(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087360
(43)【公開日】2022-06-10
(54)【発明の名称】ページの天地辺を押してページをめくる書籍のページめくり装置
(51)【国際特許分類】
B42D 9/04 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
B42D9/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022065920
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】591184596
【氏名又は名称】欠田 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】欠田 俊幸
(57)【要約】
【課題】書籍のページをめくる装置において、廉価でありながら1ページをより確実にめくることができるページめくり装置を提供する。
【解決手段】左右に見開いた書籍の見開き面の一方のページの天辺又は地辺をページの内側に向かって押すことによって、そのページをその下のページから分離し、他方のページの上に送る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
書籍を左右に見開いた状態で保持する書籍保持手段と、前記書籍保持手段によって保持された前記書籍の見開き面の左右いずれか一方の表面のページをその下のページから分離するページ分離手段と、前記ページ分離手段によって分離された前記書籍の見開き面の左右いずれか一方の表面のページを前記書籍の見開き面の他方の表面のページの上まで移動するページ送り手段を備えた、書籍のページを自動的にめくる装置において、
前記ページ分離手段は、前記書籍の見開き面の左右いずれか一方の表面のページを、その天辺又は地辺を押すことによって、その下のページから分離する構成となっていることを特徴とする、ページの天地辺を押してページをめくる書籍のページめくり装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍のページめくり装置に関する。
【背景技術】
【0002】
書籍の電子化や肢体障碍者の読書補助等を目的とした、自動的にページをめくる、書籍のページめくり装置がある。
従来の装置は、書籍を見開いて保持する書籍保持手段、表面のページをその下のページから分離するページ分離手段、分離したページを他方のページの表面の上まで移動するページ送り手段等から構成されており、表面のページをその下のページから分離するページ分離手段の構成が各考案の特徴となっている。
【0003】
ローラがページの小口端部に接触して回転することでページの端部をめくる方向に持ち上げる構成は、密着した2ページが同時に持ち上がるという問題があった。(特許文献1)
ページ面押さえ部材がページの前小口側においてページに対して略下方に相対移動することによってページへの支持を1ページごとに解放する構成は、紙厚やページ数に応じた精密な移動制御が必要となり高価になるという問題があった。(特許文献2)
他に、ページ面の気圧を減圧してページを持ち上げる構成で各種の考案があるが、2ページが同時に持ち上がる問題や、減圧装置が必要となり大型、高価になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-253108
【特許文献2】特開2014-058053
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
書籍の電子化や肢体障害者の読書補助の他に、視力が減退した一般の高齢者向けに、活字が小さい文庫や新書のページを自動でめくり、書籍の見開き面の画像を拡大表示する廉価な読書補助装置を実現するため、ページの天地辺を押してページをめくる構成によって、廉価でより確実にページをめくることができる、ページの天地辺を押してページをめくる書籍のページめくり装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
用語について
書籍のページとは、紙の片面を意味し、1枚の紙は表裏で2ページとなるが、ページをめくる動作は一枚の紙を移動して2ページ進める動作であるため、ページをめくる、ページを送ると言う場合のページは、表裏2ページの1枚の紙をめくり、送る動作を意味する。
そのページをめくる動作を、表面のページをその下のページから分離すると表現する。
書籍のページ面の周囲の辺の名称として、綴じる部分の辺をのど、その対抗する辺を小口、上の辺を天、下の辺を地という、この上の辺又は下の辺を天地辺と呼び、天辺と地辺に直交する方向を天地方向と呼ぶ。
天地辺を押すとは、紙のページ1枚の天地辺を押すことを意味し、ページの辺はページの周囲境界であるため、押すとはページ面の外部から天地辺に接して、各辺に囲まれたページの内側方向へ押す動作であり、押す角度については、その下には次のページが存在するため、下方向は除外され、辺に力が加わるためには、ページ面の水平方向以上かつ垂直方向未満の角度となる。
以下、説明上、装置を水平面上に設置し、書籍の天辺を押すことでページをめくり、見開き面を右ページから左ページに読み進める形を前提にする。
書籍の見開き面に直交する軸周りの回転方向は、書籍の見開き面に向かって見た時計方向で表す。
【0007】
上記目的を達する為、ページの天地辺を押してページをめくる書籍のページめくり装置は、書籍保持手段と、ページ分離手段と、ページ送り手段を備える。
書籍保持手段は、書籍を載せる台座と、台座に載せた書籍を見開いた状態で保持する為の左及び右ページ面押さえ部材を備え、ページ分離手段は、書籍の見開き面の一方の表面のページの天地辺を押す為のページの天地辺押し部材を備え、ページ送り手段は、分離したページを見開き面の他方の表面のページの上へ送る為のページ送り部材と、書籍の見開き面を押さえることで書籍の見開き面からの高さを保持する高さ保持部材と、各部材を駆動する駆動部材を備える。
【0008】
台座は、書籍を見開いた状態で背面から保持するものであり、装置全体のベースとなる。
書籍の見開き面の台座からの高さは、書籍の紙厚とページ数によって異なり、読み進めることによってその左右のページの高さが変化する。
左右の高さが変化する書籍の見開き面に対して各部材が一定した高さを保持できるよう、左及び右ページ面押さえ部材とページ送り部材と高さ保持部材は、書籍の見開き面に直行する部材回転軸の軸回りに揺動回転可能に保持され、部材回転軸は、天地方向を向いた天地方向軸に天地方向軸周りに揺動回転自在に保持され、天地方向軸は、天地方向軸保持部材によって、台座に対して上下揺動自在に保持されている。
ページの天地辺押し部材は、左ページ面押さえ部材に保持されることで、間接的に部材回転軸周りに揺動回転可能に保持されている。
【0009】
左及び右ページ面押さえ部材は、部材回転軸周りに揺動回転することで、ページ面を押さえるその端部がページ面の内から外へ移動して、ページをめくる時やページを送り終わる時に、その動作を防げない構造となっている。
さらに、部材回転軸周りに、左ページ面押さえ部材は反時計方向に、右ページ面押さえ部材は時計方向に付勢されている。
【0010】
ページ送り部材と高さ保持部材は、その端部が書籍の見開き面上に沿って揺動回転する。
【0011】
ページの天地辺押し部材は、左ページ面押さえ部材によって、上下に揺動自在に保持されている。
ページの天地辺押し部材は、その下面に平滑な摺動面を持ち、平滑な摺動面は、押すページの天地辺と平行になるよう、天地辺に直行する軸周りに揺動回転自在かつ、押すページの天地辺にその先端部が付勢された状態で保持されており、その摺動面の摺動方向の途中にページの紙厚に相当する高さの突起部が設けられている。
ページの天地辺押し部材は、それを保持する左ページ面押さえ部材の付勢による反時計方向の揺動回転による移動に伴って、その摺動面が天辺に沿って天辺と交差する方向に摺動し、その摺動方向の途中に設けられた突起部が天辺に接した時、天辺を押す。
摺動面は、天辺に沿うことで、突起部が正確にページの天地辺に当たるよう、ガイドする役割を果たしている。
【0012】
駆動部材は、モータとその制御部品から構成され、モータはページ送り部材と高さ保持部材を部材回転軸周りに揺動回転させる。
モータを駆動する電力と、駆動を制御するスイッチ等の制御部材は既存の技術である。
【0013】
以上の構成で、初期状態において、書籍の見開き面の右ページを右ページ面押さえ部材の端部が下方に押さえ、左ページを高さ保持部材の端部が下方に押さえ、この2点で部材回転軸で保持された各部材の見開き面に対する高さを保持しており、左ページ面押さえ部材の端部とページ送り部材の端部は左天面方向のページ面の外に移動している。
左ページ面押さえ部材は、ページの天地辺押し部材を、その摺動面の先端部を左ページのの天辺に付勢しつつ、先端部が上下揺動自在となるよう、その後端部で保持している。
【0014】
装置を起動すると、モータによって、ページ送り部材と高さ保持部材が部材回転軸周りの反時計方向に揺動回転を開始し、ページ送り部材によって天面方向のページ面の外に押し上げられていた左ページ面押さえ部材が付勢によって反時計方向に揺動回転を開始する。
左ページ面押さえ部材に保持されたページの天地辺押し部材も反時計方向に揺動回転し、ページの天地辺押し部材の摺動面が左ページの天辺に付勢されていた初期位置から左ページの内側方向に向けて摺動する。
摺動中に摺動面に設けられた突起部が天辺に当たると、その突起部が当たったページ1枚に摺動方向に力がかかるが、ページは、のどの位置で製本固定されているため、ページの面方向には移動できず、ページの天地辺押し部材と共にやや上方に持ち上がる。
【0015】
ページ1枚がやや上方に持ち上がった時、反時計方向に揺動回転するページ送り部材の端部がその下に到達し、さらに左ページから右ページの方向へ揺動回転することで、持ち上がったページを背面から押して右に送る。
その後、左ページ面押さえ部材は、付勢による揺動回転を続け、その端部が左ページ面上まで移動して、持ち上げたページの下の左ページ面を押さえ、その下方突起が左天面に接して停止する。
初期状態で左ページ面を押さえていた、高さ保持部材はページ送り部材に先行する位置で反時計方向に揺動回転し、見開き面上を左ページから右ページに向かって移動する。
ページ送り部材が持ち上がったページを右に送り終わる直前に、先行して揺動回転する高さ保持部材が右のページ面押さえ部材を右天面方向のページ面の外に押上げ、右ページ面の押さえがなくなったところへ持ち上げたページが送られ、そのページを背面から押していたページ送り部材の端部が送り終わったページの上から右ページを押さえる。
持ち上げたページが送り終わった時点では、左ページ面押さえ部材とページ送り部材の端部が書籍の左右の見開き面を押さえて、部材回転軸で保持された各部材の書籍の見開き面に対する高さを保持している。
ページを送り終わった後、モータが逆回転し、ページ送り部材と高さ保持部材は初期の位置に戻り、押し上げられていた右のページ面押さえ部材は付勢によって元の位置に戻り、その端部が送られた右ページ面を押さえ、下方突起が右天面に当たる位置で停止する。
これらの部材の駆動は、電池とモータとスイッチで実現可能であり、既存の技術のため詳細は省略するが、上記の構成で、廉価で、より確実に1ページをめくる、ページの天地辺を押してページをめくる書籍のページめくり装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
機構が廉価であるため、書籍の電子化や肢体障害者の読書補助の他、視力が減退した一般の高齢者向けに、活字が小さい文庫や新書のページを自動でめくり、書籍の見開き面の画像を画面に拡大表示する廉価な読書補助装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は水平に置いた台座の上に見開いた書籍を置き、その天面方向に各部材を設置した実施例だが、地面方向でも可能であり両方に配してもよく、装置が水平である必要もない。
右から左へ順次読み進める形だが、逆方向の構成も可能であり、両方向に機能を持たせることで、送ったページを戻すこともできる。
安定して書籍を保持できるよう、台座の書籍の背にあたる部分に背溝が形成されている。
ページの天地辺押し部材が天辺に対して摺動するため、書籍が動かないよう対抗する地辺を押さえる地面押さえ部材が設けられている。
この地面押さえ部材の地面に当たる面は地面と平行である必要はなく、台座より離れるに従って、やや天面に近づく勾配があれば、対抗する天辺がより持ち上がりやすくなる。
【0019】
右ページ面押さえ部材と、ページ送り部材と一体化した高さ保持部材と、左ページ面押さえ部材と、左ページ面押さえ部材に保持されるページの天地辺押し部材が、部材回転軸周りに揺動回転可能に保持されることで一体化されている。
その部材回転軸は、天地方向に向いた天地方向軸周りに揺動回転可能な状態で天地方向軸に保持され、天地方向軸は天地方向軸保持部材によって台座に対して上下揺動自在に保持されているため、書籍の厚みの違いによる高さや、読進めることによる左右のページの高さの差による見開き面の傾きに対応できるとともに、一体化された各部材を上方向に持ち上げることで、台座に書籍を置き、取り出すことができる。
この部材回転軸は一本となっているが、各部材が一体化できれば、一本に限定しない。
また、部材回転軸はその真下にあるモータの回転軸となっており、ページ送り部材と一体化した高さ保持部材がモータに固着されて回転する。
機構を単純化するため、ページの天地辺押し部材を、左ページ面押さえ部材で保持しているが、独立した専用の保持部材で保持してもよい。
一体化された各部材の端部がその自重でページ面を押さえているが、バネ材で下方に付勢してもよい。
ページの天地辺押し部材の先端は自重で天地辺に付勢されているが、バネ材でもよい。
【0020】
図では省略してあるが、左ページ面押さえ部材と、それに保持されるページの天地辺押し部材は、部材回転軸周りに反時計方向に、右ページ面押さえ部材は時計方向に揺動回転するように、それぞれにバネ材で付勢されており、それぞれ、左及び右のページ面押さえ部材の下方突起が書籍の天面に当たる位置で停止している。
付勢は既存の技術であり、バネ材の形状、配置場所は限定しない。
その動作としては、モータによりページ送り部材と一体化した高さ保持部材を部材回転軸周りに揺動回転することで、付勢された右ページ面押さえ部材と左ページ面押さえ部材とそれに保持されるページの天地辺押し部材を揺動回転させている。
【0021】
必須ではないが、図では、左及び右のページ面押さえ部材、ページ送り部材、高さ保持部材の端部に回転体を回転自在に設けてあり、これによってページ面との摩擦を軽減し、辺を超える動作をスムーズにしている。
【0022】
モータを回転させる電気回路は既存の技術であり、図では省略してあるが、例としては、ページ送り部材が初期位置にある状態でスイッチ1と2を駆動し、ページ送り部材がページを送り終わる状態で一体となった高さ保持部材がスイッチ3を駆動するよう配置する。
他に、ページめくりを開始するためのスイッチ4を配置する。
【0023】
その動作としては、スイッチ4を手動でONにすることで、モータに反時計方向に回転する逆電圧が加わる。
ページ送り部材が反時計方向に回転することで、天面方向に押し上げられていた左ページ面押さえ部材と、それに保持されたページの天地辺押し部材がバネ材の付勢によって天面方向に移動し、先端が天辺に付勢されていた初期位置から摺動することで、摺動面の途中に設けられた突起部がページの天辺に当たってページと共に持ち上がる。
左ページ面押さえ部材が、天地辺押し部材の後端部を天辺よりやや低い位置で保持しており、突起部は天辺をやや上方に向かって押すことでより持ち上がりやすくなっている。
その持ち上がったページの下に、ページ送り部材の端部が入って、ページを裏から押して右方向に送る。
ページを送り終える時、一体となった高さ保持部材が右ページ面押さえ部材を天面方向へ押し上げることでスイッチ3を駆動する。
これにより、モータに時計方向に回転する正電圧が加わり、ページ送り部材と一体化した高さ保持部材は、時計方向に回転して初期位置まで戻る。
初期位置に戻ることで、右ページ面押さえ部材はバネ材の付勢によって初期位置に戻り、持ち上げて送った右ページ面を押さえ、左ページ面押さえ部材は天面方向へ押し上げられて、ページの天地辺押し部材と共に初期位置に戻り、スイッチ2を駆動してモータに反時計方向に回転する逆電圧が加わるが、その直後にスイッチ1を駆動してモータへの電力供給を遮断して一連の動作は停止する。
停止状態は、使用者が書籍の新たな見開き面を読み終えてスイッチ4を手動でONにするまで続く。
【0024】
図2は、ページの天地辺押し部材の実施例で、その下部の平滑な摺動面に円錐状の凹部があり、そこに摺動部材にねじ込まれた皿ねじの頭が勘合している。
この皿ねじの頭が摺動面からやや突出することで突起部となっており、ねじを回転することで、摺動面からの突起の高さをページ1枚分の紙厚に微調整することができる。
通常の皿ねじを使用する場合は、頭の縁には一定の厚みがあるので、この厚みを薄く加工することが望ましい。
この皿ねじの頭の縁でページの天地辺を押して持ち上げるが、原理としては、ページの天地辺押し部材の摺動面が平らな鉋の台で、皿ねじの頭の縁が台からわずかに出た鉋の刃となって木の表面を薄く削ぐ形に近い。
そのため、皿ねじと皿ねじの頭が勘合する円錐状の凹部の形状が動作に大きく影響する。
ページの天地辺押し部材を上下揺動自在に保持する方法は、後端部に貫通する穴に軸を通す形だが、既存の技術のため省略する。
【0025】
本装置でめくったページを直接読むこともできるが、そのページの画像を大画面またはゴーグル等に表示することで、視力が弱い人が小さな文字を拡大して見ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 台座
2 背溝
3 地面押さえ部材
4 右ページ面押さえ部材
5 右ページ面押さえ部材下方突起
6 左ページ面押さえ部材
7 左ページ面押さえ部材下方突起
8 ページ送り部材
9 高さ保持部材
10 ページの天地辺押し部材
11 モータ
12 部材回転軸
13 天地方向軸
14 天地方向軸保持部材
15 摺動面
16 円錐状の凹部
17 皿ねじ
18 書籍
19 回転体