(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087093
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】警報発出システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20220602BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20220602BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220602BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20220602BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20220602BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
G08B21/02
A61B5/0245 100E
A61B5/11 100
A61B5/113
A61B5/08
A61B5/00 102A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024189
(22)【出願日】2022-02-18
(62)【分割の表示】P 2018019367の分割
【原出願日】2018-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2017020466
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人計測自動制御学会が2016年11月26日に発行した「第25回計測自動制御学会中国支部学術講演会論文集」において発表
(71)【出願人】
【識別番号】520081949
【氏名又は名称】中村 浩士
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 幹也
(72)【発明者】
【氏名】中島 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩士
(57)【要約】 (修正有)
【課題】体導音センサを被検者に容易に装着できるようにし、かつ、体導音センサが体導音以外の音を拾いにくくすること、体導音センサと加速度センサを併用して、被検者の状態によらず、心拍数及び呼吸数の計測を高精度で行えるようにする。
【解決手段】体導音センサが設けてある棒状体と、体導音センサによって取得された音響信号を音響心拍数計測部及び音響呼吸数計測部で処理して被検者の音響心拍数及び音響呼吸数を求める体導音信号処理手段と、音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常がある場合に警報を発する警報発出システム。加速度センサをさらに備え、取得された加速度信号を加速度心拍数計測部及び加速度呼吸数計測部で処理して被検者の加速度心拍数及び加速度呼吸数を求める加速度信号処理手段を追加することにより、2つのセンサを併用した高精度の計測を行うようにしても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流音若しくは心音及び呼吸音を検知し音響信号を取得する体導音センサと、
被検者の脇の下に挿入可能な先端部を有し該先端部に前記体導音センサを設けてある棒状体と、
前記体導音センサにより取得された音響信号に基づいて音響心拍数を計測する音響心拍数計測部及び音響呼吸数を計測する音響呼吸数計測部を有する体導音信号処理手段と、
前記音響心拍数計測部で計測された音響心拍数のデータ及び前記音響呼吸数計測部で計測された音響呼吸数のデータを、所定のインターバルで送信するデータ送信手段と、
前記データ送信手段から送信された音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータを受信するデータ収集手段と、
前記データ収集装置が受信した音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する警報手段を備える
ことを特徴とする警報発出システム。
【請求項2】
前記警報発出システムは、少なくともZ軸方向における被検者の体動の加速度を検知し加速度信号を取得する加速度センサと、
該加速度センサにより取得された加速度信号に基づいて加速度心拍数を計測する加速度心拍数計測部及び加速度呼吸数を計測する加速度呼吸数計測部を有する加速度信号処理手段と、
前記音響心拍数計測部で計測された音響心拍数及び前記加速度心拍数計測部で計測された加速度心拍数に基づいて、修正心拍数を演算する修正心拍数演算部と、
前記音響呼吸数計測部で計測された音響呼吸数及び前記加速度呼吸数計測部で計測された加速度呼吸数に基づいて、修正呼吸数を演算する修正呼吸数演算部を有し、
前記警報手段は、修正心拍数のデータ及び修正呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の警報発出システム。
【請求項3】
前記加速度信号処理手段は、前記加速度センサにより取得された加速度信号をフーリエ変換する加速度信号変換部を有し、
前記加速度心拍数計測部は、前記加速度信号変換部で得られた加速度変換信号から低周波成分を除去する第2の低周波除去部と、該第2の低周波除去部で得られた第2の低周波除去信号に基づいて加速度心拍数を演算する加速度心拍数演算部を有し、
前記加速度呼吸数計測部は、前記加速度信号変換部で得られた加速度変換信号から高周波成分を除去する第2の高周波除去部と、該第2の高周波除去部で得られた第2の高周波除去信号に基づいて加速度呼吸数を演算する加速度呼吸数演算部を有している
ことを特徴とする請求項2に記載の警報発出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検者の脇の下にセットされる体導音センサを用いて、被検者の血流音、心音、呼吸音等を検出し、検出された音響信号に基づいて音響心拍数及び音響呼吸数を計測し、計測された音響心拍数及び音響呼吸数に基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する警報発出システムに関するものである。
また、この発明は、被検者の胸部又は腹部にセットされる加速度センサを用いて、被検者の胸部又は腹部における加速度を検出し、検出された加速度信号に基づいて加速度心拍数及び加速度呼吸数を計測し、計測された加速度心拍数及び加速度呼吸数に基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する警報発出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、呼吸器や循環器系疾患の早期発見を目的として、体導音(例えば、血流音、心音、呼吸音等)や加速度信号に基づく診断システムの研究・開発が進められている。
そして、血流音は手首の近く、心音は胸部又は腹部の近く、呼吸音は頬の近くで採取すれば明瞭な信号を取得し易い。
しかし、3箇所にマイクロホンを装着し、それぞれの体導音を採取することは、時間、コスト、手間がかかり、被検者の負担も大きい。
【0003】
そこで、特許文献1(特開2015-31889号公報)に記載されるように、1箇所で採取された混合音響信号から特定の成分を高精度に分離することのできる音響信号分離装置が提案されている(特に、段落0006~0007を参照)。
また、特許文献2(特許第3809847号公報)に記載されるように、1つの加速度センサで被検者の生体情報を得て、呼吸数や心拍数を検出する睡眠診断装置も提案されている(特に、段落0006~0007を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-31889号公報
【特許文献2】特許第3809847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の音響信号分離装置においては、音響センサ11(超低周波収録用のマイクロホン)が頸動脈上皮部に装着されているため、装着に手間がかかり、体導音以外の音を拾いやすいという欠点があった。
また、特許文献2の睡眠診断装置においては、寝姿変化、呼吸数及び心拍数以外の情報は導出できないという問題があった。
さらに、特許文献1の音響信号分離装置及び特許文献2の睡眠診断装置は、いずれも被検者の状態によっては、心拍数又は呼吸数の計測結果に誤差が生じるおそれがあった。
この発明は、体導音センサを被検者に容易に装着できるようにし、かつ、体導音センサが体導音以外の音を拾いにくくすることを第1の目的としてなされたものである。
そして、体導音センサと加速度センサを併用して、被検者の状態によらず、心拍数及び呼吸数の計測を高精度で行えるようにすることを第2の目的とし、1つの加速度センサで得た被検者の体動に関する情報に基づいて、呼気・吸気の識別及び呼吸の強弱も計測可能とすることを第3の目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の警報発出システムは、
血流音若しくは心音及び呼吸音を検知し音響信号を取得する体導音センサと、
被検者の脇の下に挿入可能な先端部を有し該先端部に前記体導音センサを設けてある棒状体と、
前記体導音センサにより取得された音響信号に基づいて音響心拍数を計測する音響心拍数計測部及び音響呼吸数を計測する音響呼吸数計測部を有する体導音信号処理手段と、
前記音響心拍数計測部で計測された音響心拍数のデータ及び前記音響呼吸数計測部で計測された音響呼吸数のデータを、所定のインターバルで送信するデータ送信手段と、
前記データ送信手段から送信された音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータを受信するデータ収集手段と、
前記データ収集装置が受信した音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する警報手段を備える
ことを特徴とする警報発出システム。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の警報発出システムにおいて、
前記警報発出システムは、少なくともZ軸方向における被検者の体動の加速度を検知し加速度信号を取得する加速度センサと、該加速度センサにより取得された加速度信号に基づいて加速度心拍数を計測する加速度心拍数計測部及び加速度呼吸数を計測する加速度呼吸数計測部を有する加速度信号処理手段と、前記音響心拍数計測部で計測された音響心拍数及び前記加速度心拍数計測部で計測された加速度心拍数に基づいて、修正心拍数を演算する修正心拍数演算部と、前記音響呼吸数計測部で計測された音響呼吸数及び前記加速度呼吸数計測部で計測された加速度呼吸数に基づいて、修正呼吸数を演算する修正呼吸数演算部を有し、
前記警報手段は、修正心拍数のデータ及び修正呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の警報発出システムにおいて、
前記加速度信号処理手段は、前記加速度センサにより取得された加速度信号をフーリエ変換する加速度信号変換部を有し、
前記加速度心拍数計測部は、前記加速度信号変換部で得られた加速度変換信号から低周波成分を除去する第2の低周波除去部と、該第2の低周波除去部で得られた第2の低周波除去信号に基づいて加速度心拍数を演算する加速度心拍数演算部を有し、
前記加速度呼吸数計測部は、前記加速度信号変換部で得られた加速度変換信号から高周波成分を除去する第2の高周波除去部と、該第2の高周波除去部で得られた第2の高周波除去信号に基づいて加速度呼吸数を演算する加速度呼吸数演算部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の警報発出システムによれば、体導音センサが、被検者の脇の下に挿入可能な先端部を有する棒状体の先端部に設けてあるので、棒状体の先端部を脇の下に差し込むだけで体導音センサを被検者に装着することができ、しかも体導音センサが体導音以外の音を拾いにくい。
そのため、手軽に被検者の心拍数及び呼吸数を計測することができ、しかも比較的高い精度で心拍数及び呼吸数を同時に計測することができる。
また、在宅患者の遠隔診断システムを実現したり、心拍数や呼吸数に異常のある被災者を的確に把握して警報を発したり、居眠り運転を検知して運転者や同乗者に対して警報を発したりすることができる。
【0010】
請求項2に係る発明の警報発出システムによれば、請求項1に係る発明の効果に加え、体導音センサと加速度センサを併用して被検者の心拍数及び呼吸数の計測を行うので、被検者の状態によらず、その計測精度を高めることができる。
【0011】
請求項3に係る発明の警報発出システムによれば、請求項2に係る発明の効果に加え、加速度センサにより取得された加速度信号をフーリエ変換して加速度変換信号を得た上で、加速度変換信号から低周波成分を除去した第2の低周波除去信号に基づいて加速度心拍数を演算するとともに、加速度変換信号から高周波成分を除去した第2の高周波除去信号に基づいて加速度呼吸数を演算することができるので、被検者の心拍数及び呼吸数を簡素な構成によって精度良く計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図。
【
図2】実施例1に係る棒状体の側面図、体導音センサの拡大断面図及び平面図。
【
図3】実施例1に係る体導音信号処理手段のブロック図。
【
図5】
図4の音響信号をフーリエ変換して得られた音響変換信号のグラフ。
【
図6】実施例2に係る第2の体導音信号処理手段のブロック図。
【
図7】実施例2に係る第2の体導音信号処理手段の処理フロー。
【
図8】体導音センサで計測された音響信号の他の例。
【
図9】
図8の音響信号をフーリエ変換して得られた音響変換信号のグラフ。
【
図10】
図9に示す音響変換信号から心音及び呼吸音に近い周波数成分を抽出した信号のグラフ。
【
図11】
図10に示す信号を逆フーリエ変換して得られた逆変換信号のグラフ。
【
図12】実施例3に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図。
【
図14】実施例3に係る加速度信号処理手段のブロック図。
【
図15】加速度センサで計測された加速度信号の一例。
【
図16】
図15の加速度信号をフーリエ変換して得られた加速度変換信号のグラフ。
【
図17】
図16に示す加速度変換信号から高周波成分を除去した信号のグラフ。
【
図18】
図17に示す信号を逆フーリエ変換して得られた逆変換信号のグラフ。
【
図19】強呼吸、弱呼吸、無呼吸の状態における逆変換信号のグラフ。
【
図20】実施例4に係る第2の加速度信号処理手段のブロック図。
【
図21】実施例4に係る第2の加速度信号処理手段の呼吸数に関する処理フロー。
【
図22】実施例4に係る第2の加速度信号処理手段の心拍数に関する処理フロー。
【
図23】加速度センサで計測されたY軸方向加速度信号の一例。
【
図24】
図23のY軸方向加速度信号をフーリエ変換して得られたY軸方向加速度変換信号のグラフ。
【
図25】
図24に示すY軸方向加速度変換信号から呼吸数に近い周波数成分を抽出した高周波除去信号のグラフ。
【
図26】
図25に示す高周波除去信号を逆フーリエ変換して得られた呼吸波形信号のグラフ。
【
図27】加速度センサで計測されたZ軸方向加速度信号の一例。
【
図28】
図27のZ軸方向加速度信号から呼吸波形信号を差し引いて得られたZ軸方向差分加速度信号のグラフ。
【
図29】変形例(1)に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0014】
図1は実施例1に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図である。
棒状体1は、被検者の脇の下に挿入可能な先端部を有し、その先端部に体導音センサ2が設けてある。
体導音センサ2を用いて被検者の心拍数及び呼吸数を計測する場合には、棒状体1の先端部を被検者の脇の下に挿入し、体導音センサ2の上面を被検者の胸側に向けて腕で挟むか棒状体1の中央部等をテープやベルトで固定する。
そして、被検者が落ち着いてから体導音センサ2によって取得された音響信号を体導音信号処理手段3で受信し、音響心拍数計測部4及び音響呼吸数計測部5で処理して、被検者の音響心拍数及び音響呼吸数を演算して求める。
報知手段6は、音響心拍数計測部4及び音響呼吸数計測部5から音響心拍数及び音響呼吸数に関する情報を受信し、表示部7に音響心拍数及び音響呼吸数を表示して、検査者又は被検者に知らせる。
【0015】
図2(a)は実施例1に係る棒状体1の側面図であり、
図2(b)は棒状体1の先端部に設けてある体導音センサ2の拡大断面図及び平面図である。
体導音センサ2は、
図2(b)に示すように全体の形状は円柱状であり、中央部に段差のある凹部8を有する円柱状のアクリル製ケース9と、凹部8の中心部に嵌め込まれているエレクトレットコンデンサマイクロホン(ECM)10と、凹部8の開口側を閉塞するウレタンゲル充填材11とからなっている。
【0016】
図3は実施例1に係る体導音信号処理手段3のブロック図である。
体導音信号処理手段3は、体導音センサ2からの音響信号を受けると、所定時間(例えば30秒間)における音響信号を音響信号変換部12によりフーリエ変換し音響変換信号を得て、音響心拍数計測部4及び音響呼吸数計測部5に送信する。
そして、音響心拍数計測部4においては、低周波除去部13(具体的にはハイパスフィルタ)によって、受信した音響変換信号から周波数0.8Hz未満の信号を除去し、音響心拍数演算部14では低周波除去部13から送られた低周波除去信号がピークとなる周波数を判定して音響心拍数を演算する。
また、音響呼吸数計測部5においては、高周波除去部15(具体的にはローパスフィルタ)によって、受信した音響変換信号から周波数0.5Hz以上の信号を除去し、音響呼吸数演算部16では高周波除去部15から送られた高周波除去信号がピークとなる周波数を判定して音響呼吸数を演算する。
【0017】
図4は体導音センサ2を用いて、被検者の左脇の下において30秒間にわたって計測された音響信号の一例であり、
図5は
図4の音響信号をフーリエ変換して得られた音響変換信号のグラフである。
この例によれば、周波数が0.8Hz以上の信号は、周波数1.1Hzにおいてピークとなっているので、音響心拍数は66[bpm]となり、周波数が0.5Hz未満の信号は、周波数0.33Hzにおいてピークとなっているので、音響呼吸数は20[回/分]となっていることが分かる。