IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087030
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】月相表示機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/26 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
G04B19/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021182493
(22)【出願日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】01526/20
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(71)【出願人】
【識別番号】521486103
【氏名又は名称】マニュファクテュール ドゥ オルロジュリー オーデマ ピゲ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジル レイ - メルメ
(57)【要約】
【課題】時計用の月相表示機構。
【解決手段】時計用の複数個の月相のための表示機構であって、夜間背景と月背景の少なくとも一部分とを有する第1のホイール及びピニオンと、第1のホイール及びピニオンに重ねられた第2のホイール及びピニオンとを備え、表示機構は、第1のホイール及びピニオンが一定速度で回転駆動されることが可能であるように、かつ、第2のホイール及びピニオンが、月相表示期間中に、第1のホイール及びピニオンと同じ角速度で同じ方向に回転駆動されることが可能であるように配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用のn個の月相のための表示機構であって、ここでnは3以上の整数であり、夜間背景(10、10’)と月背景(12、12’)の少なくとも一部分とを有する第1のホイール及びピニオン(8、8’)と、前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)に重ねられた第2のホイール及びピニオン(14、14’)とを備え、前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)が夜間背景(16、16’)及びn個の月相プロファイル(18、18’)を有し、前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)並びに前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)が同一軸を中心として枢動する表示機構において、前記表示機構は、前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)が一定速度で回転駆動されることが可能であるように、かつ、前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)が、月相表示期間中に、前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)と同じ角速度で同じ方向に回転駆動されることが可能であるように配置され、その期間中は、前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)の月背景(12、12’)の一部分と、表示されるべき前記月相に対応する前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)の月相プロファイル(18、18’)とが、前記月相を見せるために重ね合わされ、かつ、前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)が、現在の表示期間と次の表示期間との間の移行期間中に、次の月相を見せることができるようにするために、前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)に対して再位置決め角度分だけオフセットされるように配置されることを特徴とする、表示機構。
【請求項2】
nが奇数である、請求項1に記載の表示機構。
【請求項3】
その表示期間の少なくとも一部の間の月相の動きを示すように選択されたサイズの表示開口部(6)を含むダイヤル(2)を備えることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項4】
前記表示開口部(6)が、前記表示開口部(6)内にいつでもせいぜい1つの月相を表示するように選択されたサイズであることを特徴とする、請求項3に記載の表示機構。
【請求項5】
前記表示開口部(6)が、前記ダイヤル(2)の残りの領域が前記移行期間中に前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)と前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)との間の前記オフセットを隠すように選択されたサイズであることを特徴とする、請求項3から4のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項6】
前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)が、x個の月背景部分(12、12’)を有し、xは1以上n未満であり、前記x個の月背景部分(12、12’)が、前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)上に規則的に分布していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項7】
前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)が、駆動ギアトレインによって駆動可能に、かつ、駆動装置(20)と協働するように配置され、前記駆動装置(20)が、前記月相表示期間中に同期して前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)を駆動するように、かつ、移行期間中に前記再位置決め角度分だけオフセットするためにそれを相対回転で駆動するように配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項8】
前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)の前記月相プロファイル(18、18’)が、前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)の相対回転の前記選択された方向に応じて互いに対して位置決めされ、それにより、前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)が前記選択された回転方向に前記駆動装置(20)によって相対回転で駆動されるとき、次の月相が現在の月相の代わりに表示されることを特徴とする、請求項7に記載の表示機構。
【請求項9】
前記駆動装置(20)が、エネルギー蓄積器を備え、そのエネルギー蓄積器が、前記駆動ギアトレインによって駆動される前記第1のホイール及びピニオン(8)によって駆動されるように配置され、かつ、前記エネルギー蓄積器の作用を受けて前記第2のホイール及びピニオン(14)が前方にジャンプするように配置されることを特徴とする、請求項7から8のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項10】
前記エネルギー蓄積器が、同軸上で重なり合った3つのホイールを備え、すなわち前記第1のホイール及びピニオン(8)によって駆動されるように配置された第1のホイール(22)であって、カム(24)と一体となっている第1のホイール(22)と、前記第1のホイール(22)よりも高速で前記第1のホイール及びピニオン(8)によって駆動されるように配置された第2のホイール(26)であって、ピン(28)を支承している第2のホイール(26)と、前記第2のホイール及びピニオン(14)を駆動するように配置された第3のホイール(30)であって、前記第2のホイール(26)の前記ピン(28)が係合する溝(32)を有し、かつ、ジャンパスプリング(36)を装備したジャンパ(34)を支承している第3のホイール(30)とを備え、前記ジャンパ(34)が、前記第2のホイール(26)の前記ピン(28)が前記第3のホイール(30)の前記溝(32)に当接していない間、前記第1のホイール及びピニオン(8)と前記第2のホイール及びピニオン(14)とを同期駆動するために前記第3のホイール(30)を前記第1のホイール(22)と一体的に回転させるように、前記第1のホイール(22)の前記カム(24)と協働するように配置され、かつ、前記第3のホイール(30)の前記溝(32)に当接する前記第2のホイール(26)の前記ピン(28)が、前記第2のホイール及びピニオン(14)を相対回転で前記再位置決め角度分だけ駆動するために、前記第3のホイール(30)を前記第2のホイール(26)と一体的に回転させ、次いで、エネルギーを突然放出して前記第3のホイール(30)を枢動させるときに、前記エネルギーを蓄積するように配置されることを特徴とする、請求項9に記載の表示機構。
【請求項11】
前記駆動装置が、前記第1のホイール及びピニオン(8’)に取り付けられた駆動ホイール及びピニオン(40)を備え、前記駆動ホイール及びピニオン(40)が、前記第2のホイール及びピニオン(14’)と協働するように配置された駆動ホイール(42)と、マルタクロス(44)とを備え、前記駆動ホイール及びピニオン(40)が、前記表示期間中に前記駆動ホイール(42)を介して前記第1のホイール及びピニオン(8’)と前記第2のホイール及びピニオン(14’)とを同期駆動するために、前記駆動ギアトレインによって駆動される前記第1のホイール及びピニオン(8’)に対して回転不能に配置され、前記移行期間中に前記第2のホイール及びピニオン(14’)を前記再位置決め角度分だけ回転駆動するために前記駆動ホイール(42)を枢動させるために、前記第1のホイール及びピニオン(8’)に対して回転駆動されるように配置されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項12】
前記表示開口部(6)が、実質的に環状の形状を有し、その半径方向縁部(6a、6b)が地平線を形成することを特徴とする、請求項3から11のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項13】
前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)並びに前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)が、前記地平線上に昇ってから沈むまでの間の月相の動きを表すように時計回りの方向に回転することができることを特徴とする、請求項12に記載の表示機構。
【請求項14】
前記表示開口部(6)の前記半径方向縁部(6a、6b)の少なくとも1つが、山、モニュメント又は都市の輪郭を表すように選択された形状を有することを特徴とする、請求項12から13のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項15】
前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)の前記月相プロファイル(18、18’)が、月相及び月の外縁の前記円弧(18b)に対応する前記明暗境界線(18a)によって画定されるプロファイルを有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項16】
前記明暗境界線(18a)に対応する前記月相プロファイル(18、18’)の前記縁部が、月の細部を示す起伏特徴部を備えることを特徴とする、請求項15に記載の表示機構。
【請求項17】
前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)が、2つの対称的に対向する月背景部分(12、12’)を備え、月の朔望につきn回の半回転という速度で前記駆動ギアトレインによって駆動されるように配置され、前記駆動装置が、前記月相表示期間中に同期して前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)を駆動するように、かつ、移行期間中に前記第2のホイール及びピニオンを前記再位置決め角度分だけオフセットするために相対回転で駆動するように配置されることを特徴とする、請求項7から16のいずれか一項に記載の表示機構。
【請求項18】
nが9に等しいことを特徴とし、前記第1のホイール及びピニオン(8、8’)が、2つの対称的に対向する月背景部分(12、12’)を備え、月の朔望につき9回の半回転という速度で時計回りの方向に前記駆動ギアトレインによって駆動されるように配置され、前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)が、ある月相表示期間と次の月相表示期間との間の前記移行期間中に20°の再位置決め角度分だけ時計回りの方向にオフセットされるように配置され、前記月相表示期間が約3.28日間であり、前記表示開口部(6)が約140°の角度にわたって延在し、前記月相プロファイル(18、18’)が、時計回りの方向に、最初の三日月、下弦の月、満月と下弦との間の月、上弦と満月との間の月、上弦の月、最後の三日月、下弦の半月、満月、上弦の半月の順番に従って、前記第2のホイール及びピニオン(14、14’)上に配置されることを特徴とする、請求項17に記載の表示機構。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の表示機構を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間背景と月背景の少なくとも一部分とを有する第1のホイール及びピニオンと、第1のホイール及びピニオン上に重ねられた第2のホイール及びピニオンとを備え、前記第2のホイール及びピニオンは、夜間背景及び月相プロファイルを有する、時計用の月相表示機構に関する。
【0002】
本発明はまた、そのような表示機構を備える時計に関する。
【背景技術】
【0003】
そのような月相表示機構は、例えば、本出願人の欧州特許出願公開第2392976号明細書に記載されている。前記文献では、月相表示機構は、夜間の空を象徴する暗い背景に刻まれた月を象徴する2つの明るい色の円を含む第1のムーンディスクを備える。ダイヤルは、凹形状のシンボルで月相を示すために、ムーンディスクと協働して使用され得る開口部を備える。
【0004】
ムーンディスク上に重ねられ、夜間背景と、様々な月相プロファイルを有する開口部とを含む第2のディスクを使用することが可能である。この設計では、この第2のディスクは、掩蔽ディスクとして機能するように配置され、第1のムーンディスクと協働し、かつ、特に凸形状のシンボルで月相を示すために、月を象徴する円を覆い隠すように任意選択で開口部と協働する。
【0005】
ムーンディスクは、月の朔望の周期ごとに180°回転するように回転駆動され、その結果、従来の方法では、ユーザは、月の朔望の間に開口部の左側に出現する新月から開口部の右側に出現する最後の三日月までの様々な月相の日々の進展を追うことができる。プログラムホイールは、ムーンディスクを毎日進ませるために、また、月相変化時にのみ掩蔽ディスクを回転させて、ムーンディスク上に表される月のうちの1つを異なる形で覆い隠すために提供される。その後、掩蔽ディスクは、次に回転するまで静止したままである。
【0006】
この機構により、地球から見える月の照射面部分のすべての満ち欠けの位相を表示することによって、月の朔望の全期間の月相の実際の見かけに対応する時計上の月相表示を得ることができる。
【0007】
非常に多くの変形実施形態が記載されている。しかしながら、これらの変形例のいずれも、表示された月のプロファイルとは関係なく、地平線の後ろにある大きいサイズの空の背景に対して、地球から見える月の照射面部分のすべての満ち欠けの位相を同時に表示する月相表示を実現することができない。
【0008】
さらに、開口部の構成により、表示された様々な月相の明暗境界線をリアルに見せることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2392976号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、機械式時計のための新しいオリジナルの月相表示を提案することによって、これらの欠点を改善することであり、これにより、表示された月のプロファイルとは関係なく、地平線の後ろにある大きいサイズの空の背景に対して、地球から見える月の照射面部分のすべての満ち欠けの位相を、リアルな明暗境界線を用いて表示することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、時計用のn個の月相のための表示機構に関し、ここで、nは、好ましくは3以上の奇数の整数であり、夜間背景と月背景の少なくとも一部分とを有する第1のホイール及びピニオンと、第1のホイール及びピニオン上に重ねられた第2のホイール及びピニオンとを備え、前記第2のホイール及びピニオンは、夜間背景及び月相プロファイルを有し、第1のホイール及びピニオンと第2のホイール及びピニオンとは同一の軸を中心として枢動する。
【0012】
本発明によれば、前記表示機構は、第1のホイール及びピニオンが一定速度で回転駆動されることが可能であるように、かつ、第2のホイール及びピニオンが、月相表示期間中に、第1のホイール及びピニオンと同じ角速度で同じ方向に回転駆動されることが可能であるように配置され、その期間中は、第1のホイール及びピニオンの月背景の一部分と、表示されるべき月相に対応する第2のホイール及びピニオンの月相プロファイルとが、前記月相を見せるために重ね合わされ、かつ、第2のホイール及びピニオンが、現在の表示期間と次の表示期間との間の移行期間中に、次の月相を見せることができるようにするために、第1のホイール及びピニオンに対して再位置決め角度分だけオフセットされるように配置される。
【0013】
有利には、第1のホイール及びピニオンは、駆動ギアトレインによって駆動可能に、かつ、駆動装置と協働するように配置され、前記駆動装置は、月相表示期間中に同期して第2のホイール及びピニオンを駆動するように、かつ、移行期間中に第2のホイール及びピニオンを前記再位置決め角度分だけオフセットするために相対回転で駆動するように配置される。
【0014】
したがって、表示されるべき月相は、第1のホイール及びピニオンの月背景の一部分を第2のホイール及びピニオンの月相プロファイルと重ね合わせることによって見えるようになるので、本発明による表示機構は、地球から見える月の照射面部分のすべての満ち欠けの位相をリアルに表示することができるように、月相プロファイルを選択することを可能にする。
【0015】
有利には、前記表示機構は、その表示期間の少なくとも一部の間の月相の動きを示すように選択されたサイズの表示開口部を含むダイヤルを備える。より具体的には、表示開口部は、前記開口部内にせいぜい1つの月相をいつでも表示するように選択されたサイズのものである。
【0016】
したがって、時計のユーザにとっては、月相の動きがよりよく見える。
【0017】
好ましくは、ダイヤルの表示開口部は、実質的に環状の形状を有し、その半径方向縁部は地平線を形成する。有利には、第1のホイール及びピニオン並びに第2のホイール及びピニオンは、地平線上に昇ってから沈むまでの間の月相の動きを表すように時計回りの方向に回転することができる。
【0018】
したがって、第2のホイール及びピニオンに現れる月相プロファイルは、表示開口部の縁部とは関係なく現れ、それにより、様々な月相は、開口部の縁部によって画定される空の背景に対して移動するように現れ、半径方向の縁部は、カスタマイズ可能な地平線を形成することができる。
【0019】
好ましくは、第2のホイール及びピニオンの月相プロファイルは、月相及び月の外縁の円弧に対応する明暗境界線によって画定されるプロファイルを有する。有利には、明暗境界線に対応する月相プロファイルの縁部は、月の細部を示す起伏特徴部を含む。
【0020】
したがって、様々な月相のリアルな表現が得られる。
【0021】
本発明はまた、上記で定義したような月相表示機構を備える時計に関する。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として提供される本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を読むことから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】満月を表示する本発明による時計の平面図である。
図2】本発明で使用されるダイヤルの平面図である。
図3】本発明で使用される第1のホイール及びピニオンの平面図である。
図4】本発明で使用される第2のホイール及びピニオンの平面図である。
図5】第1のホイール及びピニオン、第2のホイール及びピニオン、並びに、駆動装置の第1の変形実施形態の平面図である。
図6図5のA-Aによる断面図である。
図7図5の駆動装置の分解図である。
図8図5の駆動装置の平面図である。
図9】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第1の実施形態とを示す図である。
図9a図9の詳細図である。
図10】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第1の実施形態とを示す図である。
図10a図10の詳細図である。
図11】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第1の実施形態とを示す図である。
図11a図11の詳細図である。
図12】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第1の実施形態とを示す図である。
図12a図12の詳細図である。
図13a】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図13b】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図13c】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図13d】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図13e】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図13f】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図13g】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図13h】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図13i】月相の表示期間中の異なる時期に、本発明による表示機構によって表示される様々な月相を表す。
図14】第1のホイール及びピニオン、第2のホイール及びピニオン、並びに、駆動装置の第2の実施形態の平面図である。
図15】第1のホイール及びピニオン、第2のホイール及びピニオン、並びに、駆動装置の第2の実施形態の分解図である。
図16】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第2の実施形態とを示す図である。
図16a図16の詳細図である。
図16b図16の詳細図である。
図17】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第2の実施形態とを示す図である。
図17a図17の詳細図である。
図17b図17の詳細図である。
図18】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第2の実施形態とを示す図である。
図18a図18の詳細図である。
図18b図18の詳細図である。
図19】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第2の実施形態とを示す図である。
図19a図19の詳細図である。
図19b図19の詳細図である。
図20】満月の表示期間中及び満月と下弦の月との間の移行期間中の様々な動作シーケンスによる、2つのホイール及びピニオンと、駆動装置の第2の実施形態とを示す図である。
図20a図20の詳細図である。
図20b図20の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、時計用の月相表示機構及び時計に関し、より詳細には、そのような表示機構を備える機械式時計に関する。
【0025】
図1は、そのような時計1、より詳細には、従来の方法で時刻を表示するための、特にダイヤル2と、ダイヤル2の中心に針3、4、5のセットとを備える腕時計を示す。
【0026】
月相表示機構は、ここでは時計の時刻を示すためのダイヤル2によって構成されたダイヤルを備える。このダイヤル2は、図2に示すように、表示開口部6を有しており、この表示開口部6は、以下でより詳細に説明する。月相表示ダイヤルは、時計の前記時刻表示ダイヤルの選択されたゾーンに配置されているという点で、時刻表示ダイヤルとは異なることがあることは極めて明白である。
【0027】
図3を参照すると、月相表示機構は、プレート8a及び外歯8bを備える、中心Cを有するディスクの形態の第1のホイール及びピニオン8を備える。プレート8aは、夜間背景10と、月背景12の少なくとも一部分とを有する。好ましくは、夜間背景10はプレート8aの最大の領域を占め、残りの領域は月背景部分によって占められる。好ましくは、夜間背景10は、夜間の空を表す装飾モチーフである。
【0028】
有利には、第1のホイール及びピニオン8は、x個の月背景部分12を有し、xは1以上n未満であり、前記x個の月背景部分12は、第1のホイール及びピニオン8上に規則的に分布し、夜間背景10によって互いに分離されている。月背景部分は、表示される様々な月相に対応するすべての可能な構成に適合するように選択された月表面を表す装飾モチーフである。月の装飾モチーフは、デカール、焼き付け、グラビア印刷又は任意の他の適切な技術によって再現され得る。
【0029】
図4を参照すると、月相表示機構は、プレート14a及び外歯14bを備える、中心C’を有するディスクの形態の第2のホイール及びピニオン14を備える。プレート14aは、夜間背景16と、奇数のn個の月相プロファイル18とを有する。前記第2のホイール及びピニオン14は、ダイヤル2を見ているユーザに見えるように、C及びC’を通る軸に沿って、第1のホイール及びピニオン8上で同軸上に重ねられ、すなわち、第1のホイール及びピニオン8の上方に位置決めされる。
【0030】
第2のホイール及びピニオン14の夜間背景16は、好ましくは、第1のホイール及びピニオン8の夜間背景10と同一であるか、又は少なくとも同様の見かけであり、その結果、前記月相プロファイル18が月背景12に重ねられていないときに現れるのを防止するために、第1のホイール及びピニオン8の夜間背景10が第2のホイール及びピニオン14の月相プロファイル18に現れるときに、夜間背景は互いに同化する。
【0031】
月相プロファイル18は、地球から見える月の照射面部分の満ち欠けの様々な位相を表す。より詳細には、月相プロファイル18は、地球から見える月の照射面部分のすべての満ち欠けの位相を、例えば、最初の三日月及び最後の三日月には凹形、上弦の半月(first quarter)にはD字形、下弦の半月(last quarter)には逆D字形、満月には円形、並びに、上弦と満月との間の月及び満月と下弦との間の月(waxing and waning gibbous moon)については凸形によって表すことができるように構成される。
【0032】
月相プロファイル18は、夜間背景16を備える第2のホイール及びピニオン14のプレート14a内に作られた開口部によって形成されてもよい。中空ではない第2のホイール及びピニオン14を提供することも可能であり、少なくとも月相プロファイル18が表されている部分は、少なくとも半透明、好ましくは透明である。特に、現れた月に球面効果を与えるために、透明度のレベルにグラデーションを作ることが可能である。例えば、少なくとも前記の部分、好ましくは第2のホイール及びピニオン14は、偏光層を備えたサファイア又はガラス製であってもよい。夜間背景16は、第1のホイール及びピニオン8と第2のホイール及びピニオン14との間の視差効果を最小限に抑えるために、好ましくは第2のホイール及びピニオン14のプレート14aの下面で、月相プロファイル18の周りに、薄く塗布された、又はテクスチャ加工された層を堆積させることによって形成される。
【0033】
有利には、月相プロファイル18は、表示できることが望まれる様々な月相に対応する明暗境界線18aによって画定された、月の照射面の形状に対応するプロファイルと、月の外縁に対応する円弧18bとを有する。有利には、明暗境界線に対応する月相プロファイルの縁部は、月の細部を示す起伏特徴部を含む。したがって、クレータ又は海の細部、特に輝く太陽光の下で見える細部は、明暗境界線に対応する月相プロファイルの縁部上で彫ったり描いたりすることによって形成することができる。
【0034】
有利には、図3に示すように、第1のホイール及びピニオン10上に設けられた月背景部分12は、実質的に360/n°に等しい角度の扇形の形態で第1のホイール及びピニオン8のプレート8a上に規則的に分布し、夜間背景10によって互いに分離されており、一方、360/n°に等しい角度のn個の並置された規則的に分布した扇形が、表示されるべきn個の月相を表すために、第2のホイール及びピニオン14のプレート14a上に設けられている。
【0035】
本発明によれば、n個の月相の表示機構は、前記第1のホイール及びピニオン8と第2のホイール及びピニオン14とが、C及びC’を通過する第1のホイール及びピニオン8と第2のホイール及びピニオン14とに垂直な同一の軸、ここでは中心軸を中心として枢動するように配置される。第1のホイール及びピニオン8は、その動きによって一定速度で回転駆動することができる。機構は、第2のホイール及びピニオン14が、月相表示期間中に、第1のホイール及びピニオン8と同じ速度で同じ方向に回転駆動されるように配置され、その期間中は、第1のホイール及びピニオン8の月背景12の一部分と、表示されるべき月相に対応する第2のホイール及びピニオン14の月相プロファイル18とが、前記月相を見せるために重ね合わされ、かつ、前記第2のホイール及びピニオン14が、現在の表示期間と次の表示期間との間の移行期間中に、次の月相を見せることができるようにするために、第1のホイール及びピニオン8に対して再位置決め角度分だけオフセット可能であるように配置される。
【0036】
したがって、月は、29.5日の月の朔望の周期を29.5/n日のn個のステップで表し、そのステップの間、第2のホイール及びピニオン14と第1のホイール及びピニオン8とが重なり合って得られる表示される月相は、変化せずに、夜間背景とともに規則的に移動する。表示開口部6の有無にかかわらず、ダイヤル2上に表示された月相の位置は、表示された月相の進行状態(位相の始まり、中間又は終わり)をユーザに示す。その後、有利には、29.5/n日にわたって、表示された月相が消えて、次の月相が出現することができる。
【0037】
有利には、表示開口部6は、月相の動きが、その表示期間の少なくとも一部の期間現れるのを可能にするように選択されたサイズを有する。より詳細には、表示開口部6は、前記開口部6内で、せいぜい1つの月相をいつでも表示するように選択されたサイズである。さらに、表示開口部6は、移行期間中にダイヤル2の残りの領域が第1のホイール及びピニオン8と第2のホイール及びピニオン14との間のオフセットを隠すように選択されたサイズである。月相プロファイル18は、表示開口部6から独立しているが、お互いからも独立しているので、月相プロファイル18の各々は、第2のホイール及びピニオン14のプレート14bの扇形の同じ領域を占めることができる。その結果、月相プロファイル18の各々は、標準的な月相表示開口部に対して、広がった表示開口部内に大きいサイズで現れる。
【0038】
有利には、表示開口部6は、第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14と同軸の実質的に環状の形状を有し、その半径方向縁部6a、6bは地平線を形成する。表示開口部6の半径方向縁部6a、6bの少なくとも1つは、ユーザの希望又は時計の購入場所に則してカスタマイズ可能な、例えば、地平線上の山6c、モニュメント又は都市の輪郭を表すように選択された形状を有してもよい。地平線によって形成されたこの前景は、空に表示された月相とのコントラストを作り出すことを可能にし、大きな月の印象を与える。
【0039】
好ましくは、表示開口部6の左側の東に昇り、表示開口部6の右側の西に沈む地平線上の月相の移動を表すように、第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14は、時計回りの方向に回転することができる。
【0040】
有利には、第1のホイール及びピニオン8は、時計の駆動ギアトレイン(図示せず)によって一定速度で駆動可能に、かつ、駆動装置と協働するように配置され、前記駆動装置は、月相表示期間中に同期して第2のホイール及びピニオン14を駆動するように、かつ、移行期間中に第2のホイール及びピニオンを前記再位置決め角度分だけオフセットするために相対回転で駆動するように配置される。
【0041】
有利には、第2のホイール及びピニオン14の月相プロファイル18は、第1のホイール及びピニオン8に対する第2のホイール及びピニオン14の相対回転の選択された方向に応じて、互いに対して位置決めされ、それにより、移行期間中に第2のホイール及びピニオン14が駆動装置によって第1のホイール及びピニオン8に対して相対回転で駆動されるとき、次の月相が現在の月相の代わりに表示される。
【0042】
第1のホイール及びピニオン8上の月背景部分12の数xは1以上であってもよいので、前記第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14は、現在の月相表示期間と次の月相表示期間との間の移行期間中に前記再位置決め角度分だけ互いに対してオフセット可能であるように配置される。
【0043】
提示された実施形態では、2つのホイール及びピニオン8、14の間のオフセットは、表示されていた月相が西の地平線の下に隠された後に起こり、それにより、次の月相が東に現れる。好ましくは、第2のホイール及びピニオン14の月相プロファイル18は、再位置決め角度が360/2n°に等しくなるように、互いに対して位置決めされる。
【0044】
第1の実施形態によれば、駆動装置は、エネルギー蓄積器を備え、そのエネルギー蓄積器は、駆動ギアトレインによって駆動される第1のホイール及びピニオン8によって駆動されるように配置され、かつ、移行期間中に前記エネルギー蓄積器の作用を受けて第2のホイール及びピニオン14が前方にジャンプするように配置される。
【0045】
そのような駆動装置は、例えば図5から図8に示されている。
【0046】
この第1実施形態では、エネルギー蓄積器を有する駆動装置20は、中心軸に平行な軸に沿って同軸上で重なり合った3つのホイールを備え、すなわち、その外歯8bを用いて第1のホイール及びピニオン8によって駆動されるように配置された第1の歯付きホイール22を備える。前記第1のホイール22は、ここでは例えば4つのセクタを備えるカム24と一体となっている。
【0047】
エネルギー蓄積器を有する駆動装置20は、その外歯8bを介して前記第1のホイール及びピニオン8によっても駆動されるが、第1のホイール22よりも高速で駆動されるように配置された第2の歯付きホイール26も備える。この目的のために、前記第1のホイール22及び第2のホイール26は、異なる数の歯を備える。前記第2のホイール26は、ピン又はペグ28を支承しており、その役割は後述する。
【0048】
エネルギー蓄積器を有する駆動装置20は、その外歯14bを介して第2のホイール及びピニオン14を駆動するように配置された第3の歯付きホイール30も備える。前記第3のホイール30は、第2のホイール26のピン又はペグ28が係合する溝32を備え、それにより、第2のホイール26に対する第3のホイール30の角度自由度は、前記溝32とピン28との当接効果によって前記溝32によって制限される。
【0049】
さらに、第3のホイール30は、枢動可能に取り付けられてジャンパスプリング36を装備したジャンパ34を支承し、前記ジャンパ34は、第1のホイール22のカム24と協働するように配置される。この目的のために、ジャンパ34は、その自由端に、第3のホイール30のプレートに設けられた開口部39を通って前記第3のホイール30を貫通して延びるローラ又はランナ38を有することができ、前記ローラ38は、カム24の外形と協働するように配置される。したがって、第2のホイール26のピン28が第3のホイール30の溝32に当接していない間、ジャンパ34は、カム24とともに引っ張られて動くことで、第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14の同期駆動のために第3のホイール30を第1のホイール22と一体的に回転させることができる。第1のホイール22と第2のホイール26との間の速度の差は、第2のホイール26のピン28が第3のホイール30の溝32内を自由に動くように、2つのホイール22及び26と噛み合うホイール及びピニオン8によって駆動されることによって角度的なオフセットを生じさせる。溝32に到達して当接した前記ピン28によって、第3のホイール30が第2のホイール26と一体的に回転され、それにより、カム24の外形に沿って動かざるを得ないジャンパ34は、そのスプリング36によってエネルギーを蓄積する。カム24の外形は、2つのホイール及びピニオン8、14の同期駆動段階の間、かつ、ピン28が溝32内で当接するようになるまで、ジャンパ34のローラ38がカム24の前記外形の凹面の底部にあるように選択される。ジャンパ34は、カム24の外形のセクタのうちの1つの頂点に到達すると、この頂点から落下して次のセクタと協働し、それにより、移行期間中に、前記エネルギーが突然放出されて、第3のホイール30を枢動させ、第2のホイール及びピニオン14をその外歯14bを介して再位置決め角度分だけ回転駆動するようにジャンプすることを可能にする。当業者は、必要な再位置決め角度を得るために、駆動装置20の様々な要素の歯の数及びサイズを計算する方法を知っている。
【0050】
駆動装置20のこの第1の実施形態の動作は、以下に、より詳細に図5図9図9aから図12図12aまでを参照して、本発明による月相表示機構の好ましい実施形態に関連して詳細に説明される。
【0051】
この好ましい実施形態によれば、第1のホイール及びピニオン8は、図3に示すように、中心軸に関して対称的に対向する2つの月背景部分12を備え、月の朔望につきn回の半回転という一定速度で時計の駆動ギアトレイン(図示せず)によって駆動されることが可能である。この回転速度は、当業者によく知られている月駆動ギアによって得られる。
【0052】
好ましい実施形態によれば、nは9に等しく、その結果、第1のホイール及びピニオン8は、月の朔望につき9回の半回転という一定速度で駆動ギアトレインによって時計回りの方向に連続的に駆動されるように配置される。
【0053】
第2のホイール及びピニオン14は、9つの月相プロファイル18を備え、それらは、図5に示されるように、時計回りの方向に、最初の三日月a、下弦の月b、満月と下弦との間の月c、上弦と満月との間の月d、上弦の月e、最後の三日月f、下弦の半月g、満月h、上弦の半月iの順番に従って配置され、各々が40°(360/9)の扇形を占める。
【0054】
表示開口部6は、環状で、第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14と同軸であり、約140°の角度にわたって延在する。
【0055】
駆動装置20は、第2のホイール及びピニオン14を、月相表示期間中に第1のホイール及びピニオン8と同じ速度で同期して駆動するように、かつ、移行期間中に必要な再位置決め角度分だけオフセットするために、エネルギー蓄積器のおかげで、相対回転で駆動するように配置されている。
【0056】
エネルギー蓄積器のおかげで、第2のホイール及びピニオン14は、ある月相表示期間と次の月相表示期間との間の移行期間中に20°(360/2*9)の再位置決め角度分だけ時計回りの方向にオフセットされ、月相表示期間は約3.28日間(29.5/9)である。
【0057】
エネルギー蓄積器を有する駆動装置20は、図5において、重なり合った第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14の左側に示されている。駆動装置は、非常に明確に、前記ホイール及びピニオン8、14の周囲の任意の他の位置に配置することができる。
【0058】
図9図9aから図12図12aまでをより詳細に参照して、エネルギー蓄積器を有する駆動装置20の動作を、満月hに関して以下に説明する。
【0059】
図9に示すように、第1のホイール及びピニオン8、並びに第2のホイール及びピニオン14は、満月hに対応する第2のホイール及びピニオン14の月相プロファイル18が、第1のホイール及びピニオン8の月背景12の一部分に重ね合わされて、東に相当する表示開口部6(これらの図には示さず)の左側に満月を見せるように位置決めされる。表示開口部6に位置する他の月相プロファイル18は、それらが見えないように第1のホイール及びピニオン8の夜間背景10に重ね合わされており、前記月相プロファイル18を通して現れる第1のホイール及びピニオン8の夜間背景10は、第2のホイール及びピニオン14の夜間背景16と同化している。他の月相プロファイル18、特に、中心軸の反対側にある月背景12のもう一方の部分が現れる月相プロファイルは、表示開口部6の下に隠される。したがって、それらはユーザには見えない。
【0060】
表示開口部6での月相表示期間中、エネルギー蓄積器を有する駆動装置20は、第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14を0.5×9回転/29.5日の同じ速度で駆動する。この目的のために、図9aがより具体的に示すように、第3のホイール30は、ジャンパ34によって第1のホイール22と一体的に回転し、そのローラ38は、スプリング36によって押されてカム24の外形の凹面の底部に入り込む。0.5×9回転/29.5日の一定速度でベースムーブメントの駆動ギアトレインによって駆動される第1のホイール及びピニオン8は、その外歯8bと、したがって第2のホイール及びピニオン14と噛み合う第3のホイール30とを介して、駆動装置20の第1のホイール22を駆動し、それにより、第2のホイール及びピニオン14は、第1のホイール及びピニオン8と同期して0.5×9回転/29.5日の同じ速度で同じ方向に回転する。2つのホイール及びピニオン8、14は、表示開口部6に表示された満月が、開口部6に現れる月相プロファイル18を通して現れる第1のホイール及びピニオン8の夜間背景10と、第2のホイール及びピニオン14の夜間背景16とによって構成される夜間背景に対して、時計回りの方向に、左から右へ(東から西へ)、3.28日間(29.5/9)、前記開口部6内を移動するように一緒に回転する。ホイール及びピニオンの半回転弱の間、第1及び第3のホイール22、30よりも速く回転する第2のホイール26のピン28は、第3のホイール30の溝32内で自由にオフセットされる。
【0061】
表示期間の終わりに、次の月相への移行の数時間前に、満月hは、表示開口部6の右、すなわち西に到達しており、中心軸の反対側では、図10図10aに示すように、月背景12のもう一方の部分は、前記開口部6の左下に隠された、上弦と満月との間の月に相当する月相プロファイルd及び満月と下弦との間の月に相当する月相プロファイルcとの両方で、位相からずれている。そのとき、ピン28は溝32の底部に当接している。これにより、まだ第1のホイール及びピニオン8によって駆動されている第2のホイール26と、第3のホイール30とが一体的に回転する。したがって、第3のホイール30に取り付けられたジャンパ34は、カム24の外形の凹面の底部でその位置から押し出される。
【0062】
第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14は、それぞれ時計回りの方向に回転し続けるため、満月hは、ここでは表示開口部6の下の右側に隠される。図11及び図11aに示すように、中心軸の反対側では、次の月相プロファイル、すなわち、満月と下弦との間の月c及び月背景12の一部分は、満月から、満月と下弦との間の月までの移行期間に対応して、前記開口部6の下に隠れたまま、表示開口部6の左側に接近している。ジャンパ34は、そのスプリング36に負荷をかけながら、カム24の外形の頂点にほぼ到達している。前記スプリング36によって蓄積されたエネルギーは、その蓄積されたエネルギーを突然放出して、第1のホイール及びピニオン8に対する第2のホイール及びピニオン14の瞬時の又は非常に急速な相対回転を引き起こすことでジャンプを可能にし、かつ、図12図12aに示す位置でジャンプを終了するのに十分なものである。ジャンプの間、第1のホイール及びピニオン8は、以前の位置とほぼ同じ位置に留まったままである。対照的に、第3のホイール30は、ジャンパ34のスプリング36の負荷を解除した影響を受けて、90°だけ枢動している。回転しているとき、第3のホイール30は第2のホイール及びピニオン14を時計回りの方向に回転駆動し、ギアは、20°(360/2*9)の再位置決め角度分だけオフセットが生じるように寸法決めされている。このオフセットの間、中心軸の左側で、満月と下弦との間の月cに対応する次の月相プロファイルは、いまだに表示開口部6の下に隠れている満月と下弦との間の月cに対応する前記次の月相を見せるために、月背景12の部分に完全に重ね合わされる。中心軸の反対側では、月相プロファイルg及びhに対して位相からずれている月背景12のもう一方の部分が、表示開口部6の右下に隠れる。第2のホイール26のピン28は、第3のホイール30の溝32内で再び前方に位置決めされる。周期の1/9番目を表しているこれらのステップの後、上述したように、機構は、開口部6に満月と下弦との間の月cに対応する月相を表示する準備が再び整い、その月相は、それから3.28日かけて左から右に移動する。
【0063】
月の朔望の周期は、表示される9つの月相の各々で同じように続く。これにより、凹形と凸形の両方、D字形と逆D字形、及び満月の円形のすべての満ち欠けする月相が、リアルな明暗境界線を伴って、特にリアルに視覚的に表現され、広がった開口部6内で夜間背景に対して左から右に移動するため、図13aから13iに示すように、地平線上に昇ってから沈むまでの間の巨大な月の印象を与えるコントラストを作り出す。すなわち、連続的には、図13aに示す満月h、図13bに示す満月と下弦との間の月c、図13cに示す下弦の半月g、図13dに示す下弦の月b(最後から2番目の三日月)、図13eに示す下弦の最後の三日月f、図13fに示す最初の三日月a、図13gに示す上弦の月e(最初から2番目の三日月)、図13hに示す上弦の半月i、及び図13iに示す上弦と満月との間の月dである。
【0064】
図13aから図13iは、開口部6でのそれらの表示期間中の異なる時期における月相を示し、例えば、図13aは、その表示期間の初めの満月hを示し、図13cは、その表示期間の途中の下弦の半月gを示し、図13eは、その表示期間の終わりの最後の三日月fを示す。さらに、他の月相プロファイルは、本発明の理解を高めるために破線で示されているが、実際には、上記で説明したように、第1のホイール及びピニオン8並びに第2のホイール及びピニオン14の夜間背景10及び16が同化している結果、それらはユーザには見えない。
【0065】
図14から図16は、本発明で使用される駆動装置の第2の実施形態を示す。
【0066】
この実施形態では、駆動装置は、駆動ギアトレインによって駆動される第1のホイール及びピニオン8’に取り付けられた駆動ホイール及びピニオン40を備え、前記駆動ホイール及びピニオン40は、第2のホイール及びピニオン14’と協働するように配置された駆動ホイール42と、マルタクロス44とを備え、前記駆動ホイール及びピニオン40は、表示期間中に駆動ホイール42を介して第1のホイール及びピニオン8’並びに第2のホイール及びピニオン14’を同期駆動するために、前記第1のホイール及びピニオン8’に対して回転不能に配置され、移行期間中に第2のホイール及びピニオン14’を再位置決め角度分だけ回転駆動するために駆動ホイール42を瞬時に枢動させるために、前記第1のホイール及びピニオン8’に対して回転駆動されるように配置される。
【0067】
図14及び図15をより具体的に参照すると、第1のホイール及びピニオン8’は、前述の例示的な実施形態と同様に、夜間背景10’及び2つの対称的に対向する月背景部分12’を備える。さらに、第1のホイール及びピニオン8’は、その外周に、第1のホイール及びピニオン8’を駆動するために駆動ギアトレイン(図示せず)と協働するように配置された内歯46を備える。この構成により、有利には、駆動ギアトレインを機構の下に位置決めすることができる。
【0068】
第1のホイール及びピニオン8’は、歯付きピニオンの形態の駆動ホイール42と、その駆動ホイール42と一体となっているマルタクロス44とを備える駆動ホイール及びピニオン40を搭載している。したがって、前記駆動ホイール及びピニオン40は、機構の中心の周りを第1のホイール及びピニオン8’とともに衛星のように回転する。さらに、駆動ホイール及びピニオン40は、例えば第1のホイール及びピニオン8’のプレートに穿孔された軸受48に枢動可能に取り付けられている。マルタクロス44は、後述するように、フレーム要素と協働することができるように第1のホイール及びピニオン8’のプレートの下に位置決めされ、駆動ホイール42は、第2のホイール及びピニオン14’と協働することができるように第1のホイール及びピニオン8’のプレートの上に位置決めされる。
【0069】
第2のホイール及びピニオン14’は、前述の実施形態と同様に、夜間背景16’及び月相プロファイル18’を備える。さらに、第2のホイール及びピニオン14’は、その内周に、駆動ホイール42と協働するように配置された歯50を装備している。
【0070】
マルタクロス44の向きを定めるために、その位置を維持するための様々な要素がフレーム52上に又はムーブメントの底板に設けられている。より詳細には、フレーム52には、第1のホイール及びピニオン8’並びに第2のホイール及びピニオン14’の中心C及びC’と同軸に配置された第1の外側カムプロファイル54及び第2の内側カムプロファイル56が備えられており、その結果、外側カムプロファイル54上で中心軸に対して対称的に配置された2つの凸状セクタ54’及び内側カムプロファイル56上で中心軸に対して対称的に配置された2つの凹状セクタ56’を除いて、前記第1及び第2のカムプロファイル54、56がマルタクロス44の縁部と協働する。凸状セクタ54’及び凹状セクタ56’は、マルタクロス44の回転を可能にするように寸法決めされている。外側カムプロファイル54の凸状セクタ54’は、対向する内側カムプロファイル56の凹状セクタ56’に対して実質的にオフセットされており、その結果、凸状セクタ54’は、依然としてマルタクロス44の回転を妨げるが、対向する凹状セクタ56’は、前記マルタクロス44の回転を可能にする。
【0071】
フレームの下には、中心軸と同軸のシャフトの周りを枢動可能に取り付けられた2つのレバー58も設けられている。この目的のために、各レバー58は、各レバー58が中心軸から自由に離れることができるように、前記シャフトの周りに配置されるように構成された楕円形状の開口部60を備える。各レバー58は、フレームの下に取り付けられたリターンスプリング62と接触している。各レバー58は、その自由端に、マルタクロス44に向けられ、2つのカムプロファイル54と56との間の空間内の前記フレームに穿孔された「バナナ」溝66を経由してフレームを貫通するように配置されたペグ又はピン64を有しており、それを支承するレバー58が中心軸から離れるときに、マルタクロス44内の溝の底部にそのペグ又はピン自体が位置することができるようになっている。レバー58は、前記中心軸に対して互いに対称的に配置され、マルタクロスの瞬間的なジャンプは、以下に説明するように、第1のホイール及びピニオン8’が180°回転するごとに行われる。バナナ溝66の形状とリターンスプリング62の効果とを組み合わせることにより、ピン64の静止位置が定まる。図示されていない別の実施形態によれば、ピン64は、リターンスプリングの一方のアームの端部に直接取り付けることができ、レバーは省略することができる。リターンスプリングの螺旋形状は、ピンのX及びYのオフセットを可能にする。
【0072】
この駆動装置のこの第2の実施形態の動作は、図16から図20を参照して以下で説明され、これらの図は、満月の表示期間の終了時、及び満月から、満月と下弦との間の月までの移行期間中の、異なる位置を示している。
【0073】
より詳細に図16図16a及び図16bを参照すると、満月に対応する月相プロファイル18’は、前記満月の表示期間の終わりを示す表示開口部(図示せず)の右に向かって配置される。月相表示期間中、第2のホイール及びピニオン14’は、駆動ホイール及びピニオン40を介して第1のホイール及びピニオン8’と一体的に回転する。これは、より具体的に図16bに示すように、マルタクロス44が、フレーム52上に設けられた第1の外側カムプロファイル54及び第2の内側カムプロファイル56によってその向きが固定されているためである。第1のホイール及びピニオン8’は、その歯46によって駆動ギアトレインによって時計回りの方向に駆動され、前記第1のホイール及びピニオン8’並びに第2のホイール及びピニオン14’は、第2のホイール及びピニオン14’の歯50と係合していて第1のホイール及びピニオン8’に取り付けられたマルタクロス44と一体となっている駆動ホイール42を介して、同じ速度で同じ方向に同期して駆動される。したがって、第1の例示的な実施形態について上述したように、月相は開口部内で左から右に移動し、第1のホイール及びピニオン8’並びに第2のホイール及びピニオン14’は、レバー58のうちの一方に近づく。リターンスプリング62は、好ましくは、レバー58及びそのピン64をそのバナナ溝66の底部に位置決めするように、予め圧縮応力を与えられる。
【0074】
移行期間の約1日前には、第1のホイール及びピニオン8’は、図17図17a及び図17bに示すように、マルタクロス44がピン64と接触するように進んでいる。より具体的に図17bに示すように、レバー58の開口部60の楕円形状により、前記レバー58は、中心軸から自由に離れることができ、そのピン64も、マルタクロス44の溝の底部にそれ自体が位置するようにオフセットされている。さらに、前記マルタクロス44は、外側カムプロファイル54及び内側カムプロファイル56によって、依然としてその向きが固定されており、それ自体を中心として回転することはできない。マルタクロス44が第1のホイール及びピニオン8’とともに進み続けるとき、リターンスプリング62が負荷をかけられ始める。
【0075】
図18図18a、及び図18bを参照すると、表示期間の終了時及び移行期間の開始時には、満月に対応する第2のホイール及びピニオン14’の位相プロファイル18’は、開口部の下に隠れるように進んでいる。同時に、マルタクロス44は、リターンスプリング62及びピン64が最大限まで伸びた状態にあるように、第1のホイール及びピニオン8’とともに進んでいる。マルタクロス44は、内側カムプロファイル56の凹状セクタ56’の高さに位置決めされ、それにより、もはや前記内側カムプロファイル56によって保持されないが、まだそれ自体を中心として回転することはできず、外側カムプロファイル54によって保持され、その凸状セクタ54’の縁部で、ジャンプができる状態になっている。
【0076】
マルタクロス44は、次に、外側カムプロファイル54の凸状セクタ54’の高さに位置決めされ、その結果、それ自体を中心として自由に枢動するように、第1のホイール及びピニオン8’とともに進み続ける。スプリング62の負荷を突然解除した影響を受けて、ピン64はその平衡位置まで再び上昇し、図19図19a、及び図19bに示すように、マルタクロス44を第1のホイール及びピニオン8’に対して90°だけそれ自体を中心として回転させる。マルタクロス44のこの回転は、前記マルタクロス44と一体となっている駆動ホイール42を枢動させ、その歯50を介して20°の再位置決め角度分だけ時計回りの方向に第2のホイール及びピニオン14’の相対回転をもたらす。
【0077】
第2のホイール及びピニオン14’のこの相対回転の間、中心軸の左側の満月と下弦との間の月に対応する次の月相プロファイルは、図20に示すように、依然として表示開口部の下に隠れている、満月と下弦との間の月に対応する前記次の月相を見せるために、月背景部分12’に完全に重ねられる。中心軸の反対側では、月相プロファイルに対して位相からずれている月背景のもう一方の部分12’が、表示開口部の右下に隠れる。図20a及び図20bに示すように、ピン64及びリターンスプリング62は再び休止位置にあり、第1のホイール及びピニオン8’とともに進み続けてきたマルタクロス44は、外側カムプロファイル54及び内側カムプロファイル56によってその向きが再び固定される。上述したように、機構は、開口部に満月と下弦との間の月に対応する月相を表示する準備が再び整い、その月相は、それから3.28日かけて左から右に移動する。次のジャンプ時に、マルタクロス44は反対側のレバー58と協働する。
【0078】
図示されていない別の実施形態によれば、駆動装置は、第1のホイール及びピニオン8と噛み合う入力ホイールと、第2のホイール及びピニオン14と噛み合う出力ホイールと、移行期間中にホイール及びピニオン8と14との間にオフセットをもたらすように配置された第2の入力部とを備える差動装置であってもよい。
【0079】
非常に明確に、第1のホイール及びピニオン並びに第2のホイール及びピニオンは、上記の例以外の構成を有してもよく、表示されるべき月背景部分、月相プロファイル及び月相の数を変えることが可能である。さらに、本発明の機構は、移行期間中に第2のホイール及びピニオンを再位置決め角度分だけオフセットするための第2のホイール及びピニオンの相対回転が反時計回りの方向に進むように適合されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9a
図10
図10a
図11
図11a
図12
図12a
図13a
図13b
図13c
図13d
図13e
図13f
図13g
図13h
図13i
図14
図15
図16
図16a
図16b
図17
図17a
図17b
図18
図18a
図18b
図19
図19a
図19b
図20
図20a
図20b
【外国語明細書】