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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087327
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】炎検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/12 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
G08B17/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068019
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2018117983の分割
【原出願日】2018-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
(72)【発明者】
【氏名】奥山 克明
(72)【発明者】
【氏名】大森 慎樹
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 匡記
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史織
(72)【発明者】
【氏名】山田 知明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅
(57)【要約】
【課題】焦電作用と圧電作用をもつ炎検出センサの出力から燃焼炎を検出する炎検出装置において、受光出力から振動の影響を除去して確実な燃焼炎検出を可能とする。
【解決手段】炎検出ユニット12aは、燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを、焦電作用と圧電作用をもつ炎検出センサ16aで受光して、炎固有の波長帯を観測した炎受光信号E1を出力する。振動検出ユニット14は炎検出装置10に加わる振動を圧電作用をもつ振動センサ17で検出して振動検出信号Evを出力する。振動補正部36は、振動検出信号Ev’に基づき炎受光信号E1’を補正して振動信号成分を除去し、火災判断部38で補正された炎受光信号E1aにより燃焼炎の有無を検出して火災を判断する。火災判断制御部40は、振動検出信号が所定値以上の場合に火災判断部38に火災判断の禁止、保留又は火災判断結果の破棄を行わせ振動に起因した非火災報を防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測して燃焼炎の有無を判断し検出する炎検出装置であって、
前記燃焼炎から放射される前記赤外線エネルギーを炎検出センサで受光して所定の波長帯を観測した炎受光信号を出力する炎検出ユニットと、
前記炎検出装置に加わる振動を振動センサで検出して振動検出信号を出力する振動検出ユニットと、
前記振動検出ユニットから出力された前記振動検出信号に基づき、前記炎検出ユニットから出力された前記炎受光信号を補正する振動補正部と、
前記振動補正部で補正された前記炎受光信号により燃焼炎の有無を判断する火災判断部と、
前記振動検出信号が所定値以上又は前記所定値を超えた場合に前記火災判断部に火災判断の禁止、保留又は火災判断結果の破棄を行わせる火災判断制御部と、
を備え、
前記炎検出ユニット及び前記振動検出ユニットの各々は、
前記炎検出センサ及び前記振動センサの各々を構成する焦電素子と、
前記所定の波長帯の光を前記焦電素子に対し選択透過させる光学フィルタと、
を備えたパッケージ構成を有し、
前記振動検出ユニットは、前記焦電素子に対し光の入射を遮断するマスク部材が前記パッケージ構成の前方に配置されたことを特徴とする炎検出装置。
【請求項2】
燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測して燃焼炎の有無を判断し検出する炎検出装置であって、
前記燃焼炎から放射される前記赤外線エネルギーを炎検出センサで受光して所定の炎波長帯を観測した炎受光信号を出力する炎検出ユニットと、
前記燃焼炎以外から放射される前記赤外線エネルギーを非炎検出センサで受光して所定の非炎波長帯を観測した非炎受光信号を出力する1又は複数の非炎検出ユニットと、
前記炎検出装置に加わる振動を振動センサで検出して振動検出信号を出力する振動検出ユニットと、
前記振動検出ユニットから出力された前記振動検出信号に基づき、前記炎検出ユニットから出力された前記炎受光信号及び前記非炎検出ユニットから出力された前記非炎受光信号を補正する振動補正部と、
前記振動補正部で補正された前記炎受光信号及び前記非炎受光信号により燃焼炎の有無を判断する火災判断部と、
前記振動補正部により補正される前記炎受光信号が所定の補正限界に達した場合に、前記火災判断部に火災判断の禁止、保留又は火災判断結果の破棄を行わせる火災判断制御部と、
を備え、
前記炎検出ユニット、前記非炎検出ユニット及び前記振動検出ユニットの各々は、
前記炎検出センサ、非炎検出センサ及び前記振動センサの各々を構成する焦電素子と、
前記所定の炎波長帯又は前記所定の非炎波長帯の光を前記焦電素子に対し選択透過させる光学フィルタと、
を備えたパッケージ構成を有し、
前記振動検出ユニットは、前記焦電素子に対し光の入射を遮断するマスク部材が前記パッケージ構成の前方に配置されたことを特徴とする炎検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有炎燃焼時のCO2共鳴により発生する赤外線放射を検出して、炎の有無を判定する炎検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有炎燃焼により発生する赤外線エネルギーを検出して、炎の有無を検出する炎検出装置にあっては、有炎燃焼時に発生するCO2の共鳴放射波長帯域における放射線を検出して、炎の有無を検出する炎検出装置や炎検出方法がよく知られている。
【0003】
ここで、従来技術における炎検出装置について、簡単に説明する。
【0004】
図13は、燃焼炎と、その他の代表的な放射体の赤外波長域における放射線スペクトルを示す概念図であり、横軸は放射線の波長、縦軸は放射線の相対強度を示す。
【0005】
図13に示すように、燃焼炎のスペクトル特性100においては、CO2の共鳴放射により4.5μm付近の波長帯域に放射線相対強度のピークがある。
【0006】
なお、以下では、特に断らない限り、CO2共鳴放射帯とは、4.5μm帯を指すものとする。また、検出センサの受光素子(光電変換素子)としては例えば焦電体が利用されている。
【0007】
このように、従来の炎検出装置は、燃焼炎のCO2共鳴に伴って放射される4.5μm帯の赤外線を焦電体を用いた検出センサで電気信号に変換し、この電気信号から炎特有の
ちらつき周波数成分を抽出して炎の有無を判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭55-088125号公報
【特許文献2】特許第4014188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の炎検出装置に設けられた受光素子として利用する焦電体は、赤外線エネルギーを電気信号に変換する焦電作用に加え、振動エネルギーを電気信号に変換する圧電作用を示すことが知られており、本来は4.5μm付近となる炎からの赤外線光を受光して焦電作用により光電変換した電気信号に基づく受光信号を出力するものであるが、地震等により炎検出装置に振動が加わると、受光素子に圧電作用が働いて検出信号を出力してしまい、これにより誤って炎と判断して非火災報を出力する可能性がある。
【0010】
本発明は、焦電作用と圧電作用をもつ受光素子の受光信号から燃焼炎を検出する炎検出装置について、受光信号から振動の影響を除去して確実な燃焼炎検出を可能し、更に、大きな振動が加わった場合の非火災報を確実に防止する炎検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1波長方式の炎検出装置)
本発明は、燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測して燃焼炎の有無を判断し検出する炎検出装置であって、
燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを炎検出センサで受光して所定の波長帯を観測した炎受光信号を出力する炎検出ユニットと、
炎検出装置に加わる振動を振動センサで検出して振動検出信号を出力する振動検出ユニットと、
振動検出ユニットから出力された振動検出信号に基づき、炎検出ユニットから出力された炎受光信号を補正する振動補正部と、
振動補正部で補正された炎受光信号により燃焼炎の有無を判断する火災判断部と、
振動検出信号が所定値以上又は所定値を超えた場合に火災判断部に火災判断の禁止、保留又は火災判断結果の破棄を行わせる火災判断制御部と、
を備え、
炎検出ユニット及び振動検出ユニットの各々は、
炎検出センサ及び振動センサの各々を構成する焦電素子と、
所定の波長帯の光を焦電素子に対し選択透過させる光学フィルタと、
を備えたパッケージ構成を有し、
振動検出ユニットは、焦電素子に対し光の入射を遮断するマスク部材がパッケージ構成の前方に配置されたことを特徴とする。
【0012】
(多波長方式の炎検出装置)
本発明の他の形態にあっては、燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測して燃焼炎の有無を判断し検出する炎検出装置であって、
燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを炎検出センサで受光して所定の炎波長帯を観測した炎受光信号を出力する炎検出ユニットと、
燃焼炎以外から放射される赤外線エネルギーを非炎検出センサで受光して所定の非炎波長帯を観測した非炎受光信号を出力する1又は複数の非炎検出ユニットと、
炎検出装置に加わる振動を振動センサで検出して振動検出信号を出力する振動検出ユニットと、
振動検出ユニットから出力された振動検出信号に基づき、炎検出ユニットから出力された炎受光信号及び非炎検出ユニットから出力された非炎受光信号を補正する振動補正部と、
振動補正部で補正された炎受光信号及び非炎受光信号により燃焼炎の有無を判断する火災判断部と、
振動補正部により補正される炎受光信号が所定の補正限界に達した場合に、火災判断部に火災判断の禁止、保留又は火災判断結果の破棄を行わせる火災判断制御部と、
を備え、
炎検出ユニット、非炎検出ユニット及び振動検出ユニットの各々は、
炎検出センサ、非炎検出センサ及び振動センサの各々を構成する焦電素子と、
所定の炎波長帯又は所定の非炎波長帯の光を焦電素子に対し選択透過させる光学フィルタと、
を備えたパッケージ構成を有し、
振動検出ユニットは、焦電素子に対し光の入射を遮断するマスク部材がパッケージ構成の前方に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
(基本的な効果)
本発明は焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測して燃焼炎の有無を判断し検出する炎検出装置であって、燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを炎検出センサで受光して所定の波長帯を観測した炎受光信号を出力する炎検出ユニットと、炎検出装置に加わる
振動を振動センサで検出して振動検出信号を出力する振動検出ユニットと、振動検出ユニットから出力された振動検出信号に基づき、炎検出ユニットから出力された炎受光信号を補正する振動補正部と、振動補正部で補正された炎受光信号により燃焼炎の有無を検出して火災を判断する火災判断部と、振動検出信号が所定値以上又は所定値を超えた場合に火災判断部に火災判断の禁止、保留又は破棄を行わせる火災判断制御部とが設けられたため、地震等による振動が炎検出装置に加わって炎検出ユニットの炎検出センサから圧電作用による信号が出力された場合、同じ振動が振動検出ユニットの振動センサに加わることで振動検出信号が出力され、炎検出ユニットから出力された炎受光信号を補正して炎受光信号に含まれる振動信号成分を軽減または除去することができ、振動に伴って炎検出ユニットから出力された信号により誤って炎と判断して非火災報を出力してしまうことを確実に防止できる。
【0014】
また、炎検出装置に大きな振動が加わった場合には、振動検出信号が飽和し、炎受光信号を正しく補正できないことから、この場合は、火災判断を禁止するか、火災判断の結果を保留するか、又は、火災判断結果を採用せずに破棄することで、過大な振動により誤って非火災報が出力されることを確実に防止することができる。
【0015】
(振動補正演算の効果)
また、振動補正部は、振動検出ユニットから出力された振動検出信号に所定の係数を乗じて炎検出ユニットから出力された炎受光信号から減算することで、炎受光信号を補正するようにしたため、振動検出信号に乗じる係数は例えば、製造時に炎検出装置に所定の振動を加え、このときの炎受光信号と振動検出信号の相関に基づいて定める。すなわち例えば、このときの炎受光信号値に振動検出信号値を一致させるための比率を予め求めておくことで、簡単な演算により炎受光信号に含まれる振動信号成分を除去することができる。
【0016】
(多波長方式の炎検出装置による効果)
本発明の他の形態にあっては、燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測して燃焼炎の有無を判断し検出する炎検出装置であって、燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを炎検出センサで受光して所定の炎波長帯を観測した炎受光信号を出力する炎検出ユニットと、燃焼炎以外から放射される赤外線エネルギーを非炎検出センサで受光して所定の非炎波長帯を観測した非炎受光信号を出力する1又は複数の非炎検出ユニットと、炎検出装置に加わる振動を振動センサで検出して振動検出信号を出力する振動検出ユニットと、振動検出ユニットから出力された振動検出信号に基づき、炎検出ユニットから出力された炎受光信号及び非炎検出ユニットから出力された非受光信号を補正する振動補正部と、振動補正部で補正された炎受光信号及び非炎受光信号により燃焼炎の有無を検出して火災を判断する火災判断部と、振動補正部により補正される炎受光信号が所定の補正限界に達した場合に、火災判断部に火災判断結果の禁止、保留又は破棄を行わせる火災判断制御部とが設けられたため、CO2の共鳴放射帯である4.5μm帯の炎波長帯に対し長波長帯側の例えば5.0μm付近及び又は短波長側の例えば、2.3μm付近の非炎波長帯における赤外線エネルギーを検出して2波長帯域又は3波長帯域における各受光信号から炎を判断することで識別性能をさらに向上させた場合にも、1波長方式の場合と同様に、振動に伴って各検出ユニットから出力された信号により誤って炎と判断して非火災報を出力してしまうことを確実に防止でき、また、炎検出装置に大きな振動が加わった場合には、振動検出信号が飽和し、炎受光信号を正しく補正できないことから、この場合は、火災判断結果を禁止するか、火災判断結果を保留するか、又は、火災判断結果を採用せずに破棄することで、過大な振動により誤って非火災報が出力されることを確実に防止することができる。
【0017】
(非炎受光信号が補正限界での火災判断の効果)
また、火災判断制御部は、振動補正部による炎受光信号の補正は所定の補正限界に達しないが、非炎受光信号の補正が所定の補正限界に達した場合は、振動補正部で補正された炎受光信号により火災を判断するようにしたため、各検出ユニットに設けた検出センサの特性や物理配置(実装位置)によって振動の影響が異なり、これに応じて各検出ユニットの振動補正のための係数が異なっており、非炎受光信号が補正限界に達しても、炎受光信号が補正限界に達していない場合には、補正された炎受光信号のみにより火災を判断することで、火災判断の信頼性を向上可能とする。
【0018】
(振動補正演算と補正限界の効果)
また、振動補正部は、振動検出ユニットから出力された振動検出信号に炎検出ユニットに固有な所定の第1係数を乗じて炎検出ユニットから出力された炎受光信号から減算することで炎受光信号を補正し、振動検出信号に非炎検出ユニットに固有な所定の第2係数を乗じて非炎検出ユニットから出力された非炎受光信号から減算することで非炎受光信号を補正しており、火災判断制御部は、振動検出信号に第1係数を乗じた値又は振動検出信号に第2係数を乗じた値が所定の限界値以上又は限界値を超えた場合に、補正限界に達したと判断するようにしたため、予め求められた各検出ユニットに固有な振動補正のための係数とそのときの振動検出信号から、検出ユニット毎に、各炎受光信号が振動検出信号により補正可能かどうか判断することで、検出ユニット毎に振動の影響が異なっていても、各検出信号が補正限界に達しているかどうかを確実に判断することができる。
【0019】
(振動障害の判定と通知による効果)
また、火災判断制御部は、火災判断部に火災判断結果の禁止、保留又は破棄を行わせる回数が所定回数又は所定頻度に達した場合に振動障害を判定して受信装置に振動障害通知信号を送信するようにしたため、炎検出装置に振動が加わって障害状態となっていることが受信装置から報知され、炎検出装置の状態を正確に把握して適切な運用管理ができる。
【0020】
(振動検出解消後の判断条件緩和による火災判断の効果)
また、火災判断制御部は、火災判断部に火災判断結果の禁止、保留又は破棄を行わせた後に、振動検出信号が所定値以下又は所定値を下回った場合、火災判断部に火災判断の判断条件を緩和して火災を判断させるようにしたため、振動障害により正常な火災判断ができない間に火災が発生している可能性があり、振動の影響が解消された場合には、例えば、火災判断が所定回数以上続いて場合に火災を確定する判断条件が設定されているときには、火災判断の回数を減らすことで判断条件を緩和し、振動障害が解消した後に迅速な火災の確定を行って火災警報の作動遅れを防止する。
【0021】
(振動障害検知と自己試験の効果)
また、火災判断制御部は、振動検出信号が所定値以上又は所定値を超えた場合に、受信装置からの試験指示信号に基づく所定の自己試験を禁止し又は試験結果を破棄し、その後、振動検出信号が所定値以下又は所定値を下回った場合に受信装置からの試験指示信号を待たずに自己試験を行うようにしたため、振動障害中は、受信装置から指示があっても、火災擬似光となる試験光の照射による検出ユニットの減光率を検出する自己試験を行っても正しい減光率は得られないことから、自己試験は行わないようにし、振動障害が解消したら、受信装置からの指示がなくとも自己試験を実行して正しい減光率を速やか検出し、自己試験により検出された減光率による各受光信号の汚れ補正により炎検出装置の正常動作を保証する。
【0022】
(振動障害の通知と自己試験の効果)
また、火災判断制御部は、振動検出信号が所定値以上又は所定値を超えた状態で受信装置から試験指示信号を受信した場合は、自己試験が実施不可能であることを示す試験障害応答信号を受信装置に送信し、その後、振動検出信号が所定値以下又は所定値を下回った場合に受信装置に試験可能通知信号を送信して試験指示信号を送信させるようにしたため、受信装置から試験指示信号を受信しときに振動障害が発生した場合は、正しい減光率は得られないことから自己試験は行わずに試験障害応答信号を受信装置に送信して振動障害を報知させ、振動障害が解消したら試験可能通知信号を受信装置に送信することで試験指示信号の送信を再開させ、自己試験を実行して正しい減光率を速やかに検出し、自己試験により検出された減光率による各受光信号の汚れ補正により炎検出装置の正常動作を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】炎検出装置の実施形態を示したブロック図
図2】炎検出装置の外観を示した説明図
図3】炎検出センサの概略構成を示した説明図
図4図3の炎検出センサにおける受光素子部の等価回路を示した回路図
図5】燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測した場合に図1の受光ユニットから出力される受光信号を示した信号波形図
図6】燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測した場合に図1の受光ユニットから出力される受光信号の周波数分布を示した説明図
図7図1の炎検出装置の制御動作を示したフローチャート
図8図1の炎検出装置における自己試験制御を示したフローチャート
図9図1の炎検出装置における他の自己試験制御を示したフローチャート
図10】2波長方式となる炎検出装置の他の実施形態を示したブロック図
図11図10の実施形態に適用される光学波長フィルタ及び透光性窓の各波長における透過率を示した特性図
図12図10の炎検出装置の制御動作を示したフローチャート
図13】燃焼炎と、その他の代表的な放射体の放射線スペクトルを示した特性図
【発明を実施するための形態】
【0024】
[炎検出装置の概要]
(装置の概要)
図1は炎検出装置の実施形態を示したブロック図である。図1に示すように、本実施形態の炎検出装置10は、炎検出ユニット12a、振動検出ユニット14、MPU(マイクロ処理ユニット)15に設けられた振動補正部36、火災判断部38及び火災判断制御部40で構成される。
【0025】
炎検出ユニット12aは、監視領域に存在する燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測するものであり、大別して、燃焼炎からCO2共鳴により放射される、概ね4.5μmを中心波長とする波長帯の赤外線エネルギーを受光して光電変換し、炎受光信号E1を出力する。
【0026】
炎検出ユニット12aには、サファイアガラス等を用いた赤外線透光性窓18、炎検出センサ16a、前置フィルタ24a、プリアンプ26a、メインアンプ28aが設けられ、メインアンプ28aから出力された炎受光信号E1は終段アンプ30aを介して炎受光信号E1’となり、MPU15のA/D変換ポート35aでデジタル受光信号(説明の便宜上、このデジタル受光信号も「炎受光信号E1’」という)に変換して取り込まれる。
【0027】
以降、A/D変換前後で信号の記号を区別せず、変換後のデジタル信号も受光信号E1'として説明する。A/D変換によるサンプリングは、たとえば64Hzでおこない、1秒間に64点の受光信号データを得る。
【0028】
振動検出ユニット14は、地震等により炎検出装置10に加わる振動を電気信号に変換し、これを電気的に処理して振動検出信号Evを出力する。振動検出ユニット14には、振動センサ17、前置フィルタ24v、プリアンプ26v、メインアンプ28vが設けられ、メインアンプ28vから出力された振動検出信号Evは終段アンプ30vを介して、振動検出信号Ev’としてMPU15のA/D変換ポート35vでデジタル受光信号に変換して取り込まれる。
【0029】
こちらも、A/D変換前後で信号の記号を区別せず、以降、変換後のデジタル信号も振動検出信号Ev'として説明する。A/D変換によるサンプリングは、たとえば64Hzでおこない、1秒間に64点の振動検出信号データを得る。
【0030】
振動補正部36は、振動検出信号Ev’に基づき、炎受光信号E1'を補正して、受光信号E1'に含まれる振動信号成分を除去した炎受光信号E1aを出力する。
【0031】
火災判断部38は、振動補正部36で振動信号成分が除去された炎受光信号E1aに基づき、監視範囲の燃焼炎の有無を判断して検出する。
【0032】
火災判断制御部40は、振動検出信号Ev’が所定値以上又は所定値を超えた場合に火災判断部38に火災判断の禁止、保留又は火災判断結果の破棄を行わせる。
【0033】
また、火災判断制御部40は、火災判断部38に火災判断の禁止、保留又は火災判断結果の破棄を行わせる回数が所定回数又は所定頻度に達した場合に振動障害を判定して、図示しない受信装置として機能する火災受信盤に振動障害通知信号を送信する。
【0034】
また、火災判断制御部40は、火災判断部38に火災判断の禁止、保留又は火災判断結果の破棄を行わせた後に、振動検出信号Ev’が所定値以下又は所定値を下回った場合、火災判断部38に火災判断の判断条件を緩和して早期に火災を判断させる。
【0035】
更に、火災判断制御部40は、振動検出信号Ev’が所定値以上又は所定値を超えた場合に、火災受信盤からの試験指示信号を受信したときに検出センサの減光率を検出するための自己試験を行わず、振動検出信号Ev’が所定値以下又は所定値を下回った場合に自己試験を行う。
【0036】
(装置外観と受光ユニット、振動検出ユニット)
図2は炎検出装置の外観を示した説明図である。図2に示すように、炎検出装置10は、天井面や壁面の取付ベースに取り付けられる本体50の下部に設けられたカバー52の監視範囲側の面に透光性窓18を設け、透光性窓18の内部に配置された基板56に、図1に示した炎検出ユニット12aの炎検出センサ16aと振動検出ユニット14の振動センサ17を配置している。
【0037】
また、透光性窓18の近傍には、内部の検出センサを見通せる位置に、試験光源として試験ランプ42を収納した試験光源収納部43を設けている。試験光源収納部43には、試験ランプ42からの試験光を透過する試験用透光性窓44を配している。試験時に試験ランプ42から発した試験光は、試験用透光性窓44、透光性窓18を透過して炎検出センサ16aで受光される。このときの炎受光信号に基づき、炎検出センサ16aの故障有無や透光性窓18の汚れによる減光率を検出して炎受光信号の汚れ補正するための自己試験を行う。
【0038】
(受光ユニットの構成)
(炎検出ユニット12aの構成)
図1に示した炎検出ユニット12aにおいて、炎検出センサ16aは燃焼炎からCO2共鳴により放射される、概ね4.5μmを中心波長とする波長帯域の赤外線エネルギーを受光し電気信号に変換して出力し、前置フィルタ24aは炎検出センサ16aから出力される炎受光信号から、炎の揺らぎ周波数に対応した所定の周波数帯域の信号成分のみを選択通過させ、プリアンプ26aは前置フィルタ24aを通過した信号成分を初段増幅し、メインアンプ28aで増幅して炎受光信号E1を出力する。
【0039】
ここで、炎検出センサ16aは、サファイアガラス等の赤外線透光性の部材を用いた透光性窓18、光学波長フィルタ20a、及び受光素子部22aを備えている。
【0040】
炎検出ユニット12aから終段アンプ30aを介して出力された炎受光信号E1’は、MPU15に設けたA/D変換ポート35aによりデジタル受光信号E1’に変換して読み込まれ、火災判断部38による炎有無の判断が実行される。
【0041】
(炎検出センサ16a)
図3は炎検出センサの概略構成を示した説明図、図4図3の炎検出センサにおける受光素子部の等価回路を示した回路図である。
【0042】
図3に示すように、炎検出センサ16aは、基板46の表面に支持配置された焦電体25を備え、これに受光電極25を設け、基板46の裏面側に配置されたFET27を備えてなる受光素子部22aと、基板46を基部47上に支持しつつ基部47を貫通して設けられた端子48と、受光素子部22aの前方(図示上方)にバンドパスフィルタである光学波長フィルタ20aを備えたカバー部材49とからなるパッケージ構成を有している。
【0043】
また、受光部22aの等価回路は、図4に示すように、FET27のゲートから例えば焦電体25と高抵抗29の並列回路を介してゲート端子Gに接続し、またFET27のドレインとソースをそれぞれドレイン端子Dとソース端子Sに接続している。
【0044】
ここで、光学波長フィルタ20aは、CO2共鳴放射帯の波長を選択透過させるもので、例えば、シリコン、サファイア等の基板上に、公知の方法でそれぞれ形成することができる。
【0045】
(透光性窓18)
透光性窓18は、図2に示したように、カバー52の、炎検出センサ16aの前面側に設けた所定の開口部に配置され、例えば、サファイアガラス等の赤外線透光性の部材により形成している。このため受光素子部22aについて、受光限界視野が透光性窓18の縁辺部で規制されつつ、それぞれ所定の拡がり角度を有する視野範囲の検知エリアが設定される。
【0046】
ここで、透光性窓18を構成するサファイアガラスは、概ね7.0μm付近以下の波長帯域の放射線を良好に透過するショートウェーブパス特性、換言すれば、概ね7.0μm付近より長波長の放射線を遮断するロングウェーブカット特性を有するフィルタ部材として機能する。
【0047】
(前置フィルタ24a)
図1の炎検出ユニット12aの前置フィルタ24aは、周波数選択部として機能し、炎検出センサ16aの受光素子部22aから出力される受光信号から、炎判断処理に用いられる特定の周波数帯域の信号成分のみを通過させる例えばアクティブフィルタであり、後段のプリアンプ26aに特定の周波数帯域の信号成分を含む受光信号を出力する。
【0048】
(プリアンプ26aとメインアンプ28a)
プリアンプ26aは、前置フィルタ24aを介して入力される受光信号を所定の増幅率で初段増幅し、メインアンプ28a、終段アンプ30aは、プリアンプ26aからの受光信号を、後述する炎判断処理に適した信号レベルに増幅し、炎受光信号E1(或いは炎受光信号E1’)として出力する。
【0049】
(振動検出ユニット14の構成)
図1に示した振動検出ユニット14において、振動センサ17は、炎検出装置10に加わる振動エネルギーを圧電作用により電気信号に変換して出力し、前置フィルタ24vは振動センサ17から出力される振動検出信号から、所定の周波数帯域の信号成分のみを通過させ、プリアンプ26vは前置フィルタ24vを通過した信号成分を初段増幅し、メインアンプ28vはこれを増幅して振動検出信号Evを出力する。さらに、終段アンプ30vは振動検出信号Evを増幅して振動検出信号Ev’を出力する。
【0050】
ここで、振動センサ17は、炎検出ユニット12aに設けた炎検出センサ16aと同じ構成の焦電センサであり、光学波長フィルタ20v、及び第2の焦電素子である振動検出素子部22vを備えている。
【0051】
振動検出ユニット14から終段アンプ30vを介して出力された振動検出信号Ev’は、MPU15に設けたA/D変換ポート35vによりデジタル信号に変換して読み込まれ、これに基づき振動補正部36による炎受光信号E1’の振動補正が実行される。以下、各構成について具体的に説明する。
【0052】
(振動検出ユニット14の振動センサ17)
振動検出ユニット14の振動センサ17は、図3に示した炎検出センサ16aと同じ構成であり、振動センサ17における振動検出素子部22vの等価回路も図4に示した炎検出センサ16aにおける受光素子部22aの等価回路と同じになる。
【0053】
(透光性窓18とマスク部材41)
振動センサ17に設けられた透光性窓18と光学波長フィルタ20vの間にはマスク部材41が配置されており、透光性窓18を通った外からの光をマスク部材41で遮り、振動センサ17で受けないようにしている。
【0054】
このため振動センサ17に設けられた焦電体は圧電作用のみにより振動エネルギーを電気信号に変換して出力する。
【0055】
なお、マスク部材41は、カバー52と一体に設けても良いし、カバー52の一部をマスク部材41としても良い。或いは、マスク部材41は、振動センサ(焦電センサ)のカバー部材とし、すなわち光学波長フィルタを取り除き、カバー部材の開口を塞ぐようにしても良い。
【0056】
(振動検出ニット14の前置フィルタ24v)
前置フィルタ24vは、炎検出ユニット12aの前置フィルタ24aと同じであり、振動センサ17の振動検出素子部22vから出力される振動検出信号から、振動補正に用いられる特定の周波数帯域の信号成分のみを通過させる例えばアクティブフィルタであり、後段のプリアンプ26vに特定の周波数帯域の信号成分を含む振動検出信号を出力する。
【0057】
前置フィルタ24vで通過させる信号周波数帯域、またその通過特性を、前置フィルタ24aと同じにすることにより、炎検出装置10に振動が加わったときに受光素子部22aからの出力に基づく炎受光信号E1(或いはE1’)と、このときの振動検出素子部22vからの出力に基づく振動検出信号Ev(或いはEv’)の信号波形を概ね相似とすることができ、振動補正を容易にすることができる。
【0058】
(振動検出ユニット14のプリアンプ26vとメインアンプ28v)
プリアンプ26vは、前置フィルタ24vを介して入力される振動検出信号を所定の増幅率で初段増幅し、メインアンプ28vは、プリアンプ26vからの各受光信号を増幅し、振動検出信号Evとして出力する。
【0059】
[MPU15による振動補正と炎判断]
MPU15は、ハードウェアとして、CPU、メモリ、A/D変換ポート35a,35vを含む各種の入出力ポート等を備え、振動補正部36、火災判断部38及び火災判断制御部40は、CPUによるプログラムの実行により実現される機能である。
【0060】
(振動補正部36)
振動補正部36は、振動検出ユニット14から出力された振動検出信号Ev’により炎検出ユニット12aから出力された炎受光信号E1’を補正して振動信号成分を除去した炎受光信号E1aを出力する。
【0061】
具体的には、振動補正部36は、振動検出ユニット14から出力された振動検出信号Ev’に所定の係数K1(第1係数)を乗じて、炎検出ユニット12aから出力された炎受光信号E1’からこれを減算することで、振動信号成分を除去した炎受光信号E1aを
E1a=E1’-K1・Ev’ (式1)
として出力する。
【0062】
ここで、振動検出信号Ev’に乗じる係数K1は、炎検出センサ16aの受光素子部22aに外部から光が入らないように透光性窓18を遮光した状態で、例えば炎検出装置10に炎のゆらぎ周波数帯の所定周波数の振動を加え、このときの受光素子部22a及び振動検出素子部22vから圧電作用のみによる振動検出信号を出力させる。
【0063】
このとき炎検出ユニット12aから終段アンプ30aを通して出力される信号をE1tとし、振動検出ユニット14から終段アンプ30vを通して出力される信号をEvtとしたときに、
E1t=K1・Evtとなるように比率を係数K1として設定すれば、(式1)により振動信号成分を除去できる。
すなわち係数K1は、
K1=E1t/Evt
として設定することができる。係数K1はあらかじめMPU15のメモリに記憶させておき、振動補正部36で必要に応じ読み出して補正を実行する。
【0064】
また、振動のみにより炎検出ユニット12a及び振動検出ユニット14の各々から出力される信号は、振動が大きくなると飽和することから、例えば震度5強といった地震時の揺れに対しても信号が飽和しないように、プリアンプ26a,26v及びメインアンプ28a,28v、終段アンプ30a,30vによる増幅率を設定するのが好ましい。
【0065】
(火災判断部38)
火災判断部38は、振動補正部36で振動信号成分が除去された炎受光信号E1aを所定時間単位に取り込み、炎受光信号E1aの信号振幅に対する時間積分処理を行い、積分値ΣE1を算出する。
【0066】
図5は燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測した場合に図1の受光ユニットから出力される炎受光信号E1’を示した信号波形図である。振動時に焦電センサの圧電作用によって出力される炎受光信号E1’も、これと類似の信号波形を呈するため、非火災報の原因となる。同様にして、振動時に焦電センサの圧電作用によって出力される振動検
出信号Ev’もまた類似の信号波形を呈するので、これに基づき炎受光信号E1’を補正して非火災報を回避する。
【0067】
判断部38は、図5に示す炎受光信号E1’から振動に基づく信号成分が除去された炎受光信号E1aをT=2秒単位(128点の受光信号データ単位)ごとに取込み、受光信号E1aの基準電位からの差分の絶対値となる積分値ΣE1aを求める。
【0068】
次いで、判断部38は、積分値ΣE1aが、予め設定された閾値以下の場合には、炎に相当する受光出力が検出されなかったものと判断し、一方、積分値ΣE1aが閾値を超えた場合には、炎有り判断の第1要素とする。
【0069】
また、火災判断部38は、T=2秒間分ごとに取込んだ炎受光信号E1aを高速フーリエ変換して分析し、8Hz以下の周波数帯域の周波数分布が所定条件を満たす場合に炎有り判断の第2要素とし、第1要素とあわせて複合的な炎有無判断を行う。
【0070】
図6は、燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを観測した場合出力される受光信号E1aの周波数分布を示した説明図である。火災判断部38は、E1’が振動補正された受光信号E1aをT=2秒単位(128点単位)に取込み、高速フーリエ変換により図6に示す周波数分布を得る。
【0071】
図6に示すように、燃焼炎から放射される赤外線エネルギーを周波数軸で観測すると、概ね8Hzよりも低周波側に高い出力レベルを示す周波数分布が得られることから、実質的な炎のちらつき周波数が8Hzまでの周波数帯域FLに存在し、8Hzを超える例えば16Hzまでの高周波側の周波数帯域FHは低いレベルを示す。
【0072】
このため、受光信号E1aの周波数分布に基づく炎判断は、例えば8Hzまでの範囲となる低周波側FLの相対強度の積分値ΣFLおよび高周波側FHの相対強度の積分値ΣFHを求め、この積分値の相対比ΣFL/ΣFHが、予め設定された閾値以下の場合には、炎に相当する受光出力が検出されなかったものと判断し、一方、閾値を超えた場合には、炎有り判断の第2要素とする。
【0073】
そして、火災判断部38は、2秒単位で取り込んだ炎受光信号E1aの積分値による炎有り判断の第1要素と、炎受光信号E1aの周波数分布による炎有り判断の第2要素の両方が成立し、且つ、所定回数連続した場合に炎との判断を確定して火災検出信号を外部に出力する。
【0074】
[振動検出に基づく火災判断制御]
(過大振動に対する火災判断の禁止)
図1のMPU15に設けられた火災判断制御部40は、振動検出ユニット14から出力された振動検出信号Ev’が予め定めた閾値Evth以下である場合又は閾値Evthを下回っている場合は、火災判断部38に、振動補正部36により補正された炎受光信号E1aを用いた、積分値ΣEaに基づく炎有無の判断(第1要素)と、フーリエ変換による周波数解析に基づく炎有無の判断(第2要素)を行わせるが、振動検出信号Ev’が閾値Evth以上又は閾値Evthを超えた場合には、火災判断部38による火災判断の制御を禁止させる制御を行う。この場合、火災判断制御部40は、火災判断部38による判断制御を保留しても良いし、判断が行われても判断結果を採用せずに破棄するようにしても良い。
【0075】
これは炎検出装置10に大きな振動が加わった場合には、例えば、炎受光信号E’或いは振動検出信号Ev’が飽和し、炎受光信号E1’から振動成分を除去する補正が正しくできないことから、この場合は、火災判断部38による火災判断を禁止するか、火災判断の結果を保留するか、又は、火災判断結果を採用せずに破棄することで、過大な振動により誤った火災判断、即ち非火災報が出力されることを防止する。
【0076】
本実施形態で火災判断制御部40は、振動検出信号Ev’が閾値Evth以上又は超えた場合に火災判断部38により火災判断を禁止させているが、前記(式1)の炎受光信号E1’から減算する振動成分(K1・Ev’)を算出し、振動成分(K1・Ev’)が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に補正限界に達したと判断し、火災判断部38により火災判断を禁止させるようにしても良い。
【0077】
また、火災判断制御部40は、振動検出信号Ev’が閾値Evth以上又はこれを超えた回数を計数しており、所定回数に達した場合に、振動障害を判定し、振動障害検出信号を受信装置である火災受信盤に送信する制御を行う。
【0078】
また、火災判断制御部40は、閾値Evth以上又はこれを超えていた振動検出信号Ev’が、後に低下して振動障害が解消した(つまり、振動検出信号Ev’が閾値Evth以下又は閾値Evthを下回るようになり)後に火災判断部38による火災判断が行われる場合には、炎有りの判断条件を一時的に緩和させる制御を行う。
【0079】
火災判断部38は、T=2秒単位で取り込んだ炎受光信号E1aの積分値ΣEaによる炎有り判断の第1要素と、炎受光信号E1aの周波数分布による炎有り判断の第2要素の両方が成立し、且つ、例えばこれが所定回数連続した場合に炎との判断を確定(炎有りと断定)して火災検出信号を外部に出力するようにしているが、振動障害が解消した直後は、炎有りの第1要素と第2要素の両方が連続成立する要件回数、即ち回数閾値を低下させることで判断条件を緩和させる制御を行う。
【0080】
このため振動障害中に火災が発生していた場合、振動障害が解消した直後は判断条件が緩和されることで、迅速な火災の確定を行って火災信号を出力することができ、作動遅れを防止することができる。
【0081】
(炎検出装置の制御動作)
図7図1の炎検出装置の制御動作を示したフローチャートであり、MPU15による制御動作となる。
【0082】
図7に示すように、MPU15はステップS1に示すように、T=2秒周期で炎受光信号E1’と振動検出信号Ev’を読込み、ステップS2で例えば振幅ピーク平均として求めた振動検出信号Ev’を所定の閾値Evthと比較し、閾値Evth未満であればステップS5に進み、前記(式1)による補正演算を行って振動成分(K1・Ev’)が除去されることで補正された炎受光信号E1aを求め、ステップS6に進み、受光信号E1aの積分値ΣEaによる炎有り判断の第1要素と、炎受光信号E1aの周波数分布による炎有り判断の第2要素の両方が成立したかどうかの火災判断を行い、振動障害の解消直後ではないことからステップS8をスキップしてステップS9に進み、第1要素と第2要素の両方の連続した成立回数が所定回数に達したことを判別すると、ステップS10に進んで火災検出信号を火災受信盤に送信して火災警報を出力させる。
【0083】
一方、MPU15はステップS2で振動検出信号Ev’が閾値Evth以上であることを判別するとステップS3に進み、閾値Evth以上となる回数が所定値以上か否か判別し、ステップS6の火災判断を行うことなくステップS1、S2の処理を繰り返し、ステップS3で所定の回数閾値以上が判別されるとステップS4に進んで振動障害を判定し、振動障害検出信号を火災受信盤に送信する。
【0084】
また、MPU15はステップS4で振動障害が判定された後に、ステップS2で振動検出信号Ev’が閾値Evth未満に低下して振動障害が解消された場合には、ステップS4’で振動障害の復旧を火災受信盤へ通知したうえ、ステップS5~S6で振動補正された炎受光信号E1aに基づく火災判断を行った後、ステップS7で振動障害の解消直後であることを判別してステップS8に進み、炎有りから火災を判断する炎有り判断の第1要素と第2要素の両方の連続成立要件回数を減少させる、つまり回数閾値を一時的に小さく変更することで判断条件を緩和し、ステップS9で火災判断回数が変更後の回数閾値に達したことを判別するとステップS10に進み、火災と断定し、火災受信盤に火災検出信号を送信して火災警報の作動遅れを防止する。
【0085】
変更後の回数閾値は、例えば所定時間経過後に変更前の回数閾値へ戻す。なお、このように連続成立回数をカウントし、カウント数が閾値に達するまで火災断定を猶予することを「蓄積」という。カウント数は「蓄積回数」という。
【0086】
[振動障害と自己試験]
(自己試験)
本実施形態の炎検出装置10は炎の監視機能を維持するために、透光性窓18の汚れをチェックする自己試験を行っている。透光性窓18の汚れをチェックする自己試験は、火災受信盤から定期的に送信される試験指示信号を受信した場合に、炎検出装置10に設けられた試験ランプ42から炎模擬光となる試験光を透光性窓18に入射し、炎検出センサ16aで受光して、このときの炎受光信号E1’を、透光性窓18が汚れていない初期状態と比較演算して減光率を求め、減光率が所定の汚れ閾値を超えた場合に汚れ警報信号を火災受信盤に送信して汚れ警報を出力させている。
【0087】
(自己試験制御の第1実施形態)
図1のMPU15に設けられた火災判断制御部40は、振動検出信号Ev’が閾値Evth値以上又はこれを超えた場合に、火災受信盤からの試験指示信号に基づく自己試験を禁止するか、又は試験結果を採用せずに破棄し、その後、振動検出信号Ev’が閾値Evth以下又はこれを下回った場合に火災受信盤からの試験指示信号を待たずに自己試験を行う。
【0088】
図8図1の炎検出装置における自己試験制御の第1実施形態を示したフローチャートであり、MPU15による制御となる。図8に示すように、MPU15はステップS21で火災受信盤からの試験指示信号の受信を判別するとステップS22に進み、振動検出信号Ev’が閾値Evth以上でなければ振動障害中でないことからステップS23に進んで自己試験を行う。
【0089】
一方、MPU15はステップS22で振動検出信号Ev’が閾値Evth以上であれば振動障害中を判別して自己試験を実施しない。一方、ステップS21で火災受信盤からの試験指示信号を受信しない場合も、ステップS24で振動障害の解消を判別するとステップS23に進み、自己試験を行う。すなわち、本実施形態においては、一旦振動障害となった後に振動障害が解消されると、火災受信盤からの試験指示信号を待つことなく自己試験を行う動作制御となる。振動障害解消後の自己試験を一度行うと、振動障害の発生と解消をクリアして、ステップS21から始まる処理へ戻る。
【0090】
(自己試験制御の第2実施形態)
図1のMPU15に設けられた火災判断制御部40は、振動検出信号Ev’が閾値Evth以上又はこれを超えた状態で火災受信盤から試験指示信号を受信した場合は、自己試験が実施不可能であることを示す試験障害応答信号を火災受信盤に送信し、その後、振動検出信号Ev’が閾値Evth以下又はこれを下回った場合に火災受信盤に試験可能通知信号を送信して試験指示信号を送信させる制御を行う。
【0091】
図9図1の炎検出装置における自己試験制御の第2実施形態を示したフローチャートであり、MPU15による制御となる。図9に示すように、MPU15はステップS31で火災受信盤からの試験指示信号の受信を判別するとステップS32に進み、振動検出信号Ev’が閾値Evth以上でなければ振動障害中でないことからステップS33に進んで自己試験を行う。
【0092】
一方、MPU15はステップS32で振動検出信号Ev’が閾値Evth以上であれば振動障害中を判別してステップS34で火災受信盤へ振動障害応答信号を送信し、自己試験ができないことを通知する。
【0093】
続いて、MPU15は、ステップS35で振動障害の解消を監視しており、ステップS35で振動障害の解消を判別するとステップS36に進み、試験可能通知信号を火災受信盤に送信し、火災受信盤から試験指示信号を送信させ、これに基づき自己試験を行うことになる。
【0094】
[2波長式の炎検出装置]
(炎検出ユニット12a,非火災検出ユニット12b)
図10は2波長方式としての炎検出装置の実施形態を示したブロック図である。図10に示すように、本実施形態による2波長方式の炎検出装置10は、図1の炎検出ユニット12a及び振動検出ユニット14に加え、新たに概ね5.0μm~7.0μmの波長帯域の赤外線エネルギーを電気信号に変換した受光信号E2’を出力する非炎検出ユニット12bが設けられる。
【0095】
炎検出ユニット12aは、図1の実施形態と同じであり、燃焼炎からCO2共鳴により放射される、概ね4.5μmを中心波長とする波長帯域の赤外線エネルギーを観測して受光信号E2を出力する。
【0096】
振動検出ユニット14は、図1の実施形態と同じであり、地震等により炎検出装置10に加わる振動を電気信号に変換し、これを電気的に処理して振動検出信号Evを出力する。
【0097】
炎検出ユニット12aからの炎受光信号E1、非炎検出ユニット12bからの非炎受光信号E2、及び振動検出ユニット14からの振動検出信号Evは、それぞれ終段アンプ30a,30b,30vで増幅されてE1’,E2’,Ev’となり、MPU15に設けたA/D変換ポート35a,35b,35vの各々でデジタル信号に変換され、MPU15に取り込まれている。なお、説明の便宜上、このデジタル信号も炎受光信号E1’、非炎受光信号E2’及び振動検出信号Ev’という。
【0098】
(非炎検出ユニット12b)
非炎検出ユニット12bは、炎検出センサ16aとは異なる所定の波長帯域を有する赤外線エネルギーを電気信号に変換して出力する非炎検出センサ16bを備える。即ち、炎検出ユニット12aは、燃焼炎からCO2共鳴により放射される、概ね4.5μmを中心波長とする波長帯域の赤外線エネルギーを電気信号に変換し炎受光信号E1を出力するのに対し、非炎検出ユニット12bは、本実施形態においては概ね5.0μm~7.0μmの波長帯域の赤外線エネルギーを電気信号に変換した受光信号E2を出力する。
【0099】
また、非炎検出ユニット12bは、非炎検出センサ16bに続いて、非炎検出センサ16bから出力される非炎受光信号から、所定の周波数帯域の信号成分のみを通過させる前置フィルタ24bと、前置フィルタ24bを通過した信号成分を初段増幅するプリアンプ26bと、プリアンプ26bからの出力を増幅するメインアンプ28bとで構成される。非炎検出ユニット12bのメインアンプ28bから出力された非炎受光信号E2は、終段アンプ30bを介して、MPU15のA/D変換ポート35bへ入力され、デジタル受光信号に変換して非炎受光信号E2'として読み込まれ、炎の判断処理に用いられる。
【0100】
(非炎検出センサ16bの構成)
非炎検出センサ16bは、5.0μm~7.0μmの波長帯域の放射線を良好に透過する光学波長フィルタ20bと、光学波長フィルタ20bを透過した光を受光して電気信号に変換して出力する、図4の受光素子部22aと同様の等価回路でなる受光素子部22bを備え、図3に示した炎検出センサ16aと同様な構造により、パッケージ化された構成とする。
【0101】
(炎検出センサ16aと非炎検出センサ16bの波長透過特性)
図11は、図10の実施形態に適用される光学波長フィルタ及び透光性窓の各波長における透過率を示した特性図である。
【0102】
図11に示すように、図10の透光性窓18であるサファイアガラスにより、概ね7.0μm付近以下の放射線が良好に透過するショートウェーブパス特性(又は、ロングウェーブカット特性)を有する透過率特性70が得られる。そして、概ね4.5μm付近を中心透過波長とするバンドパスフィルタである光学波長フィルタ20aにより、当該中心波長近傍の波長帯域の赤外線エネルギーを透過する透過率特性72が得られる。透過率特性70と透過率特性72の組合せにより、合成透過特性74をもつバンドパスフィルタが構成され、炎検出センサ16aの受光素子部22aは結果的に、合成透過特性74をもつバンドパスフィルタを透過した赤外線を受光することになる。
【0103】
一方、透光性窓18であるサファイアガラスの透過率特性70と、5.0μm付近をカットオン波長とするロングパスフィルタである光学波長フィルタ20bの透過率特性76の組合せにより、概ね5.0μm~7.0μmの波長帯域の赤外線エネルギーを透過する合成透過特性78をもつ広帯域バンドパスフィルタが構成され、非炎検出センサ16bの受光素子部22bは結果的に、合成透過特性78をもつバンドパスフィルタを透過した赤外線を受光することになる。
【0104】
ここで、非炎検出センサ16bの視野は、炎検出センサ16aの視野、すなわち炎検出装置10が対象規模の炎を検出できる有効視野を包含するようにする。
【0105】
[MPU15による振動補正と炎判断]
MPU15は、ハードウェアとして、CPU、メモリ、A/D変換ポート35a,35b,35vを含む各種の入出力ポート等を備え、振動補正部36、火災判断部38及び火災判断制御部40は、CPUによるプログラムの実行により実現される機能である。
【0106】
(振動補正部36)
振動補正部36は、振動検出ユニット14から出力された振動検出信号Ev’に基づき、炎検出ユニット12aから出力された炎受光信号E1’を補正して振動信号成分を除去した炎受光信号E1aを出力する。
【0107】
具体的には、振動補正部36は、振動検出ユニット14から出力された振動検出信号Ev’に炎検出ユニット12aに固有な所定の係数K1(第1係数)を乗じて、炎検出ユニット12aから出力された炎受光信号E1’からこれを減算することで、振動信号成分を除去した炎受光信号E1aを
E1a=E1’-K1・Ev’・・・(式1)
として出力する。
【0108】
また、振動補正部36は、振動検出ユニット14から出力された振動検出信号Ev’に基づき、非炎検出ユニット12bから出力された非炎受光信号E2’を補正して振動信号成分を除去した非炎受光信号E2aを出力する。
【0109】
具体的には、振動補正部36は、振動検出ユニット14から出力された振動検出信号Ev ’に、非炎検出ユニット12bに固有な所定の係数K2(第2係数)を乗じて、非炎検出ユニット12bから出力された非炎受光信号E2’からこれを減算することで、振動信号成分を除去した非炎受光信号E2aを
E2a=E2’-K2・Ev’・・・(式2)
として出力する。
【0110】
ここで、係数K1,K2は、炎検出センサ16a、非炎検出センサ16bに外部から光が入らないように透光性窓18を遮光した状態で、例えば炎検出装置10に炎のゆらぎ周波数帯の所定周波数の振動を加え、このときの受光素子部22a、22b及び振動検出素子部22vから圧電作用による振動検出信号を出力させる。
【0111】
このとき炎検出ユニット12aから終段アンプ30aを通して出力される信号をE1tとし、同様に、このとき振動検出ユニット14から終段アンプ30vを通して出力される信号をEvtとしたときに、
E1t=K1・Evt
となるように比率を係数K1として設定すれば、(式1)により振動信号成分を除去できる。
すなわち係数K1は、
K1=E1t/Evt
として設定することができる。
【0112】
また同様に、透光性窓18を遮光した状態で、例えば炎検出装置10に炎のゆらぎ周波数帯の所定周波数の振動を加えたときに非炎検出ユニット12bから終段アンプ30bを通して出力される信号をE2tとし、振動検出ユニット14から終段アンプ30vを通して出力される信号をEvtとしたときに、
E2t=K2・Evt
となるように比率を係数K2として設定すれば、(式2)により振動信号成分を除去できる。
すなわち係数K2は、
K2=E2t/Evt
として設定することができる。
【0113】
係数K1、K2はあらかじめMPU15のメモリに記憶させておき、必要に応じ振動補正部36で読み出して補正を実行する。
【0114】
また、振動のみにより炎検出ユニット12a、非炎検出ユニット12b及び振動検出ユニット14の各々から出力される信号は、振動が大きくなると飽和することから、例えば震度5強といった地震時の揺れに対しても信号が飽和しないように、プリアンプ26a,26b,26v及びメインアンプ28a,28b,28v、終段アンプ30a,30b,30vによる増幅率を設定するのが好ましい。
【0115】
(火災判断部38)
MPU15に設けられた火災判断部38は、振動補正部36で振動信号成分が除去された炎受光信号E1aと非炎受光信号E2aを所定時間単位に取り込み(例えば1/64秒単位)、炎受光信号E1aと非炎受光信号E2aの各々について信号振幅(基準電位からの差分の絶対値)の時間積分処理を行い(例えば2秒間の積分)、積分値ΣE1a,ΣE2a'を算出する。ここで、積分値ΣE1a,ΣE2aは、便宜上、炎積分値ΣE1a,非炎積分値ΣE2aとして区別する。
【0116】
次いで、火災判断部38は、炎積分値ΣE1aが、予め設定された基準レベル以下の場合には、炎に相当する受光出力が検出されなかったものと判断し、一方、炎積分値ΣE1aが基準レベルを超えた場合には、非炎積分値ΣE2aとの相対比(ΣE1a/ΣEa2)を算出し、相対比(ΣE1a/ΣE2a)が、予め設定された閾値を超えた場合は、炎と判定して炎有り判断の第1要素とし、閾値以下の場合には、例えば、人体等の炎以外の比較的低温の放射線源による受光出力があったものとして、続く炎判断は抑止して行わない。
【0117】
また、火災判断部38は、振動補正部36で振動信号成分が除去された炎受光信号E1aと非炎受光信号E2aを所定時間単位に取り込んで高速フーリエ変換して分析し、8Hz以下の周波数帯域の周波数分布が所定条件を満たす場合に炎有り判断の第2要素とする。
【0118】
そして、火災判断部38は、炎受光信号E1aと非炎受光信号E2aの積分値の相対比による炎有り判断の第1要素と、炎受光信号E1aの周波数分布による炎有り判断の第2要素の両方が成立し、且つ、これが所定回数連続した場合に炎との判断を確定(炎有りと断定)して火災検出信号を外部に出力する。
【0119】
(過大振動に対する火災判断の禁止)
図10のMPU15に設けられた火災判断制御部40は、振動補正部36での振動検出信号Ev’による炎受光信号E1’の補正が所定の補正限界に達した場合に、火災判断部38に火災判断を禁止させるか、保留させるか又は火災判断結果を破棄させる制御を行う。
【0120】
振動補正部36は、振動検出信号Ev’に炎検出ユニット12aに固有な係数K1を乗じた(式1)の右辺第2項の振動成分K1・Ev’と、振動検出信号Ev’に非炎検出ユニット12bに固有な係数K2を乗じた(式2)の右辺第2項の振動成分K2・Ev’を算出し、これを炎受光信号E1’及び非炎受光信号E2’から各々減算することで補正された炎受光信号E1aと非炎受光信号E2aを求めて火災判断部38へ出力している。
【0121】
このため、振動検出信号Ev’が所定の閾値Evth以上となっても、係数K1、K2=1未満であれば、振動成分K1・Ev’又は振動成分K2・Ev’は補正限界となる閾値Evth以上又は超えておらず、補正された炎受光信号E1a及び非炎受光信号E2aによる火災判断が可能となる。ここでは振動成分K1・Ev’と振動成分K2・Ev’に対する補正限界閾値を同じEvthとしているが、異なる閾値としても良い。
【0122】
そこで、本実施形態の火災判断制御部40は、炎検出ユニット12aに固有な振動成分K1・Ev’が閾値Evth以上又は超えた場合に補正限界に達したと判断し、火災判断部38による火災判断を禁止させるか、保留させるか又は火災判断結果を破棄させる制御を行う。
【0123】
また、火災判断制御部40は、非炎検出ユニット12bに固有な振動成分K2・Ev’が閾値Evth以上又は超えた場合に補正限界に達したと判断し、図1の実施形態と同様に、補正限界に達していない炎受光信号E1aのみによる火災判断、即ち2波長による火災判断ではなく、1波長による火災判断を火災判断部38に行わせる。それ以外の制御は図1の実施形態と基本的に同じになる。
【0124】
(炎検出装置の制御動作)
図12図10の炎検出装置の制御動作を示したフローチャートであり、MPU15による制御動作となる。
【0125】
図12に示すように、MPU15はステップS41に示すように、2秒周期で炎受光信号E1’、非炎受光信号E2 ’及び振動検出信号Ev ’を読込み(1/64秒間隔のデジタル信号データ2秒分を読み込む)、ステップS42で振動成分K1・Ev’と振動成分K2・Ev’を算出し、ステップS43で振動成分K1・Ev’が閾値Evth以上又はこれを超えて補正限界か否か判別する。
【0126】
MPU15はステップS43で振動成分K1・Ev’が閾値Evth未満で炎受光信号E1’が補正限界に達していないことを判別するとステップS46に進み、振動成分K2・Ev’が閾値Evth以上又はこれを超えて非炎受光信号E2’が補正限界か否か判別し、補正限界に達していない場合はステップS47に進んで、補正により振動成分が除去された炎受光信号E1aと非炎受光信号E2aを算出し、ステップS48で2波長の火災判断を行う。ステップS48の火災判断以降のステップS51~S54の処理は、図7のステップS7~S10に示した図1の実施形態と同じ制御となる。
【0127】
一方、MPU15はステップS43で振動成分K1・Ev’が閾値Evth以上又はこれを超えて炎受光信号E1’が補正限界にあることを判別するとステップS44に進み、補正限界となる回数が所定値以上か否か判別し、火災判断を行うことなくステップS41、S42の処理を繰り返し、ステップS44で所定回数以上が判別されるとステップS45に進んで振動障害を判定し、振動障害検出信号を火災受信盤に送信する。
【0128】
また、MPU15はステップS43で振動成分K1・Ev’が補正限界に達していないことが判別されたが、次のステップS46で振動成分K2・Ev’が閾値Evth以上又はこれを超えて非炎受光信号E2’が補正限界に達していることが判別された場合はステップS49に進み、補正により振動成分が除去された炎受光信号E1aを算出し、ステップS50で1波長の火災判断を行う。
【0129】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、1波長方式と2波長方式の炎検出装置を例にとっているが、例えば、燃焼炎のCO2の共鳴放射帯である4.5μm付近の波長帯域、5.0μm付近の波長帯域及び2.3μm付近の波長帯域を加えた3波長式の炎検出装置にも適用できる。何れの場合も、補正を要する波長帯の受光信号を、振動センサからの振動検出信号に基づき補正することができる。
【0130】
また、上記の実施形態は、振動検出センサとして焦電センサを例にとっているが、加速度センサなど、振動を検出して信号を出力する適宜のセンサが利用できる。
【0131】
また、上記実施形態の自己試験は透光性窓の汚れをチェックするものであるが、これに限らず、検出センサの故障や劣化に伴う受光信号の増加や低下をチェックするもの等が含まれる。
【0132】
また、上記実施形態の火災判断条件の緩和は、蓄積回数閾値を小さくすることを例にとっているが、これに代えて、又は加えて、他の条件を緩和するようにしても良い。
【0133】
また、本発明は、振動補正演算の方法を含め、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0134】
10:炎検出装置
12a:炎検出ユニット
12b:非炎検出ユニット
14:振動検出ユニット
15:MPU
16a:炎検出センサ
16b:非炎検出センサ
17:振動センサ
18:透光性窓
20a,20b,20v:光学波長フィルタ
22a,22b:受光素子部
22v:振動検出素子部
24a,24b,24v:前置フィルタ
25:焦電体
26a,26b,26v:プリアンプ
27:FET
28a,28b,28v:メインアンプ
30a,30b,30v:終段アンプ
35a,35b,35v:A/D変換ポート
36:振動補正部
38:火災判断部
40:火災判断制御部
41:マスク部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13