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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086888
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/12 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
A42B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199160
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緑川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】大月 信一
(72)【発明者】
【氏名】崔 成根
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107BA06
3B107DA03
(57)【要約】
【課題】高い装着感を得ることができるヘルメットを提供するを提供する。
【解決手段】人頭を覆う殻体1と、殻体1と人頭との間に設けられる内装体とを備える。内装体は、人頭に接するハンモック2と、殻体1の人頭への接近を規制する規制部6とを備える。ハンモック2は、2つの前側脚部51と2つの後側脚部52とを備える。各前側脚部51及び各後側脚部52は、殻体1に連結するための連結部12を備える。ハンモック2を展開状態で平面視したとき、前側脚部51の連結部12と後側脚部52の連結部12を結んだ四角形の対角線の交点Aは、殻体1の頭頂Pに対応する位置より後方に位置し、規制部6は、四角形の対角線の交点Aよりも前方に位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人頭を覆う殻体と、該殻体と人頭との間に設けられる内装体とを備えるヘルメットにおいて、
前記内装体は、人頭に接するハンモックと、該ハンモックと前記殻体との間に位置して前記殻体の人頭への接近を規制する規制部とを備え、
前記ハンモックは、頭頂側から前方に向かって互いに離反しつつ同じ長さに延びる2つの前側脚部と、頭頂側から後方に向かって互いに離反しつつ同じ長さに延びる2つの後側脚部とを備え、
各前側脚部及び各後側脚部は、その夫々の先端部に、前記殻体に連結するための連結部を備え、
前記殻体から取り外した前記ハンモックを展開状態で平面視したとき、両前側脚部の前記連結部と両後側脚部の前記連結部を結んだ四角形の対角線の交点は、前記殻体の頭頂に対応する位置より後方に位置し、前記規制部は、前記四角形の対角線の交点よりも前方に位置することを特徴とするヘルメット。
【請求項2】
前記規制部は、前記四角形の対角線上に位置することを特徴とする請求項1記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメットは、殻体と、殻体の内側に設ける内装体とを備えて構成される。殻体は、硬質の合成樹脂材料等で形成されており、人頭を外側から覆って保護する。内装体は、殻体に連結する複数の脚部を備えて人頭に接するハンモックと、ハンモックの下端側で人頭外周に装着して固定するヘッドバンドとを備え、更に、装着状態を維持するための顎ひもや衝撃を吸収するための衝撃吸収ライナ等を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、衝撃吸収ライナを備えるヘルメットは、内部に熱こもりや蒸れが生じて着用時の快適性が損なわれるおそれがあるため、衝撃吸収ライナを設けることなく、内装体により衝撃を吸収し、ヘルメット内部の通気性や放熱を確保したものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-311713号公報
【特許文献2】特開2017-133124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のヘルメットは、殻体からの衝撃の一部を内装体が吸収することが求められ、人頭に接しているハンモックの各脚部においては、殻体が受けた衝撃荷重を効率よく分散させるために、各脚部の位置がバランスよく配設されている必要があった。
【0006】
しかし、例えば、顔面上部(特に目の周囲)の頭蓋の形状による凹凸に、装着したハンモックの脚部が接触すると、すれが生じる等によって装着感が著しく低下するおそれがある。更には、装着者が、ヘルメットの装着時に苦痛を感じる等により、故意に正しく装着しないおそれがある。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、装着感を向上させることができるヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、人頭を覆う殻体と、該殻体と人頭との間に設けられる内装体とを備えるヘルメットにおいて、前記内装体は、人頭に接するハンモックと、該ハンモックと前記殻体との間に位置して前記殻体の人頭への接近を規制する規制部とを備え、前記ハンモックは、頭頂側から前方に向かって互いに離反しつつ同じ長さに延びる2つの前側脚部と、頭頂側から後方に向かって互いに離反しつつ同じ長さに延びる2つの後側脚部とを備え、各前側脚部及び各後側脚部は、その夫々の先端部に、前記殻体に連結するための連結部を備え、前記殻体から取り外した前記ハンモックを展開状態で平面視したとき、両前側脚部の前記連結部と両後側脚部の前記連結部を結んだ四角形の対角線の交点は、前記殻体の頭頂に対応する位置より後方に位置し、前記規制部は、前記四角形の対角線の交点よりも前方に位置することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明において、前記規制部は、前記四角形の対角線上に位置することが好ましい。
【0010】
本発明のヘルメットにおけるハンモックは、2つの前側脚部と、2つの後側脚部とを備えている。そして、前記四角形の対角線の交点が、殻体の頭頂に対応する位置より後方に位置することにより、2つの前側脚部の広がり角度が2つの後側脚部の広がり角度よりも大きくなる。これにより、装着者の顔面上方よりも後方にずれた位置(こめかみの後方側)に2つの前側脚部を位置させることができ、脚部が人頭に接触したときの不快感を軽減することができる。
【0011】
ところで、2つの前側脚部の広がり角度が2つの後側脚部の広がり角度よりも大きくなると、殻体から受けたときに前側脚部に伝達される荷重が、後側脚部よりも大きくなる。そして、前側脚部に大きな荷重が伝達されると、前側脚部に伸長等が生じて殻体が人頭に接近するが、本発明は、前記四角形の対角線の交点よりも前方に前記規制部が設けられていることにより、殻体の人頭への接近が適度に規制される。従って、殻体と人頭との接触を確実に防止したうえで装着感を向上させることができる。
【0012】
更に、前記規制部が前記四角形の対角線上に位置することにより、夫々の前記対角線を形成している前側脚部と後側脚部との間に前記規制部が配置され、これによって、前側脚部と後側脚部との間でバランスよく殻体の人頭への接近を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態であるヘルメットの説明図。
図2】ハンモックを展開して示す斜視図。
図3図2の平面図。
図4】脚部の説明的側面図。
図5】殻体に連結した連結部の説明的断面図。
図6】連結部の説明的平面図。
図7】規制部の形状を示す説明図。
図8】規制部の作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のヘルメットは、硬質材料によりドーム状に形成された殻体1を備えている。殻体1の内部には、ハンモック2が設けられている。ハンモック2は、内装体を構成している。内装体は、ハンモック2以外にも、ヘッドバンド3や図示しない顎ひも等を備えている。
【0015】
ハンモック2は、合成樹脂(例えば低密度ポリエチレン等)を材料として射出成型により形成されている。ハンモック2は、図2及び図3に示すように、頭頂環状部4と、複数(本実施形態においては4本)の脚部5と、頭頂環状部4に連設された規制部6と、互いに隣り合う脚部5の間に設けられた衝撃吸収部7とを備えている。
【0016】
また、脚部5の一方側縁(前側縁)にはヘッドバンド3を連結するヘッドバンド連結片8が設けられ、脚部5の他方側縁(後側縁)には図示しない顎ひもを連結する顎ひも連結片9が設けられている。
【0017】
図2に示すように、頭頂環状部4は、前後方向に長い略楕円形状に形成されている。頭頂環状部4の内側には、張出部10が設けられている。張出部10は、頭頂環状部4の人頭への接触範囲を拡大して、装着感を向上させる。なお、本実施形態においては、軽量化のために、張出部10の形状に沿って抜き孔11が形成されている。
【0018】
各脚部5は、帯状に形成され、その上端が頭頂環状部4に連結されている。各脚部5の下端(先端)には連結部12が設けられている。
【0019】
また、各脚部5には、夫々、複数の(本実施形態では2つの)凸部13,14が形成されている。脚部5においては、凸部13,14が厚肉部とされ、凸部13,14と連結部12とを除く他の部分が薄肉部15とされている。
【0020】
薄肉部15は柔軟性が高く、凸部13,14は柔軟性が低い。このため、脚部5が人頭に沿って湾曲したときに、図4に示すように、部分的に曲率が異なり、人頭に接する部分と接しない部分(或いは、人頭に強く当たる部分と弱く当たる部分)が生じる。
【0021】
脚部5が人頭に接するとき、脚部5の幅は広いよりも狭い方がハンモック2を軽量とすることができるが、その反面、人頭に対して幅の狭い脚部5が当接すると、殻体1の荷重が連続する線状に人頭に付与されて(例えば皮膚に食い込むような感触が生じて)、装着感が低下する。
【0022】
このとき、脚部5に柔軟性が高い薄肉部15及び柔軟性が低い凸部13,14が形成されていることにより、脚部5が人頭に対して断続的に当接し、殻体1の荷重が連続する線状に人頭に付与される場合に比べて、皮膚に食い込むような感触等が軽減されるので、装着感の低下が抑制される。
【0023】
また、ハンモック2は合成樹脂材料を用いて射出成形により形成されている。この射出成形においては、金型の脚部5に対応する部分が比較的狭く長い。このような狭く長い金型内部を溶融樹脂が流れるときには、流動抵抗等に起因する成型不良が生じやすいが、金型の凸部13,14(厚肉部)に対応する部分が溶融樹脂溜まりとなる。よって、金型の脚部5に対応する比較的狭い部分の距離が実質的に短くなり、成型不良の発生を防止することができる。
【0024】
更に、脚部5の凸部13,14は、脚部5と殻体1との間に空隙を形成する。そして、複数の凸部13,14のうち、最も連結部12に近い位置に形成されている凸部13は、指掛け部として機能する。
【0025】
殻体1の内面には、脚部5を連結する際に連結部12を係止するための鋲状部16(係止部)が設けられている。鋲状部16は、図5に示すように、殻体1の内面に突出する鋲軸16aと、鋲軸16aの頂部で拡径する円盤状の鋲頭16bとを備えている。
【0026】
連結部12には、図2及び図6に示すように、鋲状部16が貫通自在となる大きさの大径開口部12aと、鋲状部16が貫通不能であり鋲軸16aの外径に略対応する大きさの小径開口部12bとが隣接且つ連続して形成されている。小径開口部12bは大径開口部12aに対して下方位置(脚部5の先端側)に形成されている。
【0027】
脚部5を殻体1に連結するときには、連結部12の大径開口部12aに鋲状部16の鋲頭16bを貫通させ、次いで、連結部12を殻体1の内面に沿って殻体1の頭頂方向に向かってスライドさせ、鋲軸16aを小径開口部12bに嵌め込む。
【0028】
殻体1から脚部5を外すときには、連結部12を殻体1の内面に沿って殻体1の下縁に向かってスライドさせ、相対的に、鋲状部16の鋲軸16aを小径開口部12bから大径開口部12aに移動させる。
【0029】
このとき、図4に示した脚部5の凸部13(指掛け部)に指を掛けることにより、連結部12のスライド操作を確実に行うことができ、鋲軸16aが小径開口部12bに強固に嵌まり込んでいても、鋲軸16aと小径開口部12bとの係合を円滑に解除することができる。
【0030】
そして、大径開口部12aに移動した鋲状部16の鋲頭16bを大径開口部12aから抜き取ることにより、殻体1から脚部5を外すことができる。
【0031】
なお、図6に示すように、取り外し時のスライド方向を示す案内マーク17(表示部)を凸部13(指掛け部)に設けておくことにより、取り外し時のスライド操作方向を容易に視認することができるだけでなく、指を掛ける凸部13(指掛け部)の位置も判別し易くなる。
【0032】
また、本実施形態においては、図2に示すように、脚部5の両側にヘッドバンド連結片8と顎ひも連結片9とが設けられていることにより、これらを指掛け片として利用することも可能である。即ち、ヘッドバンド連結片8と顎ひも連結片9とに指を掛けて、連結部12を殻体1の内面に沿って殻体1の下縁に向かってスライドさせることで、殻体1から脚部5を容易に外すことができる。
【0033】
衝撃吸収部7は、前方、後方、左右の4か所に設けられている。このうち、左右の衝撃吸収部7は、規制部6に連設されている。
【0034】
次に、本発明の要旨となる脚部5及び規制部6について説明する。図3に示すように、脚部5は、2つの前側脚部51と2つの後側脚部52とで構成されている。2つの前側脚部51は、同じ長さに形成されており、頭頂側から前方に向かって互いに離反しつつ延びている。同様に、2つの後側脚部52も、同じ長さに形成されており、頭頂側から後方に向かって互いに離反しつつ延びている。
【0035】
2つの前側脚部51の連結部12の小径開口部12bの中心及び2つの後側脚部52との連結部12の小径開口部12bの中心からなる4つの点を仮想線で結ぶと四角形S(図3においては逆台形)が形成される。なお、本実施形態においては、4つの連結部12の小径開口部12bの中心を仮想線で結んで四角形Sを形成したが、4つの連結部12の先端を結んで四角形を形成してもよい。
【0036】
2つの前側脚部51及び2つの後側脚部52は、この四角形Sの対角線の交点Aが、頭頂を通る鉛直線(図示せず)の位置に対応する点P(以下、平面視上の頭頂点Pという)よりも後方に位置するように形成されている。
【0037】
そして、規制部6は、四角形Sの対角線の交点Aよりも前方に位置し、更に詳しくは、規制部6は、四角形Sの対角線上に位置している。
【0038】
四角形Sの対角線の交点Aが平面視上の頭頂点Pよりも後方に位置することにより、2つの前側脚部51が互いに離間する角度である前方開き角は、2つの後側脚部52が互いに離間する角度である後方開き角よりも大きい。
【0039】
これにより、ハンモック2を殻体1の内部に取り付けた状態の2つの前側脚部51の位置は、ヘルメットを装着したときの装着者のこめかみ位置の僅かに後方に位置することとなる。このような2つの前側脚部51の位置は、装着者の顔面上方の頭蓋の凹凸を回避して後方にずらした位置である。これにより、前側脚部51が人頭に接触したときの不快感を軽減することができる。
【0040】
更に、四角形Sの対角線の交点Aよりも前方に規制部6を配置したことにより、2つの前側脚部51の前方開き角が比較的大きくても、殻体1の人頭への接近を確実に規制することができる。更に、規制部6を四角形Sの対角線上に配置することで、規制部6による規制が、前側脚部51と後側脚部52との間でバランスよく行われる。規制部6による規制については後述する。
【0041】
また、四角形Sの対角線の交点Aからハンモック2の前後方向に延びる直線を前後直線B(仮想線)とし、四角形Sの対角線の交点Aから前後直線Bに直交してハンモックの左右方向に延びる直線を左右直線C(仮想線)としたとき、左右直線Cに対応する位置には、規制部6が存在していない非規制空間Dが形成されている。非規制空間Dは、ハンモック2の変形を許容し、柔らかい装着感を得ることができるようになっている。
【0042】
規制部6は、図2に示すように、頭頂より僅かに前側寄りで且つ頭頂から左右にずれた位置に一対設けられ、図7Aの斜視図に示すように、規制部本体61と、規制部本体61を支持する規制部支持部62とを備えている。規制部支持部62は、頭頂環状部4に一体に設けられ、規制部6の基端面を形成している。規制部支持部62は、延出部63を介して左右の衝撃吸収部7を支持している。
【0043】
規制部本体61は、複数の六角筒状の筒状体61aを複数集合させたハニカム形状であり、その先端面61bが殻体1の内面に対向する。筒状体61aが六角筒状であることにより、隣接する筒状体61a同士で周壁を共有するハニカム形状の規制部本体61を構成することができる。
【0044】
また、規制部本体61は、複数の筒状体61aを有する構造であることにより、規制部本体61の周壁側から内方側にかけて、段階的に座屈強度が増加する構造とすることができる。
【0045】
即ち、図8に示すように、殻体1の頭頂部に衝撃荷重を受けると、殻体1の頂部が凹入変形し、殻体1内面と人頭との距離が小さくなる。これに伴い、殻体1が圧接した規制部本体61は、その上端部の周縁角部の一部に座屈変形が生じる。一方、規制部本体61の他部には座屈変形が殆ど生じることなく殻体1の人頭への接近を規制するので、殻体1の人頭への接触が防止される。
【0046】
また、規制部6は、基端面である規制部支持部62から先端面61bまでの長さ寸法Lが20mmとされている。なお、当該寸法Lは、15mm~25mmの範囲内で設定することが好ましい。
【0047】
規制部支持部62から先端面61bまでの長さ寸法Lを15mm~25mmの範囲内で設定することは、本発明者が各種試験によって取得した知見に基づいている。この知見によれば、当該寸法Lが25mmより大であると、規制部6を収容するための殻体1と人頭と間の間隙を大きくしなければならない。そのために、着用時のヘルメットの高さ(殻体1の頭頂位置)が人頭の位置に比べて極度に高くなり、着用時のヘルメットのフィット感や安定感を損なうおそれがある。また、当該寸法Lが15mmより小であると、規制部本体61の座屈変形が発生し難く、或いは、殻体1が衝撃により変形した際に、殻体1と人頭との間の距離が十分に確保できない。
【0048】
従って、規制部6の規制部支持部62から先端面61bまでの長さ寸法Lを15mm~25mmの範囲内で設定することにより、着用時のヘルメットの高さを抑えて人頭と殻体1との間に形成される空隙内に規制部6を収めることができ、且つ、凹入変形した殻体1からの押圧を受けたときに、規制部6に座屈を発生させつつ殻体1を人頭に接触しない位置で確実に規制することができる。
【0049】
更に、図7Bに規制部本体61の先端面61bの平面形状を示すように、規制部6は、先端面61bの外接円W(仮想線)の直径Rが30mmとされている。なお、当該外接円Wの直径Rは、10mm~50mmの範囲内で設定することが好ましい。
【0050】
先端面61bの外接円Wの直径Rを10mm~50mmの範囲内で設定することは、本発明者が各種試験によって取得した知見に基づいている。この知見によれば、当該直径Rが50mmより大であることは、殻体1の人頭への接近を規制する上での規制部6の大きさが不必要な大きさとなり、ヘルメットの軽量化を阻害する不都合がある。また、当該直径Rが10mmより小さいと、規制部本体61が座屈変形する前に規制部本体61の倒れが生じて殻体1の人頭への接近を規制するために必要な規制力が発揮できない。
【0051】
従って、規制部6の先端面61bの外接円Wの直径Rを10mm~50mmの範囲内で設定することにより、規制部6をできるだけ小さく形成して軽量化を可能とすることができ、しかも、凹入変形した殻体1からの押圧を受けたときに、規制部6が倒れることなく確実に座屈を発生させて十分な規制力を発揮させることができる。
【0052】
また、規制部6は、図8に示すような座屈変形が生じるが、本実施形態においては、圧縮時の変形量を2mmとするために少なくとも500Nの荷重が必要となるように強度が設定されている。
【0053】
規制部6の強度は本発明者が各種試験の結果から得られた知見に基づいて設定したものである。即ち、本発明者は、規制部6が500N未満の荷重で変形する場合には、十分な規制力が発揮されないことを知見した。よって、規制部6の圧縮時の変形量が2mmとするために少なくとも500Nの荷重が必要となるように強度を設定することで、十分な規制力が得られ、殻体1の人頭への接近を確実に規制することができる。
【0054】
以上のように、規制部6の規制部本体61によって、殻体1の人頭への接触を防止する作用が得られるので、ハンモック2の脚部5への負担を極めて小さくすることができる。従って、脚部5を比較的薄く或いは比較的細くすることが可能となるので、合成樹脂材料を少なくすることによるコストの低減や、ハンモック2の軽量化が可能となる。
【0055】
また、図7Aに示すように、規制部支持部62は板状に形成されて規制部本体61の底部を閉塞しており、例えば、規制部本体61の筒状体61aが直接人頭に接しないようにして、装着感の低下を防止している。
【0056】
上記構成によって、規制部6は、規制部本体61を構成する各筒状体61aの周壁の壁厚、筒状体61aの数(本発明における規制部の筒状体は1つでもよいし、複数でもよい)、筒状体61aの高さ、筒状部61aの径を、適宜設定することにより、殻体1から受ける圧接に伴う潰れ速度や潰れ形状等を容易に調整することができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、規制部6をハンモック2に一体に設けた例を示したが、本発明の規制部はハンモックと別体に設けてもよい。具体的には図示しないが、例えば、ハンモックと殻体との間に支持部を設けて当該支持部に規制部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…殻体、2…ハンモック(内装体)、3…ヘッドバンド(内装体)、4…頭頂環状部、5…脚部、51…前側脚部、52…後側脚部、6…規制部、7…衝撃吸収部、8…ヘッドバンド連結片、9…顎ひも連結片、10…張出部、11…抜き孔、12…連結部、13,14…凸部(厚肉部)、15…薄肉部、13…凸部(指掛け部)、16…鋲状部(係止部)、16a…鋲軸、16b…鋲頭、12a…大径開口部、12b…小径開口部、17…案内マーク(表示部)、61…規制部本体、62…規制部支持部、63…延出部、61a…筒状体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8