(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087477
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】電動機の制御装置、電動機の制御方法、及び電動機システム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/40 20160101AFI20220606BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
H02P29/40
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199421
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【テーマコード(参考)】
5H501
5H641
【Fターム(参考)】
5H501DD04
5H501HB07
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501JJ25
5H501LL28
5H501LL35
5H641BB06
5H641BB15
5H641GG02
5H641GG04
5H641GG06
5H641GG08
5H641HH03
(57)【要約】
【課題】電機子と磁極子との間の間隙の幅を直接調整する方法を採用した場合に比較して、電機子と磁極子との相対運動を滑らかにすることを高精度に実現する。
【解決手段】電動機に目標の駆動力を与える基準電流値と、電動機の電機子と磁極子との相対位置の変化による電機子と磁極子との間の間隙の幅の変化に起因する駆動力の変動を打ち消す補正を行うための補正電流値とに基づいて、指令電流値を決定する決定手段と、
決定された指令電流値の電流が電動機に流れるように制御する制御手段とを備える、電動機の制御装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に目標の駆動力を与える基準電流値と、当該電動機の電機子と磁極子との相対位置の変化による当該電機子と当該磁極子との間の間隙の幅の変化に起因する当該駆動力の変動を打ち消す補正を行うための補正電流値とに基づいて、指令電流値を決定する決定手段と、
決定された前記指令電流値の電流が前記電動機に流れるように制御する制御手段と
を備える、電動機の制御装置。
【請求項2】
前記決定手段は、
前記基準電流値を決定する基準電流値決定手段と、
前記補正電流値を決定する補正電流値決定手段と、
前記基準電流値と前記補正電流値とを加算することにより前記指令電流値を決定する指令電流値決定手段と
を備える、請求項1に記載の電動機の制御装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記相対位置ごとに予め記憶された前記補正電流値を決定するための特定情報に基づいて、当該補正電流値を決定する、請求項1に記載の電動機の制御装置。
【請求項4】
前記決定手段は、現時点よりも先の時点における前記相対位置に対して予め記憶された前記特定情報に基づいて、前記補正電流値を決定する、請求項3に記載の電動機の制御装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記相対位置の変化速度に基づいて、前記先の時点を決定する、請求項4に記載の電動機の制御装置。
【請求項6】
前記特定情報は、前記電機子と前記磁極子との間の磁場の大きさ、及び前記電機子と前記磁極子との間隙の幅の少なくとも1つである、請求項3に記載の電動機の制御装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記特定情報と、当該特定情報が記憶された時点との環境の違い又は当該時点からの経時的な変化とに基づいて、前記補正電流値を決定する、請求項3に記載の電動機の制御装置。
【請求項8】
前記電機子と前記磁極子との間の磁場の大きさを検出する検出手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記検出手段により検出された前記磁場の大きさに基づいて、前記補正電流値を決定する、請求項1に記載の電動機の制御装置。
【請求項9】
前記電機子と前記磁極子との間の磁場の大きさを検出する検出手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記相対位置ごとに予め記憶された前記補正電流値を決定するための第1の特定情報と、前記検出手段による検出結果から得られた第2の特定情報とに基づいて、当該補正電流値を決定する、請求項1に記載の電動機の制御装置。
【請求項10】
前記決定手段は、現時点よりも先の時点における前記相対位置に対して予め記憶された前記第1の特定情報と、前記第2の特定情報とに基づいて、前記補正電流値を決定する、請求項9に記載の電動機の制御装置。
【請求項11】
電動機に目標の駆動力を与える基準電流値と、当該電動機の電機子と磁極子との相対位置の変化による当該電機子と当該磁極子との間の間隙の幅の変化に起因する当該駆動力の変動を打ち消す補正を行うための補正電流値とに基づいて、指令電流値を決定するステップと、
決定された前記指令電流値の電流が前記電動機に流れるように制御するステップと
を含む、電動機の制御方法。
【請求項12】
電機子コイルを有する電機子と、永久磁石を有する磁極子とを含む電動機と、
前記電動機を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記電動機に目標の駆動力を与える基準電流値と、当該電動機の電機子と磁極子との相対位置の変化による当該電機子と当該磁極子との間の間隙の幅の変化に起因する当該駆動力の変動を打ち消す補正を行うための補正電流値とに基づいて、指令電流値を決定する決定手段と、
決定された前記指令電流値の電流が前記電動機に流れるように制御する制御手段と
を備える、電動機システム。
【請求項13】
前記磁極子は、前記電機子と対向して配置される鉄心と、当該電機子との対向面を開放して当該鉄心を囲繞する複数の永久磁石とを具備する磁極ブロックを複数有し、
前記磁極ブロックにおいて、前記複数の永久磁石が前記鉄心に同一の磁極を向けて配置される、請求項12に記載の電動機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の制御装置及び制御方法、並びに電動機と制御装置とを備えた電動機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁コイルと、電磁コイルを保持するコアと、コアとの間でエアギャップを形成する回転部材とを備え、コアと回転部材とエアギャップとによって形成される磁路を介し伝えられる電磁コイルの磁力によって断続装置を断続操作する電磁アクチュエータであって、エアギャップ調整手段が、回転部材とコアのいずれか一方の部材に取り付けられ、他方の部材に対してエアギャップを形成する楔状断面部材であり、この楔状断面部材の位置を調整することにより、エアギャップが変化し調整される、電磁アクチュエータが記載されている。
【0003】
特許文献2には、電気自動車の車体底面に水平移動可能かつ垂直変位可能に連結された小受電車において、コントローラが、距離センサが検出したバーの上面までの垂直距離からギャップを差し引いた垂直距離が、磁束入力コアの下面高さとなるようにロッドの押し出し量を決定し、この押し出し量だけロッドを押し出し、このフィードバック制御により、支持バーの上端部が前方に倒れ、支持バーの下端部が後方へ移動し、磁束入力コアが後方へ移動するとともに、ギャップが増大する、車両用誘導送電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-155710号公報
【特許文献2】特開2010-22183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機に同じ電流を流した場合、電機子と磁極子との間の間隙の幅が一定であれば、電機子と磁極子との間の磁場の大きさは一定に保たれるので、電機子と磁極子との相対運動は滑らかなものとなる。しかしながら、実際には、様々な要因により、電機子と磁極子との間の間隙の幅は一定でないことが多く、その場合は、電動機に同じ電流を流したとしても、電機子と磁極子との間の磁場の大きさは一定でなくなるので、電機子と磁極子との相対運動は滑らかではなくなる。このような場合に、電機子と磁極子との間の間隙の幅を直接調整する方法を採用したのでは、電機子と磁極子との相対運動を滑らかにすることを高精度に実現することはできない。
【0006】
本発明の目的は、電機子と磁極子との間隙を直接調整する方法を採用した場合に比較して、電機子と磁極子との相対運動を滑らかにすることを高精度に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、電動機に目標の駆動力を与える基準電流値と、電動機の電機子と磁極子との相対位置の変化による電機子と磁極子との間の間隙の幅の変化に起因する駆動力の変動を打ち消す補正を行うための補正電流値とに基づいて、指令電流値を決定する決定手段と、決定された指令電流値の電流が電動機に流れるように制御する制御手段とを備える、電動機の制御装置を提供する。
【0008】
決定手段は、基準電流値を決定する基準電流値決定手段と、補正電流値を決定する補正電流値決定手段と、基準電流値と補正電流値とを加算することにより指令電流値を決定する指令電流値決定手段とを備える、ものであってよい。
【0009】
決定手段は、相対位置ごとに予め記憶された補正電流値を決定するための特定情報に基づいて、補正電流値を決定する、ものであってよい。その場合、決定手段は、現時点よりも先の時点における相対位置に対して予め記憶された特定情報に基づいて、補正電流値を決定する、ものであってよい。そして、決定手段は、相対位置の変化速度に基づいて、先の時点を決定する、ものであってよい。また、特定情報は、電機子と磁極子との間の磁場の大きさ、及び電機子と磁極子との間隙の幅の少なくとも1つであってよい。さらに、決定手段は、特定情報と、特定情報が記憶された時点との環境の違い又は時点からの経時的な変化とに基づいて、補正電流値を決定する、ものであってもよい。
【0010】
電動機の制御装置は、電機子と磁極子との間の磁場の大きさを検出する検出手段をさらに備え、決定手段は、検出手段により検出された磁場の大きさに基づいて、補正電流値を決定する、ものであってよい。
【0011】
電動機の制御装置は、電機子と磁極子との間の磁場の大きさを検出する検出手段をさらに備え、決定手段は、相対位置ごとに予め記憶された補正電流値を決定するための第1の特定情報と、検出手段による検出結果から得られた第2の特定情報とに基づいて、補正電流値を決定する、ものであってよい。その場合、決定手段は、現時点よりも先の時点における相対位置に対して予め記憶された第1の特定情報と、第2の特定情報とに基づいて、補正電流値を決定する、ものであってよい。
【0012】
また、本発明は、電動機に目標の駆動力を与える基準電流値と、電動機の電機子と磁極子との相対位置の変化による電機子と磁極子との間の間隙の幅の変化に起因する駆動力の変動を打ち消す補正を行うための補正電流値とに基づいて、指令電流値を決定するステップと、決定された指令電流値の電流が電動機に流れるように制御するステップとを含む、電動機の制御方法も提供する。
【0013】
さらに、本発明は、電機子コイルを有する電機子と、永久磁石を有する磁極子とを含む電動機と、電動機を制御する制御装置とを備え、制御装置は、電動機に目標の駆動力を与える基準電流値と、電動機の電機子と磁極子との相対位置の変化による電機子と磁極子との間の間隙の幅の変化に起因する駆動力の変動を打ち消す補正を行うための補正電流値とに基づいて、指令電流値を決定する決定手段と、決定された指令電流値の電流が電動機に流れるように制御する制御手段とを備える、電動機システムも提供する。
【0014】
磁極子は、電機子と対向して配置される鉄心と、電機子との対向面を開放して鉄心を囲繞する複数の永久磁石とを具備する磁極ブロックを複数有し、磁極ブロックにおいて、複数の永久磁石が鉄心に同一の磁極を向けて配置される、ものであってよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電機子と磁極子との間隙を直接調整する方法を採用した場合に比較して、電機子と磁極子との相対運動を滑らかにすることを高精度に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態が適用される電動機システムの機能構成例を示したブロック図である。
【
図2】本実施の形態に係る制御装置の機能構成例を示したブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係るマッピングデータ記憶部に記憶されたマッピングデータについて示した図である。
【
図4】本実施の形態に係る制御装置の動作例を示したフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係る第1の電動機の構成を示す斜視図である。
【
図6】本実施の形態に係る第1の電動機の電機子の構成を示す斜視図である。
【
図7】本実施の形態に係る第1の電動機の磁極子の構成を示す斜視図である。
【
図8】本実施の形態に係る第1の電動機の磁極ブロックの構成を示す分解斜視図である。
【
図9】本実施の形態に係る第1の電動機の磁極子における磁路を説明するための正面断面図である。
【
図10】本実施の形態に係る第1の電動機の電機子コイルから生じた磁路を示す正面断面図である。
【
図11】本実施の形態に係る第2の電動機の構成を示す側面断面図である。
【
図12】本実施の形態に係る第2の電動機の構成を示す平面断面図である。
【
図13】本実施の形態に係る第2の電動機の磁極ブロックの構成を示す分解斜視図である。
【
図14】本実施の形態に係る第2の電動機の磁極子における磁路を説明するための平面断面図である。
【
図16】本実施の形態に係る第2の電動機の電機子コイルから生じた磁路を示す断面図である。
【
図17】本実施の形態に係る第3の電動機の構成を示す側面断面図である。
【
図18】本実施の形態に係る第3の電動機の電機子の構成を示す平面図である。
【
図19】本実施の形態に係る第3の電動機の磁極ブロックの構成を示す分解斜視図である。
【
図20】本実施の形態に係る第3の電動機の磁極子の構成を示す底面図である。
【
図21】本実施の形態に係る第3の電動機の磁極子における磁路を説明するための底面図である。
【
図23】本実施の形態に係る第3の電動機の電機子コイルから生じた磁路を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
[電動機システム]
図1は、本実施の形態が適用される電動機システム1の機能構成例を示したブロック図である。図示するように、電動機システム1は、電動機100と、位置センサ151と、と、磁気センサ152と、制御装置200と、インバータ250とを備えている。
【0019】
電動機100は、電機子コイルを有する電機子と、永久磁石を有する磁極子とを含む。電動機100は、直動電動機であっても、回転電動機であってもよい。直動電動機は、例えば、電機子及び磁極子を略直方体形状とし、これらを対向させて、相対的に直線移動可能としたものである。回転電動機は、例えば、電機子及び磁極子を略円柱形状又は略円筒形状とし、これらを対向させて、回転軸を中心として相対的に回転可能としたものである。また、電動機100では、電機子を固定子とし、磁極子を可動子又は回転子としてもよいし、電機子を可動子又は回転子とし、磁極子を固定子としてもよいが、以下では、前者を例にとって説明する。さらに、電動機100では、磁極子を、ハルバッハ配列により構成された永久磁石を有するものとしてもよいし、N-S配列により構成された永久磁石を有するものとしてもよいし、三次元磁極構造をなす永久磁石を有するものとしてもよい。ここで、ハルバッハ配列とは、永久磁石の着磁方向を90°ずつ回転させながら配列する磁石配列方法であり、N-S配列とは、永久磁石の永久磁石のN極及びS極が交互に現れる磁石配列方法であるが、公知技術のため詳しい説明は省略する。三次元磁極構造とは、例えば、磁極子が、電機子と対向して配置される鉄心と、電機子との対向面を開放して鉄心を囲繞する複数の永久磁石とを具備する磁極ブロックを複数有し、磁極ブロックにおいて、複数の永久磁石が鉄心に同一の磁極を向けて配置される、磁極構造である。以下では、電動機100を、この三次元磁極構造をなす永久磁石を有するものとして説明する。
【0020】
位置センサ151は、電動機100に設けられ、電機子と磁極子との相対的な位置関係を検出する。電動機100が直動電動機であり、電機子が固定子、磁極子が可動子である場合、位置センサ151は、電機子に対する磁極子のストローク量を検出する。電動機100が回転電動機であり、電機子が固定子、磁極子が回転子である場合、位置センサ151は、電機子に対する磁極子の回転量を検出する。
【0021】
磁気センサ152は、電動機100に設けられ、電機子と磁極子との間の磁場の大きさを検出する。磁気センサ152としては、例えば、ホール素子を用いるとよい。ホール素子は、ホール効果を利用し、磁場の大きさに比例する電圧を出力する素子である。本実施の形態では、電機子と磁極子との間の磁場の大きさを検出する検出手段の一例として、磁気センサ152を設けている。
【0022】
制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部(図示せず)等を備えたマイクロコンピュータであり、電動機100を制御する。例えば、制御装置200は、電動機100に流すように指令する電流の電流値である指令電流値を決定する。この制御装置200の詳細については後述する。
【0023】
インバータ250は、制御装置200が決定した指令電流値に従って、PWM(Pulse Width Modulation)等により、直流電流である入力電流を交流電流である駆動電流に変換し、駆動電流を電動機100に流す。
【0024】
[制御装置]
(構成)
図2は、本実施の形態に係る制御装置200の機能構成例を示したブロック図である。図示するように、制御装置200は、位置情報取得部201と、基準電流値決定部202と、マッピングデータ記憶部203と、補正電流値決定部204と、指令電流値決定部205と、指令電流値出力部206とを備えている。また、制御装置200は、磁場情報取得部207と、マッピングデータ生成部208とを備えている。
【0025】
位置情報取得部201は、位置センサ151が検出した電機子と磁極子との相対位置を示す位置情報を取得する。電動機100が直動電動機であり、電機子が固定子、磁極子が可動子である場合、位置情報取得部201は、電機子に対する磁極子のストローク量を取得する。電動機100が回転電動機であり、電機子が固定子、磁極子が回転子である場合、位置情報取得部201は、電機子に対する磁極子の回転量を検出する。
【0026】
基準電流値決定部202は、位置情報取得部201が取得した電機子と磁極子との相対位置を示す位置情報に基づいて、電動機100に目標となる駆動力を与える電流値である基準電流値を決定する。電動機100が直動電動機であり、電機子が固定子、磁極子が可動子である場合、基準電流値決定部202は、電機子に対する磁極子のストローク量が目標のストローク量となる基準電流値を決定する。電動機100が回転電動機であり、電機子が固定子、磁極子が回転子である場合、基準電流値決定部202は、電機子に対する磁極子の回転量が目標の回転量となる基準電流値を決定する。本実施の形態では、基準電流値と補正電流値とに基づいて指令電流値を決定する決定手段のうち基準電流値を特定する部分の一例として、また、基準電流値を決定する基準電流値決定手段の一例として、基準電流値決定部202を設けている。
【0027】
マッピングデータ記憶部203は、電機子と磁極子との相対位置と、電機子と磁極子との間の磁場の大きさとを対応付けたマッピングデータを記憶する。電動機100が直動電動機であり、電機子が固定子、磁極子が可動子である場合、マッピングデータ記憶部203は、電機子に対する磁極子のストローク量と、電機子と磁極子との間の磁場の大きさを対応付けたマッピングデータを記憶する。電動機100が回転電動機であり、電機子が固定子、磁極子が回転子である場合、マッピングデータ記憶部203は、電機子に対する磁極子の回転量と、電機子と磁極子との間の磁場の大きさを対応付けたマッピングデータを記憶する。このマッピングデータの詳細については後述する。
【0028】
補正電流値決定部204は、まず、位置情報取得部201が取得した電機子と磁極子との相対位置を示す位置情報と、マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータとに基づいて、電機子と磁極子との間の磁場の大きさを特定する。
【0029】
その際、補正電流値決定部204は、例えば、位置情報取得部201が取得した位置情報により示される電機子と磁極子との現時点における相対位置に対応付けられた磁場の大きさを特定するとよい。電動機100が直動電動機であり、電機子が固定子、磁極子が可動子である場合、補正電流値決定部204は、電機子に対する磁極子の現時点におけるストローク量に対応付けられた磁場の大きさを特定するとよい。電動機100が回転電動機であり、電機子が固定子、磁極子が回転子である場合、補正電流値決定部204は、電機子に対する磁極子の現時点における回転量に対応付けられた磁場の大きさを特定するとよい。
【0030】
或いは、補正電流値決定部204は、電機子と磁極子との現時点よりも先の時点における相対位置に対応付けられた磁場の大きさを特定してもよい。電動機100が直動電動機であり、電機子が固定子、磁極子が可動子である場合、補正電流値決定部204は、電機子に対する磁極子の現時点よりも先の時点におけるストローク量に対応付けられた磁場の大きさを特定してもよい。電動機100が回転電動機であり、電機子が固定子、磁極子が回転子である場合、補正電流値決定部204は、電機子に対する磁極子の現時点よりも先の時点における回転量に対応付けられた磁場の大きさを特定してもよい。この場合、補正電流値決定部204は、現時点よりも先の時点を、電機子と磁極子との相対位置の変化速度に基づいて求めるとよい。電動機100が直動電動機であり、電機子が固定子、磁極子が可動子である場合、相対位置の変化速度とは、電機子に対する磁極子の移動速度である。電動機100が回転電動機であり、電機子が固定子、磁極子が回転子である場合、相対位置の変化速度とは、電機子に対する磁極子の回転速度である。
【0031】
また、補正電流値決定部204は、マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータの変化を補償してもよい。例えば、補正電流値決定部204は、マッピングデータ記憶部203にマッピングデータを記憶した時点との環境の違い又はその時点からの経時的な変化に基づいて、マッピングデータ全体をシフトしてもよい。ここで、環境の違いとは、例えば、温度の違いであり、経時的な変化とは、偏荷重等による電機子又は磁極子の形状の変化である。なお、このような環境の違い又は経時的な変化が許容範囲を超えていれば、補正電流値決定部204は、改めてマッピングデータを作成するように、ユーザに通知してもよい。
【0032】
補正電流値決定部204は、このようにして磁場の大きさが特定されると、この磁場の大きさに基づいて、電機子と磁極子との間隙の幅が一定でないことに起因する駆動力の変動を打ち消す補正を行うための電流値である補正電流値を決定する。換言すれば、補正電流値決定部204は、電機子と磁極子との相対位置の変化による電機子と磁極子との間の間隙の幅の変化に起因する駆動力の変動を打ち消す補正を行うための電流値である補正電流値を決定する。
【0033】
本実施の形態では、基準電流値と補正電流値とに基づいて指令電流値を決定する決定手段のうち補正電流値を特定する部分の一例として、また、補正電流値を決定する補正電流値決定手段の一例として、補正電流値決定部204を設けている。
【0034】
指令電流値決定部205は、基準電流値決定部202が決定した基準電流値と、補正電流値決定部204が決定した補正電流値とを加算することにより、電動機100に流すように指令する電流の電流値である指令電流値を決定する。なお、ここでの加算には、補正電流値が負の値であることによる実質的な減算も含まれる。本実施の形態では、基準電流値と補正電流値とに基づいて指令電流値を決定する決定手段のうち指令電流値を決定する部分の一例として、また、基準電流値と補正電流値とを加算することにより指令電流値を決定する指令電流値決定手段の一例として、補正電流値決定部204を設けている。
【0035】
指令電流値出力部206は、指令電流値決定部205が決定した指令電流値をインバータ250に出力することにより、この指令電流値の電流が電動機100に流れるように制御する。本実施の形態では、指令電流値の電流が電動機に流れるように制御する制御手段の一例として、指令電流値出力部206を設けている。
【0036】
磁場情報取得部207は、磁気センサ152が検出した電機子と磁極子との間の磁場の大きさを示す磁場情報を取得する。
【0037】
マッピングデータ生成部208は、電機子と磁極子との相対位置と、電機子と磁極子との間の磁場の大きさとを対応付けたマッピングデータを生成する。その際、マッピングデータ生成部208は、位置情報取得部201が取得した電機子と磁極子との相対位置を示す位置情報と、磁場情報取得部207が取得した電機子と磁極子との間の磁場の大きさを示す磁場情報とを突き合わせて、マッピングデータを生成する。そして、マッピングデータ生成部208は、生成したマッピングデータをマッピングデータ記憶部203に記憶する。
【0038】
図3は、マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータについて示した図である。マッピングデータは、事前準備として、マッピングデータ生成部208により生成され、マッピングデータ記憶部203に記憶される。マッピングデータは、位置センサ151が検出した電機子と磁極子との相対位置と、電機子と磁極子とがその相対位置にある場合に負荷がない状態で磁気センサ152が検出した電機子と磁極子との間の磁場の大きさとを予め対応付けたものである。
【0039】
なお、実際には、マッピングデータは、電機子と磁極子との相対位置、つまり、電機子に対する磁極子のストローク量又は回転量の離散的な複数の値に対して、磁場の大きさを対応付けたものである。しかしながら、ここでは、便宜上、電機子と磁極子との相対位置、つまり、電機子に対する磁極子のストローク量又は回転量の連続的な複数の値に対して、磁場の大きさを対応付けたグラフを示している。
【0040】
さらに、このグラフでは、横軸を、電機子と磁極子との相対位置、つまり、電機子に対する磁極子のストローク量又は回転量とし、縦軸を、電機子と磁極子との間の磁場の大きさとしている。したがって、このグラフは、電機子と磁極子との相対位置の変化に応じた磁場の大きさの変化を示したものとなっている。ここで、電機子と磁極子との間の磁場の大きさは、電機子と磁極子との相対位置ごとに予め記憶された補正電流値を決定するための特定情報の一例である。
【0041】
ところで、上記では、マッピングデータ記憶部203が予めマッピングデータを記憶しておき、補正電流値決定部204が、このマッピングデータを参照して特定した磁場の大きさに基づいて補正電流値を決定するようにした。これは、磁気センサ152が検出した磁場の大きさに基づいて補正電流値を決定すると、電動機100を制御する際には電機子と磁極子との相対位置は異なってしまっており、電動機100を正確に制御できないからである。
【0042】
しかしながら、電機子と磁極子との相対位置の変化速度が低速でそのような懸念がなければ、補正電流値決定部204は、磁気センサ152が検出した磁場の大きさに基づいて補正電流値を決定してもよい。
【0043】
また、補正電流値決定部204は、マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータを参照して特定した磁場の大きさと、磁気センサ152が検出した磁場の大きさとに基づいて、補正電流値を決定してもよい。
【0044】
その際、補正電流値決定部204は、マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータを参照して、予め記憶された磁場の大きさを特定する。つまり、補正電流値決定部204は、電機子と磁極子との現時点における相対位置での予め記憶された磁場の大きさと、電機子と磁極子との現時点よりも先の時点における相対位置での予め記憶された磁場の大きさとを特定する。また、補正電流値決定部204は、磁場情報取得部207が取得した磁場情報に基づいて、電機子と磁極子との現時点における相対位置での実際の磁場の大きさを特定する。さらに、補正電流値決定部204は、電機子と磁極子との現時点における相対位置での予め記憶された磁場の大きさと、電機子と磁極子との現時点における相対位置での実際の磁場の大きさとの差分を算出する。そして、補正電流値決定部204は、電機子と磁極子との現時点よりも先の時点における相対位置での予め記憶された磁場の大きさに、この算出した差分を加算する。その後、補正電流値決定部204は、このようにして得られた磁場の大きさに基づいて、補正電流値を決定する。これにより、予め記憶された磁場の大きさと実際の磁場の大きさとの差分を用いて補正すればよく、補正量を減らすことができる。ここで、予め記憶された磁場の大きさは、相対位置ごとに予め記憶された補正電流値を決定するための第1の特定情報の一例である。また、実際の磁場の大きさは、検出手段による検出結果から得られた第2の特定情報の一例である。さらに、この場合の補正電流値決定部204は、現時点よりも先の時点における相対位置に対して予め記憶された第1の特定情報と、第2の特定情報とに基づいて、補正電流値を決定する手段の一例である。
【0045】
なお、ここまでは、マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータを、電機子と磁極子との相対位置と、電機子と磁極子との間の磁場の大きさとを対応付けたものとしたが、この限りではない。マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータを、電機子と磁極子との相対位置と、電機子と磁極子との間の間隙(ギャップ)の幅とを対応付けたものとしてもよい。この場合、電機子と磁極子との間の間隙の幅は、電機子と磁極子との相対位置ごとに予め記憶された補正電流値を決定するための特定情報の一例である。その際、補正電流値決定部204は、電機子と磁極子との間の磁場の大きさの代わりに、電機子と磁極子との間の間隙の幅を用いて、同様の処理を行う。具体的には、補正電流値決定部204は、マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータを参照して、電機子と磁極子との間の予め記憶された間隙の幅を特定する。また、補正電流値決定部204は、磁場情報取得部207が取得した磁場情報から間隙の幅を導き出すことにより、電機子と磁極子との実際の間隙の幅を特定する。そして、補正電流値決定部204は、「磁場の大きさ」を「間隙の幅」と読み替えて、上述した処理を行う。
【0046】
(動作)
図4は、本実施の形態に係る制御装置200の動作例を示したフローチャートである。なお、このフローチャートでは、基準電流値と補正電流値とに基づいて指令電流値を決定して出力する動作のみを示す。また、このフローチャートでは、マッピングデータにおいて、電機子と磁極子との相対位置と、電機子と磁極子との間の磁場の大きさとが対応付けられているものとする。
【0047】
制御装置200では、まず、位置情報取得部201が、位置センサ151から電機子と磁極子との相対位置を示す位置情報を取得したかどうかを判定する(ステップ291)。
【0048】
その結果、位置センサ151から電機子と磁極子との相対位置を示す位置情報を取得していないと判定すれば、位置情報取得部201は、ステップ291を繰り返す。
【0049】
一方、位置センサ151から電機子と磁極子との相対位置を示す位置情報を取得したと位置情報取得部201により判定されれば、基準電流値決定部202が、ステップ291で取得された位置情報に基づいて、基準電流値を決定する(ステップ292)。ここで、基準電流値とは、上述したように、電動機100に目標となる駆動力を与える電流の電流値のことである。
【0050】
次に、補正電流値決定部204が、ステップ291で取得された位置情報と、マッピングデータ記憶部203に記憶されたマッピングデータとに基づいて、電機子と磁極子との間の磁場の大きさを特定する(ステップ293)。例えば、補正電流値決定部204は、ステップ291で取得された位置情報で示される電機子と磁極子との相対位置に基づいて、現時点よりも先のある時点における電機子と磁極子との相対位置を予測する。そして、補正電流値決定部204は、この予測された相対位置にマッピングデータにおいて対応付けられた磁場の大きさを特定する。或いは、補正電流値決定部204は、ステップ291で取得された位置情報で示される電機子と磁極子との相対位置にマッピングデータにおいて対応付けられた磁場の大きさを特定してもよい。
【0051】
そして、補正電流値決定部204は、ステップ293で特定された磁場の大きさに基づいて、補正電流値を決定する(ステップ294)。ここで、補正電流値とは、電機子と磁極子との間隙の幅が一定でないことに起因する駆動力の変動を打ち消す補正を行う電流の電流値のことである。
【0052】
次いで、指令電流値決定部205が、ステップ292で決定された基準電流値と、ステップ294で決定された補正電流値とを加算することにより、指令電流値を決定する(ステップ295)。ここで、指令電流値とは、電動機100に流すように指令する電流の電流値のことである。
【0053】
その後、指令電流値出力部206が、ステップ295で決定された指令電流値をインバータ250に出力する(ステップ296)。
【0054】
[電動機]
(第1の電動機)
本実施の形態では、直方体形状をなす鉄心の5つの面のそれぞれに永久磁石が取り付けられた複数の磁極ブロックを直線方向である可動方向及び可動方向に交差する横方向のそれぞれに並べて構成された磁極子と、磁極子に対向配置された電機子とを有する横方向磁束型の直動電動機を、第1の電動機として説明する。以下では、鉄心の開放する面以外の面が5つの場合について説明するが、必ずしもそれに限定されない。
【0055】
図5は、本実施の形態に係る第1の電動機の構成を示す斜視図である。直動電動機300は、電機子310と、可動子である磁極子320とを備える。なお、以下の説明において、磁極子320の可動方向を前後方向、電機子310と磁極子320とが並ぶ方向を上下方向、可動方向に直交する水平方向を横方向(左右方向)という。
【0056】
図6を参照して、電機子310の構成について説明する。
図6は、電機子310の構成を示す斜視図である。電機子310は、電機子コイル311と、ティース部312と、ヨーク部313とを有する。ヨーク部313は水平な板状をなしており、その上面からは前後方向及び横方向に行列状に並ぶように複数のティース部312が上方に突出している。
【0057】
ヨーク部313とティース部312とは電機子部材として一体的に形成されている。かかる電機子部材は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、ティース部312は、直方体形状をなしており、各ティース部312には導線が巻回され電機子コイル311が形成される。電機子コイル311は、横方向に4列ずつ、各列に3個ずつの合計12個設けられている。
【0058】
次に、磁極子320の構成について説明する。
図5に示すように、磁極子320は、電機子310の上方に配置される。
図7は、磁極子320の構成を示す斜視図である。
図7に示すように、磁極子320は、水平方向に延びる板状をなしている。かかる磁極子320は、複数の磁極ブロック321を有しており、これらの磁極ブロック321が前後方向及び横方向にそれぞれ並べられたマトリックス状の構造となっている。
【0059】
図8は、磁極ブロック321の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック321は、直方体形状の軟磁性体の鉄心322と、5つの板状の永久磁石323とを有している。各永久磁石323は、鉄心322の一面と同じ又は若干大きい主面を有しており、鉄心322の一面を隠すようにこれに取り付けられる。鉄心322には、その5つの面に永久磁石323が取り付けられる。つまり、鉄心322には、一面を開放して囲繞するように永久磁石323が取り付けられる。また、各永久磁石323は、鉄心322に同一の磁極を向けて配置される。鉄心322の開放された一面は可動子磁極324となる。後述するように、可動子磁極324は、各永久磁石323が鉄心322を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石323の外側を向く面(鉄心322とは反対側の面)は可動子磁極324の反対磁極となる。
【0060】
図7を参照する。直方体形状の磁極ブロック321のそれぞれは、面と面とを接して互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック321の可動子磁極324は互いに異なる磁極とされる。つまり、可動子磁極324が交互に反転するように各磁極ブロック321がマトリックス状に並べられる。このため、隣り合う2つの磁極ブロック321の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック321が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック321を容易にマトリックス状に配置することができる。
【0061】
また、複数の磁極ブロック321が並んだ構造体は、直方体の箱状の軟磁性体からなるヨーク325に収容される。したがって、各磁極ブロック321は可動子磁極324以外の磁極が外部に露出されず、このためヨーク325内に磁路が形成される。
【0062】
上記のようにして配置された磁極ブロック321は、可動子磁極324が下方を向き、4つの側面のそれぞれが前方、後方、右方、左方を向くように配置される。つまり、可動方向及び横方向のそれぞれに、可動子磁極324が1つずつ反転する。
【0063】
図9は、磁極子320の正面断面図である。
図9において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心322は、その周囲を取り囲む永久磁石323によって磁化される。S極が鉄心322に面する永久磁石323から出た磁束が鉄心322内を進む。鉄心322には5面に永久磁石323が取り付けられているため、これらの5つの永久磁石のそれぞれから出た磁束が鉄心322の内部を進み、それぞれの磁束が下方に進行して可動子磁極324から外側の空間(電機子310とのギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に分岐し、隣の磁極ブロック321のN極の可動子磁極324(隣がヨーク325の場合はヨーク325)から鉄心322の内部に進入する。N極の可動子磁極324には、隣り合う全ての磁極ブロック321からの磁束が進入する。この鉄心322には永久磁石のN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心322の内部を進み、前方、左方、右方、後方、及び上方のそれぞれに分岐して永久磁石323に入る。鉄心322の前方、左方、右方、及び後方のそれぞれに配置された永久磁石323からは隣接する永久磁石323(ヨーク325に隣接する永久磁石323からはヨーク325)へと磁束が進む。また、鉄心322の上方に配置された永久磁石323から出た磁束はヨーク325を進行し、隣の磁極ブロック321の上側の永久磁石323に入る。
【0064】
可動子磁極324は、当該可動子磁極324を含む鉄心322に面した永久磁石323の磁極と同一極性となる。つまり、鉄心322に永久磁石323のS極が面している場合、当該鉄心322の可動子磁極324はS極となり、鉄心322に永久磁石323のN極が面している場合、当該鉄心322の可動子磁極324はN極となる。
【0065】
上記のような構成の直動電動機300において、電機子コイル311に電流を流すと、電機子コイル311の周囲に磁界が発生する。
図10は、電機子コイル311から生じた磁路を示す正面断面図である。横方向に隣り合う2つの電機子コイル311には、互いに逆向きに電流が流れる。これにより、これらの電機子コイル311が巻回された2つのティース部312と、ヨーク部313と、ティース部312の間の空間とを通る磁路が形成される。このとき、ティース部312の磁極子320との対向面が磁極(電機子磁極314)となる。隣り合う2つのティース部312のうち、一方のティース部312の電機子磁極314がS極となり、他方のティース部312の電機子磁極314がN極となる。
【0066】
各電機子磁極314の横方向の位置と、各可動子磁極324の横方向の位置とは一致している。つまり、正面視において、電機子磁極314と可動子磁極324とが一対一で対向している。したがって、電機子コイル311に電流が流れると、電機子磁極314とこれに対応する可動子磁極324とが磁力によって吸引又は反発される(
図10には、電機子磁極314と可動子磁極324とが吸引される場合の磁路を示している。)。電機子コイル311に流れる電流が制御されることで、電機子コイル311によって生じる磁界が変化し、これによって磁極子320が前後方向に移動する。
【0067】
上記のようにして電機子コイル311から生じた磁束は、磁極子320の内部を通過する。つまり、S極の電機子磁極314から出た磁束がN極の可動子磁極324に入り、この可動子磁極324を有する鉄心322に接する全ての永久磁石323を通過する。永久磁石323を出た磁束は、隣の磁極ブロック321の永久磁石323に入り、S極の可動子磁極324から出てN極の電機子磁極314に入る。つまり、本実施の形態に係る直動電動機300では、電機子310によって生じた磁束が磁極ブロック321の全ての永久磁石323を通過する。磁極子320では、各鉄心322を永久磁石323が取り囲んでいるため、従来型の鉄心の2面にのみ永久磁石が取り付けられた構造の磁極子に比べて、可動子磁極324に生じる磁束が増大される。したがって、直動電動機300における磁気効率が向上する。
【0068】
(第2の電動機)
本実施の形態では、先端が欠落した扇形板状をなす鉄心の外側円弧面以外の5つの面のそれぞれに永久磁石が取り付けられた複数の磁極ブロックが回転軸を中心とした環状方向である可動方向に並べて構成された磁極子と、磁極子の外側を囲繞するように配置された電機子とを有するラジアルギャップ電動機を、第2の電動機として説明する。以下では、鉄心の開放する面以外の面が5つの場合について説明するが、必ずしもそれに限定されない。
【0069】
図11は本実施の形態に係る第2の電動機の構成を示す側面断面図であり、
図12はその平面断面図である。ラジアルギャップ電動機400は、電機子410と、回転子である磁極子420とを備える。磁極子420は、軟磁性体の回転軸426を有しており、回転軸426を中心として回転可能である。なお、以下の説明において、磁極子420の回転方向を周方向、磁極子420の回転半径方向を半径方向、回転軸426の長手方向を軸方向という。
【0070】
電機子410は、電機子コイル411と、ティース部412と、ヨーク部413とを有する。ヨーク部413は円環状をなしており、その内周面からは周方向に等間隔に並ぶように複数のティース部412が半径方向内側に突出している。
【0071】
ヨーク部413とティース部412とは電機子部材として一体的に形成されている。かかる電機子部材は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、ティース部412は、断面視において四角形状をなしており、各ティース部412には導線が巻回され電機子コイル411が形成される。電機子コイル411は、周方向に6個設けられている。
【0072】
次に、磁極子420の構成について説明する。
図12に示すように、磁極子420は、電機子410の半径方向内側に配置される。磁極子420は、円盤乃至円柱状をなしている。かかる磁極子420は、複数の磁極ブロック421を有しており、これらの磁極ブロック421が周方向に並べられた構造となっている。
【0073】
図13は、磁極ブロック421の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック421は、軸方向視において先端が円弧状に欠落した扇形(以下、「円環扇形」という)の板状をなしており、円環扇形の板状をなす軟磁性体の鉄心422と、5つの板状の永久磁石423a~423eとを有している。永久磁石423a及び423bは、鉄心422の一面と同じ又は若干大きい円環扇形の主面を有しており、鉄心422の円環扇形の2つの面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。永久磁石423c及び423dは、鉄心の厚さと同一又は若干大きい幅を有しており、鉄心422の側面を隠すようにそれぞれに取り付けられる(
図13では永久磁石423dを示していない。)。また、永久磁石423eは、鉄心422の小さい方の円弧面、即ち内側円弧面と同一の外径の円弧板状をなしており、鉄心422の内側円弧面を隠すようにこれに取り付けられる。つまり、鉄心422には、外側円弧面を開放して囲繞するように永久磁石423a~423eが取り付けられる。また、各永久磁石423a~423eは、鉄心422に同一の磁極を向けて配置される。鉄心422の開放された外側円弧面は回転子磁極424となる。後述するように、回転子磁極424は、各永久磁石423a~423eが鉄心422を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石423a~423eの外側を向く面(鉄心422とは反対側の面)は回転子磁極424の反対磁極となる。
【0074】
図12を参照する。円環扇形板状の磁極ブロック421のそれぞれは、側面同士を接して互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック421の回転子磁極424は互いに異なる磁極とされる。つまり、回転子磁極424が交互に反転するように各磁極ブロック421が周方向に並べられる。このため、隣り合う2つの磁極ブロック421の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック421が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック421を容易に周方向に並べて配置することができる。
【0075】
また、複数の磁極ブロック421が並んだ構造体は、軸長方向の両側から円盤状の軟磁性体からなるヨーク425に挟まれる。したがって、各磁極ブロック421は回転子磁極424以外の磁極が外部に露出されず、このためヨーク425内に磁路が形成される。
【0076】
また、
図12に示すように、鉄心422における回転子磁極424の面の幅は、ティース部412の幅と同一とされる。このため、電機子410によって生じた磁束の全てが回転子磁極424に漏れることなく出入りする。また、電機子コイル411の半径方向内側に対向するように、永久磁石423a、423b及びヨーク425が配置される。電機子コイル411の半径方向内側の空間は、従来ではトルク発生に寄与しない空間であったが、本実施の形態に係るラジアルギャップ電動機400では、この空間に永久磁石423a、423b及びヨーク425を配置することができ、磁気効率を向上させることができる。
【0077】
図14は磁極子420の磁路を説明するための平面断面図であり、
図15は
図14のA-A線による断面図である。
図14及び
図15において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心422は、その周囲を取り囲む永久磁石423a~423eによって磁化される。S極が鉄心422に面する永久磁石423a~423eから出た磁束が鉄心422内を進む。鉄心422には5面に永久磁石423a~423eが取り付けられているため、これらの5つの永久磁石423a~423eのそれぞれから出た磁束が鉄心422の内部を進み、それぞれの磁束が半径方向外向きに進行して回転子磁極424から外側の空間(電機子410とのギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に周方向及び軸方向に分岐し、隣の磁極ブロック421のN極の回転子磁極424から鉄心422の内部に進入する。この鉄心422には、隣り合う2つの磁極ブロック421からの磁束が進入する。この鉄心422には永久磁石423a~423eのN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心422の内部を進み、軸方向、周方向、及び半径方向内向きのそれぞれに分岐して永久磁石423a~423eに入る。永久磁石423c及び423dからは隣接する永久磁石423c及び423dへと磁束が戻る。永久磁石423a及び423bから出た磁束はヨーク425を進行し、隣の磁極ブロック421の永久磁石423a及び423bに入る。また、永久磁石423eから出た磁束は回転軸426を進行し、隣の磁極ブロック421の永久磁石423eに入る。
【0078】
回転子磁極424は、当該回転子磁極424を含む鉄心422に面した永久磁石423a~423eの磁極と同一極性となる。つまり、鉄心422に永久磁石423a~423eのS極が面している場合、当該鉄心422の回転子磁極424はS極となり、鉄心422に永久磁石423a~423eのN極が面している場合、当該鉄心422の回転子磁極424はN極となる。
【0079】
上記のような構成のラジアルギャップ電動機400において、電機子コイル411に電流を流すと、電機子コイル411の周囲に磁界が発生する。
図16は、電機子コイル411から生じた磁路を示す断面図である。各電機子コイル411の断面の周りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部412の磁極子420との対向面が磁極(電機子磁極414)となる。
【0080】
電機子コイル411によって生じた磁束は、ギャップを通じて回転子磁極424から鉄心422に入り、永久磁石423a~423dを通過する。永久磁石423a,423bを通過した磁束はヨーク425から空気中に出て電機子コイル411の外側を通り、ヨーク部413に入る。また、永久磁石423c,423dを通過した磁束は、隣の磁極ブロック421の永久磁石423c,423dを介して鉄心422に入り、S極の回転子磁極424からギャップに出て、これに対向するN極の電機子磁極414に入る。なお、電機子コイル411によって生じた磁束が永久磁石423eを通過してもよいし、通過しなくてもよい。当該磁束が永久磁石423eを通過するか否かはラジアルギャップ電動機400の構成による。例えば、鉄心422の半径方向寸法が小さく電機子磁極414と永久磁石423eとの距離が短ければ、電機子磁極414から生じた磁束が永久磁石423eを通過しやすく、鉄心422の半径方向寸法が大きく電機子磁極414と永久磁石423eとの距離が長ければ、電機子磁極414から生じた磁束が永久磁石423eを通過しにくい。本実施の形態に係るラジアルギャップ電動機400は、各鉄心422を永久磁石423a~423eが取り囲んでいるため、従来型の鉄心の2面にのみ永久磁石が取り付けられた構造の磁極子に比べて、回転子磁極424に生じる磁束が増大される。したがって、ラジアルギャップ電動機400における磁気効率が向上する。
【0081】
なお、上記では、第2の電動機を、磁極子420が電機子410の内側で回転するいわゆるインナーロータ型のラジアルギャップ電動機400としたが、これには限らない。第2の電動機は、磁極子が電機子の外側で回転するいわゆるアウターロータ型のラジアルギャップ電動機であってもよい。
【0082】
(第3の電動機)
本実施の形態では、円環扇形板状をなす鉄心の1つの主面以外の5つの面のそれぞれに永久磁石が取り付けられた複数の磁極ブロックが回転軸を中心とした環状方向である可動方向に並べて構成された磁極子と、磁極子と軸方向に向き合うように配置された円盤状の電機子とを有するアキシャルギャップ電動機を、第3の電動機として説明する。以下では、鉄心の開放する面以外の面が5つの場合について説明するが、必ずしもそれに限定されない。
【0083】
図17は本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機の構成を示す側面断面図である。アキシャルギャップ電動機500は、電機子510と、回転子である磁極子520とを備える。磁極子520は、軟磁性体の回転軸526を有しており、回転軸526を中心として回転可能である。電機子510と磁極子520とのそれぞれは円盤状をなしており、軸方向に所定距離のギャップを介して配置されている。
【0084】
電機子510は、電機子コイル511と、ティース部512と、ヨーク部513とを有する。
図18は、電機子510の構成を示す平面図である。ヨーク部513は円盤状をなしており、その片面からは周方向に等間隔に並ぶように実質的に扇形の複数のティース部512が軸方向に突出している。
【0085】
ヨーク部513とティース部512とは電機子部材として一体的に形成されている。かかる電機子部材は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、ティース部512は、平面視において実質的に扇形をなしており、各ティース部512には導線が巻回され電機子コイル511が形成される。電機子コイル511は、周方向に6個設けられている。
【0086】
次に、磁極子520の構成について説明する。
図17に示すように、磁極子520は、電機子510と軸方向に対向して配置される。かかる磁極子520は、複数の磁極ブロック521を有しており、これらの磁極ブロック521が周方向に並べられた構造となっている。
【0087】
図19は、磁極ブロック521の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック521は、軸方向視において円環扇形の板状をなしており、円環扇形の板状をなす軟磁性体の鉄心522と、5つの板状の永久磁石523a~523eとを有している。永久磁石523aは、鉄心522の内側円弧面と同一の外径の円弧板状をなしており、鉄心522の内側円弧面を隠すようにこれに取り付けられる。永久磁石523bは、鉄心522の外側円弧面と同一の内径の円弧板状をなしており、鉄心522の外側円弧面を隠すようにこれに取り付けられる。永久磁石523c及び523dは、鉄心の厚さと同一又は若干大きい幅を有しており、鉄心522の側面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。永久磁石523eは、鉄心522の一面と同じ又は若干大きい円環扇形の主面を有しており、鉄心522の円環扇形の片面を隠すように取り付けられる。つまり、鉄心522には、円環扇形の1つの主面を開放して囲繞するように永久磁石523a~523eが取り付けられる。また、各永久磁石523a~523eは、鉄心522に同一の磁極を向けて配置される。鉄心522の開放された一面は回転子磁極524となる。後述するように、回転子磁極524は、各永久磁石523a~523eが鉄心522を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石523a~523eの外側を向く面(鉄心522とは反対側の面)は回転子磁極524の反対磁極となる。
【0088】
図20は、磁極子520の構成を示す底面図である。円環扇形板状の磁極ブロック521のそれぞれは、側面同士を接して互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック521の回転子磁極524は互いに異なる磁極とされる。つまり、回転子磁極524が交互に反転するように各磁極ブロック521が周方向に並べられる。このため、隣り合う2つの磁極ブロック521の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック521が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック521を容易に周方向に並べて配置することができる。
【0089】
また、複数の磁極ブロック521が並んだ構造体は、軸方向の一方側が円環凹状に窪んだ円盤状の軟磁性体からなるヨーク525に収容される。したがって、各磁極ブロック521は回転子磁極524以外の磁極が外部に露出されず、このためヨーク525内に磁路が形成される。
【0090】
また、
図17に示すように、鉄心522における回転子磁極524の面の半径方向長さは、ティース部512の半径方向長さと同一とされる。このため、電機子510によって生じた磁束の全てが漏れることなく回転子磁極524に出入りする。また、電機子コイル511と軸方向に対向するように、永久磁石523a及び523bが配置される。電機子コイル511の軸方向に対向する空間は、従来ではトルク発生に寄与しない空間であったが、本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機500では、この空間に永久磁石523a、523bを配置することができ、磁気効率を向上させることができる。
【0091】
図21及び
図22は、磁極子520の磁路を説明するための図であり、
図21は磁極子520の底面図であり、
図22は
図21におけるB-B線による断面図である。
図21及び
図22において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心522は、その周囲を取り囲む永久磁石523a~523eによって磁化される。S極が鉄心522に面する永久磁石523a~523eから出た磁束が鉄心522内を進む。鉄心522には5面に永久磁石523a~523eが取り付けられているため、これらの5つの永久磁石523a~523eのそれぞれから出た磁束が鉄心522の内部を進み、それぞれの磁束が軸方向(前方)に進行して回転子磁極524から外側の空間(電機子510とのギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に周方向及び半径方向に分岐し、一部は隣の磁極ブロック521のN極の回転子磁極524から鉄心522の内部に進入し、その他はヨーク525に入り、永久磁石523a,523b,及び523eに戻る。N極の回転子磁極524を有する鉄心522には、隣り合う2つの磁極ブロック521からの磁束が進入する。この鉄心522には永久磁石523a~523eのN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心522の内部を進み、半径方向外側及び内側、周方向両側、後方のそれぞれに分岐して永久磁石523a~523eに入る。永久磁石523c及び523dからは隣接する永久磁石523c及び523dへと磁束が戻る。永久磁石525a、523b及び523eから出た磁束はヨーク525を進行し、一部は隣の磁極ブロック521の永久磁石525a、523b及び523eに入り、その他はヨーク525から外部へ出て電機子510側へと進行する。
【0092】
回転子磁極524は、当該回転子磁極524を含む鉄心522に面した永久磁石523a~523eの磁極と同一極性となる。つまり、鉄心522に永久磁石523a~523eのS極が面している場合、当該鉄心522の回転子磁極524はS極となり、鉄心522に永久磁石523a~523eのN極が面している場合、当該鉄心522の回転子磁極524はN極となる。
【0093】
上記のような構成のアキシャルギャップ電動機500において、電機子コイル511に電流を流すと、電機子コイル511の周囲に磁界が発生する。
図23は、電機子コイル511から生じた磁路を示す側面断面図である。各電機子コイル511の断面の周りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部512の磁極子520との対向面が磁極(電機子磁極514)となる。
【0094】
電機子コイル511によって生じた磁束は、ギャップを通じて回転子磁極524から鉄心522に入り、永久磁石523a~523dを通過する。永久磁石523a,523bを通過した磁束はヨーク525から空気中に出てヨーク部513に入り、電機子コイル511の外側を通ってS極の電機子磁極514に戻る。また、永久磁石523c,523dを通過した磁束は、隣の磁極ブロック521の永久磁石523c,523dを介して鉄心522に入り、S極の回転子磁極524からギャップに出て、これに対向するN極の電機子磁極514に入る。なお、電機子コイル511によって生じた磁束が永久磁石523eを通過してもよいし、通過しなくてもよい。当該磁束が永久磁石523eを通過するか否かはアキシャルギャップ電動機500の構成による。例えば、鉄心522の軸方向寸法が小さく電機子磁極514と永久磁石523eとの距離が短ければ、電機子磁極514から生じた磁束が永久磁石523eを通過しやすく、鉄心522の軸方向寸法が大きく電機子磁極514と永久磁石523eとの距離が長ければ、電機子磁極514から生じた磁束が永久磁石523eを通過しにくい。本実施の形態に係るアキシャルギャップ電動機500は、各鉄心522を永久磁石523a~523eが取り囲んでいるため、従来型の円環扇形板状の永久磁石が電機子に対向配置された構造の磁極子に比べて、回転子磁極524に生じる磁束が増大される。したがって、アキシャルギャップ電動機500における磁気効率が向上する。
【0095】
[効果]
本実施の形態では、電動機100に目標の駆動力を与える基準電流値と、電機子と磁極子との間の間隙の幅が一定でないことに起因する駆動力の変動を打ち消すための補正電流値とを足し合わせた指令電流値の駆動電流を電動機100に流すようにした。これにより、間隙の幅の大小に合わせて駆動電流の強さを変えることができ、それによって、電機子と磁極子との相対運動を滑らかに行うことを高精度に実現できるようになった。
【符号の説明】
【0096】
1 電動機システム
100 電動機
151 位置センサ
152 磁気センサ
200 制御装置
250 インバータ
300 直動電動機
400 ラジアルギャップ電動機
500 アキシャルギャップ電動機
310,410,510 電機子
311,411,511 電機子コイル
320,420,520 磁極子
321,421,521 磁極ブロック
323,423,523 永久磁石