(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087438
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】全反射蛍光X線分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
G01N23/223
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199366
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神戸 亮
(72)【発明者】
【氏名】表 和彦
(72)【発明者】
【氏名】樋口 稔文
(72)【発明者】
【氏名】多田 勉
(72)【発明者】
【氏名】藤村 一
(72)【発明者】
【氏名】野々口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】リサイ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ヴァーマン
(72)【発明者】
【氏名】ユーリー プラトノフ
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001DA02
2G001DA06
2G001EA01
2G001EA03
2G001EA09
2G001KA01
2G001LA11
(57)【要約】
【課題】分析感度が高くかつ分析速度が速い全反射蛍光X線分析装置を提供する。
【解決手段】全反射蛍光X線分析装置であって、試料表面に平行かつX線照射方向に直交する方向の有効幅が前記照射方向の寸法よりも大きい電子線焦点を有するX線源と、前記直交する方向の有効幅が電子線焦点よりも大きく、前記照射方向に湾曲する面を有する分光素子と、前記直交する方向に並べて複数配置され、前記分光素子により集光された1次X線が照射された試料から出射する蛍光X線の強度を測定する検出器と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面に平行かつX線照射方向に直交する方向の有効幅が前記X線照射方向の寸法よりも大きい電子線焦点を有するX線源と、
前記試料表面に平行かつ前記X線照射方向に直交する方向の有効幅が前記電子線焦点の有効幅よりも大きく、前記X線照射方向を含む前記試料表面に垂直な面内に、湾曲する断面を有する分光素子と、
前記試料表面に向けて前記X線照射方向に直交する方向に並べて複数配置され、前記分光素子により集光された前記X線が照射された前記試料から発生する蛍光X線の強度を測定する検出器と、
を有することを特徴とする全反射蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記試料表面において前記X線照射方向に直交する方向の前記X線照射幅が60mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記試料表面に平行かつ前記X線照射方向に直交する方向の前記分光素子の有効幅が30mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項4】
前記試料表面に平行かつ前記X線照射方向に直交する方向の前記電子線焦点の有効幅が15mm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項5】
前記試料表面に平行かつ前記X線照射方向に直交する方向の前記分光素子の反射面の断面が直線であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項6】
前記複数の検出器は、特性の異なる検出器を含む、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項7】
前記特性は、検出面積、エネルギー分解能、空間分解能、または、エネルギー感度であることを特徴とする請求項6に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項8】
前記複数の検出器は、前記X線照射方向を含む前記試料表面に垂直な面に対して、対称に配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全反射蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる元素を分析する装置として、蛍光X線分析装置が知られている。蛍光X線分析装置は、1次X線を試料に照射し、試料から出射される蛍光X線の強度とエネルギーに基づいて分析を行う。特に、試料表面の微量汚染等を分析するためには、試料表面に対して全反射臨界角度以下で1次X線を照射する全反射蛍光X線分析装置が用いられている。
【0003】
近年、半導体産業における汚染管理が高度化しており、ごく微量な不純物の混入等を迅速に判定するために、分析感度と分析速度の向上が求められている。分析感度と分析速度を向上するための方法の一つとして、試料の表面に照射される1次X線の強度を向上する方法がある。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、点光源から出射された1次X線が凹面を有する人工多層膜格子で集光され、集光された強度の高い1次X線を試料に照射することが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2乃至7には、複数の検出器または検出面積の広い検出器を用いて所定の領域から発生する蛍光X線を測定することにより、単位時間当たりに検出できる蛍光X線の強度を向上する点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-82400号公報
【特許文献2】特開平8-5584号公報
【特許文献3】米国特許第5742658号明細書
【特許文献4】特開2001-165875号公報
【特許文献5】特開平9-61382号公報
【特許文献6】特開平11-40632号公報
【特許文献7】特許第2921910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
試料から発生する蛍光X線の強度の総和は、試料に照射される1次X線の強度および検出面積に依存する。そのため、従来から、特許文献2乃至7のように、検出面積を増やすことにより、検出される蛍光X線量を増加させるための工夫が成されてきた。これに加え、試料に照射される1次X線の強度を増大させることによっても、さらに分析感度と分析速度を向上させることは可能である。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のようにX線源が点光源である場合、電子線源、例えばフィラメントに流す電流を増やすと、熱によるフィラメントの蒸発、変形、溶解のおそれがあり、フィラメントの寿命が短くなってしまう。冷陰極型の電子源を用いる場合であっても、流す電流を増やすと寿命が短くなることが知られている。また、電流増加によりターゲットもダメージを受け、さらには溶融する恐れもある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、分析感度が高くかつ分析速度が速い全反射蛍光X線分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の全反射蛍光X線分析装置は、試料表面に平行かつX線照射方向に直交する方向の有効幅が前記X線照射方向の寸法よりも大きい電子線焦点を有するX線源と、前記試料表面に平行かつ前記X線照射方向に直交する方向の有効幅が前記電子線焦点の有効幅よりも大きく、前記X線照射方向を含む前記試料表面に垂直な面内に、湾曲する断面を有する分光素子と、前記試料表面に向けて前記X線照射方向に直交する方向に並べて複数配置され、前記分光素子により集光された前記X線が照射された前記試料から発生する蛍光X線の強度を測定する検出器と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の全反射蛍光X線分析装置は、請求項1に記載の全反射蛍光X線分析装置において、前記試料表面において前記X線照射方向に直交する方向の前記X線照射幅が60mm以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の全反射蛍光X線分析装置は、請求項1または2に記載の全反射蛍光X線分析装置において、前記試料表面に平行かつ前記X線照射方向に直交する方向の前記分光素子の有効幅が30mm以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の全反射蛍光X線分析装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置において、前記試料表面に平行かつ前記X線照射方向に直交する方向の前記電子線焦点の有効幅が15mm以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の全反射蛍光X線分析装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置において、前記試料表面に平行かつ前記X線照射方向に直交する方向の前記分光素子の反射面の断面が直線であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の全反射蛍光X線分析装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置において、前記複数の検出器は、特性の異なる検出器を含む、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の全反射蛍光X線分析装置は、請求項6に記載の全反射蛍光X線分析装置において、前記特性は、検出面積、エネルギー分解能、空間分解能、または、エネルギー感度であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の全反射蛍光X線分析装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置において、前記複数の検出器は、前記X線照射方向を含む前記試料表面に垂直な面に対して、対称に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1乃至8に記載の発明によれば、分析感度が高くかつ分析速度が速い全反射蛍光X線分析装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】全反射蛍光X線分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、全反射蛍光X線分析装置100は、シリコン基板などの試料110の表面に対して1次X線を全反射臨界角度以下で照射する。そして、全反射蛍光X線分析装置100は、出射される蛍光X線の強度とエネルギーの関係を表すスペクトルを取得する。全反射蛍光X線分析装置100は、当該スペクトルを用いて試料110に含まれる元素を分析する。具体的には、例えば、全反射蛍光X線分析装置100は、X線源102と、分光素子104と、試料台106と、検出部108と、を含む。
【0021】
X線源102は、1次X線を発生させる。以下、発生した1次X線の照射方向(照射の中心方向)と直交し、試料110の表面に平行な方向をy軸方向とする。また、試料110の表面に平行で、y軸に直交する方向をx軸方向とする。さらに、試料110の表面に垂直な方向をz軸方向とする。例えば
図2に示すように、X線源102は、電子線源202と、ターゲット204と、電源208と、を有する。
【0022】
具体的には、例えばX線源102が熱陰極型の場合、電子線源202はフィラメントであり、電源208により負電圧を印加され、電子線203を発生させる。ターゲット204には電源208により正電圧が印加され、電子線源202から発生した電子線203が照射される。電子線203が照射されたターゲット204上の電子線焦点201から、1次X線205が発生する。ターゲット204の材料として、測定元素の吸収端のエネルギーに応じて、励起効率の高い1次X線を発生する材料が適宜選択される。フィラメント及びターゲット204は、真空排気された筐体内部に配置される。当該筐体は必要に応じて開口を有し、開口に1次X線を透過する材料で形成された膜が張られる。当該膜は、例えばベリリウムで形成される。ただし、使用するX線の波長によって、窓材での吸収が問題になる場合は、X線源102と光学素子104および試料110を同じ真空室に入れ、窓材を省略することもできる。
図2に示す例では、ターゲット204から発生した1次X線205は適切な取り出し角度で取り出され、分光素子104が配置された方向に出射される。
【0023】
ここで、ターゲット204上の電子線焦点201は、試料表面に平行かつX線照射方向に直交する方向(すなわちy軸方向)のX線を発生する有効幅がX線照射方向の寸法よりも大きい。具体的には、例えば、電子線源202がフィラメントの場合、y軸方向を巻き軸の中心軸として、タングステンのワイヤをらせん状に巻いた形状である。ターゲット204は、x軸及びy軸の寸法がいずれもフィラメントの寸法より大きくなるよう形成され、電子線源202から発生した電子線203が、例えばy軸方向の長さが15mmの領域に照射される。
【0024】
分光素子104は、試料表面に平行かつX線照射方向に直交する方向(すなわちy軸方向)のX線を分光する有効幅が電子線焦点201の有効幅よりも大きく、照射方向に湾曲する面を有する。具体的には、例えば、
図3(a)及び
図3(b)を用いて説明する。
図3(a)は、1次X線の光路を説明するための図であって、試料110の上側(すなわちz軸方向)から見た図である。
図3(b)は、1次X線の光路を説明するための図であって、試料110の側面から(すなわちy軸方向に向かって)見た図である。
【0025】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、分光素子104は、X線照射方向を含む試料表面に垂直な面内に、湾曲する断面を有する凹状の湾曲結晶である。当該湾曲面は、xz平面における楕円の一部であって、当該楕円の一方の焦点がX線源102であり、他方の焦点が試料110上の測定位置である。湾曲した表面には人工多層膜が形成され、多層膜干渉により特定の波長のX線のみを反射する。分光素子104は、多層膜でなく、ヨハンソン型湾曲結晶や湾曲面がログスパイラル曲線であるログスパイラル型湾曲結晶であってもよい。なお、
図3(a)に示す例では、測定位置は、円板状の基板の中央を中心とし、y軸方向に一定の長さを有する領域である。
【0026】
また、分光素子104は、試料表面に平行かつX線照射方向に直交する方向(すなわちy軸方向)の有効幅が電子線焦点の有効幅よりも大きい。これにより、X線源102から出射された1次X線のうちy軸方向に拡がった成分を、分光素子104によって反射させ、試料110の表面に照射することができる。分光素子のy軸方向の長さは、例えば、40mmである。なお、試料表面に平行かつX線照射方向に直交する方向の分光素子の有効幅は30mm以上であることが望ましい。これによって、
図3(a)に示すように、試料110の広い範囲にわたって十分な強度のX線が照射される。例えば、試料表面において、X線照射方向に直交する方向のX線照射幅が60mm以上であることが望ましい。
【0027】
実際に、測定領域のy軸方向の長さを、80mm程度まで広げることが可能であり、試料110の表面に照射される1次X線の強度の総和を増加させることができる。従来は、電子線焦点201および分光素子104のy軸方向の長さが短かったため、X線の試料面におけるy軸方向の照射領域は、試料110の中央付近に限定されていた。そのため、試料表面において、十分な強度でX線が照射される領域は、例えば、20mmから30mm程度であった。後述するように本実施形態によれば、従来に比べて、X線強度を保ったまま、3倍程度の広い領域に1次X線を照射することが可能になった。
【0028】
なお、分光素子104は、試料表面に平行かつX線照射方向に直交する方向(すなわちy軸方向)の反射面の断面が直線となるシリンドリカル形状であってもよい。
【0029】
試料台106は、分析対象となる試料110が載置される。具体的には、例えば、試料台106は、半導体製品を製造するために用いられるシリコン基板が載置される。また、試料台106は、測定位置が検出器302の直下に位置するよう、基板を移動させる。シリコン基板には、シリコン基板を製造、または加工処理する半導体工場で、Ni等の不純物が付着するおそれがある。試料台106がシリコン基板を移動させることにより、シリコン基板の複数の位置に1次X線が照射される。これにより、全反射蛍光X線分析装置100は、シリコン基板の表面に不純物が付着しているか分析することができる。
【0030】
検出部108は、検出器302と、計数器と、を含む。検出器302は、例えば、SDD(Silicon Drift Detector)検出器等の半導体検出器である。検出器302は、試料表面に対向して、なおかつ照射方向に直交する方向に複数並べて配置され、分光素子104により集光された1次X線が照射された試料110から出射する蛍光X線(蛍光X線や散乱線)の強度を測定する。さらに、検出器302は、測定した蛍光X線のエネルギーに応じた波高値を有するパルス信号を出力する。なお、
図3(a)に示す例では、試料表面において、X線照射方向に直交する方向のX線照射幅が60mm以上である。一定のX線強度で照射される領域がy軸方向に長いため、検出器302は、y軸方向に3台並べて配置される。これにより、同時に複数箇所、
図3(a)に示す例では同時に3箇所からの蛍光X線を検出でき、汚染分析のスループットを大幅に向上させることができる。
【0031】
計数器は、検出器302から出力されるパルス信号を、波高値に応じて計数する。具体的には、例えば、計数器は、マルチチャンネルアナライザであって、検出器302の出力パルス信号を、エネルギーに対応したチャンネル毎に計数し、蛍光X線の強度として出力する。検出部108は、計数器の出力をスペクトルとして取得する。
【0032】
試料台106、X線源102、及び、検出部108の動作は、制御部(図示なし)によって制御される。具体的には、例えば、制御部は、パーソナルコンピュータである。制御部は、各構成との間で指示コマンドの送受信を行うことにより、試料台106、X線源102、及び、検出部108の動作を制御する。また、制御部は、検出部108が出力したスペクトルに基づいて試料110の分析を行う。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、1次X線は、y軸方向に一定の長さを有する領域から発生する。従って、X線源102が発生させる1次X線の強度の総和を増加させることができる。また、
図3(a)に示すように、一定の長さから発生したX線をy軸方向に幅の広い分光素子104を用いることによって、試料上の広い範囲に一定強度の1次X線を照射することができ、試料上に照射されるX線強度の総和を、さらに増加させることができる。なお、
図3(a)には、各検出器302が検出する視野の中心に対応する試料110上の点に照射される1次X線を模式的に示しているが、実際にはy軸方向に長い連続した領域に照射される。
【0034】
また、1次X線は、xz平面において、局所的な領域から出射される。すなわち、xz平面において、X線源102は点光源とみなすことができる。従って、
図3(b)に示すように、照射方向に湾曲面を有する分光素子104によって、1次X線のxz面内に発散する成分を集光することができる。これにより、試料110の表面に照射される単位面積あたりの1次X線の強度を増加させることができる。
【0035】
試料110に照射される1次X線の強度が高いほど、試料110から発生する蛍光X線の強度は高くなる。本実施形態によれば、試料110の表面に照射される単位面積あたりの1次X線の強度を増加させるだけでなく、その増加した強度で照射される試料上の面積を増加させることにより、分析感度を高くかつ測定時間を短くすることができる。
【0036】
続いて、本実施形態の効果について実験結果とともに説明する。試料110は、円板状のシリコン基板であって、基板の中央部に微量不純物としてNiが付着した基板である。基板は、1次X線の照射領域の中心がシリコン基板の中心に位置するように、配置されている。分光素子104によって反射された1次X線は、基板の表面に対して0.1度の入射角で照射される。
図4及び
図5は、当該測定条件のもと測定されたSi-Kα線(
図4)及びNi-Kα線(
図5)のネット強度の分布を示す図である。円形のラインは8インチ径のシリコン基板の輪郭を表し、1次X線はマイナスx方向から入射してx=0のラインを中心に集光している。なお、
図4の左側のグラフは、Si-Kα線及びNi-Kα線のx=0断面の強度分布を示す図であり、上側のグラフは、y=0断面の強度分布を示す図である。
【0037】
図4及び
図5に示すように、分光素子104によってx軸方向の狭い領域に1次X線を集光することで高い蛍光X線強度を得ることができた。さらに、y軸方向に長い電子線源202によりy軸方向に長い電子線焦点201を有するX線源102を用いることによって、y軸方向に広い領域で高い蛍光X線強度を得ることができた。具体的には、基板中央を中心とし、x軸方向に30mm、y軸方向80mmの領域において、分析に十分な強度の蛍光X線が測定された。なお、分析に十分な強度の蛍光X線は、分析の目的や試料110に含まれる元素に応じて適宜設定される。ここでは、微量不純物であるNiの分析を行うために十分なネット強度を2300としている。
【0038】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上記全反射蛍光X線分析装置100の構成は一例であって、これに限定されるものではない。上記の実施例で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成する構成で置き換えてもよい。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、検出器302がy軸方向に3個並べて配置される場合について説明したが、複数の検出器302の配置レイアウトはこれに限られない。
図6(a)乃至(k)は、
図3(a)と同様、試料110の上側から見た検出器302の配置レイアウトの変形例を示す図である。なお、
図6(a)乃至(k)の各丸は1個の検出器302の検出領域である。また、
図6(a)乃至(k)の図面上左右方向がx軸方向であり、図面上上下方向がy軸方向である。
【0040】
具体的には、例えば、
図6(a)乃至(c)に示すように、y軸方向に並べて配置される検出器302の個数は、2個乃至4個のいずれであってもよい。また、当該個数は、4個以上であってもよい。
【0041】
また、
図6(d)乃至(f)に示すように、検出器302は、x軸方向に2列配置されてもよい。この際、図面上左列の検出器302と、右列の検出器302と、をy軸方向に2分の1個分ずらして配置することにより、検出領域の間隙を小さくすることができる。なお、検出器302はx軸方向に2列以上配置されてもよい。
【0042】
また、複数の検出器302は、特性の異なる検出器302を含んでもよい。具体的には、例えば、当該特性は、検出面積、エネルギー分解能、空間分解能、または、エネルギー感度である。
図6(g)乃至(k)に示すように、複数の検出器302は、検出面積が大きく感度が高いが、エネルギー分解能及び空間分解能が低い検出器302(図中大きい円)と、検出面積が小さく感度が低いが、エネルギー分解能及び空間分解能が高い検出器302(図中小さい円)と、を含んでいてもよい。また、高エネルギーのX線に対するエネルギー感度の高い検出器と、低エネルギーのX線に対するエネルギー感度の高い検出器と、を含んでいてもよい。
【0043】
図6(g)に示す例では、中央に検出面積の大きい検出器302が配置され、y軸方向の両隣に検出面積の小さい検出器302が配置される。
図6(h)に示す例では、中央に検出面積の大きい検出器302が配置され、斜め方向の4か所にそれぞれ検出面積の小さい検出器302が配置される。
図6(i)に示す例では、検出面積の大きい検出器302がy軸方向に3個並べて配置され、中央に配置された検出器302の斜め方向の4か所にそれぞれ検出面積の小さい検出器302が配置される。
図6(j)に示す例では、中央に検出面積の小さい検出器302が配置され、y軸方向の両隣に検出面積の大きい検出器302が配置される。
図6(k)に示す例では、中央に検出面積の小さい検出器302が配置され、斜め方向の4か所にそれぞれ検出面積の大きい検出器302が配置される。
【0044】
以上のように、検出器302は、複数の検出器302で形成される全体の検出領域が、分析を行うために十分な強度の蛍光X線が出射される領域を覆うように、配置されることが望ましい。例えば、複数の検出器302は、分光素子104の中心を通り照射方向に平行な線分を対称軸として、線対称に配置されることが望ましい。上記構成を有するX線源102及び分光素子104によれば、1次X線は、試料110の当該対称軸に線対称な領域に照射される。従って、
図6(a)乃至(k)(
図6(f)を除く)に示す例では、複数の検出器302で形成される全体の検出領域によって、分析を行うために十分な強度の蛍光X線が出射される領域を効率的に覆うことができる。
【符号の説明】
【0045】
100 全反射蛍光X線分析装置、102 X線源、104 分光素子、106 試料台、108 検出部、110 試料、201 電子線焦点、202 電子線源、203 電子線、204 ターゲット、205 1次X線、208 電源、302 検出器。