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特開2022-87340幹細胞様メモリーT細胞の生成および養子免疫療法における使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087340
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】幹細胞様メモリーT細胞の生成および養子免疫療法における使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220602BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220602BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220602BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220602BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61K35/17 Z
A61P31/00
A61P35/00
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022068256
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2019515991の分割
【原出願日】2017-09-22
(31)【優先権主張番号】62/399,311
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジョン オライリー
(72)【発明者】
【氏名】アイシャ ナスリーン ハサン
(57)【要約】
【課題】幹細胞様メモリーT細胞の生成および養子免疫療法における使用の提供。
【解決手段】病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を、幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)を利用して生成する方法が本明細書に提示される。そのような方法によって生成された抗原特異的T細胞、およびそのような抗原特異的T細胞を使用してヒト患者を処置する方法も開示される。本発明は、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を生成する方法、そのような方法によって生成された抗原特異的T細胞、およびそのような抗原特異的T細胞を使用してヒト患者を処置する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年9月23日に出願された米国仮出願第62/399,311号の利益を主張し、その全体が、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0002】
政府の権利の陳述
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたCA023766のもとの政府援助により行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
電子的に提出された配列表の参照
【0003】
本出願は、2017年9月12日に作成され、サイズが4.57キロバイトである、「Seqlisting_14259-034-228.txt」という表題のテキストファイルとして本出願と共に提出された配列表を参照により組み込む。
【0004】
病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を、幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)を利用して生成する方法が本明細書に提示される。そのような方法によって生成された抗原特異的T細胞、およびそのような抗原特異的T細胞を使用してヒト患者を処置する方法も開示される。
【背景技術】
【0005】
増大および養子移入のために選択されるT細胞の特性は、移入された細胞の持続性を決定する重大な因子であると確認されている。抗原特異的T細胞は、感染症またはがんの存在下で、増大し、病原体を急速に一掃することに専念するエフェクターT細胞、ならびに、長期間持続し、疾患の再発からの防御をなし得るメモリーT細胞に分化し得る。メモリーT細胞区画は、異種性であり、示差的な性質を有する多数のサブセットを包含する。現在の証拠により、CD62LおよびCCR7を高レベルで発現するセントラルメモリーT細胞(TCM細胞)はあまり分化していないが、一方、CD62LCCR7エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)は、最終分化を受ける委任前駆体細胞であることが示される(Bergerら、2008年、J Clin Invest、118巻:294~305頁)。さらに、マウスおよび非ヒト霊長類における試験により、TCM集団に由来する注入されたT細胞は、TEM集団に由来するものと比較して大きな、抗原に応答した複製潜在能力および長期にわたるin vivo持続性を表すことが示されている(Bergerら、2008年、J Clin Invest、118巻:294~305頁;Wangら、2011年、Blood、117巻:1888~1898頁)。最近、ナイーブT細胞と同様にCD45RA、CCR7およびCD62Lを発現するが、CD95も発現する幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)の同定に伴って免疫記憶のスペクトルが拡張された。ヒトTSCM細胞がin vitroで増大されている(Gattinoniら、2011年、Nat Med、17巻:1290~1297頁;Cieriら、2013年、Blood、121巻:573~584頁)。他のメモリーT細胞集団と比較すると、ヒトTSCM細胞は、増殖能力の増大を示している。メソテリン特異的キメラ抗原受容体を発現するように形質導入されたTSCM細胞も、ヒト化マウスモデルへの養子移入後に大きな増殖および優れた抗腫瘍応答を示した(Gattinoniら、2011年、Nat Med、17巻:1290~1297頁)。TSCM細胞は、TCM細胞、TEM細胞およびエフェクターT細胞に分化することができるが、段階的移植実験によって示されている通り、自己再生する顕著な潜在性も有する(Cieriら、2013年、Blood、121巻:573~584頁)。これらの特質に起因して、TSCM細胞は、ヒト同種異系造血細胞移植(アロHCT)後の免疫を再構成するための抗原特異的T細胞の潜在的な重大なレザバーとして大きな関心を集めている(Cieriら、2013年、Blood、121巻:573~584頁;Xuら、2015年、J Hematol Oncol、8巻:113号;Biascoら、2015年、Sci Transl Med、7巻:273ra213頁;Robertoら、2015年、Blood、125巻:2855~2864頁)。実際に、T細胞受容体CDR3配列の解析により、TSCM細胞が、アロHCT後初期に顕著な増殖およびクローン多様化を受けることが示されている(Robertoら、2015年、Blood、125巻:2855~2864頁;Cieriら、2015年、Blood、125巻:2865~2874頁)。さらに、レトロウイルスベクター挿入部位により区別されるTSCM細胞クローンは、ヒトにおいて注入後12年に至るまで存在し得る(Biascoら、2015年、Sci Transl Med、7巻:273ra213頁)。抗原特異的TSCM細胞は、発生頻度が低いことにより、それらの詳細な特徴付けが限定されている(Schmueck-Henneresseら、2015年、J Immunol、194巻:5559~5567頁)。さらに、抗原特異的T細胞のメモリー区画全体の維持に対する異なるメモリーサブセットの寄与は完全には解明されていない。
本明細書における参考文献の引用は、それが本開示の先行技術であると容認するものと解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bergerら、2008年、J Clin Invest、118巻:294~305頁
【非特許文献2】Wangら、2011年、Blood、117巻:1888~1898頁
【非特許文献3】Gattinoniら、2011年、Nat Med、17巻:1290~1297頁
【非特許文献4】Cieriら、2013年、Blood、121巻:573~584頁
【非特許文献5】Xuら、2015年、J Hematol Oncol、8巻:113号
【非特許文献6】Biascoら、2015年、Sci Transl Med、7巻:273ra213頁
【非特許文献7】Robertoら、2015年、Blood、125巻:2855~2864頁
【非特許文献8】Schmueck-Henneresseら、2015年、J Immunol、194巻:5559~5567頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を、幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)を利用して生成する方法を提供する。そのような方法によって生成された抗原特異的T細胞、およびそのような抗原特異的T細胞を使用してヒト患者を処置する方法も開示される。
【0008】
一態様では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、(a)ヒト血液細胞の集団を、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に培養下で所定期間にわたりex vivo感作させるステップであって、前記期間の開始時にヒト血液細胞の集団が少なくとも50%の幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)を含有する、ステップと、(b)(i)ex vivo感作させたヒト血液細胞の集団、または(ii)それに由来する、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識する抗原特異的T細胞を含む細胞を凍結保存するステップとを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する、方法が本明細書に提示される。
【0009】
ある特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、ex vivo感作させたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍するステップ、および必要に応じて、培養下で増大させるステップをさらに含む。
【0010】
特定の実施形態では、上述の培養下におく期間(本明細書では「感作培養期間(Sensitization Culture Time)」と称される;すなわち、感作が起こっている培養期間)は、9~21日間の範囲である。特定の実施形態では、感作培養期間は、9~14日間の範囲である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、14日間である。
【0011】
特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質と共培養することを含む。特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞と共培養することを含む。
【0012】
ex vivo感作ステップにおいて使用する抗原提示細胞は、樹状細胞、サイトカインにより活性化された単球、末梢血単核細胞(PBMC)、エプスタイン・バーウイルスにより形質転換されたBリンパ芽球様細胞株細胞(EBV-BLCL細胞)、または人工抗原提示細胞(AAPC)などの、1つまたは複数の抗原の提示に適した任意の抗原提示細胞であってよい。特定の実施形態では、抗原提示細胞は、AAPCである。
【0013】
一部の実施形態では、抗原提示細胞は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質が負荷されたものである。他の実施形態では、抗原提示細胞は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質を組換え発現するように遺伝子操作されたものである。
【0014】
一部の実施形態では、1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の抗原に由来するオーバーラップするペプチドのプールである。特定の実施形態では、オーバーラップするペプチドのプールは、オーバーラップするペンタデカペプチドのプールである。他の実施形態では、1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のタンパク質である。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、1つまたは複数の抗原を認識するパブリック(public)T細胞受容体(TCR)を内因的に発現する抗原特異的T細胞を含む。他の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、1つまたは複数の抗原を認識するパブリックTCRを組換え発現する抗原特異的T細胞を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、ヒト血液細胞の集団にパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップ(例えば、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)をさらに含む。1つまたは複数の抗原がサイトメガロウイルス(CMV)pp65である特定の実施形態では、パブリックTCRは、CASSPQTGASYGYTF(配列番号3)である相補性決定領域(CDR)3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。1つまたは複数の抗原がCMV pp65である別の特定の実施形態では、パブリックTCRは、CASSPKTGAVYGYTF(配列番号4)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、1つまたは複数の抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を組換え発現する抗原特異的T細胞を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、ヒト血液細胞の集団にCARをコードする核酸を形質導入するステップ(例えば、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)をさらに含む。
【0017】
別の態様では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で、ヒト血液細胞の集団に病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップであって、ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。1つまたは複数の抗原がCMV pp65である特定の実施形態では、パブリックTCRは、CASSPQTGASYGYTF(配列番号3)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。1つまたは複数の抗原がCMV pp65である別の特定の実施形態では、パブリックTCRは、CASSPKTGAVYGYTF(配列番号4)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、形質導入するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を凍結保存するステップをさらに含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍し、必要に応じて培養下で増大させるステップをさらに含む。
【0018】
別の態様では、CMV感染症を有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で、ヒト血液細胞の集団にCMV pp65を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップであって、パブリックTCRが、CASSPQTGASYGYTF(配列番号3)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含み、ヒト血液細胞の集団が少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、形質導入するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を凍結保存するステップをさらに含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍し、必要に応じて培養下で増大させるステップをさらに含む。
【0019】
別の態様では、CMV感染症を有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で、ヒト血液細胞の集団にCMV pp65を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップであって、パブリックTCRが、CASSPKTGAVYGYTF(配列番号4)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含み、ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、形質導入するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を凍結保存するステップをさらに含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍し、必要に応じて培養下で増大させるステップをさらに含む。
【0020】
別の態様では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で、ヒト血液細胞の集団に病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識するCARをコードする核酸を形質導入するステップであって、ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、形質導入するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を凍結保存するステップをさらに含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍し、必要に応じて培養下で増大させるステップをさらに含む。
【0021】
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法に従って使用されるヒト血液細胞の集団は、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも90%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも95%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも99%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、100%のTSCM細胞を含有する。
【0022】
ある特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、10%未満のT細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、5%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、1%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、T細胞を含有しない。
【0023】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、ヒト血液細胞の集団をヒト細胞試料から引き出すステップをさらに含む。特定の実施形態では、引き出すステップは、ヒト細胞試料からTSCM細胞を濃縮することを含む。特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CD62LCD45ROCD95である細胞を選択することを含む。一部の実施形態では、ヒト血液細胞の集団をヒト細胞試料から引き出すステップは、蛍光活性化細胞選別(FACS)によってヒト細胞試料からTSCM細胞を選別することを含む。
【0024】
好ましい実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、1つまたは複数の抗原について血清陽性であるヒトドナーに由来する。
【0025】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない抗原提示細胞に対するin vitroにおける実質的な細胞傷害性を欠く。
【0026】
本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、病原体の1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。病原体は、ウイルス、細菌、真菌、蠕虫または原生生物であり得る。一部の実施形態では、病原体は、ウイルスである。特定の実施形態では、ウイルスは、サイトメガロウイルス(CMV)である。
【0027】
本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。
【0028】
本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、BKウイルス(BKV)、John Cunninghamウイルス(JCV)、ヘルペスウイルス、アデノウイルス(ADV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ポックスウイルス、ラブドウイルス、またはパラミクソウイルスの1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。
【0029】
本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、がんの1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。がんは、血液がんであってよい。特定の実施形態では、がんは、多発性骨髄腫または形質細胞白血病である。特定の実施形態のある態様では、がんの1つまたは複数の抗原は、ウィルムス腫瘍1(WT1)である。がんはまた、例えば、これだけに限定されないが、乳がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、膵臓がん、喉頭がん、食道がん、精巣がん、肝臓がん、耳下腺がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がん、脳がん、または皮膚がんなどの固形腫瘍がんであってもよい。
【0030】
別の態様では、病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法であって、(i)本明細書に記載の方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成するステップと、(ii)抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与するステップとを含む方法が本明細書に提示される。
【0031】
別の態様では、病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法であって、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与するステップであって、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が、本明細書に記載の方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の産生物である、ステップを含む方法が本明細書に提示される。
【0032】
一部の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞は、処置されるヒト患者の疾患細胞と共有するHLA対立遺伝子によって拘束される。他の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞は、処置されるヒト患者の疾患細胞と、少なくとも2つのHLA対立遺伝子(例えば、2つのHLA-A対立遺伝子、2つのHLA-B対立遺伝子、2つのHLA-C対立遺伝子、および2つのHLA-DR対立遺伝子などの8つのHLA対立遺伝子のうち少なくとも2つ)を共有する。
【0033】
特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、ヒト患者に対して同種異系であるヒトドナーに由来する。特定の実施形態では、ヒト患者は、移植ドナーからの移植のレシピエントであり、ヒトドナーは、移植ドナーとは異なる第三者ドナーである。
【0034】
一部の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。好ましい実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、上記の用量で毎週投与することを含む。
【0036】
ある特定の実施形態では、投与するステップは、ボーラス静脈内注入によるものである。
【0037】
ある特定の実施形態では、投与するステップは、少なくとも2用量の、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与することを含む。特定の実施形態では、投与するステップは、2用量、3用量、4用量、5用量、または6用量の、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与することを含む。
【0038】
特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり1用量の第1のサイクル、その後、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の用量を投与しない休薬期間、その後、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり前記1用量の第2のサイクルを施行することを含む。
【0039】
特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり1用量のサイクルを2回、3回、4回、5回、または6回施行することを含み、各サイクルは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の用量を投与しない休薬期間によって隔てられる。
【0040】
特定の実施形態では、休薬期間は、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間である。好ましい実施形態では、休薬期間は、約3週間である。
【0041】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を投与するステップによりヒト患者においていかなる移植片対宿主病(GvHD)も生じない。
【0042】
別の態様では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団であって、本明細書に記載の方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の生成物である、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が本明細書に提示される。特定の実施形態では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団であって、本明細書に記載の方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の産生物であり、凍結保存されている、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が本明細書に提示される。
【0043】
別の態様では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む複数の細胞の集団を含む細胞バンクが本明細書に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、ヒト末梢血に由来するT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団の単離および特徴付けを示す図である。フローサイトメトリーを使用して、末梢血単核細胞(PBMC)からTサブセット、TSCMサブセット、TCMサブセットおよびTEMサブセットを単離した。リンパ球をまずPBMC内で前方散乱(FSC)および側方散乱(SCC)によってゲーティングし、CD45RO発現、CD95発現、CD62L発現およびCD3発現について分析した。次いで、CD3リンパ球をCD45ROCD62LCM細胞およびCD45ROCD62LEM細胞、CD45ROCD62LCD95SCM細胞およびCD45ROCD62LCD95細胞についてゲーティングした。
【0045】
図2A図2は、抗原刺激時のナイーブおよびメモリー(T、TSCM、TCMおよびTEM)由来のCMV特異的CD8T細胞の表現型の特徴付けを示す図である。(A)、(B)および(C)T、TSCM、TCMおよびTEM細胞集団から単離したT細胞を、CMV pp65ペプチドおよびHLA-A:0201を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。刺激後7日目(A)、14日目(B)および30日目(C)に、各細胞集団に由来するCD3Tリンパ球を評価した。CD8単一生T細胞をCD3Tリンパ球からゲーティングした。次いで、HLA-A:0201-NLV四量体(Tet)T細胞およびNLV-TetT細胞をCD8T細胞内でゲーティングした(左側のパネル)。代表的なドナーについてのNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD62L、CCR7およびCD45RAの発現頻度が示されている。(標準フォントの文字:NLV-Tet;太字フォント:NLV-Tet)(図2A~2Cは、元々はカラーであり、したがって、この白黒での図の複写のために、白黒で複写する際に、前者の青色のFACSプロット輪郭のアウトラインを手作業でトレースして、アウトラインがトレースされていない前者の赤色の輪郭と区別可能になるようにした)。刺激の14日後のCCR7細胞の百分率が、(D)にNLVTetT細胞についておよび(E)にNLV-TetT細胞について示されている(n=6;P<0.05;**p<0.01;マン・ホイットニー検定による)。
図2B図2は、抗原刺激時のナイーブおよびメモリー(T、TSCM、TCMおよびTEM)由来のCMV特異的CD8T細胞の表現型の特徴付けを示す図である。(A)、(B)および(C)T、TSCM、TCMおよびTEM細胞集団から単離したT細胞を、CMV pp65ペプチドおよびHLA-A:0201を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。刺激後7日目(A)、14日目(B)および30日目(C)に、各細胞集団に由来するCD3Tリンパ球を評価した。CD8単一生T細胞をCD3Tリンパ球からゲーティングした。次いで、HLA-A:0201-NLV四量体(Tet)T細胞およびNLV-TetT細胞をCD8T細胞内でゲーティングした(左側のパネル)。代表的なドナーについてのNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD62L、CCR7およびCD45RAの発現頻度が示されている。(標準フォントの文字:NLV-Tet;太字フォント:NLV-Tet)(図2A~2Cは、元々はカラーであり、したがって、この白黒での図の複写のために、白黒で複写する際に、前者の青色のFACSプロット輪郭のアウトラインを手作業でトレースして、アウトラインがトレースされていない前者の赤色の輪郭と区別可能になるようにした)。刺激の14日後のCCR7細胞の百分率が、(D)にNLVTetT細胞についておよび(E)にNLV-TetT細胞について示されている(n=6;P<0.05;**p<0.01;マン・ホイットニー検定による)。
図2C図2は、抗原刺激時のナイーブおよびメモリー(T、TSCM、TCMおよびTEM)由来のCMV特異的CD8T細胞の表現型の特徴付けを示す図である。(A)、(B)および(C)T、TSCM、TCMおよびTEM細胞集団から単離したT細胞を、CMV pp65ペプチドおよびHLA-A:0201を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。刺激後7日目(A)、14日目(B)および30日目(C)に、各細胞集団に由来するCD3Tリンパ球を評価した。CD8単一生T細胞をCD3Tリンパ球からゲーティングした。次いで、HLA-A:0201-NLV四量体(Tet)T細胞およびNLV-TetT細胞をCD8T細胞内でゲーティングした(左側のパネル)。代表的なドナーについてのNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD62L、CCR7およびCD45RAの発現頻度が示されている。(標準フォントの文字:NLV-Tet;太字フォント:NLV-Tet)(図2A~2Cは、元々はカラーであり、したがって、この白黒での図の複写のために、白黒で複写する際に、前者の青色のFACSプロット輪郭のアウトラインを手作業でトレースして、アウトラインがトレースされていない前者の赤色の輪郭と区別可能になるようにした)。刺激の14日後のCCR7細胞の百分率が、(D)にNLVTetT細胞についておよび(E)にNLV-TetT細胞について示されている(n=6;P<0.05;**p<0.01;マン・ホイットニー検定による)。
図2DE図2は、抗原刺激時のナイーブおよびメモリー(T、TSCM、T およびTEM)由来のCMV特異的CD8T細胞の表現型の特徴付けを示す図である。(A)、(B)および(C)T、TSCM、TCMおよびTEM細胞集団から単離したT細胞を、CMV pp65ペプチドおよびHLA-A:0201を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。刺激後7日目(A)、14日目(B)および30日目(C)に、各細胞集団に由来するCD3Tリンパ球を評価した。CD8単一生T細胞をCD3Tリンパ球からゲーティングした。次いで、HLA-A:0201-NLV四量体(Tet)T細胞およびNLV-TetT細胞をCD8T細胞内でゲーティングした(左側のパネル)。代表的なドナーについてのNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD62L、CCR7およびCD45RAの発現頻度が示されている。(標準フォントの文字:NLV-Tet;太字フォント:NLV-Tet)(図2A~2Cは、元々はカラーであり、したがって、この白黒での図の複写のために、白黒で複写する際に、前者の青色のFACSプロット輪郭のアウトラインを手作業でトレースして、アウトラインがトレースされていない前者の赤色の輪郭と区別可能になるようにした)。刺激の14日後のCCR7細胞の百分率が、(D)にNLVTetT細胞についておよび(E)にNLV-TetT細胞について示されている(n=6;P<0.05;**p<0.01;マン・ホイットニー検定による)。
【0046】
図3A図3は、T、TSCM、TCMおよびTEM内での共刺激マーカーおよび老化マーカーの別個の発現を示す図である。14~18日間にわたるin-vitroにおける刺激後のNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD27、CD57、CD127、CD28、KLRG1およびPD1の発現頻度が示されている。(A)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するNLV-TetCD8T細胞(n=6)内のCD27細胞の百分率。(B)CD8T細胞内でのCD27発現の代表的な蛍光活性化細胞選別(FACS)プロット。(C)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するCD57(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(D)CD8T細胞におけるCD57発現の代表的なFACSプロット。(E)および(F)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するそれぞれCD127(n=6)およびCD28(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(G)および(H)刺激後のNLV-TetT細胞内(G)およびNLV-TetT細胞内(n=9)でのKLRG1を発現するCD8T細胞の百分率。(I)および(J)刺激後のNLV-TetT細胞内(I)およびNLV-TetT細胞内(J)(n=11)でのPD1を発現するCD8T細胞の百分率(P<0.05;**p<0.01;***P<0.005;マン・ホイットニー検定による)。
図3B図3は、T、TSCM、TCMおよびTEM内での共刺激マーカーおよび老化マーカーの別個の発現を示す図である。14~18日間にわたるin-vitroにおける刺激後のNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD27、CD57、CD127、CD28、KLRG1およびPD1の発現頻度が示されている。(A)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するNLV-TetCD8T細胞(n=6)内のCD27細胞の百分率。(B)CD8T細胞内でのCD27発現の代表的な蛍光活性化細胞選別(FACS)プロット。(C)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するCD57(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(D)CD8T細胞におけるCD57発現の代表的なFACSプロット。(E)および(F)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するそれぞれCD127(n=6)およびCD28(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(G)および(H)刺激後のNLV-TetT細胞内(G)およびNLV-TetT細胞内(n=9)でのKLRG1を発現するCD8T細胞の百分率。(I)および(J)刺激後のNLV-TetT細胞内(I)およびNLV-TetT細胞内(J)(n=11)でのPD1を発現するCD8T細胞の百分率(P<0.05;**p<0.01;***P<0.005;マン・ホイットニー検定による)。
図3C図3は、T、TSCM、TCMおよびTEM内での共刺激マーカーおよび老化マーカーの別個の発現を示す図である。14~18日間にわたるin-vitroにおける刺激後のNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD27、CD57、CD127、CD28、KLRG1およびPD1の発現頻度が示されている。(A)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するNLV-TetCD8T細胞(n=6)内のCD27細胞の百分率。(B)CD8T細胞内でのCD27発現の代表的な蛍光活性化細胞選別(FACS)プロット。(C)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するCD57(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(D)CD8T細胞におけるCD57発現の代表的なFACSプロット。(E)および(F)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するそれぞれCD127(n=6)およびCD28(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(G)および(H)刺激後のNLV-TetT細胞内(G)およびNLV-TetT細胞内(n=9)でのKLRG1を発現するCD8T細胞の百分率。(I)および(J)刺激後のNLV-TetT細胞内(I)およびNLV-TetT細胞内(J)(n=11)でのPD1を発現するCD8T細胞の百分率(P<0.05;**p<0.01;***P<0.005;マン・ホイットニー検定による)。
図3D図3は、T、TSCM、TCMおよびTEM内での共刺激マーカーおよび老化マーカーの別個の発現を示す図である。14~18日間にわたるin-vitroにおける刺激後のNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD27、CD57、CD127、CD28、KLRG1およびPD1の発現頻度が示されている。(A)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するNLV-TetCD8T細胞(n=6)内のCD27細胞の百分率。(B)CD8T細胞内でのCD27発現の代表的な蛍光活性化細胞選別(FACS)プロット。(C)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するCD57(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(D)CD8T細胞におけるCD57発現の代表的なFACSプロット。(E)および(F)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するそれぞれCD127(n=6)およびCD28(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(G)および(H)刺激後のNLV-TetT細胞内(G)およびNLV-TetT細胞内(n=9)でのKLRG1を発現するCD8T細胞の百分率。(I)および(J)刺激後のNLV-TetT細胞内(I)およびNLV-TetT細胞内(J)(n=11)でのPD1を発現するCD8T細胞の百分率(P<0.05;**p<0.01;***P<0.005;マン・ホイットニー検定による)。
図3EFGH図3は、T、TSCM、TCMおよびTEM内での共刺激マーカーおよび老化マーカーの別個の発現を示す図である。14~18日間にわたるin-vitroにおける刺激後のNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD27、CD57、CD127、CD28、KLRG1およびPD1の発現頻度が示されている。(A)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するNLV-TetCD8T細胞(n=6)内のCD27細胞の百分率。(B)CD8T細胞内でのCD27発現の代表的な蛍光活性化細胞選別(FACS)プロット。(C)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するCD57(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(D)CD8T細胞におけるCD57発現の代表的なFACSプロット。(E)および(F)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するそれぞれCD127(n=6)およびCD28(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(G)および(H)刺激後のNLV-TetT細胞内(G)およびNLV-TetT細胞内(n=9)でのKLRG1を発現するCD8T細胞の百分率。(I)および(J)刺激後のNLV-TetT細胞内(I)およびNLV-TetT細胞内(J)(n=11)でのPD1を発現するCD8T細胞の百分率(P<0.05;**p<0.01;***P<0.005;マン・ホイットニー検定による)。
図3IJ図3は、T、TSCM、TCMおよびTEM内での共刺激マーカーおよび老化マーカーの別個の発現を示す図である。14~18日間にわたるin-vitroにおける刺激後のNLV-Tet集団およびNLV-Tet集団でゲーティングされたCD27、CD57、CD127、CD28、KLRG1およびPD1の発現頻度が示されている。(A)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するNLV-TetCD8T細胞(n=6)内のCD27細胞の百分率。(B)CD8T細胞内でのCD27発現の代表的な蛍光活性化細胞選別(FACS)プロット。(C)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するCD57(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(D)CD8T細胞におけるCD57発現の代表的なFACSプロット。(E)および(F)それぞれT集団、TSCM集団、TCM集団およびTEM集団に由来するそれぞれCD127(n=6)およびCD28(n=8)を発現するNLV-TetCD8T細胞の百分率。(G)および(H)刺激後のNLV-TetT細胞内(G)およびNLV-TetT細胞内(n=9)でのKLRG1を発現するCD8T細胞の百分率。(I)および(J)刺激後のNLV-TetT細胞内(I)およびNLV-TetT細胞内(J)(n=11)でのPD1を発現するCD8T細胞の百分率(P<0.05;**p<0.01;***P<0.005;マン・ホイットニー検定による)。
【0047】
図4A図4は、初期メモリーT細胞の迅速な増大に起因するCMV特異的CD8T細胞の濃縮を示す図である。(A)CMV pp65抗原を用いたin-vitro感作後にA2-NLV-TetT細胞のin-vitro増殖を、刺激後3日目、5日目および7日目の代表的なドナーで示されている通り、EdUによって評価した。CD3T細胞を、CMV pp65ペプチドおよびHLA-A0201を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。左側のパネルに示されている通り、刺激後のNLV-TetT細胞の濃縮を評価した。単一生CD8Tリンパ球でゲーティングされたEdU組み入れの百分率が中央のパネルに示されている。NLV-TetCD8T細胞でゲーティングされたEdU組み入れの百分率が右側のパネル示されている。(B)NLV-TetT細胞(右側のパネル)のEdU組み入れを有するNLV-TetT細胞(左側のパネル)と比較した表現型解析が代表的なドナーについて示されている(白色:CD45ROCD62LEM;薄い灰色:CD45ROCD62LCM;濃い灰色:CD45ROCD62LCD95SCM)。抗原刺激後にCD45ROCD62LCD95細胞は検出されなかった。(C)抗原特異的T細胞刺激の14日後に、T由来細胞、TSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞内のNLV-TetCD8T細胞内でのA2-NLV-TetT細胞の増大倍率を評価した。T集団(n=6)については、6ドナーのうち4ドナーにおいて抗原への曝露前にNLV-TetCD8T細胞は検出されなかった(P=0.03;ns、有意でない;マン・ホイットニー検定による)。
図4B図4は、初期メモリーT細胞の迅速な増大に起因するCMV特異的CD8T細胞の濃縮を示す図である。(A)CMV pp65抗原を用いたin-vitro感作後にA2-NLV-TetT細胞のin-vitro増殖を、刺激後3日目、5日目および7日目の代表的なドナーで示されている通り、EdUによって評価した。CD3T細胞を、CMV pp65ペプチドおよびHLA-A0201を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。左側のパネルに示されている通り、刺激後のNLV-TetT細胞の濃縮を評価した。単一生CD8Tリンパ球でゲーティングされたEdU組み入れの百分率が中央のパネルに示されている。NLV-TetCD8T細胞でゲーティングされたEdU組み入れの百分率が右側のパネル示されている。(B)NLV-TetT細胞(右側のパネル)のEdU組み入れを有するNLV-TetT細胞(左側のパネル)と比較した表現型解析が代表的なドナーについて示されている(白色:CD45ROCD62LEM;薄い灰色:CD45ROCD62LCM;濃い灰色:CD45ROCD62LCD95SCM)。抗原刺激後にCD45ROCD62LCD95細胞は検出されなかった。(C)抗原特異的T細胞刺激の14日後に、T由来細胞、TSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞内のNLV-TetCD8T細胞内でのA2-NLV-TetT細胞の増大倍率を評価した。T集団(n=6)については、6ドナーのうち4ドナーにおいて抗原への曝露前にNLV-TetCD8T細胞は検出されなかった(P=0.03;ns、有意でない;マン・ホイットニー検定による)。
図4C図4は、初期メモリーT細胞の迅速な増大に起因するCMV特異的CD8T細胞の濃縮を示す図である。(A)CMV pp65抗原を用いたin-vitro感作後にA2-NLV-TetT細胞のin-vitro増殖を、刺激後3日目、5日目および7日目の代表的なドナーで示されている通り、EdUによって評価した。CD3T細胞を、CMV pp65ペプチドおよびHLA-A0201を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。左側のパネルに示されている通り、刺激後のNLV-TetT細胞の濃縮を評価した。単一生CD8Tリンパ球でゲーティングされたEdU組み入れの百分率が中央のパネルに示されている。NLV-TetCD8T細胞でゲーティングされたEdU組み入れの百分率が右側のパネル示されている。(B)NLV-TetT細胞(右側のパネル)のEdU組み入れを有するNLV-TetT細胞(左側のパネル)と比較した表現型解析が代表的なドナーについて示されている(白色:CD45ROCD62LEM;薄い灰色:CD45ROCD62LCM;濃い灰色:CD45ROCD62LCD95SCM)。抗原刺激後にCD45ROCD62LCD95細胞は検出されなかった。(C)抗原特異的T細胞刺激の14日後に、T由来細胞、TSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞内のNLV-TetCD8T細胞内でのA2-NLV-TetT細胞の増大倍率を評価した。T集団(n=6)については、6ドナーのうち4ドナーにおいて抗原への曝露前にNLV-TetCD8T細胞は検出されなかった(P=0.03;ns、有意でない;マン・ホイットニー検定による)。
【0048】
図5A-1】図5は、ナイーブT細胞(T)ならびにメモリーT細胞(TSCM、TCMおよびTEM)に由来するin vitroで増大させたCMV特異的T細胞の機能的サイトカインプロファイルおよび細胞傷害活性を示す図である。(A)増大させたナイーブT細胞集団およびメモリーT細胞集団を、NLVペプチドが負荷された自己由来Bリンパ芽球様細胞株細胞(BLCL細胞)を5:1の比で用いて18時間にわたって刺激した。ペプチドが負荷されていない自己由来BLCLと共培養したT細胞が対照としての機能を果たした。IFN-γおよびTNF-αを分泌するCD8T細胞を細胞内染色によって評価した。ペプチドによる刺激を伴うまたは伴わない、CD137を発現するCD8T細胞の百分率が最初の2つのパネルに示されている(図5A-1)。CD137を発現し、IFN-γまたはTNF-αサイトカインを分泌するCD8T細胞の割合が次の2つのパネルに示されている(図5A-2)。IFN-γおよびTNF-αサイトカインの両方を分泌するCD8T細胞が最後のパネルに示されている(図5A-2)。(B)細胞傷害活性をCD107a脱顆粒アッセイによって評価した。ペプチドによる刺激を伴う(中央のパネル)または伴わない(左側のパネル)CD107aを発現するCD8T細胞の百分率が示されている。CD137およびCD107aの両方を発現するCD8T細胞の百分率が右側のパネルに示されている。示されているデータは3回の実験を表す(n=3)。
図5A-2】図5は、ナイーブT細胞(T)ならびにメモリーT細胞(TSCM、TCMおよびTEM)に由来するin vitroで増大させたCMV特異的T細胞の機能的サイトカインプロファイルおよび細胞傷害活性を示す図である。(A)増大させたナイーブT細胞集団およびメモリーT細胞集団を、NLVペプチドが負荷された自己由来Bリンパ芽球様細胞株細胞(BLCL細胞)を5:1の比で用いて18時間にわたって刺激した。ペプチドが負荷されていない自己由来BLCLと共培養したT細胞が対照としての機能を果たした。IFN-γおよびTNF-αを分泌するCD8T細胞を細胞内染色によって評価した。ペプチドによる刺激を伴うまたは伴わない、CD137を発現するCD8T細胞の百分率が最初の2つのパネルに示されている(図5A-1)。CD137を発現し、IFN-γまたはTNF-αサイトカインを分泌するCD8T細胞の割合が次の2つのパネルに示されている(図5A-2)。IFN-γおよびTNF-αサイトカインの両方を分泌するCD8T細胞が最後のパネルに示されている(図5A-2)。(B)細胞傷害活性をCD107a脱顆粒アッセイによって評価した。ペプチドによる刺激を伴う(中央のパネル)または伴わない(左側のパネル)CD107aを発現するCD8T細胞の百分率が示されている。CD137およびCD107aの両方を発現するCD8T細胞の百分率が右側のパネルに示されている。示されているデータは3回の実験を表す(n=3)。
図5B図5は、ナイーブT細胞(T)ならびにメモリーT細胞(TSCM、TCMおよびTEM)に由来するin vitroで増大させたCMV特異的T細胞の機能的サイトカインプロファイルおよび細胞傷害活性を示す図である。(A)増大させたナイーブT細胞集団およびメモリーT細胞集団を、NLVペプチドが負荷された自己由来Bリンパ芽球様細胞株細胞(BLCL細胞)を5:1の比で用いて18時間にわたって刺激した。ペプチドが負荷されていない自己由来BLCLと共培養したT細胞が対照としての機能を果たした。IFN-γおよびTNF-αを分泌するCD8T細胞を細胞内染色によって評価した。ペプチドによる刺激を伴うまたは伴わない、CD137を発現するCD8T細胞の百分率が最初の2つのパネルに示されている(図5A-1)。CD137を発現し、IFN-γまたはTNF-αサイトカインを分泌するCD8T細胞の割合が次の2つのパネルに示されている(図5A-2)。IFN-γおよびTNF-αサイトカインの両方を分泌するCD8T細胞が最後のパネルに示されている(図5A-2)。(B)細胞傷害活性をCD107a脱顆粒アッセイによって評価した。ペプチドによる刺激を伴う(中央のパネル)または伴わない(左側のパネル)CD107aを発現するCD8T細胞の百分率が示されている。CD137およびCD107aの両方を発現するCD8T細胞の百分率が右側のパネルに示されている。示されているデータは3回の実験を表す(n=3)。
【0049】
図6AB図6は、CMV特異的T細胞、TSCM細胞、TCM細胞およびT 細胞内でのクローン多様性およびクローン型選択を示す図である。TCRVβレパートリー分析のために次世代配列決定を実施した。それぞれ(A)選別されたTサブセット、TSCMサブセット、TCMサブセットおよびTEMサブセットまたは(B)これらのサブセットに由来する細胞に含有されるNLV-TetT細胞について、(A)T細胞増大前および(B)T細胞増大の15日後に、immunoSEQ Analyzer 2.0を使用してTCRクローン性を分析した。ヒートマップは、試料プロファイルの類似性を示す。類似性は、任意の2つの試料内の独特のヌクレオチド配列間のオーバーラップを説明するものである。(C)増大の30日後の、同じドナー由来のナイーブ(T)サブセット、ならびにメモリー(TSCM、TCMおよびTEM)サブセットに由来する選別されたNLV-TetT細胞をそれらのTCR配列について比較した。(D)in vitroにおける刺激前、(E)in vitroにおける刺激の15日後、および(F)in vitroにおける刺激の30日後の、別々のドナー由来のナイーブ(T)サブセット、およびメモリー(TSCM、TCMおよびTEM)サブセットに由来する選別されたNLV-TetT細胞に対してTCR配列決定を実施し、それらの類似性について比較した。示されている値は、オーバーラップの割合である。このドナーについての同じ時点(刺激前、刺激後15日目および刺激後30日目)でのTCR配列決定解析が(G)に要約されている。
図6CDEF図6は、CMV特異的T細胞、TSCM細胞、TCM細胞およびTEM細胞内でのクローン多様性およびクローン型選択を示す図である。TCRVβレパートリー分析のために次世代配列決定を実施した。それぞれ(A)選別されたTサブセット、TSCMサブセット、TCMサブセットおよびTEMサブセットまたは(B)これらのサブセットに由来する細胞に含有されるNLV-TetT細胞について、(A)T細胞増大前および(B)T細胞増大の15日後に、immunoSEQ Analyzer 2.0を使用してTCRクローン性を分析した。ヒートマップは、試料プロファイルの類似性を示す。類似性は、任意の2つの試料内の独特のヌクレオチド配列間のオーバーラップを説明するものである。(C)増大の30日後の、同じドナー由来のナイーブ(T)サブセット、ならびにメモリー(TSCM、TCMおよびTEM)サブセットに由来する選別されたNLV-TetT細胞をそれらのTCR配列について比較した。(D)in vitroにおける刺激前、(E)in vitroにおける刺激の15日後、および(F)in vitroにおける刺激の30日後の、別々のドナー由来のナイーブ(T)サブセット、およびメモリー(TSCM、TCMおよびTEM)サブセットに由来する選別されたNLV-TetT細胞に対してTCR配列決定を実施し、それらの類似性について比較した。示されている値は、オーバーラップの割合である。このドナーについての同じ時点(刺激前、刺激後15日目および刺激後30日目)でのTCR配列決定解析が(G)に要約されている。
図6G図6は、CMV特異的T細胞、TSCM細胞、TCM細胞およびTEM細胞内でのクローン多様性およびクローン型選択を示す図である。TCRVβレパートリー分析のために次世代配列決定を実施した。それぞれ(A)選別されたTサブセット、TSCMサブセット、TCMサブセットおよびTEMサブセットまたは(B)これらのサブセットに由来する細胞に含有されるNLV-TetT細胞について、(A)T細胞増大前および(B)T細胞増大の15日後に、immunoSEQ Analyzer 2.0を使用してTCRクローン性を分析した。ヒートマップは、試料プロファイルの類似性を示す。類似性は、任意の2つの試料内の独特のヌクレオチド配列間のオーバーラップを説明するものである。(C)増大の30日後の、同じドナー由来のナイーブ(T)サブセット、ならびにメモリー(TSCM、TCMおよびTEM)サブセットに由来する選別されたNLV-TetT細胞をそれらのTCR配列について比較した。(D)in vitroにおける刺激前、(E)in vitroにおける刺激の15日後、および(F)in vitroにおける刺激の30日後の、別々のドナー由来のナイーブ(T)サブセット、およびメモリー(TSCM、TCMおよびTEM)サブセットに由来する選別されたNLV-TetT細胞に対してTCR配列決定を実施し、それらの類似性について比較した。示されている値は、オーバーラップの割合である。このドナーについての同じ時点(刺激前、刺激後15日目および刺激後30日目)でのTCR配列決定解析が(G)に要約されている。
【0050】
図7A-1】図7は、TSCM細胞の増殖の増強では免疫優性を説明できないことを示す図である。(A)HLA-A:0201およびA:2402CMV血清陽性ドナー由来のT細胞を、HLA-A:0201またはHLA-A:2402およびCMV pp65タンパク質を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。単一生CD8Tリンパ球でゲーティングされたT細胞を、抗原特異的刺激の4日後、5日後、7日後および8日後に、HLA-A:0201-NLVPMVATV(配列番号1)ペプチド四量体複合体(NLV-Tet)またはHLA-A:2402-QYDPVAALF(配列番号2)ペプチド四量体複合体(QYD-Tet)に結合する細胞についてゲーティングした(n=2)。代表的な1ドナーについての結果が示されている。NLV-TetT細胞またはQYD-TetT細胞の表現型解析を実施して、抗原特異的刺激後のTSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞の割合を評価した(CD45ROCD62LCM:薄い灰色;CD45ROCD62LEM:白色;CD45ROCD62LCD95SCM:濃い灰色)。感作後にT表現型CD45ROCD62LCD95を有するTetT細胞は存在しなかった。(B)刺激の4日後、5日後、7日後、および8日後、EdUで標識したT細胞を使用して、NLV-TetT細胞内の増殖T細胞の割合、およびQYD-TetT細胞内、TSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞内の増殖T細胞の割合を評価し、比較した(図7B-1)。EdUで標識したNLV-Tet集団内またはEdUで標識したQYD-Tet集団内のアポトーシス性T細胞の割合を、T細胞刺激後4日目、5日目、7日目および8日目にアネキシンV標識を使用して評価した(図7B-2)。
図7A-2】図7は、TSCM細胞の増殖の増強では免疫優性を説明できないことを示す図である。(A)HLA-A:0201およびA:2402CMV血清陽性ドナー由来のT細胞を、HLA-A:0201またはHLA-A:2402およびCMV pp65タンパク質を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。単一生CD8Tリンパ球でゲーティングされたT細胞を、抗原特異的刺激の4日後、5日後、7日後および8日後に、HLA-A:0201-NLVPMVATV(配列番号1)ペプチド四量体複合体(NLV-Tet)またはHLA-A:2402-QYDPVAALF(配列番号2)ペプチド四量体複合体(QYD-Tet)に結合する細胞についてゲーティングした(n=2)。代表的な1ドナーについての結果が示されている。NLV-TetT細胞またはQYD-TetT細胞の表現型解析を実施して、抗原特異的刺激後のTSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞の割合を評価した(CD45ROCD62LCM:薄い灰色;CD45ROCD62LEM:白色;CD45ROCD62LCD95SCM:濃い灰色)。感作後にT表現型CD45ROCD62LCD95を有するTetT細胞は存在しなかった。(B)刺激の4日後、5日後、7日後、および8日後、EdUで標識したT細胞を使用して、NLV-TetT細胞内の増殖T細胞の割合、およびQYD-TetT細胞内、TSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞内の増殖T細胞の割合を評価し、比較した(図7B-1)。EdUで標識したNLV-Tet集団内またはEdUで標識したQYD-Tet集団内のアポトーシス性T細胞の割合を、T細胞刺激後4日目、5日目、7日目および8日目にアネキシンV標識を使用して評価した(図7B-2)。
図7B-1】図7は、TSCM細胞の増殖の増強では免疫優性を説明できないことを示す図である。(A)HLA-A:0201およびA:2402CMV血清陽性ドナー由来のT細胞を、HLA-A:0201またはHLA-A:2402およびCMV pp65タンパク質を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。単一生CD8Tリンパ球でゲーティングされたT細胞を、抗原特異的刺激の4日後、5日後、7日後および8日後に、HLA-A:0201-NLVPMVATV(配列番号1)ペプチド四量体複合体(NLV-Tet)またはHLA-A:2402-QYDPVAALF(配列番号2)ペプチド四量体複合体(QYD-Tet)に結合する細胞についてゲーティングした(n=2)。代表的な1ドナーについての結果が示されている。NLV-TetT細胞またはQYD-TetT細胞の表現型解析を実施して、抗原特異的刺激後のTSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞の割合を評価した(CD45ROCD62LCM:薄い灰色;CD45ROCD62LEM:白色;CD45ROCD62LCD95SCM:濃い灰色)。感作後にT表現型CD45ROCD62LCD95を有するTetT細胞は存在しなかった。(B)刺激の4日後、5日後、7日後、および8日後、EdUで標識したT細胞を使用して、NLV-TetT細胞内の増殖T細胞の割合、およびQYD-TetT細胞内、TSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞内の増殖T細胞の割合を評価し、比較した(図7B-1)。EdUで標識したNLV-Tet集団内またはEdUで標識したQYD-Tet集団内のアポトーシス性T細胞の割合を、T細胞刺激後4日目、5日目、7日目および8日目にアネキシンV標識を使用して評価した(図7B-2)。
図7B-2】図7は、TSCM細胞の増殖の増強では免疫優性を説明できないことを示す図である。(A)HLA-A:0201およびA:2402CMV血清陽性ドナー由来のT細胞を、HLA-A:0201またはHLA-A:2402およびCMV pp65タンパク質を発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた。単一生CD8Tリンパ球でゲーティングされたT細胞を、抗原特異的刺激の4日後、5日後、7日後および8日後に、HLA-A:0201-NLVPMVATV(配列番号1)ペプチド四量体複合体(NLV-Tet)またはHLA-A:2402-QYDPVAALF(配列番号2)ペプチド四量体複合体(QYD-Tet)に結合する細胞についてゲーティングした(n=2)。代表的な1ドナーについての結果が示されている。NLV-TetT細胞またはQYD-TetT細胞の表現型解析を実施して、抗原特異的刺激後のTSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞の割合を評価した(CD45ROCD62LCM:薄い灰色;CD45ROCD62LEM:白色;CD45ROCD62LCD95SCM:濃い灰色)。感作後にT表現型CD45ROCD62LCD95を有するTetT細胞は存在しなかった。(B)刺激の4日後、5日後、7日後、および8日後、EdUで標識したT細胞を使用して、NLV-TetT細胞内の増殖T細胞の割合、およびQYD-TetT細胞内、TSCM由来細胞、TCM由来細胞およびTEM由来細胞内の増殖T細胞の割合を評価し、比較した(図7B-1)。EdUで標識したNLV-Tet集団内またはEdUで標識したQYD-Tet集団内のアポトーシス性T細胞の割合を、T細胞刺激後4日目、5日目、7日目および8日目にアネキシンV標識を使用して評価した(図7B-2)。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を生成する方法、そのような方法によって生成された抗原特異的T細胞、およびそのような抗原特異的T細胞を使用してヒト患者を処置する方法を提供する。本発明に従って、幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)は、ヒト血液中に見出される病原体の抗原の優性エピトープを認識し、また、in vivoにおける免疫優性T細胞の迅速な再増殖のための主要な持続的レザバーである抗原特異的T細胞の迅速、持続的、かつ選択的なin vitroにおける増大を可能にするので、ナイーブT細胞(T細胞)、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)およびエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)と比較してより適切な、養子免疫療法用の抗原特異的T細胞を生成するためのT細胞の供給源である。
5.1.養子免疫療法用の抗原特異的T細胞を生成する方法
5.1.1.TSCM細胞のex vivo感作を使用する方法
【0052】
一態様では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、(a)ヒト血液細胞の集団を病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に培養下である期間にわたってex vivo感作させるステップであって、前記期間の開始時にヒト血液細胞の集団が少なくとも50%の幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)を含有する、ステップと、(b)(i)ex vivo感作させたヒト血液細胞の集団、または(ii)それに由来する、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識する抗原特異的T細胞を含む細胞を凍結保存するステップとを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。
【0053】
ex vivo感作
【0054】
特定の実施形態では、上述の培養下におく期間(本明細書では「感作培養期間」と称される;すなわち、感作が起こっている培養期間)は、9~21日間の範囲である。明らかになるように、これは、抗原の存在下での最初の培養から開始して抗原の存在下での培養の終わりまでの、感作のために培養下におく期間が、9~21日間だけであり、それより長くはないことを意味する(必要に応じて、細胞をより長い期間にわたって培養することができるが、感作のための抗原の存在下にはおかない)。特定の実施形態では、感作培養期間は、9~14日間の範囲である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、9日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、10日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、11日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、12日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、13日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、14日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、15日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、16日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、17日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、18日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、19日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、20日間である。別の特定の実施形態では、感作培養期間は、21日間である。
【0055】
ex vivo感作ステップは、ex vivoにおいてT細胞を刺激して抗原特異的にするための当技術分野で公知の任意の方法、例えば、Koehneら、2000年、Blood、96巻:109~117頁;Trivediら、2005年、Blood、105巻:2793~2801頁;Haqueら、2007年、Blood、110巻:1123~1131頁;Hasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁;Feuchtingerら、2010年、Blood、116巻:4360~4367頁;Doubrovinaら、2012年、Blood、120巻:1633~1646頁;Leenら、2013年、Blood、121巻:5113~5123頁;Papadopoulouら、2014年、Sci Transl Med、6巻:242ra83頁;Sukdolakら、2013年、Biol Blood Marrow Transplant、19巻:1480~1492頁;Koehneら、2015年、Biol Blood Marrow Transplant、21巻:1663~1678頁、または国際特許出願公開第WO2016/073550号に記載されている方法などによって実施することができる。
【0056】
特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質と共培養することを含む(抗原提示細胞も存在することが好ましい)。特定の実施形態では、ex
vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞と共培養することを含む。ex vivo感作ステップは、最初に、培養物にIL-15およびIL-7を補充し(例えば、感作培養期間の開始後4日目、またはそれより前から開始する)、次いで、培養物にIL-2を補充し(例えば、少なくとも感作培養期間の開始の7日後)、必要に応じてIL-15およびIL-7と共に補充することを含むことが好ましい。IL-15およびIL-7はTSCM細胞の幹細胞様表現型の維持に役立ち、ex vivo感作ステップにおける培養の最初の7日以内、およびその後、再度多数回にわたって培養物に添加することが好ましい。IL-2は、抗原特異的T細胞の増大を増進させるのに役立ち、ex vivo感作ステップにおいてIL-15およびIL-7を細胞培養物に最初に添加した日よりも後の培養日に細胞培養物に添加すること(例えば、IL-2を少なくとも感作培養期間の開始の7日後に添加する)ことが好ましい。特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、感作培養期間の開始後4日目および7日目に培養物にIL-15およびIL-7を補充し、次いで、感作培養期間の開始後12日目の後に開始して2日に1回、培養物にIL-15、IL-7およびIL-2を補充することを含む。
【0057】
ex vivo感作ステップにおいて使用する抗原提示細胞は、樹状細胞、サイトカインにより活性化された単球、末梢血単核細胞(PBMC)、エプスタイン・バーウイルスにより形質転換されたBリンパ芽球様細胞株細胞(EBV-BLCL細胞)、または人工抗原提示細胞(AAPC)などの、1つまたは複数の抗原の提示に適した任意の抗原提示細胞であってよい。特定の実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞である。別の特定の実施形態では、抗原提示細胞は、PBMCである。別の特定の実施形態では、抗原提示細胞は、EBV-BLCL細胞である。別の特定の実施形態では、抗原提示細胞は、AAPCである。ある特定の実施形態では、抗原提示細胞は、ヒト血液細胞の集団のドナーに由来する。抗原提示細胞は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、Koehneら、2000年、Blood、96巻:109~117頁;Koehneら、2002年、Blood、99巻:1730~1740頁;Trivediら、2005年、Blood、105巻:2793~2801頁;O’Reillyら、2007年、Immunol Res、38巻:237~250頁;Hasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁;Barkerら、2010年、Blood、116巻:5045~5049頁;O’ Reillyら、2011年、Best Practice & Research Clinical Haematology、24巻:381~391頁;Doubrovinaら、2012年、Blood、120巻:1633~1646頁;Koehneら、2015年、Biol Blood Marrow Transplant、21巻:1663~1678頁、または国際特許出願公開第WO2016/073550号に記載されている方法(複数可)などによって得ることができる。
【0058】
一部の実施形態では、抗原提示細胞は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質が負荷されたものである。抗原提示細胞に抗原(複数可)に由来するペプチド(複数可)を負荷させるための非限定的な典型的方法は、Trivediら、2005年、Blood、105巻:2793~2801頁;Hasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁;および国際特許出願公開第WO2016/073550号に見出すことができる。他の実施形態では、抗原提示細胞は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質を組換え発現するように遺伝子操作されたものである。細胞に核酸ビヒクルを導入してタンパク質を発現させるための当技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば、形質導入または形質転換などを使用して、抗原提示細胞を1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質を組換え発現するように遺伝子操作することができる。
【0059】
一部の実施形態では、1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の抗原に由来するオーバーラップするペプチドのプールである。特定の実施形態では、オーバーラップするペプチドのプールは、オーバーラップするペンタデカペプチドのプールである。他の実施形態では、1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のタンパク質である。
【0060】
凍結保存
【0061】
好ましい実施形態では、凍結保存するステップは、(c)培養物からex vivo感作させたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を回収するステップと、(d)凍結保存剤とex vivo感作させたヒト血液細胞の集団またはそれに由来する細胞を合わせるステップと、(e)凍結保存剤と合わせた、ex vivo感作させたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を凍結するステップとを含む。ex vivo感作させたヒト血液細胞の集団に由来し、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識する抗原特異的T細胞を含む細胞は、ex vivo感作させたヒト血液細胞の集団の画分(例えば、ex vivo感作させたヒト血液細胞の集団から濃縮されたCD3T細胞集団もしくはex vivo感作させたヒト血液細胞の集団から濃縮されたCD8細胞傷害性T細胞集団)であってもよく、ex vivo感作させたヒト血液細胞の集団を増大させた集団であってもよい。
【0062】
細胞の凍結は、普通は、破壊的なものでる。冷却すると、細胞内の水が凍結する。次いで、細胞膜に対する浸透効果、細胞脱水、溶質濃縮、および氷結晶の形成によって傷害が生じる。細胞の外側で氷が形成されるにしたがい、利用可能な水が溶液から取り出され、細胞から引き出され、それにより、浸透脱水および溶質濃縮の上昇が引き起こされ、最終的に細胞が破壊される(考察に関しては、Mazur、1977年、Cryobiology、14巻:251~272頁を参照されたい)。これらの傷害性の影響は、(a)凍結保存剤の使用、(b)凍結速度の制御、および(c)分解反応が最小限になるように十分に低い温度での貯蔵によって回避することができる。
【0063】
本発明に従って使用することができる凍結保存剤は、これだけに限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ポリビニルピロリジン、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、スクロース、エチレングリコール、i-エリスリトール、D-リビトール、D-マンニトール、D-ソルビトール、i-イノシトール、D-ラクトース、塩化コリン、アミノ酸、メタノール、アセトアミド、グリセロールモノアセテート、または無機塩であり得る。好ましい実施形態では、本発明に従って使用される凍結保存剤は、DMSOである。小分子として、DMSOは、細胞に自由に透過し、細胞内細胞小器官を、水と組み合わさってその凍結性を改変し、氷形成による損傷を防止することによって保護する。血漿、ウシ胎仔血清、またはヒトアルブミンの添加により、DMSOの保護効果が強化される。約1%のDMSO濃度は4℃を超える温度では毒性であるので、DMSOの添加後は細胞を凍結するまで0℃に保つべきである。
【0064】
制御された遅い冷却速度も重要である。異なる凍結保存剤(Rapatz、G.ら、1968年、Cryobiology、5巻(1号):18~25頁)および異なる細胞型は、異なる最適な冷却速度を有する(例えば、RoweおよびRinfret、1962年、Blood、20巻:636頁;Rowe、1966年、Cryobiology、3巻:12~18頁;Lewisら、1967年、Transfusion、7巻:17~32頁;およびMazur、1970年、Science、168巻:939~949頁を参照されたい)。水が氷に変化する融合相の熱は最小であるべきである。冷却手順は、例えば、プログラム可能な凍結デバイスまたはメタノールバス手順を使用することによって行うことができる。細胞の生存能力を保存する凍結保存のための任意の方法を使用することができる。特定の実施形態では、凍結保存ステップにおいて速度制御冷凍装置を使用して、細胞のバイアルの温度を毎分-0.3~-2℃の速度で≦-90℃またはそれ未満にする。限定ではなく例として、以下のプログラムを使用することができる:1)チャンバーが4℃になり、試料が6.0℃になるまで待つ;2)試料が-6.0℃になるまで毎分1.0℃で低下させる;3)チャンバーが-45℃になるまで毎分25℃で低下させる;4)チャンバーが-14℃になるまで毎分10℃で低下させる;5)チャンバーが-40℃になるまで毎分1.0℃で低下させる;6)チャンバーが-90℃になるまで毎分10℃で低下させる;そして7)液体窒素に移す。あるいは、細胞を、-20℃で予備馴化させたMr.Frosty(商標)または他のアルコール/ポリスチレン遮断凍結チャンバーに入れ、チャンバーを-80℃の冷凍装置に移すことによって終夜凍結した後、液体窒素での貯蔵に移すことができる。
【0065】
徹底的な凍結後、ex vivo感作させたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を長期低温貯蔵用容器に速やかに移すことができる。好ましい実施形態では、ex vivo感作させたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を液体窒素(-196℃)またはその蒸気(-165℃)中、極低温で貯蔵することができる。特定の実施形態では、細胞を-80℃で2日間貯蔵し、次いで、液体窒素に移す。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む複数の細胞の集団を本明細書に記載の通り生成し、貯蔵し、それにより、細胞バンクを作製する。
【0066】
好ましい実施形態では、限定ではなく例として、凍結保存ステップを以下の通り実施する:最初に、90%ウシ胎仔血清および10%DMSOを含有する凍結混合物を調製する(滅菌された15mlのチューブ中、熱失活させ、濾過したウシ胎仔血清9mlを、滅菌し、濾過したDMSO 1mlと混合する)。この凍結混合物の一定分量を滅菌条件下で調製し、次いで、細胞を凍結させるための懸濁培地として使用するために-20℃で貯蔵する。T細胞培地中に1×10個/mlで懸濁させたT細胞を15mlまたは50mlのチューブ中、1500rpmで5分間遠心分離する。上清を穏やかに廃棄し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、次いで、細胞ペレットを解凍した凍結混合物に1ml当たり細胞10×10個で懸濁させる。
【0067】
生存細胞の凍結保存の他の公知の方法、またはそれらの改変が利用可能であり、使用が構想される(例えば、コールドメタルミラー(cold metal-mirror)技法;LiveseyおよびLinner、1987年、Nature、327巻:255頁;Linnerら、1986年、J Histochem Cytochem、34巻:1123~1135頁; Senkanらによる米国特許第4,199,022号、Schwartzによる米国特許第3,753,357号、Fahyによる米国特許第4,559,298号も参照されたい)。
【0068】
ある特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、ex vivo感作させたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍するステップ、および必要に応じて、培養下で増大させるステップをさらに含む。凍結細胞は、迅速に解凍し(例えば、37~41℃で維持したウォーターバス中で)、解凍したらすぐに冷却することが好ましい。具体的には、凍結細胞を含有するバイアルをその首部分まで温暖なウォーターバスに浸漬する;穏やかな回転により、細胞懸濁液が解凍されるにつれ混合されることが確実になり、温暖な水から内部の氷塊まで熱伝達が増大する。氷が完全に融解したらすぐにバイアルを直ちに氷中に入れる。
【0069】
凍結保存剤がヒトにおいて毒性である場合には、治療的投与前に除去することができ、除去は、解凍時に実現されることが好ましい。しかし、凍結保存剤がDMSOである場合、低濃度のDMSOには重大な毒性はないので、細胞の喪失を回避するために、このステップを省略することが好ましい。
【0070】
TCR発現またはCAR発現
【0071】
一部の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、目的のタンパク質、例えば、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を組換え発現する抗原特異的T細胞を含む。これは、ヒト血液細胞の集団に、それらの培養中、目的のタンパク質をコードする核酸を形質導入することによって実現することができる。核酸は、目的のタンパク質をコードする核酸配列がプロモーターに作動可能に連結しているベクターであることが好ましい。形質導入は、培養下の3日目~5日目に行うことが好ましく、これは、本明細書の実施例の節(すなわち、第6節)に示される通り、この時点が、TSCM細胞が最も高い増殖能力を示す時点だからである。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団、1つまたは複数の抗原を認識するパブリックT細胞受容体(TCR)を内因的に発現する抗原特異的T細胞を含む。他の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、1つまたは複数の抗原を認識するパブリックTCRを組換え発現する抗原特異的T細胞を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、例えば、下記の第5.1.2節に記載されている形質導入方法を使用し、ヒト血液細胞の集団にパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップ(例えば、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)をさらに含む。形質導入するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の同種異系反応性が低下する、ex vivo感作ステップの前、その間、またはその後に実施することができる。
【0073】
パブリックTCRは、多数の個体において検出される高度に相同な配列を有するペプチド特異的TCRである(Liら、2012年、Cell Res、22巻:33~42頁)。種々のヒトウイルスに対するパブリックTCRが記載されている(Argaetら、1994年、J Exp Med、180巻:2335~2340頁;Wangら、2012年、Sci Transl Med、4巻:128ra142頁;Nguyenら、2014年、J Immunol、192巻:5039~5049頁;Trautmannら、2005年、J Immunol、175巻:6123~6132頁)。
【0074】
1つまたは複数の抗原がサイトメガロウイルス(CMV)pp65である特定の実施形態では、パブリックTCRは、CASSPQTGASYGYTF(配列番号3)である相補性決定領域(CDR)3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。1つまたは複数の抗原がCMV pp65である別の特定の実施形態では、パブリックTCRは、CASSPKTGAVYGYTF(配列番号4)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。1つまたは複数の抗原がCMV pp65である別の特定の実施形態では、パブリックTCRは、S TG GY(配列番号16;nは、任意の長さの任意のアミノ酸配列および任意のアミノ酸の組合せを示す)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。
【0075】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、1つまたは複数の抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を組換え発現する抗原特異的T細胞を含む(CARに関するさらなる詳細については、下記の第5.1.3節を参照されたい)。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、例えば、下記の第5.1.3節に記載されている形質導入方法を使用し、ヒト血液細胞の集団にCARをコードする核酸を形質導入するステップ(例えば、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)をさらに含む。形質導入するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の同種異系反応性が低下する、ex vivo感作ステップの前、その間、またはその後に実施することができる。
5.1.2.TCRが形質導入されたTSCM細胞を使用する方法
【0076】
別の態様では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団に病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップ(好ましくはヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)であって、ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。形質導入は、培養下の3日目~5日目に行うことが好ましく、これは、本明細書の実施例の節(すなわち、第6節)に示される通り、この時点が、TSCM細胞が最も高い増殖能力を示す時点だからである。
【0077】
1つまたは複数の抗原がCMV pp65である特定の実施形態では、パブリックTCRは、CASSPQTGASYGYTF(配列番号3)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。1つまたは複数の抗原がCMV pp65である別の特定の実施形態では、パブリックTCRは、CASSPKTGAVYGYTF(配列番号4)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。1つまたは複数の抗原がCMV pp65である別の特定の実施形態では、パブリックTCRは、S TG GY(配列番号16;nは、任意の長さの任意のアミノ酸配列および任意のアミノ酸の組合せを示す)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む。
【0078】
別の態様では、CMV感染症を有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団にCMV pp65を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップ(好ましくはヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)であって、パブリックTCRが、CASSPQTGASYGYTF(配列番号3)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含み、ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。
【0079】
別の態様では、CMV感染症を有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団にCMV pp65を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップ(好ましくはヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)であって、パブリックTCRが、CASSPKTGAVYGYTF(配列番号4)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含み、ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。
【0080】
別の態様では、CMV感染症を有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団にCMV pp65を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップ(好ましくはヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)であって、パブリックTCRが、S TG GY(配列番号16;nは、任意の長さの任意のアミノ酸配列および任意のアミノ酸の組合せを示す)であるCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含み、ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。
【0081】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、形質導入するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を凍結保存するステップをさらに含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍し、必要に応じて培養下で増大させるステップをさらに含む。凍結保存ステップおよび解凍ステップは、上記の第5.1.1節に記載されている通り実施することができる。
【0082】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、形質導入するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を培養下で増大させるステップであって、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団が凍結保存されていない、ステップをさらに含む。
【0083】
TCRは、抗原ペプチドが結合した主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子の認識に関与するT細胞上の細胞表面分子である。パブリックTCRは、多数の個体において検出される高度に相同な配列を有するペプチド特異的TCRである(Liら、2012年、Cell Res、22巻:33~42頁)。種々のヒトウイルスに対するパブリックTCRが記載されている(Argaetら、1994年、J Exp Med、180巻:2335~2340頁;Wangら、2012年、Sci Transl Med、4巻:128ra142頁;Nguyenら、2014年、J Immunol、192巻:5039~5049頁;Trautmannら、2005年、J Immunol、175巻:6123~6132頁)。
【0084】
TCRをコードする核酸が形質導入されたヒト血液細胞の集団は、例えば、Staussら、2015年、Curr Opin Pharmacol、24巻:113~118頁;SharpeおよびMount、2015年、Dis Model Mech、8巻:337~350頁;Kunertら、2013年、Front Immunol、4巻:363号;Stoneら、2012年、Methods Enzymol、503巻:189~222頁;またはParkら、2011年、Trends Biotechnol、29巻:550~557頁に記載されている通り、当技術分野で公知の任意の方法によって生成することができる。
【0085】
TCRをコードする核酸は、DNA、RNA、または核酸類似体であってよい。特定の実施形態では、そのような核酸は、ベクターの一部であってよい。特定の実施形態では、ベクターは、T細胞において本明細書に記載のTCRのポリペプチドをコードする核酸の発現を導くことができる発現ベクターである。本明細書に記載のTCRのポリペプチドをコードする核酸の発現を導くために適した発現ベクターの非限定的な例としては、これだけに限定されないが、合成ベクター、レンチウイルスベクター、複製欠損レトロウイルスベクター、自律複製プラスミドなどのプラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載のTCRのポリペプチドをコードする核酸の発現を導くために使用される発現ベクターは、発現させる核酸に作動可能に連結した1つまたは複数の調節配列を含む。「作動可能に連結した」とは、目的の核酸が、調節配列(複数可)に、T細胞における核酸の発現が可能になる様式で連結していることを意味するものとする。調節配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0086】
本明細書に記載のTCRのポリペプチドをコードする核酸、例えば、発現ベクターは、従来の形質転換またはトランスフェクション技法(例えば、ウイルス、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスによるトランスフェクションなど)によって宿主細胞に形質導入することができる。そのような技法としては、これだけに限定されないが、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈澱、DEAEデキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、および電気穿孔が挙げられる。本明細書に記載のTCRのポリヌクレオチドをコードする核酸を含有する細胞は、当技術分野で公知の1つまたは複数の選択マーカーを使用して選択することができる。
5.1.3.CARが形質導入されたTSCM細胞を使用する方法
【0087】
別の態様では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団に病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識するCARをコードする核酸を形質導入するステップ(好ましくはヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で)であって、ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法が本明細書に提示される。形質導入は、培養下の3日目~5日目に行うことが好ましく、これは、本明細書の実施例の節(すなわち、第6節)に示される通り、この時点が、TSCM細胞が最も高い増殖能力を示す時点だからである。
【0088】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、形質導入するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を凍結保存するステップをさらに含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍し、必要に応じて培養下で増大させるステップをさらに含む。凍結保存ステップおよび解凍ステップは、上記の第5.1.1節に記載されている通り実施することができる。
【0089】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、形質導入するステップの後に、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を培養下で増大させるステップであって、形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団が凍結保存されていない、ステップをさらに含む。
【0090】
CARは、抗原結合機能および免疫細胞活性化機能の両方をもたらす工学的に作製された受容体である(Sadelainら、2013年、Cancer Discovery、3巻:388~398頁)。CARは、通常、抗原結合性ドメイン(例えば、モノクローナル抗体または受容体の細胞外ドメインに由来するもの)、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインを含み、必要に応じて、共刺激ドメインを含む。CARを使用して、抗原結合性ドメインの特異性をT細胞などの免疫細胞上に移植することができる。
【0091】
CARをコードする核酸が形質導入されたヒト血液細胞の集団は、例えば、Staussら、2015年、Curr Opin Pharmacol、24巻:113~118頁;SharpeおよびMount、2015年、Dis Model Mech、8巻:337~350頁;またはParkら、2011年、Trends Biotechnol、29巻:550~557頁に記載されている通り、当技術分野で公知の任意の方法によって生成することができる。
【0092】
CARをコードする核酸は、DNA、RNA、または核酸類似体であってよい。特定の実施形態では、そのような核酸は、ベクターの一部であってよい。特定の実施形態では、ベクターは、T細胞において本明細書に記載のCARのポリペプチドをコードする核酸の発現を導くことができる発現ベクターである。本明細書に記載のCARのポリペプチドをコードする核酸の発現を導くために適した発現ベクターの非限定的な例としては、これだけに限定されないが、合成ベクター、レンチウイルスベクター、複製欠損レトロウイルスベクター、自律複製プラスミドなどのプラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載のCARのポリペプチドをコードする核酸の発現を導くために使用される発現ベクターは、発現させる核酸に作動可能に連結した1つまたは複数の調節配列を含む。「作動可能に連結した」とは、目的の核酸が、調節配列(複数可)に、T細胞における核酸の発現が可能になる様式で連結していることを意味するものとする。調節配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0093】
本明細書に記載のCARのポリペプチドをコードする核酸、例えば、発現ベクターは、従来の形質転換またはトランスフェクション技法(例えば、ウイルス、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスによるトランスフェクションなど)によって宿主細胞に形質導入することができる。そのような技法としては、これだけに限定されないが、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈澱、DEAEデキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、および電気穿孔が挙げられる。本明細書に記載のCARのポリヌクレオチドをコードする核酸を含有する細胞は、当技術分野で公知の1つまたは複数の選択マーカーを使用して選択することができる。
5.1.4.ヒト血液細胞の集団
【0094】
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法に従って使用されるヒト血液細胞の集団は、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも60%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも70%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも80%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも90%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも95%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、少なくとも99%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、100%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約50~75%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約75~90%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約90~100%のTSCM細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約95~100%のTSCM細胞を含有する。
【0095】
一部の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CD62LCD45ROCD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CD62LCD45RACD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CCR7CD45RACD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CCR7CD28CD45ROCD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CD62LCCR7CD45RACD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CCR7CD45RACD28CD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CCR7CD45RACD45ROCD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CCR7CD45RACD127CD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CD62LCCR7CD45RACD27CD127CD45ROCD95である。他の実施形態では、TSCM細胞は、CD3CD62LCCR7CD28CD45RACD27CD127CD103CD45ROCD95である。種々の実施形態では、TSCM細胞の細胞表面マーカー発現は、以下を満たす:(i)CD3CD95;(ii)CD45ROまたはCD45RA、またはこれらの組合せ;および(iii)CD62L、またはCCR7、またはCD127、またはこれらの組合せ;および必要に応じて(iv)CD28、またはCD27、またはCD103、またはこれらの組合せ。
【0096】
種々の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、50%未満のT細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、40%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、30%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、20%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、10%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、5%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、2%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、1%未満のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、T細胞を含有しない。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約50~30%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約30~20%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約20~10%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約10~0%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約10~5%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、約5~0%のT細胞を含有する。
【0097】
一部の実施形態では、T細胞は、CD3CD62LCD45ROCD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CD62LCD45RACD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CCR7CD45RACD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CCR7CD28CD45ROCD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CD62LCCR7CD45RACD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CCR7CD45RACD28CD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CCR7CD45RACD45ROCD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CCR7CD45RACD127CD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CD62LCCR7CD45RACD27CD127CD45ROCD95である。他の実施形態では、T細胞は、CD3CD62LCCR7CD28CD45RACD27CD127CD103CD45ROCD95である。種々の実施形態では、T細胞の細胞表面マーカー発現は、以下を満たす:(i)CD3CD95;(ii)CD45ROまたはCD45RA、またはこれらの組合せ;および(iii)CD62L、またはCCR7、またはCD127、またはこれらの組合せ;および必要に応じて(iv)CD28、またはCD27、またはCD103、またはこれらの組合せ。
【0098】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法は、ヒト血液細胞の集団をヒト細胞試料から引き出すステップをさらに含む。ヒト細胞試料は、TSCM細胞または培養下でTSCM細胞になるように誘導することができる細胞、例えば、これだけに限定されないが、造血細胞試料、血液細胞試料、分画もしくは未分画全血試料、分画もしくは未分画アフェレーシス収集物(例えば、leukopakなどの白血球アフェレーシス収集物)、PBMC、またはT細胞集団(例えば、PBMCから濃縮されたT細胞)などを含有する任意の細胞試料であってよい。特定の実施形態では、ヒト細胞試料は、PBMCである。PBMCは、血液試料からPBMCを単離するための当技術分野で公知の任意の方法、例えば、Koehneら、2000年、Blood、96巻:109~117頁;Trivediら、2005年、Blood、105巻:2793~2801頁に記載されている;または下記の第6.2節に記載されているFicoll-Hypaque遠心分離などによって血液試料から単離することができる。別の特定の実施形態では、ヒト細胞試料は、PBMCに由来するT細胞が濃縮された集団である。T細胞は、血液試料またはPBMCからT細胞を濃縮するための当技術分野で公知の任意の方法によってPBMCから濃縮することができる。PBMCからT細胞を濃縮するための非限定的な典型的方法は、Koehneら、2000年、Blood、96巻:109~117頁;Trivediら、2005年、Blood、105巻:2793~2801頁;Hasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁;およびKoehneら、2015年、Biol Blood Marrow Transplant、21巻:1663~1678頁に見出すことができる。例えば、抗CD3抗体を使用してPBMCを選別することならびに/またはPBMCから接着性単球およびナチュラルキラー細胞を枯渇させることによってPBMCからT細胞を濃縮させることができる。
【0099】
ヒト血液細胞の集団をヒト細胞試料から引き出すステップでは、ヒト細胞試料から少なくとも50%のTSCM細胞を含有するヒト血液細胞の集団を産生するための当技術分野における任意の公知の方法、例えば、これだけに限定されないが、ヒト細胞試料を選別してTSCM細胞を選択すること、またはヒト細胞試料中の細胞をそれらがTSCM細胞に変化するようにin vitroにおいて再プログラミングすることなどを使用することができる。特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団をヒト細胞試料から引き出すステップは、TSCM細胞の細胞表面マーカーを発現する細胞の親和性選択(例えば、細胞表面マーカーに対する抗体を使用する)を含む。一部の実施形態では、ヒト血液細胞の集団をヒト細胞試料から引き出すステップは、蛍光活性化細胞選別(FACS)によってヒト細胞試料からTSCM細胞を選別することを含む。他の実施形態では、ヒト血液細胞の集団をヒト細胞試料から引き出すステップは、磁気分離によってヒト細胞試料からTSCM細胞を選別することを含む。
【0100】
特定の実施形態では、引き出すステップは、ヒト細胞試料からTSCM細胞を濃縮することを含む。TSCM細胞は、それらを他のT細胞サブセットと区別するために使用することができる細胞表面マーカーのセットを示し、したがって、濃縮するステップは、TSCM細胞をそれらのマーカーに基づいて選択することを含み得る。特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CD62LCD45ROCD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CD62LCD45RACD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CCR7CD45RACD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CCR7CD28CD45ROCD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CD62LCCR7CD45RACD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CCR7CD45RACD28CD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CCR7CD45RACD45ROCD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CCR7CD45RACD127CD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CD62LCCR7CD45RACD27CD127CD45ROCD95であるTSCM細胞を選択することを含む。別の特定の実施形態では、濃縮するステップは、CD3CD62LCCR7CD28CD45RACD27CD127CD103CD45ROCD95であるTSCM細胞を選択することを含む。種々の実施形態では、濃縮するステップは、細胞表面マーカー発現が、以下:(i)CD3CD95;(ii)CD45ROまたはCD45RA、またはこれらの組合せ;および(iii)CD62L、またはCCR7、またはCD127、またはこれらの組合せ;および必要に応じて(iv)CD28、またはCD27、またはCD103、またはこれらの組合せを満たす細胞を選択することを含む。
【0101】
特定の実施形態では、引き出すステップは、ヒト細胞試料からT細胞を枯渇させることを含む。ナイーブT細胞(T細胞)は、TSCM細胞とは細胞表面マーカーCD95の発現によって区別される。特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CD62LCD45ROCD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CD62LCD45RACD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CCR7CD45RACD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CCR7CD28CD45ROCD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CD62LCCR7CD45RACD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CCR7CD45RACD28CD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CCR7CD45RACD45ROCD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CCR7CD45RACD127CD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CD62LCCR7CD45RACD27CD127CD45ROCD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。別の特定の実施形態では、枯渇させるステップは、CD3CD62LCCR7CD28CD45RACD27CD127CD103CD45ROCD95である細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。種々の実施形態では、枯渇させるステップは、細胞表面マーカー発現レベルが、以下:(i)CD3CD95;(ii)CD45ROまたはCD45RA、またはこれらの組合せ;および(iii)CD62L、またはCCR7、またはCD127、またはこれらの組合せ;および必要に応じて(iv)CD28、またはCD27、またはCD103、またはこれらの組合せを満たす細胞を選択すること(すなわち、枯渇させるまたは排除すること)を含む。
【0102】
好ましい実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、1つまたは複数の抗原について血清陽性であるヒトドナーに由来する。ある特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、1つまたは複数の抗原について血清反応陰性であるヒトドナーに由来する。
【0103】
ヒトドナーは、成人(少なくとも16歳)、青年(12~15歳)、小児(12歳未満)、または胎児であり得る。特定の実施形態では、ヒトドナーは、成人である。
【0104】
「約」という用語は、通常の変動が許容されるように解釈される。
5.2.生成された抗原特異的T細胞を使用して患者を処置する方法
【0105】
別の態様では、病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法であって、(i)上記の第5.1節に記載されている方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成するステップと、(ii)抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与するステップとを含む方法が本明細書に提示される。
【0106】
別の態様では、病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法であって、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与するステップであって、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が、上記の第5.1節に記載されている方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の産生物である、ステップを含む方法が本明細書に提示される。
【0107】
特定の実施形態では、ヒト血液細胞の集団は、ヒト患者に対して同種異系であるヒトドナーに由来する。特定の実施形態では、ヒト患者は、移植ドナーからの移植のレシピエントであり、ヒトドナーは、移植ドナーとは異なる第三者ドナーである。別の特定の実施形態では、ヒト患者は、移植ドナーからの移植のレシピエントであり、ヒトドナーは、移植ドナーである。一部の実施形態では、移植は、末梢血幹細胞移植、骨髄移植、または臍帯血移植などの造血幹細胞移植(HSCT)である。他の実施形態では、移植は、腎移植、肝移植、心臓移植、腸移植、膵臓移植、肺移植、または小腸移植などの実質臓器移植である。
【0108】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を投与するステップによりヒト患者においていかなる移植片対宿主病(GvHD)も生じない。
5.2.1.投与および投与量
【0109】
抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の投与経路およびヒト患者に投与される量は、ヒト患者の状態および医師の知見に基づいて決定することができる。一般に、投与は、静脈内へのものである。ある特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の注入によるものである。特定の実施形態では、注入は、ボーラス静脈内注入である。
【0110】
一部の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。好ましい実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10~5×10個の用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10~1×10個の用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10~5×10個の用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10~1×10個の用量で投与することを含む。
【0111】
他の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞少なくとも1×10個である用量で投与することを含む。特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、ヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約2×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約3×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約4×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約6×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10~5×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10~1×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10~2×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約2×10~5×10個である用量で投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者にヒト患者1kg当たり抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10~1×10個である用量で投与することを含む。
【0112】
ある特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、上記の用量で毎週投与することを含む。ある特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、上記の用量で週2回投与することを含む。ある特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、上記の用量で2週間に1回投与することを含む。ある特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、ヒト患者に、上記の用量で3週間に1回投与することを含む。
【0113】
ある特定の実施形態では、投与するステップは、少なくとも2用量の、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与することを含む。特定の実施形態では、投与するステップは、2用量、3用量、4用量、5用量、または6用量の、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与することを含む。特定の実施形態では、投与するステップは、2用量の、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、3用量の、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与することを含む。別の特定の実施形態では、投与するステップは、4用量の、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団をヒト患者に投与することを含む。
【0114】
特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、少なくとも2週間連続して(例えば、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間連続して)1週間当たり1用量のサイクルを少なくとも2回(例えば、2回、3回、4回、5回、または6回)施行することを含み、各サイクルは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の用量を投与しない休薬期間によって隔てられる。特定の実施形態では、少なくとも2週間連続とは、2週間連続である。好ましい実施形態では、少なくとも2週間連続とは、3週間連続である。別の特定の実施形態では、少なくとも2週間連続とは、4週間連続である。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり1用量のサイクルを2回、3回、4回、5回、または6回施行することを含み、各サイクルは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の用量を投与しない休薬期間によって隔てられる。別の特定の実施形態では、投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり1用量の第1のサイクル、その後、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の用量を投与しない休薬期間、その後、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり前記1用量の第2のサイクルを施行することを含む。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約1週間(例えば、約1~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2週間である。好ましい実施形態では、休薬期間は、約3週間である。別の特定の実施形態では、休薬期間は、約4週間である。追加的なサイクルは、前のサイクルで毒性が示されていない(例えば、NCI CTCAE 4.0に従ってグレード付けして、グレード3~5の重篤な有害事象がない)場合にのみ施行することが好ましい。
【0115】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を投与するステップは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を本明細書に記載の用量で毎週連続的に投与することを含む(すなわち、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が投与されない週がない、したがって、休薬期間がない)。
【0116】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の第1の投薬レジメンを第1の期間にわたって行い、その後、本明細書に記載の第2の異なる投薬レジメンを第2の期間にわたって行い、ここで、第1の期間および第2の期間は、必要に応じて休薬期間により隔てられる。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約1週間(例えば、約1~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2週間である。好ましい実施形態では、休薬期間は、約3週間である。別の特定の実施形態では、休薬期間は、約4週間である。第2の投薬レジメンは、第1の投薬レジメンで毒性が示されていない(例えば、NCI CTCAE 4.0に従ってグレード付けして、グレード3~5の重篤な有害事象がない)場合にのみ行うことが好ましい。
【0117】
「約」という用語は、通常の変動が許容されるように解釈される。
5.2.2.異なる細胞集団を用いた段階的処置
【0118】
ある特定の実施形態では、上記の病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法は、ヒト患者に上記の第5.1節に記載されている方法に従って生成された抗原特異的T細胞を含む第1の細胞の集団を投与した後、ヒト患者に上記の第5.1節に記載されている方法に従って生成された抗原特異的T細胞を含む第2の細胞の集団を投与することをさらに含み、抗原特異的T細胞を含む第2の細胞の集団内の抗原特異的T細胞は、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子(抗原特異的T細胞を含む第1の細胞の集団に含有される抗原特異的細胞が拘束されるHLA対立遺伝子とは異なる)によって拘束される。特定の実施形態では、病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法は、少なくとも2週間連続して(例えば、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間連続して)抗原特異的T細胞を含む第1の細胞の集団を、1週間当たり1用量の第1のサイクル、必要に応じて、その後、いかなる抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の用量も投与しない休薬期間、およびその後、少なくとも2週間連続して(例えば、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間連続して)抗原特異的T細胞を含む第2の細胞の集団を、1週間当たり1用量の第2のサイクルを施行することを含む。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約1週間(例えば、約1~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2週間である。好ましい実施形態では、休薬期間は、約3週間である。ある特定の実施形態では、ヒト患者は、抗原特異的T細胞を含む第1の細胞の集団を投与した後、抗原特異的T細胞を含む第2の細胞の集団を投与する前に、応答を有さない、不完全な応答を有する、または最適以下の応答を有する(すなわち、ヒト患者は、処置を継続することが実質的に有益な可能性があるが、最適な長期間転帰の可能性は低い)。
【0119】
抗原特異的T細胞を含む第1の細胞の集団および第2の細胞の集団は、それぞれ、上記の第5.2.1節に記載されている任意の経路および任意の投薬レジメンによって投与することができる。
【0120】
特定の実施形態では、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子によってそれぞれ拘束される抗原特異的T細胞を含む2つの細胞の集団(すなわち、2つの細胞の集団内の抗原特異的T細胞が、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子によってそれぞれ拘束される)を段階的に投与する。特定の実施形態では、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子によってそれぞれ拘束される抗原特異的T細胞を含む3つの細胞の集団(すなわち、3つの細胞の集団内の抗原特異的T細胞が、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子によってそれぞれ拘束される)を段階的に投与する。特定の実施形態では、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子によってそれぞれ拘束される抗原特異的T細胞を含む4つの細胞の集団(すなわち、4つの細胞の集団内の抗原特異的T細胞が、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子によってそれぞれ拘束される)を段階的に投与する。特定の実施形態では、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子によってそれぞれ拘束される抗原特異的T細胞を含む4つよりも多くの細胞の集団(すなわち、4つよりも多くの細胞の集団内の抗原特異的T細胞が、ヒト患者の疾患細胞と共有する異なるHLA対立遺伝子によってそれぞれ拘束される)を段階的に投与する。
5.2.3.追加的な治療
【0121】
特定の実施形態では、病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法は、ヒト患者を、病原体またはがんに対する第2の治療を用いて並行して処置することをさらに含み、第2の治療は、本発明による抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、例えば、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が投与されるのとほぼ同じ時間、同じ日、または同じ週、または同じ処置期間(処置サイクル)に、または同様の投薬スケジュールで、または異なるが重複する投薬スケジュールで用いた処置ではない。特定の実施形態では、病原体またはがんに対する第2の治療は、ヒト患者に対して細胞の集団がヒト患者に繰り返し投与されている期間にわたって並行して施行されない。特定の実施形態では、病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法は、投与するステップの前に、ヒト患者を、本発明による抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を用いた処置ではない、病原体またはがんに対する第2の治療を用いて処置するステップをさらに含む。
5.3.抗原特異的T細胞を含む細胞の集団およびそれらの特徴付け
【0122】
別の態様では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む単離された細胞の集団であって、上記の第5.1節に記載されている方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の産生物である、集団が本明細書に提示される。特定の実施形態では、病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む単離された細胞の集団であって、上記の第5.1節に記載されている方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の産生物であり、凍結保存されている、集団が本明細書に提示される。
【0123】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む単離された細胞の集団は、CD8+T細胞を含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む単離された細胞の集団は、CD4+T細胞を含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む単離された細胞の集団は、CD8+T細胞およびCD4+T細胞の両方を含む。
【0124】
養子免疫療法におけるヒト患者への治療的投与に適したものであるには、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、(1)病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されているまたはそれを発現するように遺伝子操作されている完全または部分的HLA適合(ヒト血液細胞の集団のヒトドナーに対して)抗原提示細胞に対する実質的な細胞傷害性を示し、(2)実質的な同種異系反応性を欠き、かつ/または(3)ヒト患者の疾患細胞と共有するHLA対立遺伝子によって拘束される(すなわち、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞が、ヒト患者の疾患細胞と共有するHLA対立遺伝子によって拘束される)、かつ/もしくは、ヒト患者の疾患細胞と、少なくとも2つのHLA対立遺伝子(例えば、8つのHLA対立遺伝子のうち少なくとも2つ)を共有する(すなわち、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞が少なくとも2つのHLA対立遺伝子(例えば、8つのHLA対立遺伝子のうち少なくとも2つ)を共有する)ことが好ましい。したがって、細胞傷害性、同種異系反応性、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が拘束されるHLA対立遺伝子(複数可)(すなわち、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞が拘束されるHLA対立遺伝子(複数可))、および/もしくは抗原特異的T細胞を含む細胞の集団のHLA割り当て(すなわち、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞のHLA割り当て)に関する情報を、ヒト患者への投与前に、当技術分野で公知の方法によって測定することが好ましい(例えば、Koehneら、2000年、Blood、96巻:109~117頁;Trivediら、2005年、Blood、105巻:2793~2801頁;Haqueら、2007年、Blood、110巻:1123~1131頁;Hasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁;Feuchtingerら、2010年、Blood、116巻:4360~4367頁;Doubrovinaら、2012年、Blood、120巻:1633~1646頁;Leenら、2013年、Blood、121巻:5113~5123頁;Papadopoulouら、2014年、Sci Transl Med、6巻:242ra83頁;Sukdolakら、2013年、Biol Blood Marrow Transplant、19巻:1480~1492頁;Koehneら、2015年、Biol Blood Marrow Transplant、21巻:1663~1678頁;または国際特許出願公開第WO2016/073550号に記載されている方法)。
【0125】
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む複数の単離された細胞の集団を含む細胞バンクも本明細書に提示される。ヒト患者への治療的投与に適した抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を複数の中から選択することを容易にするために、細胞バンクに含有される、抗原特異的T細胞を含む複数の単離された細胞の集団のそれぞれについて、本明細書に記載の通り、細胞傷害性、同種異系反応性、ならびに/またはHLA拘束および/もしくは割り当てに関する情報を確認し、対応する抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の識別子と結びつけることが好ましい。
【0126】
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の前述の特徴付けの特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の効力を測定する種々の方法(例えば、細胞溶解を測定する代わりに、例えば、CD107脱顆粒またはIFN-γなどのサイトカインの放出を測定するアッセイなど)が細胞傷害性アッセイの代わりに使用されることが意図されている。
5.3.1.細胞傷害性
【0127】
上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の、完全または部分的HLA適合(ヒト血液細胞の集団のヒトドナーに対して)抗原提示細胞に対する細胞傷害性は、T細胞媒介性細胞傷害性を測定するための当技術分野で公知の任意のアッセイによって決定することができる。アッセイは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を直接使用して、その一定分量を使用して、または抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞傷害性を示す前駆細胞集団を使用して実施することができる。特定の実施形態では、細胞傷害性をTrivediら、2005年、Blood、105巻:2793~2801頁またはHasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁に記載されている標準の51Cr放出アッセイによって決定する。
【0128】
ある特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されているまたはそれを発現するように遺伝子操作されている、完全または部分的HLA適合抗原提示細胞に対するin vitroにおける実質的な細胞傷害性を示す(例えば、その実質的な溶解を示す)。完全または部分的HLA適合抗原提示細胞は、完全HLA適合抗原提示細胞(例えば、ヒトドナーに由来する抗原提示細胞)であることが好ましい。特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されているまたはそれを発現するように遺伝子操作されている完全または部分的HLA適合抗原提示細胞の20%よりも多く、25%よりも多く、30%よりも多く、35%よりも多く、もしくは40%よりも多く、または20%、25%、30%、35%、もしくは40%の溶解を示す。特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されているまたはそれを発現するように遺伝子操作されている完全または部分的HLA適合抗原提示細胞の20%よりも多くまたは20%の溶解を示す。
【0129】
細胞傷害性アッセイにおいて使用することができる抗原提示細胞としては、これだけに限定されないが、樹状細胞、フィトヘマグルチニン(PHA)-リンパ芽球、マクロファージ、抗体を生成するB細胞、EBV-BLCL細胞、および人工抗原提示細胞(AAPC)が挙げられる。
【0130】
特定の実施形態では、細胞傷害性アッセイにおいて使用する完全または部分的HLA適合抗原提示細胞は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来するペプチドのプールが負荷されたものである。ペプチドのプールは、例えば、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原の配列にわたりオーバーラップするペプチドのプール(例えば、ペンタデカペプチド)であってよい。
5.3.2.同種異系反応性
【0131】
上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の同種異系反応性は、T細胞媒介性細胞傷害性を測定するための当技術分野で公知の細胞傷害性アッセイ、例えば、上記の第5.3.1節に記載されている通りの標準の51Cr放出アッセイなどを使用して測定することができるが、病原体もしくはがんの1つもしくは複数の抗原に由来する1つもしくは複数のペプチドもしくはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない抗原提示細胞、および/またはHLA不適合(ヒト細胞の集団のヒトドナーに対して)抗原提示細胞を用いる。アッセイは、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を直接使用して、その一定分量を使用して、または抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の同種異系反応性を示す前駆細胞集団を使用して実施することができる。実質的な同種異系反応性を欠く抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、一般に、ヒト患者に投与された際に移植片対宿主病(GvHD)を生じさせない。
【0132】
ある特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない抗原提示細胞に対するin vitroにおける実質的な細胞傷害性を欠く。好ましい実施形態では、そのような抗原提示細胞は、完全または部分的HLA適合抗原提示細胞(ヒト血液細胞の集団のヒトドナーに対して)(例えば、ヒト血液細胞の集団のヒトドナーに由来する抗原提示細胞)である。特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない抗原提示細胞の15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、または1%満、または15%、10%、5%、2%、または1%を溶解させる。特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない抗原提示細胞の10%未満または10%を溶解させる。別の特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない抗原提示細胞の5%未満または5%を溶解させる。
【0133】
ある特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、HLA不適合(ヒト血液細胞の集団のヒトドナーに対して)抗原提示細胞に対するin vitroにおける実質的な細胞傷害性を欠く。一部の実施形態では、そのような抗原提示細胞は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されているまたはそれを発現するように遺伝子操作されている。他の実施形態では、そのような抗原提示細胞は、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない。特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、HLA不適合(ヒト血液細胞の集団のヒトドナーに対して)抗原提示細胞の15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、または1%未満、または15%、10%、5%、2%、または1%を溶解させる。特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、HLA不適合(ヒト血液細胞の集団のヒトドナーに対して)抗原提示細胞の10%未満または10%を溶解させる。別の特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、HLA不適合(ヒト血液細胞の集団のヒトドナーに対して)抗原提示細胞の5%未満または5%を溶解させる。
【0134】
ある特定の実施形態では、上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、上記の通り、病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない抗原提示細胞に対するin vitroにおける実質的な細胞傷害性を欠き、かつ、上記の通り、HLA不適合抗原提示細胞に対するin vitroにおける実質的な細胞傷害性を欠く。
【0135】
同種異系反応性アッセイにおいて使用することができる抗原提示細胞としては、これだけに限定されないが、樹状細胞、フィトヘマグルチニン(PHA)-リンパ芽球、マクロファージ、抗体を生成するB細胞、EBV-BLCL細胞、および人工抗原提示細胞(AAPC)が挙げられる。
5.3.3.HLA型
【0136】
上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団のHLA割り当て(すなわち、HLA遺伝子座型)(すなわち、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞のHLA割り当て)および/または処置されるヒト患者の疾患細胞のHLA割り当ては、HLA対立遺伝子をタイピングするための当技術分野で公知の任意の方法によって確認する(すなわち、タイピングする)ことができる。割り当ては、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を直接使用して、その一定分量を使用して、または抗原特異的T細胞を含む細胞の集団のHLA割り当てを示す前駆細胞集団を使用して実施することができる。HLA割り当てを確認するための非限定的な典型的方法は、ASHI Laboratory Manual、第4.2版(2003年)、American Society for Histocompatibility and Immunogenetics;ASHI Laboratory Manual、補遺1(2006年)および2(2007年)、American Society for Histocompatibility and Immunogenetics;Hurley、「DNA-based typing of HLA for
transplantation.」、Leffellら編、1997年、Handbook of Human Immunology、Boca Raton:CRC Press;Dunn、2011年、Int J Immunogenet、38巻:463~473頁;Erlich、2012年、Tissue Antigens、80巻:1~11頁;Bontadini、2012年、Methods、56巻:471~476頁;およびLangeら、2014年、BMC Genomics、15巻:63頁に見出すことができる。特定の実施形態では、少なくとも4つのHLA遺伝子座(好ましくは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、およびHLA-DR)をタイピングする。特定の実施形態では、4つのHLA遺伝子座(好ましくは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、およびHLA-DR)をタイピングする。別の特定の実施形態では、6つのHLA遺伝子座をタイピングする。別の特定の実施形態では、8つのHLA遺伝子座をタイピングする。
【0137】
一般に、HLAタイピングには高分解能タイピングが好ましい。高分解能タイピングは、例えば、ASHI Laboratory Manual、第4.2版(2003年)、American Society for Histocompatibility
and Immunogenetics;ASHI Laboratory Manual、補遺1(2006年)および2(2007年)、American Society for Histocompatibility and Immunogenetics;Flomenbergら、Blood、104巻:1923~1930頁;Koglerら、2005年、Bone Marrow Transplant、36巻:1033~1041頁;Leeら、2007年、Blood、110巻:4576~4583頁;Erlich、2012年、Tissue Antigens、80巻:1~11頁;Lankら、2012年、BMC Genomics、13巻:378号;またはGabrielら、2014年、Tissue Antigens、83巻:65~75頁に記載されている通り、当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
【0138】
特定の実施形態では、処置されるヒト患者の疾患細胞のHLA割り当てを、疾患細胞の起源(例えば、場合によって、ヒト患者またはヒト患者に対する移植ドナー)をタイピングすることによって確認する。疾患細胞の起源は、当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、可変縦列反復(VTR)を分析することによって(異なる人の小さなDNA配列の独特のDNA署名を使用して移植のレシピエントとドナーを区別する方法)、または、移植のドナーおよびレシピエントが異性である場合にはY染色体の有無を探すことによって(細胞遺伝学またはFISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)によって行う)決定することができる。
【0139】
上記の第5.1節に記載されている方法によって生成された抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が拘束されるHLA対立遺伝子(すなわち、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞が拘束されるHLA対立遺伝子)は、例えば、Trivediら、2005年、Blood、105巻:2793~2801頁;Barkerら、2010年、Blood、116巻:5045~5049頁;Hasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁;Doubrovinaら、2012年、Blood、120巻:1633~1646頁;または国際特許出願公開第WO2016/073550号に記載されている通り、当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。決定は、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を直接使用して、その一定分量を使用して、または抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が拘束されるHLA対立遺伝子(すなわち、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞が拘束されるHLA対立遺伝子)を示す前駆細胞集団を使用して実施することができる。
【0140】
一部の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞は、処置されるヒト患者の疾患細胞と共有するHLA対立遺伝子によって拘束される。他の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞は、処置されるヒト患者の疾患細胞と、少なくとも2つのHLA対立遺伝子(例えば、2つのHLA-A対立遺伝子、2つのHLA-B対立遺伝子、2つのHLA-C対立遺伝子、および2つのHLA-DR対立遺伝子などの8つのHLA対立遺伝子のうち少なくとも2つ)を共有する。他の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される抗原特異的T細胞は、処置されるヒト患者の疾患細胞と共有するHLA対立遺伝子によって拘束され、また、処置されるヒト患者の疾患細胞と少なくとも2つのHLA対立遺伝子(例えば、2つのHLA-A対立遺伝子、2つのHLA-B対立遺伝子、2つのHLA-C対立遺伝子、および2つのHLA-DR対立遺伝子などの8つのHLA対立遺伝子のうち少なくとも2つ)を共有する。
5.3.4.組成物およびキット
【0141】
別の態様では、治療有効量の、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む単離された細胞の集団と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が本明細書に提示される。好ましい実施形態では、医薬組成物は、凍結保存された形態である。
【0142】
薬学的に許容される担体は、T細胞の貯蔵および/または治療的投与に適した任意の生理的に許容される溶液、例えば、1つまたは複数の凍結保存剤を含む、生理食塩溶液、緩衝生理食塩溶液、または生体適合性溶液(例えば、7%DMSO、5%ブドウ糖および1%デキストランを含有するリン酸緩衝食塩水;5%DMSOおよび5%ヒト血清アルブミンを含有するhypothermosol;10%DMSOおよび16%ヒト血清アルブミンを含有する通常の生理食塩水;または10%DMSOおよび15%ヒト血清アルブミンを含有する通常の生理食塩水)であってよい。
【0143】
抗原特異的T細胞を含む細胞の集団は、医薬組成物として、長期間の貯蔵ならびに貯蔵および取扱いの利便性のために望ましい任意の濃度で貯蔵することができる。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約5×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約10×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約20×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約50×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約100×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約200×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約500×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約1~10×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約10~100×10個の濃度で貯蔵する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、医薬組成物として1mL当たり細胞約100~1000×10個の濃度で貯蔵する。
【0144】
1つまたは複数の容器中に本明細書に記載の医薬組成物を含むキットも本明細書に提示される。特定の実施形態では、キットは、病原体感染症またはがんを処置するための第2の化合物または生物学的製品を含む第2の医薬組成物をさらに含む。
【0145】
必要に応じて、そのような1つまたは複数の容器には医薬品または生物学的産生物の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知が付随してよく、この通知は、ヒト投与のための製造、使用または販売の機関による認可を反映するものである。
【0146】
本明細書に包含される医薬組成物およびキットは、本開示に提示されている通り、ヒト患者を処置する方法に従って使用することができる。
5.4.抗原特異性および患者
【0147】
病原体の1つまたは複数の抗原は、上に開示される通り、その発現が病原体に独特である1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0148】
病原体は、ウイルス、細菌、真菌、蠕虫または原生生物であり得る。一部の実施形態では、病原体は、ウイルスである(例えば、潜伏期を有するウイルスなど)。特定の実施形態では、ウイルスは、サイトメガロウイルス(CMV)である。特定の実施形態のある態様では、CMVの1つまたは複数の抗原は、CMV pp65、CMV IE1、またはこれらの組合せである。特定の実施形態の別の態様では、CMVの1つまたは複数の抗原は、CMV pp65である。
【0149】
別の特定の実施形態では、ウイルスは、エプスタイン・バーウイルス(EBV)である。特定の実施形態のある態様では、EBVの1つまたは複数の抗原は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、LMP1、LMP2、またはこれらの組合せである。特定の実施形態の別の態様では、EBVの1つまたは複数の抗原は、EBNA1、LMP1、LMP2、またはこれらの組合せである。
【0150】
別の特定の実施形態では、ウイルスは、BKウイルス(BKV)、John Cunninghamウイルス(JCV)、ヘルペスウイルス(例えば、ヒトヘルペスウイルス-6もしくはヒトヘルペスウイルス-8など)、アデノウイルス(ADV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ポックスウイルス、ラブドウイルス、またはパラミクソウイルスである。別の実施形態では、ウイルスは、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、またはメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)である。
【0151】
本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、本明細書に記載の病原体の1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、CMVの1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。別の本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、EBVの1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。別の本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感 作ステップは、ヒト血液細胞の集団を、BKV、JCV、ヘルペスウイルス(例えば、ヒトヘルペスウイルス-6またはヒトヘルペスウイルス-8など)、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ポックスウイルス、ラブドウイルス、またはパラミクソウイルスの1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。
【0152】
本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の特定の実施形態では、ヒト患者は、病原体による感染を有する。本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の一部の実施形態では、ヒト患者は、CMV感染症(例えば、CMVウイルス血症、CMV網膜炎、CMV肺炎、CMV肝炎、CMV大腸炎、CMV脳炎、CMV髄膜脳炎、CMV陽性髄膜腫(meningoma)、またはCMV陽性多形神経膠芽腫)を有する。本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の他の実施形態では、ヒト患者は、EBV感染に起因するEBV陽性リンパ球増殖性障害(EBV-LPD)(例えば、EBV陽性移植後リンパ増殖性障害)、例えば、B細胞過形成、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、例えば高齢者におけるものなど)、T細胞リンパ腫、EBV陽性ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫)、多形性または単形性EBV-LPD、自己免疫性リンパ増殖性症候群、または混合型PTLD(移植後リンパ増殖性障害)などを有する。本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の他の実施形態では、ヒト患者は、EBV陽性上咽頭癌を有する。本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の他の実施形態では、ヒト患者は、EBV陽性胃がんを有する。本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の他の実施形態では、ヒト患者は、EBV+平滑筋肉腫を有する。本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の他の実施形態では、ヒト患者は、EBV陽性NK/Tリンパ腫を有する。
【0153】
他の実施形態では、病原体は、Mycobacterium tuberculosisなどの細菌である。
【0154】
上に開示されるがんの1つまたは複数の抗原は、がん性細胞(対応する型のがんの)における発現が非がん性細胞と比べて高い1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質であってもよく、がん性細胞(対応する型のがんの)において非がん性細胞と比べて一意的に発現する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質であってもよい。
【0155】
がんは、例えば、これだけに限定されないが、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、T細胞前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病、成人T細胞白血病、形質細胞白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または多発性骨髄腫などの血液がんであってよい。特定の実施形態では、がんは、多発性骨髄腫または形質細胞白血病である。特定の実施形態のある態様では、がんの1つまたは複数の抗原は、ウィルムス腫瘍1(WT1)である。
【0156】
がんはまた、これだけに限定されないが、肉腫、癌腫、リンパ腫、胚細胞性腫瘍、または芽細胞腫を含めた固形腫瘍がんであってもよい。固形腫瘍がんは、例えば、これだけに限定されないが、乳がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、膵臓がん、喉頭がん、食道がん、精巣がん、肝臓がん、耳下腺がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がん、脳がん、または皮膚がんなどであってよい。
【0157】
本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団を本明細書に記載のがんの1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む。本明細書に記載の抗原特異的細胞を含む細胞の集団を生成する方法の特定の実施形態では、ex vivo感作ステップは、ヒト血液細胞の集団をWT1にex vivo感作させることを含む。
【0158】
本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の特定の実施形態では、ヒト患者は、本明細書に記載のがんを有する。本明細書に記載のヒト患者を処置する方法の一部の実施形態では、ヒト患者は、多発性骨髄腫または形質細胞白血病(例えば、WT1陽性多発性骨髄腫または形質細胞白血病)を有する。
【0159】
特定の実施形態では、ヒト患者は、成人(少なくとも16歳)である。別の特定の実施形態では、ヒト患者は、青年(12~15歳)である。別の特定の実施形態では、患者は、小児(12歳未満)である。
【0160】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて処置されるヒト患者は、病原体またはがんに対する以前の治療が、以前の治療に対する抵抗性または不耐性に起因して失敗しており、ここで、以前の治療は、本発明による抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を用いた処置ではない。疾患は、治療後に、応答を有さない、または不完全な応答(完全寛解未満の応答)を有する、または進行した、または再燃した場合、その治療に対して抵抗性であると考えられる。以前の治療は、場合によって、当技術分野で公知の抗ウイルス剤(例えば、抗ウイルス薬もしくは抗体)、または、当技術分野で公知の抗がん療法(例えば、化学療法もしくは放射線療法であり得る。
【実施例0161】
本明細書に提示されるある特定の実施形態は、幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)が養子免疫療法用の抗原特異的T細胞を生成するためのT細胞の有利な供給源であることを実証する以下の非限定的な実施例によって例示される。本明細書に記載されている結果から、Tet細胞ではなくTetSCM細胞が、循環中の免疫優性T細胞の迅速な再増殖の主要なレザバーであることが示唆される。
6.1.概要
【0162】
潜伏CMV感染症は、ウイルスペプチドに特異的な免疫優性T細胞の限られたレパートリーによって制御される。メモリーT細胞の維持および周期的なウイルス再活性化に応答したメモリーT細胞の再増殖に関与する抗原特異的T細胞サブセットは、不明なままである。本明細書に記載のこの実施例では、CMV pp65に特異的なT細胞を、HLA-A0201血清陽性ヒトドナーの血液から単離されたナイーブT細胞(T細胞)サブセット、幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)サブセット、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)サブセットおよびエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)サブセットから生成し、これらのサブセットのそれぞれに由来するNLV-HLA-A0201四量体(Tet)T細胞を比較的に特徴付けた。in vitro感作後、TetT細胞をCD62LCD45ROCD95細胞およびCD62LCD45ROCD95SCM細胞、ならびにTCM細胞およびTEM細胞から規則的に生成した。Tサブセット、TSCMサブセット、TCMサブセットおよびTEMサブセットのそれぞれに由来するTetT細胞により、IFN-γ、TNF-αおよびグランザイムBが生成された。各サブセットに由来するTetT細胞はまた、同様のレベルのPD-1およびKLRG-1も発現した。しかし、Tサブセットに由来するTetT細胞およびTSCMサブセットに由来するTetT細胞はTCMサブセットまたはTEMサブセットに由来するTetT細胞よりも高いレベルのCD27およびより低いレベルのCD57を発現した。TSCMサブセットに由来するTetT細胞は、Tサブセットに由来するTetT細胞、TCMサブセットに由来するTetT細胞およびTEMサブセットに由来するTetT細胞とは、増殖のレベルが有意に高いことによって、ならびに、それらにより、血液中のTEMおよびTCMによって発現されるものと配列が同一であるTCRを有するNLV特異的T細胞が迅速かつ選択的に増大することによって区別された。本明細書に記載の実施例により、Tet細胞ではなくTetSCM細胞が、循環中の免疫優性T細胞の迅速な再増殖の主要なレザバーであることが示唆される。
6.2.材料および方法
6.2.1.ドナー
【0163】
血液試料を健康な志願者HLA-A0201CMV血清陽性ドナー12名から得た。標準の高分解能タイピング技法を使用してHLA対立遺伝子特異的ヌクレオチド配列を解析することによって高分解能HLAタイピングを実施した。CMV血清状態を、Memorial Sloan Kettering Cancer Centerの臨床微生物学研究室において標準の血清学的技法によって決定した。
6.2.2.CMV特異的T細胞の生成
【0164】
末梢血単核細胞(PBMC)を全血からFicoll-Hypaque密度勾配分離(Accurate Chemical & Scientific Corporation、Westbury、NY USA)によって単離し、これらから、mAbでコーティングした免疫磁気ビーズ(Pan T-Cell Isolation Kit II、Miltenyi Biotec Inc、Auburn、CA USA)を使用してCD19細胞、CD14細胞、およびCD56細胞を枯渇させることによってT細胞を濃縮した。濃縮されたT細胞を、蛍光Ab:抗CD3 PerCP、抗CD45RO
PE、抗CD95 APC、抗CD62L FITC(全てBD Biosciencesから購入した)、および抗CD45RA(eBiosciences、CA、USA)で標識した。T細胞、TSCM細胞、TCM細胞およびTEM細胞を表すT細胞集団を、BD FACS Aria-II SORT(BD Biosciences)で以下のマーカーに基づいてゲーティングし、選別した:TSCM集団、CD3CD45ROCD62LCD95、T集団、CD3CD45ROCD62LCD95、ならびにTCM集団およびTEM集団、それぞれCD3CD45ROCD62LおよびCD3CD45ROCD62L。次いで、選別されたT細胞サブセット(1×10)を照射HLA-A0201およびCMV pp65人工抗原提示細胞(AAPC)(0.1×10)に以前に記載されている通り感作させ(Hasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁)、フィーダー細胞として照射自己由来PBMC(2×10)の存在下、ゲンタマイシン(Lonza、Allendale NJ、USA)および15%熱失活ヒト血清(Gemini、CA、USA)を伴う培養培地X-VIVO(商標)15、加湿したインキュベーター中、37℃および5%COでさらに培養した。T細胞に、培養開始後4日目および7日目にIL-7(5ng/ml)およびIL-15(5ng/ml)を補充し、10日毎にAAPCおよび自己由来PBMCフィーダーを用いて再刺激した。12日後、IL-7(5ng/ml)、IL-15(5ng/ml)、およびIL-2(20U/ml)をT細胞培養物に2日に1回補充した。
6.2.3.四量体分析による抗原特異的CD8T細胞の定量化
【0165】
培養したT細胞内のNLVペプチドに対して応答性のCMV pp65特異的T細胞を以前に記載されている通り四量体分析によって列挙した(Hasanら、2009年、J
Immunol、183巻:2837~2850頁)。HLA-A0201およびA2402を有するペプチド配列NLVPMVATV(配列番号1)およびQYDPVAALF(配列番号2)(Beckman Coulter)に対する市販のCMV pp65 MHC-ペプチド四量体を使用した。簡単に述べると、T細胞を、CD3 FITC、CD8 PE、CD4 PerCP(BD Biosciences)およびAPCとコンジュゲートした四量体複合体と一緒に氷上で20分インキュベートし、洗浄し、4色性能のためのデュアルレーザーを備えたFACSCaliburフローサイトメーターを使用してFACSによって分析した。FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用してデータを解析した。T細胞をCD3陽性細胞およびCD8陽性細胞でゲーティングして、四量体陽性CD8Tリンパ球の百分率を決定した。
6.2.4.T細胞サブセットの表現型解析
【0166】
T細胞サブセットを、特定のT細胞メモリーおよび共刺激マーカーを使用したフローサイトメトリーによってさらに特徴付けた。T細胞を、蛍光抗体CCR7 PE(BD Biosciences)、CD27 FITC(Miltenyi Biotec)、CD57 FITC(Miltenyi Biotec)、CD127 PE(Miltenyi Biotec)、CD28 PECy7(BD Biosciences)、KLRG1 PE(Miltenyi Biotec)およびPD1 PECy7(eBioscience)で標識し、FACSによって分析した。前方散乱(FSC)対側方散乱(SSC)でゲーティングし、その後、FSC(高さ)対FSC(面積)でゲーティングすることによってリンパ球についてのダブレット除去を実現した。
6.2.5.抗原特異的T細胞の機能的特徴付け
【0167】
T細胞の機能活性を、簡潔な二次刺激後に、細胞内サイトカイン(IFN-γおよびTNF-α)の分泌、活性化マーカー発現(CD137)、および細胞傷害性(CD107a)を含めたいくつかのパラメータを使用して細胞内蛍光染色によって評価した。抗体は全てBD bioscienceから購入した。NLVPMVATV(配列番号1)ペプチドを負荷した照射自己由来Bリンパ芽球様細胞株細胞(BLCL細胞)をT細胞とエフェクター対標的比1:5、1μg/mlのブレフェルジンA(Sigma-Aldrich)の存在下で16時間共インキュベートした。次いで、共培養したT細胞を抗CD3 APCおよび抗CD8 PEを用いて室温で15分にわたって標識し、洗浄し、次いで、Perm溶液(BD Biosciences)を用いて透過処理し、次いで、抗IFN-γ PECy7(BD Biosciences)および抗TNF-α APC(Miltenyi Biotec)、または抗CD137 PE(BD Biosciences)、または抗CD107a FITC(BD Biosciences)と共インキュベートした。
6.2.6.T細胞増殖およびアポトーシスの分析
【0168】
EdU標識(ThermoFisher)を使用してT細胞増殖を評価した。10μMのEdUを培養培地に添加し、37℃で1時間置いた。標識された細胞をPBSで洗浄し、T細胞培養培地に再浮遊させた。次いで、T細胞をフローサイトメトリーによって分析し、FlowJoソフトウェア(Treestar)を使用し、EdUでゲーティングされたT細胞の百分率によって増殖しているT細胞の割合を決定した。アポトーシス性T細胞をアネキシンV染色(BD Biosciences)によって定義した。
6.2.7.TCR次世代配列決定
【0169】
刺激後0日目、15日目または30日目からの、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって単離したNLV-TetT細胞サブセット(T、TSCM、TCM、およびTEM)(純度>95%)またはこれらのサブセットに由来するNLV-TetT細胞から抽出したDNAからT細胞受容体Vβ(TCRVβ)鎖超可変相補性決定領域3(CDR3)を増幅し、Adaptive BiotechnologiesにおいてimmunoSEQプラットフォームを使用して配列決定した。immunoSEQ有効アルゴリズムに従って、再構成されたCDR3配列がフレームシフトまたは中途終止コドンをもたらす挿入または欠失を含む場合にはそれらを非生産的と分類し、その後の分析から排除した。0~1の範囲で、小さい数字により多様性が大きいことが示され、大きい数字によりクローン性が大きいことが示されるimmunoSEQ Analyzer 2.0を使用し、試料中のTCRクローン性および試料のオーバーラップを決定した。試料のオーバーラップにより試料型の対内での同様のクローンのパーセントが示される。
6.2.8.統計解析
【0170】
統計解析を、Prism(GraphPad Software)を使用して実施した。比較の大部分については、ノンパラメトリックマン・ホイットニー検定を使用して、2つの群を比較した。一元配置ANOVAを使用して3つまたはそれよりも多くの群を比較した。2つの群間の差異の有意性はt検定(α=0.05)を使用して算出した。全ての比較について、両側P値を使用した;示されている場合、P<0.05;**p<0.01;***P<0.005。
6.3.結果
6.3.1.健康な血清陽性ドナー由来のPBMC内のCMV pp65特異的TSCM細胞の検出および単離
【0171】
Gattinoniら(2011年、Nat Med、17巻:1290~1297頁)により、ヒトPBMC内のTSCM細胞が、腫瘍特異的キメラ抗原受容体を発現するように改変すると優れた機能活性も示す、高い増殖性潜在性を有するメモリーT細胞の特異的なサブセットであることが最初に記載された。in vivoで初回刺激されたウイルス特異的ヒトTSCM細胞がこれらの特質も示すかどうかを試験するために本明細書に記載のこの実施例を設計した。T細胞を健康なHLA A0201CMV血清陽性ドナー12名のPBMCから単離した。これらのCMV血清陽性ドナーのそれぞれにおいて、TSCM集団をCD3CD45ROCD62LCD95細胞として同定し、T集団をCD3CD45ROCD62LCD95細胞として同定し、TCM集団およびTEM集団をそれぞれCD3CD45ROCD62L細胞およびCD3CD45ROCD62L細胞として同定した(図1)。いかなるin vitroにおける刺激も不在下で、TSCM細胞の割合は末梢血中のT細胞集団内で1.2%~10.8%にわたった。PBMC内の割合が低いにもかかわらず、試験した全てのドナーにおいてTSCM細胞を一貫して同定することができた(n=12)。比較すると、T細胞、TCM細胞およびTEM細胞の割合は、それぞれ3.8%~28.9%、1.7%~32.4%および15.4%~34.9%であった(表1)。
【0172】
表1.健康なCMV血清陽性個体におけるナイーブおよびメモリーT、TSCM、TCMおよびTEM CD8T細胞の百分率(ND=検出できず; NA=該当なし)
【表1】
【0173】
次いで、CMV pp65をモデル抗原として使用して抗原特異的T細胞のメモリー表現型を試験した。したがって、12ドナーのうち11ドナーの血液中のCMV pp65特異的T細胞集団を評価した。試験したドナーのそれぞれにおいて、HLA-A0201によって提示される周知のCMV pp65エピトープNLVPMVATV(配列番号1)に対して応答性のHLAペプチド四量体を使用して、抗原特異的T細胞の別個の集団を同定することができた。これらの四量体陽性T細胞のさらなる分析により、NLVエピトープを認識する末梢血中の大多数のメモリーT細胞がTCM表現型またはTEM表現型のいずれかを有し(それぞれ0.9%~31%および15.1%~70.6%)および残りはエフェクターT細胞であることが実証された(表1)。次いで、健康なドナーの末梢血中を、同じく抗原特異的なTSCM細胞の集団が循環しているかどうかを決定した。全部で11ドナーのうち10ドナーがCD95ナイーブT細胞前駆体(CD45ROCD62L)内にA2-NLV四量体に結合することができるTSCM細胞の別個の集団を有した(0.6%~8.3%)(表1)。
【0174】
他の試験により、ナイーブT細胞区画に由来する臍帯血ドナー由来のCMV特異的T細胞を生成することの実現性が実証された(Hanleyら、2015年、Sci Transl Med、7巻:285ra263頁;Szabolcs、2011年、Immunol Res、49巻:56~69頁)。したがって、CD95陰性ナイーブT細胞内のNLV-TetT細胞の割合を試験した。しかし、末梢血中のNLV-Tet集団内のT細胞は、11ドナーのうち2ドナーでしか検出することができなかった。総合すると、データから、NLV-四量体結合性CD8T細胞はCD45ROCD62L区画内に軽微な割合で存在し、CD95SCM細胞およびCD95細胞の両方からなることが示唆される。
6.3.2.エピトープ特異的TSCM細胞をin vitroにおいて首尾よく増大させ、抗原特異的刺激中に分化の程度が低いメモリー表現型を維持することができる
【0175】
次に、これらの健康な潜在的に無関係の血清陽性ドナーにおいて検出されたメモリーT細胞集団のいずれが、二次攻撃時に抗原特異的T細胞が生成されるT細胞免疫のレザバーとしての機能を果たすかを評価した。CMV特異的TSCM細胞の、増大し、耐久性のあるT細胞レザバーとしての機能を果たす潜在性を比較評価することが特に望ましかった。これらの試験のために、ヒトPBMC由来の全てのメモリーT細胞区画からCMV pp65特異的T細胞を増大させるためのin vitro系を展開した。TSCM細胞集団、T細胞集団、TCM細胞集団およびTEM細胞集団を上記のHLA-A0201 CMV血清陽性ドナーから発現マーカーCD62L、CD45ROおよびCD95を使用してFACSにより選別した。次いで、選別されたT細胞サブセットをHLA-A0201、CMV pp65および以前に記載されているT細胞共刺激分子を排他的に発現する人工抗原提示細胞(AAPC)に感作させた(Hasanら、2009年、J Immunol、183巻:2837~2850頁)。次いで、この手法を改変して、以前に記載されている通り4日目に開始して2日毎に培養物にIL-7およびIL-15を補充することを含めた(Cieriら、2013年、Blood、121巻:573~584頁)。
【0176】
この方法をTSCM細胞のin vitro感作のために使用して、代表的な1ドナーについて示されている通り、HLA-A0201 NLV-四量体CD8T細胞を、0日目の0.6%から7日間で5.5%まで濃縮することができた(図2A)。HLA-A0201NLV-四量体T細胞の同様の濃縮がTCM由来のCD8T細胞およびTEM由来のCD8T細胞内でも観察された(それぞれ6.1%および4.1%)(図2A)。抗原特異的in vitro感作後4週間にわたって、TSCM由来細胞はNLV-TetT細胞集団内ならびにNLV-TetT細胞集団内の両方でTCM表現型およびTEM表現型を徐々に獲得した(図2Bおよび2C)。著しいことに、TSCMサブセットに由来するNLV-TetT細胞内で、CD45RA表現型およびCD62LSCM表現型を有する細胞の割合を培養下14日まで検出することができた。この時点までに、TCM由来細胞およびTEM由来細胞の両方がTEM表現型に変換された(図2B)。抗原特異的刺激14日後に、TSCM細胞に由来するNLV-TetT細胞内ならびにNLV-TetT細胞内の両方で、TCM由来細胞およびTEM由来細胞と比較して、より高いCCR7発現も検出された(図2Dおよび2E)。CCR7はTSCM由来NLV-TetT細胞の7.5%で発現した(図2D)。これらのデータから、TSCM細胞が、in vitroにおける増大中にTCM細胞、次いでTEM細胞に進行する分化軌道に従うことが示唆される。これらの結果から、TSCM由来細胞がTCM由来細胞よりも分化の程度が低い表現型を維持できることも示唆される。
【0177】
同じ手法を使用して、CD95細胞に由来するCMV特異的T細胞も生成した。抗原刺激前の末梢血中の選別されたT細胞内でNLV-TetT細胞が検出されたにもかかわらず、異なる6ドナー中6ドナーで、この感作方法により、選別されたT細胞からNLV-TetT細胞を生成することができた。刺激すると、T細胞は、2日以内にCD95発現が上方制御され、TSCM表現型に変換された。T細胞はまた、抗原性刺激の間、TCM由来細胞およびTEM由来細胞よりも長い持続時間にわたって、分化の程度が低いメモリー表現型を維持し、NLV-TetT細胞の割合内でCD62LおよびCCR7の発現を伴った。代表的な例では(図2D)、T由来細胞では、連続的な抗原性刺激の14日後に、NLV-TetT細胞の12%においてCCR7発現が実証され、それと比較して、TSCMサブセット、TCMサブセットおよびTEMサブセットに由来するCCR7発現NLV-TetT細胞はそれぞれ7.5%、0.8%および0.5%であった。試験した合計6ドナーの中で、T由来NLV-TetT細胞におけるCCR7の示差的な発現は、TCM由来NLV-TetT細胞およびTEM由来NLV-TetT細胞において観察されたものよりも有意に高かった(p<0.01)(図2D)。これらの試験により、T細胞およびTSCM細胞に由来する抗原を受けたT細胞では分化の程度が低い表現型が実証される。しかし、NLV-Tet集団の濃縮は、T由来細胞では(図2A、2Bおよび2Cに示されている通り、7日目、14日目および30日目において0.4%、0.4%および3.6%)メモリーT細胞集団(TSCM、TCMおよびTEM細胞)に由来するT細胞よりも明白ではなかった。CMV特異的細胞の遅い濃縮は、末梢血中のTサブセットにおける前駆体発生頻度が非常に低いことに起因する可能性がある。
6.3.3.メモリーT細胞集団内の共刺激マーカーおよび老化マーカーの特徴付け
【0178】
次に、増殖および持続性の潜在性がより高い特定のサブセットを同定するために、ナイーブおよび異なるメモリーT細胞サブセット内の他の特性を評価した。共刺激マーカーCD27およびCD28ならびにIL-7Rα(CD127)、活性化マーカーPD-1および老化マーカーCD57を含めたマーカーのパネルの発現を評価した。これらのマーカーのそれぞれの発現を同じ抗原を認識する細胞において比較して、各サブセット内の抗原特異的T細胞の示差的な濃縮の結果として生じる差異を除外した。
【0179】
CD27は、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞上に共刺激分子として構成的に発現する。その発現は、T細胞活性化の際に増大し、完全に分化したエフェクター相では失われる(Hintzenら、1993年、J Immunol、151巻:2426~2435頁)。T細胞活性化および増殖におけるその役割と一致して、最近の試験でも、CD27共刺激によりキメラ抗原受容体(CAR)で改変されたT細胞の機能が改善されることが実証された(Songら、2012年、Blood、119巻:696~706頁)。本明細書における実施例では、試験した6ドナーにおいて、抗原刺激時に、CD27を発現する細胞が、T細胞に由来するNLV-TetT細胞内でそれぞれTCM細胞に由来するNLV-TetT細胞およびTEM細胞に由来するNLV-TetT細胞と比較して、ならびにTSCM細胞に由来するNLV-TetT細胞内で、TEM細胞に由来するNLV-TetT細胞と比較して有意に高い割合で見出された(**p≦0.005およびp≦0.05)(図3A)。示されている代表的な例では(図3B)、T細胞に由来するNLV-TetCD8T細胞のほとんど全てにおいてCD27の高発現も実証された(図3B)。
【0180】
次いで、HIV特異的CD8T細胞における複製に関わる老化および抗原誘導性アポトーシスを示すものであることが記載されているCD57の発現(Brenchleyら、2003年、Blood、101巻:2711~2720頁)を評価した。試験した6ドナーについて示されている通り、抗原特異的刺激後、T由来NLV-TetT細胞内で、TCM由来NLV-TetT細胞およびTEM由来NLV-TetT細胞と比較して有意に低い割合のCD57発現細胞が見出された(**p≦0.005およびp≦0.05)(図3Cおよび3D)。TSCM由来細胞は、TCM由来細胞およびTEM由来細胞よりも低いレベルのCD57を発現したが、この差は試験したドナーに関して統計的に有意ではなかった。それにもかかわらず、このデータにより、T細胞分化の増大に伴ってCD57発現のレベルが上昇する傾向が実証される(T<TSCM<TCM<TEM)。
【0181】
次に、マウスモデルにおいてT細胞の生着および持続性を容易にすることが示されているIL-7Rα(CD127)の発現(Kaechら、2003年、Nat Immunol、4巻:1191~1198頁)を試験した。本明細書における実施例では、TSCM由来NLV-TetT細胞内で、TCM由来T細胞およびTEM由来T細胞と比較してわずかに高いレベルのCD127発現が観察されたが、これは統計的に有意ではなかった(TSCM対TEM、p=0.11およびTSCM対TCM、p=0.03)(図3E)。対照的に、全てのサブセット由来NLV-TetT細胞内で中~高レベルのCD28発現が観察され、これにより、これらの活性化された抗原特異的T細胞内の適切な活性化および共刺激能力が示唆される(図3F)。抗原性刺激後、試験した全てのT細胞サブセットに由来するNLV-TetT細胞内で変動レベルのPD-1発現が検出され、明らかな傾向は伴わなかった(図3I)。しかし、NLV-TetCD8T細胞内のPD-1の発現は、NLV-Tet対応物よりも低かった(図3J)。これらのT細胞におけるPD-1の発現は、おそらく活性化された状態を示すものである。試験した全てのT細胞サブセットに由来するNLV-TetT細胞内では高レベルのKLRG-1発現も検出され、これにより、抗原を受けた細胞における後期分化段階が示唆される(図3G)。対照的に、T由来NLV-TetT細胞におけるKLRG1の発現は、それぞれTCM由来NLV-TetT細胞およびTEM由来NLV-TetT細胞における発現よりも有意に低かった(図3H)。総合すると、これらのデータから、TSCMメモリーサブセット由来の抗原を受けた細胞では、TCM由来の抗原特異的T細胞およびTEM由来の抗原特異的T細胞では観察されないCD27hi、CD57lowおよびCD127intを有する表現型が実証されることが示唆される。
6.3.4.TSCM由来T細胞では優れた抗原特異的T細胞の増大を導く高い増殖能力が実証される
【0182】
上記のデータから、TSCM細胞が、抗原特異的活性化の間に分化の程度が低いメモリー表現型、およびより大きな増殖潜在性を持続させるより高いレベルのCD27発現を維持することが示される。これらのデータから、TSCM細胞が、抗原による再攻撃時のメモリー免疫応答のための、抗原を受けたT細胞の耐久性のあるレザバーとして役立ち得ることが示唆される。これに対処するために、EdU標識を使用して、CMV pp65を発現するAAPCを用いた抗原特異的刺激時の異なるメモリーT細胞サブセットのin vitro増殖能力を評価し、増殖しているT細胞の表現型を試験した(上記の第6.2節を参照されたい)。刺激した総T細胞集団内で、刺激の3日後に始まり、活発なT細胞増殖が観察された。NLV-TetT細胞内では、10.2%の増殖細胞が代表的なドナーにおいて3日目に観察され、刺激後5日目に52.2%のピークに達した(図4A)。3日目に、分化の程度が低いTSCMおよびTCM細胞は、増殖しているメモリーNLV-TetT細胞のそれぞれ32%および23%を構成した(図4B)。この時点で、総NLV-TetT細胞が22%のTSCM細胞および32%のTCM細胞を含有した(図4B)。5日目までに、TSCMサブセットおよびTCMサブセットは、増殖しているメモリーNLV-TetT細胞の21%に寄与する一方で、NLV-TetメモリーT細胞区画の13%に相当した(図4B)。これらのデータから、抗原特異的刺激時にTSCMサブセット内およびTCMサブセット内で初期の優先的増殖が存在することが示唆される(図4B)。このドナーでは、刺激後7日目までに大多数のNLV-TetT細胞がTEM表現型に分化し、この時点で、TEMは、増殖しているNLV-TetT細胞を構成する優性なサブセットである(図4B)。総合すると、TSCM細胞は、培養下3~5日でそれらの最大の増殖能力に達すると思われ、これにより、これがTSCM細胞の形質導入、所望であれば、特に、組み込みのために細胞増殖が必要になるベクター(例えば、レトロウイルスベクター)を用いた形質導入を行うのに最適な時間であることが示唆される。各メモリーサブセットの増殖潜在性を比較するために、これらのナイーブサブセットおよびメモリーサブセットのそれぞれに由来するNLV-TetT細胞の増大倍率を試験した。抗原特異的T細胞の収率を算出し、末梢血中に存在するTetT細胞の数に対して正規化した。2ラウンドの抗原曝露後、TSCM由来細胞内でTEM由来細胞と比較して有意に高い抗原特異的T細胞の増大倍率が観察された(p=0.03)(図4C)。TCM由来NLV-TetT細胞の全体的な増大倍率はTSCM由来細胞よりも低かったが、この差は統計的に有意ではなかった。Tドナーの一部については、抗原刺激前に末梢血中のTetT細胞のレベルが検出不可能なことに起因して同じ分析を実施することができなかった。総合すると、これらのデータから、TSCMサブセットに由来する細胞は、優れた抗原特異的細胞の増大を示し、T細胞メモリープール内の他のサブセットの有意な供給源としての機能を果たし得ることが示される。
6.3.5.in vitroで増大させたT由来T細胞およびTSCM由来T細胞では、TCM由来T細胞およびTEM由来T細胞と同様に特異的なエピトープに対する機能活性が実証される
【0183】
エピトープ特異的T細胞およびTSCM細胞が、in vitroにおける増大の間に分化の程度が低い表現型を維持すると考えると、これにより抗原に対するそれらの機能活性が妨害されないかという疑問が生じる。したがって、ナイーブT細胞サブセットに由来する細胞およびメモリーT細胞サブセットに由来する細胞の、抗原による二次刺激に応答してサイトカインを生成する能力を評価した。CD137は、サイトカインTNF-αおよびIFN-γの産生、ならびに細胞傷害性活性(CD107a脱顆粒アッセイによって評価される)を含めた機能活性と相関する、抗原特異的CD8T細胞のマーカーとして記載されている(Wolflら、2007年、Blood、110巻:201~210頁)。単離された、in vitroで増大させたナイーブ由来T細胞およびメモリー由来T細胞を自己由来NLVペプチドを負荷させたBLCLによって二次刺激した。図5Aにおいて代表的なドナーについて示されている通り、抗原による刺激後、CD8T細胞内のCD137発現細胞の割合が上昇した(T:3.36%、TSCM:37%、TCM、90.4%およびTEM、82%)。全てのサブセット(T、TSCM、TCMおよびTEM)に由来するT細胞がサイトカインを産生することができた。注目すべきことに、TおよびTSCMを含めた全てのサブセットに由来するT細胞において、TNF-αおよびIFN-γの両方を分泌することができるT細胞が観察された。異なるサブセットに由来するT細胞の細胞傷害性活性を実証するために、CD107a脱顆粒アッセイを実施した。T由来細胞およびTSCM由来細胞は、サイトカインを分泌するそれらの能力を補完することで、ペプチドが負荷された自己由来標的に対する機能的な細胞傷害活性も示した。T由来のCD8T細胞集団内およびTSCM由来のCD8T細胞集団内のCD107a発現細胞の百分率は、それぞれ20%および22%であった(図5B)。総合すると、エピトープ特異的T細胞は、T細胞およびTSCM細胞から、IL-7およびIL-15の存在下で抗原発現AAPCを用いて刺激することによってin vitroで増大させることができる。これらのエピトープ特異的T由来細胞およびTSCM由来細胞は、in vitroでの増大後に、in vitroで増大させたTCM由来のエピトープ特異的T細胞またはTEM由来のエピトープ特異的T細胞よりも分化の程度が低いメモリー表現型を示す。しかし、これらの抗原特異的T由来細胞およびTSCM由来細胞は、抗原刺激に応答してサイトカインを放出し、脱顆粒させるそれらの能力によって証明される通り、機能的である。
6.3.6.in vitroで増大させたTSCM由来のCMV特異的T細胞は、TCM由来集団およびTEM由来集団のものと同様のパブリックTCRのオリゴクローナルレパートリーを示す
【0184】
次に、ナイーブT細胞サブセットなならびにメモリーT細胞サブセットに由来するNLV-TetT細胞間のクローン多様性および/または類似性を試験した。NLV-TetT細胞内のTCR配列のクローン差異を評価するために、2名のCMV血清陽性ドナー由来のT由来NLV特異的T細胞、TSCM由来NLV特異的T細胞、TCM由来NLV特異的T細胞およびTEM由来NLV特異的T細胞を評価した。T細胞に由来するCMV特異的T細胞、TSCM細胞に由来するCMV特異的T細胞、TCM細胞に由来するCMV特異的T細胞およびTEM細胞に由来するCMV特異的T細胞内で共通するTCR配列が存在するかどうかをまず評価した。したがって、T由来T細胞、TSCM由来T細胞、TCM由来T細胞およびTEM由来T細胞を、人工抗原提示細胞を使用して30日にわたってin vitroで増大させ、NLV-TetT細胞およびNLV-TetT細胞を選別した。次いで、選別されたTetT細胞に対してTetT細胞と比較して次世代配列決定によってTCRレパートリー分析を実施した。TCR配列決定データをヌクレオチド配列の類似性について試料のオーバーラップによって解析した。この解析により、刺激後のTCM由来NLV-TetT細胞およびTEM由来NLV-TetT細胞のTCR配列間の大きなオーバーラップが実証される(96%のオーバーラップ、図6C)。TSCM由来細胞は、T由来細胞およびTCM由来細胞と高い類似性を示し、TEM由来細胞とは低い類似性を示す(TN:84%;TCM:91%;およびTEM:57%、図6C)。T由来Tet細胞も、TetCM由来細胞と高い程度のTCR類似性/オーバーラップを有したが(87%)、TEM由来細胞とのオーバーラップは非常に小さかった(14%)。ナイーブT細胞またはメモリーT細胞のいずれに由来するNLV-TetT細胞内でもTCRのオーバーラップは検出されなかった(データは示していない)。全体的に、これらのデータから、ナイーブ様Tサブセットに由来するNLVエピトープを認識するTetT細胞が、TSCM由来細胞およびTCM由来細胞によって発現されるTCR配列間に高い程度のオーバーラップを示すことが示される。TSCM由来T細胞およびTCM由来T細胞において検出されたTCR配列は、TEM由来細胞ではより低発生頻度で検出されたが、それにもかかわらず、全てのメモリーT細胞区画に由来するT細胞に共通する特異的パブリックTCRが有意な数存在した。
【0185】
次いで、末梢血中で抗原刺激の前に同じTCRのオーバーラップの傾向が存在するかどうかを試験した。したがって、T由来NLV-TetT細胞、TSCM由来NLV-TetT細胞、TCM由来NLV-TetT細胞およびTEM由来NLV-TetT細胞を刺激前に別のドナーから選別し、TCR配列をクローン性およびオーバーラップについて評価した。TCRクローン性は、1つまたは少数のクローンがレパートリーの優位を占める程度を記載するものであり、0が平らな分布であり、1が完全にオリゴクローナルな試料である。抗原性刺激前には、TEM NLV-TetT細胞は高い程度のクローン性を示し、クローン性指数は0.66であった(図6A)。比較すると、TCM NLV-TetT細胞のクローン性指数は0.06であり、これにより、TCRクローン多様性がより高いことが示唆され、一方、循環TSCM NLV-TetT細胞および循環T NLV-TetT細胞は、クローン指数が0.01であり、多様性が高度であった(図6A)。しかし、異なるサブセット内のTetT細胞を比較するオーバーラップ分析では、TEM画分中に検出されたNLV-TetT細胞は、TCMレパートリーにおいても示差的に出現した(94%、図6D)。他方では、高度に多様なTCRレパートリーを有したTSCM細胞は、TCM TCR配列およびTEM TCR配列と非常にわずかなオーバーラップを示す(それぞれ13.2%および24.6%)(図6D)。著しいことに、末梢血中のT NLV-Tet+T細胞とTSCM NLV-TetT細胞、TCM NLV-TetT細胞またはTEM NLV-TetT細胞の間でTCRのオーバーラップは同定されなかった(図6D)。
【0186】
in vitroでの抗原性刺激の15日後には、全てのサブセットについて、増大したNLV-TetT細胞は拘束クローン多様性をとり、クローン性指数は0.35から0.83までにわたった(図6B)。オーバーラップ分析データは、TCM由来NLV-TetT細胞とTEM由来NLV-TetT細胞が高度にオーバーラップしたTCR配列を有するという以前の観察と相関した(図6Eおよび6Fに示されている通り、15日目および30日目に97%および95%)。興味深いことに、TSCM由来TetT細胞では刺激後15日以内に拘束TCRレパートリーが発生し、これは、TCM由来TetT細胞およびTEM由来TetT細胞と高度に類似する(TSCM/TCM:86%およびTSCM/TEM:95%、図6E)。再刺激後初期のTSCM由来TetT細胞とは異なり、T由来TetT細胞は、TCM由来TetT細胞およびTEM由来TetT細胞と比較して全く異なるTCR配列を示し、オーバーラップはそれぞれ38%および3.8%であった(図6E)。TCM由来TetT細胞と共有するTCRを発現するT由来TetT細胞の有意な画分は、30日目までに検出することができるが、TEM由来TetT細胞と共有する画分は30日間の増大全体を通して小さいままであった。したがって、これらのデータから、抗原刺激時に、TSCMが、循環中に免疫優性NLV特異的TCM集団およびTEM集団を補充するための主要な即時供給源を構成することが示唆される。
【0187】
0日目のTCM TetT細胞集団およびTEM TetT細胞集団ならびに15日目のTSCM由来TetT細胞集団の追加的な著しい特徴は、これらのTetT細胞が、NLVペプチドに特異的なパブリックT細胞受容体において以前報告されたCDR3配列CASSPQTGASYGYTF(配列番号3)およびCASSPKTGAVYGYTF(配列番号4)を発現したことである(Yangら、2015年、J Biol Chem、290巻:29106~29119頁)。これらの配列はT由来TetT細胞においても検出されたが、発生頻度はTSCM由来TetT細胞、TCM由来TetT細胞またはTEM由来TetT細胞よりもはるかに低かった(表2)。本明細書における実施例のデータセットでは、T由来TetT細胞は他のサブセットに由来するTetT細胞と共有しない独特の配列も含有した。例えば、配列CASSYVTGTGNYGYTF(配列番号5)は刺激後のT由来TetT細胞においてのみ高い発生頻度で検出された(15日目および30日目にそれぞれ89%および87%、表2)。これにより、T由来TetT細胞が、抗原曝露時に最終的に潜在的に増大して免疫優性メモリーT細胞プールに入ることができ、また、抗原を認識する独特のクローンを増大させることもできることが示唆される。
【0188】
表2. CMV血清陽性ドナーにおいてナイーブA2-NLV特異的CD8T細胞およびメモリーA2-NLV特異的CD8T細胞内に出現する優性クローン型
【表2】
6.3.7.循環中のTSCM細胞の歪んだ増殖によって免疫優性は引き起こされない
【0189】
上記のデータから、TSCM由来T細胞が、抗原特異的T細胞の優れた増大を生じさせる高い増殖能力を示すことが示される。次に、エピトープ特異的T細胞免疫優性の現象が準優性エピトープと比較して、免疫優性に応答するT細胞内のTSCM細胞の過剰出現または優先的増殖のいずれかの結果であり得るかどうかを試験した。この問題に対処するために、抗原特異的刺激時の、それぞれHLA-A0201およびA2402が共遺伝するCMV血清陽性ドナー由来のTSCMサブセット、TCMサブセット、およびTEMサブセットのin vitro T細胞増殖能力を測定した。これらの対立遺伝子が共遺伝するドナーにおける免疫優性抗CMV T細胞応答は、HLA-A0201によって提示されるNLVエピトープを対象とすることが示されている(Lidehallら、2005年、J Clin Immunol、25巻:473~481頁)。同じドナー由来のT細胞をNLVが負荷された自己由来樹状細胞およびQYDが負荷された自己由来樹状細胞で刺激した。刺激後8日以内に、NLV-TetT細胞は31.7%まで濃縮され、QYD-TetT細胞は1.6%まで濃縮され、これにより、それぞれ免疫優性応答および免疫準優性応答が示される(図7A)。著しいことに、A2-NLV-TetT細胞およびA24-QYD-TetT細胞のどちらについても同様のメモリー表現型が見出され、培養下の免疫優性A2-NLV-TetT細胞内でTSCM由来T細胞の過剰出現は認められなかった(図7B)。免疫優性エピトープ特異的T細胞および準優性エピトープ特異的T細胞の相対的な増殖潜在性をさらに評価するために、それらを、増殖マーカーとしてEdU組み入れおよびアポトーシスマーカーとしてアネキシンV発現について試験した。A2-NLV-TetT細胞内およびA24-QYD-TetT細胞内で同様のレベルの増殖細胞が見出され、免疫優性A2-NLV-TetT細胞内で優先的増殖は認められなかった(図7B)。しかし、A24-QYD-TetT細胞は、A2-NLV-TetT細胞と比較して高い百分率のアネキシンV細胞を含有した(図7B)。これらのデータから、準優性エピトープ特異的T細胞内のT細胞アポトーシスがより高いレベルであることにより免疫優性T細胞の優先的な濃縮が促進される可能性があることが示唆される。
6.4.考察
【0190】
本明細書に記載のこの実施例では、健康な血清陽性ドナーの血液由来の四量体への免疫吸着によって単離されたCMV pp65の免疫優性NLVペプチドに特異的なHLA-A0201拘束T細胞、TSCM細胞、TCM細胞およびTEM細胞、ならびにこれらのサブセットに由来するT細胞を逐次的間隔のin vitro感作後に特徴付けた。同じT細胞サブセット集団に由来するTetT細胞およびTetT細胞も比較した。結果から、免疫応答の復活におけるT細胞メモリーの耐久性のあるレザバーとしてのTSCM細胞の主要な役割が示唆される。
【0191】
これらの異なるT細胞サブセットにおける抗原特異的T細胞のこの分析により、血液中のTetSCMが、T細胞と同様のCD45RACCR7およびCD62L表現型を示すが、CD95も発現することが実証された。抗原に感作させると、TetCD95細胞およびTetCD95SCM細胞はどちらも規則的に検出された。Tet細胞およびTetSCM細胞はどちらも、共刺激マーカーCD27をTetCMおよびTetEM細胞で検出されたものよりも有意に高いレベルで発現し、TetSCM細胞は活性化マーカーCD127のいくらか高い発現を示した。逆に、Tet細胞およびTetSCM細胞は、老化マーカーCD57をより低いレベルで発現し、Tet細胞はCD28を有意に低いレベルで発現した。著しいことに、in vitro感作後、全てのサブセットに由来するTetT細胞がPD-1を発現する細胞を同様に高い割合で生成し、これは、これらのサブセットに由来するTetT細胞ではPD-1細胞の割合が低いこととは有意に異なった。さらに、後期分化のマーカーであると通常考えられているキラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG1)がNLVペプチド応答性T由来T細胞、TSCM由来T細胞、TCM由来T細胞およびTEM由来T細胞において同程度に発現した。対照的に、このマーカーはTet由来T細胞では最小レベルで発現した。したがって、潜伏感染している健康な血清陽性個体では、ウイルス抗原による二次刺激により、全段階のT細胞メモリーにおいてPD-1およびKLRG-1の両方の発現が誘導される。しかし、Tet由来T細胞およびTetSCM由来T細胞はなお、より早い成熟化段階ならびに標的化移動および長期生存の能力に関連付けられるCD45RA、CCR7およびCD62Lマーカーを示差的に発現する。
【0192】
機能的レベルで、Tet由来T細胞、TetSCM由来T細胞、TetCM由来T細胞およびTetEM由来T細胞は全て、抗原刺激に応答してTNF-αおよびIFN-γを分泌し、脱顆粒することができる細胞を含有するが、これらの機能を示すTetEM由来T細胞およびTetCM由来T細胞の割合は、TetSCM由来T細胞またはTet由来T細胞よりも高かった。したがって、CD95T細胞がHCMV特異的刺激後にサイトカインを分泌することができないという以前の報告とは対照的に(Schmueck-Henneresseら、2015年、J Immunol、194巻:5559~5567頁)、本明細書に記載の実施例は、抗原応答性T由来T細胞がこれらのエフェクター機能を示し、それにより、抗原応答性TSCM由来T細胞と定性的に区別することができないという証拠を提供する。Pulkoら(2016年、Nat Immunol、17巻:966~975頁)による試験でも、ナイーブ表現型を有するヒトメモリーT細胞はウイルス抗原による二次刺激に応答して多数のサイトカインを分泌するが、メモリーT細胞およびエフェクターT細胞とは転写的に異なることが示されている。しかし、本明細書に記載の実施例では、TetCD95SCM細胞とTetCD95細胞がそれらの抗原刺激に対する増殖応答に基づいて機能的に区別可能であることは見出されなかった。実際に、それらの増殖応答はTetCM細胞およびTetEM細胞の増殖応答も有意に超えた。
【0193】
多様なTCRレパートリーにより、微生物エスケープ突然変異がレパートリー内に出現するTCRαβ対の1つによって認識される確率を上昇させることによる病原体の最適な制御が媒介されると仮定されている(Cornbergら、2006年、J Clin Invest、116巻:1443~1456頁;Meyer-Olsonら、2004年、J Exp Med、200巻:307~319頁)。本明細書に記載の実施例におけるTCR配列決定解析により、末梢循環中では、同じエピトープNLVを認識するT細胞およびTSCM細胞がTCM細胞およびTEM細胞よりも多様であることが示された。同じ病原体を認識するT細胞およびTSCM細胞のこの広範なTCRレパートリーによりウイルス感染のより良好な制御がもたらされるという仮説を立てることができる。しかし、抗原刺激時に、本明細書における実施例では、TSCM細胞が、抗原との遭遇後に15日以内にオリゴクローナルであるT細胞を生成すること、さらに、これらのT細胞が、循環中で優性であるTetEM細胞およびTetCM細胞のレパートリーと密接に関連するレパートリーを発現することが見出された。刺激後初期にTSCM由来のCMV特異的T細胞がTCM由来CMV特異的T細胞およびTEM由来CMV特異的T細胞とTCR使用の高いオーバーラップを共有するという事実から、TSCM由来T細胞が血液中の免疫優性メモリーT細胞の集団の再構成において特に有効であるという証拠がもたらされる。さらに、他のメモリーT細胞サブセットのものとは異なる、抗原刺激後にT細胞から生成されるクローンの異種スペクトルにより、T細胞が、必要であればウイルスバリアントを制御するために最適な結合活性のメモリーT細胞を増大のために選択することができる、より広範なスペクトルの結合特性を有するペプチド特異的T細胞を選択することができる前駆細胞のプールとして役立つことが示唆される。
【0194】
潜伏ウイルスに対するT細胞応答は、多くの場合、少数の利用可能な抗原エピトープに焦点が当てられ、狭いTCRレパートリーが使用される、これは、「免疫優性」と称される現象である。抗原の提示、ペプチド-MHC結合親和性およびナイーブT細胞プール内の前駆体の安定性またはTCR結合活性および発生頻度を含めたいくつもの因子が免疫優性に影響を及ぼすことが報告されている(Khanら、2007年、J Immunol、178巻:4455~4465頁)。本明細書における実施例で試験した2ドナーでは、免疫優性エピトープに応答するTSCM由来T細胞の過剰出現または優先的増殖は、準優性エピトープに応答するものと比較して、見出されなかった。その代わりに、準優性エピトープ特異的T細胞内では、免疫優性T細胞の優先的な濃縮を促進する可能性がある、より高いレベルのT細胞アポトーシスが観察された。以前の試験によっても、pMHC複合体に結合するTCR特性によりクローンのアポトーシスも調節される可能性があることが示されている(Tscharkeら、2015年、Nat Rev Immunol、15巻:705~716頁)。実際に、pMHC-Iに対して閾値下の親和性を有するTCRは応答の初期にBCL-2ファミリーメンバーであるBIM、NOXAおよびMCL1によって調節されるプロセスによって優先的にアポトーシスを受ける(Wensveenら、2010年、Immunity、32巻:754~765頁)。したがって、本明細書における実施例のデータは、他のデータと一致し、適応免疫応答を適合させ、それにより、持続性がより高いクローンの選択を増強するためにアポトーシスが極めて重要であり得ることが示唆される。
【0195】
SCM細胞から生成されるNLV HLA-A0201エピトープ特異的TetT細胞の別の特徴は、NLVエピトープに特異的なパブリックT細胞受容体について以前報告された配列と同一のアミノ酸配列を有するT細胞受容体を発現することであった(Yangら、2015年、J Biol Chem、290巻:29106~29119頁)。パブリックT細胞受容体は、多数の個体において検出される高度に相同な配列を有するペプチド特異的TCRである(Liら、2012年、Cell Res、22巻:33~42頁)。パブリックTCRは、種々のヒトウイルスに応答するT細胞に関して記載されている(Argaetら、1994年、J Exp Med、180巻:2335~2340頁)。NLVペプチド特異的T細胞レパートリーは、パブリックTCRの高い普及率を示すことが示されている(Wangら、2012年、Sci Transl Med、4巻:128ra142頁;Nguyenら、2014年、J Immunol、192巻:5039~5049頁;Trautmannら、2005年、J Immunol、175巻:6123~6132頁)。実際に、7種のパブリックCDR3αモチーフおよび6種のCDR3βモチーフが全NLV特異的TCR応答の約70%を占める(Wangら、2012年、Sci Transl Med、4巻:128ra142頁)。本明細書における実施例では、他の公開されたモチーフの中で報告されている発生頻度が最も高いS TG GY(配列番号16;nは、任意の長さの任意のアミノ酸配列および任意のアミノ酸の組合せを示す)モチーフを有する、刺激後にT由来TetT細胞内、TSCM由来TetT細胞内、TCM由来TetT細胞内およびTEM由来TetT細胞内に出現する共通のTCRβCDR3も同定された。2つの他の試験によっても、両方のCMV血清陽性ドナー由来のHLA-A0201 NLV特異的T細胞内で同じS TG GY(配列番号16;nは、任意の長さの任意のアミノ酸配列および任意のアミノ酸の組合せを示す)モチーフが示された(Hanleyら、2015年、Sci Transl Med、7巻:285ra263頁;Nellerら、2015年、Immunol Cell Biol、93巻:625~633頁)。NLV-HLA-A2と複合体を形成した2種のパブリックTCRの結晶構造が報告されている(Yangら、2015年、J Biol Chem、290巻:29106~29119頁)。これらおよび他の試験(Yangら、2015年、J Biol Chem、290巻:29106~29119頁;Welshら、2010年、Immunol Rev、235巻:244~266頁)により、パブリックCDR3αおよびβドメインの種々の対形成により同じペプチドMHCリガンドを認識する親和性が高いTCRの多数性が媒介され得る証拠がもたらされた(Yangら、2015年、J Biol Chem、290巻:29106~29119頁)。現在の証拠から、パブリックTCRが、「収束組換え(convergent recombination)」と称されるランダムなプロセスであるランダムV(D)J遺伝子再構成の間により頻繁に産生されることが示される(Milesら、2011年、Immunol Cell Biol、89巻:375~387頁)。その後、パブリックTCRをコンビナトリアルバイアスによってさらに選択することができる。そのようなパブリックTCRは、潜在的により大きく伝播し、TCRレパートリーの他のクローンよりも良好なウイルス制御を確立し得る。
【0196】
結論として、第1に、本明細書における実施例では、抗原特異的TSCM由来T細胞が、単一のエピトープに応答し、T由来細胞とTCM由来細胞の中間の組織ホーミング、共刺激マーカーおよび老化マーカーの増大プロファイルを示す他のメモリーT細胞集団に由来するものよりも分化の程度が低い表現型を示し、維持することが実証された。さらに、TetCMV pp65 NLV特異的T細胞がCD95細胞区画に由来する細胞で規則的に検出された。しかし、抗原特異的TSCM細胞は、Tet細胞ならびにTetCM細胞およびTetEM細胞とは、抗原刺激に応答してはるかに高い程度に増殖するという点で異なる。第2に、抗原特異的Tet由来細胞およびTetSCM由来細胞は、Tet由来細胞およびTetSCM由来細胞とは異なり、PD-1およびKLRG-1をTetCM由来細胞およびTetEM由来細胞による発現と同様のレベルで発現することが見出された。抗原特異的Tet由来細胞およびTetSCM由来細胞はまた、エフェクター機能も示し、これにより、TNF-α、IFN-γおよびグランザイムBを生成する能力が示される。第3に、この実施例により、抗原刺激に応答して、TSCM細胞が顕著な増殖を受けるだけでなく、TCR配列決定によると、HLA-A0201血清陽性ドナーの血液中で免疫優性であるNLV/HLA-A0201特異的TEM細胞およびTCM細胞によって発現されるものと同一のパブリックTCRである、HLA-A0201によって提示されるCMV
pp65 NLVエピトープに特異的なT細胞クローンを急速に選択することが実証された。TetSCM細胞とは異なり、Tet細胞は、血液中のTEM集団およびTCM集団において検出される免疫優性TCRを発現するクローンを急速に選択しない。そうではなく、Tet細胞は、in vitroで刺激して15日目にTSCM由来細胞において検出されたものと同様に、血液中のNLV特異的TCM細胞およびTEM細胞において検出されたものよりも著しく変動する別個のレパートリーを維持する。最後に、本明細書における実施例により、HLA-A0201によって提示される免疫優性エピトープNLVに応答して増殖するTSCM細胞、TCM細胞およびTEM細胞の増大が、同じドナーによって発現されるHLA-A2402によって提示される準優性QYDエピトープに応答した増殖と同様であり、アポトーシスを受ける免疫優性NLV特異的TSCM由来細胞、TCM由来細胞、およびTEM由来細胞の割合は準優性QYD特異的対応物のものよりも著しく小さいことが示唆される。
【0197】
これらの所見には、T細胞に基づく免疫療法の設計のための意味がある。この実施例により、TSCMサブセットが、二次抗原攻撃時に循環中の免疫優性TEM細胞およびTCM細胞を再増殖させるための主要な耐久性のあるレザバーとしての機能を果たす証拠がもたらされた。TSCMが濃縮されたウイルス特異的T細胞株の養子移入により、迅速かつ広範囲にわたる増殖および持続性の増強が可能な免疫優性ウイルス特異的T細胞を提供することによってより良好な疾患制御を潜在的にもたらすことができる。
7.参照による組み込み
【0198】
本明細書において引用された全ての参考文献は、個々の刊行物または特許または特許出願が具体的にかつ個別にその全体があらゆる目的に関して参照により組み込まれることが示されたものと同じ程度に、その全体があらゆる目的に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0199】
当業者には明らかになる通り、本発明の多くの改変および変形をその主旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は単に例として提供され、本発明は、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ、そのような特許請求の範囲に権利が与えられる等価物の全範囲と共に、限定されるものとする。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、(a)ヒト血液細胞の集団を、前記病原体またはがんの1つまたは複数の抗原に培養下で所定期間にわたりex vivo感作させるステップであって、前記期間の開始時に前記ヒト血液細胞の集団が少なくとも50%の幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)を含有する、ステップと、(b)(i)前記ex vivo感作させたヒト血液細胞の集団、または(ii)それに由来する、前記病原体もしくはがんの1つもしくは複数の抗原を認識する抗原特異的T細胞を含む細胞を凍結保存するステップとを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法。
(項目2)
凍結保存するステップの後に、前記ex vivo感作させたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍するステップ、および必要に応じて、培養下で増大させるステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記培養下におく期間が、9~21日間の範囲である、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記培養下におく期間が、9~14日間の範囲である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記培養下におく期間が、14日間である、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記ex vivo感作ステップが、前記ヒト血液細胞の集団を、前記1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質と共培養することを含む、項目1から5までのいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記ex vivo感作ステップが、前記ヒト血液細胞の集団を、前記1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞と共培養することを含む、項目1から5までのいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記抗原提示細胞が、樹状細胞、サイトカインにより活性化された単球、末梢血単核細胞(PBMC)、エプスタイン・バーウイルスにより形質転換されたBリンパ芽球様細胞株細胞(EBV-BLCL細胞)、または人工抗原提示細胞(AAPC)である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記抗原提示細胞がAAPCである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記抗原提示細胞が、前記1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質が負荷されたものである、項目7から9までのいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記抗原提示細胞が、前記1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質を組換え発現するように遺伝子操作されたものである、項目7から9までのいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質が、前記1つまたは複数の抗原に由来するオーバーラップするペプチドのプールである、項目6、10および11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記オーバーラップするペプチドのプールが、オーバーラップするペンタデカペプチドのプールである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質が、前記1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のタンパク質である、項目6、10および11のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が、前記1つまたは複数の抗原を認識するパブリックT細胞受容体(TCR)を内因的に発現する抗原特異的T細胞を含む、項目1から14までのいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が、前記1つまたは複数の抗原を認識するパブリックTCRを組換え発現する抗原特異的T細胞を含む、項目1から14までのいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記ヒト血液細胞の集団にパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記形質導入するステップが、前記ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で、前記ヒト血液細胞の集団に前記パブリックTCRをコードする前記核酸を形質導入することを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記1つまたは複数の抗原がサイトメガロウイルス(CMV)pp65であり、前記パブリックTCRが配列番号3の相補性決定領域(CDR)3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む、項目15から18までのいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記1つまたは複数の抗原がCMV pp65であり、前記パブリックTCRが配列番号4のCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む、項目15から18までのいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が、前記1つまたは複数の抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を組換え発現する抗原特異的T細胞を含む、項目1から14までのいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記ヒト血液細胞の集団にCARをコードする核酸を形質導入するステップをさらに含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で、前記ヒト血液細胞の集団に前記CARをコードする前記核酸を形質導入するステップをさらに含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で、前記ヒト血液細胞の集団に前記病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップであって、前記ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法。
(項目25)
前記1つまたは複数の抗原がCMV pp65であり、前記パブリックTCRが配列番号3のCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記1つまたは複数の抗原がCMV pp65であり、前記パブリックTCRが配列番号4のCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含む、項目24に記載の方法。
(項目27)
CMV感染症を有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団に、CMV pp65を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップであって、前記パブリックTCRが配列番号3のCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含み、前記ヒト血液細胞の集団が少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法。
(項目28)
CMV感染症を有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団に、CMV pp65を認識するパブリックTCRをコードする核酸を形質導入するステップであって、前記パブリックTCRが配列番号4のCDR3を含む可変ドメインを含むβ鎖を含み、前記ヒト血液細胞の集団が少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法。
(項目29)
病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成する方法であって、ヒト血液細胞の集団を3~5日間培養した時点で前記ヒト血液細胞の集団に前記病原体またはがんの1つまたは複数の抗原を認識するCARをコードする核酸を形質導入するステップであって、前記ヒト血液細胞の集団が、少なくとも50%のTSCM細胞を含有する、ステップを含み、それにより、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を産生する方法。
(項目30)
前記形質導入するステップの後に、前記形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を凍結保存するステップをさらに含む、項目24から29までのいずれかに記載の方法。
(項目31)
前記凍結保存するステップの後に、前記形質導入されたヒト血液細胞またはそれに由来する細胞の集団を解凍し、必要に応じて培養下で増大させるステップをさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記ヒト血液細胞の集団が、少なくとも90%のTSCM細胞を含有する、項目1から31までのいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記ヒト血液細胞の集団が、少なくとも95%のTSCM細胞を含有する、項目1から31までのいずれかに記載の方法。
(項目34)
前記ヒト血液細胞の集団が、少なくとも99%のTSCM細胞を含有する、項目1から31までのいずれかに記載の方法。
(項目35)
前記ヒト血液細胞の集団が、100%のTSCM細胞を含有する、項目1から31までのいずれかに記載の方法。
(項目36)
前記ヒト血液細胞の集団が、10%未満のナイーブT(T)細胞を含有する、項目1から35までのいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記ヒト血液細胞の集団が、5%未満のT細胞を含有する、項目1から35までのいずれかに記載の方法。
(項目38)
前記ヒト血液細胞の集団が、1%未満のT細胞を含有する、項目1から35までのいずれかに記載の方法。
(項目39)
前記ヒト血液細胞の集団が、T細胞を含有しない、項目1から35までのいずれかに記載の方法。
(項目40)
前記ヒト血液細胞の集団をヒト細胞試料から引き出すステップをさらに含む、項目1から39までのいずれかに記載の方法。
(項目41)
前記引き出すステップが、前記ヒト細胞試料からTSCM細胞を濃縮することを含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記濃縮するステップが、CD3CD62LCD45ROCD95である細胞を選択することを含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記引き出すステップが、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって前記ヒト細胞試料からTSCM細胞を選別することを含む、項目40から42までのいずれかに記載の方法。
(項目44)
前記ヒト血液細胞の集団が、前記1つまたは複数の抗原について血清陽性であるヒトドナーに由来するものである、項目1から43までのいずれかに記載の方法。
(項目45)
前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が、前記1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質が負荷されていないまたはそれを発現するように遺伝子操作されていない抗原提示細胞に対するin vitroにおける実質的な細胞傷害性を欠く、項目1から44までのいずれかに記載の方法。
(項目46)
前記ex vivo感作ステップが、前記ヒト血液細胞の集団を、前記病原体の1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む、項目1から45までのいずれかに記載の方法。
(項目47)
前記病原体が、ウイルス、細菌、真菌、蠕虫または原生生物である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記病原体がウイルスである、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記ウイルスがCMVである、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記ex vivo感作ステップが、前記ヒト血液細胞の集団を、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む、項目1から18まで、21から24まで、および29から45までのいずれかに記載の方法。
(項目51)
前記ex vivo感作ステップが、前記ヒト血液細胞の集団を、BKV、JCV、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ポックスウイルス、ラブドウイルス、またはパラミクソウイルスの1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む、項目1から18まで、21から24まで、および29から45までのいずれかに記載の方法。
(項目52)
前記ex vivo感作ステップが、前記ヒト血液細胞の集団を、前記がんの1つまたは複数の抗原にex vivo感作させることを含む、項目1から18まで、21から24まで、および29から45までのいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記がんが、血液がんである、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記がんが、多発性骨髄腫または形質細胞白血病である、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記がんの前記1つまたは複数の抗原が、ウィルムス腫瘍1(WT1)である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記がんが、乳がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、膵臓がん、喉頭がん、食道がん、精巣がん、肝臓がん、耳下腺がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がん、脳がん、または皮膚がんである、項目52に記載の方法。
(項目57)
病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法であって、(i)項目1から56までのいずれかに記載の方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成するステップと、(ii)前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に投与するステップとを含む方法。
(項目58)
病原体またはがんを有するヒト患者を処置する方法であって、抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に投与するステップであって、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団が、項目1から56までのいずれかに記載の方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の産生物である、ステップを含む方法。
(項目59)
前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される前記抗原特異的T細胞が、前記ヒト患者の疾患細胞と共有するHLA対立遺伝子によって拘束される、項目57または58に記載の方法。
(項目60)
前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団に含有される前記抗原特異的T細胞が、前記ヒト患者の前記疾患細胞と8つのHLA対立遺伝子のうち少なくとも2つを共有する、項目57から59までのいずれかに記載の方法。
(項目61)
前記8つのHLA対立遺伝子が、2つのHLA-A対立遺伝子、2つのHLA-B対立遺伝子、2つのHLA-C対立遺伝子、および2つのHLA-DR対立遺伝子である、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記ヒト血液細胞の集団が、前記ヒト患者に対して同種異系であるヒトドナーに由来するものである、項目57から61までのいずれかに記載の方法。
(項目63)
前記ヒト患者が、移植ドナーからの移植のレシピエントであり、前記ヒトドナーが、移植ドナーとは異なる第三者ドナーである、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記投与するステップが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、前記ヒト患者に前記ヒト患者1kg当たり前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む、項目57から63までのいずれかに記載の方法。
(項目65)
前記投与するステップが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に前記ヒト患者1kg当たり前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む、項目57から63までのいずれかに記載の方法。
(項目66)
前記投与するステップが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に前記ヒト患者1kg当たり前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む、項目57から63までのいずれかに記載の方法。
(項目67)
前記投与するステップが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に前記ヒト患者1kg当たり前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約5×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む、項目57から63までのいずれかに記載の方法。
(項目68)
前記投与するステップが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に前記ヒト患者1kg当たり前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の細胞約1×10個未満またはそれと等しい用量で投与することを含む、項目57から63までのいずれかに記載の方法。
(項目69)
前記投与するステップが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に前記用量で毎週投与することを含む、項目57から68までのいずれかに記載の方法。
(項目70)
前記投与するステップが、ボーラス静脈内注入によるものである、項目57から69までのいずれかに記載の方法。
(項目71)
前記投与するステップが、少なくとも2用量の、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に投与することを含む、項目57から70までのいずれかに記載の方法。
(項目72)
前記投与するステップが、2用量、3用量、4用量、5用量、または6用量の、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を前記ヒト患者に投与することを含む、項目57から70までのいずれかに記載の方法。
(項目73)
前記投与するステップが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり1用量の第1のサイクル、その後、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の用量を投与しない休薬期間、その後、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり前記1用量の第2のサイクルを投与することを含む、項目57から70までのいずれかに記載の方法。
(項目74)
前記投与するステップが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を、3週間連続して1週間当たり1用量のサイクルを2回、3回、4回、5回、または6回投与することを含み、各サイクルが、前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団の用量を投与しない休薬期間によって隔てられる、項目57から70までのいずれかに記載の方法。
(項目75)
前記休薬期間が、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間である、項目73または74に記載の方法。
(項目76)
前記休薬期間が、約3週間である、項目73または74に記載の方法。
(項目77)
前記抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を投与するステップにより前記ヒト患者においていかなる移植片対宿主病(GvHD)も生じない、項目57から76までに記載の方法。
(項目78)
病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団であって、項目1から56までのいずれかに記載の方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の産生物である、集団。
(項目79)
病原体またはがんを有するかまたはその疑いがあるヒト患者への治療的投与のための抗原特異的T細胞を含む細胞の集団であって、項目1、項目3から30まで、および項目32から56までのいずれかに記載の方法に従って抗原特異的T細胞を含む細胞の集団を生成することを含む方法の産生物であり、凍結保存されている、集団。
(項目80)
項目78または79に記載の複数の集団を含む細胞バンク。
図1
図2A
図2B
図2C
図2DE
図3A
図3B
図3C
図3D
図3EFGH
図3IJ
図4A
図4B
図4C
図5A-1】
図5A-2】
図5B
図6AB
図6CDEF
図6G
図7A-1】
図7A-2】
図7B-1】
図7B-2】
【配列表】
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【外国語明細書】