(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087066
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】食後血糖値上昇抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20220602BHJP
A61K 36/44 20060101ALI20220602BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220602BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220602BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20220602BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220602BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20220602BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/44
A61P3/10
A61P43/00 111
A61K31/353
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192992
(22)【出願日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】63/119,102
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奈良 未沙希
(72)【発明者】
【氏名】大川原 正喜
(72)【発明者】
【氏名】黒野 昌洋
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD52
4B018ME14
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4C088CA05
4C088CA11
4C088MA34
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZC20
4C088ZC35
(57)【要約】
【課題】日常的な食後の血糖値管理を容易くするための利便性かつ汎用性が高い柿抽出物を含む固形状の食後血糖値上昇抑制剤を提供する。
【解決手段】柿抽出物を有効成分として含むことを特徴とする食後血糖値上昇抑制剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柿抽出物を有効成分として含むことを特徴とする固形状の食後血糖値上昇抑制剤。
【請求項2】
柿抽出物に含まれるポリフェノール含量が20質量%以上である請求項1に記載の食後血糖値上昇抑制剤。
【請求項3】
柿抽出物に含まれるエピガロカテキンガレートが10質量%以上である請求項1または2に記載の食後血糖値上昇抑制剤。
【請求項4】
α-アミラーゼ活性阻害作用のIC50値が75μg/mL以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の食後血糖値上昇抑制剤。
【請求項5】
摂食前の5分から30分以内に経口摂取される請求項1から4のいずれか1項に記載の食後血糖値上昇抑制剤。
【請求項6】
柿抽出物の1回経口摂取量が100mg~5gである請求項1から5のいずれか1項に記載の食後血糖値上昇抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柿抽出物を含む食後血糖値上昇抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食生活の欧米化や慢性的な運動不足などにより、生活習慣病の患者が増加している。その中でも、糖尿病患者の増加は、超高齢社会を迎えた日本において極めて深刻な問題のひとつとなっている。糖尿病の治療方法としては、食事療法、運動療法、薬物療法が一般的であり、食事療法は、血糖値管理による症状の安定化、合併症の予防を目標として実施されている。糖尿病に罹患しないためには、食事療法などにより血糖値をコントロールすることが非常に重要であるが、特に、食後血糖値は糖尿病に関する指標として注目されている。
【0003】
日中の食後血糖値が管理されなくなると、夜間空腹時の血糖値が段階的に悪化し、糖尿病が増悪することから、食後血糖値の是正は意義がある。運動や薬物ではなく、日常的な食事による簡便な血糖値管理方法が望まれている。
【0004】
茶、ぶどう、りんご、カカオなどの天然物に含まれるポリフェノールには、抗酸化作用をはじめ、血圧低下作用、血糖値上昇抑制作用、発がん抑制作用、冠動脈性心疾患改善作用など、さまざまな生理活性が報告されている。
【0005】
柿の渋味はポリフェノール類のタンニンに起因するものであり、フェノール性水酸基に由来して抗酸化性、抗変異原性(細胞が突然変異をするのを防ぐ性質)、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、抗アレルギー作用、血圧降下作用、消臭作用、香味改良効果、悪酔い防止作用など多くの機能性持つことが知られている。
【0006】
柿のポリフェノールによる血糖値上昇抑制効果に関して、柿葉の熱水抽出物及び柿果実より採取して成る高分子量柿タンニンを含む飲料組成物で柿葉由来の熱水抽出物に含まれる分子量10,000以下より成るポリフェノール抽出物と柿果実より採取して成る分子量10,000以上より成る柿タンニンを含有させた、食後血糖値上昇抑制効果を有する飲料(特許文献1)が提案されている。当該飲料は、食前に一定量を飲用する必要があり、また、柿の渋みの影響で食事の味に影響を与えるなど、利便性かつ汎用性には改良の余地があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の柿ポリフェノールオリゴマーは、柿タンニンを酸性下で断片化した後、吸着樹脂に吸着させ、水洗してからエタノール水溶液で溶出し、ついで減圧濃縮した濃縮液を凍結乾燥又は噴霧乾燥することにより粉末として得られ、二量体から五量体までのオリゴマーを主要成分とするものであり、その調製に複雑な作業や設備を要しコストが嵩むため、汎用性のある素材とはいい難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-174829号公報
【特許文献2】特開2007-176845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、日常的な食後の血糖値管理を容易くするための利便性かつ汎用性が高い柿抽出物を含む固形状の食後血糖値上昇抑制剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究したところ、柿抽出物を含むことで、食後における優れた血糖値上昇抑制効果を見出し、本発明を完成させた。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、ポリフェノール含量が20質量%以上、またはエピガロカテキンガレートが10質量%以上の柿抽出物を用いることができる。
【0012】
本発明では、好ましくはα-アミラーゼ活性阻害作用のIC50値が75μg/mL以下である。本発明は、柿抽出物の1回経口摂取量を50mg~5gとすることが好ましい。
【0013】
即ち、本発明は、要旨、以下のものを提供する。
〔1〕柿抽出物を有効成分として含むことを特徴とする固形状の食後血糖値上昇抑制剤。
〔2〕柿抽出物に含まれるポリフェノール含量が20質量%以上である〔1〕に記載の食後血糖値上昇抑制剤。
〔3〕柿抽出物に含まれるエピガロカテキンガレートが10質量%以上である〔1〕または〔2〕に記載の食後血糖値上昇抑制剤。
〔4〕α-アミラーゼ活性阻害作用のIC50値が75μg/mL以下である〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の食後血糖値上昇抑制剤。
〔5〕摂食前の5分から30分以内に経口摂取される〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の食後血糖値上昇抑制剤。
〔6〕柿抽出物の1回経口摂取量が100mg~5gである〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の食後血糖値上昇抑制剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、柿抽出物を含む食後血糖値上昇抑制剤を提供することができる。
本発明の血糖値上昇抑制剤は、これをヒトや動物が摂取することによって、血糖値上昇抑制の効果が得られる。すなわち、柿抽出物は、グルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、アミラーゼ等の酵素を阻害する活性に優れている。これらの酵素は食事からの糖吸収に関わり、より具体的には多糖類やオリゴ糖を分解して糖を体内に吸収し易くする作用を有するものである。よって、これらの酵素の活性を、柿抽出物で阻害することにより、特には食事後の血糖値の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は柿ポリフェノールチオール分解物のHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図2】
図2は糖負荷食品摂取後の血糖値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する
【0017】
(柿抽出物及びその製法)
柿抽出物の原料として用いる柿の品種に特に制限はなく、日本でよく栽培される品種では、例えば、「刀根早生」、「平核無」、「甲州百目」、「会津身不知」、「西条」、「愛宕」、「市田柿」、「天王」等が挙げられる。用いる部位としても、特に制限はないが、果実、果皮、果肉、種子、葉、根茎、枝、樹皮等が挙げられる。果実はポリフェノールが集積したタンニン細胞が多く含み、また、採取しても天然に再生可能であるので、好ましい。果実は、ヘタや果皮や種子等の果肉以外のいずれかをそのまま含む状態で原料にしてもよく、あるいは、ヘタや果皮や種子等の果肉以外のいずれか、もしくはそれらのすべてを除いた状態で原料にしてもよい。
【0018】
柿抽出物を得るには、自然的及び/又は人工的に脱渋の処理を施すことが好ましい。これによりアセトアルデヒド縮合・重合反応等で水不溶化される。形成した水不溶化物は、水やその他の等張液、緩衝液等によって簡単に洗浄することができるので、その洗浄により有効かつ効率的に不純物を取り除くことができる。そして洗浄後には加熱や超音波等の処理を施すことでポリフェノールを再度可溶化することができる。
【0019】
自然的な脱渋の処理としては、発酵等が挙げられる。ただし、製造に1年から3年以上の時間がかかり、発酵により独特の不快感を催す強い発酵臭が生じるため、使用する場面が限定されやすい。
【0020】
人工的な脱渋の処理としては、渋柿を甘くするための渋抜きの目的で行う通常の方式を適宜採用することができる。例えば、原料となる柿をポリエチレン袋などの容器にエタノールやドライアイスと共に入れて封をして所定期間保管する方式を採用してもよい。もしくは、大量の柿を処理する場合は、炭酸ガスを用いた恒温短期脱渋法や、脱渋と貯蔵を同時に行う低温脱渋法の方式を適宜に採用してもよい。あるいは、より簡易的にポリフェノールの水不溶化を促す処理は、原料の柿を粉砕もしくは均質化してうえで、それを密閉できる容器、袋等に収容し、原料の柿の重量1kg当たり1~5mLのエタノールを添加し、密封して24時間~3日間静置するなどのようにするとよい。脱渋の程度は、当業者に周知のタンニンプリント法などで確認することもできる。
【0021】
脱渋の処理の後には、上述したとおり、形成した水不溶物を水や等張液、緩衝液等で洗浄することによりポリフェノールの純度を高めることができる。その洗浄の態様は特に制限はない。ポリフェノール、より具体的には例えば柿果実中にタンニン蓄積細胞として存在するタンニン細胞は、十分に脱渋の処理を施すと水中での分離性及び沈降性が増す。よって、できるだけコストをかけずに効率的に洗浄の処理を行うことを考慮すれば、その態様は、原料の柿を粉砕もしくは均質化してエタノールやドライアイス等で脱渋の処理を十分に行ったうえで、1~20倍量の水を加え、撹拌もしくは混合し、その後静置して、上澄みを除き、これを5~20回、場合によっては5時間~3日間の期間にわたって繰り返し行って、最終的な沈殿を濾別する等の方法とすることができる。この方法では比較的大量の原料を効率的に処理することが可能となる
【0022】
(ポリフェノールの構造)
柿のポリフェノールの構造については、品種によって異なり、エピカテキン(epicatechin;EC)、エピカテキンガレート(epicatechingallate;ECg)、エピガロカテキン(epigallocatechin;EGC)、エピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate;EGCg)が品種独自の比率で30分子程度縮合した分子量10,000程度の高分子化合物で、プロアントシアニジンポリマーであることが知られている
【0023】
(血糖値上昇抑制剤)
以下では、上記のようにして得られた柿抽出物の利用形態について更に詳細に説明する。ただし、本明による柿抽出物の利用形態が、以下の説明によって制限を受けるものではない。
【0024】
本発明による柿抽出物を含む食後血糖値上昇抑制剤は、例えば、上記柿抽出物を、好ましくは0.1~100質量%、より好ましくは1~80質量%、更により好ましくは30~70質量%含有することができる。
【0025】
上記血糖値上昇抑制剤は、例えば、柿抽出物を単独で含むものとして提供されてもよく、あるいは、他の素材や、血糖値上昇抑制に有効な他の成分を組み合わせて含むものとして提供されてもよい。
【0026】
上記血糖値上昇抑制剤は、必要に応じて、通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、界面活性剤、溶解補助剤、還元剤、緩衝剤、吸着剤、流動化剤、帯電防止剤、抗酸化剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、遮光剤、着香剤、香料、芳香剤、コーティング剤、可塑剤等を添加して用いることができる。
【0027】
上記血糖値上昇抑制剤は、飲食品、医薬品、医薬部外品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、健康食品、動物用医薬品、動物用医薬部外品、動物用機能性食品、動物用栄養補助食品、動物用サプリメント、動物用健康食品等の形態で、あるいはこれら形態と組み合わせて利用することができる。
【0028】
上記血糖値上昇抑制剤の調製法に特に制限はなく、上記柿抽出物を、必要に応じてその他の成分と共に、その組成物中に少なくとも含有せしめればよい。
【0029】
上記血糖値上昇抑制剤は、食前に簡便に摂取できれば、その製品形態に特に制限はなく、例えば、粉末状(顆粒、細粒)、錠剤(錠剤、タブレット)、カプセル状(カプセル剤)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、可食性フィルムに包む態様等が挙げられる。
【0030】
柿抽出物は、柿の食経験上、ヒトや動物が経口的に摂取しても問題はなく、したがって上記血糖値上昇抑制剤の摂取量には特に制限はない。上述したような血糖値上昇抑制をもたらすのに有効な摂取量としては、摂取者の性別、年齢、体格等によって適宜決定することができるが、例えば成人1日当たり、柿抽出物量として100mg~5gであることが好ましく、50mg~3gであることがより好ましい。1日1回~数回に分け、又は任意の期間及び間隔で服用され得るが、食事からの糖吸収を抑える目的であれば、食品や飲料に配合しても差し支えなく、より望ましい利用形態としては、食事の5~30分前に経口的に摂取されるようにして用いられることが好ましい。
【実施例0031】
以下、実験例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これら実験例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0032】
[調製例1](柿抽出物の調製 その1)
柿抽出物は、濱崎らの方法(「エタノールで脱渋した果実を用いたカキタンニンの迅速な調製法」園芸学研究(2010)9(3)367-372)に準じて調製した。具体的には以下のようにして調製した。日本で栽培されている柿品種のひとつである「刀根早生」の果実を収穫し、収穫後に直ちに0.02mm厚のポリエチレンフィルムで密封し、これに、果実1kg当り2mLのエタノールを加えて、25℃で5日間静置して、脱渋した。脱渋した果実はヘタを取り除き、ミキサーで均質化した。その均質化したホモジネートを容量50mLの遠心管に入れ、1,630×gで15分間の遠心処理を行なうと、少なくとも遠心管内の内容物の中位高さより下層もしくは底部付近にタンニン細胞が層状をなして濃縮した。その濃縮した画分を遠心管から採取して、凍結乾燥した。次いで、凍結乾燥物に、乾燥粉末100mgに対し10mLの水を加えてオートクレーブ(加熱加圧条件:120℃、0.2MPa)で15分間加熱し、加熱後、1,630×gで15分間の遠心処理を行ない、その上清をNo.2定性濾紙(アドバンテック社製)で濾過して、濾液物を得た。この濾液物を再び凍結乾燥し、粉末状に調製した。得られた粉末状の柿抽出物のポリフェノール含量を、別途、D-(+)カテキンを指標としたフォーリン・チオカルト法により定量したところ、ポリフェノール含量はおよそ70質量%であった。また、フェノール硫酸法で測定した糖類含量はおよそ20質量%であり、その他10質量%の同定されない成分が含まれていた。
【0033】
[調製例2](柿抽出物の調製 その2)
柿抽出物を、以下のようにして調製した。
【0034】
(脱渋)皮、ヘタが付いた柿を粉砕し、調製例1と同様にして脱渋処理した。これにより、含まれるポリフェノールはアセトアルデヒド縮合・重合反応等により水不溶化される。また、含まれるタンニン細胞は水中での分離性及び沈降性が向上する。
【0035】
(水洗)脱渋処理後の水不溶化物におよそ10倍量の水を加えて洗浄した。洗浄は2日間にわたって、合計10回繰り返した。これにより、ポリフェノール以外の成分をよく取り除くことができる。
【0036】
(加水・加熱)水洗後の水不溶化物におよそ10倍量の水を加えてオートクレーブ(加熱加圧条件:120℃、0.2MPa)で1時間処理した。これにより、含まれるポリフェノールはアルデヒド縮合・重合等の結合が切れて、ポリフェノールが水に可溶化する。
【0037】
(搾汁・濾過)加熱した処理物を、布でこし、50μmのフィルターを通し、最終的に1μmのフィルターを通した。得られたフィルター通過液のブリックス(Brix)値はBrix1程度であった。
【0038】
(濃縮・粉末化)フィルター通過液を減圧濃縮装置にておよそ15倍に濃縮した。これをドラム乾燥し、粉砕、篩過により、250μmのメッシュパスの粉末を得た。この粉末のポリフェノール濃度は、D-(+)カテキンを指標としたフォーリン・チオカルト法により定量したところ、カテキン換算で70%重量であった。
【0039】
[ポリフェノールの構成カテキンの測定]
<試験サンプル>
実験例1:柿抽出物(『奈良式柿渋(粉末)』石井物産株式会社製)
実験例2:リンゴポリフェノール(『アップルフェノンSH』アサヒグループ食品株式会社製)
実験例3:茶ポリフェノール(『サンフェノン90S』太陽化学株式会社製)
実験例4:ライチポリフェノール(『OLG-F』株式会社アミノアップ製)
【0040】
<試験方法>
各試験サンプルに含まれるポリフェノールを25mg/mLになるように、エタノール(1%2-メルカプトエタノール、0.5%HClを含む)へ溶解し、40℃で4日間反応させた。その後、以下の条件でHPLC分析を行った。分析結果は
図1に示す。
【0041】
<分析条件>
カラム:ODS4.6×150mm、5μm、カラム温度35℃(ジーエルサイエンス株式会社製)
流速:1.0mL/分
波長:280nm
移動相:A液(2%酢酸水溶液)、B液(メタノール)
min 0-5 5-55 55-60
A:B 10:0 2:8 10:0
【0042】
構成カテキンの割合については次の方法で算出した。カテキン類(EGC、EC、EGCg、ECg)のチオール分解物をLC-MS法で同定し、HPLC法で算出した面積値と、モル吸光係数(木下ら、血栓止血誌4(6)417-422、1993参照)よりモル比を算出し、カテキン類の合計値に対する割合を算出した。表2にその結果を示す。カテキン類の280nmにおけるモル吸光係数は、EGC;1,100、EC;3,300、EGCg;8,700、ECg;13,000であった。
【0043】
【0044】
表2に示す通り、柿抽出物は、他のポリフェノール素材と比べ、エピガロカテキンガレート(EGCg)が最も多いカテキン構成比となっていることがわかる。
【0045】
[α-アミラーゼ活性阻害作用の測定]
<試験サンプル>
実験例5:柿抽出物(『奈良式柿渋(粉末)』石井物産株式会社製)(試験溶液濃度:0.13、0.25、0.42mg/mL50%エタノール水溶液)
実験例6:サラシア(『サラシアオブロンガ・エキス末B』株式会社タカマ製)(試験溶液濃度:0.5、1.5、5.0mg/mL25%DMSO水溶液)
実験例7:桑葉エキス(『DNJエキスパウダーRF』豊玉香料株式会社製)(試験溶液濃度:1.0、3.0、10mg/mL水)
実験例8:アカルボース(富士フィルム和光純薬株式会社製、薬理研究用)(試験溶液濃度:0.06、0.12、0.18mg/mL水)、ポジティブコントロール
【0046】
<試験方法>
α-アミラーゼ阻害作用の測定にはα-アミラーゼ測定キット(キッコーマンバイオケミファ株式会社製)およびα-Amylase from Porcine pancreas(Sigma-Aldrich製)を使用した。基質溶液と酵素溶液(キット付属)を等量混合し(基質-酵素混合溶液)、37℃にて5分間加温した。α-アミラーゼと各実施例の試験溶液の等量混合液を基質-酵素混合溶液の1/10量添加し10分間反応させた。その後、反応停止液(キット付属)を基質-酵素混合溶液の2倍量を添加して反応を停止させ、400nmの吸光度を測定した。ブランクはα-アミラーゼ溶液と試験溶液の混合液を反応停止後に添加し、400nmの吸光度を測定した。α-アミラーゼ阻害率は下記の計算式にて算出し、α-アミラーゼ活性阻害作用のIC50値を求めた。
α-アミラーゼ阻害率(%)={1-(A-Blank A)/(B-Blank B)}×100
A :試料添加反応系の吸光度
Blank A :試料添加反応系のブランクの吸光度
B :試料溶媒添加反応系の吸光度(コントロール:全発色)
Blank B :試料溶媒添加反応系のブランクの吸光度
【0047】
<試験結果>
結果を表1に示す。
【0048】
【0049】
α-アミラーゼ活性阻害作用のIC50値(μg/mL)は、数値が低い方が効果が高いと評価される。柿抽出物は、2型糖尿病を治療するための医療用医薬品であるアカルボースには劣るものの、血糖値上昇抑制効果があるとされるサラシアや桑葉エキスに比べ、優れた効果があることがわかる。
【0050】
[食後血糖値上昇抑制効果の測定]
<試験方法>
健常成人男女の被験者11名を対象に柿抽出物の食後血糖値上昇抑制効果を測定するためのクロスオーバー試験を行った。柿抽出物摂取群には試験食として可食性フィルム(ピップ株式会社製、袋オブラート)に包んだ柿抽出物粉末100mg、柿抽出物未摂取群には前記可食性フィルムのみを摂取させて20分後に糖負荷食品(市販の塩おにぎり1個 約100g)を摂取させた。血糖値については血糖測定器(テルモ株式会社製、メディセーフフィットMS-FR201B)を用いて、試験食又は可食性フィルムのみの摂取前、糖負荷食品摂取の30、60、90、120分後に測定した。試験は、午前中に実施し、前日21:00以降の水以外の飲食および喫煙を禁止し、それを試験終了まで継続させた。試験食又は可食性フィルムのみの摂取前の血糖値の値を基準として、摂取前から摂取120分後までの血糖値の変化の平均値を
図2に示す。
【0051】
<試験結果>
図2の試験結果に示すように、柿抽出物摂取群では柿抽出物未摂取群と比較して、糖負荷食品摂取後60分及び90分の血糖値の変化量が有意に低く、柿抽出物による食後血糖値上昇抑制効果が見られた。