(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086919
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 29/08 20060101AFI20220602BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H02K29/08
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199218
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 龍之
【テーマコード(参考)】
5H019
5H621
【Fターム(参考)】
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB15
5H019BB20
5H019CC03
5H019DD10
5H019EE09
5H019EE14
5H621AA03
5H621BB10
5H621GA01
5H621GB08
(57)【要約】
【課題】モータ特性のバリエーションを容易に増やすことが可能なブラシレスモータを提供する。
【解決手段】本発明のブラシレスモータ30は、周方向に配列された複数のコイル42を有するステータ40と、界磁マグネット51を有し、ステータ40に対して回転するロータ50と、ステータ40に装着され、複数のコイル42にそれぞれ接続される接続パターンを有する基板60と、を備え、接続パターンは、複数のコイル42にそれぞれ接続されることでコイル42の結線パターンを構成する。ステータ40には、互いに異なる接続パターンを有することで互いに異なるコイル42の結線パターンを構成し得る複数種類の基板60を、選択的に装着可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に配列された複数のコイルを有するステータと、
界磁マグネットを有し、前記ステータに対して回転するロータと、
前記ステータに装着され、複数の前記コイルにそれぞれ接続される接続パターンを有する基板と、を備え、
前記接続パターンは、複数の前記コイルにそれぞれ接続されることで前記コイルの結線パターンを構成し、
前記ステータには、互いに異なる前記接続パターンを有することで互いに異なる前記コイルの結線パターンを構成し得る複数種類の前記基板を、選択的に装着可能であることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
周方向に配列された複数のコイルを有するステータと、
界磁マグネットを有し、前記ステータに対して回転するロータと、
前記ステータに装着され、前記ロータの回転位置を検出する位置検出センサを有する基板と、を備え、
前記基板には、複数の前記コイルにそれぞれ接続されて前記コイルの結線パターンを構成する接続パターンが設けられていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項3】
前記位置検出センサは、前記界磁マグネットを検出することを特徴とする請求項2に記載のブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のブラシレスモータは、複数のコイルを周方向に配列したステータと、コイルに電力が供給された際に発生する回転磁界により回転するロータと、を備える。また、ステータの軸方向端部には、複数のコイルに接続されるバスバーユニットが設けられている。バスバーユニットは、U相、V相及びW相(三相)のそれぞれのコイルに電力を供給(分配)するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ブラシレスモータでは、その使用用途やユーザからの要求等に応じて、モータ特性(定格出力等)が異なるものが求められる。このため、求められるモータ特性に応じて、コイルの巻線仕様(線径や巻数)を調整することがある。この場合、ブラシレスモータの製造ライン上にある自動巻線機にセットされるコイル(線材)を別のものに変更したり、自動巻線機のプログラムを別のものに変更したりする必要があり、ブラシレスモータの生産性の悪化を招いていた。
【0005】
また、ステータのステータコアがステータの軸方向に積層した複数の鋼板によって構成される場合には、求められるモータ特性に応じて、鋼板の積層枚数を変更する(ステータコアの軸方向長さを変える)こともある。しかしながら、この場合においても、自動組み立て装置のプログラムを別のものに変更したりする必要があり、モータ特性のバリエーションを増やすには限界が生じていた。
【0006】
本発明は、コイルの巻線仕様やステータコアを構成する鋼板の積層枚数を変更することなく、モータ特性のバリエーションを容易に増やすことが可能なブラシレスモータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るブラシレスモータは、周方向に配列された複数のコイルを有するステータと、界磁マグネットを有し、前記ステータに対して回転するロータと、前記ステータに装着され、複数の前記コイルにそれぞれ接続される接続パターンを有する基板と、を備え、前記接続パターンは、複数の前記コイルにそれぞれ接続されることで前記コイルの結線パターンを構成し、前記ステータには、互いに異なる前記接続パターンを有することで互いに異なる前記コイルの結線パターンを構成し得る複数種類の前記基板を、選択的に装着可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るブラシレスモータは、周方向に配列された複数のコイルを有するステータと、界磁マグネットを有し、前記ステータに対して回転するロータと、前記ステータに装着され、前記ロータの回転位置を検出する位置検出センサを有する基板と、を備え、前記基板には、複数の前記コイルにそれぞれ接続されて前記コイルの結線パターンを構成する接続パターンが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板には、コイルの結線パターンを構成する接続パターンが設けられている。このため、互いに異なる接続パターンを有する複数種類の基板から一つの基板を選択してステータに装着するだけで、異なるモータ特性を有するブラシレスモータを得ることができる。したがって、コイルの巻線仕様などを変更することなく、ブラシレスモータのモータ特性のバリエーションを容易に増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態におけるブラシレスモータを含む電動アクチュエータを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電動アクチュエータの断面図である。
【
図3】
図1に示す電動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図4】
図1~3のブラシレスモータにおけるコイルの結線パターンの第一例を示す電気回路図である。
【
図5】
図4に示す第一例の結線パターンを構成するための基板の接続パターンの第一例を示す平面図である。
【
図6】
図5に示す第一例の接続パターンを4つの層に分けて示す平面図であり、(a)は第1層を示し、(b)は第2層を示し、(c)は第3層を示し、(d)は第4層を示す。
【
図7】
図1~3のブラシレスモータにおけるコイルの結線パターンの第二例を示す電気回路図である。
【
図8】
図7に示す第二例の結線パターンを構成するための基板の接続パターンの第二例を示す平面図である。
【
図9】
図8に示す第二例の接続パターンを4つの層に分けて示す平面図であり、(a)は第1層を示し、(b)は第2層を示し、(c)は第3層を示し、(d)は第4層を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係るブラシレスモータは、電動アクチュエータに適用される。本実施形態の電動アクチュエータは、電動歩行補助車の駆動源として当該歩行補助車の車輪に内蔵される。すなわち、本実施形態の電動アクチュエータは、電動歩行補助車の駆動源として当該歩行補助車に搭載されるインホイールモータである。ただし、本発明が適用される電動アクチュエータの用途は、電動歩行補助車の駆動源に限定されない。
【0012】
図1~3に示すように、本実施形態に係る電動アクチュエータ1は、ハウジング10と、ブラシレスモータ30と、減速機構70と、を備える。
【0013】
ハウジング10は、後述するブラシレスモータ30を収容する。ハウジング10は、扁平な円盤状の外形を有し、カバー11と、ブラケット12と、を備える。カバー11及びブラケット12は、ブラシレスモータ30を間に挟むように設けられる。カバー11とブラケット12とは、複数本のねじSC(
図1)によって互いに固定される。
【0014】
カバー11は、円盤状の底壁13と、底壁13の周縁から立ち上がる筒状の側壁14と、を有する。カバー11の側壁14には、2つのケーブル固定部15が設けられている。各ケーブル固定部15には、コネクタ付きケーブル16,17が固定される。各コネクタ付きケーブル16,17の一端側は、ケーブル固定部15を通してカバー11(ハウジング10)内に引き入れられ、後述するブラシレスモータ30の基板60にそれぞれ接続される。各コネクタ付きケーブル16,17の他端側には、バッテリ、操作スイッチコントローラなどの外部機器に接続するための外部コネクタ16A,17Aが設けられている。
【0015】
ブラケット12は、ハウジング10の外側から見て段付きの筒形状に形成されている。ブラケット12の外周部には、カバー11に固定されるフランジ部18が設けられている。
【0016】
図2,3に示すように、ブラシレスモータ30は、その軸方向D1がハウジング10のカバー11及びブラケット12の配列方向に向くようにしてハウジング10に収容される。ブラシレスモータ30は、軸方向寸法が径方向寸法よりも小さい扁平形状に形成されている。ブラシレスモータ30は、ステータ40と、ロータ50と、基板60と、を備えている。
【0017】
ステータ40は、ステータコア41と、複数のコイル42と、を有する。
ステータコア41は、積層された複数の鋼板によって環状に形成されている。ステータコア41は、ハウジング10のブラケット12に固定されている。ステータコア41には、電気的な絶縁材料によって形成されたインシュレータ43が装着されている。インシュレータ43は、例えばPBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂によって形成されている。
【0018】
コイル42は、ステータコア41の周方向に複数配列されている。各コイル42は、導線がインシュレータ43によって覆われたステータコア41のティースに巻き付けられることで構成されている。すなわち、各コイル42とステータコア41との間にはインシュレータ43が介在している。これにより、各コイル42とステータコア41とが電気的に絶縁されている。これら複数のコイル42には、外部の電力が、2つのコネクタ付きケーブル16,17のうち第一コネクタ付きケーブル16、及び、後述する基板60の接続パターン62(
図4,5)を介して供給される。複数のコイル42は、3相(U相、V相、W相)構造となるように、基板60の接続パターン62によって結線される。すなわち、複数のコイル42は、
図4に例示するように、2つのU相コイル42Uと、2つのV相コイル42Vと、2つのW相コイル42Wと、を有する。
【0019】
図2,3に示すように、ロータ50は、界磁マグネット51を有し、ステータ40に対して回転するように設けられている。界磁マグネット51は、永久磁石であって、例えばステータコア41のコイル42に対向する側にN極とS極とが交互に現れるように、ロータ50の周方向に複数配列されてよい。また、界磁マグネット51は、例えばN極に着磁された部分とS極に着磁された部分とがロータ50の周方向に交互に並ぶ環状に形成されてもよい。
【0020】
ロータ50の中央にはロータ軸52が設けられている。ロータ軸52は、ロータ50に固定され、ロータ50と一体に回転する。ロータ軸52は、軸受を介してブラケット12に回転可能に支持されている。このため、ロータ50が回転すると、ロータ軸52がブラケット12に対して回転する。
本実施形態のブラシレスモータ30では、界磁マグネット51がロータ50の外周に設けられ、ロータ50がステータ40の内側に配置されている。すなわち、本実施形態のブラシレスモータ30は、インナーロータ型のブラシレスモータである。
【0021】
基板60は、ステータ40に装着される。基板60は、その厚さ方向をブラシレスモータ30の軸方向D1に向けた状態で、ブラシレスモータ30の軸方向D1においてステータ40及びロータ50に隣り合わせて配置される。
【0022】
基板60は、ロータ50の回転位置を検出する位置検出センサ61を有する。位置検出センサ61は、軸方向D1においてステータ40及びロータ50に対向する基板60の第一面60aに設けられている。本実施形態の位置検出センサ61は、ロータ50の界磁マグネット51を検出する。すなわち、位置検出センサ61は、ロータ50の回転に伴う界磁マグネット51の磁界変化を検出するホール素子である。
位置検出センサ61は、界磁マグネット51の検出(磁界変化)に応じた信号を出力する。位置検出センサ61から出力された信号は、基板60及び2つのコネクタ付きケーブル16,17のうち第二コネクタ付きケーブル17を介して不図示のコントローラ等に入力される。
【0023】
図5に示すように、基板60は接続パターン62を有する。接続パターン62は、基板60をステータ40に装着した状態で複数のコイル42にそれぞれ接続される。
本実施形態における接続パターン62は、
図4に例示するように、スター結線方式で複数のコイル42を結線する。具体的に、接続パターン62は、U相コイル42Uに接続されるU相用配線63Uと、V相コイル42Vに接続されるV相用配線63Vと、W相コイル42Wに接続されるW相用配線63Wと、U相コイル42U、V相コイル42V及びW相コイル42Wに接続される中性点用配線63Nと、を有する。
【0024】
そして、基板60の接続パターン62は、複数のコイル42と共にコイル42の結線パターン64を構成する。
図4に例示するコイル42の結線パターン64は、各相の2つのコイル42が並列に接続された結線パターン64P(並列結線パターン64P)である。このため、接続パターン62としてのU相用配線63U、V相用配線63V、W相用配線63W及び中性点用配線63Nは1つずつとなる。U相用配線63U、V相用配線63V、W相用配線63Wは、それぞれ基板60の接続コネクタ65に接続される。
接続コネクタ65は、
図2に示すように、第一面60aと反対側に向く基板60に第二面60b(カバー11の底壁13に対向する面)に設けられ、前述した第一コネクタ付きケーブル16に接続される。これにより、外部の電力を、第一コネクタ付きケーブル16、及び、基板60の接続パターン62(U相用配線63U、V相用配線63V、W相用配線63W、中性点用配線63N)を介して複数のコイル42に供給することができる。
【0025】
図5,6に示すように、基板60は、上記した接続パターン62の他に、グランド用配線66やセンサ用配線67も有する。グランド用配線66は、接続コネクタ65と、接地されているハウジング10の金属部分と、を接続する。図示しないが、センサ用配線67は、位置検出センサ61と第二コネクタ付きケーブル17とを接続する。
【0026】
本実施形態における基板60は、多層配線基板である。そして、基板60の接続パターン62は、
図5,6に例示するように、基板60の厚さ方向に並ぶ複数の層L1~L4(第一層L1、第二層L2、第三層L3、第四層L4)にそれぞれ形成された複数の接続配線63(U相用配線63U、V相用配線63V、W相用配線63W、中性点用配線63N)によって構成されている。各接続配線63は、コイル42に接続される端末結線部63Tを有する。端末結線部63Tは、基板60の外周部に位置することで、コイル42に接続することができる。複数の端末結線部63Tは、基板60の厚さ方向において互いに重ならないように、基板60の周方向に間隔をあけて配列されている。
【0027】
図5,6に例示する基板60の接続パターン62では、複数の接続配線63ができるだけ基板60の厚さ方向において互いに重ならないように位置している。具体的に、互いに異なる層に位置する接続配線63は、基板60の厚さ方向から見て交差するだけであり、接続配線63の長手方向が互いに平行した状態では重ならない。これにより、互いに異なる層に位置する接続配線63が積極的に重なる場合と比較して、通電による接続配線63の熱が基板60の内部において籠ることを抑制することができる。
【0028】
以下、
図4~6に示す第一例の基板60の配線構造について、より具体的に説明する。
接続パターン62のU相用配線63Uは、基板60の第一層L1と第三層L3とに跨って形成されている。U相用配線63Uは、基板60の中央部分を通るように帯状に延びている。U相用配線63Uの両端の端末結線部63Tは、U相用配線63Uの他の部分よりも径方向外側に位置する。
接続パターン62のV相用配線63Vは、基板60の第一層L1と第二層L2とに跨って形成されている。V相用配線63Vは、基板60の中央部分を通るように帯状に延びている。V相用配線63Vの両端の端末結線部63Tは、V相用配線63Vの他の部分よりも径方向外側に位置する。
【0029】
接続パターン62のW相用配線63Wは、基板60の第一層L1のみに形成されている。W相用配線63Wは、基板60の中央部分を通るように帯状に延びている。W相用配線63Wの両端の端末結線部63Tは、W相用配線63Wの他の部分よりも径方向外側に位置する。
接続パターン62の中性点用配線63Nは、基板60の第四層L4のみに形成されている。中性点用配線63Nは、基板60の外周部において周方向に延びる円環状に形成されている。中性点用配線63Nの6つの端末結線部63Tは、円環状の部分から径方向外側に延びている。U相用配線63U、V相用配線63V、W相用配線63Wの端末結線部63Tは、それぞれ中性点用配線63Nの円環状の部分と交差し、当該円環状の部分よりも径方向外側に位置する。
【0030】
グランド用配線66は、基板60の第一層L1及び第三層L3に形成されている。グランド用配線66は、第一層L1において帯状に形成され、第三層L3のほぼ全体に形成されている。具体的に、グランド用配線66は、第三層L3において、U相用配線63Uの形成領域、及び、基板60の外周部のうち端末結線部63Tと重なり得る領域、を除く領域に形成されている。
センサ用配線67は、基板60の第一層L1、第二層L2及び第四層L4に形成されている。センサ用配線67は、第四層L4において中性点用配線63Nの径方向内側の領域に形成されている。
なお、
図5においては、第三層L3に形成されたU相用配線63U及びグランド用配線66(
図6(c)参照)を省略している。
【0031】
本実施形態のブラシレスモータ30では、互いに異なる接続パターン62を有することで互いに異なるコイル42の結線パターン64を構成し得る複数種類の基板60を、ステータ40に対して選択的に装着可能である。すなわち、本実施形態のブラシレスモータ30は、
図4に例示したコイル42の結線パターン64を構成する基板60だけではなく、別の結線パターン64を構成する別の基板60をステータ40に装着することができる。
以下、
図7~9を参照して、別のコイル42の結線パターン64と、当該結線パターン64を構成する別の基板60の接続パターン62について説明する。なお、
図4~6と同じ構成要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図7に示す第二例のコイル42の結線パターン64は、
図4に例示したコイル42の結線パターン64と同様に、スター結線方式で結線されたパターンである。ただし、
図7に例示するコイル42の結線パターン64は、各相の2つのコイル42が直列に接続された結線パターン64S(直列結線パターン64S)である。このため、接続パターン62は、2つのU相用配線63U1,63U2(第一U相用配線63U1、第二U相用配線63U2)、2つのV相用配線63V1,63V2(第一V相用配線63V1、第二V相用配線63V2)、2つのW相用配線63W1,63W2(第一W相用配線63W1、第二W相用配線63W2)及び1つの中性点用配線63Nを有する。第一U相用配線63U1は2つのU相コイル42U同士を接続する。第一V相用配線63V1は2つのV相コイル42V同士を接続する。第一W相用配線63W1は2つのW相コイル42W同士を接続する。第二U相用配線63U2、第二V相用配線63V2、第二W相用配線63W2は、それぞれ基板60の接続コネクタ65に接続される。
【0033】
図8,9は、
図7に示す第二例のコイル42の結線パターン64を実現する基板60の配線構造を示している。
図8,9の基板60は、多層配線基板である。基板60の接続パターン62は、基板60の厚さ方向に並ぶ複数の層L1~L4(第一層L1、第二層L2、第三層L3、第四層L4)にそれぞれ形成された複数の接続配線63(2つのU相用配線63U1,63U2、2つのV相用配線63V1,63V2、2つのW相用配線63W1,63W2、1つの中性点用配線63N)によって構成されている。
【0034】
図8,9に例示する基板60の接続パターン62では、複数の接続配線63が基板60の中央部分60Cを避けて位置している。すなわち、複数の接続配線63が基板60の周囲部分にのみ位置している。これにより、接続配線63が基板60の中央部分60Cに位置する場合と比較して、通電による接続配線63の熱が基板60の中央部分60Cに籠ることを抑制することができる。すなわち、接続配線63で発生した熱を効率よく外部に放散することができる。
【0035】
以下、
図7~9に示す第二例の基板60の配線構造について、より具体的に説明する。
接続パターン62の第一U相用配線63U1は、基板60の第四層L4のみに形成され、基板60の外周部において周方向に延びる円弧状に形成されている。第一U相用配線63U1の両端の端末結線部63Tは、その円弧状の部分から径方向外側に延びている。第二U相用配線63U2は、基板60の第一層L1のみに形成され、基板60の外周部において延びる帯状に形成されている。第二U相用配線63U2の一端の端末結線部63Tは、第二U相用配線63U2の他の部分よりも径方向外側に位置する。
【0036】
接続パターン62の第一V相用配線63V1は、基板60の第二層L2のみに形成され、基板60の外周部のうち第一U相用配線63U1よりも径方向内側において周方向に延びる円弧状に形成されている。このため、第一U相用配線63U1と第一V相用配線63V1とは、基板60の厚さ方向において重ならない。また、第一V相用配線63V1は、周方向において第一U相用配線63U1に対してずれて位置している。第一V相用配線63V1の両端の端末結線部63Tは、第一V相用配線63V1の円弧状の部分から径方向外側に延びている。第二V相用配線63V2は、基板60の第一層L1のみに形成され、基板60の外周部において延びる帯状に形成されている。第二V相用配線63V2の一端の端末結線部63Tは、第二V相用配線63V2の他の部分よりも径方向外側に位置する。
【0037】
接続パターン62の第一W相用配線63W1は、基板60の第三層L3のみに形成され、基板60の外周部において周方向に延びる円弧状に形成されている。第一W相用配線63W1は、周方向において第一U相用配線63U1や第一V相用配線63V1に対してずれて位置している。第一W相用配線63W1の両端の端末結線部63Tは、第一W相用配線63W1の円弧状の部分から径方向外側に延びている。第二W相用配線63W2は、基板60の第一層L1のみに形成され、基板60の外周部において延びる帯状に形成されている。第二W相用配線63W2の一端の端末結線部63Tは、第二W相用配線63W2の他の部分よりも径方向外側に位置する。
【0038】
接続パターン62の中性点用配線63Nは、基板60の第四層L4のみに形成され、基板60の外周部において周方向に延びる円弧状に形成されている。中性点用配線63Nは、周方向において円弧状に形成された第一U相用配線63U1、第一V相用配線63V1、第一W相用配線63W1に対してずれて位置する。特に、中性点用配線63Nは、同じ第四層L4に形成された第一U相用配線63U1に対して周方向に間隔をあけて位置するため、第一U相用配線63U1と干渉しない。また、中性点用配線63Nは、第二層L2に形成された第一V相用配線63V1よりも径方向外側に位置するため、第一V相用配線63V1と重ならない。中性点用配線63Nの3つの端末結線部63Tは、中性点用配線63Nの円弧状の部分から径方向外側に延びている。
【0039】
第一V相用配線63V1、第二V相用配線63V2、第二W相用配線63W2の端末結線部63Tは、第一U相用配線63U1や中性点用配線63Nの円弧状の部分と交差し、当該円弧状の部分よりも径方向外側に位置する。第二U相用配線63U2の端末結線部63Tは、第一U相用配線63U1や中性点用配線63Nの円弧状の部分と交差しないが、当該円弧状の部分よりも径方向外側に位置する。
【0040】
グランド用配線66は、基板60の第一層L1の一部、及び、第三層L3のほぼ全体に形成されている。具体的に、グランド用配線66は、第三層L3において、第一W相用配線63W1の形成領域、及び、基板60の外周部のうち端末結線部63Tと重なり得る領域、を除く領域に形成されている。センサ用配線67は、基板60の第一層L1、第二層L2及び第四層L4に形成されている。センサ用配線67は、第四層L4において中性点用配線63Nの径方向内側の領域に形成されている。
なお、
図8においては、第三層L3に形成された第一W相用配線63W1及びグランド用配線66(
図9(c)参照)を省略している。
【0041】
ステータ40に装着可能な基板60の種類、また基板60の接続パターン62によって構成されるコイル42の結線パターン64は、上記した2つに限定されない。また、コイル42の結線パターン64は、スター結線方式に限らず、例えばデルタ結線方式で結線されたパターンであってもよい。
【0042】
図1~3に示すように、減速機構70は、ハウジング10の外側においてブラケット12の中央に設けられた凹部19に嵌め入れられることで、ブラケット12に固定される。すなわち、減速機構70は、ハウジング10に一体化されている。
減速機構70は、アウターギヤ71、インナーギヤ72、出力回転体73等によって構成されるハイポサイクロイド減速機構であって、ブラシレスモータ30(ロータ軸52)から出力される動力の回転速度を減じて出力する。本実施形態における減速機構70の減速比は10:1~40:1の範囲内のいずれかの比率である。減速機構70の出力回転体73は、電動歩行補助車の車輪に(ホイール)に連結される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のブラシレスモータ30によれば、基板60には、コイル42の結線パターン64を構成する接続パターン62が設けられている。このため、互いに異なる接続パターン62を有する複数種類の基板60から一つの基板60を選択してステータ40に装着するだけで、異なるモータ特性を有するブラシレスモータ30を得ることができる。したがって、コイル42の巻線仕様やステータコア41を構成する鋼板の枚数などを変更することなく、ブラシレスモータ30のモータ特性のバリエーションを容易に増やすことができる。
【0044】
また、本実施形態のブラシレスモータ30によれば、位置検出センサ61と接続パターン62とが同一の基板60に設けられている。このため、位置検出センサ61と接続パターン62とが別個の部品で構成される場合と比較して、ブラシレスモータ30を組み立てる段階におけるブラシレスモータ30の部品点数を少なく抑えることができる。これにより、ブラシレスモータ30の組み立て工数を減らして、ブラシレスモータ30の製造効率の向上を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態のブラシレスモータ30によれば、位置検出センサ61は界磁マグネット51を検出する。このため、位置検出センサ61によって検出する専用の検出対象をロータ50に設ける場合と比較して、軸方向D1におけるロータ50と位置検出センサ61との間隔を小さく抑えることができる。これにより、ブラシレスモータ30の軸長を短くすることができる。また、ロータ50の回転位置を検出するための構成部品点数を少なく抑えることができる。
【0046】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0047】
本発明のブラシレスモータにおいて、複数のコイル42に接続される基板60の接続パターン62は、基板60に形成される配線に限らず、例えば基板60に設けられるボンディングワイヤによって構成されてもよい。
【0048】
本発明のブラシレスモータにおいて、基板60の位置検出センサ61は、例えばロータ50に設けられる専用の検出対象を検出してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…電動アクチュエータ、10…ハウジング、11…カバー、12…ブラケット、13…底壁、14…側壁、15…ケーブル固定部、16…第一コネクタ付きケーブル、17…第二コネクタ付きケーブル、16A,17A…外部コネクタ、18…フランジ部、19…凹部、30…ブラシレスモータ、40…ステータ、41…ステータコア、42…コイル、42U…U相コイル、42V…V相コイル、42W…W相コイル、43…インシュレータ、50…ロータ、51…界磁マグネット、52…ロータ軸、60…基板、60a…第一面、60b…第二面、60C…中央部分、61…位置検出センサ、62…接続パターン、63…接続配線、63N…中性点用配線、63T…端末結線部、63U…U相用配線、63U1…第一U相用配線、63U2…第二U相用配線、63V…V相用配線、63V1…第一V相用配線、63V2…第二V相用配線、63W…W相用配線、63W1…第一W相用配線、63W2…第二W相用配線、64…コイル42の結線パターン、64P…並列結線パターン、64S…直列結線パターン、65…接続コネクタ、66…グランド用配線、67…センサ用配線、70…減速機構、71…アウターギヤ、72…インナーギヤ、73…出力回転体、D1…軸方向、L1…第一層、L2…第二層、L3…第三層、L4…第四層