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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086935
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】立体マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
A41D13/11 D
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199241
(22)【出願日】2020-11-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和2年6月2日にウェブサイトに公開 (https://store.shopping.yahoo.co.jp/la-ampleur/mask-001.html) (2)令和2年6月2日にウェブサイトに公開 (https://store.shopping.yahoo.co.jp/la-ampleur/kidsmask006.html) (3)令和2年9月23日にウェブサイトに公開 (https://www.amazon.co.jp/dp/B08M44N5KC?ref=myi_title_dp) (4)令和2年9月23日にウェブサイトに公開 (https://www.amazon.co.jp/dp/B08M7BP8XJ?ref=myi_title_dp)
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】520473856
【氏名又は名称】田中 裕久
(74)【代理人】
【識別番号】100169926
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康文
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕久
(72)【発明者】
【氏名】岸田 淑子
(72)【発明者】
【氏名】松村 あかり
(57)【要約】
【課題】使用者の呼吸によるマスク本体の鼻及び口への吸いつきを防止することができる立体マスクを提供する。
【解決手段】左右一対のシート2からなるマスク本体3と左右一対の耳掛部4とを備え、シート2の左右端部は、一端部にシート2が弧状に張り出した弧状張出部5が形成され、他端部に耳掛部4が形成され、マスク本体3が、シート2の一端部同士が接続された弧状接続部5が膨出するカップ状に形成され、弧状接続部5に沿って可撓性の短冊状部材6が設けられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のシートからなるマスク本体と左右一対の耳掛部とを備え、
前記シートの左右端部は、一端部に当該シートが弧状に張り出した弧状張出部が形成され、他端部に耳掛部が形成され、
前記マスク本体が、前記シートの前記一端部同士が接続された弧状接続部が膨出するカップ状に形成された立体マスクであって、
前記弧状接続部に沿って可撓性の短冊状部材が設けられている立体マスク。
【請求項2】
前記弧状接続部において、前記シートの前記一端部同士を縫合する縫い糸が設けられ、当該縫い糸により前記弧状接続部に前記短冊状部材が縫い付けられている請求項1に記載の立体マスク。
【請求項3】
前記シートは、少なくとも表面シートおよび裏面シートが重ね合わせて構成され、前記短冊状部材は、前記表面シートの前記弧状接続部である表面弧状接続部、及び、前記裏面シートの前記弧状接続部である裏面弧状接続部の少なくとも何れか一方に設けられている請求項1又は2に記載の立体マスク。
【請求項4】
前記短冊状部材が、前記弧状接続部において、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられている請求項3に記載の立体マスク。
【請求項5】
前記弧状接続部において、前記裏面シートの前記一端部同士を縫合する裏面シート用縫い糸が設けられ、前記裏面弧状接続部に沿って前記裏面シート用縫い糸に前記短冊状部材が縫い付けられている請求項3又は4に記載の立体マスク。
【請求項6】
前記短冊状部材は形状保持機能を備えている請求項1から5の何れか1項に記載の立体マスク。
【請求項7】
前記短冊状部材は、当該短冊状部材の一端側が前記マスク本体の上端部に位置し、当該短冊状部材の他端側が前記マスク本体の中間部と下端部との間に位置する状態で、前記弧状接続部に沿って設けられている請求項1から6の何れか1項に記載の立体マスク。
【請求項8】
前記短冊状部材の一端部又は他端部が樹脂によりコーティングされている請求項1から7の何れか1項に記載の立体マスク。
【請求項9】
左右一対の前記シートの少なくとも何れか一方のシートに重なる状態で追加シートが設けられ、前記追加シートの上下端部は、夫々、前記シートの上下端部に接続され、前記追加シートの左右端部の一端部に当該シートが弧状に張り出した追加シート弧状張出部が形成され、当該追加シートの一端部が、前記弧状接続部に沿って接続され、
前記追加シートと前記シートとにより、前記マスク本体に前記追加シートの他端部及び前記シートの他端部により形成される開口部を有する袋状部を備えている請求項1から7の何れか1項に記載の立体マスク。
【請求項10】
前記弧状接続部において、前記縫い糸により前記追加シートの一端部が前記弧状接続部に縫い付けられている請求項9に記載の立体マスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のシートからなるマスク本体と左右一対の耳掛部とを備え、前記シートの左右端部は、一端部に当該シートが弧状に張り出した弧状張出部が形成され、他端部に耳掛部が形成され、前記マスク本体が、前記シートの前記一端部同士が接続された弧状接続部が膨出するカップ状に形成された立体マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる立体マスクは、使用者の鼻下及び口元とマスク本体との間にカップ状の空間部分を形成した状態で、使用者の鼻及び口を被覆することができるものであり、鼻及び口からの埃や花粉等の侵入を防ぎつつ、会話の際等の唇とマスク本体との接触を抑制することができるものである。
【0003】
このようなマスクとして、例えば、短冊状のノーズフィット片を、マスク本体の中布の上端部の所定位置へ貼着したことを特徴とする立体マスクがある(例えば、特許文献1参照)。この技術では、ノーズフィット片を設けることで、使用者の鼻とマスク本体との間に隙間が生じないようにして、隙間から花粉等の侵入を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-43227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の立体マスクでは、例えば、洗濯を繰り返すことにより、シートを構成する不織布が柔らかくなったときに、使用者の呼吸に伴う空気の流れにより、鼻下及び口元とマスク本体との間のカップ状の空間部分の形成を維持することができず、マスク本体が鼻及び口に吸いつき、使用者が呼吸しにくくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、使用者の呼吸によるマスク本体の鼻及び口への吸いつきを防止することができる立体マスクを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明に係る立体マスクは、
左右一対のシートからなるマスク本体と左右一対の耳掛部とを備え、
前記シートの左右端部は、一端部に当該シートが弧状に張り出した弧状張出部が形成され、他端部に耳掛部が形成され、
前記マスク本体が、前記シートの前記一端部同士が接続された弧状接続部が膨出するカップ状に形成された立体マスクであって、その特徴構成は、
前記弧状接続部に沿って可撓性の短冊状部材が設けられている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、マスク本体の左右方向の中心部において縦方向に延びる弧状接続部に沿って短冊状部材が設けられている。よって、使用者の呼吸に伴って空気を吸い込む流れが発生した場合でも、マスク本体の短冊状部材が使用者の鼻とあごに当接し、マスク本体と使用者の鼻下及び口元との間のカップ状の空間部分の形成を維持することができる。これにより、使用者の呼吸によるマスク本体の鼻及び口への吸いつきを防止することができる。
【0009】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
前記弧状接続部において、前記シートの前記一端部同士を縫合する縫い糸が設けられ、当該縫い糸により前記弧状接続部に前記短冊状部材が縫い付けられている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、シートの一端部同士を縫合する縫い糸により弧状接続部に沿って短冊状部材が縫い付けられているので、マスク本体の左右方向の中心部において縦方向に延びる弧状接続部に沿って短冊状部材をマスク本体に強固に接続されるので、短冊状部材によりマスク本体を安定して支持することができる。よって、マスク本体と使用者の鼻下及び口元との間のカップ状の空間部分を安定して形成することができる。
【0011】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
前記シートは、少なくとも表面シートおよび裏面シートが重ね合わせて構成され、前記短冊状部材は、前記表面シートの前記弧状接続部である表面弧状接続部、及び、前記裏面シートの前記弧状接続部である裏面弧状接続部の少なくとも何れか一方に設けられている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、シートが表面シートと裏面シートとを重ね合わせて構成されているので、短冊状部材を表面弧状接続部及び裏面弧状接続部のいずれかに接続することにより、短冊状部材によりマスク本体を安定して支持することができ、マスク本体と使用者の鼻下及び口元との間のカップ状の空間部分を安定して形成することができる。
【0013】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
前記短冊状部材が、前記弧状接続部において、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、短冊状部材が表面シートと裏面シートとの間に設けられている。よって、短冊状部材がマスク本体の内部に設けられることになるので、短冊状部材が使用者に接触することを防止することができる。
【0015】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
前記弧状接続部において、前記裏面シートの前記一端部同士を縫合する裏面シート用縫い糸が設けられ、前記裏面弧状接続部に沿って前記裏面シート用縫い糸に前記短冊状部材が縫い付けられている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、裏面弧状接続部に沿って裏面シート用縫い糸に短冊状部材が縫い付けられているので、裏面シートの左右方向の中心部において縦方向に延びる裏面弧状接続部に沿って短冊状部材がマスク本体に強固に接続される状態で裏面シート側を短冊状部材により支持することができる。よって、マスク本体と使用者の鼻下及び口元との間のカップ状の空間部分を安定して形成することができる。
【0017】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
前記短冊状部材は形状保持機能を備えている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、短冊状部材は形状保持機能を備えているので、マスクを装着してマスク本体の短冊状部材を撓ませた状態として、短冊状部材を使用者の鼻とあごに当接させて、マスク本体と使用者の鼻下及び口元との間のカップ状の空間部分を形成すると、その状態で短冊状部材の形状が保持される。よって、可撓性を有する短冊状部材を撓ませた場合に発生する反力による不快感を使用者に与えることなく、マスク装着時間が長時間となった場合でも快適にマスクを装着することができる。
【0019】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
前記短冊状部材は、当該短冊状部材の一端側が前記マスク本体の上端部に位置し、当該短冊状部材の他端側が前記マスク本体の中間部と下端部との間に位置する状態で、前記弧状接続部に沿って設けられている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、短冊状部材の他端側がマスク本体の中間部と下端部との間に位置する状態で弧状接続部に沿って設けられている。つまり、短冊状部材は、他端側がマスク本体の下端部から離間した状態となるように弧状接続部に沿って設けられている。これにより、マスク本体の弧状接続部の下端部側には短冊状部材が形成されず、マスク本体の下端部側が短冊状部材に支持されない状態にすることができる、よって、マスク本体の下端部側が顎の先端から顎の下方の形状に沿って使用者の顎を覆う状態でマスクを装着することができる。
【0021】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
前記短冊状部材の一端部又は他端部が樹脂によりコーティングされている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、例えば、使用者がマスクを装着する際やマスクを洗濯する際に、マスク本体のシートと短冊状部材の上端側又は下端側の先端部がマスク本体のシートと擦れ合う場合でも、短冊状部材の上端側又は下端側が樹脂によりコーティングされているので、短冊状部材がマスク本体のシートを傷つけることを防止することができる。よって、短冊状部材によってマスク本体のシートが破られてしまうことなどを防止することができる。
【0023】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
左右一対の前記シートの少なくとも何れか一方に、前記シートに重なる状態で追加シートが設けられ、前記追加シートの上下端部は、夫々、前記シートの上下端部に接続され、前記追加シートの左右端部の一端部に当該シートが弧状に張り出した追加シート弧状張出部が形成され、当該追加シートの一端部が、前記弧状接続部に沿って接続され、
前記追加シートと前記シートとにより、前記マスク本体に前記追加シートの他端部及び前記シートの他端部により形成される開口部を有する袋状部を備えている点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、マスク本体に追加シートの他端部及びシートの他端部により形成される開口部を有する袋状部を有するので、その袋状部の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内にシートを取り込むことにより、使用者の顔面に触れるマスク本体のシートの裏側部分を内外反転した袋状部内に取り込むことができる。よって、立体マスクを取り外した際に、使用者の顔面に触れるマスク本体のシート部分を汚すことなくマスク本体に形成された袋状部に立体マスクを収納することができる。
【0025】
本発明に係る立体マスクの更なる特徴構成は、
前記弧状接続部において、前記縫い糸により前記追加シートの一端部が前記弧状接続部に縫い付けられている点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、袋状部の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内にシートを取り込んだマスク収容状態で、弧状接続部に沿って設けられた短冊状部材が、反転した袋状部の開口部と反対側の底部に位置することになる。これにより、袋状部の底部において短冊状部材の形状を保持することができるので、マスク収容状態において、シートの弧状張出部の形状及び短冊状部材の形状を崩すことなく収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る立体マスクの概略斜視図
図2】第1実施形態に係る立体マスクの左側面図
図3】第1実施形態に係る立体マスクの内側正面図
図4】第1実施形態に係る立体マスクの横断面図
図5】第1実施形態に係る立体マスクの装着状態を示す概略図
図6】第2実施形態に係る立体マスクの内側正面図
図7】第2実施形態に係る立体マスクの横断面図
図8】第2実施形態に係る立体マスクの概略斜視図
図9】別実施形態に係る立体マスクの横断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る立体マスクについて説明する。
図1図3を参照して本実施形態に係る立体マスク1について説明する。図1は立体マスクの概略斜視図、図2は立体マスクの左側面図、図3は立体マスクの内側正面図である。本実施形態に係る立体マスク1 は、左右一対のシート2からなるマスク本体3と左右一対の耳掛部4とを備えている。マスク本体3は使用者の口と鼻を被覆するように形成され、耳掛部4はマスク本体3の左右両側縁に形成されている。耳掛部4は、シート2の他端部の側縁を折り返して形成した側縁孔4aと、その側縁孔4aを貫通し、かつ環状になるように形成された耳掛紐4bにより構成されている。
【0029】
シート2の左右端部は、一端部に当該シート2が弧状に張り出した弧状張出部2aが形成され、他端部に耳掛部4が形成されている。また、シート2の上端部は下方に向かって弧状に形成され、下端部は上方に向かって弧状に形成されている(図2参照)。そして、マスク本体3が、シート2の一端部同士が接続された弧状接続部5が膨出するカップ状に形成されている。つまり、この弧状張出部2aが形成された一端部同士を接合して、一端部が他端部より突出するカップ状のマスク本体3が形成されている。また、詳しくは後述するが、一端部同士が接続された弧状接続部5に、その弧状接続部5に沿って可撓性の短冊状部材6が設けられている。
【0030】
図4に立体マスク1の横断面図を示す。図4に示すように、マスク本体3の左右一対のシート2は、表面シート21および裏面シート22を重ね合わせて2重構造となるように構成されており、夫々のシート2において表面シート21および裏面シート22を、その上端部及び下端部において縫い合わすことにより接合されている。なお、表面シート21および裏面シート22は伸縮性のある材質により構成されている。例えば、表面シート21及び裏面シート22は綿繊維等を用いた織布により構成されている。また、その綿繊維や織布には抗菌加工や抗ウイルス加工がなれていてもよい。(←ご確認下さい)
【0031】
夫々のシート2の弧状接続部5には、弧状張出部2aが形成された一端部同士を縫合する縫い糸8が設けられている。図4に示すように、左右一対の表面シート21の一端部に形成される表面シート21の弧状接続部5である表面弧状接続部5aにおいては、表面シート21の一端部同士を縫合する表面シート用縫い糸8aが設けられており、図4に示すように、左右一対の裏面シート22の一端部に形成される裏面シート22の弧状接続部5である裏面弧状接続部5bにおいては、裏面シート22の一端部同士を縫合する裏面シート用縫い糸8bが設けられている。なお、弧状接続部5とは、シート2の弧状張出部2aが形成された一端部同士を接続するために、シート2の一端部同士が接触している部位を意味する。
【0032】
本実施形態では、図4に示すように、短冊状部材6は、裏面シート22の弧状接続部5である裏面弧状接続部5bに設けられ、この裏面弧状接続部5bに沿って裏面シート用縫い糸8bに短冊状部材6が縫い付けられている。
【0033】
具体的には、裏面弧状接続部5bは、左右一対の裏面シート22の一端部において、裏面シート22の側縁同士を揃えて裏面シート22の重複部を形成し、その重複部に短冊状部材6を重ねて裏面シート22の重複部と短冊状部材6とを裏面シート用縫い糸8bにより一体的に縫い付けることにより形成されている。
【0034】
そして、裏面弧状接続部5bに、左右一対の表面シート21が縫合された表面シート21を、接続部用縫い糸10により固定する。接続部用縫い糸10は短冊状部材6に沿って設けられ、マスク本体3の上下方向に延びる状態で、表面シート21と短冊状部材6と裏面シート22の重複部とを一体的に縫い合わせて固定するものである。
【0035】
このように表面シート21を接続部用縫い糸10により固定するにあたり、短冊状部材6と裏面シート22の重複部とが接触する短冊状部材6の接続面側を表面シート21に向けて、表面シート21と短冊状部材6と裏面シート22の重複部とを一体的に縫い合わせて固定する。この場合、図4に示すように、短冊状部材6の接続面と表面シート21との間に裏面シート22の重複部が位置する状態となり、短冊状部材6の接続面と反対側の面が裏面シート22によって覆われる状態となる。このようにして、上述の如く、表面シート21と短冊状部材6と裏面シート22の重複部とを一体的に縫い合わせて固定することにより、短冊状部材6が、弧状接続部5としての裏面弧状接続部5bにおいて表面シート21と裏面シート22との間に設けられている状態となる。
【0036】
なお、接続部用縫い糸10は、短冊状部材6の短手方向に間隔をおいて2ライン形成されており、夫々の接続部用縫い糸10は、マスク本体3の上端部から下端部にわたって設けられている(図3参照)。
【0037】
短冊状部材6について説明する。短冊状部材6は、上述の如く可撓性を有することに加え、形状保持機能を備えている。具体的には、短冊状部材6 は、針金のように自由に折り曲げることができ、かつ、折り曲げた形状を保つことが可能なポリエチレン製の線材又は帯材、もしくは、針金等の金属芯が埋設されたポリエチレン製の帯材又は帯材で構成されている。
【0038】
また、短冊状部材6は、図1図3に示すように、短冊状部材6の一端部6aがマスク本体3の上端部に位置し、短冊状部材6の他端部6bがマスク本体3の中間部と下端部との間に位置する状態で、弧状接続部5としての裏面弧状接続部5bに沿って設けられている。つまり、短冊状部材6の長さは、マスク本体3の上端部から下端部までの弧状接続部5の長さの半分よりも長く、弧状接続部5の上端部から下端部までの長さよりも短くなるように形成されている。
【0039】
具体的には、短冊状部材6の長さは、弧状接続部5の上端部から下端部までの長さの1/2よりも長く、弧状接続部5の長さの3/4よりも短い長さに形成することが好ましい。これにより、マスク本体3の弧状接続部5の下端部側には短冊状部材6が形成されず、マスク本体3の下端部側が短冊状部材6に支持されない状態にすることができ、マスク本体3の下端部側が使用者の顎の先端から顎の下方の形状に沿って顎を覆う状態でマスクを装着することができる。
【0040】
また、短冊状部材6には、短冊状部材6の一端部6a及び他端部6bが樹脂によりコーティングされたコーティング部7が設けられている(図3参照)。具体的には、コーティングする樹脂の材料としては、ポリエチレン等が使用され、コーティングの厚みは0.1mm以上3mm以下(←ご確認下さい)とすることが好ましい。これにより、使用者が立体マスク1を装着する際や、立体マスク1を洗濯する際に、マスク本体3に設けられた短冊状部材6の一端部6a又は他端部6bがマスク本体3のシート2と擦れ合う場合でも、短冊状部材6の一端部6a又は他端部6bが樹脂によりコーティングされているので、短冊状部材6の一端部6a又は他端部6bがシート2を傷つけることを防止することができる。
【0041】
シート2の左右端部の他端部に形成される耳掛部4について説明する。上述の通り、耳掛部4は、シート2の他端部の側縁を折り返して形成した側縁孔4aと、その側縁孔4aを貫通する状態で設けられ、かつ環状になるように形成された耳掛紐4bにより構成されている。
【0042】
側縁孔4aは、シート2の他端部を、シート2の裏面側に2回折り返して、シート2の端縁が側縁孔4aの内部に位置する状態で、シート2の他端部に縦方向に貫通する側縁孔4aが形成されるように、その折り返し部をシート2の裏面側の適切な位置に重ね合わせて縫い合わすことにより形成されている。
【0043】
耳掛紐4bには、長手方向に伸縮性を有する丸紐や平紐が用いることが好ましいが、伸縮性のない丸紐や平紐を用いてもよい。この耳掛紐4bを上述の側縁孔4aに貫通させるとともに、耳掛紐4bを環状に形成して耳掛部4が形成されている。
【0044】
次に、立体マスク1の装着時の状態を図5 に基づいて説明する。
左右一対のシート2が重ね合わされた状態にあるマスク本体3(図2参照)を広げると、マスク本体3の弧状接続部5が耳掛部4よりもシート2の表面側に突出するカップ状に形成される。この状態で、左右一対の耳掛紐4bを、夫々左右両耳に掛止することで、マスク本体3の左右方向の中心部において縦方向に延びる状態で設けられている短冊状部材6が使用者の鼻と顎に当接する。
【0045】
これにより、使用者の呼吸に伴う空気を吸い込む流れが発生した場合でも、例えば、マスク本体3の短冊状部材6が使用者の鼻と顎に当接することにより、マスク本体3と使用者の鼻下及び口元との間のカップ状の空間部分の形状を維持することができる。よって、使用者の呼吸によるマスク本体3の鼻及び口への吸いつきを防止することができる。
【0046】
また、短冊状部材6が形状保持機能を備えている場合には、使用者が立体マスク1を装着して、マスク本体3と使用者の鼻下及び口元との間のカップ状の空間部分が形成されると、この形状において短冊状部材6の形状が保持される。よって、短冊状部材6を撓ませた場合に発生する反力によるツッパリ感などの不快感を使用者に与えることなく、マスク装着時間が長時間となった場合でも快適にマスクを装着することができる。
【0047】
さらに、短冊状部材6の他端部6bがマスク本体3の中間部と下端部との間に位置する状態で弧状接続部5に沿って設けられている。つまり、短冊状部材6は、他端側がマスク本体3の下端部から離間した状態となるように弧状接続部5に沿って設けられている。これにより、マスク本体3の弧状接続部5の下端部6b側は、マスク本体3が短冊状部材6に支持されない状態になるので、マスク本体3の下端部側が、使用者の顎の先端から顎の下方の形状に沿って使用者の顎を覆う状態となる。よって使用者は安定した装着状態でマスクを装着することができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第2実施形態に係る立体マスク100について説明する。この第2実施形態に係る立体マスク100は、図6から図8に示すように、その内外を反転させることにより、シート2を取り込むことができる袋状部11を有する点で上述の第1実施形態と異なっている。
【0049】
具体的には、図6及び図7に示すように、左右一対のシート2の少なくとも何れか一方のシート2に重なる状態で追加シート12が設けられ、追加シート12の上下端部は、夫々、シート2の上下端部に接続され、追加シート12の左右端部の一端部に追加シート12が弧状に張り出した追加シート弧状張出部12aが形成され、追加シート12の一端部が弧状接続部5に沿って接続され、追加シート12とシート2とにより、追加シート12の他端部とシート2の他端部とにより形成される開口部13を有する袋状部11を備えている点で上述の第1実施形態と異なっている。この袋状部11は、その内外を反転させることにより、内外反転した袋状部11内にマスク本体3を取り込むことができるものである。
【0050】
つまり、追加シート12の形状はシート2の形状(図2参照)と略同一の形状に形成されており、左右一対のシート2の何れか一方のシート2に重なる状態で設けられた追加シート12により、その内外を反転させることにより、内部にマスク本体3を取り込むことができる袋状部11が形成されている。また、特に限定されるものではないが、追加シート12の材質はシート2の材質と同一の材質で形成されている。
【0051】
図6に示すように、追加シート12が設けられたマスク本体3の上下端部、シート2の他端部及び追加シート12の他端部には、それらの縁部を覆う縁部材14が設けられている。マスク本体3の上下端部に設けられた縁部材14は、マスク本体3の左右方向の長さよりも長くなるように形成して、マスク本体3の左右方向から外側に延出する縁部材延出部14aが形成されている。
【0052】
本実施形態における耳掛部4は、このようにしてシート本体の上下端部に設けられた夫々の縁部材延出部14aと、これらの縁部材延出部14aを貫通させる貫通孔15aを有する留め具15で構成されている。
【0053】
また、本実施形態では、図7に示すように、弧状接続部5において、縫い糸8により追加シート12の一端部が弧状接続部5に縫い付けられている。具体的には、短冊状部材6は、裏面シート22の弧状接続部5である裏面弧状接続部5bに設けられ、この裏面弧状接続部5bに沿って裏面シート用縫い糸8bにより追加シート12の一端部と短冊状部材6が縫い付けられている。
【0054】
つまり、裏面弧状接続部5bにおいて、左右一対の裏面シート22の一端部において、裏面シート22の側縁同士を揃えて裏面シート22の重複部が形成されており、その裏面弧状接続部5bに短冊状部材6と追加シート12の一端部とを重ねて、裏面シート22の一端部の重複部と短冊状部材6と追加シート12の一端部とが裏面シート用縫い糸8bにより一体的に縫い付けることにより追加シート12の一端部が裏面弧状接続部5bに沿って接続されている。
【0055】
そして、裏面弧状接続部5bに、左右一対の表面シート21が縫合された表面シート21を、接続部用縫い糸10により固定する。接続部用縫い糸10は短冊状部材6に沿って設けられ、マスク本体3の上下方向に延びる状態で、表面シート21と短冊状部材6と裏面シート22の重複部とを一体的に縫い合わせて固定するものである。
【0056】
このように表面シート21を接続部用縫い糸10により固定するにあたり、短冊状部材6が裏面シート22の重複部に接触する短冊状部材6の接続面側を表面シート21側に向けて、表面シート21、追加シート12の一端部、裏面シート22の重複部及び短冊状部材6を一体的に縫い合わせて固定する。
【0057】
本実施形態に係る立体マスク100は、上述のように構成され、マスク本体3に追加シート12の他端部及びシート2の他端部により形成される開口部13を有する袋状部11を有するので(図8参照)、その袋状部11の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部11内に、使用者の顔面に触れるマスク本体3のシート2を取り込むことができる(図8参照)。よって、立体マスク100を取り外した際に、使用者の顔面に触れるマスク本体3のシート2を汚すことなく袋状部11に収納することができる。
【0058】
また、裏面シート22の重複部と追加シート12の一端部と短冊状部材6とが裏面シート用縫い糸8bにより一体的に縫い付けることにより形成されているので、袋状部11の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部11内にシート2を取り込んだマスク収容状態で、弧状接続部5に沿って設けられた短冊状部材6が、反転した袋状部11の開口部13と反対側の底部16側に位置することになる。これにより、袋状部11の底部16において短冊状部材6の形状を保持することができるので、マスク収容状態において、シート2の弧状張出部2aの形状及び短冊状部材6の形状を崩すことなく収容することができる。
【0059】
〔別実施形態〕
以下に別実施形態を列挙する。
(1)上記実施形態では、短冊状部材6が、裏面シート22の弧状接続部5としての裏面弧状接続部5bに裏面シート用縫い糸8bにより縫い付けられたが、これに限らず、短冊状部材6が、弧状接続部5に接着剤等により貼り付けられていてもよい。その他、シート2の弧状接続部5に短冊状部材6を挿入可能な挿入部を、シート2の一部やシート2とは異なるシート材料等を使用して形成し、その挿入部に短冊状部材6を挿入して短冊状部材6を弧状接続部5に固定してもよい。
【0060】
(2)上記実施形態では、短冊状部材6が、裏面シート22の裏面弧状接続部5bに裏面シート用縫い糸8bにより縫い付けられたが、これに限らず、短冊状部材6が、表面シート21の表面弧状接続部5aに表面シート用縫い糸8aにより縫い付けられていてもよい。また、短冊状部材6が、裏面シート22の裏面弧状接続部5b及び表面シート21の表面弧状接続部5aの両方に単一の縫い糸により縫い付けられていてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、シート2は、表面シート21および裏面シート22を重ね合わせて構成されたが、これに限らず、シート2は、単一のシートにより構成されていてもよい。その他、シート2を、表面シート21と裏面シート22との間に中間シートを設けて3重構造に形成してもよい。この場合、中間シートを裏面シート22と同様に左右一対となるように形成して、中間シートの弧状接続部に短冊状部材6を設けてもよい。
【0062】
(4)上記第1実施形態では、耳掛部4は、シート2の他端部の側縁を折り返して形成した側縁孔4aと、その側縁孔4aを貫通し、かつ環状になるように形成された耳掛紐4bにより構成したが、これに限らず、耳掛部4は、側縁孔4aを設けず、マスク本体3の左右両端部の上端に耳掛紐4bの一端が接合され、下端に耳掛紐4bの他端がそれぞれ接合することにより構成してもよい。また、耳掛紐4bを環状に形成することなく、マスク本体3の左右両端部の上端と下端からそれぞれ耳掛紐4bの端部を導出し、それらの端部をマスク使用時に使用者が耳の後ろで結ぶようにしてもよい。
【0063】
(5)上記実施形態では、短冊状部材6の一端部6a及び他端部6bに樹脂によりコーティングされたコーティング部7が設けられたが、これに限らず、短冊状部材6の一端部6a又は他端部6bの何れか一方に樹脂によりコーティングされたコーティング部7が設けられていてもよい。
【0064】
(6)上記第2実施形態では、裏面弧状接続部5bとしての裏面シート22の一端部の重複部と短冊状部材6と追加シート12の一端部とが裏面シート用縫い糸8bにより一体的に縫い付けることにより、追加シート12の一端部が裏面弧状接続部5bに沿って接続されたが、これに限らず、これに限らず、追加シート12の一端部を裏面弧状接続部5bに接着剤等により貼り付けことにより、追加シート12の一端部を裏面弧状接続部5bに沿って接続してもよい。
【0065】
(7)上記第2実施形態では、裏面シート22の一端部の重複部と短冊状部材6と追加シート12の一端部とが裏面シート用縫い糸8bにより一体的に縫い付けることにより、追加シート12の一端部が裏面弧状接続部5bに沿って接続されたが、これに限らず、裏面シート22の一端部の重複部と追加シート12の一端部とを裏面シート用縫い糸8bにより一体的に縫い付けることにより、追加シート12の一端部が裏面弧状接続部5bに沿って接続してもよい。この場合、短冊状部材6を表面弧状接続部5aに設けてもよい。
【0066】
(8)上記第2実施形態では、裏面シート22の一端部の重複部と短冊状部材6と追加シート12の一端部とが裏面シート用縫い糸8bにより一体的に縫い付けることにより、追加シート12の一端部が裏面弧状接続部5bに沿って接続されたが、これに限らず、図9に示すように、表面弧状接続部5aとしての表面シート21の一端部の重複部と短冊状部材6と追加シート12の一端部とが表面シート用縫い糸8aにより一体的に縫い付けることにより、追加シート12の一端部が表面弧状接続部5aに沿って接続されてもよい。また、表面シート21の一端部の重複部と追加シート12の一端部とが表面シート用縫い糸8aにより一体的に縫い付けることにより、追加シート12の一端部が表面弧状接続部5aに沿って接続されてもよい。この場合、短冊状部材6を裏面弧状接続部5bに設けてもよい。
【0067】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、使用者の呼吸によるマスク本体の鼻及び口への吸いつきを防止することができる立体マスクを提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 立体マスク
2 シート
2a 弧状張出部
3 マスク本体
4 耳掛部
5 弧状接続部
5a 表面弧状接続部
5b 裏面弧状接続部
6 短冊状部材
6a 一端部
6b 他端部
8 縫い糸
8b 裏面シート用縫い糸
21 表面シート
22 裏面シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9