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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087452
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】モータコアの焼鈍装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/00 20060101AFI20220606BHJP
   C21D 1/26 20060101ALI20220606BHJP
   C21D 1/42 20060101ALI20220606BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20220606BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C21D9/00 S
C21D1/26 S
C21D1/42 J
H05B6/36 E
H01F41/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199387
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】笠井 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一晃
(72)【発明者】
【氏名】竹内 護
(72)【発明者】
【氏名】谷口 寛和
【テーマコード(参考)】
3K059
4K042
5E062
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB23
3K059AB24
3K059AB28
3K059AD03
3K059CD52
3K059CD79
4K042AA25
4K042BA13
4K042DA03
4K042DB01
4K042EA01
5E062AA06
5E062AC15
(57)【要約】
【課題】積層された電磁鋼板を固定するための固定部が外周面から径方向外側に突出するモータコアを焼鈍する場合に、固定部と固定部以外の部分との温度差を小さくするとともに焼鈍時間を短くして生産性を向上させることが可能なモータコアの焼鈍装置を提供する。
【解決手段】このステータコア10(モータコア)の焼鈍装置100は、ステータコア10を発熱させるための磁束を発生させる誘導加熱用の外側コイル部40(コイル部)を備える。そして、外側コイル部40は、ステータコア10の周方向において、ボルト固定部14に対応する固定対応位置Pと固定対応位置P以外との配置密度が異なるように配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された電磁鋼板を固定するための固定部が外周面から突出するように形成された環状のモータコアを発熱させるモータコアの焼鈍装置であって、
前記モータコアの軸方向から見て前記モータコアを周状に取り囲むように前記モータコアの径方向の外側に設けられ、前記モータコアを発熱させるための磁束を発生させる誘導加熱用のコイル部を備え、
前記コイル部は、前記モータコアの周方向において、前記固定部に対応する固定対応位置と前記固定対応位置以外との配置密度が異なるように配置されている、モータコアの焼鈍装置。
【請求項2】
前記コイル部は、前記周方向において、前記固定対応位置の配置密度がゼロとなるように前記固定対応位置を除くように分割して配置される第1配置、または、前記周方向において、前記固定対応位置の配置密度が前記固定対応位置以外の配置密度よりも小さくなるように配置される第2配置で配置されている、請求項1に記載のモータコアの焼鈍装置。
【請求項3】
前記コイル部は、前記周方向に沿うように延びる第1部分同士が前記軸方向に沿うように延びる第2部分により接続されることにより、前記軸方向に沿って蛇行する蛇行部分を含む、請求項2に記載のモータコアの焼鈍装置。
【請求項4】
前記第1部分同士の間に配置される絶縁性の磁性部材をさらに備える、請求項3に記載のモータコアの焼鈍装置。
【請求項5】
前記コイル部は、前記蛇行部分と連続的に形成されるとともに前記軸方向に延びる直線部分をさらに含み、
前記直線部分は、前記蛇行部分よりも前記径方向の外側に配置されている、請求項3または4に記載のモータコアの焼鈍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータコアの焼鈍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータコアを発熱させるコイル部を備えるモータコアの焼鈍装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、モータコアの径方向の外側においてモータコアと同心円状に配置された円環状の外側誘導コイルを備えるモータコアの焼鈍装置が開示されている。上記特許文献1に記載されているモータコアの焼鈍装置では、モータコアの焼鈍を行うために、外側誘導コイルにより発生する磁束によりモータコアを発熱させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6645163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているモータコアの焼鈍装置を、積層された電磁鋼板を固定するための固定部が外周面から径方向外側に突出するモータコアの焼鈍に用いる場合、固定部が固定部以外の部分よりも外側誘導コイルの近くに配置されてしまう。この場合、外側誘導コイルにより発生する磁束に基づく近接効果、表皮効果により固定部が集中的に発熱するので、固定部の温度が固定部以外の部分の温度と比較して過度に高くなる。固定部の温度が許容範囲の上限を越えた場合、酸化や絶縁被膜の劣化、等が生じる。また、固定部と固定部以外の部分との温度差が過大になった場合、モータコアに温度差に起因する熱応力が生じる。このため、固定部の温度が許容範囲の上限を超えない、かつ、固定部と固定部以外の部分との温度差が過大にならないように、外側誘導コイルにより発生する磁束の大きさを小さくする必要がある。すなわち、モータコアの焼鈍装置の出力を比較的小さくしてモータコアの焼鈍を行う必要がある。そして、モータコアの焼鈍装置の出力を小さくしてモータコアの焼鈍を行う場合、モータコアの焼鈍時間が長くなるので、モータコアの生産性が低下してしまう。したがって、積層された電磁鋼板を固定するための固定部が外周面から突出するように形成されているモータコアを焼鈍する場合に、固定部と固定部以外の部分との温度差を小さくするとともに焼鈍時間を短くして生産性を向上させることが可能なモータコアの焼鈍装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、積層された電磁鋼板を固定するための固定部が外周面から径方向外側に突出するモータコアを焼鈍する場合に、固定部と固定部以外の部分との温度差を小さくするとともに焼鈍時間を短くして生産性を向上させることが可能なモータコアの焼鈍装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるモータコアの焼鈍装置は、積層された電磁鋼板を固定するための固定部が外周面から突出するように形成された環状のモータコアを発熱させるモータコアの焼鈍装置であって、モータコアの軸方向から見てモータコアを周状に取り囲むようにモータコアの径方向の外側に設けられ、モータコアを発熱させるための磁束を発生させる誘導加熱用のコイル部、を備え、コイル部は、モータコアの周方向において、固定部に対応する固定対応位置と固定対応位置以外との配置密度が異なるように配置されている。
【0008】
この発明の一の局面におけるモータコアの焼鈍装置では、上記のように、コイル部は、モータコアの周方向において、固定部に対応する固定対応位置と固定対応位置以外との配置密度が異なるように配置されている。これにより、モータコアにおいて固定部の発熱量と固定部以外の部分の発熱量との差異が小さくなるように、固定部と固定部以外の部分との配置密度を異ならせることによって、固定部と固定部以外の部分との温度差が過大になるのを抑制しながら、モータコアの焼鈍装置の出力を比較的大きくすることができる。その結果、積層された電磁鋼板を固定するための固定部が外周面から径方向外側に突出するモータコアを焼鈍する場合に、固定部と固定部以外の部分との温度差を小さくするとともに焼鈍時間を短くして生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記のように、積層された電磁鋼板を固定するための固定部が外周面から突出するように形成されているモータコアを焼鈍する場合に、固定部と固定部以外の部分との温度差を小さくするとともに焼鈍時間を短くして生産性を向上させることが可能なモータコアの焼鈍装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態によるモータコアの焼鈍装置を示した平面図である。
図2】第1実施形態によるモータコアの焼鈍装置の斜視図である。
図3図3(a)は、図2の900-900線に沿った断面図である(図2には図示されていない絶縁性の磁性部材も示した図である)。図3(b)は、図3(a)に示した絶縁性の磁性部材が設けられていない場合の図である。図3(c)は、図3(a)に示した絶縁性の磁性部材のうちの一部が設けられていない場合の図である。
図4】第2実施形態によるモータコアの焼鈍装置の構成を示した模式図である。
図5】第1および第2実施形態の変形例によるモータコアの焼鈍装置の外側コイル部の構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1図3を参照して、第1実施形態によるステータコア10の焼鈍装置100の構成について説明する。なお、ステータコア10は、特許請求の範囲の「モータコア」の一例である。
【0013】
以下の説明では、ステータコア10の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、Z方向の一方側および他方側をそれぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、R方向の一方側(内側)および他方側(外側)を、それぞれ、R1側およびR2側とする。
【0014】
(ステータコアの構成)
図1に示すように、ステータコア10は、Z方向に沿った中心軸線を中心軸とした円筒形状を有する。すなわち、ステータコア10は、Z方向から見て、円環状に形成されている。ステータコア10は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。なお、ステータコア10は、インナーロータ型の回転電機の一部を構成するステータに用いられる。
【0015】
ステータコア10は、円環状のバックヨーク11と、バックヨーク11からR1側に突出する複数のティース12と、C方向に隣接するティース12同士の間に形成される複数のスロット13と、を含む。複数のスロット13の各々は、Z方向に延びるように設けられている。
【0016】
ステータコア10は、積層された電磁鋼板を固定するためのボルト固定部14を含む。ボルト固定部14は、バックヨーク11からR2側に突出するように設けられている。すなわち、ボルト固定部14は、ステータコア10の外周面10aからR2側(径方向外側)に突出するように形成されている。ボルト固定部14には、ボルトを挿入するためのボルト挿入孔14aがZ方向に延びるように形成されている。ステータコア10では、ボルト固定部14は、等角度間隔で3つ設けられている。なお、ボルト固定部14は、特許請求の範囲の「固定部」の一例である。
【0017】
(ステータコアの焼鈍装置の全体構成)
ステータコア10の焼鈍装置100は、ステータコア10を構成する電磁鋼板の打ち抜きの際に生じる歪みを除去するための焼鈍を行う装置である。すなわち、ステータコア10の焼鈍装置100は、ステータコア10を発熱させる装置である。なお、図1および図2では、ステータコア10の焼鈍装置100を、ステータコア10に対して発熱可能なように配置させた状態を示している。
【0018】
ステータコア10の焼鈍装置100は、内側コイル部30と、外側コイル部40と、を備える。内側コイル部30および外側コイル部40は、ステータコア10を発熱させるための磁束を発生させる誘導加熱用のコイルである。内側コイル部30は、Z方向から見て、ステータコア10のR1側に配置されている。内側コイル部30は、Z方向から見て、円環形状を有している。外側コイル部40は、Z方向(軸方向)から見て、ステータコア10を周状に取り囲むようにステータコア10のR2側(径方向外側)に設けられている。なお、外側コイル部40は、特許請求の範囲の「コイル部」の一例である。
【0019】
図2に示すように、ステータコア10の焼鈍装置100は、内側コイル部30および外側コイル部40に交流電流を供給する交流電源50を備える。交流電源50は、内側コイル部30および外側コイル部40にそれぞれ直列に接続されている。交流電源50は、内側コイル部30および外側コイル部40のZ2側の端部と配線60を介して接続されている。ステータコア10の焼鈍装置100は、交流電源50により内側コイル部30および外側コイル部40に供給された交流電流により発生する磁束によって、ステータコア10に渦電流を発生させて、ステータコア10を発熱させるように構成されている。
【0020】
ここで、第1実施形態では、外側コイル部40は、ステータコア10においてボルト固定部14の発熱量とボルト固定部14以外の部分の発熱量との差が小さくなるように、C方向(周方向)において、ボルト固定部14に対応する固定対応位置Pと固定対応位置P以外との配置密度が異なるように配置されている。これにより、ステータコア10においてボルト固定部14の発熱量とボルト固定部14以外の部分の発熱量との差異が小さくなるように、ボルト固定部14とボルト固定部14以外の部分との配置密度を異ならせることによって、ボルト固定部14とボルト固定部14以外の部分との温度差が過大になるのを抑制しながら、ステータコア10の焼鈍装置100の出力を比較的大きくすることができる。その結果、積層された電磁鋼板を固定するためのボルト固定部14が外周面10aからR2側(径方向外側)に突出するように形成されているステータコア10を焼鈍する場合に、ボルト固定部14とボルト固定部14以外の部分との温度差を小さくするとともに焼鈍時間を短くして生産性を向上させることができる。なお、ボルト固定部14に対応する固定対応位置Pとは、C方向において、ボルト固定部14が配置されている角度位置を意味する。言い換えると、固定対応位置Pとは、ステータコア10の中心軸とボルト固定部14の中心を結ぶ線上およびその近傍を意味する。
【0021】
(外側コイル部の配置の詳細)
図1に示すように、第1実施形態では、外側コイル部40は、C方向(周方向)において、固定対応位置Pの配置密度がゼロとなるように固定対応位置Pを除くように分割して配置される第1配置で配置されている。具体的には、外側コイル部40は、3つのコイル部分40aに分割されている。そして、3つのコイル部分40aは、各々、C方向において、(ボルト固定部14に対応する)固定対応位置Pに配置されず、固定対応位置P以外(すなわち、固定対応位置P同士の間)に配置されている。これにより、C方向(周方向)における固定対応位置Pに外側コイル部40が配置されないので、ステータコア10においてボルト固定部14の発熱量とボルト固定部14以外の部分の発熱量との差異を小さくすることができる。その結果、ボルト固定部14とボルト固定部14以外との温度差が過大になるのを容易に抑制することができる。また、C方向における固定対応位置Pに外側コイル部40が配置されないので、外側コイル部40を、ステータコア10の外周面10aの比較的近くに配置することができる。その結果、外側コイル部40がステータコア10の外周面10aの比較的遠くに配置される場合と比較して、外側コイル部40により発生する磁束によるステータコア10の発熱を効率良く行うことができる。なお、3つのコイル部分40aは、略同じ構成である。
【0022】
また、ステータコア10の焼鈍装置100では、外側コイル部40が3つのコイル部分40aに分割されているので、外側コイル部40を、R方向において、任意の位置に配置することができる(移動させることができる)。なお、図1では、3つのコイル部分40aが、各々、R方向において、ボルト固定部14のR2側の先端と略同じ位置に配置されている例を示した。
【0023】
また、図2に示すように、第1実施形態では、外側コイル部40は、C方向(周方向)に沿うように延びる第1部分41a同士がZ方向(軸方向)に沿うように延びる第2部分41bにより接続されることにより、Z方向に沿って蛇行する蛇行部分41を含む。具体的には、3つのコイル部分40aは、各々、蛇行部分41を含む。蛇行部分41では、C方向に沿うように延びる複数の第1部分41aが、互いに離間してZ方向に並ぶように設けられている。また、蛇行部分41では、Z方向に沿うように延びる第2部分41bのZ1側の端部およびZ2側の端部が、それぞれ、互いにZ方向に隣り合う第1部分41aの各々に接続されている。また、第2部分41bは、Z方向において、第1部分41aの一方側の端部同士を接続する第2部分41bと、第1部分41aの他方側の端部同士を接続する第2部分41bとが、交互に配置されている。すなわち、蛇行部分41は、いわゆるミアンダ形状を有する。これにより、蛇行部分41により、外側コイル部40をZ方向の位置をずらしながらC方向(周方向)における所望の範囲で往復させる(折り返す)ことができる。その結果、外側コイル部40を、C方向における固定対応位置Pを除くように容易に分割して配置することができる。なお、図3(a)に示すように、蛇行部分41では、Z方向において互いに隣り合う第1部分41a同士の間で、互いに逆向きの電流が流れる。
【0024】
また、図2に示すように、第1実施形態では、蛇行部分41は、C方向(周方向)における固定対応位置P以外において、第1部分41aがC方向における一方側の固定対応位置Pの近傍と他方側の固定対応位置Pの近傍との間に亘って延びるように、Z方向(軸方向)に沿って蛇行する。これにより、C方向(周方向)における固定対応位置P以外における外側コイル部40を、1つの蛇行部分41によって形成することができる。その結果、C方向における固定対応位置P以外におけるコイル部が複数の蛇行部分41によって形成される場合と比較して、外側コイル部40の構成を簡素化することができる。
【0025】
また、図3(a)に示すように、第1実施形態では、ステータコア10の焼鈍装置100は、第1部分41a同士の間に配置される絶縁性の磁性部材70を備える。具体的には、絶縁性の磁性部材70は、第1部分41a同士の間に配置される複数のコイル間部分71を含む。絶縁性の磁性部材70は、絶縁性を有する磁性体である。絶縁性の磁性部材70は、たとえば、フェライトコア、圧粉磁性体(純鉄等の磁性粉末に絶縁膜を施した後、金型によりプレス成形されたもの)等である。なお、絶縁性の磁性部材70は、磁性体であるので、磁束を引き寄せる効果がある。
【0026】
ここで、上述したように、蛇行部分41では、Z方向において互いに隣り合う第1部分41a同士の間で、互いに逆向きの電流が流れる。このため、第1部分41aに流れる電流により発生する磁束と、当該第1部分41aとZ方向に隣り合う第1部分41aに流れる電流により発生する磁束とが、それぞれ、互いに打ち消し合う方向にループする。したがって、たとえば、図3(b)に示すように、第1部分41a同士の間に配置される複数のコイル間部分71が設けられていない場合、第1部分41aに流れる電流により発生する磁束と、当該第1部分41aとZ方向に隣り合う第1部分41aに流れる電流により発生する磁束とが打ち消し合う量が比較的大きくなり、第1部分41aに流れる電流により発生する磁束密度が低下してしまう。
【0027】
そこで、図3(a)に示すように、第1部分41a同士の間にコイル間部分71(絶縁性の磁性部材70)を配置することにより、第1部分41aに流れる電流により生じる磁束がコイル間部分71(絶縁性の磁性部材70)に引き寄せられる。その結果、第1部分41aに流れる電流により発生する磁束と、当該第1部分41aとZ方向(軸方向)に隣り合う第1部分41aに流れる電流により発生する磁束とが互いに打ち消される量を低減することができるので、第1部分41aに流れる電流により発生する磁束密度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0028】
なお、ステータコア10の焼鈍装置100では、絶縁性の磁性部材70は、複数の第1部分41aに加えて、複数の第1部分41aおよび複数のコイル間部分71を、R2側から覆うように、かつ、隣り合うように配置される外径側部分72を含む。ここで、たとえば、図3(c)に示すように、複数の第1部分41aおよび複数のコイル間部分71をR2側から覆う外径側部分72が設けられていない場合、第1部分41aに流れる電流により発生する磁束と、当該第1部分41aとZ方向に隣り合う第1部分41aに流れる電流により発生する磁束とが、それぞれ、複数の第1部分41aよりもR2側において、打ち消し合う量が大きくなってしまう。
【0029】
そこで、図3(a)に示すように、これにより、複数の第1部分41aおよび複数のコイル間部分71をR2側から覆う外径側部分72を配置することにより、第1部分41aに流れる電流により生じる磁束が、第1部分41aよりもR2側において、外径側部分72によって寄せられる。その結果、外径側部分72が配置されていない場合と比較して、第1部分41aに流れる電流により発生する磁束と、当該第1部分41aとZ方向(軸方向)に隣り合う第1部分41aに流れる電流により発生する磁束とが互いに打ち消される量をより低減することができるので、第1部分41aに流れる電流により発生する磁束密度が低下してしまうのをより抑制することができる。
【0030】
また、図2に示すように、第1実施形態では、外側コイル部40は、蛇行部分41と連続的に形成されるとともにZ方向(軸方向)に延びる直線部分42を含む。そして、直線部分42は、蛇行部分41よりもR2側(径方向外側)に配置されている。ここで、Z方向に流れる電流による磁束により(ステータコア10を発熱させるように)ステータコア10に生じる渦電流は、電磁鋼板同士を跨ぐ方向にループする。しかしながら、渦電流は、電磁鋼板同士の間を跨いで流れない。このため、Z方向に流れる電流による磁束によりステータコア10に生じる渦電流は大きくならない。すなわち、直線部分42は、Z方向に沿って電流が流れるので、ステータコア10を効率良く発熱させることができない。一方、C方向に沿って流れる電流による磁束により、(ステータコア10を発熱させるように)ステータコア10に生じる渦電流は、Z方向と直交する面内においてループする(電磁鋼板同士を跨がない方向にループする)。すなわち、蛇行部分41の第1部分41aは、C方向に沿って電流が流れるので、ステータコア10を効率良く発熱させることができる。したがって、上記のように、直線部分42を蛇行部分41よりもR2側(径方向外側)に配置させることによって、ステータコア10を効率良く発熱させることができない直線部分42をステータコア10を発熱させるために用いずに、直線部分42のR1側(径方向内側)にステータコア10を効率良く発熱させることができる蛇行部分41の第1部分41aを配置させることができる。なお、ステータコア10の焼鈍装置100では、直線部分42のR1側には、蛇行部分41のC方向における端部が配置されている。すなわち、R方向から見て、直線部分42と蛇行部分41のC方向における端部とがオーバラップしている。
【0031】
なお、図3(a)に示すように、外側コイル部40は、中空形状を有する。外側コイル部40の内部には、外側コイル部40を冷却するための水を流通させる流水管40bが設けられている。これにより、外側コイル部40に流れる電流による発熱によって外側コイル部40自身の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0032】
[第2実施形態]
図4を参照して、第2実施形態によるステータコア10の焼鈍装置200の構成について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付している。
【0033】
図4に示すように、ステータコア10の焼鈍装置200は、外側コイル部240を備える。外側コイル部240は、蛇行部分241を含む。なお、外側コイル部240は、特許請求の範囲の「コイル部」の一例である。
【0034】
第2実施形態では、外側コイル部240は、上記第1実施形態の外側コイル部40(図1参照)と同様に、C方向(周方向)において、ボルト固定部14に対応する固定対応位置Pと固定対応位置P以外との配置密度が異なるように配置されている。
【0035】
一方、第2実施形態では、外側コイル部240は、上記第1実施形態の(C方向において、固定対応位置Pの配置密度がゼロとなるように固定対応位置Pを除くように分割して配置される)第1配置で配置されている外側コイル部40(図1参照)と異なり、C方向(周方向)において、固定対応位置Pの配置密度が固定対応位置P以外の配置密度よりも小さくなるように配置される第2配置で配置されている。具体的には、上記第1実施形態の第1配置で配置されている外側コイル部40と異なり、C方向において、固定対応位置P以外に加えて固定対応位置Pにも、外側コイル部240が配置されている。そして、C方向において、固定対応位置Pにおける外側コイル部240の配置密度が、固定対応位置P以外における外側コイル部240の配置密度よりも相対的に小さくなるように、外側コイル部240が配置されている。これにより、C方向(周方向)における固定対応位置Pの配置密度が、C方向における固定対応位置P以外の配置密度よりも小さくなるので、上記第1実施形態と同様に、ステータコア10においてボルト固定部14の発熱量とボルト固定部14以外の部分の発熱量との差異を小さくすることができる。その結果、上記第1実施形態と同様に、ボルト固定部14とボルト固定部14以外との温度差が過大になるのを容易に抑制することができる。
【0036】
そして、第2実施形態では、蛇行部分241は、C方向(周方向)における固定対応位置Pにおいて互いに隣り合う第1部分241a同士のZ方向における間隔D1が、C方向における固定対応位置P以外において互いに隣り合う第1部分241a同士のZ方向における間隔D2よりも大きくなるように配置されている。なお、図4では、C方向における固定対応位置Pにおいて、互いに隣り合う第1部分241a同士のZ方向における間隔D1が、C方向における固定対応位置P以外において互いに隣り合う第1部分241a同士のZ方向における間隔D2の略2倍となっている例を示している。これにより、外側コイル部240の配置密度をC方向(周方向)における固定対応位置Pと固定対応位置P以外との間で容易に変えることができる。その結果、外側コイル部240を、C方向において、固定対応位置Pの配置密度が固定対応位置P以外の配置密度よりも小さくなるように容易に配置することができる。すなわち、外側コイル部240を、第2配置で容易に配置することができる。
【0037】
なお、ステータコア10の焼鈍装置200では、C方向における固定対応位置Pに配置される外側コイル部240と、C方向における固定対応位置P以外に配置される外側コイル部240とで、R方向における位置を等しくしてもよいし、異ならせてもよい。
【0038】
なお、第2実施形態のステータコア10の焼鈍装置200のその他の構成は、上記第1実施形態のステータコア10の焼鈍装置100と同様である。
【0039】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0040】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、直線部分42を、蛇行部分41よりもR2側(ステータコア10(モータコア)の径方向の外側)に配置させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直線部分を、蛇行部分よりもモータコアの径方向の内側に配置させてもよいし、モータコアの径方向において蛇行部分と同じ位置に配置させてもよい。
【0041】
また、上記第1および第2実施形態では、外側コイル部40(240)(コイル部)を、蛇行部分41と直線部分42とを含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コイル部を、蛇行部分を含むとともに直線部分を含まないように構成してもよい。
【0042】
また、上記第1および第2実施形態では、蛇行部分41(241)を、固定対応位置P以外において、第1部分41aがC方向における一方側の固定対応位置Pの近傍と他方側の固定対応位置Pの近傍との間に亘るように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、蛇行部分を、固定対応位置P以外において、第1部分が周方向における一方側の固定対応位置の近傍と他方側の固定対応位置の近傍との間に亘らないように構成してもよい。その場合、たとえば、図5に示す第1変形例のように、固定対応位置P以外において、複数の蛇行部分341を配置するように構成してもよい。
【0043】
また、上記第2実施形態では、固定対応位置Pにおいて互いに隣り合う第1部分241a同士の間隔D1が、固定対応位置P以外において互いに隣り合う第1部分241a同士の間隔D2の略2倍になっている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定対応位置において互いに隣り合う第1部分同士の間隔は、固定対応位置以外において互いに隣り合う第1部分同士の間隔の2倍より小さくてもよいし大きくてもよい。
【0044】
また、上記第1および第2実施形態では、外側コイル部40(240)(コイル部)を、Z方向に沿って蛇行する蛇行部分41を含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コイル部を、Z方向以外の方向に沿って蛇行する蛇行部分を含むように構成してもよい。
【0045】
また、上記第1および第2実施形態では、絶縁性の磁性部材70を、コイル間部分71と外径側部分72とを含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図3(c)に示すように、絶縁性の磁性部材を、コイル間部分71を含むとともに外径側部分を含まないように構成してもよい。
【0046】
また、上記第1および第2実施形態では、ステータコア10(モータコア)の焼鈍装置100(200)を、絶縁性の磁性部材70を備えるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図3(b)に示すように、モータコアの焼鈍装置を、絶縁性の磁性部材を備えないように構成してもよい。
【0047】
また、上記第1および第2実施形態では、ステータコア10(モータコア)の焼鈍装置100(200)を、内側コイル部30を備えるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータコアの焼鈍装置を、内側コイル部を備えないように構成してもよい。
【0048】
また、上記第1および第2実施形態では、ステータコア10(モータコア)の焼鈍装置100(200)を、インナーロータ型の回転電機の一部を構成するステータに用いられるステータコア10(モータコア)の焼鈍を行う装置として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータコアの焼鈍装置を、アウターロータ型の回転電機の一部を構成するステータに用いられるステータコアの焼鈍を行う装置として構成してもよい。
【0049】
また、上記第1および第2実施形態では、特許請求の範囲の「モータコア」を、回転電機の一部を構成するステータコア10に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特許請求の範囲の「モータコア」を、ステータコアと共に回転電機の一部を構成するロータコアに適用してもよい。
【0050】
また、上記第1および第2実施形態において示した外側コイル部40(240)(コイル部)等の構成(形状、配置等)はあくまで一例であり、これに限られるものではなく、任意に改変し得る。
【符号の説明】
【0051】
10…ステータコア(モータコア)、10a…(ステータコア(モータコア)の)外周面、14…ボルト固定部(固定部)、40、240…外側コイル部(コイル部)、41、241、341…蛇行部分、41a、241a…第1部分、41b…第2部分、42…直線部分、70…絶縁性の磁性部材、100、200…ステータコア(モータコア)の焼鈍装置、P…固定対応位置
図1
図2
図3
図4
図5