)
【
図6】一実施形態によるステータのスロットの部分拡大平面図の概略図である。
【
図7】一実施形態によるステータのスロット導体の段差部の構成を示す部分拡大斜視図である。
【
図8】一実施形態によるコイル部の結線構成を示す回路図である。
【
図9】一実施形態によるスロット導体の断面図(
図3の2000-2000線に沿った断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[ステータの構成]
図1~
図9を参照して、本実施形態によるステータ100について説明する。
【0013】
以下の説明では、「軸方向」とは、Z方向に沿った方向を意味する。また、「周方向」とは、ステータコア10の周方向(E方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータコア10の径方向(R方向)を意味する。
【0014】
図1に示すように、ステータ100は、ステータコア10と、コイル部20と、を備える。ステータ100は、図示しないロータと共に回転電機に備えられている。なお、上記回転電機は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。上記ロータは、ステータ100のR1側(径方向内側)に、ロータの外周面とステータ100の内周面とが径方向に対向するように配置されている。すなわち、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機の一部として構成されている。
【0015】
ステータコア10は、円筒形状を有する。ステータコア10は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。
【0016】
ステータコア10は、円環状のバックヨーク11と、バックヨーク11からR1側に突出する複数のティース12と、E方向に隣接するティース12同士の間に形成される複数のスロット13と、を含む。複数のスロット13の各々は、ステータコア10の軸方向に延びるように設けられている。
【0017】
コイル部20は、たとえば、波巻きコイルとして構成されている。また、コイル部20は、6ターンのコイルとして構成されている。すなわち、スロット13内において、6個の後述するスロット導体210が径方向に並んで配置されている。なお、コイルのターン数はこれに限られない。
【0018】
図8に示すように、コイル部20は、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。具体的には、コイル部20は、3相のY結線により接続(結線)されている。すなわち、コイル部20は、U相コイル部20Uと、V相コイル部20Vと、W相コイル部20Wとを含む。そして、コイル部20には、複数(たとえば、2つ)の中性点Nが設けられている。詳細には、コイル部20は、4並列結線(スター結線)されている。すなわち、U相コイル部20Uには、4つの中性点接続端部NtUと、4つの動力線接続端部PtUとが設けられている。V相コイル部20Vには、4つの中性点接続端部NtVと、4つの動力線接続端部PtVとが設けられている。W相コイル部20Wには、4つの中性点接続端部NtWと、4つの動力線接続端部PtWとが設けられている。
【0019】
図1に示すように、コイル部20は、スロット収容部21と、コイルエンド部22とを含む。具体的には、コイル部20は、複数のスロット13の各々においてステータコア10の径方向に複数(たとえば6つ)並んで配置されているとともにスロット収容部21を構成するスロット導体210を含む。スロット導体210は、軸方向に沿って直線状に延びるように設けられている。また、スロット導体210は、軸方向と直交する断面210a(
図9参照)が矩形形状(長方形形状)を有する平角導線である。また、スロット導体210の軸方向の両側の端部211(
図3参照)は、ステータコア10の外側に突出している。なお、スロット導体210は、特許請求の範囲の「第1導体」の一例である。
【0020】
スロット導体210は、絶縁被膜30(
図9参照)により被覆されている。なお、スロット導体210のうち後述する段差部211aが設けられるために切り欠かれている部分には絶縁被膜30は設けられていない。
【0021】
また、コイル部20は、スロット導体210とは別個の平板状の複数のエンド導体220(
図2参照)を含む。複数のエンド導体220は、コイルエンド部22を構成する。複数のエンド導体220は、互いに同一の形状を有している。複数のエンド導体220は、ステータコア10の軸方向の一方側および他方側の各々に設けられている。なお、エンド導体220は、特許請求の範囲の「第2導体」の一例である。また、ステータコア10の軸方向の一方側(Z1側)および他方側(Z2側)の構成は互いに略同様であるので、以下では軸方向の一方側(Z1側)の構成のみが代表して説明されている。
【0022】
スロット導体210およびエンド導体220の各々は、銅により形成されている。具体的には、スロット導体210およびエンド導体220の両方は、タフピッチ銅により形成されている。なお、スロット導体210およびエンド導体220の両方が、無酸素銅により形成されていてもよい。また、スロット導体210およびエンド導体220の一方がタフピッチ銅により形成され、スロット導体210およびエンド導体220の他方が無酸素銅により形成されていてもよい。
【0023】
図3に示すように、エンド導体220は、平板状の表面221aおよび表面221b(
図4参照)が軸方向に沿った向きに配置されている。言い換えると、エンド導体220は、厚さ方向が径方向に沿うように配置されている。なお、表面221aは、エンド導体220の径方向外側の表面である。また、表面221bは、エンド導体220の径方向内側の表面である。
【0024】
これにより、平板状の複数のエンド導体220を径方向に互いにずらしながら配置することによって、複数のエンド導体220を密に配置することができる。
【0025】
また、複数のエンド導体220は、径方向に互いにずらされて配置(配策)されている一方、軸方向に互いに重なるようには配置(配策)されていない。したがって、複数のエンド導体220が設けられる軸方向の位置を互いにずらすためにスロット導体210の長さをエンド導体220ごとに異ならせる必要がない。これにより、スロット導体210の種類数が増加するのを防止することが可能である。
【0026】
エンド導体220は、互いに異なるスロット13に配置されているスロット導体210同士を接続する。具体的には、エンド導体220は、一方のスロット13に配置される径方向外側から1番目のスロット導体210と、他方のスロット13に配置される径方向外側から2番目のスロット導体210とを接続する。また、エンド導体220は、一方のスロット13に配置される径方向外側から3番目のスロット導体210と、他方のスロット13に配置される径方向外側から4番目のスロット導体210とを接続する。また、エンド導体220は、一方のスロット13に配置される径方向外側から5番目のスロット導体210と、他方のスロット13に配置される径方向外側から6番目のスロット導体210とを接続する。なお、エンド導体220に接続されるスロット導体210同士の間には、複数(たとえば4つ)のスロット13が設けられている。言い換えると、コイル部20のピッチ数は5である。
【0027】
図3に示すように、エンド導体220は、互いに異なるスロット13に配置されているスロット導体210同士を接続する一対の軸方向部分222を含む。軸方向部分222は、軸方向に沿って延びるように設けられている。また、エンド導体220は、一対の軸方向部分222のステータコア10とは反対側(
図3ではZ1側)の端部222a同士を接続する周方向部分223を含む。周方向部分223は、周方向に沿って延びるように設けられている。なお、軸方向部分222および周方向部分223は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1部分」および「第2部分」の一例である。
【0028】
一対の軸方向部分222および周方向部分223を含むエンド導体220は、径方向から見て、U字形状を有している。具体的には、エンド導体220は、ステータコア10側を下方とすると、逆U字形状を有している。
【0029】
また、軸方向部分222と周方向部分223との接続部分(軸方向部分222の端部222a)のうちエンド導体220の周方向の中央部220a側の角部224は、R状に形成されている。
【0030】
また、エンド導体220の軸方向部分222の周方向の幅は、W1である。軸方向部分222の周方向の幅W1は、スロット導体210の周方向の幅W2よりも大きい。なお、幅W1および幅W2は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1の幅」および「第2の幅」の一例である。
【0031】
また、エンド導体220の軸方向部分222のうち、スロット導体210に対して周方向外側(エンド導体220の中央部220aとは反対側)に突出する部分222bの周方向の幅は、W3である。
【0032】
また、スロット導体210のうちスロット13から突出している部分の軸方向の長さは、L1である。ステータコア10に設けられている全てのスロット導体210の長さL1は、互いに略等しい。
【0033】
ここで、エンド導体220の周方向部分223は、エンド導体220の一対の軸方向部分222同士の間に配置されるスロット導体210に対して、ステータコア10とは軸方向の反対側(
図3ではZ1側)に設けられている。また、周方向部分223は、一対の軸方向部分222同士の間に配置されるスロット導体210と離間して配置されている。具体的には、エンド導体220の周方向部分223のステータコア10側の端部223aとステータコア10との離間距離Dは、スロット導体210のうちステータコア10から突出している部分の長さL1よりも大きい。
【0034】
これにより、エンド導体220と、一対の軸方向部分222同士の間に配置されるスロット導体210とが干渉するのを防止することが可能である。
【0035】
また、周方向部分223の径方向に沿った断面223b(
図4参照)の面積は、スロット導体210(後述する段差部211aを設けるために切り欠かれている部分以外の部分)の軸方向と直交する断面210a(
図9参照)の面積以上である。これにより、周方向部分223の導体抵抗が、スロット導体210(上記切り欠かれている部分以外の部分)の導体抵抗以下となる。
【0036】
また、
図2に示すように、ステータ100は、径方向に隣り合うエンド導体220同士の間に配置される平板状の部材である絶縁部材230を備える。これにより、径方向に隣り合うエンド導体220同士を電気的に絶縁することが可能である。なお、絶縁部材230は、絶縁紙である。
【0037】
また、
図4に示すように、絶縁部材230は、絶縁部材230の平板状の表面230a(230b)が軸方向に沿った向きに配置されている。なお、絶縁部材230の径方向の厚みt1は、エンド導体220の径方向における厚みt2よりも小さい。
【0038】
また、スロット導体210の径方向における厚みt3は、エンド導体220の径方向における厚みt2よりも大きい。なお、厚みt3とは、スロット導体210のうち後述する段差部211aを設けるために切り欠かれている部分以外の部分の厚みである。
【0039】
ステータ100には、複数の絶縁部材230が設けられている。複数の絶縁部材230は、互いに同一の形状を有している。絶縁部材230は、エンド導体220と同様の形状(すなわちU字形状)を有しているとともにエンド導体220よりも一回り大きい(
図3の破線参照)。これにより、径方向に隣り合うエンド導体220同士が径方向に短絡(接触)するのが絶縁部材230によって確実に防止されるので、径方向に隣り合うエンド導体220同士をより確実に電気的に絶縁することが可能である。
【0040】
また、径方向に隣り合う6つのエンド導体220(
図4参照)のうち径方向外側から5番目のエンド導体220と径方向外側から6番目のエンド導体220とを絶縁する絶縁部材230のZ2側の端部230c(
図4参照)は、径方向に隣り合うスロット導体210の端部211同士の間に挿入されている。具体的には、径方向外側から1番目のスロット導体210および2番目のスロット導体210の端部211同士の間、径方向外側から3番目のスロット導体210および4番目のスロット導体210の端部211同士の間、および、径方向外側から5番目のスロット導体210および6番目のスロット導体210の端部211同士の間の各々に、絶縁部材230の端部230cが挿入されている。なお、絶縁部材230の端部230cは、エンド導体220の軸方向部分222と径方向に対向している部分である。また、絶縁部材230は、端部230cをスロット導体210の端部211同士の間に挿入するために、端部230c側の部分が径方向外側に折り曲げられている。
【0041】
上記のように、絶縁部材230の端部230cが径方向に隣り合うスロット導体210同士の間に挿入されることにより、径方向に隣り合うスロット導体210同士をより確実に絶縁することが可能である。
【0042】
なお、簡略化のため図示は省略されているが、ステータ100は、コイルエンド部22(エンド導体220および絶縁部材230)の全体をモールドする樹脂部を備える。
【0043】
図5に示すように、同一のスロット13に配置される任意の二つのスロット導体210において、径方向内側に配置されるスロット導体210とエンド導体220との接続箇所のエンド導体220における周方向の位置と、径方向外側に配置されるスロット導体210とエンド導体220との接続箇所のエンド導体220における周方向の位置とが、互いに異なるように構成されている。具体的には、径方向内側に配置されるスロット導体210とエンド導体220との接続箇所の軸方向部分222における周方向の位置と、径方向外側に配置されるスロット導体210とエンド導体220との接続箇所の軸方向部分222における周方向の位置とが、互いに異なるように構成されている。
【0044】
これにより、径方向内側に配置される一対のスロット導体210間の距離(
図5(a)参照)と、径方向外側に配置される一対のスロット導体210間の距離(
図5(b)参照)とが異なる場合であっても、同一形状のエンド導体220を用いてこれらのスロット導体210間を接続することができる。その結果、複数のスロット導体210間の距離に応じて複数種類のエンド導体220を準備する場合と比較して、部品コストや製造管理コストを下げることが可能となり、ステータ100を安価に製造することができる。なお、
図5(a)には、最も径方向内側に設けられるエンド導体220が図示されており、
図5(b)には、最も径方向外側に設けられるエンド導体220が図示されている。
【0045】
また、同一形状のエンド導体220を用いても、径方向内側のスロット導体210とエンド導体220(軸方向部分222)との接続箇所同士(
図5(a)参照)の間の距離と、径方向外側のスロット導体210と軸方向部分222(エンド導体220)との接続箇所同士(
図5(b)参照)の間の距離とを互いに異ならせることができる。その結果、互いに同一の形状を有するエンド導体220(軸方向部分222)を用いて、径方向内側のスロット導体210同士および径方向外側のスロット導体210同士の各々を容易に接続することができる。
【0046】
具体的には、
図6に示すように、互いに同一形状のエンド導体220(軸方向部分222)において、径方向外側から1番目、3番目、および5番目のスロット導体210との接続箇所(エンド導体220においてスロット導体210が重なっている部分)(
図6の左側のスロット13を参照)が互いに異なっている。また、互いに同一形状のエンド導体220(軸方向部分222)において、径方向外側から2番目、4番目、および6番目のスロット導体210との接続箇所(
図6の右側のスロット13を参照)が互いに異なっている。なお、ステータコア10に備えられる複数のエンド導体220は、全て同一の形状を有している。また、
図6では、簡略化のためにスロット13が2つのみ図示されているが、実際は、図示されているスロット13の間にも複数のスロット13が設けられている。
【0047】
詳細には、径方向内側に配置されるスロット導体210とエンド導体220との接続箇所のエンド導体220における周方向の位置は、径方向外側に配置されるスロット導体210とエンド導体220との接続箇所のエンド導体220における周方向の位置よりも、エンド導体220の周方向における中央部220a(
図3参照)寄りに位置するように構成されている。
【0048】
すなわち、径方向内側のスロット導体210に接続されているエンド導体220の部分222bの周方向の幅W3(
図3および
図6参照)は、径方向外側のスロット導体210に接続されているエンド導体220の部分222bの周方向の幅W3よりも大きい。
【0049】
これにより、径方向内側のスロット導体210同士を、エンド導体220の比較的中央部220a寄りの部分において接続することにより、径方向内側のスロット導体210の間の距離よりも周方向の長さが比較的大きいエンド導体220により径方向内側のスロット導体210同士を容易に接続することができる。
【0050】
また、
図5に示すように、軸方向部分222の周方向における幅W1(
図5(a)参照)は、複数のエンド導体220のうち最も径方向外側に配置されるエンド導体220に接続されるスロット導体210同士の間の周方向距離D1(
図5(b)参照)と、複数のエンド導体220のうち最も径方向内側に配置されるエンド導体220に接続されるスロット導体210同士の間の周方向距離D2(
図5(a)参照)との差分(D1-D2)の1/2を、スロット導体210の周方向における幅W2に加算した値以上である{W1≧W2+(D1-D2)/2}。
【0051】
これにより、径方向(R方向)から見て、径方向において最も内側から最も外側に渡って設けられる複数のエンド導体220の各々の軸方向部分222を、対応する(接続される)スロット導体210と重なる位置に配置することができる。その結果、エンド導体220(軸方向部分222)とスロット導体210とを容易に接続することができる。
【0052】
また、
図4に示すように、スロット導体210は、スロット導体210の軸方向の端部211に設けられ、接続されるエンド導体220が配置される段差部211aを含む。
【0053】
これにより、エンド導体220をスロット導体210の段差部211aに配置することによって、エンド導体220を容易に位置決め(径方向に位置決め)することができる。
【0054】
具体的には、段差部211aは、スロット導体210の端部211の径方向一方側が切り欠かれることによって形成されている。詳細には、径方向外側から1番目のスロット導体210の端部211の径方向外側、径方向外側から2番目のスロット導体210の端部211の径方向内側、径方向外側から3番目のスロット導体210の端部211の径方向外側、径方向外側から4番目のスロット導体210の端部211の径方向内側、径方向外側から5番目のスロット導体210の端部211の径方向外側、および、径方向外側から6番目のスロット導体210の端部211の径方向内側の各々が切り欠かれていることにより、各スロット導体210に段差部211aが設けられている。
【0055】
ここで、段差部211aのうち軸方向に沿って延びる側面211bと、エンド導体220の表面221bとは、銀ナノペースト(図示せず)によって接合されている。具体的には、段差部211aの側面211bとエンド導体220の表面221bとの間に銀ナノペーストが配置された状態で、段差部211aとエンド導体220とを径方向に挟むことにより押圧することによって、接合が行われる。なお、1つのスロット13内において径方向に並ぶ全て(すなわち6つ)のスロット導体210を、図示しない治具により径方向に挟むことにより押圧することによって、1つのスロット13内に設けられる全ての接合部分の接合が一度に行われる。
【0056】
また、段差部211aは、側面211bと接続され、軸方向に直交するように延びる底面211cを含む。
図7に示すように、底面211cの径方向における幅W4(
図4参照)は、周方向位置によって変化する。具体的には、底面211cの幅W4は、周方向の一方側から他方側に向かって徐々に大きく(小さく)なる。なお、底面211cの幅W4の最大値は、エンド導体220の径方向における厚みt2以下である。すなわち、エンド導体220のうち少なくとも一部は、段差部211aから径方向外側(または径方向内側)にはみ出ている。これにより、前述した図示しない治具による押圧作業を容易化することが可能である。
【0057】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0058】
たとえば、上記実施形態では、ステータコア10のコイルエンド部22がエンド導体220(第2導体)のみにより構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、所定の位置に対して径方向一方側に複数のエンド導体220により構成されるコイルエンド部が設けられ、かつ、上記所定の位置に対して径方向他方側にエンド導体220とは異なる形状のエンド導体により構成されるコイルエンド部が設けられていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、エンド導体220(第2導体)が、平板状の表面221a(221b)が軸方向に沿った向きに配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、エンド導体220が、平板状の表面が軸方向に交差する向きに配置されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、スロット導体210(第1導体)は、エンド導体220(第2導体)が配置される段差部211aを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、スロット導体210は、エンド導体220が配置される溝部(スリット)を有していてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、スロット導体210(第1導体)とエンド導体220(第2導体)とが銀ナノペーストにより接合される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、スロット導体210(第1導体)とエンド導体220(第2導体)とが溶接により接合されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、絶縁部材230の径方向における厚みt1が、エンド導体220(第2導体)の径方向における厚みt2よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。絶縁部材230の径方向における厚みt1が、エンド導体220の径方向における厚みt2以上であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ステータコア10に対して軸方向の両側にエンド導体220(第2導体)が設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。ステータコア10に対して軸方向の一方側のみにエンド導体220が設けられていてもよい。
【0064】
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0065】
ステータ(100)は、径方向に隣り合う第2導体(220)同士の間に配置される平板状の部材であって、平板状の表面(230a、230b)が軸方向に沿った向きに配置される絶縁部材(230)を備える。
【0066】
第1部分(222)および第2部分(223)を含む第2導体(220)は、径方向から見て、U字形状を有し、第2導体の第2部分は、第2導体の一対の第1部分同士の間に配置される第1導体(210)に対して、ステータコア(10)とは軸方向の反対側に設けられているとともに、一対の第1部分同士の間に配置される第1導体と離間して配置されている。
【0067】
第1導体(210)の径方向における厚み(t3)は、第2導体(220)の径方向における厚み(t2)よりも大きい。
【符号の説明】
【0068】
10…ステータコア、13…スロット、20…コイル部、21…スロット収容部、22…コイルエンド部、100…ステータ、210…スロット導体、211…端部(第1導体の端部)、211a…段差部、220…エンド導体、221a、221b…表面、222…軸方向部分(第1部分)、222a…端部(第1部分の端部)、223…周方向部分(第2部分)、D1…周方向距離(径方向外側の第1導体同士の距離)、D2…周方向距離(径方向内側の第1導体同士の距離)、W1…幅(第1の幅)、W2…幅(第2の幅)