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特開2022-87250均一な構造を有するアルファオレフィンオリゴマーおよびその製造方法
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  • 特開-均一な構造を有するアルファオレフィンオリゴマーおよびその製造方法 図1
  • 特開-均一な構造を有するアルファオレフィンオリゴマーおよびその製造方法 図2
  • 特開-均一な構造を有するアルファオレフィンオリゴマーおよびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087250
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】均一な構造を有するアルファオレフィンオリゴマーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 9/22 20060101AFI20220602BHJP
   C07C 5/03 20060101ALI20220602BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20220602BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220602BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20220602BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220602BHJP
【FI】
C07C9/22
C07C5/03
C10M107/02
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N40:25
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066352
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2019208952の分割
【原出願日】2019-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0171965
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521319568
【氏名又は名称】ディーエル ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キム ソハン
(72)【発明者】
【氏名】イ テヒ
(72)【発明者】
【氏名】オム ジェフン
(57)【要約】
【課題】 均一な構造を有するアルファオレフィンオリゴマーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、低い分岐比の
均一な分子構造を有するため、向上した熱的および酸化安定性、長い使用寿命、低揮発性、低流動点および高粘度指数を有するアルファオレフィンオリゴマーを提供する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタセロン触媒を用いてデセンをオリゴマー化し、前記デセンオリゴマーを水素化することにより得られる水素化デセンオリゴマー組成物であって、前記デセンオリゴマーは、重量平均分子量が1300以下である均一な分子構造を有し、
下記式(1):
分岐比=P1/P2 (1)
(式中、P1はCH基の含有量を意味し、P2はCH基の含有量を意味し、前記CHおよびCH基の含有量はH-NMRで測定される)
による分岐比が0.265以下であり、ここで、
前記メタセロン触媒は、以下の化学式1~4:
(式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムよりなる群から選択された遷移金属であり、
Bは、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリレン基、炭素数1~20のジアルキルシリコン、炭素数1~20のジアルキルゲルマニウム、炭素数1~20のアルキルホスフィン基または炭素数1~20のアルキルアミン基の連結基であるか或いは連結基がない形態であり、
X1とX2は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、炭素数1~20のアルキリデン基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
R1~R10は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基である)で表されるか、又は以下の化学式化学式5又は6:
(式中、
Mはチタン、ジルコニウム、およびハフニウムよりなる群から選択された遷移金属であり、
Bは炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリレン基、炭素数1~20のジアルキルシリコン、炭素数1~20のジアルキルゲルマニウム、炭素数1~20のアルキルホスフィン基または炭素数1~20のアルキルアミン基の連結基であるか或いは連結基がない形態であり、
X1とX2は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、炭素数1~20のアルキリデン基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
R1~R10は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基であり、
R11、R13およびR14は、互いに同一の水素であり、R12は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基である)から選択される
、デセンオリゴマー組成物。
【請求項2】
構造式1:
(式中、n=1~9)
におけるB2位の炭素は、NMRパルスシーケンスによって測定された298KでのT1緩和時間(T1 relaxation time)が0.6未満である、請求項1に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項3】
デセンオリゴマーのB3位の炭素は、NMRパルスシーケンスによって測定された298KでのT1緩和時間(T1 relaxation time)が0.5未満である、請求項2に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項4】
デセンオリゴマーのB3位の炭素が3次炭素(tertiary carbon、CH Group)または2次炭素(Secondary carbon,CH Group)である、請求項2に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項5】
デセンオリゴマーのA1位の炭素は、NMRパルスシーケンスによって測定された298KでのT1緩和時間(T1 relaxation time)が2.35以上である、請求項2に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項6】
デセンオリゴマーのA2位の炭素は、NMRパルスシーケンスによって測定された298KでのT1緩和時間(T1 relaxation time)が2.20以上である、請求項2に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項7】
引火点が235℃以上である、請求項1に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項8】
NOACK蒸発量が12%未満である、請求項1に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項9】
流動点が-50℃以下である、請求項1に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項10】
100℃での動粘度が6.3cSt以下である、請求項1に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項11】
40℃での動粘度が35.0cSt以下である、請求項1に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項12】
二量体が0.1~3.5wt%の含有量で含まれる、請求項1に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項13】
潤滑油用基油として用いられる、請求項1~12のいずれか一項に記載のデセンオリゴマー組成物。
【請求項14】
請求項13に記載のデセンオリゴマー組成物を含む、潤滑油組成物。
【請求項15】
メタセロン触媒を用いてデセンをオリゴマー化し、前記デセンオリゴマーを水素化することにより得られる水素化デセンオリゴマー組成物の製造方法であって、
ここで、前記デセンオリゴマーは、重量平均分子量が1300以下である均一な分子構造を有し、
下記式(1):
分岐比=P1/P2 (1)
(式中、P1はCH基の含有量を意味し、P2はCH基の含有量を意味し、前記CHおよびCH基の含有量はH-NMRで測定される)
による分岐比が0.265以下であり、ここで、
前記メタセロン触媒は、以下の化学式1~4:
(式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムよりなる群から選択された遷移金属であり、
Bは、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリレン基、炭素数1~20のジアルキルシリコン、炭素数1~20のジアルキルゲルマニウム、炭素数1~20のアルキルホスフィン基または炭素数1~20のアルキルアミン基の連結基であるか或いは連結基がない形態であり、
X1とX2は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、炭素数1~20のアルキリデン基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
R1~R10は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基である)で表されるか、又は以下の化学式化学式5又は6:
(式中、
Mはチタン、ジルコニウム、およびハフニウムよりなる群から選択された遷移金属であり、
Bは炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリレン基、炭素数1~20のジアルキルシリコン、炭素数1~20のジアルキルゲルマニウム、炭素数1~20のアルキルホスフィン基または炭素数1~20のアルキルアミン基の連結基であるか或いは連結基がない形態であり、
X1とX2は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、炭素数1~20のアルキリデン基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
R1~R10は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基であり、
R11、R13およびR14は、互いに同一の水素であり、R12は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基である)から選択される、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な構造を有するアルファオレフィンオリゴマーおよびその製造方法に係り、より詳細には、変化量の二量体、三量体、四量体、五量体および高次オリゴマーを含む混合物を含み、水素化され、向上した熱的および酸化安定性、長い使用寿命、低揮発性、低流動点および高粘度指数を有するため様々な分野の潤滑剤として適用することができるオリゴマー生成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、潤滑油(Lubricant)は、潤滑基油(Basic oil)と物性向上のための添加剤(Additive)からなり、潤滑基油は、代表的に鉱油(Mineral oil)と合成油に区分される。鉱油は、原油を分離および精製する過程で生成されるナフテン系オイル(Naphthenic oil)をいい、合成油は、石油精製過程で生成されるアルファオレフィンを重合して製造されるポリアルファオレフィン(Poly alpha olefin;PAO)をいう。
【0003】
従来では潤滑基油として鉱油が主に使用されたが、産業が発展するにつれて、内燃機関および工業機械の高性能化、高出力化、過酷な運転条件などにより高い性能を有する潤滑油が求められており、最近では、鉱油から生成される潤滑基油と比較して高い粘度指数と優れた低温での流動性を示すため、低温の環境で幅広い使用環境を提供しながら、せん断安定性に優れたポリアルファオレフィンへの需要が増加している。このため、数十年間ポリアルファオレフィン合成潤滑剤が様々な研究および開発を介して商業的に生産されてきたとともに、炭素数6乃至20のアルファオレフィンのオリゴマー化反応を基本とする合成潤滑剤の性能を改善するための産業的研究も盛んに行われている。
【0004】
そこで、本発明者も、優れた物性を有するアルファオレフィンオリゴマーを製造するための研究中に、ブレナングループで発表したInd.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.1980、19、2-6に記述されている様々なアルファオレフィンから生成された類似な炭素数を有するオリゴマー構造と粘度指数などの物性との相関関係、およびシャープグループがLubrication Science 2012、24、199-215に記述した潤滑油システムで分子構造と粘度-温度挙動との相関関係に着目して、均一な分子構造を有することにより、優れた粘度指数、NOACK蒸発量、引火点などの特定の因子が改善されたアルファオレフィンオリゴマーおよびその製造方法の開発に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2010-0097191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、潤滑油用基油として、低いNOACK蒸発量、高い引火点および高い粘度指数などを満足するアルファオレフィンオリゴマーを提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、前記物理的特性を達成するために、均一な分子構造を有するアルファオレフィンオリゴマーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、低い分岐比(branch ratio)の均一な分子構造を有するアルファオレフィンオリゴマーを提供する。
【0009】
具体的には、本発明のアルファオレフィンオリゴマーは、下記式(1)による分岐比が0.265以下であり、好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.24以下であることを特徴とする。
【0010】
分岐比=P1/P2 (1)
(P1はCH基の含有量を意味し、P2はCH基の含有量を意味し、前記CHおよびCH基の含有量はH-NMRで測定する。)
前記アルファオレフィンオリゴマーは、下記構造式1におけるB1位の炭素はNMRパルスシーケンスによって測定された298KでのT緩和時間(T relaxation time)が1.0未満であり、B2位の炭素は0.6未満の298KでのT緩和時間を有し、B3位の炭素は0.5未満の298KでのT緩和時間を有し、この時、B3位の炭素は3次炭素(tertiary carbon、CH Group)または2次炭素(Secondry carbon、CH Group)であり得る。また、A1位の炭素は2.35以上、A2位の炭素は2.2以上のT緩和時間を有することを特徴とする。
【0011】
【化1】
(前記n=1~9)
本発明のアルファオレフィンオリゴマーは、引火点が235℃以上であり、NOACK蒸発量が12%未満であり得る。
【0012】
また、100℃での動粘度は6.3cSt以下、40℃での動粘度は35.0cSt以下であり得る。
【0013】
前記アルファオレフィンオリゴマーは130以上の粘度指数を有し、流動点は-50℃以下、好ましくは-70℃以下の流動点を有することを特徴とする。
【0014】
さらに、前記アルファオレフィンオリゴマーは、数平均分子量が1100以下、重量平均分子量が1300以下であり得る。また、前記アルファオレフィンオリゴマーの分子量分布(Mw/Mn)は1.0~3.0であることが好ましい。
【0015】
また、前記アルファオレフィンオリゴマーは、潤滑油用基油としての鉱油、分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、消泡剤、腐食防止剤、洗剤、シール膨潤剤、粘度改善剤、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される流体と混合して潤滑油組成物として提供できる。
【0016】
本発明のアルファオレフィンオリゴマーは、均一系触媒であるメタロセン触媒を導入することにより、異性化反応を最小化して分子構造を均一に調節して製造することができる。
【0017】
本発明のメタロセン触媒は、メタロセン化合物(A)、活性化剤化合物(B)およびイオン活性化剤化合物(C)で構成できる。
【0018】
この時、前記メタロセン化合物(A)は、下記化学式1乃至6で表される群から選択された1種以上であり得る。
【0019】
【化2】
前記化学式1乃至4中、
Mは、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムよりなる群から選択された遷移金属であり、
Bは、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリレン基、炭素数1~20のジアルキルシリコン、炭素数1~20のジアルキルゲルマニウム、炭素数1~20のアルキルホスフィン基または炭素数1~20のアルキルアミン基の連結基であるか或いは連結基がない形態であり、
とXは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、炭素数1~20のアルキリデン基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
~R10は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基であり得る。
【0020】
【化3】
前記化学式5および6中、
Mはチタン、ジルコニウム、およびハフニウムよりなる群から選択された遷移金属であり、
Bは炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリレン基、炭素数1~20のジアルキルシリコン、炭素数1~20のジアルキルゲルマニウム、炭素数1~20のアルキルホスフィン基または炭素数1~20のアルキルアミン基の連結基であるか或いは連結基がない形態であり、
とXは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、炭素数1~20のアルキリデン基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
~R10は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基であり得る。
【0021】
11、R13およびR14は、互いに同一の水素であり、R12は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数5~60のシクロアルキル基、炭素数4~20の複素環基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基が含まれたヘテロ基またはシリル基であり得る。
【0022】
また、前記化学式2~6のメタロセン化合物は、水素添加反応で置換された化合物の形態も含まれ得る。好ましい例としては、ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドである。
【0023】
前記活性化剤化合物(B)は、メタロセン化合物(A)或いはその派生物と反応してイオン性化合物を形成する化合物であって、ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩およびトリフェニルカルボニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩などよりなる群から選択された1種以上の化合物であり得る。
【0024】
前記イオン活性化剤化合物(C)は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、或いはジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリドなどのアルキルアルミニウムハライド、或いはジメチルアルミニウム或いはメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン補助活性剤と組み合わせて使用できる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明のメタロセン触媒において、メタロセン化合物(A)と活性化剤化合物(B)の使用比率は、モル比で10:1~1:100、好ましくは2:1~1:10の範囲であり得る。
【0026】
また、イオン活性化剤化合物(C)を使用する場合、メタロセン化合物(A)とイオン活性化剤化合物(C)のモル比は、好ましくは1:1~1:10,000、より好ましくは1:5~1:1000の範囲であり得る。化合物のモル比が1:1未満である場合には、イオン活性化剤化合物の量が少なくて触媒化合物のアルキル化が完全に行われないという問題が発生し、化合物のモル比が1:10,000を超える場合には、化合物間の副反応により活性化が完全に行われないという問題が発生するので、好ましくない。
【0027】
アルファオレフィン単量体は、水分に敏感なので、触媒毒などの理由により、含有されている水分を管理することが重要であり、重合反応において水分による影響を軽減するためにスカベンジャー用として前記イオン活性化剤化合物(C)を使用する。水分とイオン活性化剤化合物(C)の使用比率は、1:1~1:1,000、好ましくは1:1~1:100の範囲である。
【0028】
本発明では、メタロセン触媒の製造時に反応溶媒としてペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、またはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒が使用できるが、これに限定されるものではなく、製造時に使用可能なすべての溶媒が使用できる。
【0029】
本発明のアルファオレフィン系単量体は、炭素数2~20の脂肪族オレフィンを含み、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセンなどを例示として挙げることができる。また、前記単量体のうち、いずれか1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ここには、異性体が含まれている形態も該当する。共重合において、単量体は1~95モル%、好ましくは5~90モル%である。
【0030】
本発明のアルファオレフィンオリゴマー重合反応は、前記炭化水素系溶媒内で液相、スラリー相、塊相、或いは気相重合で行われ得る。炭素数5~20の脂肪族炭化水素溶媒であるペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカンなどおよびこれらの異性体、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、並びにクロロベンゼンなどのハロゲン原子が含まれている炭化水素溶媒のうちの1種または2種以上の組み合わせを注入し、反応初期の低い粘度条件を維持して反応することができる。前記重合反応段階は、回分式反応器、ループ反応器などの単独または組み合わせ形態の反応器で、バッチ式、半連続式または連続式反応によって行われ得る。
【0031】
アルファオレフィンオリゴマー化の条件は、アルゴン或いは窒素などの不活性ガスの存在下および15~200℃の温度範囲下で行われる。アルファオレフィンに対するメタロセン触媒の使用モル比は1:1,000~1:1,000,000、より好ましくは1:5,000~1:1,000,000であり、反応時間は10分~48時間である。
【0032】
アルファオレフィンのオリゴマー化によって生成されたオリゴマーは、0.1~50torrの圧力および80~450℃の温度範囲で減圧蒸留して単蒸留分離できる。
【0033】
また、アルファオレフィンオリゴマー化の後処理工程としては、通常、水やアルコール類で反応を終了させ、アルカリ水溶液などを用いて触媒を急冷する。
【0034】
本発明のアルファオレフィンオリゴマーは、オリゴマー化過程で二重結合が残っている。このような二重結合は、潤滑油或いはエンジン油として使用する際に欠点として作用するので、一般に飽和状態に変換させるために水素化処理工程を行う。水素化処理工程に用いられる触媒系としては、Ni或いはCo系触媒や、Pd或いはPtなどの貴金属触媒がある。
【0035】
メタロセン触媒を用いて製造されたポリアルファオレフィンは、陽イオン触媒を用いて製造されたものよりも規則的な構造を示す。これを測定するための方法として、核磁気共鳴分光器(Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy、NMR)装備を用いることができ、これにより、分子の運動性と関連のあるT緩和時間を測定してデセンオリゴマーの分子構造の特徴を知ることができる。T緩和時間は、相対的に低分子領域では運動性が大きいほど大きい値を示し、逆に運動性が低いほど小さくなる。すなわち、運動性が大きいというのは、分子構造が複雑であり、不規則な構造を持っていることを意味する。このため、本発明のアルファオレフィンオリゴマーは、製造されたオリゴマーにおける、末端基の炭素が高いT緩和時間を示し、中心部分の炭素は低いT緩和時間を示しているということからみて、より規則的な分子構造を持っていることを特徴とする。
【0036】
本発明のアルファオレフィンオリゴマー製品の選択性の向上、デセンの混入反応の容易性および異性化反応の最小化を図るために、一つまたは2つの水素添加されたリガンド、体積の大きいリガンド、体積の小さいリガンド、およびこれらの組み合わせのリガンドが配位されたメタロセン化合物を使用する。本発明のアルファオレフィンオリゴマー製品の主要成分の選択性を考慮して、分離前の動粘度(Kinematic viscosity、100℃)は2~7cStであることを特徴とする。水素添加反応先行後の分離工程進行時に製品の異性化が少なく発生し、製品の分離が容易になる。
【発明の効果】
【0037】
本発明で提供するアルファオレフィンオリゴマーの製造方法は、潤滑基油の物性を低下させる側鎖分岐の生成を最小限に抑えることができる。このため、低い分岐比の均一な分子構造を有するため、向上した熱的および酸化安定性、長い使用寿命、低揮発性、低流動点および高粘度指数を有するアルファオレフィンオリゴマーを提供することができる。よって、様々な分野の潤滑剤として適用することができるポリアルファオレフィンの製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】メタロセン触媒を用いて重合したデセンオリゴマーの炭素NMRスペクトルのグラフである。
図2】実施例1のメタロセン触媒を用いて重合したデセンオリゴマーのT1IRPG2次元(T1 Inversion Recovery Power Gated decoupling 2D Experiment)スペクトルのグラフである。
図3】比較例1の陽イオン触媒を用いて重合したデセンオリゴマーのT1IRPG2次元スペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。ところが、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態でも具体化できる。むしろ、ここで紹介される内容が徹底かつ完全たるものとなるように、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0040】
実施例1.メタロセン触媒を用いたオリゴマー製造-単蒸留分離後の水素化処理
1.オリゴマー化
1Lのステンレス製のオートクレーブ反応器にデセン530ml(392g)を投入した後、110℃に維持した。この過程で、必要に応じて重合温度を50~150℃に調節し、トリイソブチルアルミニウム1mmolを入れるか、或いは必要に応じて入れない。その後、予め製造した触媒(メタロセン触媒0.01mmol、助触媒0.012mmol、トリイソブチルアルミニウム0.6mmolおよびトルエン6ml)を前記反応器に投入した。続いて、700rpmで攪拌しながら3時間反応させた後、10%水酸化ナトリウム水溶液400mlに投入して反応を終結した。次に、上層の有機層を抽出し、未反応のデセンおよび副反応生成物としてのデセン異性体をストリッピングして除去することにより、デセンオリゴマーを製造した。
【0041】
2.オリゴマーの単蒸留分離
5~30cmのビグリュー(Vigreux)蒸留カラムが含まれている2Lのフラスコに、上記で製造されたデセンオリゴマー150mlを投入した後、酸素を除去するために真空状態に維持した。その後、0.45torrの圧力および170~230℃の温度範囲で減圧蒸留した後、残留物の熱分解を防ぐために、真空状態で常温まで冷ました。
【0042】
3.オリゴマーの水素化処理
1Lのパーリアクター(parr reactor)内に5wt%のパラジウム/アルミナ140gを仕込み、上記で分離されたデセンオリゴマー0.5Lを入れた後、120℃で30分間、窒素でパージした。その後、180℃に昇温して2MPaの水素圧下で反応を開始し、4時間後に反応を終結した。
【0043】
実施例2.メタロセン触媒を用いたオリゴマー製造-水素化処理後の単蒸留分離
1.オリゴマー化
1Lのステンレス製のオートクレーブ反応器にヘキサンを100wt%の割合で投入した後、110℃に維持した。この過程で、必要に応じて重合温度とヘキサン投入割合をそれぞれ50~150℃と0~100wt%に調節する。その後、予め製造した触媒(メタロセン触媒0.4mmol、助触媒0.5mmol、トリイソブチルアルミニウム1.1mmolおよびトルエン350ml)を、前記反応器に0.2~0.3ml/minで投入し、同時にデセンを5.0~7.0ml/minで投入した。続いて、1200rpmで攪拌しながら3時間反応させた後、10%水酸化ナトリウム水溶液400mlに投入して反応を終結した。次に、上層の有機層を抽出し、未反応のデセンと副反応生成物としてのデセン異性体をストリッピングして除去することにより、デセンオリゴマーを製造した。
【0044】
2.オリゴマーの水素化処理および単蒸留分離
実施例1と同様にして行うが、実施例1とは異なり、製造されたオリゴマーに対して水素化処理を先に行った後、オリゴマーの単蒸留分離を行った。
【0045】
実施例3.メタロセン触媒を用いたオリゴマー製造-水素化処理後の単蒸留分離
1.オリゴマー化
実施例2と同様にして行った。
【0046】
2.オリゴマーの水素化処理および単蒸留分離
実施例2と同様にして行うが、オリゴマーの単蒸留分離の際に、実施例2とは異なり、0.45torrの圧力および260~290℃の温度範囲で減圧蒸留した。
【0047】
比較例1.陽イオン触媒を用いたオリゴマー製造-単蒸留分離後の水素化処理
実施例とは異なり、陽イオン触媒を用いて製造したデセンオリゴマーを製造した。
【0048】
これについて詳しく説明すると、まず、1Lのステンレス製オートクレーブ反応器にデセン135ml(100g)を投入した後、重合温度を10~20℃に維持した。続いて、反応器に、アルコール類と錯化した陽イオン触媒(ACl、BFなど)を0.8mmol/100gで投入した。その後、700rpmで攪拌しながら窒素雰囲気下で2時間反応させた後、80~90℃で希釈された水酸化アンモニウムを投入して反応を終結した。次に、上層の有機層を抽出し、未反応のデセンおよび副反応生成物としてのデセン異性体をストリッピングして除去することにより、デセンオリゴマーを製造した。製造されたオリゴマーの単蒸留分離およびデセンオリゴマーの水素化処理は、実施例1と同様にして行うが、単蒸留分離の際に160~220℃の温度で減圧蒸留した。
【0049】
比較例2.陽イオン触媒を用いたオリゴマー製造-水素化処理後の単蒸留分離
比較例1と同様にしてオリゴマーを製造した後、製造されたオリゴマーに対して比較例1と水素化処理を先に行った後、オリゴマーの単蒸留分離を行った。
【0050】
物性評価
実施例1~3および比較例1~2で製造されたアルファオレフィンオリゴマーの物性を次のとおりに測定した。
【0051】
1.分子量の測定
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析によって実施例1~3および比較例1~2のオリゴマーの分子量を測定し、その結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

2.粘度指数、流動点、引火点およびNoackの測定
実施例1~3および比較例1~2で製造されたアルファオレフィンオリゴマーに対するVI(粘度指数;ASTM D445)、流動点(ASTM D97)、引火点(ASTM D92)、臭素価およびNoack(ASTM D5800)の特性を測定し、その結果を表2に示した。
【0053】
【表2】

表2を参照して、実施例で製造されたアルファオレフィンオリゴマーの物性が比較例で製造されたアルファオレフィンオリゴマーよりも優れることを確認することができる。これは重合過程で形成されるアルファオレフィンの分子構造の違いに起因したと考えられる。
【0054】
つまり、実施例で製造されたオリゴマーは、異性化による3次水素のない低い分岐比の均一な分子構造を持っており、粘度指数、引火点、流動点およびNoackなどの物性が向上した。
【0055】
3.T 緩和時間の測定
BBOプローブが装着された500MHz NMR(Bruker AVANCE III)を用いて、実施例1~3および比較例1~2で製造されたオリゴマーの298KでのT緩和時間を測定した。具体的には、NMRチューブに0.1gのデセンオリゴマーと1mlの重水素溶媒(クロロホルム)を入れ、水素および炭素NMRスペクトル、DEPT(Distortion-less Enhanced by Polarization Transfer)、COSY(Correlation Sepctroscopy)、HSQC(Heteronuclear Single-Quantum Correlation Spectroscopy)およびHMBC(Heteronuclear Multiple-Bond Correlation Spectroscopy)を測定し、そのスペクトル結果を解析、総合して、各構造に対する炭素ピークを表3、測定されたT緩和時間を表4にそれぞれ示した。
【0056】
また、実施例1のアルファオレフィンオリゴマーのT緩和時間測定スペクトルを図2に示し、比較例1のアルファオレフィンオリゴマーのT緩和時間測定スペクトルを図3に示した。このとき、スペクトル結果は、T1IRPG(T1 Inversion Recovery Power Gated decoupling 2D Experiment)のパルスシーケンスを用いたものであり、τ(180°パルスと90°パルス間の時間)は、0.3~1.0秒、1.5~2.0秒まで(0.1秒間隔)である。
【0057】
【表3】

表3および表4を参照して、実施例1~3および比較例1~2で製造されたオリゴマーのT緩和時間を測定した結果を考察すると、実施例1~3または比較例1~2は互いに類似した結果を示す。
【0058】
また、末端鎖の端部分であるA1とA2は、実施例で製造されたオリゴマーが比較例で製造されたオリゴマーよりもさらに高い数値を示すことを確認することができる。これは鎖がさらに長く、末端基の運動性がさらに高いことを意味する。
【0059】
これとは逆に、B1、B2、B3の分子中心部分は、実施例で製造されたオリゴマーが比較例で製造されたオリゴマーよりもさらに低い数値を示す。これは、中心構造の炭素の運動性が低い、すなわち、さらに強固な形態を帯びていることを意味する。
【0060】
具体的には、100℃での動粘度が3.7~4.3cStの範囲であるオリゴマーの場合(実施例1および2)、B1位の炭素はNMRパルスシーケンスによって測定されたT緩和時間(T relaxation time)が1.0未満であり、B2およびB3位の炭素は0.6未満のT緩和時間(T relaxation time)を有し、また、A1位の炭素は2.4以上、A2位の炭素は2.2以上のT緩和時間を有することを確認することができる。
【0061】
100℃での動粘度が5.6~6.4cStの範囲であるオリゴマーの場合(実施例3)、B1位の炭素は0.85未満、B2およびB3位の炭素は0.55未満のT緩和時間を有し、また、A1およびA2位の炭素はそれぞれ2.4以上、2.2以上のT緩和時間を有することを確認することができる。
【0062】
4.分岐比
実施例1~3および比較例1~2で製造されたアルファオレフィンオリゴマーの構造的特性として、CH、CHの含有量に応じた分岐比(Branch ratio)を測定し、その結果を表5に示した。
【0063】
このとき、CHおよびCHのそれぞれの相対的含有量は、水素NMRで測定した。クロロホルム7.24ppmを基準にして、CHは0.95~1.60ppmの積分値、CHは0.75~0.95ppmの積分値で示した。さらに詳しくは、CHの積分値を1とする。
【0064】
分岐比値は、分子構造内のCH基の含有量をCH基の含有量で割った値であって、次の式のとおりである。
【0065】
分岐比=P1/P2 (1)
(P1はCH基の含有量を意味し、P2はCH基の含有量を意味し、前記CHおよびCH基の含有量はH-NMRで測定する。)
【0066】
【表4】

表5より、実施例で製造されたアルファオレフィンオリゴマーは、比較例で製造されたアルファオレフィンオリゴマーと対比してCH基に比べてCH基のモル比(mol ratio)が小さいことを確認することができた。これは分子構造内の分岐が少ないことを意味し、これは分岐比(branch ratio)によっても確認することができる。結論として、分子構造内の分岐が少ないにつれて相対的に酸化安定性に優れるうえ、高い粘度指数、低いか同様の流動点および低いNoackの発現によって物性が向上することを確認した。
図1
図2
図3