(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008706
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】回路基板用絶縁積層体、これを用いたプリント回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/04 20060101AFI20220106BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B32B27/04 Z
H05K3/46 G
H05K3/46 T
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2014228468
(22)【出願日】2014-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジョン ユン
(72)【発明者】
【氏名】リ,チュン グン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヒ ソン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジェ チュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,チュン ヒ
【テーマコード(参考)】
4F100
5E316
【Fターム(参考)】
4F100AH06
4F100AK42
4F100AK53
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100GB43
4F100JG04A
4F100JK15B
4F100JL00C
4F100JL14B
4F100YY00B
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA32
5E316AA38
5E316AA43
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316DD02
5E316DD12
5E316DD23
5E316DD32
5E316EE09
5E316FF13
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG27
5E316HH11
5E316HH33
(57)【要約】
【課題】所望のめっきピール強度(Peel strength)を確保できる表面粗さを形成するための回路基板用絶縁積層体、これを用いたプリント回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の回路基板用絶縁積層体220は、第1面および第2面を有する絶縁層200と、一面に形成された表面粗さ210が転写されるように絶縁層200の第1面に加圧される離型フィルム300と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有する絶縁層と、
一面に形成された表面粗さが転写されるように前記絶縁層の第1面に加圧される離型フィルムと、を含む、プリント回路基板用絶縁積層体。
【請求項2】
前記表面粗さ(Ra)は、0.3μm~3.1μmである、請求項1に記載のプリント回路基板用絶縁積層体。
【請求項3】
前記絶縁層の第2面に形成されている保護層をさらに含む、請求項1に記載のプリント回路基板用絶縁積層体。
【請求項4】
ベース基板と、
前記ベース基板に第2面が積層され、第1面に表面粗さを有する絶縁層と、を含み、
前記表面粗さは、離型フィルムの表面粗さを前記第1面に転写することで形成される、プリント回路基板。
【請求項5】
前記表面粗さ(Ra)は、0.3μm~3.1μmである、請求項4に記載のプリント回路基板。
【請求項6】
ベース基板を準備する段階と、
第1面および第2面を有し、第1面に表面粗さを有する離型フィルムを準備する段階と、
第1面および第2面を有する絶縁層を準備する段階と、
前記絶縁層の第1面に前記離型フィルムの第1面を位置させ、加圧して絶縁積層体を形成する段階と、
前記ベース基板に前記絶縁積層体の第2面を位置させ、前記絶縁積層体と前記ベース基板を付着する段階と、
前記絶縁積層体が付着されたベース基板を硬化する段階と、を含む、プリント回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記表面粗さ(Ra)は、0.3μm~3.1μmである、請求項6に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記離型フィルムを準備する段階は、フィルムの一面または両面に離型処理を施す段階を含む、請求項6に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記付着する段階は、前記加圧された絶縁積層体と前記ベース基板を加圧する段階を含む、請求項6に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記硬化する段階の後に、前記離型フィルムを除去する段階をさらに含む、請求項6に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁層を準備する段階は、前記絶縁層の第2面に保護層を付着する段階を含み、
前記絶縁積層体とベース基板を付着する段階の前に、前記絶縁層に付着された保護層を除去する段階をさらに含む、請求項6に記載のプリント回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用絶縁積層体、これを用いたプリント回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、プリント回路基板は、各種の熱硬化性合成樹脂からなるボードの一面または両面に銅線で配線を施した後、ボード上にICまたは電子部品を配置して固定し、それらの間の電気的配線を具現して絶縁体でコーティングしたものである。
【0003】
近年、電子産業の発達に伴い、電子部品の高機能化、軽薄短小化に対する要求が急増しており、かかる傾向に対応すべく、電子部品を搭載するプリント回路基板に対しても高密度配線化および薄板化が要求されている。
【0004】
これに対し、様々な微細回路パターン具現工法に関する研究が活発に行われており、基本的な前提条件として、銅箔(めっき層)と絶縁層の接着性を向上させるために、絶縁層に均一な粗さを有する表面粗さを形成するための研究が集中している。
【0005】
ビルドアップ基板工程におけるビルドアップフィルムの積層および硬化による絶縁層の形成後、Semi-additive工法を行うために、無電解銅めっき薄膜を積層する工程が必要となる。無電解銅めっきと絶縁層の結合強度を高めるために、デスミア工程において絶縁層の表面粗さを一定の水準以上に確保することが重要である。
【0006】
しかし、low CTEおよびlow DFに対応できる絶縁フィルムの場合、無機フィラーの増加および樹脂の硬化密度の向上、および樹脂内の極性官能基の減少などによって、デスミア工程において所望のめっきピール強度(Peel strength)を確保できる表面粗さを形成することが困難であるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、所望のめっきピール強度(Peel strength)を確保できる表面粗さを形成するための回路基板用絶縁積層体、これを用いたプリント回路基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例によるプリント回路基板用絶縁積層体は、第1面および第2面を有する絶縁層と、一面に形成された表面粗さが転写されるように前記絶縁層の第1面に加圧される離型フィルムと、を含む。
【0009】
前記表面粗さ(Ra)は、0.3μm~3.1μmであることができる。
【0010】
前記絶縁層の第2面に形成されている保護層をさらに含むことができる。
【0011】
本発明の他の実施例によるプリント回路基板は、ベース基板と、前記ベース基板に第2面が積層され、第1面に表面粗さを有する絶縁層と、を含み、前記表面粗さは、離型フィルムの表面粗さを前記第1面に転写することで形成される。
【0012】
前記表面粗さ(Ra)は、0.3μm~3.1μmであることができる。
【0013】
本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法は、ベース基板を準備する段階と、第1面および第2面を有し、第1面に表面粗さを有する離型フィルムを準備する段階と、第1面および第2面を有する絶縁層を準備する段階と、前記絶縁層の第1面に前記離型フィルムの第1面を位置させ、加圧して絶縁積層体を形成する段階と、前記ベース基板に前記絶縁積層体の第2面を位置させ、前記絶縁積層体と前記ベース基板を付着する段階と、前記絶縁積層体が付着されたベース基板を硬化する段階と、を含む。
【0014】
前記表面粗さ(Ra)は、0.3μm~3.1μmであることができる。
【0015】
前記離型フィルムを準備する段階は、PET(Polyethylene terephthalate)フィルムの一面にシリコーン離型処理を施す段階を含むことができる。
【0016】
前記付着する段階は、前記加圧された絶縁積層体と前記ベース基板を加圧する段階を含むことができる。
【0017】
前記硬化する段階の後に、前記離型フィルムを除去する段階をさらに含むことができる。
【0018】
前記絶縁層を準備する段階は、前記絶縁層の第2面に保護層を付着する段階を含み、前記絶縁積層体とベース基板を付着する段階の前に、前記絶縁層に付着された保護層を除去する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回路基板用絶縁積層体、これを用いたプリント回路基板およびその製造方法によれば、表面粗さが硬化工程により絶縁層に転写されることで、デスミア工程を省略し、工程時間を短縮する効果を奏することができる。これにより、デスミア液の濃度を下げる操作が可能となり、基板工程の生産性を向上させるために役立つと予想される。
【0020】
また、本発明の回路基板用絶縁積層体、これを用いたプリント回路基板およびその製造方法によれば、表面粗さの調節により絶縁層に転写される粗さを容易に制御することができ、絶縁層の表面粗さの管理が容易であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例によるプリント回路基板の断面図である。
【
図2】本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法を説明するための工程の流れを示す図である。
【
図3】本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法を説明するための工程の流れを示す図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法を説明するための工程の流れを示す図である。
【
図5】本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法を説明するための工程の流れを示す図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法を説明するための工程の流れを示す図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法を説明するための工程の流れを示す図である。
【
図8】本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法を説明するための工程の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の目的、特定の長所および新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明および好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、「一面」、「他面」、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。以下、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨を不明瞭にする可能性がある係る公知技術についての詳細な説明は省略する。
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0024】
(プリント回路基板)
図1は、本発明の一実施例によるプリント回路基板1000を示す断面図である。
【0025】
図1に示すように、プリント回路基板1000は、ベース基板100と、前記ベース基板100に第2面が積層され、第1面に表面粗さ210を有する絶縁層200と、を含む。
【0026】
前記ベース基板は、絶縁層に1層以上の回路が形成されている回路基板であって、好ましくは、プリント回路基板であってもよい。本図面では説明の便宜上、具体的な内層回路の構成は省略して示しているが、当業者であれば、前記ベース基板として、絶縁層に1層以上の回路が形成された通常の回路基板が適用されることができることを十分に認識することができる。
【0027】
前記絶縁層としては、樹脂絶縁層を使用することができる。前記樹脂絶縁層としては、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂、ポリイミドのような熱可塑性樹脂、またはこれらにガラス繊維または無機フィラーのような補強材が含浸した樹脂、例えば、プリプレグを使用してもよく、また、熱硬化性樹脂および/または光硬化性樹脂などを使用してもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0028】
前記回路層は、回路用伝導性金属として使用されるものであれば制限なく適用することができ、プリント回路基板では、銅を使用することが一般的である。
【0029】
前記表面粗さ210は、0.3μm~3.1μmであることが、接着力を向上させるために好ましい。
【0030】
本発明の一実施例によるプリント回路基板1000は、後述するさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法で説明するように、表面粗さが形成された離型フィルムを用いて絶縁層に表面粗さを転写し、表面粗さの調節により絶縁層に転写される粗さを容易に制御することができ、絶縁層の表面粗さの管理が容易できるという利点がある。
【0031】
(プリント回路基板の製造方法)
図2から
図8は、本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法を説明するための工程の流れを示す図である。
【0032】
図2に示すように、まず、内層絶縁層101、多数の回路層102および貫通ビア103を有するベース基板100を準備する。
【0033】
前記絶縁層としては、樹脂絶縁層を使用することができる。前記樹脂絶縁層としては、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂、ポリイミドのような熱可塑性樹脂、またはこれらにガラス繊維または無機フィラーのような補強材が含浸した樹脂、例えば、プリプレグを使用してもよく、また、熱硬化性樹脂および/または光硬化性樹脂などを使用してもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0034】
前記回路層は、回路用伝導性金属として使用されるものであれば制限なく適用することができ、プリント回路基板では、銅を使用することが一般的である。
【0035】
ここで、貫通ビアを形成する過程は、当業界において公知のフォトリソグラフィ工法を適用して、予め設定された位置に応じてビアホールを形成する方式を適用してもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0036】
図3に示すように、第1面301および第2面302を有し、第1面301に表面粗さを有する離型フィルム300、第1面201および第2面202を有する絶縁層200および前記絶縁層200の第2面202に付着される保護層310を準備する。
【0037】
前記離型フィルム300は、PET(Polyethylene terephthalate)樹脂の一面にシリコーン離型処理が施された構造を有することができ、これは、前記離型フィルム300にシリコーンを塗布する方式で形成することができ、フィルムを形成する樹脂および塗布される物質は、特にこれに限定されるものではない。
【0038】
前記保護層310は、異物が表面に付く現象を防止できる当業界において公知のカバーフィルムであってもよい。例えば、BOPP(Biaxially Oriented Polypropylene)、PET(polyethylene terephthalate)であってもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0039】
図4に示すように、離型フィルム300、絶縁層200および保護層310を順次付着した状態で、加圧プレート400を用いて加圧する。
【0040】
この際、前記離型フィルム300の第1面301に形成された表面粗さ210を前記絶縁層200の第1面201に転写して、絶縁積層体220を形成する。
【0041】
この際、前記表面粗さ210は、0.3μm~3.1μmであることが接着力を向上させるために好ましい。
【0042】
図5に示すように、前記形成された絶縁積層体220の第2面202に付着された保護層310を除去した後、前記準備したベース基板100、保護層310が除去された絶縁積層体220を順次配置する。
【0043】
この際、絶縁積層体220は、ベース基板100の一面および他面に配置されることができる。
【0044】
図6に示すように、前記順次配置されたベース基板100および絶縁積層体220を前記加圧プレート400を用いて加圧する。
【0045】
この際、前記絶縁積層体220は、離型フィルム300が付着された状態で加圧される。
【0046】
また、前記加圧プレート400の圧力は、絶縁材料ごとに粘度が異なるためボイドが生じない程度の当業界における公知の圧力であってもよい。例えば、0.2MPa~2MPaであってもよい。
【0047】
図7に示すように、前記加圧プレート400を除去した後、前記離型フィルム300が加圧された状態で、樹脂硬化工程を行う。
【0048】
この際、前記離型フィルム300を除去していない状態で硬化工程を行うことで、絶縁層に転写された表面粗さが変わることなく維持させることができる。
【0049】
樹脂硬化によって前記表面粗さ210が固定された後、
図8に示すように、前記離型フィルム300を除去する。
【0050】
本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法において説明したように、表面粗さが形成された離型フィルムを用いて絶縁層に表面粗さを転写することで、デスミア工程を省略し、工程時間を短縮する効果を奏することができ、これにより、デスミア液の濃度を下げる操作が可能となり、基板工程の生産性を向上させるために役立つと予想される。
【0051】
また、表面粗さの調節により絶縁層に転写される粗さを容易に制御することができ、絶縁層の表面粗さの管理が容易であるという利点がある。
【実施例0052】
以下、下記の実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、これに本発明の範疇が限定されない。
【0053】
(実施例)
本発明のさらに他の実施例によるプリント回路基板の製造方法により、表面粗さ(Ra)値が0.4μmの東レ社製のXZ-32PET(Polyethylene terephthalate)フィルムに内面シリコーン離型処理を施した後、エポキシ絶縁フィルムを厚さが37.5μmになるようにコーティングおよび乾燥して、ビルドアップフィルムを製造した。
【0054】
このフィルムを使用してCCL基板に積層した後、120℃で30分、170℃で30分硬化させてからPETフィルムを除去して、ビルドアップフィルム層の表面粗さ(Ra)の値が0.4μmに形成されたことを確認した。
【0055】
かかる基板上に、デスミア工程を行わずに化学銅めっきを形成して、ピール速度10mm/minで90℃でピール強度(peel strength)を測定すると、512gf/cmであることを確認した。
【0056】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0057】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。