(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087487
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
F16F9/32 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199432
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】志村 清之介
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC16
3J069EE02
3J069EE06
(57)【要約】
【課題】減衰力特性の設計自由度を向上でき、減衰力を大きくできるだけでなく小型化可能な緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明における緩衝器Dは、シリンダ1と、ロッド2に連結されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、リザーバRと、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れを許容する伸側減衰通路4と、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れを許容する圧側減衰通路5と、伸側減衰通路4に設けられる伸側減衰バルブ6と、圧側減衰通路5に設けられる圧側減衰バルブ7と、リザーバRから伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する伸側吸込通路8と、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する圧側吸込通路9とを備え、リザーバRがロッド2内或いはロッド2に設けられるハウジング11,22内に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記ロッドに連結されて前記シリンダ内に移動自在に挿入されるとともに前記シリンダ内を液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
液体を貯留するリザーバと、
前記伸側室から前記リザーバへ向かう液体の流れを許容する伸側減衰通路と、
前記圧側室から前記リザーバへ向かう液体の流れを許容する圧側減衰通路と、
前記伸側減衰通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、
前記圧側減衰通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、
前記リザーバから前記伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側吸込通路と、
前記リザーバから前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側吸込通路とを備え、
前記リザーバは、前記ロッド内或いは前記ロッドに設けられるハウジング内に形成される
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記伸側減衰通路、前記圧側減衰通路、前記伸側吸込通路および前記圧側吸込通路は、前記ピストンに設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記ピストンは、
前記ロッドに取付けられて前記シリンダの内周に摺接して前記伸側室を区画するとともに前記伸側減衰通路および前記伸側吸込通路とを有する第一隔壁と、
前記第一隔壁に対して間隔を開けて前記ロッドに取付けられて前記シリンダの内周に摺接して前記圧側室を区画するとともに前記圧側減衰通路および前記圧側吸込通路を有する第二隔壁とを備え、
前記リザーバは、前記第一隔壁および前記第二隔壁との間の空隙に連通されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記伸側室と前記圧側室とを前記リザーバを介さずに連通するとともに前記伸側室から前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側副減衰通路と、
前記圧側室と前記伸側室とを前記リザーバを介さずに連通するとともに前記圧側室から前記伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側副減衰通路と、
前記伸側副減衰通路に設けられて外部操作で通過する液体の流れに与える抵抗の調節が可能な伸側副減衰バルブと、
前記圧側副減衰通路に設けられて外部操作で通過する液体の流れに与える抵抗の調節が可能な圧側副減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、車両の車体と車輪との間に介装されて減衰力を発揮して、車体と車輪の振動を抑制する。緩衝器が発揮する減衰力は、減衰バルブによって発揮され、車両における乗心地を左右する。
【0003】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、ロッドに連結されてシリンダ内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ内を作動油が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、液体を貯留する液室と液室を加圧する気室とを有するリザーバと、伸側室と液室とを接続する第一通路と、圧側室と液室とを接続する第二通路と、第一通路に並列して設けられる伸側減衰バルブと第一チェックバルブと、第二通路に並列して設けられる圧側減衰バルブと第二チェックバルブとを備えて構成される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
第一チェックバルブは、伸側室からリザーバへ向かう作動油の流れのみを許容し、第二チェックバルブは、圧側室からリザーバへ向かう作動油の流れのみを許容している。
【0005】
よって、このように構成された緩衝器は、シリンダに対してピストンが伸側室を圧縮する方向へ移動する伸長作動時には、圧縮される伸側室の作動油が伸側減衰バルブおよび第二チェックバルブを介して拡大する圧側室へ移動して、伸側減衰バルブで伸長作動を妨げる伸側減衰力を発生する。
【0006】
対して、前記緩衝器は、シリンダに対してピストンが圧側室を圧縮する方向へ移動する収縮作動時には、圧縮される圧側室の作動油が圧側減衰バルブおよび第一チェックバルブを介して拡大する伸側室へ移動して、圧側減衰バルブで収縮作動を妨げる圧側減衰力を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来の緩衝器では、収縮作動時においても、圧縮される圧側室の容積変動分と等しい量の作動油を圧側減衰バルブへ送り込むことができるとともに、圧側減衰力を発生する際に有効となるピストンの受圧面積を大きくできる。複筒型の一般的な緩衝器では、収縮時にロッドがシリンダに侵入する体積分の作動油しか圧側減衰バルブへ送り込むことができず、ロッド径の制約もあるためにピストンの受圧面積も大きくしがたい。
【0009】
よって、従来の緩衝器は、一般的な複筒型の緩衝器と比較して、収縮作動時において圧側減衰バルブを通過する作動油量を多くできるとともに、ピストンの受圧面積も大きく確保でき、大きな減衰力を発揮するうえで有利な構造を備えている。
【0010】
ここで、ピストン速度に対して緩衝器が発生する減衰力特性は、伸側と圧側の減衰バルブによって設定したいが、油路径が小さくなると減衰力特性に油路による抵抗分による圧力損失がオーバーライドされてしまうので、設計しづらい。また、大きな減衰力を得たい場合、伸側と圧側の減衰バルブを大型化する必要がある。
【0011】
ところが、従来の緩衝器では、伸側減衰バルブと圧側減衰バルブとの間にリザーバを備えるレイアウトを採用するため、伸側室とリザーバとを連通する油路および圧側室とリザーバとを連通する油路と、これらの油路に設置される伸側と圧側の減衰バルブをシリンダとリザーバとの狭い間に設置する必要がある。そのため、従来の緩衝器では、油路径を大きくし、かつ、伸側と圧側の減衰バルブを大型化すると緩衝器全体が非常に大きくなってしまって車両への搭載性が損なわれてしまう。
【0012】
よって、従来の緩衝器では、減衰力特性の設計自由度を向上するとともに減衰力を大きくし、しかも、小型化を図ることが困難であった。
【0013】
そこで、本発明は、減衰力特性の設計自由度を向上でき、減衰力を大きくできるだけでなく小型化可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、ロッドに連結されてシリンダ内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ内を液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、液体を貯留するリザーバと、伸側室からリザーバへ向かう液体の流れを許容する伸側減衰通路と、圧側室からリザーバへ向かう液体の流れを許容する圧側減衰通路と、伸側減衰通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、圧側減衰通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、リザーバから伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側吸込通路と、リザーバから圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側吸込通路とを備え、リザーバは、ロッド内或いはロッドに設けられるハウジング内に形成されることを特徴とする。
【0015】
このように構成された緩衝器は、伸側減衰バルブと圧側減衰バルブとの間にリザーバを備えるレイアウトを採用しても、リザーバがシリンダ外に配置されていないのでその分外部形状をスリムにして小型化できる。また、このように構成された緩衝器は、伸側減衰バルブと圧側減衰バルブとの間にリザーバを備えるレイアウトを採用しても、伸側減衰通路、圧側減済通路、伸側減衰バルブおよび圧側減衰バルブをシリンダ内に配置でき、油路径を大きくし、かつ、伸側と圧側の減衰バルブを大型化しても緩衝器全体の大型化を招かない。
【0016】
また、緩衝器における伸側減衰通路、圧側減衰通路、伸側吸込通路および圧側吸込通路は、ピストンに設けられてもよい。このように、伸側減衰通路、圧側減衰通路、伸側吸込通路および圧側吸込通路がピストンに設けられる構造を採用した緩衝器によれば、ピストンに伸側減衰バルブおよび圧側減衰バルブを集約でき、より小型化できる。
【0017】
さらに、緩衝器におけるピストンは、ロッドに取付けられてシリンダの内周に摺接して伸側室を区画するとともに伸側減衰通路および伸側吸込通路を有する第一隔壁と、第一隔壁に対して間隔を開けてロッドに取付けられてシリンダの内周に摺接して圧側室を区画するとともに圧側減衰通路および圧側吸込通路を有する第二隔壁とを備え、リザーバは、第一隔壁および第二隔壁との間の空隙に連通されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、伸側減衰バルブおよび圧側減衰バルブを第一隔壁および第二隔壁を弁座部材として利用して容易に緩衝器に設置できる。
【0018】
また、緩衝器は、伸側室と圧側室とをリザーバを介さずに連通するとともに伸側室から圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側副減衰通路と、圧側室と伸側室とをリザーバを介さずに連通するとともに圧側室から伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側副減衰通路と、伸側副減衰通路に設けられて外部操作で通過する液体の流れに与える抵抗の調節が可能な伸側副減衰バルブと、圧側副減衰通路に設けられて外部操作で通過する液体の流れに与える抵抗の調節が可能な圧側副減衰バルブとを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、伸側副減衰バルブと圧側副減衰バルブとの液体の流れに与える抵抗を外部からの調節によって、適用される車両の車体の振動の抑制に適するよう伸側および圧側の減衰力をそれぞれ独立して簡単に調節できる。
【発明の効果】
【0019】
以上より、本発明の緩衝器によれば、減衰力特性の設計自由度を向上でき、減衰力を大きくできるだけでなく小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
【
図2】一実施の形態における緩衝器の減衰力特性を示した図である。一実施の形態における緩衝器のチェックバルブの一例を示した図である。
【
図3】一実施の形態の第一変形例における緩衝器の断面図である。
【
図4】一実施の形態の第二変形例における緩衝器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されてシリンダ1内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、液体を貯留するリザーバRと、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れを許容する伸側減衰通路4と、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れを許容する圧側減衰通路5と、伸側減衰通路4に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ6と、圧側減衰通路5に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ7と、リザーバRから伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する伸側吸込通路8と、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する圧側吸込通路9とを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0022】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1に示すように、シリンダ1は、筒状であって、
図1中上端が環状のロッドガイド19によって閉塞され、
図1中下端がキャップ20で閉塞されている。
【0023】
また、シリンダ1内は、シリンダ1内に移動自在に挿入されたピストン3によって、
図1中上方の伸側室R1と
図1中下方の圧側室R2とに区画されている。伸側室R1と圧側室R2内には、作動油等の液体が充填されている。なお、液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体の使用もできる。
【0024】
ロッド2は、ロッドガイド19の内周を通してシリンダ1内に
図1中軸方向となる上下方向に移動可能に挿入されており、先端にピストン3が連結されている。よって、シリンダ1に対してロッド2が軸方向に移動すると、ロッド2に連結されたピストン3もシリンダ1に対して軸方向に移動して伸側室R1と圧側室R2の一方を圧縮し、伸側室R1と圧側室R2の他方を拡大させる。ロッド2は、外周をロッドガイド19の内周に摺接させていて、ロッドガイド19およびピストン3によってシリンダ1に対して軸方向の移動が案内される。なお、本実施の形態の緩衝器Dは、ロッド2が伸側室R1内のみに挿通される所謂片ロッド型の緩衝器として構成されているが、ロッド2が伸側室R1内だけでなく圧側室R2内にも挿通される所謂両ロッド型の緩衝器として構成されてもよい。
【0025】
ピストン3は、環状であってロッド2の外周に取付けられるとともにシリンダ1の内周に摺接してシリンダ1の
図1中で上方に伸側室R1を区画する第一隔壁3aと、同じく環状であって第一隔壁3aに対して間隔を開けてロッド2の外周に取付けられるとともにシリンダ1の内周に摺接してシリンダ1の
図1中で下方に圧側室R2を区画する第二隔壁3bとを有して構成されている。
【0026】
ロッド2は、第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間にリザーバRを形成する中空のハウジング11を備えている。リザーバRは、ハウジング11
と、ハウジング11内に軸方向移動自在に挿入されるとともにハウジング11内を液体が充填される液室Lと気体が充填される気室Gと区画するフリーピストン12とを備えて構成されている。液室Lは、ハウジング11に設けた透孔11aによってシリンダ1内であって第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間に形成される空隙Aに連通されている。また、気室G内には、気体として不活性な高圧ガスが封入されており、気室G内の圧力がフリーピストン12を介して液室Lに作用して、液室Lは加圧されている。なお、リザーバRは、本実施の形態の緩衝器Dでは、フリーピストン12によって液室Lと気室Gとに区画されているが、フリーピストン12に代えてダイヤフラムやベローズによって液室Lと気室Gとに区画されてもよい。また、本実施の形態の緩衝器Dでは、気室G内に高圧ガスを封入しているが、高圧ガスの封入の代わりに、液室Lを圧縮する方向にフリーピストン12を付勢するばねなどの弾性体を設けるようにしてもよい。
【0027】
そして、シリンダ1の外周には、シリンダ1の外周を覆う外筒10が設けられている。また、外筒10の
図1中上端は、ロッドガイド19が嵌合されて閉塞され、外筒10の
図1中下端は、キャップ20によって閉塞されている。そして、シリンダ1と外筒10との間に形成される環状隙間Sは、シリンダ1の
図1中上端の近傍に設けられた透孔1aを介してシリンダ1内の伸側室R1に連通されている。
【0028】
伸側減衰通路4は、ピストン3における第一隔壁3aに設けられて伸側室R1と空隙Aとを連通するポート3a1を備えており、前記空隙Aおよび透孔11aを介して伸側室R1とリザーバRにおける液室Lとを連通している。第一隔壁3aの
図1中下端となる空隙側端には、ポート3a1の出口端を開閉する複数枚の環状板を積層して構成される積層リーフバルブでなる伸側減衰バルブ6が積層されている。
【0029】
伸側減衰バルブ6は、内周側がロッド2に第一隔壁3aとともに固定されており、外周側の撓みが許容されている。伸側減衰バルブ6は、第一隔壁3aを弁座部材として、第一隔壁3aに当接した状態ではポート3a1を閉塞し、正面側にポート3a1を介して作用する伸側室R1の圧力が背面側に空隙Aを介して作用するリザーバRの圧力よりも大きくなって両者の差圧が開弁圧に達すると外周を撓ませてポート3a1を開放する。そして、伸側減衰バルブ6は、ポート3a1を開放すると伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れを許容するとともに当該液体の流れに対して抵抗を与える。他方、伸側減衰バルブ6は、リザーバRの圧力が伸側室R1よりも高い場合には、第一隔壁3aに密着してポート3a1を遮断してリザーバRから伸側室R1へ向かう液体の流れを阻止する。このように、ポート3a1を開閉する伸側減衰バルブ6が減衰バルブとしてだけでなくチェックバルブとしても機能し、伸側減衰バルブ6によって、伸側減衰通路4は、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0030】
なお、伸側減衰バルブ6は、オリフィスやチョークといった双方向流れを許容するバルブで構成される場合、伸側減衰通路4に、別途、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れのみを強要するチェックバルブを設けてもよい。このように、伸側減衰通路4を一方通行の通路に設定するには、液体の一方向からの流れのみを許容する伸側減衰バルブ6によってもよいし、伸側減衰バルブ6が液体の双方向流れを許容するバルブである場合にはチェックバルブを別途設けてもよい。
【0031】
伸側吸込通路8は、ピストン3における第一隔壁3aに設けられて空隙Aと伸側室R1とを連通するポート3a2を備えており、前記空隙Aおよび透孔11aを介してリザーバRにおける液室Lと伸側室R1とを連通している。第一隔壁3aの
図1中上端となる伸側室側端には、第一隔壁3aを弁座部材として、ポート3a2の出口端を開閉する環状板でなる伸側チェックバルブ13が積層されている。伸側チェックバルブ13は、内周側がロッド2に第一隔壁3aとともに固定されており、外周側の撓みが許容されている。
【0032】
伸側チェックバルブ13は、第一隔壁3aに当接した状態ではポート3a2を閉塞し、正面側にポート3a2を介して作用するリザーバRの圧力が背面側に作用する伸側室R1の圧力よりも大きくなると外周を撓ませてポート3a2を開放する。そして、伸側チェックバルブ13は、ポート3a2を開放するとリザーバRから伸側室R1へ向かう液体の流れを許容する。なお、伸側チェックバルブ13がポート3a2を通過する液体の流れに対して与える抵抗は極小さい。他方、伸側チェックバルブ13は、伸側室R1の圧力がリザーバRの圧力よりも高い場合には、第一隔壁3aに密着してポート3a2を遮断して伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れを阻止する。このように、ポート3a2を開閉する伸側チェックバルブ13によって、伸側吸込通路8は、リザーバRから伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0033】
圧側減衰通路5は、ピストン3における第二隔壁3bに設けられて圧側室R2と空隙Aとを連通するポート3b1を備えており、前記空隙Aおよび透孔11aを介して圧側室R2とリザーバRにおける液室Lとを連通している。第二隔壁3bの
図1中上端となる空隙側端には、ポート3b1の出口端を開閉する複数枚の環状板を積層して構成される積層リーフバルブでなる圧側減衰バルブ7が積層されている。
【0034】
圧側減衰バルブ7は、内周側がロッド2に第二隔壁3bとともに固定されており、外周側の撓みが許容されている。圧側減衰バルブ7は、第二隔壁3bを弁座部材として、第二隔壁3bに当接した状態ではポート3b1を閉塞し、正面側にポート3b1を介して作用する圧側室R2の圧力が背面側に空隙Aを介して作用するリザーバRの圧力よりも大きくなって両者の差圧が開弁圧に達すると外周を撓ませてポート3b1を開放する。そして、圧側減衰バルブ7は、ポート3b1を開放すると圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れを許容するとともに当該液体の流れに対して抵抗を与える。他方、圧側減衰バルブ7は、リザーバRの圧力が圧側室R2よりも高い場合には、第二隔壁3bに密着してポート3b1を遮断してリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れを阻止する。このように、ポート3b1を開閉する圧側減衰バルブ7が減衰バルブとしてだけでなくチェックバルブとしても機能し、圧側減衰バルブ7によって、圧側減衰通路5は、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0035】
なお、圧側減衰バルブ7は、オリフィスやチョークといった双方向流れを許容するバルブで構成される場合、圧側減衰通路5に、別途、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを強要するチェックバルブを設けてもよい。このように、圧側減衰通路5を一方通行の通路に設定するには、液体の一方向からの流れのみを許容する圧側減衰バルブ7によってもよいし、圧側減衰バルブ7が液体の双方向流れを許容するバルブである場合にはチェックバルブを別途設けてもよい。
【0036】
圧側吸込通路9は、ピストン3における第二隔壁3bに設けられて空隙Aと圧側室R2とを連通するポート3b2を備えており、前記空隙Aおよび透孔11aを介してリザーバRにおける液室Lと圧側室R2とを連通している。第二隔壁3bの
図1中下端となる圧側室側端には、第二隔壁3bを弁座部材として、ポート3b2の出口端を開閉する環状板でなる圧側チェックバルブ14が積層されている。
【0037】
圧側チェックバルブ14は、内周側がロッド2に第二隔壁3bとともに固定されており、外周側の撓みが許容されている。圧側チェックバルブ14は、第二隔壁3bに当接した状態ではポート3b2を閉塞し、正面側にポート3b2を介して作用するリザーバRの圧力が背面側に作用する圧側室R2の圧力よりも大きくなると外周を撓ませてポート3b2を開放する。そして、圧側チェックバルブ14は、ポート3b2を開放するとリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れを許容する。なお、圧側チェックバルブ14がポート3b2を通過する液体の流れに対して与える抵抗は極小さい。他方、圧側チェックバルブ14は、圧側室R2の圧力がリザーバRの圧力よりも高い場合には、第二隔壁3bに密着してポート3b2を遮断して圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れを阻止する。このように、ポート3b2を開閉する圧側チェックバルブ14によって、圧側吸込通路9は、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0038】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、前述した構成の他に、伸側室R1と圧側室R2とをリザーバRを介さずに連通する伸側副減衰通路15と、圧側室R2と伸側室R1とをリザーバRを介さずに連通する圧側副減衰通路16と、伸側副減衰通路15に設けられる伸側副減衰バルブ17と、圧側副減衰通路16に設けられる圧側副減衰バルブ18とを備えている。
【0039】
伸側副減衰通路15は、伸側室R1に透孔1aを介して連通される環状隙間Sと、キャップ20に設けられて環状隙間Sと圧側室R2とを連通する管路20aとで構成されており、リザーバRを介さずに伸側室R1と圧側室R2とを連通している。また、管路20aには、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ20bが設けられている。よって、伸側副減衰通路15は、チェックバルブ20bによって伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0040】
また、管路20aには、チェックバルブ20bと直列に伸側副減衰バルブ17が設けられている。伸側副減衰バルブ17は、キャップ20に設置されており、緩衝器Dの外方からの操作によって開口面積の調整が可能な可変減衰バルブとされている。
【0041】
圧側副減衰通路16は、伸側室R1に透孔1aを介して連通される環状隙間Sと、キャップ20に設けられて環状隙間Sと圧側室R2とを連通する管路20cとで構成されており、リザーバRを介さずに伸側室R1と圧側室R2とを連通している。また、管路20cには、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ20dが設けられている。よって、圧側副減衰通路16は、チェックバルブ20dによって圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0042】
また、管路20cには、チェックバルブ20dと直列に圧側副減衰バルブ18が設けられている。圧側副減衰バルブ18は、キャップ20に設置されており、緩衝器Dの外方からの操作によって開口面積の調整が可能な可変減衰バルブとされている。
【0043】
本実施の形態の緩衝器Dは、以上のように構成され、以下に緩衝器Dの作動を説明する。まず、緩衝器Dの伸長時の作動を説明する。緩衝器Dが伸長する場合、シリンダ1に対してピストン3が
図1中上方へ移動して、ピストン3によって伸側室R1が圧縮され、圧側室R2が拡大される。圧縮される伸側室R1内の液体は、伸側吸込通路8が伸側チェックバルブ13により遮断されるため、伸側減衰通路4を通じてリザーバRの液室L側へ移動するとともに伸側副減衰通路15を通じて圧側室R2へ移動する。また、拡大される圧側室R2には、圧側吸込通路9を通じてリザーバRから液体が移動する。なお、緩衝器Dの伸長時には、シリンダ1内からロッド2が退出するため、伸側室R1からリザーバRへ移動する液体量よりもロッド2がシリンダ1内から退出する体積分の液体量だけ多くなる。よって、緩衝器Dの伸長時には、フリーピストン12が液室Lを縮小するように移動して、リザーバRの液室Lからロッド2がシリンダ1内から退出する体積分の液体が排出されて圧側室R2へ移動する。そして、伸側減衰通路4および伸側副減衰通路15を通過する液体の流れに対して伸側減衰バルブ6および伸側副減衰バルブ17が抵抗を与えるので、伸側室R1内の圧力が上昇する。また、ピストン3の移動によって拡大される圧側室R2には、圧側吸込通路9の圧側チェックバルブ14が開弁してリザーバRから液体が供給されるので、圧側室R2内の圧力はリザーバR内の圧力(リザーバ圧)とほぼ等しくなる。このように、伸側室R1と圧側室R2との圧力に差ができ、緩衝器Dは伸側減衰バルブ6および伸側副減衰バルブ17によって伸長を妨げる伸側減衰力を発生する。ここで、緩衝器Dのピストン速度が低く、伸側室R1とリザーバRとの差圧が伸側減衰バルブ6の開弁圧に達しない状態では、伸側減衰バルブ6が開弁せず、液体は伸側副減衰バルブ17のみを通過する。よって、緩衝器Dの伸長時のピストン速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、伸側副減衰バルブ17によって伸側減衰力を発生する。よって、緩衝器Dの伸長時の減衰力特性には、
図2に示したように、ピストン速度が低速域にある場合、伸側副減衰バルブ17の特性が現れる。緩衝器Dの伸長時のピストン速度が高速域に達して、伸側室R1とリザーバRとの差圧が伸側減衰バルブ6の開弁圧に達して伸側減衰バルブ6が開弁する。ピストン速度が高速域に達すると絞り弁である伸側副減衰バルブ17が液体の流れに与える抵抗が急激に大きくなって液体が伸側副減衰バルブ17を通過しにくくなる。よって、緩衝器Dの伸長時のピストン速度が高速域にある場合、液体は、主として伸側減衰バルブ6を通過するようになる。よって、緩衝器Dの伸長時の減衰力特性には、
図2に示したように、ピストン速度が高速域にある場合、伸側減衰バルブ6の特性が現れる。また、本実施の形態では、可変絞り弁である伸側副減衰バルブ17の開口面積を調整することで、ピストン速度が低速域にある場合における緩衝器Dの伸側減衰力を大小調整できる。
【0044】
つづいて、緩衝器Dの収縮時の作動を説明する。緩衝器Dが収縮する場合、シリンダ1に対してピストン3が
図1中下方へ移動して、ピストン3によって圧側室R2が圧縮され、伸側室R1が拡大される。圧縮される圧側室R2内の液体は、圧側吸込通路9が圧側チェックバルブ14により遮断されるため、圧側減衰通路5を通じてリザーバRの液室Lへ移動するとともに圧側副減衰通路16を通じて伸側室R1へ移動する。また、拡大される伸側室R1には、伸側吸込通路8を通じてリザーバRから液体が移動する。なお、緩衝器Dの収縮時には、シリンダ1内にロッド2が侵入するため、圧側室R2からリザーバRへ移動する液体量よりもロッド2がシリンダ1内に侵入する退出する体積分の液体量だけリザーバRから伸側室R1へ移動する液体量の方が少なくなる。よって、緩衝器Dの収縮時には、フリーピストン12が気室Gを圧縮して液室Lを拡大してロッド2がシリンダ1内へ侵入する体積分の液体をリザーバRで吸収する。そして、圧側減衰通路5および圧側副減衰通路16を通過する液体の流れに対して圧側減衰バルブ7および圧側副減衰バルブ18が抵抗を与えるので、圧側室R2内の圧力が上昇する。また、ピストン3の移動によって拡大される伸側室R1には、伸側吸込通路8の伸側チェックバルブ13が開弁してリザーバRから液体が供給されるので、伸側室R1内の圧力はリザーバR内の圧力(リザーバ圧)とほぼ等しくなる。このように、圧側室R2と伸側室R1との圧力に差ができ、緩衝器Dは圧側減衰バルブ7および圧側副減衰バルブ18によって収縮を妨げる圧側減衰力を発生する。ここで、緩衝器Dのピストン速度が低く、圧側室R2とリザーバRとの差圧が圧側減衰バルブ7の開弁圧に達しない状態では、圧側減衰バルブ7が開弁せず、液体は圧側副減衰バルブ18のみを通過する。よって、緩衝器Dの収縮時のピストン速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、圧側副減衰バルブ18によって圧側減衰力を発生する。よって、緩衝器Dの収縮時の減衰力特性には、
図2に示したように、ピストン速度が低速域にある場合、圧側副減衰バルブ18の特性が現れる。緩衝器Dの収縮時のピストン速度が高速域に達して、圧側室R2とリザーバRとの差圧が圧側減衰バルブ7の開弁圧に達して圧側減衰バルブ7が開弁する。ピストン速度が高速域に達すると圧側副減衰バルブ18が絞り弁であるため液体の流れに与える抵抗が急激に大きくなって液体が圧側副減衰バルブ18を通過しにくくなる。よって、緩衝器Dの収縮時のピストン速度が高速域にある場合、液体は、主として圧側減衰バルブ7を通過するようになる。よって、緩衝器Dの収縮時の減衰力特性には、
図2に示したように、ピストン速度が高速域にある場合、圧側減衰バルブ7の特性が現れる。また、本実施の形態では、可変絞り弁である圧側副減衰バルブ18の開口面積を調整することで、ピストン速度が低速域にある場合における緩衝器Dの圧側減衰力を大小調整できる。
【0045】
このように緩衝器Dは伸縮に伴って減衰力を発生する。そして、緩衝器Dの伸長時には、液体は、伸側減衰バルブ6を伸側室R1から液室Lへ向けて、伸側副減衰バルブ17を伸側室R1から圧側室R2へ向けて、それぞれ一方通行に流れるとともに、圧側吸込通路9を液室Lから圧側室R2へ向けて一方通行に流れる。また、緩衝器Dの収縮時には、液体は、圧側減衰バルブ7を圧側室R2から液室Lへ向けて、圧側副減衰バルブ18を圧側室R2から伸側室R1へ向けて、それぞれ一方通行に流れるとともに、伸側吸込通路8を液室Lから伸側室R1へ向けて一方通行に流れる。このように、本実施の形態の緩衝器Dでは、液体は、緩衝器Dの伸長時には伸側減衰通路4、伸側副減衰通路15および圧側吸込通路9を一方通行に流れ、緩衝器Dの収縮時には圧側減衰通路5、圧側副減衰通路16および伸側吸込通路8を一方通行に流れる。よって、緩衝器Dの伸長時と収縮時とで、液体は、同じ通路を逆転して流れることはない。したがって、本実施の形態の緩衝器Dでは、従来の緩衝器のように同じ通路を逆転して流れることがなく、各通路4,5,8,9,15,16に設けられた種々のバルブの閉じ遅れの問題が生じず、緩衝器Dは伸縮作動の切り換わり時に応答性よく減衰力を発生できる。
【0046】
以上に説明したように、本実施の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されてシリンダ1内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、液体を貯留するリザーバRと、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れを許容する伸側減衰通路4と、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れを許容する圧側減衰通路5と、伸側減衰通路4に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ6と、圧側減衰通路5に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ7と、リザーバRから伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する伸側吸込通路8と、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する圧側吸込通路9とを備え、リザーバRがロッド2に設けられるハウジング11内に形成されている。
【0047】
このように構成された緩衝器Dでは、リザーバRがロッド2に設けられたハウジング11内に形成されている。そのため、本実施の形態の緩衝器Dは、伸側減衰バルブ6と圧側減衰バルブ7との間にリザーバRを備えるレイアウトを採用しても、リザーバRがシリンダ1外に配置されていないのでその分外部形状をスリムにして小型化できる。また、本実施の形態の緩衝器Dは、伸側減衰バルブ6と圧側減衰バルブ7との間にリザーバRを備えるレイアウトを採用しても、伸側減衰通路4、圧側減衰通路5、伸側減衰バルブ6および圧側減衰バルブ7をシリンダ内に配置でき、油路径を大きくし、かつ、伸側と圧側の減衰バルブ6,7を大型化しても緩衝器全体の大型化を招かない。
【0048】
このように本実施の形態の緩衝器Dでは、緩衝器Dの大型化を招かずに伸側減衰バルブ6と圧側減衰バルブ7を大型化可能であるので、緩衝器Dの減衰力特性の設計自由度が向上し、減衰力も大きくすることが可能となる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、減衰力特性の設計自由度を向上でき、減衰力を大きくできるだけでなく、小型化も可能となるのである。
【0049】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおける伸側減衰通路4、圧側減衰通路5、伸側吸込通路8および圧側吸込通路9は、ピストン3に設けられている。このように、伸側減衰通路4、圧側減衰通路5、伸側吸込通路8および圧側吸込通路9がピストン3に設けられる構造を採用した緩衝器Dによれば、ピストン3に伸側減衰バルブ6および圧側減衰バルブ7を集約でき、より小型化できる。
【0050】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dにおけるピストン3は、ロッド2に取付けられてシリンダ1の内周に摺接して伸側室R1を区画するとともに伸側減衰通路4および伸側吸込通路8を有する第一隔壁3aと、第一隔壁3aに対して間隔を開けてロッド2に取付けられてシリンダ1の内周に摺接して圧側室R2を区画するとともに圧側減衰通路5および圧側吸込通路9を有する第二隔壁3bとを備え、リザーバRは、第一隔壁3aおよび第二隔壁3bとの間の空隙Aに連通されている。このように構成された緩衝器Dによれば、ピストン3を伸側減衰通路4および伸側吸込通路8を有する第一隔壁3aと、圧側減衰通路5および圧側吸込通路9を有する第二隔壁3bとで構成し、第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間の空隙AがリザーバRに連通される構造を採用したので、伸側減衰バルブ6および圧側減衰バルブ7を第一隔壁3aおよび第二隔壁3bを弁座部材として利用して容易に緩衝器Dに設置できる。
【0051】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側減衰バルブ6および圧側減衰バルブ7は、内周がロッド2に固定されてそれぞれ第一隔壁3a或いは第二隔壁3bに積層されるリーフバルブとされており、伸側吸込通路8を一方通行の通路に設定する環状板でなる伸側チェックバルブ13が第一隔壁3aを弁座部材として積層されており、圧側吸込通路9を一方通行の通路に設定する環状板でなる圧側チェックバルブ14が第二隔壁3bを弁座部材として積層されている。このように構成された緩衝器Dによれば、ピストン3に伸側減衰バルブ6、圧側減衰バルブ7、伸側チェックバルブ13および圧側チェックバルブ14を集約しても、ピストン部における全長を短くすることができる。
【0052】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、リザーバRがロッド2の第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間に設けられたハウジング11内に形成されているため、緩衝器Dをコンパクトに形成することができるが、
図3に示した第一変形例の緩衝器D1のように、ロッド2を中空にして、ロッド2内である中空部2aにリザーバRを形成するようにしてもよい。この場合、ロッド2の中空部2a内にフリーピストン21を摺動自在に挿入して、中空部2a内をフリーピストン21によって第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間の空隙Aに連通される液室Lと、気室Gとに区画すればよい。このように、ロッド2内にリザーバRを形成すると、第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間にハウジング11を設けずに済むので、第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間の軸方向距離を短くでき、緩衝器D1のストローク長を長くとれる。さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、リザーバRがロッド2の第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間に設けられたハウジング11内に形成されているが、
図4に示した第二変形例の緩衝器D2のように、ロッド2の上端に内部が中空な第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間の空隙Aに連通されるハウジング22を設け、ロッド2の中空部2a内にフリーピストン21を摺動自在に挿入して、ハウジング22内をフリーピストン23によってロッド2内に設けた通路2bを介して空隙Aに連通される液室Lと、気室Gとに区画してもよい。このように、ロッド2の上端にリザーバRを形成するハウジング22を設けると、第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間にハウジング11を設けずに済むので、第一隔壁3aと第二隔壁3bとの間の軸方向距離を短くでき、緩衝器D1のストローク長を長くとれるとともに、リザーバRの容積を十分に確保できる。なお、リザーバRは、前述の緩衝器D1,D2では、フリーピストン21,23によって液室Lと気室Gとに区画されているが、フリーピストン21,23に代えてダイヤフラムやベローズによって液室Lと気室Gとに区画されてもよい。また、緩衝器D1,D2では、気室G内に高圧ガスを封入しているが、高圧ガスの封入の代わりに、液室Lを圧縮する方向にフリーピストン21,23を付勢するばねなどの弾性体を設けるようにしてもよい。
【0053】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dは、伸側室R1と圧側室R2とをリザーバRを介さずに連通するとともに伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側副減衰通路15と、圧側室R2と伸側室R1とをリザーバRを介さずに連通するとともに圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側副減衰通路16と、伸側副減衰通路15に設けられて外部操作で通過する液体の流れに与える抵抗の調節が可能な伸側副減衰バルブ17と、圧側副減衰通路16に設けられて外部操作で通過する液体の流れに与える抵抗の調節が可能な圧側副減衰バルブ18とを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、伸側副減衰バルブ17と圧側副減衰バルブ18との液体の流れに与える抵抗を外部からの調節によって、適用される車両の車体の振動の抑制に適するよう伸側および圧側の減衰力をそれぞれ独立して簡単に調節できる。なお、前述したところでは、伸側副減衰バルブ17と圧側副減衰バルブ18とは、可変絞り弁とされているが、液体の流れに与える抵抗の調節が可能な可変減衰バルブであればよいので、流路面積の調整が可能な可変絞り弁の他にも開弁圧の調整が可能な可変リリーフバルブとされてもよい。また、緩衝器Dは、伸側減衰通路4に設けた伸側減衰バルブ6および圧側減衰通路5に設けた圧側減衰バルブ7によって減衰力を発生できるので、外部操作による減衰力調整の必要が無ければ、伸側副減衰通路15と圧側副減衰通路16の一方または両方を廃止できる。
【0054】
さらに、伸側副減衰バルブ17と圧側副減衰バルブ18とを可変絞り弁として、伸側減衰バルブ6および圧側減衰バルブ7を開弁圧が設定されるリリーフバルブとする場合には、伸側副減衰バルブ17と圧側副減衰バルブ18とでシリンダ1に対してピストン3が移動する際のピストン速度が低速域にある場合の減衰力特性を調節でき、伸側減衰バルブ6および圧側減衰バルブ7でピストン速度が低速域を超える高速域にある場合の減衰力特性を設定できる。
【0055】
なお、前述したところでは、ピストン3が第一隔壁3aと第二隔壁3bとで構成されているが、ロッド2に連結されてシリンダ1の内周に摺接する単一の隔壁体で構成されてもよい。ピストン3が単一の隔壁体で構成されても、伸側減衰通路4、圧側減衰通路5、伸側吸込通路8、圧側吸込通路9、伸側減衰バルブ6、圧側減衰バルブ7、伸側チェックバルブ13および圧側チェックバルブ14をピストン3に設けてよく、リザーバRを形成するハウジングとしてピストン3を利用してもよい。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・シリンダ、2・・・ロッド、3・・・ピストン、3a・・・第一隔壁、3b・・・第二隔壁、4・・・伸側減衰通路、5・・・圧側減衰通路、6・・・伸側減衰バルブ、7・・・圧側減衰バルブ、8・・・伸側吸込通路、9・・・圧側吸込通路、11,22・・・ハウジング、15・・・伸側副減衰通路、16・・・圧側副減衰通路、16・・・伸側副減衰バルブ、17・・・圧側副減衰バルブ、A・・・空隙、D,D1,D2・・・緩衝器、R・・・リザーバ、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室