(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087552
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】コーヒー製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 5/10 20060101AFI20220606BHJP
A23F 5/46 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
A23F5/10
A23F5/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199540
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】718000495
【氏名又は名称】東洋ビジュアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】松山 清
(72)【発明者】
【氏名】日水 秋生
(72)【発明者】
【氏名】石毛 健二
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB28
4B027FC01
4B027FE02
4B027FK08
4B027FK10
4B027FQ04
4B027FQ09
4B027FQ20
(57)【要約】
【課題】溶解性・分散性に優れ、舌触りが良好なコーヒー製品及びコーヒー製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るコーヒー製品は、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含む。また、本発明の一態様に係るコーヒー製品の製造方法は、前記コーヒー製品の製造方法であって、コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を、エタノールを含む溶媒中で粉砕する工程(P1)と、粉砕後の溶媒から、超臨界流体抽出法により、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1c)とを分離する工程(P2)と、を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含む、コーヒー製品。
【請求項2】
前記コーヒー豆の粉砕物(A)が、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1)を含む、請求項1に記載のコーヒー製品。
【請求項3】
メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含むコーヒー製品の製造方法であって、
超臨界流体抽出法により、コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を含む溶媒から、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a)とを分離する工程(P2)を有する、
コーヒー製品の製造方法。
【請求項4】
メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含むコーヒー製品の製造方法であって、
コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を溶媒中で粉砕し、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1b)とを分離する工程(P1)を有する、
コーヒー製品の製造方法。
【請求項5】
メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含むコーヒー製品の製造方法であって、
コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を溶媒中で粉砕する工程(P1)と、
超臨界流体抽出法により、粉砕物を含む溶媒から、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1c)とを分離する工程(P2)と、を有する、
コーヒー製品の製造方法。
【請求項6】
前記コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)を乾式粉砕する工程(P3)を更に有する、
請求項3~5のいずれか1項に記載のコーヒー製品の製造方法。
【請求項7】
前記コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)に前記コーヒーオイル(B)を加圧状態で含浸させる工程(P4)を更に有する、
請求項3~6のいずれか1項に記載のコーヒー製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料としてのコーヒーは、飲用の直前に、焙煎されたコーヒー豆の粉末に湯を接触させて当該コーヒー豆中の成分の抽出液として製造されるのが一般的である。また、インスタントコーヒーは、当該抽出液を乾燥させて粉末状に加工したものである。当該インスタントコーヒーは湯を注ぐことでコーヒー飲料が得られる。
一方、コーヒー飲料のボディ感(呈味)などを向上させるために、コーヒー豆の粉砕物を分散させたコーヒー飲料が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、メジアン径10±5~30±5μmの水不溶性微粉砕焙煎コーヒー豆粉末と、コーヒーオイルとを、質量比で99:1~90:10の範囲内で含有するコーヒー風味付与剤が開示されている。
また、特許文献2には、ドライコーヒー抽出成分と、微粉砕コーヒー成分とを有し、微粉砕コーヒー成分は抽出されたものではなく、コーヒーエキスを乾燥してなるドライコーヒー抽出成分に、微粉砕コーヒー成分が添加されている可溶性コーヒー製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/016977号
【特許文献2】特表2011-527574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、水不溶性微粉砕焙煎コーヒー豆粉末と、コーヒーオイルは個別に準備されており、水不溶性微細粉焙煎コーヒー豆粉末の調整は凍結粉砕法を用いることが好ましいとされている。しかしながら、凍結粉砕法では、コーヒー豆の香りが損なわれるという問題や凍結処理による工数が増加するという問題があった。
一方、コーヒーミルなど乾式粉砕で得られるコーヒー豆粉砕物は、粒子径が大きく、コーヒー飲料中での分散性が低く凝集することや、舌触りが悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、舌触りが良好なコーヒー製品及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るコーヒー製品は、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含む。
【0008】
本発明の一態様に係るコーヒー製品の製造方法は、
メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含むコーヒー製品の製造方法であって、
超臨界流体抽出法により、コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を含む溶媒から、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a)とを分離する工程(P2)を有する。
【0009】
本発明の一態様に係るコーヒー製品の製造方法は、
メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含むコーヒー製品の製造方法であって、
コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を溶媒中で粉砕し、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1b)とを分離する工程(P1)を有する。
【0010】
本発明の一態様に係るコーヒー製品の製造方法は、
メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含むコーヒー製品の製造方法であって、
コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を溶媒中で粉砕する工程(P1)と、
超臨界流体抽出法により、粉砕物を含む溶媒から、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1c)とを分離する工程(P2)と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により舌触りが良好なコーヒー製品及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、数値範囲を示す「~」は特に断りがない限り、その下限値及び上限値を含むものとする。
【0013】
[コーヒー製品]
本発明に係るコーヒー製品(以下、本コーヒー製品とも記す)は、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含む。
本コーヒー製品は、上記特定のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを組み合わせて用いることで、舌触りが良好で、風味が豊かなコーヒー製品となる。
本コーヒー製品は、少なくともコーヒー豆粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含むものであり、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含んでいてもよいものである。以下、各成分について順に詳細に説明する。
【0014】
<コーヒー豆の粉砕物(A)>
本コーヒー製品は、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)を含む。当該コーヒー豆の粉砕物(A)は、メジアン径が10μm未満であるため、水への分散性に優れて凝集が抑制され、舌触りが良好なコーヒー製品となる。また当該コーヒー豆粉砕物(A)のメジアン径が0.5μm以上であるため、耐酸化性に優れ、保存安定性に優れている。
なお、コーヒー豆粉砕物(A)のメジアン径(D50)は、当該コーヒー豆粉砕物(A)の累積粒子径分布曲線において頻度の累積が50%となるときの粒子径を示す。また、当該粒子径は乾式粒径であり、レーザ回折式粒度分布測定装置で測定された値を用いるものとする。レーザ回折式粒度分布測定装置としては、例えば、株式会社島津製作所製のSALD-2300が挙げられる。
【0015】
コーヒー豆粉砕物(A)は、生豆を用いてもよく、焙煎された豆を用いてもよい。コーヒー製品の香ばしさ、コク、酸味などの点から焙煎されたコーヒー豆を用いることが好ましい。
コーヒー豆の焙煎度は、コーヒー製品の用途や、コーヒー豆の品種等に応じて調整すればよく、浅煎り、中煎り、深煎りのいずれであってもよい。コーヒー豆の焙煎方法は、コーヒー豆の品種や目的とする焙煎度等に応じて適宜選択することができ、例えば、直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などが挙げられる。
また、コーヒー豆の品種及び産地は特に限定されず、1品種を単独で又は2品種以上を組み合わせたブレンド品であってもよい。
【0016】
本コーヒー製品において、コーヒー豆の粉砕物(A)は、コーヒーオイルを抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1)を含むことが好ましい。コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1)を用いることで、原料の廃棄量を抑制することができる。
コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1)は、後述するコーヒーオイル(B)を抽出した後のコーヒー豆の粉砕物であってもよく、コーヒーオイル(B)とは別の用途に用いられるコーヒーオイルを抽出した後のコーヒー豆の粉砕物であってもよい。
本コーヒー製品においては、中でも、コーヒーオイル(B)を抽出した後のコーヒー豆の粉砕物を用いることが好ましい。コーヒーオイル(B)を抽出した後のコーヒー豆の粉砕物と、コーヒーオイル(B)とを組み合わせることで、原料の廃棄量をより抑制することができ、また原料のコーヒー豆本来の風味等が得られるためである。
【0017】
<コーヒーオイル(B)>
本コーヒー製品において、コーヒーオイル(B)とは、原料のコーヒー豆から抽出され精油又は当該精油から更に一部成分が抽出されたものをいう。後述する製造方法から得られるコーヒーオイルは、溶媒又は超臨界二酸化炭素により抽出され得る成分である。
コーヒーオイル(B)に含まれ得る成分としては、例えば、リノール酸、パルミチン酸などの脂質;カフェオイルキナ酸、フェルロイルキナ酸、ジカフェオイルキナ酸等のクロロゲン酸(コーヒーポリフェノール);2-メチルフラン、グアイアコール、プロパナール、β-ダマセノン、バニリンなどの香気成分;カフェインなどが挙げられる。
【0018】
コーヒーオイル(B)は、得られるコーヒー製品の用途等に応じて、適宜調整してもよい。例えば、コーヒー豆から抽出した精油をそのまま用いることで、原料のコーヒー本来の風味を活かすコーヒー製品を製造してもよく、前記精油に上記香気成分を添加して、コーヒー風味が強化されたコーヒー製品としてもよい。
【0019】
本コーヒー製品において、コーヒー豆の粉砕物(A)とコーヒーオイル(B)との比率は、コーヒー製品の用途等に応じて適宜調整すればよい。例えば、香りや風味、味などのバランスから、(A):(B)は質量比で90:10~99:1の範囲内で使用することが好ましく、95:5~99:1の範囲内で使用することがより好ましい。
【0020】
<任意成分>
本コーヒー製品は、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、着色料、保存料、酸化防止剤、酸味料など食品添加物として公知の成分や、各種食品成分などが挙げられる。
本コーヒー製品をコーヒー飲料として用いる場合には、通常、水(湯)を含み、コーヒー豆の粉砕物(A)とコーヒーオイル(B)とが水中に分散乃至溶解している。
また、本コーヒー製品を、アイスクリームやクッキーなどに用いる場合には、ベースとなる食品中に分散させて用いてもよく、当該食品の表面に付着させて用いてもよい。本コーヒー製品を粉末状とする場合、コーヒー豆の粉砕物(A)中にコーヒーオイル(B)を含浸させたものとしてもよい。コーヒー豆の粉砕物(A)中にコーヒーオイル(B)を含浸させた本コーヒー製品は、原料のコーヒー豆と同様の風味等を有する。
また、本コーヒー製品は、インスタントコーヒーと同様にコーヒー飲料の予備調整物として粉末状に加工してもよい。この場合、本コーヒー製品を単独で用いてもよく、インスタントコーヒーと組み合わせて用いてもよい。
【0021】
[コーヒー製品の製造方法]
本発明者らは、コーヒーオイルを含むコーヒー豆を粉砕する場合、メジアン径を20μm以下に微細化することが困難であるとの知見を得た。本発明者らは鋭意検討の結果、コーヒー豆からコーヒーオイルを抽出した後又は抽出しながら、コーヒー豆を粉砕することで、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)を容易に製造することが可能となることを見出し下記3つの製造方法を完成させた。以下、前記本コーヒーの好適な製造方法として、下記の3つの製造方法を説明する。
【0022】
<第1の製造方法>
本コーヒー製品の第1の製造方法は、超臨界流体抽出法により、コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を含む溶媒から、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a)とを分離する工程(P2)を有する。
【0023】
コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)におけるコーヒー豆は、生豆を用いてもよく、焙煎された豆を用いてもよい。コーヒー製品の香ばしさ、コク、酸味などの点や、コーヒーオイルの抽出しやすさなどの点から焙煎されたコーヒー豆を用いることが好ましい。コーヒー豆の焙煎度、焙煎方法、品種、産地などは、前記コーヒー豆粉砕物(A)と同様である。
コーヒー豆の粗粉砕物は、上記のコーヒー豆を予備的に粗粉砕ものである。コーヒーオイルの抽出、及びコーヒー豆の粉砕時間が短縮できる点から、コーヒー豆粗粉砕物を用いることが好ましい。コーヒー豆の粗粉砕物のメジアン径は少なくとも0.5μm以上であり、通常は10μm以上である。なお、コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)として、コーヒー豆と、コーヒー豆の粗粉砕物とを組み合わせて用いてもよい。
コーヒー豆の粗粉砕物は、コーヒー豆を粗粉砕して準備してもよく、市販のコーヒー豆の粗粉砕物を用いてもよい。
コーヒー豆を粗粉砕する場合は乾式粉砕法が好ましい。乾式粉砕法としては、ロールミル、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハンマーミル、ジョークラッシャーなどが挙げられ、また、コーヒーミルなどを用いてもよい。
【0024】
準備したコーヒー豆又はその粗粉砕物(C)は、溶媒と接触させた状態で、超臨界流体抽出法により抽出を行う。超臨界流体抽出法に用いる超臨界流体としては、超臨界二酸化炭素、超臨界窒素などが挙げられ、作業の容易性などの点から、超臨界二酸化炭素が好ましい。超臨界流体抽出により、溶媒側にコーヒーオイル(B)が抽出される。また、超臨界流体抽出時にコーヒー豆の粉砕が進行し、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a)が得られる。コーヒー豆の粉砕物(A1a)のメジアン径が0.5μm以上10μm未満であれば、上記本コーヒー製品のコーヒー豆の粉砕物(A)として用いることができる。また、コーヒー豆の粉砕物(A1a)のメジアン径が10μm以上の場合には、後述する工程(P3)を経て、本コーヒー製品のコーヒー豆の粉砕物(A)として用いることができる。
溶媒は、コーヒーオイル(B)の成分が抽出され得るものの中から適宜選択することができる。コーヒーオイル(B)の抽出能や、取り扱いの容易性から、エタノール又はヘキサンが好ましく、エタノールがより好ましい。また、エタノールは、単体であってもよく、水を含む混合溶媒であってもよい。エタノールと水の混合溶媒の場合、水の割合が溶媒全体に対して50wt%以下であることが好ましい。
【0025】
<第2の製造方法>
本コーヒー製品の第2の製造方法は、コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を溶媒中で粉砕し、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1b)とを分離する工程(P1)を有する。
【0026】
コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)は、第1の製造方法と同様である。準備したコーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を、溶媒に添加し、湿式粉砕機により粉砕しながら溶媒抽出を行うことで、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1b)とを分離する。溶媒は、前記第1の製造方法で述べたものと同様のものが挙げられ、好ましい溶媒も同様である。湿式粉砕機としては、コーヒー豆を微粉砕する点から、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、アトライタなどが好ましい。また、後述する工程(P3)を行う場合には、コーヒー豆は粗粉砕でもよい。この場合は上記の湿式粉砕機のほか、超音波ホモジナイザー、シャフト型ホモジナイザーなどを用いてもよい。コーヒー豆の粉砕物(A1b)のメジアン径が0.5μm以上10μm未満であれば、上記本コーヒー製品のコーヒー豆の粉砕物(A)として用いることができる。また、コーヒー豆の粉砕物(A1b)のメジアン径が10μm以上の場合には、後述する工程(P3)を経て、本コーヒー製品のコーヒー豆の粉砕物(A)として用いることができる。
【0027】
<第3の製造方法>
本コーヒー製品の第3の製造方法は、コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を溶媒中で粉砕する工程(P1)と、
超臨界流体抽出法により、粉砕物を含む溶媒から、コーヒーオイル(B)と、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1c)とを分離する工程(P2)と、を有する。
【0028】
第3の製造方法における工程(P1)は、前記第2の製造方法における工程(P1)と同様である。粉砕後の溶媒には、コーヒー豆の粗粉砕物が分散している。当該溶媒を超臨界流体抽出法により抽出を行うことで、溶媒側にコーヒーオイル(B)が十分に抽出され、また、コーヒー豆の粉砕が進行しコーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1c)が得られる。コーヒー豆の粉砕物(A1c)のメジアン径が0.5μm以上10μm未満であれば、上記本コーヒー製品のコーヒー豆の粉砕物(A)として用いることができる。また、コーヒー豆の粉砕物(A1c)のメジアン径が10μm以上の場合には、後述する工程(P3)を経て、本コーヒー製品のコーヒー豆の粉砕物(A)として用いることができる。
【0029】
<任意工程>
第1~第3の製造方法は、本発明の効果を奏する範囲で、必要に応じて他の工程を有していてもよい。任意工程として実施し得る主な工程について説明する。
【0030】
(コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)を乾式粉砕する工程(P3))
コーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)のメジアン径が10μm以上であって、前記本コーヒー製品におけるコーヒー豆の粉砕物(A)として用いる場合には、上記工程(P1)又は工程(P2)の後に、上記工程(P3)を行う。コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆は、乾式粉砕により微粉砕が可能であり、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)を容易に得ることができる。
乾式粉砕する場合、事前にコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)を乾燥させる。コーヒーオイルを含む溶媒とを分離する方法としては、フィルターろ過や遠心分離などの方法が挙げられる。分離したコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)は、必要に応じて加熱又は風乾してもよい。
コーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)の乾式粉砕に用いる粉砕機としては、メジアン径が0.5μm以上10μm未満に調整する点から、ボールミル、ビーズミル、遊星ミルなどが好ましい。
【0031】
(コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)にコーヒーオイル(B)を加圧状態で含浸させる工程(P4))
前述したコーヒー豆の粉砕物(A)中にコーヒーオイル(B)を含浸させたものを製造する場合には、上記工程(P4)を行う。
コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)のメジアン径が10μm以上の場合には、事前に上記工程(P3)を行って、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)を製造することが好ましい。
含浸方法としては、例えば、超臨界流体を用いた含浸法や真空加圧含浸法などが挙げられる。
超臨界流体を用いた含浸法としては、高圧容器内にコーヒー豆の粉砕物(A)を充填した開口部を有する小型容器と、コーヒーオイル(B)とを隔離した状態で配置し、当該容器に二酸化炭素を添加し、二酸化炭素の臨界点以上の温度及び圧力条件下で、コーヒー豆の粉砕物(A)にコーヒーオイル(B)を含浸する方法(I);コーヒー豆又はその粗粉砕物(C)を配置した高圧容器(a)と、コーヒー豆の粉砕物(A)を配置した高圧容器(b)を連結し、ポンプを用いて超臨界二酸化炭素を高圧容器(a)から高圧容器(b)側に流すことにより、高圧容器(a)内のコーヒー豆又はその粗粉砕物(C)から、コーヒーオイル(B)を抽出し、当該コーヒーオイル(B)を含む超臨界二酸化炭素が高圧容器(b)に移動して当該高圧容器(b)内のコーヒー豆の粉砕物(A)にコーヒーオイル(B)を含浸する方法(II)などが挙げられる。
真空加圧含浸法は、例えば、含浸処理用の容器内にコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイルのエタノール溶液を入れ、真空加圧により含浸させる。真空加圧含浸の場合、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)のメジアン径が0.5μm以上10μm未満の場合には、濾別などを行わずに、工程(P1)又は工程(P2)で得られたコーヒー豆粉砕物(A1a~A1c)が分散した分散液をそのまま用いることができる。
【0032】
抽出したコーヒーオイル(B)は更なる工程により特定成分を分離してもよい。例えば香気成分を分離して用いることでコーヒー風味が強化されたコーヒー製品を製造することができる。また、例えば、カフェインのみを除去することで、カフェインレスのコーヒー製品を製造することができる。特定成分の分離方法は、分離したい成分に応じて適宜選択すればよく、例えば、溶媒抽出や、カラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0033】
本コーヒー製品は、コーヒーオイル抽出した後のコーヒー豆の粉砕物(A1a~A1c)のメジアン径が0.5μm以上10μm未満の場合には、工程(P1)又は工程(P2)で得られたコーヒー豆粉砕物(A1a~A1c)が分散したエタノール溶液から、エタノールを除去することで製造できる。得られたコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)との混合物を、水(湯)に添加して分散することでコーヒー飲料が得られる。また、当該混合物を各種食品と組み合わせてコーヒー風味が付与された各種食品を製造することができる。また、工程(P3)を経た乾燥した状態のコーヒー豆粉砕物(A)は、一旦分離したコーヒーオイル(B)と組み合わせて、コーヒー製品とすることができる。
【実施例0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。また、実施例中の%は、特に記載のない限り、質量%を示し、組成物の配合に関する表中の数値は質量部を示す。
【0035】
(製造例1)
遠沈管内にコーヒー粉2部とエタノール15.8部を投入し、超音波ホモジナイザーを用いて湿式粉砕した(P1)。得られた粉砕物を含むエタノール溶液と液化CO2を高圧容器に投入し、超臨界状態とした。その後、高圧容器内のCO2を除去して乾燥させ、コーヒー豆の粉砕物(A-1)と、コーヒーオイル(B-1)抽出液と、を得た(P2)。
【0036】
(製造例2)
製造例1で得られたコーヒー豆の粉砕物(A-1)の一部を乾式粉砕機で2時間乾式粉砕し(P3)、コーヒー豆の粉砕物(A-2)を得た。
【0037】
(製造例3)
遠沈管内にコーヒー粉2部とエタノール15.8部を投入し、シャフト型ホモジナイザーを用いて湿式粉砕した(P1)。得られた粉砕物を含むエタノール溶液と液化CO2を高圧容器に投入し、超臨界状態とした。その後、高圧容器内のCO2を除去して乾燥させ、コーヒー豆の粉砕物(A-3)と、コーヒーオイル(B-2)抽出液と、を得た(P2)。
【0038】
(製造例4)
製造例3で得られたコーヒー豆の粉砕物(A-3)の一部を乾式粉砕機で2時間乾式粉砕し(P3)、コーヒー豆の粉砕物(A-4)を得た。
【0039】
(製造例5)
エタノール95質量部に対し、コーヒー豆の粗粉砕物5質量部を添加し、ビーズミルを用いて微細化処理を行った(P1)。得られた粉砕物を含むエタノール溶液と液化CO2を高圧容器に投入し、超臨界状態とした。その後、高圧容器内のCO2を除去して乾燥させ、コーヒー豆の粉砕物(A-5)と、コーヒーオイル(B-3)抽出液と、を得た(P2)。
【0040】
(製造例6)
製造例5で得られたコーヒー豆の粉砕物(A-5)の一部を乾式粉砕機で2時間乾式粉砕し(P3)、コーヒー豆の粉砕物(A-6)を得た(P3)。
【0041】
(比較製造例1)
コーヒー豆の粗粉砕物30部を乾式粉砕機で2時間乾式粉砕し、コーヒー豆の粉砕物(A-7)を得た。
【0042】
(比較製造例2)
200mL高圧容器にコーヒー粉50gを投入し、温度50℃、圧力20MPa、CO2流量5mL/minの条件で超臨界処理を行い、コーヒーオイル(B-4)を得た(P2)。続いて、得られたコーヒー粉を乾式粉砕し(P3)、コーヒー豆の粉砕物(A-8)を得た(P3)。
【0043】
(サンプルの評価)
得られたコーヒー豆の粉砕物(A-1)~(A-8)について、株式会社島津製作所製のSALD-2300を用いて、乾式粒度分布を測定し、メジアン径(D50)を算出した。結果を表1に示す。
また、得られたコーヒー豆の粉砕物(A-1)~(A-8)について、水への溶解性・分散性を評価した。評価の方法としては、ビーカーに水を入れ、コーヒー豆の粉砕物を投入し、マグネティックスターラーを用いて3分間撹拌した。投入1分後(撹拌中)、攪拌停止時である投入3分後、攪拌を停止してから1分後のコーヒー豆の粉砕物の溶解性・分散性を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
表1のとおり、本製造方法により、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)が得られること、及び当該コーヒー豆の粉砕物(A)が溶解性乃至分散性に優れることが示された。
【0046】
(実施例1)
水2000質量部に対し、コーヒー豆の粉砕物(A-1)0.95質量部、コーヒーオイル(B-1)0.05部を添加してコーヒー製品を得た。
【0047】
(実施例2~6、比較例1~2)
実施例1において、コーヒー豆の粉砕物、コーヒーオイルを表2のように変更した以外は、実施例1と同様にしてコーヒー飲料を得た。
なお、比較例1は、コーヒーオイルを添加していない。
【0048】
(サンプルの評価)
得られたコーヒー製品について、香り、舌触りの官能試験を行った。評価者は熟練したパネル10名により行い、比較例1のコーヒー製品を3点(基準)とし、それぞれ良いと感じるものを7点、悪いと感じるものを1点とする7段階評価とし、その平均点を求めた。結果を表2に示している。
【0049】
【0050】
表2のとおり、メジアン径が0.5μm以上10μm未満のコーヒー豆の粉砕物(A)と、コーヒーオイル(B)とを含む、実施例1~6のコーヒー製品は、舌触りが良好であることが示された。
【0051】
(実施例7)
200mL高圧容器に、前記コーヒー豆の粉砕物(A-1)と、前記コーヒーオイル(B-1)抽出液との混合物を投入し、CO2を添加して、温度70℃、圧力20MPaとし、24時間静置した。その後、減圧処理により、CO2を除去した後、コーヒーオイル(B)が含浸されたコーヒー豆の粉砕物が得られたことを確認した。