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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087203
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】消防用投光器
(51)【国際特許分類】
   F21L 4/00 20060101AFI20220602BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220602BHJP
   F21V 23/04 20060101ALI20220602BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20220602BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220602BHJP
【FI】
F21L4/00 400
F21S2/00 390
F21V23/04
F21V31/00
F21S2/00 612
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065480
(22)【出願日】2022-04-12
(62)【分割の表示】P 2018212316の分割
【原出願日】2018-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000139355
【氏名又は名称】ヤマハモーターエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 祐大
(57)【要約】
【課題】操作性を向上させることができる消防用投光器を提供する。
【解決手段】消防用投光器(100)は、信号器(200)に接続ケーブル(1)を介して接続される。消防用投光器は、光源部(10)と、光源部を収容する筐体(20)と、筐体の上部に配置されユーザの手によって把持されるハンドル(30)と、信号器に接続ケーブルを介して信号を送信する操作を受け付ける第1スイッチ(40)と、信号器への信号の送信に応じて点灯する信号表示灯(60)とを備える。第1スイッチは、ハンドルを把持した手の指が届く範囲内に配置され、信号表示灯は、第1スイッチの周辺に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号器に接続ケーブルを介して接続される消防用投光器であって、
光源部と、
前記光源部を収容する筐体と、
前記筐体の上部に配置されユーザの手によって把持されるハンドルと、
前記信号器に前記接続ケーブルを介して信号を送信する操作を受け付ける第1スイッチと、
前記信号器への信号の送信に応じて点灯する信号表示灯と、
を備え、
前記第1スイッチは、前記ハンドルを把持した手の指が届く範囲内に配置され、
前記信号表示灯は、前記第1スイッチの周辺に配置されている、消防用投光器。
【請求項2】
前記ハンドルを把持した手の指が届く前記範囲は、前記ハンドルの前端から50mm以内の範囲である請求項1に記載の消防用投光器。
【請求項3】
前記筐体の長手方向において、前記第1スイッチおよび前記信号表示灯は、前記ハンドルの前方に位置している請求項1または2に記載の消防用投光器。
【請求項4】
前記第1スイッチおよび前記信号表示灯は、平面視において、実質的に前記ハンドルの軸線上に位置している請求項1から3のいずれかに記載の消防用投光器。
【請求項5】
前記光源部の配光を切り換える操作を受け付ける第2スイッチをさらに備え、
前記第2スイッチは、前記ハンドルを把持した手の指が届く前記範囲内に配置されている請求項1から4のいずれかに記載の消防用投光器。
【請求項6】
前記第2スイッチは、平面視において、実質的に前記ハンドルの軸線上に位置している請求項5に記載の消防用投光器。
【請求項7】
少なくとも2つの防水区画を有する請求項1から6のいずれかに記載の消防用投光器。
【請求項8】
前記少なくとも2つの防水区画のうちの1つの防水区画に、前記第1スイッチおよび前記信号表示灯の両方が配置されている請求項7に記載の消防用投光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光器に関し、特に、消防用の投光器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、消防活動や災害救助に用いられる消防用投光器が開示されている。特許文献1の投光器は、接続ケーブルを介して信号器(特許文献1では「電源装置」と呼ばれている)に接続される。信号器および投光器には、それぞれ信号スイッチが設けられている。信号スイッチを操作することにより、信号器から投光器に、または、投光器から信号器に、接続ケーブルを介して信号を送信することができる。さらに、信号器および投光器のそれぞれには、信号の送信に同期して点灯する表示灯が設けられている。このような構成により、信号器側と投光器側とで相互に異常を知らせ合うことができる。
【0003】
また、特許文献1の投光器には、配光切換スイッチが設けられている。配光切換スイッチを操作することにより、光源であるランプの配光を切り換えることができる。必要に応じてランプの配光を切り換えることにより、作業性が向上する。
【0004】
特許文献1の投光器では、投光器本体の上部にハンドルが取り付けられており、ユーザはこのハンドルを片手で把持することによって投光器を携行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-261305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
消防用の投光器には、これまでも軽量化のための種々の工夫がなされてきたが、いっそうの軽量化が要望されている。
【0007】
また、消防活動や災害救助において、両手を使用した作業を行うときがある。その際、カラビナを利用して投光器をユーザの腰(より具体的には腰に巻かれた安全帯)に吊り下げて携行することがある。
【0008】
しかしながら、例えば、特許文献1に開示されているような投光器のハンドルと投光器本体との間にカラビナを通した場合、カラビナが大きくすべって(ずれて)しまい、投光器が上下に振れて意図した方向に安定して光を照射することが難しく、人の顔を照らしてしまうことがある。その場合、手で照射方向を固定する必要があるので、作業性が悪化してしまう。このように、カラビナを用いて投光器を携行するための好適な構造が求められている。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カラビナを用いた携行に好適な構造を有し、且つ、軽量化を実現できる消防用投光器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態による消防用投光器は、光源部と、前記光源部を収容する筐体と、前記筐体の上部に配置されユーザの手によって把持されるハンドルと、を備えた消防用投光器であって、平面視において、前記ハンドルの長手方向は、前記消防用投光器の前後方向に向いており、前記ハンドルには、少なくとも1つの貫通孔が形成されており、前記少な
くとも1つの貫通孔は、前記消防用投光器の前後方向において、前記消防用投光器の重心と、前記ハンドルの後端との間に位置している。
【0011】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔の個数は、複数である。
【0012】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔の個数は2である。
【0013】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記消防用投光器の前後方向において、前記消防用投光器の前端から前記消防用投光器の長さの2/3の範囲内に位置する第1貫通孔を含む。
【0014】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記消防用投光器の前後方向において、前記消防用投光器の後端から前記消防用投光器の長さの1/3の範囲内に位置する第2貫通孔をさらに含む。
【0015】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔の中心軸は、前記消防用投光器の左右方向に向いている。
【0016】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔の中心軸は、前記消防用投光器の上下方向に向いている。
【0017】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔は、中心軸方向から見たときの形状が略円形である貫通孔を含む。
【0018】
ある実施形態において、前記中心軸方向から見たときの形状が略円形である前記貫通孔の直径は、14mm以上である。
【0019】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔は、長孔である貫通孔を含む。
【0020】
ある実施形態において、長孔である前記貫通孔の短径は、14mm以上である。
【0021】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔の中心軸方向に沿った前記ハンドルの厚さは、24mm以下である。
【0022】
ある実施形態において、前記消防用投光器は、前記筐体の両側面の少なくとも一方に設けられた係止手段であって、ユーザの腰に巻かれた安全帯に前記筐体を係止する係止手段をさらに備え、前記係止手段は、前記消防用投光器の前後方向中央よりも前記消防用投光器の重心側に位置している。
【0023】
ある実施形態において、前記筐体の前記少なくとも一方の側面は、左右方向内側に凹んだ曲面部分を含む。
【0024】
ある実施形態において、前記係止手段は、前記筐体の両側面のそれぞれに設けられている。
【0025】
ある実施形態において、前記筐体の前記少なくとも一方の側面は、切り欠き部を有し、前記係止手段は、前記切り欠き部によって規定される形状を有するクリップ部である。
【0026】
ある実施形態において、前記筐体の前記切り欠き部は、前記光源部で生じる熱を放出するための放熱孔として機能する。
【0027】
ある実施形態において、前記クリップ部は、下方に延びる第1舌片部を含む。
【0028】
ある実施形態において、前記クリップ部は、上方に延びる第2舌片部をさらに含む。
【0029】
ある実施形態において、前記第1舌片部と前記第2舌片部とは、互いに長さが異なる。
【0030】
ある実施形態において、前記切り欠き部は、略X字状である。
【0031】
ある実施形態において、前記投光器の重心は、前記消防用投光器の前後方向中央よりも前方に位置している。
【0032】
ある実施形態において、前記筐体は、前記筐体の他の部分よりも左右方向の幅が広い幅広部を有し、前記幅広部は、前記消防用投光器の前後方向中央よりも前方に位置している。
【0033】
ある実施形態において、前記消防用投光器は、前記筐体の両側面の少なくとも一方に設けられた係止手段であって、ユーザの腰に巻かれた安全帯に前記筐体を係止する係止手段をさらに備え、前記筐体は、左右方向の幅が相対的に広い幅広部と、左右方向の幅が相対的に狭い幅狭部とを有し、前記係止手段は、前記筐体の前記幅狭部に配置されている。
【0034】
ある実施形態において、前記消防用投光器は、前記筐体の両側面の少なくとも一方に設けられたクリップ部であって、下方に延びる第1舌片部と、上方に延びる第2舌片部とを含むクリップ部をさらに備える。
【0035】
ある実施形態において、前記第1舌片部と前記第2舌片部とは、互いに長さが異なる。
【0036】
ある実施形態において、前記消防用投光器は、信号器に接続ケーブルを介して接続され、前記信号器に前記接続ケーブルを介して信号を送信する操作を受け付ける第1スイッチと、前記光源部の配光を切り換える操作を受け付ける第2スイッチと、をさらに備え、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチは、前記ハンドルを把持した手の指が届く範囲内に配置されている。
【0037】
ある実施形態では、前記筐体の長手方向において、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチは、前記ハンドルの前方に位置している。
【0038】
ある実施形態において、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチは、実質的に前記ハンドルの軸線上に位置している。
【0039】
ある実施形態において、前記消防用投光器は、前記信号器への信号の送信に応じて点灯する信号表示灯をさらに備え、前記信号表示灯は、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチの周辺に配置されている。
【0040】
ある実施形態では、前記筐体の長手方向において、前記信号表示灯は、前記ハンドルの前方に位置している。
【0041】
ある実施形態では、前記筐体の長手方向において、前記信号表示灯が前記第1スイッチおよび前記第2スイッチよりも前方に位置する。
【0042】
ある実施形態において、前記消防用投光器は、少なくとも2つの防水区画を有する。
【0043】
ある実施形態において、前記少なくとも2つの防水区画のうちの1つの防水区画に、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチの両方が配置されている。
【0044】
ある実施形態において、前記消防用投光器は、外部電源から電力を供給される。
【0045】
本発明の実施形態による消防用投光器では、ハンドルに少なくとも1つの貫通孔が形成されているので、貫通孔にカラビナを通すことによってカラビナを用いた携行が可能となる。本発明の実施形態によれば、カラビナを通すための部材を別途に筐体に取り付ける必要がないので、部品点数を少なくすることができ、投光器の軽量化を図ることができる。さらに、ハンドルに貫通孔が形成されていることにより、ハンドル自体が軽量化されるので、そのことにより投光器全体を軽量化する効果を得ることもできる。また、ハンドルに形成された貫通孔にカラビナを通した場合、ハンドルと筐体との間にカラビナを通した場合のようなカラビナのすべり(ずれ)を防止できるので、カラビナを用いた携行時の投光器の姿勢を安定させることができる。さらに、本発明の実施形態による消防用投光器では、ハンドルの貫通孔は、投光器の前後方向において、投光器の重心とハンドルの後端との間に位置している。つまり、ハンドルの貫通孔は、投光器の重心よりも後方に位置している。これにより、カラビナを用いた携行時に、光源部が斜め上を向いてしまうことを防止できる。光源部が斜め上を向くと、人の顔に光を照射してしまうおそれがある。このように、本発明の実施形態によれば、カラビナを用いた携行に好適な構造を有し、且つ、軽量化を実現できる消防用投光器が得られる。
【0046】
ハンドルの貫通孔の個数が複数であると、カラビナを用いた携行の際の投光器の姿勢(傾き)を調整(選択)することができる。
【0047】
製造の容易さの観点からは、ハンドルの貫通孔の個数は、2が好ましい。
【0048】
光源部を水平方向に近い方向に向ける観点からは、ハンドルに形成された少なくとも1つの貫通孔は、なるべく投光器の重心に近い位置に配置された貫通孔を含んでいることが好ましく、具体的には、投光器の前後方向において投光器の前端から投光器の長さの2/3の範囲内に位置する第1貫通孔を含むことが好ましい。
【0049】
携行時の投光器の姿勢の調整の幅を大きくする観点からは、ハンドルに形成された少なくとも1つの貫通孔は、投光器の前後方向において投光器の後端から投光器の長さの1/3の範囲内に位置する第2貫通孔をさらに含むことが好ましい。
【0050】
少なくとも1つの貫通孔の中心軸は、投光器の左右方向に向いていてもよいし、投光器の上下方向に向いていてもよい。
【0051】
少なくとも1つの貫通孔は、中心軸方向から見たときの形状が略円形である貫通孔を含んでいてもよい。
【0052】
消防用途のカラビナの直径は例えば10mmであるので、貫通孔の直径が14mm以上であると、貫通孔にカラビナを好適に通すことができる。
【0053】
少なくとも1つの貫通孔が、長孔である貫通孔を含むことにより、ハンドルおよび投光器のいっそうの軽量化を図ることができる。
【0054】
消防用途のカラビナの直径は例えば10mmであるので、長孔である貫通孔の短径は、14mm以上であることが好ましい。
【0055】
また、消防用途のカラビナでは、ゲート部の開口幅は例えば34mm程度である。そのため、貫通孔の中心軸方向に沿ったハンドルの厚さは、24mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0056】
本発明の実施形態によると、カラビナを用いた携行に好適な構造を有し、且つ、軽量化を実現できる消防用投光器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の実施形態による消防用投光器100を模式的に示す斜視図である。
図2】投光器100を模式的に示す正面図である。
図3】投光器100を模式的に示す側面図である。
図4】投光器100を模式的に示す上面図である。
図5】投光器100が備える光源部10を模式的に示す斜視図である。
図6】光源部10を模式的に示す正面図である。
図7】光源部10を模式的に示す側面図である。
図8】光源部10を模式的に示す上面図である。
図9】投光器100に接続ケーブル1を介して接続される信号器200を模式的に示す側面図である。
図10】投光器100を模式的に示す側面図であり、投光器100の重心の位置を鎖線CGで示している。
図11】(a)は、カラビナ300を模式的に示す平面図であり、(b)および(c)は、それぞれカラビナ300を(a)中の方向D1およびD2から見た図である。
図12】投光器100のハンドル30の貫通孔31にカラビナ300を通した状態を示す図である。
図13】本発明の実施形態による他の消防用投光器100Aを模式的に示す斜視図である。
図14】投光器100Aを模式的に示す側面図である。
図15】投光器100を模式的に示す上面図である。
図16】本発明の実施形態によるさらに他の消防用投光器100Bを模式的に示す斜視図である。
図17】投光器100Bを模式的に示す上面図である。
図18】投光器100を模式的に示す側面図であり、投光器100の前後方向中央の位置および投光器100の重心の位置をそれぞれ鎖線CPおよび鎖線CGで示している。
図19】クリップ部22によって筐体20が安全帯SBに係止されている状態を示す図である。
図20】投光器100を模式的に示す側面図であり、筐体20の側面のガイド部GPにハッチングを付して示している。
図21】投光器100を模式的に示す上面図であり、併せてユーザの腰WAを模式的に示している。
図22】(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ係止手段として機能するアタッチメント部材70を模式的に示す上面図、側面図、正面図および背面図である。
図23】投光器100が有する防水区画の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
(実施形態1)
図1から図4を参照しながら、本実施形態における消防用投光器(以下では単に「投光器」と呼ぶ)100を説明する。図1図2図3および図4は、それぞれ投光器100を模式的に示す斜視図、正面図、側面図および上面図である。
【0060】
図1から図4に示すように、投光器100は、光源部10、筐体20およびハンドル30を備える。また、投光器100は、第1スイッチ40、第2スイッチ50および信号表示灯60をさらに備える。投光器100は、後述する信号器に接続ケーブル1を介して接続される。投光器100は、ハンドル30を片手で握った状態で携行可能である。また、投光器100は、後述するように、カラビナを用いた携行(例えばカラビナを用いてユーザの腰に提げた状態での携行)も可能である。
【0061】
光源部(光源ユニット)10は、光源として複数のLED(発光ダイオード)素子11(後述する図5から図8参照)を含む。光源部10は、光を集光照射する状態と、拡散照射する状態とを切り換えることができる。つまり、光源部10は、その配光を切り換え得る構成を有する。光源部10のより具体的な構成については後述する。
【0062】
筐体(器具本体)20は、光源部10を収容する。筐体20は、軽量で耐熱性に優れた材料から形成されていることが好ましい。筐体20の材料として、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、金属材料(例えばアルミニウム合金)などを好適に用いることができる。光源部10は、筐体20の前部に配置されており、光源部10の前部(後述する第1レンズ部および第2レンズ部)は、筐体20から露出している。また、筐体20の前部には、光源部10の前部を保護するための保護部材(レンズガード)25が取り付けられている。保護部材25は、金属材料(例えばチタン合金やステンレス合金など)から形成されている。
【0063】
筺体20の両側面(左側面および右側面)のそれぞれに、複数の切り欠き部21a、21bが形成されている。これらの切り欠き部21a、21bは、光源部10の熱を放出するための放熱孔として機能する。図示している例では、複数の切り欠き部21a、21bは、略X字状の第1切り欠き部21aと、略矩形状または略台形状の複数の第2切り欠き部21bとを含む。第1切り欠き部21aの上方に、3つの第2切り欠き部21bが位置しており、第1切り欠き部21aの下方に、2つの第2切り欠き部21bが位置している。
【0064】
筺体20の後部に、接続ケーブル1が接続されている。筐体20の下部には、三脚取付ボス26および支持部材27が取り付けられている。既に説明したように、投光器100は、携行しながら用いることが可能であるが、三脚取付ボス26に三脚を取り付けることにより、地面から所望の高さに据え置いて使用することができる。支持部材27は、投光器100を地面に置いたときに、光源部10の光軸が略水平となるように(つまり光が略水平に出射するように)設けられている。また、筐体20の上部前側には、箱状の部分(以下では「ボックス部」と呼ぶ)20aが形成されている。ボックス部20aから後方かつやや下方に延びる凸部20bが形成されている。筐体20の上部後側には、ブザー28が配置されている。また、ここでは図示していないが、筐体20の内部において光源部10の後方には、光源部10に供給される電流を制御するための制御基板が配置されている。
【0065】
筐体20は、図4に示すように、筐体20の他の部分よりも左右方向の幅が広い部分WRを有する。以下では、この部分WRを「幅広部」と呼び、筐体20の幅広部WR以外の部分NRを「幅狭部」と呼ぶ。つまり、筐体20は、左右方向の幅が相対的に広い幅広部WRと、左右方向の幅が相対的に狭い幅狭部NRとを有する。
【0066】
また、筐体20の両側面のそれぞれは、左右方向内側に凹んだ曲面部分GPを含む。この曲面部分GPについては、後に詳述する。
【0067】
ハンドル30は、筐体20の上部に配置されている。ハンドル30は、ユーザの手によって把持される。図4に示すように、平面視(上面視)において、ハンドル30の長手方向は、投光器100の前後方向に向いている。また、ハンドル30は、図3に示すように、側面視において、凸部20bから後方かつやや下方に延びている。ハンドル30は、金属材料(例えばアルミニウム合金)や樹脂材料(例えばポリアセタールやナイロン66)から形成されている。ハンドル30の前端に、筐体20の凸部20bが差し込まれている。ハンドル30の後端は、ブラケット29を介して筐体20の後部に固定されている。ブラケット29は、例えばCFRPや、チタン合金、ステンレス合金などの金属材料から形成されている。
【0068】
ハンドル30は、柱状である。図示している例では、ハンドル30は、第1平面30aおよび第2平面30bと、第1曲面30cおよび第2曲面30dとを側面として有している。第1平面30aおよび第2平面30bは、互いに対向している。第1曲面30cおよび第2曲面30dは、互いに対向している。第1曲面30cおよび第2曲面30dは、それぞれ第1平面30aと第2平面30bとを接続している。図示している例では、ハンドル30は、第1平面30aおよび第2平面30bが投光器100の左右方向を向くように配置されている。
【0069】
第1スイッチ40は、信号器に接続ケーブル1を介して信号を送信する操作を受け付ける。これに対し、第2スイッチ50は、光源部10の配光を切り換える操作を受け付ける。以下では、第1スイッチ40を「信号スイッチ」と呼び、第2スイッチ50を「配光切換スイッチ」と呼ぶこともある。
【0070】
図示している例では、第1スイッチ40および第2スイッチ50のそれぞれは、いわゆる押しボタンスイッチである。なお、言うまでもないが、第1スイッチ40および第2スイッチ50は、押しボタンスイッチに限定されない。例えば、第1スイッチ40および第2スイッチ50は、タクタイルスイッチ、ロッカースイッチまたはトグルスイッチであってもよい。
【0071】
信号表示灯60は、信号器への信号の送信に応じて点灯する。典型的には、信号表示灯60は、信号の送信に同期して点灯する。図示している例では、信号器への信号の送信に応じてブザー28も動作する。つまり、ブザー28は、信号の送信に応じて(典型的には同期して)ブザー音を発する。
【0072】
図5から図8を参照しながら、光源部10の具体的な構成を説明する。図5図6図7および図8は、それぞれ光源部10を模式的に示す斜視図、正面図、側面図および上面図である。
【0073】
光源部10は、図5から図8に示すように、複数のLED素子11、第1レンズ部12、第2レンズ部13およびヒートシンク部14を有する。
【0074】
複数のLED素子11は、図6に示すように、正面方向から見たときに相対的に外側に位置する複数の(ここでは6つの)第1LED素子11aと、相対的に内側に位置する複数の(ここでは6つの)第2LED素子11bとを含む。なお、第1LED素子11aおよび第2LED素子11bの個数や配置は、図示している例に限定されるものではない。
【0075】
第1レンズ部12は、複数の第1LED素子11aに対応する位置に配置された複数のレンズ(第1レンズ)12aを含む。第2レンズ部13は、複数の第2LED素子11bに対応する位置に配置された複数のレンズ(第2レンズ)13aを含む。第1レンズ部12および第2レンズ部13は、それぞれ樹脂材料またはガラス材料から形成されている。
【0076】
ヒートシンク部14は、ベース部14aと、複数のフィン14bとを有する。ベース部14aは、第1レンズ部12および第2レンズ部13に接続されている。複数の(ここでは10枚の)フィン14bは、ベース部14aから後方に延びている。ヒートシンク部14は、金属材料(例えばアルミニウム合金)から形成されている。なお、フィン14bの個数や配置、形状等は、図示している例に限定されるものではない。
【0077】
各LED素子11が発する光は、対応するレンズ(第1レンズ12aまたは第2レンズ13a)によって所望の指向性を与えられる。例示している光源部10では、第1レンズ12aの焦点距離と、第2レンズ13aの焦点距離とが異なっている。第2スイッチ50を操作すると、第1LED素子11aのみが点灯している状態と、第2LED素子11bのみが点灯している状態とを切り換えることができるので、光源部10の配光を切り換えることができる。第1レンズ12aおよび第2レンズ13aの焦点距離は、第1LED素子11aのみが点灯している状態が集光照射状態で第2LED素子11bのみが点灯している状態が拡散反射状態であるように設定されていてもよいし、その逆でもよい。
【0078】
第1LED素子11aと第2LED素子11bとは、互いに発光色が同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1LED素子11aの発光色と第2LED素子11bの発光色とが異なっていると、配光の切り替えの際に光源部10の発光色も切り替えることができる。第1LED素子11aの発光色と第2LED素子11bの発光色とが異なる構成としては、例えば、第1LED素子11aおよび第2LED素子11bの一方の発光色が白で、他方の発光色が黄である構成を採用することができる。煙が充満している空間内では、発光色によって視認性が異なる(例えば白色光よりも黄色の光の方が視認性が高い)ので、光源部10の発光色を切り換えることにより、作業性のいっそうの向上を図ることができる。
【0079】
図9を参照しながら、信号器の一例を説明する。図9は、信号器200を模式的に示す側面図である。
【0080】
図9に示す信号器200は、接続ケーブル1を介して投光器100に接続されている。また、信号器200は、別の接続ケーブル2を介して商用電源または発電機に接続されている。従って、投光器100は、信号器200を介して外部電源(商用電源または発電機)から電力を供給されるといえる。外部電源から電力の供給を行うことにより、投光器100を長時間(消防活動に必要な所望の時間)使用することができる。
【0081】
信号器200は、信号器本体201、ハンドル202、第3スイッチ(信号スイッチ)203、信号表示灯204、ブザー205および電源ユニット206を備える。
【0082】
信号器本体201は、その内部にブザー205および電源ユニット206を収容する。信号器本体201の上部に、ハンドル202が設けられている。
【0083】
第3スイッチ203は、投光器100に接続ケーブル1を介して信号を送信する操作を受け付ける。図示している例では、第3スイッチ203は、信号器本体201の上部に配置されている。
【0084】
信号表示灯204は、投光器100への信号の送信に応じて点灯する。典型的には、信
号表示灯204は、信号の送信に同期して点灯する。図示している例では、投光器100への信号の送信に応じてブザー205も動作する。つまり、ブザー205は、信号の送信に応じて(典型的には同期して)ブザー音を発する。
【0085】
電源ユニット206は、商用電源や発電機から供給される電流・電圧に対し、必要に応じて整流や昇圧、降圧等を行う。
【0086】
ここで再び図1から図4および図10を参照しながら、本実施形態における投光器100の構成を説明する。
【0087】
投光器100のハンドル30には、図1などに示すように、少なくとも1つの貫通孔31が形成されている。本実施形態では、貫通孔31の個数は、複数であり、より具体的には2である。2つの貫通孔31は、ハンドル30を、第1平面30a側から第2平面30b側に向かって(第2平面30b側から第1平面30a側に向かって、ともいえる)貫通している。従って、貫通孔31の深さ方向は、投光器100の左右方向に向いており、言い換えると、貫通孔31の中心軸(図1参照)は、投光器100の左右方向に向いている。図示している例では、貫通孔31の中心軸は、投光器100の左右方向に略平行である。また、貫通孔31の中心軸方向(深さ方向)から見たときの形状は、略円形である。
【0088】
図10には、投光器100の重心の位置を示している。図10において、鎖線CGが前後方向における重心の位置を示している。図10からわかるように、投光器100の重心は、前後方向中央よりも前方(つまり光源部10側)に位置している。そして、2つの貫通孔31は、投光器100の前後方向において、投光器100の重心と、ハンドル30の後端との間に位置している。
【0089】
また、図10における鎖線CHは、投光器100の前端から、投光器100全体の長さの2/3だけ離れた位置を示している。つまり、鎖線CHは、投光器100の前端から2/3の範囲と、残りの範囲すなわち投光器100の後端から1/3の範囲との境界を示している。
【0090】
図10に示すように、2つの貫通孔31のうち、相対的に前側に位置する第1貫通孔31Aは、投光器100の前後方向において、投光器100の重心よりも後方で、かつ、投光器100の前端から2/3の範囲内に位置している。また、相対的に後側に位置する第2貫通孔31Bは、投光器100の前後方向において、投光器100の重心よりも後方で、かつ、投光器100の後端から1/3の範囲内に位置している。
【0091】
上述した貫通孔31は、カラビナを通すための孔である。従って、貫通孔31は、使用されるカラビナの直径よりも大きな直径を有する。カラビナの例を図11(a)、(b)および(c)に示す。図11(a)は、カラビナ300を示す平面図である。図11(b)および(c)は、それぞれカラビナ300を図11(a)中の方向D1およびD2から見た図である。
【0092】
カラビナ300全体の外形は、環状であり、より具体的には、略O字状である。カラビナ300は、金属材料から形成されている。カラビナ300は、本体部301と、本体部301に開閉自在に取り付けられたゲート部302とを備える。図示している例では、ゲート部302は、スクリューロック式である。
【0093】
図12に、投光器100のハンドル30の貫通孔31にカラビナ300を通した状態の例を示す。図12に示すように、ハンドル30の貫通孔31にカラビナ300を通すことにより、カラビナ300を用いた投光器100の携行(例えば投光器100をユーザの腰
に提げた状態での携行)が可能となる。なお、ここでは、第1貫通孔31Aにカラビナ300を通す例を説明したが、第2貫通孔31Bにカラビナ300を通してもよい。
【0094】
上述したように、本実施形態の投光器100では、ハンドル30に少なくとも1つの貫通孔31が形成されているので、貫通孔31にカラビナ300を通すことによってカラビナ300を用いた携行が可能となる。本実施形態によれば、カラビナ300を通すための部材(例えば板金ブラケット等)を別途に筐体20に取り付ける必要がないので、部品点数を少なくすることができ、投光器100の軽量化を図ることができる。また、ハンドル30に貫通孔31が形成されていることにより、ハンドル30自体が軽量化されるので、そのことにより投光器100全体を軽量化する効果を得ることもできる。
【0095】
また、ハンドル30に形成された貫通孔31にカラビナ300を通した場合、ハンドル30と筐体20との間にカラビナ300を通した場合のようなカラビナ300のすべり(ずれ)を防止できるので、カラビナ300を用いた携行時の投光器100の姿勢を安定させることができる。
【0096】
さらに、本実施形態では、ハンドル30の貫通孔31は、投光器100の前後方向において、投光器100の重心とハンドル30の後端との間に位置している。つまり、ハンドル30の貫通孔31は、投光器100の重心よりも後方に位置している。これにより、カラビナ300を用いた携行時に、光源部10が斜め上を向いてしまうことを防止できる。光源部10が斜め上を向くと、人の顔に光を照射してしまうおそれがある。このように、ハンドル30にカラビナ300を通すための貫通孔31を設ける構成では、貫通孔31の位置や個数などにある程度自由度があるので、投光器100を腰に提げた状態でのバランス(投光器100の傾き)を調整することができる。
【0097】
また、本実施形態では、平面視において、ハンドル30の長手方向が投光器100の前後方向に向いている。これに対し、ハンドルの長手方向が投光器の左右方向を向いている構成を採用すると、カラビナを用いて投光器を腰に提げたときに、ユーザの身体の側面から投光器が出っ張りすぎるので、狭い場所での行動には不適である。本実施形態のように、ハンドル30の長手方向が投光器100の前後方向に向いていることにより、狭い場所での行動が想定される消防活動や災害救助に投光器100を好適に用いることができる。
【0098】
上述したように、本発明の実施形態によれば、カラビナ300を用いた携行に好適な構造を有し、且つ、軽量化を実現できる消防用投光器100が得られる。
【0099】
また、カラビナ300を通すための部材(例えば上述したような板金ブラケット)を別途に筐体20に取り付けた場合、投光器100に余分な凹凸部が増えてしまうことになり、そのような凹凸部は、消防活動時に物に引っ掛かるおそれがある。本実施形態によれば、そのような余分な凹凸部が増えることがない。つまり、投光器100全体の凹凸部を少なくすることができる。図示している例では、ハンドル30は、凸部(突起部)を有していない。
【0100】
なお、本実施形態では、ハンドル30の貫通孔31の個数が複数である場合を例示したが、貫通孔31の個数は1であってもよい。本実施形態で例示したように、貫通孔31の個数が複数であると、カラビナ300を用いた携行の際の投光器100の姿勢(傾き)を調整(選択)することができる。例えば、図1等に示した構成では、ハンドル30に形成された2つの貫通孔31のうち、相対的に後側に位置する(つまり投光器100の重心からの距離が相対的に大きい)第2貫通孔31Bにカラビナ300を通すと、相対的に前側に位置する(つまり投光器100の重心からの距離が相対的に小さい)第1貫通孔31Aにカラビナ300を通した場合と比べて、光源部10をより下方に向ける(つまり水平方
向に対する投光器100の傾きを大きくする)ことができる。
【0101】
また、ハンドル30の貫通孔31の個数が複数である場合、貫通孔31の個数は2に限定されず、3以上であってもよい。投光器100の姿勢の調整(選択)のバリエーションを増やす観点からは、貫通孔31の個数は3以上が好ましいといえるが、製造の容易さの観点からは、2が好ましいといえる。
【0102】
光源部10を水平方向に近い方向に向ける観点からは、少なくとも1つの貫通孔31は、なるべく投光器100の重心に近い位置に配置された貫通孔31を含んでいることが好ましく、具体的には、本実施形態で例示したように、投光器100の前後方向において投光器100の前端から投光器100の長さ(より厳密には前後方向の長さ)の2/3の範囲内に位置する第1貫通孔31Aを含むことが好ましい。また、携行時の投光器100の姿勢の調整の幅を大きくする観点からは、少なくとも1つの貫通孔31は、そのような位置に配置された第1貫通孔31Aに加えて、投光器100の前後方向において投光器100の後端から投光器100の長さ(より厳密には前後方向の長さ)の1/3の範囲内に位置する第2貫通孔31Bをさらに含むことが好ましい。
【0103】
消防用途のカラビナ300の直径dc(図11(a)参照)は、例えば10mmである。貫通孔31の直径d(図12参照)が14mm以上であると、貫通孔31にカラビナ300を好適に通すことができる。
【0104】
また、消防用途のカラビナ300では、ゲート部302の開口幅w(図11(a)参照)は例えば34mm程度である。そのため、貫通孔31の中心軸方向に沿ったハンドル30の厚さt(図4参照)は、24mm以下であることが好ましい。
【0105】
(実施形態2)
図13から図15を参照しながら、本実施形態における投光器100Aを説明する。図13図14および図15は、それぞれ投光器100Aを模式的に示す斜視図、側面図および上面図である。以下では、投光器100Aが、実施形態1における投光器100と異なる点を中心として説明を行う。
【0106】
実施形態1の投光器100では、ハンドル30の貫通孔31の中心軸は、投光器100の左右方向に向いている。これに対し、本実施形態の投光器100Aでは、図13図14および図15に示すように、ハンドル30の貫通孔31の中心軸は、投光器100Aの上下方向に向いている。図示している例では、投光器100Aのハンドル30は、第1平面30aおよび第2平面30bが投光器100Aの上下方向を向くように(つまり第1曲面30cおよび第2曲面30dが投光器100Aの左右方向を向くように)配置されている。従って、貫通孔31の深さ方向は、投光器100の上下方向に向いている。
【0107】
なお、「貫通孔31の中心軸が投光器100Aの上下方向を向いている」ことは、必ずしも貫通孔31の中心軸が投光器100Aの上下方向に厳密に平行であることを意味しておらず、貫通孔31の中心軸が投光器100Aの上下方向に対して前後方向にやや傾斜している(例えば45°以下、典型的には30°以下、の角度で傾斜している)態様も含んでいる。
【0108】
本実施形態のように、ハンドル30の貫通孔31の中心軸が投光器100Aの上下方向を向いている構成であっても、実施形態1と同様に、カラビナ300を用いた携行を好適に行うとともに、軽量化を実現することができる。
【0109】
(実施形態3)
図16および図17を参照しながら、本実施形態における投光器100Bを説明する。図16および図17は、それぞれ投光器100Bを模式的に示す斜視図および上面図である。以下では、投光器100Bが、実施形態2における投光器100Aと異なる点を中心として説明を行う。
【0110】
実施形態2の投光器100Aでは、ハンドル30の2つの貫通孔31は、いずれも中心軸方向から見たときの形状が略円形である。これに対し、本実施形態の投光器100Bでは、図16および図17に示すように、ハンドル30の2つの貫通孔31の一方(第1貫通孔)31Aは、中心軸方向から見たときの形状が円形を細長く引き伸ばした形状である、いわゆる長孔である。
【0111】
本実施形態のように、少なくとも1つの貫通孔31が、長孔である貫通孔31を含むことにより、ハンドル30および投光器100Bのいっそうの軽量化を図ることができる。
【0112】
なお、ここでは、2つの貫通孔31のうちの第1貫通孔31Aが長孔である構成を例示したが、第1貫通孔31Aに代えて第2貫通孔31Bを長孔としてもよいし、第1貫通孔31Aおよび第2貫通孔31Bの両方を長孔としてもよい。
【0113】
既に説明したように、消防用途のカラビナ300の直径dcは、例えば10mmであるので、長孔である第1貫通孔31Aの短径ds(図17参照)は、14mm以上であることが好ましい。短径dsが14mm以上であると、第1貫通孔31Aにカラビナ300を好適に通すことができる。
【0114】
(筐体に設けられた係止手段)
消防活動の際、消防士が着用する防火衣の腰部分には、安全帯と呼ばれるベルトが巻かれる。本発明の実施形態による投光器は、ユーザ(消防士)の腰に巻かれた安全帯に筐体を係止する係止手段をさらに備えてもよい。この係止手段は、筐体の両側面の少なくとも一方に設けられる。以下、図1などに示した実施形態1の投光器100を例として、係止手段が設けられていることによる利点を説明する。図示している例では、係止手段は、クリップ部22であり、筐体20の両側面のそれぞれに設けられている。以下、クリップ部22の具体的な構成について説明を行う。
【0115】
図3に示すように、クリップ部22は、第1切り欠き部21aによって規定される形状を有する。ここでは、第1切り欠き部21aは略X字状である。そのため、クリップ部22は、下方に延びる第1舌片部22aと、上方に延びる第2舌片部22bとを含む。
【0116】
図18に、投光器100の前後方向中央の位置および投光器100の重心の位置を示す。図18において、鎖線CPが前後方向中央の位置を示しており、鎖線CGが前後方向における重心の位置を示している。
【0117】
図18からわかるように、係止手段であるクリップ部22は、投光器100の前後方向中央よりも前方に位置している。つまり、クリップ部22は、投光器100の前後方向中央よりも投光器100の重心側に位置している。なお、図18には、クリップ部22の前後方向中央の位置を、鎖線22cpで示している。図18からもわかるように、「係止手段(クリップ部22)が、投光器100の前後方向中央よりも投光器100の重心側に位置している」とは、係止手段(クリップ部22)の前後方向中央(鎖線22cpで示される位置)が、投光器100の前後方向中央よりも重心側に位置していることを意味する。
【0118】
図19に、クリップ部22によって筐体20が安全帯SBに係止されている状態を示す。安全帯SBの幅および厚さは、それぞれ例えば50mmおよび2mmである。図19
示すように、安全帯SBをクリップ部22の第1舌片部22aおよび第2舌片部22bに引っ掛けるように(言い換えると第1舌片部22aおよび第2舌片部22bの裏側に安全帯SBの一部が位置するように)第1切り欠き部21aに通すことにより、筐体20を安全帯SBに係止することができる。これにより、投光器100を前方に向けたままユーザの腰に固定することができる。このとき、クリップ部22は、安全帯SBに筐体20を少なくとも3点で係止する。図示している例では、クリップ部22は、3点で係止を行っている。より具体的には、第1舌片部22aが2点、第2舌片部22bが1点で係止を行っている。
【0119】
上述したように、投光器100は、安全帯SBに筐体20を係止する係止手段(クリップ部22)を備えており、係止手段は、投光器100の前後方向中央よりも投光器100の重心側に位置している。係止手段が前後方向中央よりも重心側に位置していることにより、重心から比較的近い位置で係止が行われるので、光源部10がユーザの前方を向いたままの状態で投光器100をユーザの身体に固定することが容易となる。これに対し、係止手段が前後方向中央に対して重心とは反対側に位置していると、投光器100の重心から係止手段までの距離が比較的長くなることがあり、光源部10がユーザの前方を向いたままの状態で投光器100をユーザの身体に固定することが難しくなるおそれがある。
【0120】
このように、係止手段を備える投光器100は、前方を照らす状態で(つまり光源部10がユーザの前方を向いたまま)ユーザの身体に好適に固定することができる。
【0121】
なお、図示した例では、係止手段(クリップ部22)が筐体20の両側面のそれぞれに設けられているが、係止手段が筐体20の両側面の一方のみ(左側面および右側面のいずれか)に設けられていてもよい。例示したように、係止手段が筐体20の両側面のそれぞれに設けられていると、投光器100をユーザの腰の右側および左側のどちらにも固定することができるので、ユーザの利き手を問わず投光器100を好適に使用できる利点が得られる。
【0122】
既に説明したように、筐体20の両側面のそれぞれは、左右方向内側に凹んだ曲面部分GPを含んでいる。筺体20の、係止手段が設けられている側面がこのような曲面部分GPを含むことにより、安全帯SBに筐体20を係止(つまり投光器100を固定)したときに、筐体20がユーザの身体にフィットしやすくなる。つまり、上述した曲面部分GPは、ユーザの身体に対するガイド形状を有する部分であり、以下では「ガイド部」とも呼ぶ。以下、図20および図21を参照しながら、このことをより具体的に説明する。図20は、投光器100の側面図であり、ガイド部GPにわかりやすさのためにハッチングを付している。図21は、投光器100の上面図であり、併せてユーザの腰WAを模式的に示している。
【0123】
本実施形態では、ガイド部GPは、図20に示すように、筐体20の側面の上下方向における中央部に位置しており、図21に示すように、ユーザの腰WA(より具体的には腰WAに巻かれた安全帯SB)に当接する。
【0124】
筺体20の側面がこのようなガイド部GPを含むことにより、安全帯SBに筐体20を係止したときに、筐体20がユーザの身体にフィットしやすくなる。言い換えると、ユーザの身体にクリップ部22だけでなくガイド部GPも当接するようになる。そのため、投光器100を固定したときの安定性が増す。また、ユーザが素早く動いても、クリップ部22のみに負荷が集中することを防止できるので、クリップ部22が破損しにくい。また、比較的広い面積で投光器100を支持することになるので、光源部10をユーザの前方に向けたままの固定がいっそう容易となる。
【0125】
ガイド部GPの具体的な形状は、ユーザの腰になるべく沿うように設定される。ガイド部GPの曲率半径は、例えば250mm以上1300mm以下である。
【0126】
また、例示している構成では、係止手段が、筐体20の側面の切り欠き部21aによって規定される形状を有するクリップ部22である。これにより、部品点数の削減および筐体20の軽量化を図るとともに、投光器100のデザイン性を高くすることができる。
【0127】
筐体20の切り欠き部21aは、光源部10で生じる熱を放出するための放熱孔として機能してもよい。放熱孔を、クリップ部22の形状を規定する切り欠き部21aとしても用いることにより、筐体20に余分な孔を形成する必要がない。
【0128】
クリップ部22が、投光器100の下方に延びる第1舌片部22aを含むことにより、水平方向に延びる安全帯SBに対し、投光器100をユーザの前方に向けたまま係止することが容易となる。また、クリップ部22が、投光器100の上方に延びる第2舌片部22bをさらに含むことにより、安全帯SBに対して投光器100をより確実に固定することができる。第1舌片部22aと第2舌片部22bとは、連続しておらず、第1舌片部22aと第2舌片部22bとの間には隙間があるので、ユーザは、安全帯SBを身体から取り外すことなく、安全帯SBに投光器100を固定することができる。
【0129】
上述したような第1舌片部22aおよび第2舌片部22bを含むクリップ部22は、例えば、第1切り欠き部21aを略X字状にすることにより得られる。勿論、第1切り欠き部21aの形状はこれに限定されるものではない。例示した略X字状の他、略H字状、略M字状、略W字状、略V字状、略U字状などであってもよい。
【0130】
また、図示した例では、投光器100の重心が、投光器100の前後方向中央よりも前方に位置しており、筐体20の幅広部WRも投光器100の前後方向中央より前方に位置している。そのため、幅広部WRがユーザの身体(具体的には腰から大腿部)に当接することにより、投光器100が前下がりになることを防止して投光器100がユーザの前方に向いた状態をより確実に維持することができる。このように、幅狭部NRに配置された係止手段(クリップ部22)と、幅広部WRとによって、ユーザの身体に固定した投光器100によって前方を照らす状態を維持することが容易となる。
【0131】
なお、クリップ部22の第1舌片部22aおよび第2舌片部22bの幅や長さに特に制限はなく、安全帯SBに対する筐体20の係止を十分確実に行い得るように適宜設定され得る。第1舌片部22aと第2舌片部22bとは、互いに長さが異なることが好ましい。第1舌片部22aと第2舌片部22bとで長さが異なることにより、つまり、比較的長い舌片部と比較的短い舌片部とを組み合わせて用いることにより、安全帯SBに舌片部を掛けやすく、また、クリップ部22から安全帯SBが外れにくいという利点が得られる。図3などに示したように第1舌片部22aが第2舌片部22bより長くてもよいし、逆に、第2舌片部22bが第1舌片部22aより長くてもよい。クリップ部22によって安全帯SBに筐体20を係止する際には、まず、長い方の舌片部を安全帯SBに掛け、その後、短い方の舌片部を安全帯SBに掛けることになる。第1舌片部22aと第2舌片部22bとで長さが同じ場合、第1舌片部22aおよび第2舌片部22bの両方が長いと、安全帯SBに舌片部を掛けにくい(つまり投光器100の取付けが難しい)ことがあり、第1舌片部22aおよび第2舌片部22bの両方が短いと、クリップ部22から安全帯SBが外れやすくなることがある。
【0132】
また、図示している例では、クリップ部22が第1舌片部22aおよび第2舌片部22bを1つずつ含んでいるが、クリップ部22は第1舌片部22aおよび/または第2舌片部22bを複数含んでいてもよい。例えば、クリップ部22は、2つの第1舌片部22a
と、1つの第2舌片部22bとを含んでもよい。さらに、クリップ部22は、第2舌片部22bを含んでいなくもよい。第1切り欠き部21aが略H字状の場合、クリップ部22は、略X字状の場合と同様に、第1舌片部22aおよび第2舌片部22bを1つずつ含む。これに対し、第1切り欠き部21aが略M字状の場合、クリップ部22は、1つの第1舌片部22aおよび2つの第2舌片部22bを含む。また、第1切り欠き部21aが略W字状の場合、クリップ部22は、2つの第1舌片部22aおよび1つの第2舌片部22bを含む。第1切り欠き部22aが略V字状または略U字状の場合、クリップ部22は、1つの第1舌片部22aを含み、第2舌片部22bを含まない。
【0133】
なお、ここでは、係止手段として、筐体20に一体に形成されたクリップ部22を例示したが、係止手段はこれに限定されるものではない。係止手段は、筐体20と一体に形成されてもよいし、筐体20と別体に形成されてもよい。筐体20と別体に形成された係止手段は、筐体20に接合されていてもよいし、筐体20に対して取り付けおよび取り外し可能なアタッチメント部材であってもよい。図22に、そのようなアタッチメント部材の例を示す。図22(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ係止手段として機能するアタッチメント部材70を模式的に示す上面図、側面図、正面図および背面図である。
【0134】
図22(a)、(b)、(c)および(d)に示すように、アタッチメント部材70は、底部71および底部71の一端から上方に延びる側壁部72を有する。アタッチメント部材70の断面形状は、略L字状である。
【0135】
図22(a)に示すように、底部71は、中央付近に貫通孔71aを有する。
【0136】
図22(c)に示すように、側壁部72の正面側には、略X字状(略H字状ともいえる)の切り欠き部72aが形成されている。また、図22(b)および(d)に示すように、側壁部72の背面側には、複数(ここでは2つ)の突起72bが設けられている。突起72bの先端部は、フランジ状である。
【0137】
また、アタッチメント部材70は、図22(c)に示すように、側壁部72の切り欠き部72aによって規定される形状を有するクリップ部73を含む。クリップ部73は、下方に延びる第1舌片部73aと、上方に延びる第2舌片部73bとを含む。
【0138】
上述した構成を有するアタッチメント部材70は、底部71の貫通孔71aに三脚取付ボス26を差し込むとともに、側壁部72の突起72bを筐体20の放熱孔に引っ掛けることにより、筐体20に取り付けることができる。また、アタッチメント部材70は、クリップ部73によって安全帯SBに係止され得る(つまり取り付けられ得る)。実際の使用の際には、あらかじめアタッチメント部材70を安全帯SBに取り付けておき、必要に応じてアタッチメント部材70を投光器100に取り付けることにより、投光器100をユーザの身体に固定することができる。
【0139】
筐体20とは別体のアタッチメント部材70を用いる場合、筐体20には、第1切り欠き部21aのようなサイズの大きい放熱孔を形成する必要はない。そのため、放熱孔のサイズを小さくできるので、例えば投光器100を引きずった場合に投光器100を何かに引っ掛けてしまう可能性を低減できる。
【0140】
(スイッチおよび信号表示灯の好ましい配置)
実施形態1の投光器100を例として、第1スイッチ(信号スイッチ)40および第2スイッチ(配光切換スイッチ)50と、信号表示灯60の好ましい配置を説明する。
【0141】
図1などに示す投光器100では、第1スイッチ40および第2スイッチ50は、ハンドル30を把持した手の指が届く範囲内に配置されている。図示している例では、筐体20の長手方向において、第1スイッチ40および第2スイッチ50は、ハンドル30の前方に位置している。また、第1スイッチ40および第2スイッチ50は、筐体20の上部(より具体的にはボックス部20a)に配置されており、第1スイッチ40および第2スイッチ50のスイッチ機構部(ここでは不図示)はボックス部20aに収容されている。
【0142】
また、信号表示灯60は、第1スイッチ40および第2スイッチ50の周辺に配置されている。図示している例では、筐体20の長手方向において、信号表示灯60は、ハンドル30の前方に位置している。また、信号表示灯60は、筐体20の上部(より具体的にはボックス部20a)に配置されている。上方から見たとき、信号表示灯60、第1スイッチ40および第2スイッチ50は、仮想的な三角形の頂点に位置するように配置されている。図示している例では、筐体20の長手方向において、第2スイッチ50が第1スイッチ40および信号表示灯60よりも前方に位置している。
【0143】
上述したように、第1スイッチ(信号スイッチ)40および第2スイッチ(配光切換スイッチ)50が、ハンドル30を把持した手(以下では「持ち手」と呼ぶ)の指が届く範囲内に配置されていると、信号の送信および配光の切り替えのそれぞれを、持ち手での片手操作により行うことができる。そのため、ハンドル30を把持していない方の手を空けたり、投光器100を地面に置いたりする必要がない。従って、投光器100の操作性を向上させることができる。
【0144】
ここで、「持ち手の指の届く範囲」は、成人の平均的な手の大きさ(指の長さ)に基づいて設定され得る。本実施形態で例示した構成では、第1スイッチ40および第2スイッチ50は、ハンドル30の前方に位置している。この場合、「持ち手の指の届く範囲」とは、例えば、ハンドル30の前端30fe(図3参照)から50mm以内の範囲である。
【0145】
ハンドル30を把持する際の手の姿勢を考慮すると、第1スイッチ40および第2スイッチ50の操作は、親指で行うことが好ましい。例示しているように、筐体20の長手方向において、第1スイッチ40および第2スイッチ50がハンドル30の前方に位置していると、親指での操作が容易である。
【0146】
親指での操作の容易さの観点からは、第1スイッチ40および第2スイッチ50は、ハンドル30の軸線30x(図4参照)から大きく離れていないことが好ましく、言い換えると、実質的にハンドル30の軸線30x上に位置していることが好ましい。
【0147】
また、図示している例では、信号表示灯60が、第1スイッチ40および第2スイッチ50の周辺に配置されている。このことにより、信号表示灯60の視認が容易となる。これに対し、例えば表示灯が投光器本体の側面に配置されていると、表示灯をユーザが視認できない(つまり表示灯がユーザの死角に入ってしまう)おそれがある。
【0148】
視認の容易さの観点からは、筐体20の長手方向において、信号表示灯60は、ハンドル30の前方に位置していることが好ましい。信号表示灯60がハンドル30の前方に位置していると、ハンドル30を把持している手によって信号表示灯60が隠れることがない。
【0149】
なお、第1スイッチ40、第2スイッチ50および信号表示灯60の配置は、図示した例に限定されるものではない。例えば、第1スイッチ40と第2スイッチ50の位置が入れ替わってもよいし、信号表示灯60と第1スイッチ40または第2スイッチ50の位置が入れ替わってもよい。視認の容易さの観点からは、筐体20の長手方向において、信号
表示灯60が第1スイッチ40および第2スイッチ50よりも前方に位置する配置(図示している第2スイッチ50の位置に信号表示灯60が配置された構成)が好ましいといえる。
【0150】
(防水区画)
言うまでもないが、消防活動は放水作業を伴うため、投光器100は頻繁に被水する。そのため、投光器100は、高い防水性を有することが好ましい。第1スイッチ40および第2スイッチ50と、光源部10に供給される電流を制御する制御基板とは、離れた位置に配置され得るので、投光器100は、少なくとも2つの防水区画を有することが好ましい。
【0151】
図23に、投光器100が有する防水区画の例を示す。図23に示す例では、投光器100は、3つの防水区画WC1、WC2およびWC3を有する。
【0152】
防水区画WC1、WC2およびWC3のうちの第1防水区画WC1は、筐体20のボックス部20aに対応する領域であり、第1スイッチ40、第2スイッチ50および信号表示灯60が配置されている。第2防水区画WC2は、筐体20の後部に対応する領域であり、ブザー28および不図示の制御基板が配置されている。第3防水区画WC3は、筐体20の前部に対応する領域であり、光源部10が配置されている。なお、防水区画を実現するための具体的な手法については、公知の手法を用いることができるので、ここではその説明を省略する。
【0153】
図23に示した例のように、1つの防水区画(ここでは第1防水区画WC1)に第1スイッチ40および第2スイッチ50の両方を配置することにより、投光器100全体での防水区画の数を比較的少なくすることができる。
【0154】
上述したように、本発明の実施形態による消防用投光器100(100A、100B)は、光源部10と、光源部10を収容する筐体20と、筐体20の上部に配置されユーザの手によって把持されるハンドル30と、を備えた消防用投光器であって、平面視において、ハンドル30の長手方向は、消防用投光器100の前後方向に向いており、ハンドル30には、少なくとも1つの貫通孔31が形成されており、少なくとも1つの貫通孔31は、消防用投光器100の前後方向において、消防用投光器100の重心と、ハンドル30の後端との間に位置している。
【0155】
本発明の実施形態による消防用投光器100では、ハンドル30に少なくとも1つの貫通孔31が形成されているので、貫通孔31にカラビナ300を通すことによってカラビナ300を用いた携行が可能となる。本発明の実施形態によれば、カラビナ300を通すための部材を別途に筐体20に取り付ける必要がないので、部品点数を少なくすることができ、投光器100の軽量化を図ることができる。さらに、ハンドル30に貫通孔31が形成されていることにより、ハンドル30自体が軽量化されるので、そのことにより投光器100全体を軽量化する効果を得ることもできる。また、ハンドル30に形成された貫通孔31にカラビナ300を通した場合、ハンドル30と筐体20との間にカラビナ300を通した場合のようなカラビナ300のすべり(ずれ)を防止できるので、カラビナ300を用いた携行時の投光器100の姿勢を安定させることができる。さらに、本発明の実施形態による消防用投光器100では、ハンドル30の貫通孔31は、投光器100の前後方向において、投光器100の重心とハンドル30の後端との間に位置している。つまり、ハンドル30の貫通孔31は、投光器100の重心よりも後方に位置している。これにより、カラビナ300を用いた携行時に、光源部10が斜め上を向いてしまうことを防止できる。光源部10が斜め上を向くと、人の顔に光を照射してしまうおそれがある。このように、本発明の実施形態によれば、カラビナ300を用いた携行に好適な構造を有
し、且つ、軽量化を実現できる消防用投光器100が得られる。
【0156】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31の個数は、複数である。
【0157】
ハンドル30の貫通孔31の個数が複数であると、カラビナ300を用いた携行の際の投光器100の姿勢(傾き)を調整(選択)することができる。
【0158】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31の個数は2である。
【0159】
製造の容易さの観点からは、ハンドル30の貫通孔31の個数は、2が好ましい。
【0160】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31は、消防用投光器100の前後方向において、消防用投光器100の前端から消防用投光器100の長さの2/3の範囲内に位置する第1貫通孔31Aを含む。
【0161】
光源部10を水平方向に近い方向に向ける観点からは、ハンドル30に形成された少なくとも1つの貫通孔31は、なるべく投光器100の重心に近い位置に配置された貫通孔31を含んでいることが好ましく、具体的には、投光器100の前後方向において投光器100の前端から投光器100の長さの2/3の範囲内に位置する第1貫通孔31Aを含むことが好ましい。
【0162】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31は、消防用投光器100の前後方向において、消防用投光器100の後端から消防用投光器100の長さの1/3の範囲内に位置する第2貫通孔31Bをさらに含む。
【0163】
携行時の投光器100の姿勢の調整の幅を大きくする観点からは、ハンドル30に形成された少なくとも1つの貫通孔31は、投光器100の前後方向において投光器100の後端から投光器100の長さの1/3の範囲内に位置する第2貫通孔31Bをさらに含むことが好ましい。
【0164】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31の中心軸は、消防用投光器100の左右方向に向いている。
【0165】
少なくとも1つの貫通孔31の中心軸は、例えば、投光器100の左右方向に向いている。
【0166】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31の中心軸は、消防用投光器100の上下方向に向いている。
【0167】
少なくとも1つの貫通孔31の中心軸は、投光器100の上下方向に向いていてもよい。
【0168】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31は、中心軸方向から見たときの形状が略円形である貫通孔31を含む。
【0169】
少なくとも1つの貫通孔31は、例えば、中心軸方向から見たときの形状が略円形である貫通孔31を含んでいる。
【0170】
ある実施形態において、中心軸方向から見たときの形状が略円形である貫通孔31の直径dは、14mm以上である。
【0171】
消防用途のカラビナ300の直径dcは例えば10mmであるので、貫通孔31の直径dが14mm以上であると、貫通孔31にカラビナを好適に通すことができる。
【0172】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31は、長孔である貫通孔31を含む。
【0173】
少なくとも1つの貫通孔31が、長孔である貫通孔31を含むことにより、ハンドル30および投光器100のいっそうの軽量化を図ることができる。
【0174】
ある実施形態において、長孔である貫通孔31の短径dsは、14mm以上である。
【0175】
消防用途のカラビナ300の直径dcは例えば10mmであるので、長孔である貫通孔31の短径dsは、14mm以上であることが好ましい。
【0176】
ある実施形態において、少なくとも1つの貫通孔31の中心軸方向に沿ったハンドル30の厚さtは、24mm以下である。
【0177】
また、消防用途のカラビナ300では、ゲート部302の開口幅wは例えば34mm程度である。そのため、貫通孔31の中心軸方向に沿ったハンドル30の厚さtは、24mm以下であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の実施形態によると、カラビナを用いた携行に好適な構造を有し、且つ、軽量化を実現できる消防用投光器を提供することができる。
【符号の説明】
【0179】
1:接続ケーブル、2:接続ケーブル、10:光源部、11:LED素子(光源)、11a:第1LED素子、11b:第2LED素子、12:第1レンズ部、12a:第1レンズ、13:第2レンズ部、13a:第2レンズ、14:ヒートシンク部、14a:ベース部、14b:フィン、20:筐体、20a:ボックス部、20b:凸部、21a:第1切り欠き部、21b:第2切り欠き部、22:クリップ部、22a:第1舌片部、22b:第2舌片部、25:保護部材(レンズガード)、26:三脚取付ボス、27:支持部材、28:ブザー、29:ブラケット、30:ハンドル、30x:ハンドルの軸線、30fe:ハンドルの前端、31:貫通孔、31A:第1貫通孔、31B:第2貫通孔、40:第1スイッチ(信号スイッチ)、50:第2スイッチ(配光切換スイッチ)、60:信号表示灯、70:アタッチメント部材、71:底部、71a:貫通孔、72:側壁部、72a:切り欠き部、72b:突起、73:クリップ部、73a:第1舌片部、73b:第2舌片部、100:投光器、200:信号器、201:信号器本体、202:ハンドル、203:第3スイッチ(信号スイッチ)、204:信号表示灯、205:ブザー、206:電源ユニット、GP:筐体の側面の曲面部分(ガイド部)、WC1:第1防水区画、WC2:第2防水区画、WC3:第3防水区画、WR:筐体の幅広部、NR:筐体の幅狭部、SB:安全帯
図1
図2
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