(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087341
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】抗クローディン18.2抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220602BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220602BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220602BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220602BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220602BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220602BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022068259
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2020540529の分割
【原出願日】2019-05-20
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/087443
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520266960
【氏名又は名称】ラノバ メディシンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー ルンシェン
(57)【要約】
【課題】抗クローディン18.2抗体およびその使用を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態によれば、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、さらに、野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の少なくとも約1%である親和性で、CLDN18.2タンパク質のM149L突然変異体と結合し、さらに、野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の約1%を超える親和性では、ヒト野生型クローディン18.1(CLDN18.1)タンパク質と結合しない、抗体またはその断片が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその抗原結合性断片であって、前記抗体またはその抗原結合性断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDRL1が、配列番号304のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号253のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号306のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号307のアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
配列番号206のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、および配列番号205のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその抗原結合性断片であって、前記抗体またはその抗原結合性断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDRL1が、配列番号304のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号229のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号242のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号263のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号289のアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
配列番号203のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、および配列番号181のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその抗原結合性断片であって、前記抗体またはその抗原結合性断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDRL1が、配列番号309のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号246のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号311のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号294のアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項6】
配列番号202のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、および配列番号197のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、請求項5に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項7】
前記野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の少なくとも10%である親和性で、前記CLDN18.2のM149L突然変異体と結合する、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項8】
前記抗体またはその断片と前記野生型CLDN18.2タンパク質との間の結合に、前記野生型CLDN18.2タンパク質の、
Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56およびS58からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基;ならびに
Y169およびG172からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基
を含むアミノ酸残基が関与する、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項9】
前記結合に、前記CLDN18.2タンパク質のW30がさらに関与する、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項10】
前記結合に、前記野生型CLDN18.2タンパク質の、
W30;
G48、L49、W50、C53、V54、R55およびE56からなる群から選択される2つまたはそれよりも多くのアミノ酸残基;ならびに
Y169およびG172からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基
を含むアミノ酸残基が関与する、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項11】
前記結合に、前記野生型CLDN18.2タンパク質のW30、G48、L49、W50、C53、E56およびY169を含むアミノ酸残基が関与する、請求項10に記載の抗体またはその断片。
【請求項12】
前記結合に、少なくともY46またはS58が関与する、請求項8から11のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
【請求項13】
前記結合が、D28、Q33、N38、V43、G59およびV79を含まない、請求項8から11のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
【請求項14】
第2の標的タンパク質に対する結合特異性をさらに有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項15】
前記第2の標的タンパク質が、CD3、CD47、PD1、PD-L1、LAG3、TIM3、CTLA4、VISTA、CSFR1、A2AR、CD73、CD39、CD40、CEA、HER2、CMET、4-1BB、OX40、SIRPA CD16、CD28、ICOS、CTLA4、BTLA、TIGIT、HVEM、CD27、VEGFRおよびVEGFからなる群から選択される、請求項14に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド。
【請求項18】
それを必要とする患者におけるがんを処置するための組成物であって、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む、組成物。
【請求項19】
前記がんが、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頸部がん、消化器がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記がんが胃がんである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記患者が、CLDN18.2タンパク質(配列番号30)のM149L突然変異体を有する、請求項19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
クローディンは、密接な細胞間結合の重要な構成成分を形成するタンパク質のファミリーである。それらは、細胞の間の分子の流れを制御する傍細胞障壁を確立する。タンパク質は、細胞質にN末端およびC末端を有する。異なるクローディンは、異なる組織で発現し、それらの機能の変化は、それぞれの組織のがんの形成に関連付けられている。クローディン-1は結腸がんにおいて発現し、クローディン-18は胃がんにおいて発現し、クローディン-10は肝細胞癌において発現する。
【0002】
クローディン-18は、アイソフォーム1およびアイソフォーム2の2つのアイソフォームを有する。アイソフォーム2(クローディン18.2またはCLDN18.2)は、非常に選択的な細胞系統マーカーである。正常組織におけるクローディン18.2の発現は、胃粘膜の分化した上皮細胞に厳密に限局するが、胃幹細胞ゾーンに存在しなかった。クローディン18.2は、悪性形質転換において保持され、相当な割合の原発胃がんおよびその転移において発現していた。クローディン18.2の異所性活性化は、高い頻度で、膵臓、食道、卵巣および肺の腫瘍においても見られた。これらのデータは、CLDN18.2が、多様なヒトのがんにおける頻繁な異所性活性化を伴う、正常な組織における非常に制限された発現パターンを有することを示唆した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
野生型クローディン18.2および一般的な突然変異体のM149Lの両方に高い親和性を有する抗クローディン18.2抗体が、本明細書において発見される。したがって、このような抗体は、野生型およびM149L突然変異体のクローディン18.2タンパク質の両方を標的にする能力がある固有の利点を有する。この利点は、かなりの部分のがん患者が、この一般的な突然変異を保有するので、重要である。また、本開示の抗体は、他のクローディン18のアイソフォームである、クローディン18.1に結合せず、したがって非常に選択的である。
【0004】
本開示の一実施形態によれば、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、さらに、野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の少なくとも約1%である親和性で、CLDN18.2タンパク質のM149L突然変異体と結合し、さらに、野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の約1%を超える親和性では、ヒト野生型クローディン18.1(CLDN18.1)タンパク質と結合しない、抗体またはその断片が提供される。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.1タンパク質と結合しない。
【0005】
一実施形態では、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片と野生型CLDN18.2タンパク質との間の結合に、野生型CLDN18.2タンパク質の、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56およびS58からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基;ならびにY169およびG172からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むアミノ酸残基が関与する、抗体またはその断片も提供される。一部の実施形態では、結合に、CLDN18.2タンパク質のW30がさらに関与する。
【0006】
一部の実施形態では、結合に、野生型CLDN18.2タンパク質の、W30;G48、L49、W50、C53およびE56からなる群から選択される2つまたはそれよりも多くのアミノ酸残基;ならびにY169およびG172からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むアミノ酸残基が関与する。一部の実施形態では、結合に、野生型CLDN18.2タンパク質のW30、G48、L49、W50、C53、E56およびY169を含むアミノ酸残基が関与する。
【0007】
疾患および状態の処置のための方法および使用も提供される。一実施形態では、それを必要とする患者におけるがんを処置する方法であって、本開示の抗体またはその断片を患者に投与するステップを含む、方法が提供される。別の実施形態では、それを必要とする患者におけるがんを処置する方法であって、(a)細胞を、in vitroで、本開示の抗体またはその断片で処理するステップ、および(b)処理された細胞を患者に投与するステップを含む、方法が提供される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、さらに、前記野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の少なくとも約1%である親和性で、前記CLDN18.2タンパク質のM149L突然変異体と結合し、さらに、前記野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の約1%を超える親和性では、ヒト野生型クローディン18.1(CLDN18.1)タンパク質と結合しない、抗体またはその断片。
(項目2)
前記CLDN18.1タンパク質と結合しない、項目1に記載の抗体またはその断片。
(項目3)
前記野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の少なくとも10%である親和性で、前記CLDN18.2のM149L突然変異体と結合する、項目1または2に記載の抗体またはその断片。
(項目4)
前記親和性が、細胞膜上で発現するクローディンタンパク質を用いてin vitroで測定される、いずれかの先行する項目に記載の抗体またはその断片。
(項目5)
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、前記抗体またはその断片と前記野生型CLDN18.2タンパク質との間の結合に、前記野生型CLDN18.2タンパク質の、
Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56およびS58からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基;ならびに
Y169およびG172からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基
を含むアミノ酸残基が関与する、抗体またはその断片。
(項目6)
前記結合に、前記CLDN18.2タンパク質のW30がさらに関与する、項目5に記載の抗体またはその断片。
(項目7)
前記結合に、前記野生型CLDN18.2タンパク質の、
W30;
G48、L49、W50、C53、V54、R55およびE56からなる群から選択される2つまたはそれよりも多くのアミノ酸残基;ならびに
Y169およびG172からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基
を含むアミノ酸残基が関与する、項目5または6に記載の抗体またはその断片。
(項目8)
前記結合に、前記野生型CLDN18.2タンパク質のW30、G48、L49、W50、C53、E56およびY169を含むアミノ酸残基が関与する、項目7に記載の抗体またはその断片。
(項目9)
前記結合に、少なくともY46またはS58が関与する、項目5から8のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
(項目10)
前記結合が、D28、Q33、N38、V43、G59およびV79を含まない、項目5から9のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
(項目11)
前記野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の少なくとも約1%である親和性で、前記CLDN18.2タンパク質のM149L突然変異体とさらに結合する、項目5から10のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
(項目12)
前記野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の約1%を超える親和性で、ヒト野生型クローディン18.1(CLDN18.1)タンパク質と結合しない、項目11に記載の抗体またはその断片。
(項目13)
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、前記抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDRL1が、配列番号208~226の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号208~226のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;
前記CDRL2が、配列番号227~233の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号227~233のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;
前記CDRL3が、配列番号3、8、13、19および42~58の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号3、8、13、19および42~58のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;
前記CDRH1が、配列番号234~254の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号234~254のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;
前記CDRH2が、配列番号255~280の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号255~280のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;
前記CDRH3が、配列番号281~303の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号281~303のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含む、
抗体またはその断片。
(項目14)
前記CDRL1が、配列番号208~226、304~305および308~309の群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記CDRL2が、配列番号227~233の群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記CDRL3が、配列番号3、8、13、19、20および42~58の群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記CDRH1が、配列番号234~254の群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記CDRH2が、配列番号255~280、306、310および311の群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記CDRH3が、配列番号281~303、307および312~314の群から選択されるアミノ酸配列を含む、
項目13に記載の抗体またはその断片。
(項目15)
前記CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2およびCDRH3が、表A’の組合せ1~33、あるいはCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2およびCDRH3の1つまたは複数が、それぞれ、1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、保存的アミノ酸置換またはそれらの組合せを含む組合せ1~33のそれぞれから選択される、項目13に記載の抗体またはその断片。
(項目16)
前記CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2およびCDRH3が、表A’の組合せ1~33から選択される、項目15に記載の抗体またはその断片。
(項目17)
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、前記抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDRL1が、配列番号210、304もしくは305のアミノ酸配列、または配列番号210、304もしくは305からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列、または配列番号227からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号3、19もしくは20のアミノ酸配列、または配列番号3、19もしくは20からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号253のアミノ酸配列、または配列番号253からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号278もしくは306のアミノ酸配列、または配列番号278もしくは306からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号303もしくは307のアミノ酸配列、または配列番号303もしくは307からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、
抗体またはその断片。
(項目18)
抗体またはその断片であって、
CDRL1が、配列番号210、304または305のアミノ酸配列を含み、
CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列を含み、
CDRL3が、配列番号3、19または20のアミノ酸配列を含み、
CDRH1が、配列番号253のアミノ酸配列を含み、
CDRH2が、配列番号278または306のアミノ酸配列を含み、
CDRH3が、配列番号303または307のアミノ酸配列を含む、
抗体またはその断片。
(項目19)
配列番号141、192~195および206~207からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号141、192~195および206~207からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖可変領域を含む、項目18に記載の抗体またはその断片。
(項目20)
配列番号171、188~191および205からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号171、188~191および205からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖可変領域を含む、項目18または19に記載の抗体またはその断片。
(項目21)
前記CDRL1が、配列番号304のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号253のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号306のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号307のアミノ酸配列を含む、
項目17に記載の抗体またはその断片。
(項目22)
配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号205のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目21に記載の抗体またはその断片。
(項目23)
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、前記抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDRL1が、配列番号210、304もしくは305のアミノ酸配列、または配列番号210、304もしくは305からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号229のアミノ酸配列、または配列番号229からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号8からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号242のアミノ酸配列、または配列番号242からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号263のアミノ酸配列、または配列番号263からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号289のアミノ酸配列、または配列番号289からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、
抗体またはその断片。
(項目24)
前記CDRL1が、配列番号210、304または305のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号229のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号242のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号263のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号289のアミノ酸配列を含む、
項目23に記載の抗体またはその断片。
(項目25)
配列番号124、185~187および203~204からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号124、185~187および203~204からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖可変領域を含む、項目24に記載の抗体またはその断片。
(項目26)
配列番号153および181~184からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号153および181~184からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖可変領域を含む、項目24または25に記載の抗体またはその断片。
(項目27)
前記CDRL1が、配列番号304のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号229のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号242のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号263のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号289のアミノ酸配列を含む、
項目23に記載の抗体またはその断片。
(項目28)
配列番号203のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号181のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目27に記載の抗体またはその断片。
(項目29)
野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、前記抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDRL1が、配列番号216、308もしくは309のアミノ酸配列、または配列番号216、308もしくは309からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列、または配列番号227からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号13のアミノ酸配列、または配列番号13からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号246のアミノ酸配列、または配列番号246からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号268、310もしくは311のアミノ酸配列、または配列番号268、310もしくは311からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号294、312、313もしくは314のアミノ酸配列、または配列番号294、312、313もしくは314からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、
抗体またはその断片。
(項目30)
前記CDRL1が、配列番号216、308または309のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号246のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号268、310または311のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号294、312、313または314のアミノ酸配列を含む、
項目29に記載の抗体またはその断片。
(項目31)
配列番号129、178~180および201~202からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号129、178~180および201~202からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖可変領域を含む、項目30に記載の抗体またはその断片。
(項目32)
配列番号159、175~177および196~200からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号159、175~177および196~200からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖可変領域を含む、項目30または31に記載の抗体またはその断片。
(項目33)
前記CDRL1が、配列番号309のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH1が、配列番号246のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号311のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号294のアミノ酸配列を含む、
項目29に記載の抗体またはその断片。
(項目34)
配列番号202のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号197のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目33に記載の抗体またはその断片。
(項目35)
第2の標的タンパク質に対する結合特異性をさらに有する、項目1から34のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
(項目36)
前記第2の標的タンパク質が、CD3、CD47、PD1、PD-L1、LAG3、TIM3、CTLA4、VISTA、CSFR1、A2AR、CD73、CD39、CD40、CEA、HER2、CMET、4-1BB、OX40、SIRPA CD16、CD28、ICOS、CTLA4、BTLA、TIGIT、HVEM、CD27、VEGFRおよびVEGFからなる群から選択される、項目35に記載の抗体またはその断片。
(項目37)
項目1から36のいずれか一項に記載の抗体またはその断片および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
(項目38)
項目1から36のいずれか一項に記載の抗体またはその断片をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む、単離された細胞。
(項目39)
それを必要とする患者におけるがんを処置する方法であって、項目1から36のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を前記患者に投与するステップを含む、方法。
(項目40)
前記がんが、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頸部がん、消化器がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記がんが胃がんである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記患者が、CLDN18.2タンパク質のM149L突然変異体を有する、項目40に記載の方法。
(項目43)
試料中のCLDN18.2タンパク質の発現を検出する方法であって、前記試料を、項目1から36のいずれか一項に記載の抗体またはその断片がCLDN18.2タンパク質と結合する条件下で、前記抗体またはその断片と接触させるステップ、および前記試料中のCLDN18.2タンパク質の発現を示す結合を検出するステップを含む、方法。
(項目44)
抗CLDN18.2抗体を含む治療に適切な患者を識別する方法であって、前記患者から単離された試料中のCLDN18.2の発現を検出するステップを含み、前記検出が、項目1から36のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を使用する、方法。
(項目45)
項目1から36のいずれか一項に記載の抗体またはその断片とコンジュゲートされた細胞毒性薬を含む、抗体-薬物コンジュゲート。
(項目46)
それを必要とする患者におけるがんを処置する方法であって、
(a)細胞を、in vitroで、項目1から36のいずれか一項に記載の抗体またはその断片で処理するステップ、および
(b)前記患者に前記処理された細胞を投与するステップ
を含む、方法。
(項目47)
ステップ(a)の前に、個体から前記細胞を単離するステップをさらに含む、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記細胞が、前記患者から単離される、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記細胞が、前記患者とは異なるドナー個体から単離される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記細胞がT細胞である、項目46から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記T細胞が、腫瘍浸潤性Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはそれらの組合せである、項目50に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、DNA免疫化後のすべてのマウスからのマウス血清が、フローサイトメトリーによると、CLD18A2をトランスフェクトされたHEK293細胞と高いタイトレーションで反応したことを示す図である。CLD18A1は陰性対照である。
【0009】
【
図2】
図2は、ハイブリドーマ上清が、細胞ELISAまたはヒトCLD18A2をトランスフェクトされたHEK293細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示す図である。
【0010】
【
図3】
図3は、精製マウス抗体が、陽性の参照抗体と比較して、高いEC50で、ヒトCLD18A2をトランスフェクトされたMKN45細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示す図である。
【0011】
【
図4】
図4は、精製マウス抗体が、高いEC50で、M149L突然変異を持つヒトCLD18A2を内因的に発現するSU620細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができるが、参照抗体は結合することができなかったことを示す図である。
【0012】
【
図5】
図5は、精製マウス抗体が、高いEC50で、マウスCLD18A2をトランスフェクトされたHEK293細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示す図である。
【0013】
【
図6】
図6は、精製マウス抗体が、高いEC50で、カニクイザルCLD18A2をトランスフェクトされたHEK293細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示す図である。
【0014】
【
図7】
図7は、精製マウス抗体が、高いEC50で、ヒトCLD18A2をトランスフェクトされたHEK293細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示す図である。
【0015】
【
図8】
図8は、キメラ抗体が、陽性の参照抗体と比較して、高いEC50で、ヒトCLD18A2をトランスフェクトされたMKN45細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示す図である。
【0016】
【
図9】
図9は、キメラ抗体が、ヒトCLD18A1をトランスフェクトされたMKN45細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができないことを示す図である。
【0017】
【
図10】
図10は、ヒト化抗体が、陽性の参照抗体と比較して、高いEC50で、ヒトCLD18A2をトランスフェクトされたMKN45細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示す図である。
【0018】
【
図11】
図11は、ヒト化抗体が、ヒトCLD18A1をトランスフェクトされたMKN45細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができないことを示す図である。
【0019】
【
図12】
図12は、CDR突然変異を有するヒト化抗体が、陽性の参照抗体と比較して、高いEC50で、ヒトCLD18A2をトランスフェクトされたMKN45細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示す図である。
【0020】
【
図13】
図13は、CDR突然変異を有するヒト化抗体が、ヒトCLD18A1をトランスフェクトされたMKN45細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができないことを示す図である。
【0021】
【
図14】
図14は、危険性除去バリアントが、細胞表面のCLD18A2への強力な結合を有していたことを示す図である。
【0022】
【
図15】
図15は、CLD18A2のある特定の突然変異が、それらの突然変異体にトランスフェクトされたHEK293細胞への指示された抗体結合に対する顕著な効果を有することを示す図であり、それらのアミノ酸残基がエピトープの少なくとも一部を構成することを示唆する。
【0023】
【
図16】
図16は、抗体4F11E2、72C1B6A3および120B7B2が、175D10と比較して、クローディン18.2高および低CHO-K1細胞の両方において優れた結合を有していたことを示す図である。
【0024】
【
図17】
図17は、参照として175D10抗体を使用した、4F11E2、72C1B6A3および120B7B2の強力なADCC試験結果を示す図である。
【0025】
【
図18】
図18は、4F11E2、72C1B6A3および120B7B2のS239D/I332Eバージョンが、ADCCアッセイにおいて、175D10の対応物より優れていたことを示す図である。
【0026】
【
図19】
図19は、4F11E2、72C1B6A3および120B7B2も、175D10よりも良好なADCP効果を有していたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
定義
「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という用語は、1つまたは複数のその実体を指すことに留意すべきであり、例えば、「1つの抗体(an antibody)」は、1つまたは複数の抗体を表すとして理解される。このように、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換可能に使用され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、単一の「ポリペプチド」および複数の「ポリペプチド」を包含することを意図し、アミド結合(ペプチド結合としても公知)によって直鎖状に連結されるモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つまたはそれよりも多くのアミノ酸の任意の鎖または複数の鎖を指し、特定の長さの生成物を指すわけではない。このため、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つもしくはそれよりも多くのアミノ酸の鎖もしくは複数の鎖を指すために使用される任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、それらの用語のいずれかの代わりに、またはそれらの用語のいずれかと互換可能に使用され得る。「ポリペプチド」という用語は、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護(protecting)/保護(blocking)基による誘導体化、タンパク質切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指すことも意図する。ポリペプチドは、天然の生物学的起源に由来していてもよく、または組換え技術によって産生されてもよいが、設計された核酸配列から必ずしも翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成を含む任意の手法で作製されてもよい。
【0029】
細胞、DNAまたはRNAなどの核酸に関して本明細書で使用される場合の「単離された」という用語は、天然起源の高分子中に存在する、それぞれ他のDNAまたはRNAから分離された分子を指す。本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、組換えDNA技術によって産生される場合は、細胞物質、ウイルス物質もしくは培養培地を実質的に含まないか、または化学的に合成される場合は、化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはペプチドも指す。また、「単離された核酸」とは、断片として天然に存在せず、天然状態で見出されない、核酸の断片を含むことも意味する。「単離された」という用語はまた、本明細書において、他の細胞タンパク質または組織から単離された細胞またはポリペプチドを指すために使用される。単離されたポリペプチドは、精製ポリペプチドおよび組換えポリペプチドの両方を包含することを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関する「組換え」という用語は、天然に存在しないポリペプチドまたはポリヌクレオチドの形態を意図し、その非限定的な例は、通常は天然に一緒に存在しないポリヌクレオチドまたはポリペプチドを組み合わせることによって作出することができる。
【0031】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間、または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的のためにアライメントされ得るそれぞれの配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較される配列中の位置が、同じ塩基またはアミノ酸によって占められる場合、分子は、その位置で相同である。配列間の相同性の程度は、マッチングの数、または配列によって共有される相同な位置の関数である。「無関係」または「非相同」配列は、本開示の配列の1つと、40%未満の同一性、しかし好ましくは、25%未満の同一性を共有する。
【0032】
別の配列に対してある特定のパーセンテージ(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドまたはポリペプチド領域)は、アライメントした場合に、塩基(またはアミノ酸)のパーセンテージが、2つの配列の比較において同じであることを意味する。このアライメント、および相同性パーセントまたは配列同一性は、当技術分野において公知のソフトウェアプログラム、例えば、Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biologyに記載されているものを使用して、決定することができる。好ましくは、デフォルトのパラメーターが、アライメントのために使用される。アライメントプログラムの1つは、デフォルトのパラメーターを使用するBLASTである。特に、プログラムは、以下のデフォルトのパラメーターを使用する、BLASTNおよびBLASTPである。遺伝コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想=10;行列=BLOSUM62;記述=50配列;ソート=ハイスコアによる;データベース=非冗長性のGenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。生物学的に等価なポリヌクレオチドは、上述で特定された相同性パーセントを有するもの、および同じまたは類似の生物活性を有するポリペプチドをコードするものである。
【0033】
「等価な核酸またはポリヌクレオチド」という用語は、核酸のヌクレオチド配列またはその相補体と、ある特定の程度の相同性または配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を指す。二本鎖核酸の相同体は、その相補体とある特定の程度の相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を含むことを意図する。一態様では、核酸の相同体は、核酸またはその相補体とハイブリダイズする能力がある。同様に、「等価なポリペプチド」は、参照ポリペプチドのアミノ酸配列と、ある特定の程度の相同性または配列同一性を有するポリペプチドを指す。一部の態様では、配列同一性は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%である。一部の態様では、等価なポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと比較して、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの付加、欠失、置換およびそれらの組合せを有する。一部の態様では、等価な配列は、参照配列の活性(例えば、エピトープ結合)または構造(例えば、塩橋)を保持する。
【0034】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行うことができる。一般に、低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション反応は、約10倍のSSCまたは等しいイオン強度/温度の溶液中、約40℃で行われる。中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、典型的には、約6倍のSSC中、約50℃で行われ、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション反応は、一般に、約1倍のSSC中、約60℃で行われる。ハイブリダイゼーション反応はまた、当業者に周知の「生理学的条件」下で行うこともできる。生理学的条件の非限定的な例は、細胞中で通常見られる、温度、イオン強度、pHおよびMg2+の濃度である。
【0035】
ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAの場合チミンに対してウラシル(U)の特定の配列で構成される。このため、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表現である。このアルファベット表現は、中央演算処理装置を有するコンピューター中のデータベースに入力することができ、機能ゲノミクスおよびホモロジー検索などのバイオインフォマティクスのアプリケーションのために使用することができる。「多形」という用語は、遺伝子またはその部分の1つより多くの形態の共在を指す。少なくとも2つの異なる形態、すなわち、2つの異なるヌクレオチド配列が存在する遺伝子の一部は、「遺伝子の多形領域」と称される。多形領域は、単一のヌクレオチドであってもよく、その同一性は、異なるアレルにおいて異なる。
【0036】
「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換可能に使用され、任意の長さのデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらのアナログのいずれかのヌクレオチドの多型形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、公知または未知の任意の機能を行い得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、dsRNA、siRNA、miRNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意配列の単離されたDNA、任意配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなどの修飾ヌクレオチドを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリヌクレオチドのアセンブリーの前または後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、重合の後に、例えば、標識化成分とのコンジュゲーションによって、さらに修飾されてもよい。この用語はまた、二本鎖分子および一本鎖分子の両方を指す。他に規定または必要のない限り、ポリヌクレオチドである本開示の任意の実施形態は、二本鎖形態、および二本鎖形態を作り上げることが公知または予測される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0037】
ポリヌクレオチドに適用される「コードする」という用語は、その天然の状態で、または当業者に周知の方法によって操作された場合に、転写および/または翻訳されて、ポリペプチドおよび/またはその断片についてのmRNAを産生するなら、ポリペプチドを「コードする」と言われるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖は、このような核酸の相補体であり、そのコード配列はそれらから推定することができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合性ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識および結合する、ポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体および任意の抗原結合性断片、またはそれらの一本鎖であり得る。したがって、「抗体」という用語は、抗原に結合する生物活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む分子を含有する、任意のタンパク質またはペプチドを含む。このような例としては、限定されるものではないが、相補性決定領域(CDR)の重鎖もしくは軽鎖またはそれらのリガンド結合部分、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、あるいはそれらの任意の部分、あるいは結合タンパク質の少なくとも一部が挙げられる。
【0039】
「抗体断片」または「抗原結合性断片」という用語は、本明細書で使用される場合、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどのような抗体の一部である。構造にかかわらず、抗体断片は、無傷抗体によって認識される同じ抗原と結合する。「抗体断片」という用語は、アプタマー、シュピーゲルマーおよびダイアボディを含む。「抗体断片」という用語は、特定の抗原と結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する、任意の合成または遺伝子操作されたタンパク質も含む。
【0040】
「一本鎖可変断片」または「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を指す。一部の態様では、この領域は、10~約25アミノ酸の短リンカーペプチドと接続される。リンカーは、柔軟性のためにはグリシンがリッチであり得、溶解性のためにはセリンまたはトレオニンもリッチであり得、VHのN末端とVLのC末端と、またはその逆でのいずれかで接続され得る。このタンパク質は、定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。scFv分子は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。
【0041】
抗体という用語は、生化学的に区別され得る各種の幅広いポリペプチドのクラスを包含する。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)と、その中でいくつかのサブクラス(例えば、γl~γ4)として分類されることを理解するだろう。抗体の「クラス」を、それぞれ、IgG、IgM、IgA IgGまたはIgEとして決定するのはこの鎖の種類である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5などは、十分に特徴付けられ、機能分化を付与することが公知である。それらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変バージョンは、本開示の観点から当業者に容易に認識され、したがって、本開示の範囲内である。すべての免疫グロブリンのクラスは、明確に本開示の範囲内であり、以下の議論は、一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスを対象とする。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、およそ23,000ダルトンの分子量の2つの同一の軽鎖ポリペプチド、および53,000~70,000の分子量の2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。4つの鎖は、典型的には、「Y」状の構成になるようにジスルフィド結合によって繋がれ、ここで、軽鎖は、「Y」の口で始まり、可変領域を通って連続する重鎖をひとまとめにする。
【0042】
本開示の抗体、抗原結合性ポリペプチド、バリアントまたはそれらの誘導体としては、限定されるものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合性断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VKまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーから生成された断片、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に開示のLIGHT抗体に対する抗Id抗体)が挙げられる。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAlおよびIgA2)またはサブクラスであり得る。
【0043】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。それぞれの重鎖のクラスは、カッパまたはラムダ軽鎖のいずれかと結合し得る。一般に、軽鎖および重鎖は、互いに共有結合的に結合し、2つの重鎖の「テイル」部分は、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって生じる場合に、共有結合的なジスルフィド連結または非共有結合的な連結によって、互いに結合される。重鎖において、アミノ酸配列は、Y状の構成の分岐した端のN末端からそれぞれの鎖の下部のC末端まで続く。
【0044】
軽鎖および重鎖は両方とも、構造および機能的相同性の領域に分けられる。「定常」および「可変」という用語は、機能的に使用される。これに関して、軽鎖(VK)および重鎖(VH)部分の両方の可変ドメインは、抗原認識および特異性を決定することが理解されるだろう。逆に、軽鎖(CK)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤性の可動性、Fc受容体結合、相補体結合などのような重要な生物学的性質を付与する。慣例により、定常領域ドメインの番号付けは、それらが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるように増加する。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域であり;CH3およびCKドメインは、実際には、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端をそれぞれ含む。
【0045】
上記に示したように、可変領域は、抗体が、抗原上のエピトープを選択的に認識し、特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVKドメインおよびVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットは、組み合わされて、三次元の抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。この4つ一組の抗体構造は、Yのそれぞれのアームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVK鎖のそれぞれにおける3つのCDR(すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)によって定義される。一部の例、例えば、ラクダ科の種に由来するか、またはラクダ科の免疫グロブリンに基づいて操作されたある特定の免疫グロブリン分子では、完全免疫グロブリン分子は、軽鎖がなく、重鎖のみからなることがある。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993)を参照のこと。
【0046】
天然に存在する抗体では、それぞれの抗原結合ドメインに存在する6つの「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性環境中でその三次元構成をとるので、特異的に位置して抗原結合ドメインを形成するアミノ酸の短く非連続的な配列である。抗原結合ドメイン中の残りのアミノ酸は、「フレームワーク」領域と称され、少ない分子間変動を示す。フレームワーク領域は、主に、β-シート高次構造の形をとり、CDRは接続されたループを形成し、一部の場合では、β-シート構造の部分を形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合的な相互作用による正しい方向へのCDRの位置決めのために提供されるスキャフォールドを形成するように作用する。正しく位置決めされたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を規定する。この相補的な表面は、その関連するエピトープへの抗体の非共有結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域を構成するアミノ酸は、それぞれ、それらが以前に定義されているので("Sequences of Proteins of Immunological Interest," Kabat, E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983);およびChothia and Lesk, J. MoI. Biol., 196:901-917 (1987)を参照のこと)、当業者によって、任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域について容易に特定され得る。
【0047】
当技術分野内で使用および/または許容される2つまたはそれよりも多くの用語の定義が存在する場合において、本明細書で使用される場合の用語の定義は、正反対に明確に述べられていない限り、そのようなすべての意味を含むことが意図される。具体的な例は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内で見出される非連続的な抗原結合部位を説明するための「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。この特定の領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983)によって、およびChothia et al., J. MoI. Biol. 196:901-917 (1987)によって記載されており、これらは、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。KabatおよびChothiaによるCDRの定義は、互いに対して比較した場合に、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体またはそのバリアントのCDRを指すいずれかの定義の適用は、本明細書で定義および使用される用語の範囲内であることが意図される。上記で引用した参照文献のそれぞれによって定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基は、比較として、下記の表において説明する。特定のCDRを包含する正確な残基の数は、CDRの配列およびサイズに応じて変動する。当業者は、どの残基が、抗体の可変領域のアミノ酸配列を与える特定のCDRを含むかを日常的に決定することができる。
【表8】
【0048】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能な可変ドメイン配列のための番号付け方式を定義した。当業者は、配列それ自体を超えて任意の実験データを頼りにすることなく、この「Kabat番号付け」の方式を任意の可変ドメイン配列に一義的に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest" (1983)によって説明された番号付け方式を指す。
【0049】
上記の表に加えて、Kabat番号付け方式は、以下のCDR領域を記載する。CDR-H1は、およそ31番目のアミノ酸(すなわち、最初のシステイン残基のおよそ9残基後)で開始し、およそ5~7アミノ酸を含み、次のトリプトファン残基で終わる。CDR-H2は、CDR-H1の末端の後の15番目の残基で開始し、およそ16~19アミノ酸を含み、次のアルギニンまたはリシン残基で終わる。CDR-H3は、CDR-H2の末端の後のおよそ33番目のアミノ酸残基で開始し、3~25アミノ酸を含み、配列W-G-X-G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終わる。CDR-L1は、およそ24番目の残基(すなわち、システイン残基の後)で開始し、およそ10~17残基を含み、次のトリプトファン残基で終わる。CDR-L2は、CDR-L1の末端の後のおよそ16番目の残基で開始し、およそ7残基を含む。CDR-L3は、CDR-L2の末端の後のおよそ33番目のアミノ酸残基(すなわち、システイン残基の後)で開始し、およそ7~11残基を含み、配列FまたはW-G-X-G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終わる。
【0050】
本明細書に開示の抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物起源に由来し得る。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマまたはニワトリ抗体である。別の実施形態では、可変領域は、起源が軟骨魚類(condricthoid)(例えば、サメ由来)であってもよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、「重鎖定常領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中部および/または下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはそれらのバリアントもしくは断片のうちの少なくとも1つを含む。例えば、本開示における使用のための抗原結合性ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、またはCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態では、本開示のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本開示における使用のための抗体は、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインのすべて、または部分)が欠如していてもよい。上記で説明したように、重鎖定常領域が、それらが天然に存在する免疫グロブリン分子由来のアミノ酸配列中で変動するように改変されてもよいことは、当業者によって理解されるだろう。
【0052】
本明細書に開示の抗体の重鎖定常領域は、異なる免疫グロブリン分子に由来していてもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖定常領域は、IgG1分子に由来するCH1ドメイン、およびIgG3分子に由来するヒンジ領域を含んでいてもよい。別の例では、重鎖定常領域は、一部分においてIgG1分子に由来し、および一部分においてIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例では、重鎖部分は、一部分においてIgG1分子に由来し、および一部分においてIgG4分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「軽鎖定常領域」という用語は、抗体の軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは、軽鎖定常領域は、定常カッパドメインまたは定常ラムダドメインのうちの少なくとも1つを含む。
【0054】
「軽鎖-重鎖ペア」とは、軽鎖のCLドメインと重鎖のCH1ドメインとの間のジスルフィド結合を通じて二量体を形成することができる、軽鎖および重鎖のコレクションを指す。
【0055】
以前に示されているように、各種の免疫グロブリンのクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元構成は周知である。本明細書で使用される場合、「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の最初(最もアミノ末端)の定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、免疫グロブリンの重鎖分子のヒンジ領域に対してアミノ末端である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「CH2ドメイン」という用語は、慣用の番号付けスキームを使用して、例えば、抗体の約244番目の残基から360番目の残基まで伸びる重鎖分子の部分を含む(244~360番目の残基、Kabat番号付け方式;および231~340番目の残基、EUの番号付け方式;Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983)を参照のこと)。CH2ドメインは、別のドメインと密接にペアを成さないという点で、固有である。むしろ、2つのN連結の分岐炭水化物鎖が、無傷のネイティブIgG分子の2つのCH2ドメイン間に挿入される。CH3ドメインが、CH2ドメインからIgG分子のC末端まで延びており、およそ108の残基を含むことも十分に立証されている。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに繋ぐ重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、およそ25残基を含み、柔軟であり、したがって、2つのN末端抗原結合領域が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は、上部、中部および下部ヒンジドメインの3つの区別されたドメインにさらに分割することができる(Roux et al., J. Immunol 161:4083 (1998))。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ジスルフィド結合」という用語は、2つの硫黄原子間で形成される共有結合を含む。アミノ酸のシステインは、第2のチオール基とジスルフィド結合または架橋を形成することができるチオール基を含む。最も天然に存在するIgG分子では、CH1およびCK領域は、ジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖は、Kabat番号付け方式を使用して239および242番目に相当する位置で(226位または229位、EUの番号付け方式)、2つのジスルフィド結合によって連結される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性の領域または部位が、第1の種から得られるか、または由来し、定常領域(部分的に無傷であってもよく、または本開示により改変されていてもよい)が、第2の種から得られる、任意の抗体を意味することが適用できる。ある特定の実施形態では、標的が結合する領域または部位は、非ヒト起源(例えば、マウスまたは霊長類)由来であり、定量領域はヒトである。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ヒト化パーセント」は、ヒト化ドメインと生殖細胞系列ドメインとの間のフレームワークのアミノ酸の相違(すなわち、非CDRの相違)の数を決定し、アミノ酸の総数からその数を減算し、次いでそれをアミノ酸の総数によって除算し、100を掛けることによって計算される。
【0061】
「特異的に結合する」または「に対する特異性を有する」とは、一般に、抗体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合が、抗原結合ドメインとエピトープとの間で一部の相補性を必要とすることを意味する。この定義によれば、抗体が、その抗原結合ドメインを介して、無作為の無関係のエピトープに結合するよりも容易に、そのエピトープに結合する場合、抗体はエピトープに「特異的に結合する」と言われる。「特異性」という用語は、本明細書において、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合することによる相対的な親和性を定量化するために使用される。例えば、抗体「A」は、抗体「B」よりも所与のエピトープについて高い特異性を有すると見なされる場合があり、または抗体「A」は、それが関連するエピトープ「D」に対してよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言われる場合がある。
【0062】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、治療的処置および予防的もしくは予防方策の両方を指し、その目的は、がんの進行などの望ましくない生理学的な変化もしくは障害を、予防すること、またはそれらを遅らせる(和らげる)ことである。有益な臨床結果または所望される臨床結果としては、限定されるものではないが、検出可能か検出不可能かに関係なく、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患進行の遅延もしくは緩慢化、疾患状態の緩和または一時的抑制、および寛解(部分的または完全に関係なく)が挙げられる。「処置」はまた、処置を受けなかった場合に予測される生存と比較して、生存を延長させることも意味し得る。処置を必要とするものには、状態もしくは障害をすでに有するもの、および状態もしくは障害を有する傾向があるもの、または状態もしくは障害が予防されるべきであるものが含まれる。
【0063】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後予測または治療が望まれる、任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象としては、ヒト、家畜、農業動物および動物園、スポーツまたはペット動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛などが挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「処置を必要とする患者に」または「処置を必要とする対象」などの語句は、例えば、検出のため、診断手順のため、および/もしくは処置のために使用される本開示の抗体または組成物の投与から利益を得るであろう、哺乳動物対象などの対象を含む。
【0065】
抗クローディン18.2抗体
本開示は、野生型クローディン18.2および一般的な突然変異体のM149L(この突然変異を内因的に発現するSU620細胞)の両方に高い親和性を有する抗クローディン18.2抗体を提供する。本発明者らの知る限り、現在公知のすべての抗クローディン18.2タンパク質は、この突然変異体に結合しない。したがって、本開示の抗体は、野生型およびM149L突然変異体のクローディン18.2タンパク質の両方を標的にする能力を有するという固有の利点を有する。この利点は、かなりの部分のがん患者が、この一般的な突然変異を保有するので、重要である。本開示の抗体が、他のクローディン18アイソフォームであるクローディン18.1に結合しない(または、非常に低い親和性でクローディン18.1に結合する)ことも注目に値する。
【0066】
実施例に提示された実験は、クローディン18.2タンパク質の第1および第2の細胞外断片中のある特定のアミノ酸が、本開示の抗体のタンパク質への結合に関与するか、そうでなければこれに影響を与えることを明らかにした。より詳細には、アミノ酸残基の3つのクラスターが、抗体のエピトープを提示するために示されている。第1のクラスターはW30を含み、これは、クローディン18.2タンパク質の第1の細胞外ドメインの第1の部分にある。N45、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56、S58、F60、E62およびC63を含む第2のクラスターも、第1の細胞外ドメインに位置する。一方、Y169およびG172を含む第3のクラスターは、第2の細胞外ドメインに位置するか、またはその近くにある。
【0067】
本開示の抗体および断片は、参照として臨床候補を使用する場合でさえ、優れた性質を呈した。である。本抗体および断片は、175D10と比較して、より強い結合活性を示しただけでなく、各種の異なる条件下でより高いADCCおよびADCP活性も呈した。
【0068】
これらの新たな抗体および断片の性質の改善は、175D10などの開発中のものと比較して、これらの抗体および断片のより高い結合特異性に帰することが企図されている。例えば、175D10のクローディン18.2との相互作用は、
図15におけるスペクトル全体にわたって強く、これは、D28、Q33、N38およびV43との強い結合、そしてG59およびV79との強い結合を含む。新たな抗体の4F11E2、72C1B6A3および120B7B2は、対照的に、第1の細胞外ドメインの前半でW30に対するより高い特異性を有し、第1の細胞外ドメインの後半でG48からE56に対するより高い特異性を有する。新たな抗体はまた、やはり後半にあるY46およびS58に対するわずかにより強い結合も有する。D28、Q33、N38、V43、G59およびV79へのそれらの結合は、かなり弱く(または機能せず)、これは、新たな抗体のADCCおよびADCPの改善に寄与する可能性がある。
【表9】
【0069】
本開示の一実施形態によれば、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、さらにCLDN18.2タンパク質のM149L突然変異体と結合する、抗体またはその断片が提供される。一部の実施形態では、抗体または断片は、野生型CLDN18.2タンパク質に対する親和性の約1%を超える親和性で、ヒト野生型クローディン18.1(CLDN18.1)タンパク質と結合せず、またはCLDN18.1と結合しない。
【0070】
タンパク質に対する抗体または断片の結合親和性は、当技術分野において公知の多くの方法で測定することができる。例えば、これは、スタンドアロンのCLDN18.1またはCLDN18.2タンパク質を用いる無細胞アッセイで測定することができる。しかしながら、好ましくは、測定は、実際の結合環境を模倣する細胞表面上のCLDN18.1またはCLDN18.2タンパク質を用いて行われる。このような結合アッセイは、実験例において適切に例示されている。
【0071】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、野生型CLDN18.2タンパク質に対する、少なくとも1%、またはあるいは少なくとも0.001%、0.01%、0.1%、0.5%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%の親和性である、M149L突然変異体に対する結合親和性を有する。
【0072】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、ヒトCLDN18.1と結合しない。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2への結合と比較して、例えば、限定されないが、10%、5%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%または0.001%を超えない、ヒトCLDN18.1に対する非常に弱い結合を有する。
【0073】
上に記載のように、本開示の抗体およびその断片は、公知の抗体とは異なるエピトープでクローディン18.2タンパク質に結合する(
図4を参照のこと;少なくとも参照抗体は、M149と相互作用するが、本開示のものは相互作用しない)。したがって、一実施形態では、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片と野生型CLDN18.2タンパク質との間の結合に、野生型CLDN18.2タンパク質の、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56およびS58からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基;ならびにY169およびG172からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むアミノ酸残基が関与する、抗体またはその断片が提供される。一部の実施形態では、結合に、CLDN18.2タンパク質の1つまたは複数のW30がさらに関与する。
【0074】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のN45と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のY46と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のG48と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のL49と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のW50と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のC53と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のV54と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のR55と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のE56と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のE58と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のF60と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のE62と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のC63と結合する。
【0075】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、G48、L49、W50、C53、V54、R55およびE56から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、G48、L49、W50、C53、V54、R55およびE56から選択される少なくとも3つのアミノ酸残基と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、G48、L49、W50、C53、V54、R55およびE56から選択される少なくとも4つのアミノ酸残基と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、G48、L49、W50、C53、V54、R55およびE56から選択される少なくとも5つのアミノ酸残基と結合する。
【0076】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56およびS58から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56およびS58から選択される少なくとも3つのアミノ酸残基と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56およびS58から選択される少なくとも4つのアミノ酸残基と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56およびS58から選択される少なくとも5つのアミノ酸残基と結合する。
【0077】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2の少なくともY169と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2の少なくともG172と結合する。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2のY169およびG172から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基と結合する。
【0078】
一部の実施形態では、結合に、野生型CLDN18.2タンパク質の、W30;G48、L49、W50、C53およびE56からなる群から選択される2つ、3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くのアミノ酸残基;ならびにY169およびG172からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むアミノ酸残基が関与する。一部の実施形態では、結合に、野生型CLDN18.2タンパク質のW30、G48、L49、W50、C53、E56およびY169を含むアミノ酸残基が関与する。
【0079】
一部の実施形態では、抗体またはその断片と野生型CLDN18.2タンパク質との間の結合に、少なくともY46および/またはS58が関与する。一部の実施形態では、抗体またはその断片と野生型CLDN18.2タンパク質との間の結合に、N38またはV43が関与しない。一部の実施形態では、抗体またはその断片と野生型CLDN18.2タンパク質との間の結合に、D28、Q33、N38、V43、G59およびV79が関与しないか、または結合は、D28、Q33、N38、V43、G59およびV79の1つ、2つ、3つ、4つまたはすべてとのより弱い結合を有する。
【0080】
CLDN18.2におけるこれらのアミノ酸へのより弱い結合は、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56などの他のアミノ酸と比較され得る。一部の実施形態では、比較は、175D10と同じアミノ酸での結合とである。例えば、本開示の抗体または断片の結合は、D28、Q33、N38、V43、G59およびV79のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてに対して、175D10(IMGT/2D構造-DBカード番号:10473)のものよりも弱い。
【0081】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2タンパク質のM149Lと結合しない。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、CLDN18.2タンパク質のM149L突然変異体と結合する。
【0082】
本開示の一実施形態によれば、表Aおよび表A’のCDRの組合せに示されるCDR領域を有する重鎖および軽鎖可変ドメインを含む抗体またはその断片が提供される。
【表A-1】
【表A-2】
【表A2-1】
【表A2-2】
【表B】
【表C】
【表D】
【表B2】
【表C2】
【表D2】
【0083】
これらのCDR領域を含有する抗体は、マウス、ヒト化またはキメラにかかわらず、強力なクローディン18.2結合および阻害活性を有していた。実施例11および12に示すように、CDR内のある特定の残基は、性質を保持もしくは改善するため、または翻訳後修飾(PTM)を有するそれらの可能性を低減するために、改変され得る。このような改変CDRは、親和性成熟CDR、または危険性除去CDRと称され得る。
【0084】
危険性除去CDRの非限定的な例は、表B~DおよびB’~D’の第3列に提供されている。親和性成熟したものは、1つ、2つまたは3つのアミノ酸付加、欠失および/または置換を有するものを含み得る。一部の実施形態では、置換は保存的置換であり得る。
【0085】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、免疫グロブリンポリペプチド中の非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基と置き換えられる。別の実施形態では、アミノ酸のストリングは、側鎖のファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる構造的に類似のストリングで置き換えられ得る。
【0086】
保存的アミノ酸置換の非限定的な例は、下記の表に提供され、ここで、0またはそれよりも高い類似性スコアは、2つのアミノ酸間の保存的置換を示す。
【表E】
【表F】
【0087】
したがって、一実施形態では、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2およびCDRH3が、表Aまたは表A’の組合せ1~33、あるいはCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2およびCDRH3の1つまたは複数が、それぞれ、1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、保存的アミノ酸置換またはそれらの組合せを含む組合せ1~33のそれぞれから選択される、抗体またはその断片が提供される。
【0088】
一部の実施形態では、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む抗CLDN18.2抗体または断片であって、このそれぞれが、表Aまたは表B~Dから選択される、抗CLDN18.2抗体または断片が提供される。例えば、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1が、配列番号1、12および31~38の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号1、12および31~38のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRL2が、配列番号2、7および39~41の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号2、7および39~41のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRL3が、配列番号3、8、13、19および42~58の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号3、8、13、19および42~58のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRH1が、配列番号4、9、14および59~76の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号4、9、14および59~76のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRH2が、配列番号5、10、15および77~95の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号5、10、15および77~95のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRH3が、配列番号6、11、16および96~116の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号6、11、16および96~116のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含む、抗体またはその断片が提供される。
【0089】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号1、12、17~18、23~24および31~38の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRL2は、配列番号2、7および39~41の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRL3は、配列番号3、8、13、19~20および42~58の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRH1は、配列番号4、9、14および59~76の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRH2は、配列番号5、10、15、21、25~26および77~95の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRH3は、配列番号6、11、16、22、27~29および96~116の群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0090】
一部の実施形態では、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む抗CLDN18.2抗体または断片であって、このそれぞれが、表A’または表B’~D’から選択される、抗CLDN18.2抗体または断片が提供される。例えば、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1が、配列番号208~226の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号208~226のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRL2が、配列番号227~233の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号227~233のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRL3が、配列番号3、8、13、19および42~58の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号3、8、13、19および42~58のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRH1が、配列番号234~254の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号234~254のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRH2が、配列番号255~280の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号255~280のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含み;CDRH3が、配列番号281~303の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または1つ、2つもしくは3つのアミノ酸付加、欠失、アミノ酸置換によって配列番号281~303のいずれか1つから誘導されたアミノ酸配列を含む、抗体またはその断片が提供される。
【0091】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号208~226、304~305および308~309の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRL2は、配列番号227~233の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRL3は、配列番号3、8、13、19、20および42~58の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRH1は、配列番号234~254の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRH2は、配列番号255~280、306、310および311の群から選択されるアミノ酸配列を含み;CDRH3は、配列番号281~303、307および312~314の群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0092】
抗体120B7B2は、クローディン18.2の強力な阻害剤であることが実証された。そのCDR配列は、いくつかの危険性除去バージョンと一緒に、表Bに提供されている。一実施形態では、本開示は、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1が、QSLLNSGNQKNY(配列番号1)、QSLLNAGNQKNY(配列番号17)もしくはQSLLESGNQKNY(配列番号18)のアミノ酸配列、または配列番号1、17もしくは18からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL2が、WAS(配列番号2)のアミノ酸配列、または配列番号2からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL3が、CQNGYYFPFT(配列番号3)、QNAYYFPFT(配列番号19)もしくはQEGYYFPFT(配列番号20)のアミノ酸配列、または配列番号3、19もしくは20からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH1が、GYTFTGYI(配列番号4)のアミノ酸配列、または配列番号4からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH2が、INPYNDGT(配列番号5)もしくはINPYNDDT(配列番号21)のアミノ酸配列、または配列番号5もしくは21からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH3が、ARAYFGNSFAY(配列番号6)もしくはARAYFGNAFAY(配列番号22)のアミノ酸配列、または配列番号6もしくは22からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、抗体またはその断片を提供する。
【0093】
異なる抗体由来のCDRが高い相同性を共有していることに注目することは興味深い(表Aを参照のこと)。その結果として、対応するそれぞれのCDRは、抗体もしくは断片の結合親和性または活性に大きな影響を与えることなく、交換され得ることが企図される。あるいは、CDR中のそれぞれの特定のアミノ酸は、異なる抗体由来の対応するCDR中に存在する別のアミノ酸と置換され得る。したがって、一部の実施形態では、以下の表は、配列のアライメントに基づく一部の実行可能な置換をまとめる。
【表G1】
【表G2】
【表G3】
【表G4】
【表G5】
【表G6】
【0094】
抗体またはその断片の一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号1、17または18のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号3、19または20のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号5または21のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号6または22のアミノ酸配列を含む。
【0095】
軽鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号141、192~195および206~207からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号141、192~195および206~207からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0096】
重鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号171、188~191および205からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号171、188~191および205からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0097】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0098】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号205のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、またはそれらのその生物学的等価体を含む。
【0099】
表A’~D’は、Kabat番号付けによるCDR配列を提供する。上記に開示の置換は、異なる番号付けスキームに従ってCDRに容易に翻訳することができることは、当業者には明らかである。
【0100】
一部の実施形態では、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片が提供される。一部の実施形態では、抗体またはその断片は、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1は、配列番号210、304もしくは305のアミノ酸配列、または配列番号210、304もしくは305からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号227のアミノ酸配列、または配列番号227からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号3、19もしくは20のアミノ酸配列、または配列番号3、19もしくは20からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号253のアミノ酸配列、または配列番号253からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号278もしくは306のアミノ酸配列、または配列番号278もしくは306からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号303もしくは307のアミノ酸配列、または配列番号303もしくは307からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0101】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号210、304または305のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号227のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号3、19または20のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号253のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号278または306のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号303または307のアミノ酸配列を含む。
【0102】
軽鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号141、192~195および206~207からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号141、192~195および206~207からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0103】
重鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号171、188~191および205からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号171、188~191および205からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0104】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号304のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号227のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号253のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号306のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号307のアミノ酸配列を含む。抗体または断片の非限定的な例は、配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号205のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0105】
同様に、72C1B6A3は、良好な抗体であることが示されている。したがって、別の実施形態では、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1が、QSLLNSGNQKNY(配列番号1)、QSLLNAGNQKNY(配列番号17)もしくはQSLLESGNQKNY(配列番号18)のアミノ酸配列、または配列番号1、17もしくは18からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL2が、RAS(配列番号7)のアミノ酸配列、または配列番号7からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL3が、QNDYIYPYT(配列番号8)のアミノ酸配列、または配列番号8からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH1が、GYTFTTYP(配列番号9)のアミノ酸配列、または配列番号9からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH2が、FHPYNDDT(配列番号10)のアミノ酸配列、または配列番号10からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH3が、ARRAYGYPYAMDY(配列番号11)のアミノ酸配列、または配列番号11からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、抗体またはその断片が提供される。
【0106】
同様に、CDR中のそれぞれの特定のアミノ酸は、異なる抗体由来の対応するCDR中に存在する別のアミノ酸と置換され得る。したがって、一部の実施形態では、以下の表は、配列のアライメントに基づく一部の実行可能な置換をまとめる。
【表H1】
【表H2】
【表H3】
【表H4】
【表H5】
【表H6】
【0107】
23の抗体またはその断片の一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号1、17または18のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0108】
軽鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号124、185~187および203~204からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号124、185~187および203~204からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0109】
配列番号153および181~184からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号153および181~184からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む、重鎖可変領域の非限定的な例。
【0110】
一部の実施形態では、抗体またはその断片において、CDRL1は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0111】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号203のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号181のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、またはそれらの対応する生物学的等価体を含む。
【0112】
表A’~D’は、Kabat番号付けによるCDR配列を提供する。上記に開示の置換は、異なる番号付けスキームに従ってCDRに容易に翻訳することができることは、当業者には明らかである。
【0113】
一部の実施形態では、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1が、配列番号210、304もしくは305のアミノ酸配列、または配列番号210、304もしくは305からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL2が、配列番号229のアミノ酸配列、または配列番号229からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL3が、配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号8からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH1が、配列番号242のアミノ酸配列、または配列番号242からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH2が、配列番号263のアミノ酸配列、または配列番号263からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH3が、配列番号289のアミノ酸配列、または配列番号289からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、抗体またはその断片が提供される。
【0114】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号210、304または305のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号229のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号242のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号263のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号289のアミノ酸配列を含む。
【0115】
軽鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号124、185~187および203~204からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号124、185~187および203~204からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0116】
配列番号153および181~184からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号153および181~184からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む、重鎖可変領域の非限定的な例。
【0117】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号304のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号229のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号242のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号263のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号289のアミノ酸配列を含む。抗体またはその断片の非限定的な例は、配列番号203のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号181のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0118】
また、4F11E2は、良好な抗体であることが示されている。したがって、別の実施形態では、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1が、QSLLNSGNRKNY(配列番号12)、QSLLESGNRKNY(配列番号23)もしくはQSLLNAGNRKNY(配列番号24)のアミノ酸配列、または配列番号12、23もしくは24からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL2が、WAS(配列番号2)のアミノ酸配列、または配列番号2からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL3が、QNAYSYPFT(配列番号13)のアミノ酸配列、または配列番号13からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH1が、GFTFSTFG(配列番号14)のアミノ酸配列、または配列番号14からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH2が、ITSGNSPI(配列番号15)、ITSGQSPI(配列番号25)もしくはITSGESPI(配列番号26)のアミノ酸配列、または配列番号15、25もしくは26からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH3が、ARSSYYGNSMDY(配列番号16)、ARSSYYGQSMDY(配列番号27)、ARSSYYGESMDY(配列番号28)もしくはARSSYYGNAMDY(配列番号29)のアミノ酸配列、または配列番号16、27、28もしくは29からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、抗体またはその断片が提供される。
【0119】
同様に、CDR中のそれぞれの特定のアミノ酸は、異なる抗体由来の対応するCDR中に存在する別のアミノ酸と置換され得る。したがって、一部の実施形態では、以下の表は、配列のアライメントに基づく一部の実行可能な置換をまとめる。
【表I1】
【表I2】
【表I3】
【表I4】
【表I5】
【表I6】
【0120】
一部の実施形態では、抗体またはその断片において、CDRL1は、配列番号12、23または24のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号15、25または26のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号16、27、28または29のアミノ酸配列を含む。
【0121】
軽鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号129、178~180および201~202からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそれらの生物学的等価体、例えば、配列番号129、178~180および201~202からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0122】
重鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号159、175~177および196~200からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそれらの生物学的等価体、例えば、配列番号159、175~177および196~200からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0123】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号24のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号26のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0124】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号202のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号197のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、またはそれらの対応する生物学的等価体を含む。
【0125】
表A’~D’は、Kabat番号付けによるCDR配列を提供する。上記に開示の置換は、異なる番号付けスキームに従ってCDRに容易に翻訳することができることは、当業者には明らかである。
【0126】
本開示の一部の実施形態は、野生型ヒトクローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその断片であって、抗体またはその断片が、軽鎖相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1が、配列番号216、308もしくは309のアミノ酸配列、または配列番号216、308もしくは309からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL2が、配列番号227のアミノ酸配列、または配列番号227からの1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL3が、配列番号13のアミノ酸配列、または配列番号13からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH1が、配列番号246のアミノ酸配列、または配列番号246からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH2が、配列番号268、310もしくは311のアミノ酸配列、または配列番号268、310もしくは311からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH3が、配列番号294、312、313もしくは314のアミノ酸配列、または配列番号294、312、313もしくは314からの1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、抗体またはその断片を提供する。
【0127】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号216、308または309のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号227のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号246のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号268、310または311のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号294、312、313または314のアミノ酸配列を含む。
【0128】
軽鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号129、178~180および201~202からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号129、178~180および201~202からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0129】
重鎖可変領域の非限定的な例は、配列番号159、175~177および196~200からなる群から選択されるアミノ酸配列、または生物学的等価体、例えば、配列番号159、175~177および196~200からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0130】
一部の実施形態では、CDRL1は、配列番号309のアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番号227のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDRH1は、配列番号246のアミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号311のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号294のアミノ酸配列を含む。抗体または断片の非限定的な例は、配列番号202のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号197のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0131】
一部の実施形態では、抗体はヒト化抗体である。実施例9に示すように、ヒト化抗体は、マウス対応物に対する1つまたは複数の逆突然変異を含み得る。このような逆突然変異の例を表3に示す。一部の実施形態では、抗体または断片は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くの逆突然変異を含み得る。
【0132】
一部の実施形態では、本開示の抗クローディン18.2抗体は、配列番号117~144、178~180、185~187、192~195、201~202、203~204もしくは206~207のいずれか1つのVL、および配列番号145~174、175~177、181~184、188~191、196~200もしくは205のいずれか1つのVH、またはそれらの個々の生物学的等価体を含む。VHまたはVLの生物学的等価体は、全体で80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有しながら、設計されたアミノ酸を含む配列である。したがって、配列番号145の生物学的等価体は、配列番号145に対して全体で80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するが、CDRを保持し、必要に応じて1つもしくは複数、またはすべての逆突然変異を保持するVHであり得る。
【0133】
本明細書に開示の抗体は、それらが由来する天然に存在する結合ポリペプチドからアミノ酸配列において変動するように、改変されていてもよいことも、当業者によって理解されるだろう。例えば、設計されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、類似していてもよく、例えば、出発配列に対してある特定の同一性パーセントを有していてもよく、例えば、出発配列に対して60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性であってもよい。
【0134】
ある特定の実施形態では、抗体は、アミノ酸配列、または抗体と通常関連しない1つもしくは複数の部分を含む。例示的な改変を、下記により詳細に記載する。例えば、本開示の抗体は、柔軟なリンカー配列を含んでいてもよく、または機能的部分(例えば、PEG、薬物、毒素または標識)を追加するように改変されていてもよい。
【0135】
本開示の抗体、それらのバリアントまたは誘導体は、共有結合的な付着が抗体のエピトープへの結合を妨げないように、すなわち、任意の種類の分子の抗体への共有結合的な付着によって修飾された誘導体を含む。例えば、限定を目的とするわけではないが、抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、リン酸化、アミド化、公知の保護(protecting)/保護(blocking)基による誘導体化、タンパク質切断、細胞のリガンドまたは他のタンパク質への連結などによって、修飾され得る。任意の多数の化学的修飾は、限定されないが、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む公知の技術によって行ってもよい。加えて、抗体は、1つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含有していてもよい。
【0136】
一部の実施形態では、抗体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生体応答修飾物質、医薬剤またはPEGとコンジュゲートされていてもよい。
【0137】
抗体は、治療剤とコンジュゲートまたは融合されていてもよく、これは、放射性標識などの検出可能な標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光反応性治療剤または診断剤、薬物または毒素であってもよい細胞傷害剤、超音波増強剤、非放射性標識、これらの組合せおよび当技術分野において公知の他のこのような薬剤を含み得る。
【0138】
抗体は、それを化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識することができる。次いで、化学発光タグ化抗原結合性ポリペプチドの存在は、化学反応の過程の間に生じる発光の存在を検出することによって、決定される。特定の有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、theromaticアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0139】
抗体は、152Euまたは他のランタニド系列などの蛍光発光金属を使用して、検出可能に標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート基を使用して、抗体に付着させることができる。各種の部分を抗体にコンジュゲートするための技術は、周知であり、例えば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. (1985);Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al., (eds.), Marcel Dekker, Inc., pp. 623-53 (1987);Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985);"Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), Academic Press pp. 303-16 (1985)、およびThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev. (52:119-58 (1982))を参照のこと。
【0140】
二官能性分子
腫瘍抗原を標的にする分子として、クローディン18.2に特異的な抗体または抗原結合性断片を、免疫細胞に特異的な第2の断片と組み合わせて、二特異性抗体を作製することができる。
【0141】
一部の実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、食細胞、ナチュラルキラー細胞、好酸球、好塩基球およびマスト細胞からなる群から選択される。
【0142】
一部の実施形態では、第2の特異性は、CD3、CD47、PD1、PD-L1、LAG3、TIM3、CTLA4、VISTA、CSFR1、A2AR、CD73、CD39、CD40、CEA、HER2、CMET、4-1BB、OX40、SIRPA CD16、CD28、ICOS、CTLA4、BTLA、TIGIT、HVEM、CD27、VEGFRまたはVEGFに対する。
【0143】
二特異性抗体の異なる形式も提供する。一部の実施形態では、抗クローディン18.2断片のそれぞれ、および第2の断片は、それぞれ、独立して、Fab断片、一本鎖可変断片(scFv)またはシングルドメイン抗体から選択される。一部の実施形態では、二特異性抗体は、Fc断片をさらに含む。
【0144】
抗体または抗原結合性断片を含むだけではない二官能性分子も提供する。腫瘍抗原を標的にする分子として、クローディン18.2に特異的な抗体または抗原結合性断片、例えば本明細書に記載のものを、免疫サイトカインまたはリガンドと、必要に応じてペプチドリンカーを介して組み合わせることができる。連結された免疫サイトカインまたはリガンドとしては、限定されないが、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、GM-CSF、TNF-α、CD40L、OX40L、CD27L、CD30L、4-1BBL、LIGHTおよびGITRLが挙げられる。このような二官能性分子は、免疫チェックポイント遮断効果を腫瘍部位の局所免疫調節と組み合わせることができる。
【0145】
抗体をコードするポリヌクレオチドおよび抗体を調製する方法
本開示は、本開示の抗体、それらのバリアントまたは誘導体をコードする、単離されたポリヌクレオチドまたは核酸分子も提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子または別のポリヌクレオチド分子上の、抗原結合性ポリペプチド、それらのバリアントまたは誘導体の重鎖および軽鎖可変領域全体をコードし得る。加えて、本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子または別のポリヌクレオチド分子上の、抗原結合性ポリペプチド、それらのバリアントまたは誘導体の重鎖および軽鎖可変領域の部分をコードし得る。
【0146】
抗体を作製する方法は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載される。ある特定の実施形態では、本開示の抗原結合性ポリペプチドの可変領域および定常領域は両方とも、完全にヒトである。完全ヒト抗体は、当技術分野に記載の技術および本明細書に記載の技術を使用して作製することができる。例えば、特異的な抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原の負荷に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物に抗原を投与することによって、調製することができる。このような抗体を作製するために使用することができる例示的な技術は、米国特許第6,150,584号、米国特許第6,458,592号、米国特許第6,420,140号に記載されており、これらは、それらの全体が参照によって組み込まれる。
【0147】
処置方法
本明細書に記載される場合、本開示の抗体、バリアントまたは誘導体は、ある特定の処置方法および診断方法において使用され得る。
【0148】
本開示は、本開示の抗体を、本明細書に記載の1つまたは複数の障害または状態を処置するために、動物、哺乳動物およびヒトなどの患者に投与することを含む、抗体ベースの治療をさらに対象とする。本開示の治療用化合物としては、限定されるものではないが、本開示の抗体(本明細書に記載のそれらのバリアントおよび誘導体を含む)、および本開示の抗体(本明細書に記載のそれらのバリアントおよび誘導体を含む)をコードする核酸またはポリヌクレオチドが挙げられる。
【0149】
本開示の抗体は、がんを処置または阻害するために使用することもできる。上記で提供したように、クローディン18.2は、腫瘍細胞、特に、胃、膵臓、食道、卵巣および肺の腫瘍で過剰発現し得る。クローディン18.2の阻害は、腫瘍を処置するために有用であることが示されている。
【0150】
したがって、一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるがんを処置するための方法が提供される。一実施形態では、この方法は、本開示の抗体の有効量を患者に投与することを伴う。一部の実施形態では、患者における少なくとも1つのがん細胞(例えば、間質細胞)は、クローディン18.2を過剰発現する。
【0151】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療などの細胞治療も、本開示において提供される。本開示の抗クローディン18.2抗体と接触させる(または本開示の抗クローディン18.2抗体を発現するように代わりに操作された)適切な細胞を使用することができる。このような接触または操作の際に、細胞は、次に、処置を必要とするがん患者に導入され得る。がん患者は、本明細書に開示の任意の種類のがんを有し得る。細胞(例えば、T細胞)は、限定されないが、例えば、腫瘍浸潤性Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはそれらの組合せであり得る。
【0152】
一部の実施形態では、細胞は、患者自身のがんから単離された。一部の実施形態では、細胞は、ドナーによって、または細胞バンクから提供された。細胞ががん患者から単離される場合、望ましくない免疫反応を最小化することができる。
【0153】
がんの非限定的な例としては、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵臓がん、前立腺がんおよび甲状腺がんが挙げられる。一部の実施形態では、がんは、胃、膵臓、食道、卵巣および肺のがんの1つまたは複数である。
【0154】
本開示の抗体またはそれらのバリアントもしくは誘導体を用いて処置、予防、診断および/または予後予測され得る、細胞の生存の増加に関連する追加の疾患または障害としては、限定されないが、悪性腫瘍の進行および/または転移が挙げられ、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病を含む))および慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)を含む)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、ならびに限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫などの肉腫および癌腫を含む固形腫瘍などの障害に関連する。
【0155】
任意の特定の患者に対する特定の投薬量および処置レジメンは、使用される特定の抗体、それらのバリアントまたは誘導体、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事、ならびに投与の時間、排出率、薬物の組合せ、ならびに処置される特定の疾患の重症度を含むさまざまな要因に依存する。医療介護者によるこのような要因の判断は、当技術分野における通常の技能の範囲内である。量は、処置される個々の患者、投与の経路、製剤の種類、使用される化合物の特性、疾患の重症度および望まれる効果にも依存するだろう。使用される量は、当技術分野において周知の薬理学および薬物動態の原理によって決定することができる。
【0156】
抗体、バリアントの投与の方法は、限定されるものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経鼻、硬膜外および経口の経路が挙げられる。抗原結合性ポリペプチドおよび組成物は、任意の簡便な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜の裏層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)による吸収によって投与されてもよく、他の生物活性剤と一緒に投与されてもよい。したがって、本開示の抗原結合性ポリペプチドを含有する医薬組成物は、経口的、直腸的、非経口的、嚢内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉末、軟膏、点滴剤または経皮パッチによるような)、バッカルで、または経口もしくは点鼻スプレーとして、投与されてもよい。
【0157】
本明細書で使用される場合、「非経口的」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射ならびに注入を含む、投与の様式を指す。
【0158】
投与は、全身または局所であり得る。加えて、脳室内および髄腔内注射を含む、任意の適切な経路によって、中枢神経系に本開示の抗体を導入することが望ましい場合があり、脳室内注射は、例えばOmmayaリザーバーなどのリザーバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易になり得る。肺投与は、例えば、吸入器または噴霧器、およびエアロゾル化剤を有する製剤の使用によって、利用することもできる。
【0159】
本開示の抗原結合性ポリペプチドまたは組成物を、処置を必要とする領域に局所投与することが望ましい場合があり、これは、例えば、限定されないが、手術中の局所注入、局所的適用、例えば、手術後の創傷被覆材と組み合わせて、注射によって、カテーテル手段によって、坐剤手段によって、またはインプラント手段によって達成されてもよく、前記インプラントは、sialastic膜などの膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性またはゼリー状の材料である。好ましくは、本開示の抗体を含むタンパク質が投与される場合、ケアは、タンパク質が吸収されない材料を使用して行わなければならない。
【0160】
炎症性の免疫または悪性の疾患、障害または状態の処置、阻害および予防に有効な本開示の抗体の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、in vitroアッセイは、必要に応じて、最適な投薬量の範囲を識別するのを助けるために用いられ得る。製剤に用いられる正確な用量は、投与の経路、および疾患、障害または状態の重篤度にも依存し、開業医の判断およびそれぞれの患者の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、in vitroまたは動物モデルの試験系に由来する用量反応曲線から外挿されてもよい。
【0161】
一般的な問題として、本開示の抗原結合性ポリペプチドの患者に投与される投薬量は、典型的には、患者の体重の0.1mg/kg~100mg/kg、患者の体重の0.1mg/kg~20mg/kgの間、または患者の体重の1mg/kg~10mg/kgである。一般に、ヒト抗体は、ヒト体内で、外来ポリペプチドに対する免疫応答に起因して、他の種由来の抗体よりも長い半減期を有する。このため、多くの場合、より少ないヒト抗体の投薬量およびより少ない頻度の投与が可能である。さらに、本開示の抗体の投薬量および投与の頻度は、例えば、脂質化などの改変によって、抗体の取り込みおよび組織透過性(例えば、脳への)を増強することによって、低減され得る。
【0162】
追加の実施形態では、本開示の組成物は、サイトカインと組み合わせて投与される。本開示の組成物とともに投与され得るサイトカインとしては、限定されるものではないが、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、抗CD40、CD40LおよびTNF-αが挙げられる。
【0163】
追加の実施形態では、本開示の組成物は、例えば、放射線治療などの他の治療的または予防的レジメンと組み合わせて投与される。
【0164】
併用療法および抗体-薬物コンジュゲート
本開示の1つまたは複数の抗クローディン18.2抗体またはその断片と一緒に第2の抗がん剤(化学療法剤)の使用を含む併用療法も提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、抗体または断片にコンジュゲートされる。
【0165】
化学療法剤は、それらの作用機構によって、例えば、以下の群に分類され得る:
- ピリミジンアナログのフロクスウリジン、カペシタビンおよびシタラビンなどの代謝拮抗剤/抗がん剤;
- プリンアナログ、葉酸アンタゴニストおよび関連する阻害剤;
- ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン)などの天然物、ならびにタキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))およびエピポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)などの微小管を含む、抗増殖剤/抗有糸分裂剤;
- アクチノマイシン、アムサクリン、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イホスファミド(iphosphamide)、メルファラン、メクロレタミン(merchlorethamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、エトポシドおよびトリエチレンチオホスホルアミドなどのDNA損傷剤;
- ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシンなどの抗生物質;
- 全身的にL-アスパラギンを代謝するL-アスパラギナーゼなどの酵素、およびそれら自身のアスパラギンを合成する能力を有さない欠乏細胞;
- 抗血小板剤;
- ナイトロジェンマスタード、シクロホスファミドおよびアナログ(メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルニトロソウレア(カルムスチン)およびアナログ、ストレプトゾシン、ならびにトリアゼン(ダカルバジン)などの抗増殖性/抗有糸分裂性のアルキル化剤;
- 葉酸アナログ(メトトレキセート)などの抗増殖性/抗有糸分裂性の代謝拮抗剤;
- 白金配位錯体(シスプラチン、オキサリプラチナム(oxiloplatinim)およびカルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタンおよびアミノグルテチミド;- ホルモン、ホルモンアナログ(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミドおよびニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾールおよびアナストロゾール);
- ヘパリン、合成のヘパリン塩および他のトロンビンの阻害剤などの抗凝固剤;
- 組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジンおよびクロピドグレルなどの血栓溶解剤;
- 抗遊走剤;
- 抗分泌剤(ブレべルジン);
- 免疫抑制剤のタクロリムス、シロリムス、アザチオプリンおよびミコフェノレート;- 化合物(TNP-470、ゲニステイン)および増殖因子阻害剤(血管内皮増殖因子阻害剤および線維芽細胞増殖因子阻害剤);
- アンジオテンシン受容体ブロッカー、一酸化窒素ドナー;
- アンチセンスオリゴヌクレオチド;
- トラスツズマブ、リツキシマブなどの抗体;
- 細胞周期阻害剤、およびトレチノインなどの分化誘導因子;
- 阻害剤のトポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカンおよびイリノテカン)、およびコルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾンおよびプレドニゾロン);
- 増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;
- 機能障害誘導因子;
- コレラ毒素、リシン、シュードモナス外毒素、百日咳菌アデニル酸シクラーゼ毒素、ジフテリア毒素などの毒素、およびカスパーゼ活性化因子;
- ならびに、クロマチン。
【0166】
化学療法剤のさらなる例を挙げる。
- チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;
- ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;
- ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパおよびウレドパなどのアジリジン;
- アルトレタミン(alfretamine)、トリエチレンメラミン(triemylenemelamine)、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメミロロメラミン(trimemylolomelamine)を含む、エミレルミン(emylerumine)およびメミラメラミン(memylamelamine);
- アセトゲニン、特に、ブラタシンおよびブラタシノン;
- カンプトテシン、合成アナログであるトポテカンを含む;
- ブリオスタチン;
- カリスタチン;
- CC-1065、そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む;
- クリプトフィシン、特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8;
- ドラスタチン;
- デュオカルマイシン、合成アナログのKW-2189およびCBI-TMIを含む;
- エリュテロビン;
- パンクラチスタチン;
- サルコジクチイン;
- スポンジスタチン;
- クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミドおよびウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;
- カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン(foremustine)、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチンなどのニトロソウレア;
- エネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシン ガンマ1Iおよびカリケアマイシン ファイI1)、ダイネマイシンAを含むダイネマイシン、クロドロネートなどのビスホスホネート、エスペラミシン、ネオカルチノスタチン発色団および関連する色素タンパク質のエネジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチンおよびゾルビシンなどの抗生物質;
- メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;
- デモプテリン、メトトレキセート、プテロプテリンおよびトリメトレキセートなどの葉酸アナログ;
- フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリンおよびチオグアニンなどのプリンアナログ;
- アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビンおよびフロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;
- カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタンおよびテストラクトンなどのアンドロゲン;
- アミノグルテチミド、ミトタンおよびトリロスタンなどの抗アドレナール;
- フロリン酸などの葉酸補充剤;
- トリコテセン、特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン;
- パクリタキセル(TAXOL(登録商標))およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))などのタキソイド;
- シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金アナログ;
- アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル
;アムサクリン;ヘストラブシル;ビスアントレン;エダトレキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホルムチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロイコボリン;ロニダミン;マイタンシンおよびアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;フルオロピリミジン;フォリン酸;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ポリサッカリド-K(PSK);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン(tricUorotriemylamine);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオペタ;クロラムブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン(mitroxantrone);ビンクリスチン(vancristine);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ(xeoloda);イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤のRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DFMO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;FOLFIRI(フルオロウラシル、ロイコボリンおよびイリノテカン);
- ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体。
【0167】
また、「化学療法剤」の定義には、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などの抗ホルモン剤、酵素アロマターゼの阻害剤、抗アンドロゲン、ならびに腫瘍におけるホルモン作用を調節または阻害するように作用する上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体を含む。
【0168】
抗エストロゲンおよびSERMの例としては、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(商標)を含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびトレミフェン(FARESTON(登録商標))が挙げられる。
【0169】
副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素のアロマターゼの阻害剤。例としては、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGACE(登録商標))、エキセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))が挙げられる。
【0170】
抗アンドロゲンの例としては、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド(leuprohde)およびゴセレリンが挙げられる。
【0171】
化学療法剤の例としては、限定されないが、レチノイド酸およびその誘導体、2-メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(登録商標)、ENDOSTATIN(登録商標)、スラミン、スクアラミン、メタロプロテイナーゼ-1の組織阻害剤、メタロプロテイナーゼ-2の組織阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2、軟骨由来の阻害剤、パクリタキセル(nab-パクリタキセル)、血小板因子4、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニ殻から調製)、硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(sp-pg)、スタウロスポリン、プロリンアナログ((l-アゼチジン-2-カルボン酸(LACA))を含むマトリックス代謝モジュレーター、シスヒドロキシプロリン、d,I-3,4-デヒドロプロリン、チアプロリン、α,α’-ジピリジル、ベータ-アミノプロピオニトリルフマレート、4-プロピル-5-(4-ピリジニル)-2(3h)-オキサゾロン、メトトレキセート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン-血清、ニワトリのメタロプロテイナーゼ-3阻害剤(ChIMP-3)、キモスタチン、テトラデカ硫酸ベータ-シクロデキストリン、エポネマイシン、フマギリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、d-ペニシラミン、ベータ-1-アンチコラゲナーゼ-血清、アルファ-2-抗プラスミン、ビスアントレン、ロベンザリット二ナトリウム、n-2-カルボキシフェニル-4-クロロアントロニル酸二ナトリウムまたは「CCA」、サリドマイド、血管新生抑制ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール、およびBB-94などのメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む、抗血管新生剤も挙げられる。他の抗血管新生剤としては、抗体、好ましくは、これらの血管新生増殖因子:ベータ-FGF、アルファ-FGF、FGF-5、VEGFアイソフォーム、VEGF-C、HGF/SFおよびAng-1/Ang-2に対するモノクローナル抗体が挙げられる。
【0172】
化学療法剤の例としては、限定されるものではないが、ベータ-アミノプロピオニトリル(aminoproprionitrile)(BAPN)などの化合物、ならびにリシルオキシダーゼの阻害剤およびコラーゲンの異常沈着に関連する疾患および状態の処置におけるこれらの使用に関する米国特許第4,965,288号(Palfreyman, et al.)、ならびに各種の病理学的線維性の状態の処置のためにLOXを阻害する化合物に関する米国特許第4,997,854号(Kagan et al.)に開示された化合物を含む抗線維化剤も挙げられ、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。さらなる例示的な阻害剤は、2-イソブチル-3-フルオロ-、クロロ-、またはブロモ-アリルアミンなどの化合物に関する米国特許第4,943,593号(Palfreyman et al.)、2-(1-ナフチルオキシメチル(naphthyloxymemyl))-3-フルオロアリルアミンに関する米国特許第5,021,456号(Palfreyman et al.)、米国特許第5,059,714号(Palfreyman et al.)、米国特許第5,120,764号(Mccarthy et al.)、米国特許第5,182,297号(Palfreyman et al.)、米国特許第5,252,608号(Palfreyman et al.)および米国特許出願公開第2004/0248871号(Farjanel et al.)に記載されており、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0173】
例示的な抗線維化剤としては、リシルオキシダーゼの活性部位のカルボニル基と反応する第1級アミン、より具体的には、カルボニルとの結合後に生成するもの、共鳴により安定化される生成物、例えば、以下の第1級アミン:エミレンマミン(emylenemamine)、ヒドラジン、フェニルヒドラジンおよびそれらの誘導体;セミカルバジドおよび尿素誘導体;BAPNまたは2-ニトロエチルアミンなどのアミノニトリル;2-ブロモ-エチルアミン、2-クロロエチルアミン、2-トリフルオロエチルアミン、3-ブロモプロピルアミンおよびp-ハロベンジルアミンなどの不飽和または飽和ハロアミン;ならびにセレノホモシステインラクトンも挙げられる。
【0174】
他の抗線維化剤は、細胞を透過するか、または透過しない銅キレート剤である。例示的な化合物としては、リシルオキシダーゼによるリシル残基およびヒドロキシリシル残基の酸化的脱アミノ化が起源のアルデヒド誘導体を遮断する間接的阻害剤が挙げられる。例としては、チオールアミン、特に、D-ペニシラミン、およびそのアナログ、例えば、2-アミノ-5-メルカプト-5-メチルヘキサン酸、D-2-アミノ-3-メチル-3-((2-アセトアミドエチル)ジチオ)ブタン酸、p-2-アミノ-3-メチル-3-((2-アミノエチル)ジチオ)ブタン酸、4-((p-1-ジメチル-2-アミノ-2-カルボキシエチル)ジチオ)ブタン硫酸ナトリウム、2-アセトアミドエチル-2-アセトアミドエタンチオールスルファネートおよび4-メルカプトブタンスルフィン酸ナトリウム三水和物が挙げられる。
【0175】
化学療法剤の例としては、限定されないが患者を処置するために適切な治療用抗体を含む、免疫治療剤も挙げられる。治療用抗体の一部の例としては、シムツズマブ、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アルシツモマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カンツズマブ、カツマキソマブ、セツキシマブ、シタツズマブ、シクツムマブ、クリバツズマブ、コナツムマブ、ダラツムマブ、ドロジツマブ、ドゥリゴツマブ、ドゥシギツマブ、デツモマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、エクロメキシマブ、エロツズマブ、エンシツキシマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファルレツズマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フツキシマブ、ガニツマブ、ゲムツズマブ、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブ、イブリツモマブ、イゴボマブ、イマガツズマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、ラベツズマブ、レクサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モキセツモマブ、ナルナツマブ、ナプツモマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブ、オレゴボマブ、パニツムマブ、パルサツズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ピンツモマブ、プリツムマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サツモマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ、ソリトマブ、タカツズマブ、タプリツモマブ、テナツモマブ、テプロツムマブ、ティガツズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ、ウブリツキシマブ、ベルツズマブ、ボルセツズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、CC49および3F8が挙げられる。リツキシマブは、辺縁帯リンパ腫、WM、CLLおよび小リンパ球性リンパ腫を含む緩慢進行性B細胞がんを処置するために使用することができる。リツキシマブおよび化学療法剤の組合せが特に有効である。
【0176】
例示された治療用抗体は、インジウム-111、イットリウム-90またはヨウ素-131などの放射性同位元素粒子でさらに標識されていてもよく、またはこれらと組み合わせてもよい。
【0177】
一実施形態では、追加の治療剤はナイトロジェンマスタードアルキル化剤である。ナイトロジェンマスタードアルキル化剤の非限定的例としては、クロラムブシルが挙げられる。
【0178】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物および組成物は、1つまたは複数の追加の治療剤とともに使用されてもよく、または1つまたは複数の追加の治療剤と組み合わされてもよい。1つまたは複数の治療剤としては、限定されるものではないが、Abl、活性化CDCキナーゼ(ACK)、アデノシンA2B受容体(A2B)、アポトーシスシグナル調節キナーゼ(ASK)、オーロラキナーゼ(Auroa kinase)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、BRD4などのBET-ブロモドメイン(BRD)、c-Kit、c-Met、CDK活性化キナーゼ(CAK)、カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaMK)、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)、カゼインキナーゼ(CK)、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)、上皮性増殖因子受容体(EGFR)、焦点接着キナーゼ(FAK)、Flt-3、FYN、グリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)、HCK、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、IKKβεなどのIKK、IDH1などのイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)、ヤヌスキナーゼ(JAK)、KDR、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、リシルオキシダーゼタンパク質、リシルオキシダーゼ様タンパク質(LOXL)、LYN、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、MEK、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、NEK9、NPM-ALK、p38キナーゼ、血小板由来増殖因子(PDGF)、ホスホリラーゼキナーゼ(PK)、ポロ様キナーゼ(PLK)、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)、タンパク質キナーゼA、Bおよび/またはCなどのタンパク質キナーゼ(PK)、PYK、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)、セリン/トレオニンキナーゼTPL2、セリン/トレオニンキナーゼSTK、シグナル変換および転写(STAT)、SRC、TBK1などのセリン/トレオニン-タンパク質キナーゼ(TBK)、TIE、チロシンキナーゼ(TK)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、YESまたはこれらの任意の組合せの阻害剤が挙げられる。
【0179】
ASK阻害剤としては、ASK1阻害剤が挙げられる。ASK1阻害剤の例としては、限定されるものではないが、国際公開第2011/008709号(Gilead Sciences)および国際公開第2013/112741号(Gilead Sciences)に記載されているものが挙げられる。
【0180】
BTK阻害剤の例としては、限定されるものではないが、イブルチニブ、HM71224、ONO-4059およびCC-292が挙げられる。
【0181】
DDR阻害剤としては、DDR1および/またはDDR2の阻害剤が挙げられる。DDR阻害剤の例としては、限定されるものではないが、国際公開第2014/047624号(Gilead Sciences)、米国特許出願公開第2009/0142345号(武田薬品工業株式会社)、米国特許出願公開第2011/0287011号(Oncomed Pharmaceuticals)、国際公開第2013/027802号(中外製薬株式会社)および国際公開第2013/034933号(Imperial Innovations)に開示されているものが挙げられる。
【0182】
HDAC阻害剤の例としては、限定されるものではないが、プラシノスタットおよびパノビノスタットが挙げられる。
【0183】
JAK阻害剤は、JAK1、JAK2および/またはJAK3を阻害する。JAK阻害剤の例としては、限定されるものではないが、フィルゴチニブ、ルキソリチニブ、フェドラチニブ、トファシチニブ、バリシチニブ、レスタウルチニブ、パクリチニブ、XL019、AZD1480、INCB039110、LY2784544、BMS911543およびNS018が挙げられる。
【0184】
LOXL阻害剤としては、LOXL1、LOXL2、LOXL3、LOXL4および/またはLOXL5の阻害剤が挙げられる。LOXL阻害剤の例としては、限定されるものではないが、国際公開第2009/017833号(Arresto Biosciences)に記載の抗体が挙げられる。
【0185】
LOXL2阻害剤の例としては、限定されるものではないが、国際公開第2009/017833号(Arresto Biosciences)、国際公開第2009/035791号(Arresto Biosciences)および国際公開第2011/097513号(Gilead Biologics)に記載の抗体が挙げられる。
【0186】
MMP阻害剤としては、MMP1~10の阻害剤が挙げられる。MMP9阻害剤の例としては、限定されるものではないが、マリマスタット(BB-2516)、シペマスタット(Ro32-3555)および国際公開第2012/027721号(Gilead Biologics)に記載されているものが挙げられる。
【0187】
PI3K阻害剤としては、PI3Kγ、PI3Kδ、PI3Kβ、PI3Kαおよび/またはpan-PI3Kの阻害剤が挙げられる。PI3K阻害剤の例としては、限定されるものではないが、ウォルトマンニン、BKM120、CH5132799、XL756およびGDC-0980が挙げられる。
【0188】
PI3Kγ阻害剤の例としては、限定されるものではないが、ZSTK474、AS252424、LY294002およびTG100115が挙げられる。
【0189】
PI3Kδ阻害剤の例として、限定されるものではないが、PI3K II、TGR-1202、AMG-319、GSK2269557、X-339、X-414、RP5090、KAR4141、XL499、OXY111A、IPI-145、IPI-443、ならびに国際公開第2005/113556号(ICOS)、国際公開第2013/052699号(Gilead Calistoga)、国際公開第2013/116562号(Gilead Calistoga)、国際公開第2014/100765号(Gilead Calistoga)、国際公開第2014/100767号(Gilead Calistoga)および国際公開第2014/201409号(Gilead Sciences)に記載の化合物が挙げられる。
【0190】
PI3Kβ阻害剤の例としては、限定されるものではないが、GSK2636771、BAY10824391およびTGX221が挙げられる。
【0191】
PI3Kα阻害剤の例としては、限定されるものではないが、ブパルリシブ、BAY80-6946、BYL719、PX-866、RG7604、MLN1117、WX-037、AEZA-129およびPA799が挙げられる。
【0192】
pan-PI3K阻害剤の例としては、限定されるものではないが、LY294002、BEZ235、XL147(SAR245408)およびGDC-0941が挙げられる。
【0193】
SYK阻害剤の例としては、限定されるものではないが、タマチニブ(R406)、フォスタマチニブ(R788)、PRT062607、BAY-61-3606、NVP-QAB205AA、R112、R343および米国特許第8,450,321号(Gilead Connecticut)に記載されているものが挙げられる。
【0194】
TKIは、上皮性増殖因子受容体(EGFR)、ならびに線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)に対する受容体を標的にし得る。EGFRを標的にするTKIの例としては、限定されるものではないが、ゲフィチニブおよびエルロチニブが挙げられる。スニチニブは、FGF、PDGFおよびVEGFに対する受容体を標的にするTKIの非限定的な例である。
【0195】
診断方法
クローディン18.2の過剰発現は、ある特定の腫瘍試料で観察され、クローディン18.2を過剰発現する細胞を有する患者は、本開示の抗クローディン18.2抗体による処置に反応する可能性がある。したがって、本開示の抗体は、診断および予後予測の目的のために使用することもできる。
【0196】
好ましくは細胞を含む試料は、患者から得ることができ、患者は、がん患者または診断を望む患者であり得る。細胞は、腫瘍組織もしくは腫瘍ブロックの細胞、血液試料、尿試料または患者からの任意の試料の細胞である。必要に応じた試料の前処理の際に、試料は、試料中に潜在的に存在するクローディン18.2タンパク質と抗体が相互作用することが可能な条件下、本開示の抗体とともにインキュベートすることができる。ELISAなどの方法を使用することができ、試料中のクローディン18.2タンパク質の存在を検出するために、抗クローディン18.2抗体は有利である。
【0197】
試料中のクローディン18.2タンパク質の存在(必要に応じて、量または濃度)は、患者が抗体による処置のために適切であることを示すので、または、患者ががん処置に反応している(または反応していない)ことを示すので、がんの診断のために使用することができる。予後予測の方法については、検出は、処置の進行を示すために、がん処置の開始の際に1回、2回またはそれよりも多く、ある特定の段階で、行うことができる。
【0198】
組成物
本開示は医薬組成物も提供する。このような組成物は、有効量の抗体および許容される担体を含む。一部の実施形態では、組成物は、第2の抗がん剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)をさらに含む。
【0199】
具体的な実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されていること、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方において、動物、より具体的にはヒトにおける使用のために列挙されていることを意味する。さらに、「薬学的に許容される担体」は、一般に、非毒性の、固体、半固体または液体の増量剤、希釈剤、カプセル化材料、または任意の種類の製剤補助剤である。
【0200】
「担体」という用語は、治療薬とともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。このような薬学的担体は、水、およびピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成起源のものを含む油などの無菌液体であり得る。水は、医薬組成物が静脈内に投与される場合、好ましい担体である。生理食塩水、ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、特に注射可能溶液のために、液体担体としても利用することができる。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。所望により、組成物は、微量の、湿潤剤もしくは乳化剤、または酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩などのpH緩衝剤を含有することもできる。ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧の調整のための薬剤も想定される。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの形態をとることができる。組成物は、伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどの担体を用いて坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような標準的な担体を含むことができる。適切な薬学的担体の例は、参照によって本明細書に組み込まれるE. W. MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。このような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するように、適切な量の担体と一緒に、好ましくは精製形態の治療有効量の抗原結合性ポリペプチドを含有する。製剤は、投与の様式に適していなければならない。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチック製の、アンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与用バイアルに封入され得る。
【0201】
ある実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合する医薬組成物として、定められた手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌の等張水性緩衝剤中の溶液である。必要な場合、組成物は、可溶化剤、および注射部位での痛みを和らげるためにリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。一般に、成分は、別々に、または単位剤形で一緒に混合されてのいずれかで、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密閉シールされた容器中の乾燥した凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、供給される。組成物が注入によって投与される場合、無菌の医薬品グレードの水または生理食塩水を含有する注入ボトルで分注することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供して、投与前に成分を混合することができる。
【0202】
本開示の化合物は、中性または塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどのアニオンと形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどのカチオンと形成されるものが挙げられる。
【実施例0203】
(実施例1)
ヒトクローディン18アイソフォーム2(CLD18A2)に対するマウスモノクローナル抗体の作製
a.免疫化
Balb/cおよびC57/BL6マウスを、ヒトクローディン18.2(CLD18A2)断片をコードする真核生物発現ベクターで免疫した。50μgのプラスミドDNAを、1日目および10日目に、四頭筋(筋肉内、i.m.)に注射した。マウスの血清中のヒトCLD18A2に対する抗体の存在を、ヒトCLD18A2をコードする核酸を一過的トランスフェクトされたHEK293細胞を使用して、フローサイトメトリーによって、20日目にモニターした。検出可能な免疫応答を有するマウス(
図1)を、ヒトCLD18A2をコードする核酸を一過的トランスフェクトされた5×10
7個のHEK293細胞の腹腔内注射による融合の3日および2日前に追加免疫した。
【0204】
b.CLD18A2に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
マウス脾細胞を単離し、標準的なプロトコールに基づいて、PEGによってマウスミエローマ細胞系に融合した。次いで、得られたハイブリドーマを、ヒトCLD18をコードする核酸をトランスフェクトされたHEK293細胞を使用して、細胞ELISAによって、CLD18A2特異性を有する免疫グロブリンの産生についてスクリーニングした。
【0205】
免疫されたマウスからの脾臓リンパ球の単一細胞懸濁液を、50%のPEG(Roche Diagnostics、CRL 738641)を使用して、2:1の比でP3X63Ag8U.1非分泌マウスミエローマ細胞(ATCC、CRL 1597)と融合した。細胞を、平底マイクロタイタープレートにおよそ3×10
4/ウェルで蒔き、続いて10%のウシ胎仔血清、2%のハイブリドーマ融合体およびクローニング補充物(HFCS、Roche Diagnostics、CRL 1 363 735)と10mMのHEPES、0.055mMの2-メルカプトエタノール、50μg/mlのゲンタマイシンおよび1倍のHAT(Sigma、CRL H0262)を含有する選択培地中で、約2週間インキュベーションを行った。10~14日後、個々のウェルを、抗CLD18A2モノクローナル抗体について、細胞ELISAによって、スクリーニングした(
図2)。抗体を分泌するハイブリドーマを再度蒔き、再び、CLD18A2またはCLD18A1を発現するHEK293を用いて、FACSによってスクリーニングし、依然としてCLD18A2について陽性およびCLD18A1について陰性の場合、限界希釈によってサブクローニングした。次いで、安定なサブクローンをin vitroで培養して、特性評価のための組織培養培地中で少量の抗体を作製した。親細胞の反応性を保持する(FACSによる)それぞれのハイブリドーマからの少なくとも1つのクローンを選択した。3つのウイルス細胞バンクを、それぞれのクローンについて作製し、液体窒素中で保管した。
【0206】
c.CLD18A2に結合するがCLD18A1に結合しないモノクローナル抗体の選択
抗体のアイソタイプを決定するために、アイソタイプELISAを行った。マウスmonoAB IDキット(Zymed、CRL 90-6550)を使用して、特定されたCLD18A2反応性モノクローナル抗体のIgサブクラスを決定した。32のハイブリドーマ細胞系を作製した:64G11B4、65G8B8、56E8F10F4、54A2C4、44F6B11、15C2B7、20F1E10、72C1B6A3、58G2C2、101C4F12、103A10B2、40C10E3、78E8G9G6、4F11E2、10G7G11、12F1F4、78C10B6G4、119G11D9、113G12E5E6、116A8B7、105F7G12、84E9E12、103F4D4、110C12B6、85H12E8、103H2B4、103F6D3、113E12F7、120B7B2、111B12D11、111E7E2、および100F4G12、さらなる詳細は下記に示す通り:
64G11B4、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
65G8B8、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
56E8F10F4、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
54A2C4、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
44F6B11、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
15C2B7、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
20F1E10、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
72C1B6A3、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
58G2C2、マウスモノクローナルIgG2a、κ抗体
101C4F12、マウスモノクローナルIgG2b、κ抗体
103A10B2、マウスモノクローナルIgG2b、κ抗体
40C10E3、マウスモノクローナルIgG1、λ抗体
78E8G9G6、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
4F11E2、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
10G7G11、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
12F1F4、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
78C10B6G4、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
119G11D9、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
113G12E5E6、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
116A8B7、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
105F7G12、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
84E9E12、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
103F4D4、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
110C12B6、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
85H12E8、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
103H2B4、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
103F6D3、マウスモノクローナルIgG1、κ抗体
113E12F7、マウスモノクローナルIgG2a、κ抗体
120B7B2、マウスモノクローナルIgG2a、κ抗体
111B12D11、マウスモノクローナルIgG2a、κ抗体
111E7E2、マウスモノクローナルIgG2a、κ抗体
100F4G12、マウスモノクローナルIgG3、κ抗体。
【0207】
(実施例2)
ハイブリドーマ配列決定
ハイブリドーマ細胞(1×10
7)を回収し、総RNAを、脾臓組織について上に記載のようにしてTri試薬を使用して抽出した。cDNAを、上に記載のようにして、SuperScript IIIキットを使用して、製造者の使用説明書に従って調製した。得られたcDNA産物を、プライマーのVhRevUおよびVhForUを用いるPCRのための鋳型として使用し、得られた300bpのPCR産物を、PCR clean-upキットを使用して清浄化し、同じプライマーで配列決定した。PCR反応はまた、軽鎖V領域特異的プライマーのVkRev7およびVkFor(可変領域のみのため)またはKappaForプライマー(全カッパ軽鎖のため)を用いて行った。配列決定反応を、清浄化されたPCR産物に対して行って、抗体64G11B4、65G8B8、56E8F10F4、54A2C4、44F6B11、15C2B7、20F1E10、72C1B6A3、58G2C2、101C4F12、103A10B2、40C10E3、78E8G9G6、4F11E2、10G7G11、12F1F4、78C10B6G4、119G11D9、113G12E5E6、116A8B7、105F7G12、84E9E12、103F4D4、110C12B6、85H12E8、103H2B4、103F6D3、113E12F7、120B7B2、111B12D11、111E7E2および100F4G12についてのDNA配列を得た。これらの可変(VHおよびVL)配列を下記の表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0208】
(実施例3)
CLD18A2に対して反応性のモノクローナル抗体の産生および精製
機能特性評価のためのmg量の抗体を産生させるために、ハイブリドーマ細胞を、透析ベースのバイオリアクター(CELLine CL1000、Integra、Chur、CH)に2×106細胞/mlで播種した。抗体を含有する上清を、週に1回、回収した。マウスモノクローナル抗体を、Melon Gel(Pierce、Rockford、USA)を使用して精製し、硫酸アンモニウム沈殿によって濃縮した。抗体の濃度および純度を、ドデシル硫酸ナトリウムゲル電気泳動およびクーマシー染色によって推定した。
【0209】
(実施例4)
CLD18A2に対して反応性のマウスモノクローナル抗体の結合
CLD18A2を過剰発現したMKN45細胞をフラスコから回収した。100μlの1×10
6細胞/mlの細胞を、100nMから始めて0.003nMまでの3倍連続希釈で、
図3に示した一次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄した後、細胞を、二次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄し、BD Falconの5mlチューブに移し、FACSによって分析した。研究の結果は、精製マウス抗体が、陽性の参照抗体と比較して、高いEC50で、ヒトCLD18A2をトランスフェクトされたMKN45細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示した。
【0210】
(実施例5)
CLD18A2突然変異体に対して反応性のマウスモノクローナル抗体の結合
M149L突然変異を持つCLD18A2を内因的に発現するSU620細胞をフラスコから回収した。100μlの1×10
6細胞/mlの細胞を、100nMから始めて0.003nMまでの3倍連続希釈で、
図4に示した一次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄した後、細胞を、二次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄し、BD Falconの5mlチューブに移し、FACSによって分析した。研究の結果は、精製マウス抗体が、高いEC50で、M149L突然変異を持つヒトCLD18A2を内因的に発現するSU620細胞に、フローサイトメトリーによると結合することができるが、参照抗体は結合することができなかったことを示した(
図4)。
【0211】
(実施例6)
マウスおよびカニクイザルCLD18A2に対して反応性のマウスモノクローナル抗体の結合
マウスおよびカニクイザルCLD18A2と交差反応性のこれらの抗体を評価するために、マウス、カニクイザルまたはヒトCLD18A2を過剰発現したHEK293細胞をフラスコから回収した。100μlの1×10
6細胞/mlの細胞を、100nMから始めて0.003nMまでの3倍連続希釈で、
図3aに示した一次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄した後、細胞を、二次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄し、BD Falconの5mlチューブに移し、FACSによって分析した。研究の結果は、精製マウス抗体が、少なくとも参照抗体と同様に、高いEC50で、マウスおよびカニクイザルCLD18A2に、フローサイトメトリーによると結合することができることを示した(
図5、6および7)。
【0212】
(実施例7)
CLD18A2に対して反応性のキメラ抗体の結合
マウスVHおよびVK遺伝子を合成により生成し、次いで、それぞれ、ヒトガンマ1およびヒトカッパ定常ドメインを含有するベクターにクローニングした。精製キメラ抗体をトランスフェクトされたCHO細胞から産生させた。
【0213】
ヒトCLD18A2またはCLD18A1を安定的に発現したMKN45細胞をフラスコから回収した。100μlの1×10
6細胞/mlの細胞を、100nMから始めて0.003nMまでの3倍連続希釈で、
図4に示した一次キメラ抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄した後、細胞を、二次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄し、BD Falconの5mlチューブに移し、FACSによって分析した。研究の結果は、キメラ抗体が、高いEC50で、ヒトCLD18A2とは結合することができるが、CLD18A1とは結合することができないことを示した(
図8および9)。
【0214】
(実施例8)
キメラ抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)
ADCCレポーターバイオアッセイは、ADCC MOA経路の活性化の早期段階:エフェクター細胞におけるNFAT(活性化T細胞の核因子)経路による遺伝子転写の活性化で、代替のリードアウトを使用する。加えて、ADCCレポーターバイオアッセイは、FcγRIIIa受容体、V158(高親和性)バリアント、およびエフェクター細胞として蛍ルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを安定的に発現する操作されたジャーカット細胞を使用する。ADCC MOAにおける抗体の生物活性は、NFAT経路活性化の結果として産生されるルシフェラーゼにより定量化され、エフェクター細胞におけるルシフェラーゼ活性は、発光リードアウトで定量化される(
図1)。シグナルは高く、アッセイのバックグラウンドは低い。
【0215】
クローディン18.2キメラモノクローナル抗体または参照抗体の連続希釈を、ADCCバイオアッセイ標的細胞(クローディン18.2を発現する)ありまたはなしで、操作されたジャーカットエフェクター細胞(ADCCバイオアッセイエフェクター細胞)とともに37℃で6時間の誘導のためにインキュベートした。ルシフェラーゼ活性をBio-Glo(商標)試薬を使用して定量化した(表2)。結果は、これらのキメラ抗体が非常に強いADCC活性を有することを示す。
【表2】
【0216】
(実施例9)
4F11E2、72C1B6A3および120B7B2のマウスmAbのヒト化
mAbの4F11E2、72C1B6A3および120B7B2可変領域遺伝子を、ヒト化MAbを作出するために利用した。このプロセスの第1のステップにおいて、MAbのVHおよびVLのアミノ酸配列を、ヒトIg遺伝子配列の利用可能なデータベースに対して比較して、全体的に最も一致するヒト生殖細胞系列のIg遺伝子配列を見出した。
【0217】
ヒト化抗体のアミノ酸配列を下記の表3に列挙する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0218】
ヒト化VHおよびVL遺伝子を合成により生成し、次いで、それぞれ、ヒトガンマ1およびヒトカッパ定常ドメインを含有するベクターにクローニングした。ヒトVHおよびヒトVLの対形成によりヒト化抗体を作出した(表4を参照のこと)。
【表4】
【0219】
(実施例10)
CLD18A2に対して反応性のヒト化抗体の結合
ヒトCLD18A2またはCLD18A1を安定的に発現するMKN45細胞をフラスコから回収した。100μlの1×10
6細胞/mlの細胞を、100nMから始めて0.003nMまでの3倍連続希釈で、
図4に示した一次ヒト化抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄した後、細胞を、二次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄し、BD Falconの5mlチューブに移し、FACSによって分析した。研究の結果は、示されたヒト化抗体が、高いEC50で、ヒトCLD18A2とは結合することができるが、CLD18A1とは結合することができないことを示した(
図10および11)。
【0220】
(実施例11)
CLD18A2と反応性のPTM(翻訳後修飾)危険性除去ヒト化抗体の結合
翻訳後修飾(PTM)は、異種性の増加、生物活性の低下、安定性の低下、免疫原性、断片化および凝集などの治療用タンパク質の開発の間に問題を引き起こし得る。PTMの潜在的な影響は、それらの位置、および一部の場合では、溶媒曝露に依存する。CDRの配列を、以下の潜在的なPTMについて分析した:アスパラギン脱アミノ化、アスパラギン酸異性化、遊離システインチオール基、N-グリコシル化、酸化、潜在的な加水分解部位による断片化など。
【0221】
4F11E2、72C1B6A3および120B7B2においてPTMが発生する危険性を低減するために、VHおよびVL中の一部の懸念されるアミノ酸を突然変異させた。次いで、9つの抗体を作製した。
【表5】
【表6-1】
【表6-2】
【0222】
ヒトCLD18A2またはCLD18A1を安定的に発現したMKN45細胞をフラスコから回収した。100μlの1×10
6細胞/mlの細胞を、100nMから始めて0.003nMまでの3倍連続希釈で、
図4に示した一次突然変異ヒト化抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄した後、細胞を、二次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝剤で2回洗浄し、BD Falconの5mlチューブに移し、FACSによって分析した。研究の結果は、示された抗体が、高いEC50で、ヒトCLD18A2とは結合することができるが、CLD18A1とは結合することができないことを示した(
図12および13)。
【0223】
危険性除去バリアントの4F11E2d(HC N55E/LC S32A)および4F11E2d(H N55E N104Q/LC S32A)の抗原結合効力を評価するために、バリアントを細胞ベース結合アッセイで試験した。100nMから開始して連続希釈された抗CLDN18.2抗体を、10
5個の細胞とともに、氷上で30分間インキュベートした。FACS緩衝剤で洗浄した後、細胞を、APC標識化二次抗体とともに、氷上でさらに30分間インキュベートした。抗体と結合した細胞をFACSによって分析した。バリアントは、細胞表面のクローディン18.2への強力な結合を示した(
図14)。
【0224】
(実施例12)
PTM危険性除去ヒト化抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)
クローディン18.2 PTM危険性除去ヒト化抗体または参照抗体の連続希釈を、ADCCバイオアッセイ標的細胞(クローディン18.2を発現する)ありまたはなしで、操作されたジャーカットエフェクター細胞(ADCCバイオアッセイエフェクター細胞)とともに37℃で6時間の誘導のためにインキュベートした。ルシフェラーゼ活性をBio-Glo(商標)試薬を使用して定量化した(表5)。結果は、これらのヒト化抗体が非常に強いADCC活性を有することを示す。
【表7】
【0225】
(実施例13)
エピトープマッピング
クローディン18.2の細胞外ドメインのすべてのアミノ酸をAに単一突然変異させた。それぞれの突然変異クローディン18.2または野生型クローディン18.2を、Hek293細胞にトランスフェクトした。クローディン18.2の発現を、示された抗体によって評価した。結果を
図14に示す(突然変異が結合を低減させたアミノ酸残基のみを示す)。
【0226】
図15に示すように、アミノ酸W30、N45、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56、S58、F60、E62、C63、R80、Y169およびG172は、3つの試験された抗体4F11E2(H4F)、72C186A3(H72C1)および120B7B2(120)、または参照抗体175D10(IMAB362)の結合に関与する。W30は、クローディン18.2タンパク質の最初の細胞外ドメインの前半で残基のクラスターを形成するように思われた。N45、Y46、G48、L49、W50、C53、V54、R55、E56、S58、F60、E62およびC63は、同じ細胞外ドメイン内の第2の残基のクラスターであるように思われた。一方、Y169およびG172は、第2の細胞外ドメインに位置するか、またはその近くにある。
【0227】
(実施例14)
ヒト化4F11E2、72C1B6A3および120B7B2抗体の、ベンチマークの175D10クローディン18.2抗体との比較
細胞ベース結合
ヒト化抗クローディン18.2抗体:4F11E2(HC N55E/LC S32A)、72C1B6A3(HC WT/LC S32A)および120B7B2(HC G57D S104A/LC S32A G97A)をベンチマーク抗体175D10(IMAB362)と比較するために、この例では、ヒトクローディン18.2発現細胞における細胞ベース結合を決定した。ヒトCLD18A2を安定的に発現するCHO-K1細胞を、ヒトCLDN18.2発現のレベルに基づいて、高発現体および低発現体に分けた。100nMから開始して連続希釈された抗CLDN18.2抗体を、105個の細胞とともに、氷上で30分間インキュベートした。FACS緩衝剤で洗浄した後、細胞を、APC標識化二次抗体とともに、氷上でさらに30分間インキュベートした。抗体と結合した細胞をFACSによって分析した。
【0228】
図16に示すように、4F11E2、72C1B6A3および120B7B2は、クローディン18.2高および低CHO-K1細胞の両方で、175D10との優れた結合を示した。
【0229】
ADCCアッセイ
ヒト化抗クローディン18.2抗体:4F11E2(HC N55E/LC S32A)、72C1B6A3(HC WT/LC S32A)および120B7B2(HC G57D S104A/LC S32A G97A)のADCC効果をベンチマーク抗体175D10(IMAB362)とさらに比較するために、この例では、細胞ベースADCCアッセイを行った。簡潔には、NK92細胞を、異なる用量の抗クローディン18.2抗体の存在中で、クローディン18.2を過剰発現する293細胞と共培養した。
図17に示すように、4F11E2、72C1B6A3および120B7B2は、175D10抗体に対して、優れたADCC効力を示した。
【0230】
ある特定の治療用抗体のために、増強されたADCCは、抗体ベース標的療法への治療ウィンドウを増加させ得る。増強されたADCCは、S239D/I332E突然変異などを有するFc領域を操作することによって達成され得る。NK92細胞ベースADCCアッセイにおいて、Fc領域中にS239D/I332E突然変異を有する4H11E2、72C1B6A3および120B7B2抗体は、同じS239D/I332E突然変異を有する対照抗体175D10と比較して、クローディン18.2を過剰発現する293細胞のより強いNK92媒介性細胞死滅を媒介した(
図18)。
【0231】
抗体依存性細胞食作用(ADCP)
マクロファージによる腫瘍細胞食作用に対する抗CLDN18.2mAbの効果を、CLDN18.2陽性NUG-C4細胞を異なる濃度の抗CLDN18.2mAbの存在中でヒト分化マクロファージと共培養した、in vitroアッセイで評価した。手短に述べると、CD14+単球を、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から精製し、6日間成熟マクロファージにin vitroで分化させた。単球由来マクロファージ(MDM)を収集し、エフェクター細胞として、終夜、24ウェルのディッシュに再度蒔いた。標的細胞としてCLDN18.2-eGFPを発現するNUG-C4を、異なる濃度の抗CLDN18.2mAbの存在中で、食細胞あたり5腫瘍細胞の比で、MDMに添加した。3時間のインキュベーション後、捕食されなかった標的細胞をPBSで洗い流し、残った食細胞を収集し、マクロファージマーカーCD14で染色し、続いてフローサイトメトリー分析を行った。食作用指数を、IgG対照のものに対して正規化されたCD14+細胞中のGFP+細胞のパーセントを定量化することによって計算した。
【0232】
図19に示すように、すべてのC18.2mAbは、濃度依存性の様式で、NUG-C4細胞の食作用を顕著に増強した。野生型IgG1およびS239D/I332E突然変異IgG1のフォーマットの両方で、4H11E2、72C1B6A3および120B7B2抗体は、参照抗体175D10よりも強いADCP効果を示した。
【0233】
総合すると、この例では、新たに開発された4F11E2、72C1B6A3および120B7B2抗体が、参照抗体175D10よりも強い細胞ベース結合およびADCC/ADCP効力を有していたことを実証する。これらの新たな抗体の改善された性質は、参照抗体175D10の性質と比較して、これらの抗体のより高い結合特異性に起因し得ると考えられる。例えば、175D10のクローディン18.2との相互作用は、
図15においてスペクトル全体にわたって強く、これは、D28、Q33、N38およびV43との強い結合、そしてG59およびV79との強い結合を含む。新たな抗体の4F11E2、72C1B6A3および120B7B2は、対照的に、第1の細胞外ドメインの前半でW30に対するより高い特異性を有し、第1の細胞外ドメインの後半でG48からE56に対するより高い特異性を有する。新たな抗体はまた、やはり後半にあるY46に対するわずかに強い結合も有する。D28、Q33、N38、V43、G59およびV79へのそれらの結合は、かなり弱く、これは、新たな抗体の改善されたADCCおよびADCPに寄与する可能性がある。
【0234】
本開示は、本開示の個々の態様の単一の説明として意図される、記載された具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的等価物である任意の組成物または方法は、本開示の範囲内である。当業者には、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、各種の改変および変更を本開示の方法および組成物に行うことができることが明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入る限り、本開示の改変および変更に及ぶことが意図される。
【0235】
本明細書で言及されたすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願それぞれが、参照によって組み込まれることが具体的かつ個々に示されたかのように、同じ程度で、参照によって本明細書に組み込まれる。