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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087121
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】青色インクジェットインク及び錠剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/328 20140101AFI20220602BHJP
   A61J 3/07 20060101ALI20220602BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220602BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
C09D11/328
A61J3/07 Q
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042720
(22)【出願日】2022-03-17
(62)【分割の表示】P 2020512306の分割
【原出願日】2019-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2018072468
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】石川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 賢俊
(57)【要約】
【課題】本発明は、印字色を青色に保持しつつ、インクの耐光性を向上させることができる青色インクジェットインク及びその青色インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る青色インクジェットインクは、可食性を有するインクジェットインクにおいて、色素として、ブリリアントブルーFCF(青色1号色素)と、ニューコクシン(赤色102号色素)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性を有するインクジェットインクにおいて、
色素として、ブリリアントブルーFCFと、ニューコクシンとを含むことを特徴とする青色インクジェットインク。
【請求項2】
前記ブリリアントブルーFCFと、前記ニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)は、1:0.025~1:2の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の青色インクジェットインク。
【請求項3】
前記色素の総質量が前記インクジェットインク全体の1質量%以上18質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の青色インクジェットインク。
【請求項4】
錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷に用いられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の青色インクジェットインク。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の青色インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤。
【請求項6】
医療用錠剤であることを特徴とする請求項5に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色インクジェットインク及び錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷用インク(以下、単に「インクジェットインク」とも称する。)には、可食性を有するものがある。そして、可食性を有するインクジェットインクに関する技術としては、例えば、特許文献1に記載したものがある。
従来技術のインクジェットインクには、印刷した文字や画像等が光変褪色するもの、即ち耐光性が低いものがある。インクジェットインクにおいて耐光性が低いと、可読性の低下や色味の変化が生じ得る。特に、鮮明な青色を呈するブリリアントブルーFCF(Brilliant Blue FCF)、所謂青色1号色素(FDA Name: FD & C Blue No.1, Color Index Name: Food Blue 2, CAS Number: 3844-45-9)は、耐光性が低い。このため、上記色素を含んだインクジェットインクは、色味のくすみや印字消えが生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-169301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、印字色を青色に保持しつつ、インクの耐光性を向上させることができる青色インクジェットインク及びその青色インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る青色インクジェットインクは、可食性を有するインクジェットインクであって、色素として、ブリリアントブルーFCFとニューコクシン(New Coccine)とを含んでいる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様であれば、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る青色インクジェットインクが有する耐光性を説明するための概念図である。
図2】本発明の実施形態に係る錠剤(素錠)の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る錠剤(フィルムコーティング錠)の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る錠剤(素錠)の印刷画像の一例である。
図5】本発明の実施形態に係る錠剤(フィルムコーティング錠)の印刷画像の一例である。
図6】インクジェットインクに含まれる色材総量に対するブリリアントブルーFCFの割合と、光変褪色量との関係を示す図である。
図7】インクジェットインクの総質量に対するブリリアントブルーFCF及びニューコクシンの合計質量の割合と、光変褪色量との関係を示す図である。
図8】本発明の実施例における印刷再開性の評価基準を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係るインクジェットインクは、例えば、医療用錠剤の表面にインクジェット印刷法で施される印刷画像等の耐光性を改善することができるインクジェットインクに関するものである。以下、本発明の実施形態に係る青色を呈するインクジェットインク(以下、単に「青色インクジェットインク」とも称する。)及びその青色インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤の構成について、詳細に説明する。
【0009】
〔青色インクジェットインクの構成〕
本実施形態に係る青色インクジェットインクは、以下のように定義される色味(色調)を持つインクである。
まず、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数2,656の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ12plの印刷ドロップ量で、重ね打ちなしで印刷したベタ塗りの画像を被印刷物上に作成する。
【0010】
次に、X-rite社製分光濃度計「X-rite530」を、その印刷したベタ画像の上面に置き、反射光の色調(L*a*b*表色系)および反射光より推定される印字色をシアン、マゼンタ、イエローで表現する際の各色の光学濃度を測定する。なお、設定条件は、視野角が2°、光源がD50である。
上記条件で測定したL*a*b*表色系で表される色調のうち、
b* ≦-5
の範囲に入る色味(色調)を、本実施形態における「青色」とし、
b* ≦-20
の範囲に入る色味(色調)を、本実施形態における「鮮明な青色」としている。
また、今回は青色印字の光学濃度の評価として、シアン色の光学濃度(C値)を用いた。このC値が0.5以上であれば、青色として視認十分な光学濃度を持つものとしている。
【0011】
なお、被印刷物は、例えば、表面が白色(白色度70度以上)の錠剤が好ましい。白色度の測定は、X-rite社製分光濃度計「X-rite eXact」を、錠剤や紙などの基材の上面に置き、測定した反射光のスペクトルから求めることができる。設定条件は、米国紙パルプ技術協会(TAPPI)の定めたTAPPI-T452に準拠する。このような白色度70度以上のものであれば、被印刷物として錠剤の他、紙などを使用することも可能である。
【0012】
本実施形態に係る青色インクジェットインクは、可食性を有するインクジェットインクであって、色素として、青色1号色素(FDA Name: FD & C Blue No.1, Color Index Name: Food Blue 2, CAS Number: 3844-45-9)とも称されるブリリアントブルーFCF(Brilliant Blue FCF)と、赤色102号色素(Color Index Name: Acid Red 18, CAS Number: 2611-82-7)とも称されるニューコクシン(New Coccine)とを含んでいる。このような構成であれば、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性を向上させることができる。以下、この点について、図1を参照しつつ説明する。
【0013】
なお、上述の「Color Index Name」とは、American Association of Textile Chemists and Colorists(米国繊維化学技術・染色技術協会)により制定されたものである。また、上述の「FDA Name」とは、米国FDA(Food and Drug Administration、米国食品医薬品局)にて制定されたものである。なお、本実施形態では、使用可能な各色素(各物質)をCAS Numberを用いて特定したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態に記載した色素(物質)と同一の物質名ではあるが、幾何異性体、立体異性体、同位体元素を含む物質、またはそれらの塩などであるため、異なるCAS Numberが付与された色素(物質)についても勿論、本実施形態では使用可能である。また、異性体等が存在しない場合や、使用可能な色素(物質)が特定(限定)されている場合には、本実施形態に記載のCAS Numberの物質(化合物)そのものが使用可能となる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る青色インクジェットインクが有する耐光性を説明するための概念図である。図1に示す「◇」は、光変褪色前のブリリアントブルーFCFの色味を示し、「◆」は、光変褪色後のブリリアントブルーFCFの色味を示す。ここで、図1の縦軸は、L*a*b*表色系における「a*」値を示している。また、図1の横軸は、L*a*b*表色系における「b*」値を示している。
図1に示すように、本実施形態で用いたブリリアントブルーFCFは光によって変性し、色味が矢印(破線)の方向に変化する。そして、その色味変化の値が一定の数値を超えると、「光変褪色」として認識されると考えられる。つまり、ブリリアントブルーFCFは、図1に示す矢印(破線)の方向に光変褪色する。
【0015】
そこで、本実施形態では、ブリリアントブルーFCFが光変褪色する方向に合わせて、ブリリアントブルーFCFを含んだインクジェットインクにニューコクシンを添加してインクの色味の彩度を予め低下させる。こうすることで、ブリリアントブルーFCFの光変褪色前後で色味変化量は小さくなり、インクの耐光性が向上すると考えられる。なお、図1において、ブリリアントブルーFCFが光変褪色する方向に合わせてニューコクシンを添加した、ブリリアントブルーFCFとニューコクシンの混合インクの色味の一例を「○」で示している。
【0016】
また、本実施形態に係る青色インクジェットインクは、ブリリアントブルーFCFと、ニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)が1:0.025~1:2の範囲内であってもよい。このような構成であれば、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性をさらに向上させることができる。中でもブリリアントブルーFCFと、ニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)が1:0.025~1:0.43の範囲内では耐光性を持ったまま、印字色を鮮明な青色に保持できる。
【0017】
また、本実施形態に係る青色インクジェットインクは、ブリリアントブルーFCF及びニューコクシンを含む色素の総質量の割合が青色インクジェットインク全体の1質量%以上18質量%以下の範囲内であってもよい。このような構成であれば、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性を向上させることができるとともに、インクジェットインクに高い印刷再開性を付与することができる。なお、青色インクジェットインクに含まれる色素の総質量の割合が青色インクジェットインク全体の1質量%未満の場合には、色素の総質量の割合が少なすぎるため、青色印字の光学濃度(C値)が青色として視認に十分と判断される基準値である0.5以下になり、可読性及び耐光性の両方が低下する傾向がある。また、青色インクジェットインクに含まれる色素の総質量の割合が青色インクジェットインク全体の18質量%超の場合には、色素の総質量の割合が多すぎるため、印刷再開性が低下する傾向がある。
【0018】
以下、上記効果の詳細について説明する。
ブリリアントブルーFCFもニューコクシンもインクジェットインクの色素として使われているものであるが、ブリリアントブルーFCFを単独で医療用錠剤用等のインクジェットインクの色素として用いた場合、そのインクでは印刷画像等の耐光性は不十分であった。具体的には、例えば120万ルクスの太陽光曝光試験において、ベタ印刷画像の変褪色ΔEが34程度であった。これは、印刷文字であれば目視にて変色が判断できてしまう状況である。
【0019】
本実施形態においては、医療用錠剤等への印刷画像の形成上必要十分な耐光性とは、120万ルクスの太陽光曝露試験において、ベタ印刷画像の曝光前後の変褪色ΔEが23以下を指す場合が多い。これは発明者らが各医療関係者も交えて実施したオピニオンテストの結果、導き出したものであり、変褪色ΔEが15を超えると色味の変化を視認しやすくなり、変褪色ΔEが23を超えると可読性が低下していると認識されはじめる。なお、一般的な商業印刷物での変褪色ΔEの目安である3~6よりは大きめな数字であるが、曝光前後の錠剤を比較するようなことは無く、自然と変褪色することを想定しているため、この数字を得ることが出来た。なお、ここでいう変褪色とは光の作用による色味の変化の程度を表す。
【0020】
本実施形態におけるブリリアントブルーFCFに対するニューコクシンの配合比率を、ブリリアントブルーFCF1質量部に対し、ニューコクシンの配合量が0.025質量部以上としている理由は、その範囲を下回るとき(例えば、ブリリアントブルーFCF1質量部に対してニューコクシンの割合が0.001質量部のとき)は、ニューコクシンの添加量が少なく、ベタ印刷画像の耐光性試験を行うと変褪色ΔEが23を超えるためである。ニューコクシンの配合量を増やしてゆくと、段々と変褪色ΔEは小さくなってゆき、ブリリアントブルーFCF:ニューコクシン=1:0.025の比よりもニューコクシンの配合比が大きくなるとおおむね変褪色ΔEは23を下回るようになり、ブリリアントブルーFCFを単独で使用した青系の色のインクジェットインクよりも優れた耐光性を有するようになる。
【0021】
また、本実施形態におけるブリリアントブルーFCFに対するニューコクシンの配合比率を、ブリリアントブルーFCF1質量部に対し、ニューコクシンの配合量が2質量部以下の範囲に限定している理由は、その範囲を超えるとき(例えば、ブリリアントブルーFCF1質量部に対してニューコクシンの割合が3質量部のとき)は、青色を示すインク色度が-5より大きくなり、青色を呈しないインクとなるからである。
本実施形態の効果が発現する理由としては、ブリリアントブルーFCFの光変褪色時のL*a*b*表色系における変色方向と、ブリリアントブルーFCFとニューコクシンを混ぜた時のL*a*b*表色系における混色による色の変化の方向が一致したためと推測される。ブリリアントブルーFCFが光変褪色した際、周囲に同じ色を呈する光変褪色していないブリリアントブルーFCFとニューコクシンに混ざることで、見かけの色の変化を少なくしていると推測される。
【0022】
つまり、本実施形態のインクジェットインクにおいては、ブリリアントブルーFCFに対するニューコクシンの配合比率が、ブリリアントブルーFCF1質量部に対し、ニューコクシンの配合量が0.025質量部以上2質量部以下であることが好ましく、中でも0.025質量部以上0.43質量部以下であることが好ましい。
また、ブリリアントブルーFCF及びニューコクシンを含む色素のインク全体に占める含有量の割合は、1質量%以上18質量%以下の範囲内であることが好ましい。含有量が1質量%未満であると、印刷画像の印字濃度が不十分であり、一方、含有量が18質量%を超えると、色素の溶解安定性が悪く、インク中で色素が固体として析出し、印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まり、所謂印刷再開性が低下する原因となりうる。
【0023】
(色素)
本実施形態に係る青色インクジェットインクに含まれる色材は、上述のようにブリリアントブルーFCF及びニューコクシンを必ず含むが、これら2種以外の色素については、可食性のものであれば特に制限はない。本実施形態に係る青色インクジェットインクに添加可能な色素は、例えば、従来公知の合成食用色素、天然食用色素から適宜選択して添加することができる。
【0024】
合成食用色素としては、例えば、タール系色素、天然色素誘導体、天然系合成色素等が挙げられる。タール系色素としては、例えば、食用赤色2号(Amaranth, FDA Name: FD & C Red No.2, Color Index Name: Acid Red 27, CAS Number: 915-67-3)、食用赤色3号(Erythrosine, FDA Name: FD&C Red No.3, Color Index Name: Acid Red 51, CAS Number: 16423-68-0)、食用赤色40号(Allura Red AC, FDA Name: FD & C Red No.40, Color Index Name: Food Red 17, CAS Number: 25956-17-6)、食用赤色104号(Phloxine B, FDA Name: D & C Red No.28, Color Index Name: Acid Red 92, CAS Number: 18472-87-7)、食用赤色105号(Rose Bengal, Color Index Name: Acid Red 94, CAS Number: 632-69-9)、食用赤色106号(Acid Red, Color Index Name: Acid Red 52, CAS Number: 3520-42-1)、食用黄色4号(Tartrazine, FDA Name: FD & C Yellow No.5, Color Index Name: Acid Yellow 23, CAS Number: 1934-21-0)、食用黄色5号(Sunset Yellow FCF, FDA Name: FD & C Yellow No.6, Color Index Name: Food Yellow 3, CAS Number: 2783-94-0)、食用青色2号(Indigo Carmine, FDA Name: FD & C Blue No.2, Color Index Name: Acid Blue 74, CAS Number: 860-22-0)、食用赤色2号アルミニウムレーキ(FD & C Red No.2 Aluminum Lake)、食用赤色3号アルミニウムレーキ(FD & C Red No.3 Aluminum Lake)、食用赤色40号アルミニウムレーキ(FD & C Red No.40 Aluminum Lake)、食用黄色4号アルミニウムレーキ(FD & C Yellow No.5 Aluminum Lake)、食用黄色5号アルミニウムレーキ(FD & C Yellow No.6 Aluminum Lake)、食用青色1号アルミニウムレーキ(FD & C Blue No.1 Aluminum Lake)、食用青色2号アルミニウムレーキ(FD & C Blue No.2 Aluminum Lake)等が挙げられる。天然色素誘導体としては、例えば、ノルビキシンカリウム等が挙げられる。天然系合成色素としては、例えば、β-カロテン、リボフラビン等が挙げられる。
【0025】
また、天然食用色素としては、例えば、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、クロロフィル系色素、フラボノイド系色素、ベタイン系色素、モナスカス色素、その他の天然物を起源とする色素が挙げられる。アントシアニン系色素としては、例えば、赤ダイコン色素、赤キャベツ色素、赤米色素、エルダーベリー色素、カウベリー色素、グーズベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、シソ色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素、その他のアントシアニン系色素が挙げられる。カロチノイド系色素としては、例えば、アナトー色素、クチナシ黄色素、その他のカロチノイド系色素が挙げられる。キノン系色素としては、例えば、コチニール色素、シコン色素、ラック色素、その他のキノン系色素が挙げられる。フラボノイド系色素としては、例えば、ベニバナ黄色素、コウリャン色素、タマネギ色素、その他のフラボノイド系色素が挙げられる。ベタイン系色素としては、例えば、ビートレッド色素が挙げられる。モナスカス色素としては、例えば、ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素が挙げられる。その他の天然物を起源とする色素としては、例えば、ウコン色素、クサギ色素、クチナシ赤色素、スピルリナ青色素などが挙げられる。
【0026】
(分散媒)
本実施形態に係る青色インクジェットインクは、上述の色素以外に、上述の色素を分散させるために分散媒を含有してもよい。本実施形態に係る青色インクジェットインクに添加可能な分散媒としては、例えば、精製水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300(平均分子量300)、1-プロパノール、2-プロパノール、乳酸エチルなどが挙げられる。特に配合割合は限定するものではないが、インクでのノズルでの乾燥を防止するために、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300のいずれかを、インク中に1質量%以上30質量%以下の範囲内で含有させることがより好ましい。含有量が1質量%より少ないと、インクの乾燥が起こりやすくなりノズルの目詰まりの原因となり、30質量%を超えると医療用錠剤表面における印字表面の乾燥が遅くなりすぎ、印刷した錠剤同士が接触したときに未乾燥のインクがもう一方の錠剤に付着して汚れとなるといった不具合の原因となることがある。
【0027】
本実施形態における医療用錠剤は特に制限はないが、特に、表面にフィルムコート層を被覆したフィルムコート錠剤において効果が高い傾向がある。これは印刷が行われた錠剤表面において、素錠に比べフィルムコート錠では空隙が少ないことにより色素成分が錠剤表面に残りやすく、外部から印字面に光や湿度の影響を与えた場合に色素自体にこれらの影響が素錠よりフィルムコート錠の場合において強く出るためと考えられる。素錠の場合には空隙が多く、色素が錠剤内部まで時間をかけて浸透し続けることによっても印字面の変褪色が起こるため、相対的に影響が小さくなる傾向がある。
【0028】
〔印刷方法〕
本実施形態に係る青色インクジェットインクは、印刷方法について特に限定されず、市販のインクジェットプリンタ等のインクジェット装置を用いた印刷が可能である。このため、本実施形態に係るインクジェットインクは、応用範囲が広く、非常に有用である。例えば、本実施形態に係るインクジェットインクは、ピエゾ素子(圧電セラミックス)をアクチュエータとする、所謂ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置で印刷し得るし、他の方式のインクジェット装置でも印刷し得る。
【0029】
ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置としては、例えば、微小発熱素子を瞬間的に高温(200~300℃)にすることで発生する水蒸気圧力でインクジェットインクを吐出するサーマルインクジェット方式を採用した装置や、アクチュエータを静電気振動させることでインクジェットインクを吐出する静電タイプの装置、超音波のキャビテーション現象を利用する超音波方式を採用した装置等が挙げられる。また、本実施形態に係る青色インクジェットインクが荷電性能を備えていれば、連続噴射式(コンティニュアス方式)を採用した装置を利用することも可能である。
【0030】
〔錠剤〕
本実施形態では、本実施形態に係る青色インクジェットインクを、上述の印刷方法を用いて、例えば錠剤の表面に印字、印画してもよい。つまり、本実施形態に係る青色インクジェットインクであれば、例えば、医療用錠剤の表面にインクジェット印刷法を用いて施された印刷部、即ち印刷画像の耐光性を向上させることができる。以下、実施形態に係る青色インクジェットインクで印刷した印刷画像を備える錠剤の構成について説明する。
本実施形態に係る錠剤は、例えば、医療用錠剤である。ここで、「医療用錠剤」とは、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠などのほか、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠などを含むものである。
【0031】
図2は、印刷(印字、印画)がなされた医療用錠剤(素錠)の一例を示す概略断面図である。図2には、断面視で、錠剤の基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷された素錠印刷物5が示されている。
図3は、印刷(印字、印画)がなされた医療用錠剤(フィルムコーティング錠)の一例を示す概略断面図である。図3には、断面視で、表面にフィルムコート層7が形成された錠剤の基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷されたフィルムコート錠印刷物9が示されている。
なお、本実施形態では、図4に示すように、素錠印刷画像11としてベタ画像を印刷してもよく、図5に示すように、フィルムコート錠印刷画像13として二次元バーコードを印刷してもよい。
【0032】
医療用錠剤中に含有される活性成分は特に限定されない。例えば、種々の疾患の予防・治療に有効な物質(例えば、睡眠誘発作用、トランキライザー活性、抗菌活性、降圧作用、抗アンギナ活性、鎮痛作用、抗炎症活性、精神安定作用、糖尿病治療活性、利尿作用、抗コリン活性、抗胃酸過多作用、抗てんかん作用、ACE阻害活性、β-レセプターアンタゴニストまたはアゴニスト活性、麻酔作用、食欲抑制作用、抗不整脈作用、抗うつ作用、抗血液凝固活性、抗下痢症作用、抗ヒスタミン活性、抗マラリア作用、抗腫瘍活性、免疫抑制活性、抗パーキンソン病作用、抗精神病作用、抗血小板活性、抗高脂血症作用等を有する物質など)、洗浄作用を有する物質、香料、消臭作用を有する物質等を含むが、それらに限定されない。
【0033】
本実施形態に係る錠剤は、必要に応じて、活性成分とともにその用途上許容される担体を配合することができる。例えば、医療用錠剤であれば、医薬上許容される担体を配合することができる。医薬上許容される担体としては、錠剤の素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤等が適宜適量配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
本実施形態では、錠剤として医療用錠剤を例に挙げて説明したが、本発明のこれに限定されるものではない。本実施形態に係る青色インクジェットインクの印刷対象は特に制限されず、例えば、ヒト以外の動物(ペット、家畜、家禽等)に投与する錠剤、飼料、肥料、洗浄剤、ラムネ菓子などの食品といった各種錠剤の表面に印刷してもよい。また、本実施形態に係る青色インクジェットインクは、印刷対象のサイズについても特に制限されず、種々のサイズの錠剤について適用可能である。
【0034】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態に係る青色インクジェットインクは、可食性を有するインクジェットインクであって、色素として、ブリリアントブルーFCFと、ニューコクシンとを含んでいる。
このような構成であれば、従来技術と比較して、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性を向上させることができる。
(2)また、本実施形態に係る青色インクジェットインクに含まれるブリリアントブルーFCFとニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)は、1:0.025~1:2の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性をさらに向上させることができる。
【0035】
(3)また、本実施形態に係る青色インクジェットインクに含まれる色素の総質量は、インクジェットインク全体の1質量%以上18質量%以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性を確実に向上させ、且つ印刷再開性も向上させることができる。
(4)また、本実施形態に係る青色インクジェットインクは、錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷に用いられるものであってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、錠剤の表面等に直接印刷した印字等に発生する色味のくすみや印字消えを低減することができる。
【0036】
(5)また、本実施形態に係る錠剤(素錠印刷物5)は、上述した青色インクジェットインクで印刷した印刷画像3を備えている。
このような構成であれば、従来技術と比較して、錠剤の表面等に直接印刷した印刷画像3等に発生する色味のくすみや印字消えを低減することができる。
(6)また、本実施形態に係る錠剤5は、医療用錠剤であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、医療用錠剤の表面に直接印刷した印刷画像3等に発生する色味のくすみや印字消えを低減することができる。
【0037】
[実施例]
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
青色1号色素(ブリリアントブルーFCF)と赤色102号色素(ニューコクシン)とを含むインクを用いた素錠及びフィルムコーティング錠剤印刷品の製造、及び耐性試験。
(インクジェットインクの製造)
まず、印刷用インクを調製した。インクジェットインクは、色素、有機溶媒、水、内添樹脂、レベリング剤の各成分を含んでいる。調製の順序としては、最初に、水と有機溶媒とを混合して混合溶媒を得た。次に、その混合溶媒に、内添樹脂とレベリング剤とを添加して透明ベース液を得た。最後に、その透明ベース液に、色材を添加した。こうして、本実施例に係るインクを調製した。以下、具体的に各種成分について説明する。
【0039】
内添樹脂は、インク中において不揮発性の樹脂成分として機能する材料である。
レベリング剤は、インクジェットヘッドからの吐出ドロップが良好に形成できるように、インクの表面張力を調整する材料である。インクの表面張力は、具体的には、24mN/m~34mN/mの範囲内にあると好ましい。但し、錠剤の表層での濡れ性や内部への浸透性を考慮すると、なるべく小さな表面張力値、すなわち濡れ性の良い表面張力値を選択する必要がある。そこで、本実施例では、24mN/m~28mN/mの表面張力になるようにインクを調製した。なお、表面張力値は小さければ小さいほどよいわけではない。例えば、表面張力値が24mN/m未満では液滴にならず、ミスト不良やスプラッシュ現象(吐出の玉割れ)等、吐出不良を引き起こすことがある。
【0040】
本実施例では、インクを構成する水にはイオン交換水を用いた。また、有機溶媒にはポリエチレングリコール300(平均分子量が300であるポリエチレングリコールの意)、プロピレングリコール、グリセリン、および、エタノールをそれぞれ用いた。イオン交換水、エタノール、ポリエチレングリコール300、プロピレングリコール、グリセリンを表1に記載の量添加し、よく撹拌して混合溶媒を得た。前述の混合溶媒に、内添樹脂としてポリエチレングリコール1540(平均分子量が1540であるポリエチレングリコールの意)、続いてレベリング剤としてソルビタン酸脂肪酸エステル(製品名:「ポエムO-80V」理研ビタミン社製)を表1記載の量加え、1時間程度撹拌して透明ベース液を得た。
前述の透明ベース液に、それぞれに異なる量の青色1号色素、赤色102号色素を加え、インク(1)~(15)の15種類のインクを各100g得た。それぞれのインクの組成を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
前述のインク各100gを、それぞれメンブレンフィルターを通過させることによって液中の固体異物を除去した。具体的には、口径5.0μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させ、続いて口径0.8μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させることで精製インクをそれぞれ99g得た。
【0043】
(印刷)
上記精製インクを用いて、ベンディングモードピエゾ式インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタにて、テスト用素錠(基剤:調整澱粉)及びフィルムコーティング錠(基剤:調整澱粉、コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース70%・酸化チタン30%の混合、直径:6.5mm)に円形のベタ画像(直径4.0mm)の印刷を行なった。この結果、各色で印刷された素錠及びフィルムコーティング錠印刷物を得た。
【0044】
(耐光性試験)
印刷した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物のベタ画像の上面に置き、X-rite社製分光濃度計「X-rite530」で色調(L*a*b*表色系)および青色印字の光学濃度(C値)を測定する。なお、設定条件は、視野角が2°、光源がD50である。
色度及び光学色濃度を測定した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物に対して、キセノンウェザーメーター(東洋精機製作所 Ci4000)を用いて累積120万ルクスの可視光を照射した。可視光を照射した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物に対し再度可視光の照射前と同じ条件で分光光度計にて色度及び光学色濃度を測定し、色素の混合比による色度及び光学色濃度の試験前後の変化量の違いを比較した。比較した結果を表1に示した。結果として、青色1号色素1質量に対して赤色102号色素が0.025質量部以上2質量部以下の範囲内であれば、青色1号色素のみのインクに対して変褪色ΔEが23以下と少ないことが確認された。
【0045】
また、青色1号色素1質量に対して赤色102号色素が2質量部を超えると、b*値が-5を超え、インクは赤色を呈するようになり、青色インクとして不適であった。また、青色1号色素1質量に対し、赤色102号色素が0.025質量部未満となると、曝光変褪色ΔEが良好である評価される耐光性基準ΔE23を超え、耐光性が低下していく傾向がある。結果を図6に示す。なお、図6において、横軸はインクに添加する色材の中での青1号色素の割合、縦軸は、素錠及びフィルムコーティング錠への印刷画像の耐光性試験による曝光変褪色ΔEを表す。また、「○」は、印刷対象が素錠印刷物である場合を示し、「■」は、印刷対象がフィルムコーティング錠印刷物である場合を示す。また、図6には、光変褪色目標値であるΔE=23が太線で示されている。つまり、図6に示された太線よりも、曝光変褪色ΔEが小さい値であれば、インクが有する耐光性は十分である。
【0046】
なお、表1における評価は、耐光性即ち変褪色がΔE≦14且つ印字色度のb*値≦-20な鮮明な青色であれば「◎」で示し、耐光性がΔE≦23且つ印字色度のb*値≦-20な鮮明な青色であれば「○」で示し、耐光性がΔE≦23且つ印字色度のb*値≦-5な青色であれば「△」で示し、耐光性がΔE>23、または印字色度のb*値>-5の物を「×」で示している。また、素錠とフィルムコーティング錠の一方が「◎」であり、他方が「○」の場合には、インク全体の評価としては「○」とした。
【0047】
(印刷再開性試験)
以下、本実施例における印刷再開性の評価基準を、図8を参照しつつ説明する。
図8は、本実施例における印刷再開性の評価基準を説明するための概念図である。図8(a)は、本実施例における印刷再開性を評価するために用いたテストパターンを示している。このテストパターンは、図8(a)の横方向に伸びる直線と、図8(a)の縦方向に伸びる直線とで構成されており、各直線の線幅は0.5mmである。図8(b)は、インクを注入した直後におけるテストパターンの線幅W1を示している。図8(c)は、印刷を30分間停止し印刷を再開した直後における線幅W2をそれぞれ示している。本実施例では、図8(c)に示すように、印刷を30分間停止し印刷を再開した直後における線幅W2が、インクを注入した直後における線幅W1と比べて減少していない場合、あるいは線幅W1と比べて減少しているが、その減少率は10%以下である場合を「○」と評価した。
【0048】
なお、後述する実施例2では、図8(d)に示すように、印刷を30分間停止し印刷を再開した直後における線幅W2が、インクを注入した直後における線幅W1と比べて減少しており、その減少率が50%以下である場合を「△」とした。また、後述する実施例2では、図8(e)に示すように、印刷を30分間停止し印刷を再開した直後における線幅W2が、インクを注入した直後における線幅W1と比べて50%以上減少している部分がある場合を「×」とした。
【0049】
<実施例2>
青色1号色素(ブリリアントブルーFCF)と赤色102号色素(ニューコクシン)とを含むインクを用いた素錠及びフィルムコーティング錠剤印刷品の製造、及び耐性試験
(インクジェットインクの製造)
まず、印刷用インクを調製した。インクジェットインクは、実施例1と同様に、色素、有機溶媒、水、内添樹脂、レベリング剤の各成分を含んでいる。調製の順序としては、最初に、水と有機溶媒とを混合して混合溶媒を得た。次に、その混合溶媒に、内添樹脂とレベリング剤とを添加して透明ベース液を得た。最後に、その透明ベース液に、色材を添加した。こうして、本実施例に係るインクを調製した。以下、具体的に各種成分について説明する。
【0050】
本実施例では、インクを構成する水にはイオン交換水を用いた。また、有機溶媒にはポリエチレングリコール300(平均分子量が300であるポリエチレングリコールの意)および、エタノールをそれぞれ用いた。イオン交換水、エタノール、ポリエチレングリコール300を表2に記載の量添加し、よく撹拌して混合溶媒を得た。
前述の混合溶媒に、内添樹脂としてポリエチレングリコール1540(平均分子量が1540であるポリエチレングリコールの意)、続いてレベリング剤としてソルビタン酸脂肪酸エステル(製品名:「ポエムO-80V」理研ビタミン社製)を表2記載の量加え、1時間程度撹拌して透明ベース液を得た。
前述の透明ベース液に、それぞれに異なる量の青色1号色素、赤色102号色素を加え、インク(16)~(24)の9種類のインクを各100g得た。それぞれのインクの組成を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
前述のインク各100gを、それぞれメンブレンフィルターを通過させることによって液中の固体異物を除去した。具体的には、口径5.0μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させ、続いて口径0.8μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させることで精製インクをそれぞれ99g得た。
【0053】
(印刷)
上記精製インクを用いて、ベンディングモードピエゾ式インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタにて、テスト用素錠(基剤:調整澱粉)及びフィルムコーティング錠(基剤:調整澱粉、コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース70%・酸化チタン30%の混合、直径:6.5mm)に円形のベタ画像(直径4.0mm)の印刷を行なった。この結果、各色で印刷された素錠及びフィルムコーティング錠印刷物を得た。
【0054】
(耐光性試験)
印刷した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物のベタ画像の上面に置き、X-rite社製分光濃度計「X-rite530」で色調(L*a*b*表色系)および青色印字の光学濃度(C値)を測定する。なお、設定条件は、視野角が2°、光源がD50である。
色度及び光学色濃度を測定した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物に対して、キセノンウェザーメーター(東洋精機製作所 Ci4000)を用いて累積120万ルクスの可視光を照射した。可視光を照射した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物に対し再度可視光の照射前と同じ条件で分光光度計にて色度及び光学色濃度を測定し、色素の混合比による色度及び光学色濃度の試験前後の変化量の違いを比較した。
【0055】
比較した結果を表2に示した。結果として、青色1号色素と赤色102号色素の合計質量がインクの総質量の1質量%以上の場合、耐光性試験後の色味の変化ΔE≦23であり、医療用錠剤へのインクジェットインクとして十分な耐光性を持つことが確認された。また、色材の総質量が15質量%を超えると色材増加による粘度の上昇が起こり、インクがノズルから吐出されにくくなる。色材の総質量が17.5質量%では印刷は可能なものの、30分の印刷停止後にインク吐出するかを確認する印刷再開性試験にてノズル詰まりが生じ、色材の総質量が20質量%ではさらに悪化し、印刷サンプルを得られなかった。
【0056】
つまり、色材の総質量が18質量%以下の場合には十分な印刷再開性を持つことが確認された。結果を図7に示す。なお、図7において、横軸はインク内での青色1号色素及び赤色102号色素の合計質量、縦軸は、素錠及びフィルムコーティング錠への印刷画像の耐光性試験による曝光変褪色ΔEを表す。また、「○」は、印刷対象が素錠印刷物である場合を示し、「■」は、印刷対象がフィルムコーティング錠印刷物である場合を示す。また、図7には、光変褪色目標値であるΔE=23が太線で示されている。また、表2では、30分の印刷停止後の印刷再開性が良好なインクを「○」で示し(図8(c)を参照)、30分の印刷停止後に十分な印刷再開性を有していないインクを「△」で示し(図8(d)を参照)、間欠動作はないが印刷に不良を生じ、十分な印刷再開性を有していないインクを「×」で示している(図8(e)を参照)。なお、実施例2における印刷パターンは、実施例1の場合と同じである。
【0057】
評価は素錠、フィルムコーティング錠の耐光性がΔE≦23且つ印字色度のb*値≦-20な鮮明な青色のインク中で、青色印字の光学濃度C値≧0.5且つ30分の印刷停止後の印刷再開性が良好なインクを「◎」、青色印字の光学濃度C値<0.5のインクを「○」で示し、30分の印刷停止後の印刷再開性が十分でないインクを「△」で示している。また、印刷再開性が足りず、素錠及びフィルムコーティング錠剤への印刷ができなかったインクを「-」で示している。
また、青色印字の光学濃度(C値)は印字色をシアン、マゼンタ、イエローの3色の光学濃度の組み合わせで表現する際、青色を示すシアンの光学濃度をX-rite社製分光濃度計「X-rite530」で測定したものである。
【符号の説明】
【0058】
1:錠剤の基材
3:印刷画像
5:素錠印刷物
7:フィルムコート層
9:フィルムコート錠印刷物
11:素錠印刷画像(ベタ画像)
13:フィルムコート錠印刷画像(二次元バーコード)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性を有するインクジェットインクにおいて、
色素として、ブリリアントブルーFCFと、ニューコクシンとを含み、
前記インクジェットインクの表面張力を24mN/m~34mN/mの範囲内とし、
前記ブリリアントブルーFCFと、前記ニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)は、1:0.025~1:2の範囲内であることを特徴とする青色インクジェットインク。
【請求項2】
前記色素の総質量が前記インクジェットインク全体の1質量%以上18質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の青色インクジェットインク。
【請求項3】
錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷に用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の青色インクジェットインク。
【請求項4】
溶媒として、水、エタノールおよびプロピレングリコールのみを含み、
添加物質としてのヒドロキシプロピルセルロースを含まないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の青色インクジェットインク。
【請求項5】
前記ブリリアントブルーFCFと、前記ニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)は、1:0.025~1:0.43の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の青色インクジェットインク。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の青色インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤。
【請求項7】
医療用錠剤であることを特徴とする請求項6に記載の錠剤。