(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087555
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】容器詰め大豆成分含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20220606BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
A23L2/38 D
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199544
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 深保子
(72)【発明者】
【氏名】四元 祐子
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LC03
4B117LE08
4B117LE10
4B117LG11
4B117LL04
4B117LL06
4B117LP17
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】静菌性乳化剤を含有しつつも、静菌性乳化剤由来の苦味が低減された容器詰め大豆成分含有飲料の提供。
【解決手段】本発明によれば、せん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式:-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は30≦X≦250である)を満たすものである、静菌性乳化剤を含有する容器詰め大豆成分含有飲料が提供される。本発明の飲料は増粘成分を配合してもよく、また、本発明の飲料のタンパク質濃度は0.5~5.5質量%とすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
せん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式(A):
-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353
(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)
を満たすものである、静菌性乳化剤を含有する容器詰め大豆成分含有飲料。
【請求項2】
飲料中の静菌性乳化剤の含有量が0.0001~1%である、請求項1に記載の飲料
【請求項3】
増粘成分を配合してなる、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
飲料中のタンパク質濃度が0.5~5.5質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
常温流通用の飲料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
レトルト殺菌飲料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
容器詰め大豆成分含有飲料の製造方法であって、静菌性乳化剤を配合する工程と、前記飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式(A):
-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353
(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)
を満たすように前記粘度とLST値を調整する工程とを含む、製造方法。
【請求項8】
静菌性乳化剤を含有する容器詰め大豆成分含有飲料の苦味低減方法であって、前記飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式(A):
-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353
(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)
を満たすように前記粘度とLST値を調整する工程を含む、苦味低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰め大豆成分含有飲料およびその製造方法に関する。本発明はまた、容器詰め大豆成分含有飲料に含まれる静菌性乳化剤の苦味低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豆乳は、大豆を水に浸漬後すりつぶし、加熱、ろ過して得られる乳状の飲料である。豆乳には大豆に由来するレシチン、サポニン、イソフラボンおよび大豆タンパク質等が含まれている。レシチンは細胞の働きを正常に保ち新陳代謝を活発にさせる作用を有することが知られている。また、サポニンは抗酸化作用があり、肌の老化の原因となっている活性酸素を抑える作用を有する。また、レシチンには脳の神経細胞の膜を形成するホスファチジルセリンが含まれ、記憶維持等が期待されている。このため、近年では豆乳飲料の健康効果が注目を集めている。
【0003】
最近では、各種成分・素材を含有させた豆乳飲料や大豆由来成分を含有する様々な飲料が開発されている。例えば特許文献1には、野菜汁や果汁を含有する青臭さが抑制された発酵豆乳飲料が、また特許文献2には、乾燥果実還元汁と豆乳を含有する飲料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-43280号公報
【特許文献2】特開2018-139499号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは容器詰め豆乳含有飲料の開発にあたり原材料として静菌性乳化剤を配合したところ、得られた飲料に乳化剤に起因する苦味が生じることを見出した。本発明者らはまた、豆乳含有飲料における静菌性乳化剤に由来する苦味の低減について鋭意研究を進めていたところ、マスキング剤のような添加剤を使用せず、豆乳含有飲料の粘度とLST値を一定範囲に調整することで静菌性乳化剤由来の苦味を低減できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
本発明は、より自然な味わいの容器詰め大豆成分含有飲料およびその製造方法の提供を目的とする。本発明はまた、容器詰め大豆成分含有飲料における静菌性乳化剤由来の苦味の低減方法の提供を目的とする。
【0007】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]せん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST(Line Spread Test)値(5℃)が下記関係式(A):-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)を満たすものである、静菌性乳化剤を含有する容器詰め大豆成分含有飲料。
[2]飲料中の静菌性乳化剤の含有量が0.0001~1%である、上記[1]に記載の飲料
[3]増粘成分を配合してなる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[4]飲料中のタンパク質濃度が0.5~5.5質量%である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]常温流通用の飲料である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]レトルト殺菌飲料である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7]容器詰め大豆成分含有飲料の製造方法であって、静菌性乳化剤を配合する工程と、前記飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式(A):-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)を満たすように前記粘度とLST値を調整する工程とを含む、製造方法。
[8]静菌性乳化剤を含有する容器詰め大豆成分含有飲料の苦味低減方法であって、前記飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式(A):-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)を満たすように前記粘度とLST値を調整する工程を含む、苦味低減方法。
【0008】
本発明の容器詰め大豆成分含有飲料は、原材料の一部として静菌性乳化剤を含有していても、静菌性乳化剤由来の苦味が低減され、より自然な味わいで飲みやすい点で有利である。また、本発明の容器詰め大豆成分含有飲料は、殺菌工程において苦味が増強される傾向にあるが、殺菌工程に起因する苦味の増強を抑制できる点でも有利である。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明において「大豆成分含有飲料」とは、大豆由来成分を含有する飲料、すなわち、大豆を原料として使用する飲料を意味し、豆乳含有飲料や、大豆飲料を含む意味で用いられるものとする。ここで、「豆乳含有飲料」とは、豆乳を原料として使用する飲料を意味し、日本農林規格で定められた豆乳および調製豆乳や、豆乳を含有した清涼飲料水、果汁入り飲料、コーヒー飲料および紅茶飲料を含む意味で用いられるものとする。使用する豆乳は、大豆や加工大豆(例えば、脱脂加工大豆)を原料とするものであれば特に限定されず、無調整豆乳液、調製豆乳液、調製粉末大豆豆乳液、調製脱脂大豆豆乳液等を使用することができる。また、「大豆飲料」とは、大豆および/または大豆粉を原料として使用する飲料を意味し、大豆および/または大豆粉を含有した清涼飲料水、果汁入り飲料、コーヒー飲料および紅茶飲料を含む意味で用いられるものとする。
【0010】
本発明の大豆成分含有飲料における大豆由来成分の含有量は任意に定めることができ、例えば、本発明の大豆含有飲料における大豆由来成分の含有量の下限値は、大豆固形分として、飲料全体に対して1質量%(好ましくは2質量%、より好ましくは3質量%)とすることができ、また、上記含有量の上限値は、大豆固形分として、飲料全体に対して15質量%(好ましくは10質量%、より好ましくは8質量%または7質量%)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有量の範囲は、例えば、1~15質量%、2~10質量%または3~7質量%とすることができる。なお、本発明において「固形分」とは、水分を除いた成分を意味する。
【0011】
本発明の大豆成分含有飲料におけるタンパク質濃度は、0.5~5.5質量%とすることができ、好ましくは0.7~5質量%である。飲料中のタンパク質濃度は、燃焼法等に従って測定することができる。
【0012】
本発明の大豆成分含有飲料は、静菌性乳化剤を含んでなるものである。ここで、「静菌性乳化剤」は、飲料における耐熱性芽胞菌の発芽生育を抑制する効果を有する食品用乳化剤を意味する。本発明に使用可能な静菌性乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルを含む)および有機酸モノグリセリドからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。飲料中の静菌性乳化剤の含有量は、例えば、0.0001~1%(好ましくは0.0005~0.8%、より好ましくは0.001~0.8%、さらに好ましくは0.01~0.8%、さらにより好ましくは0.01~0.6%)とすることができる。飲料中の静菌性乳化剤は、HLB値の下限値が1以上(好ましくは2以上、より好ましくは3以上)のものとすることができ、また、上記HLB値の上限値は19以下(好ましくは18以下、より好ましくは17以下)のものとすることができる。上記HLB値の範囲は、例えば、1~19、2~18または3~17とすることができる。
【0013】
上記のショ糖脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等の炭素数2~22の飽和または不飽和の脂肪酸からなる群から選択される1種または2種以上の物質の組合せであるショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。これらの中では、構成脂肪酸が炭素数2~18の飽和脂肪酸からなる群から選択される1種または2種以上の物質の組合せであるショ糖脂肪酸エステルが好ましい。また、構成脂肪酸の50重量%以上(好ましくは70重量%以上)が、パルミチン酸、ステアリン酸、イソ酪酸および酢酸からなる群から選択される1種または2種以上の物質の組合せであるショ糖脂肪酸エステルが更に好ましく、中でも、構成脂肪酸の50重量%以上(好ましくは70重量%以上)が、パルミチン酸であるショ糖脂肪酸エステルがより好ましい。
【0014】
また、ショ糖脂肪酸エステルとして、構成脂肪酸がパルミチン酸であるショ糖脂肪酸エステル(ショ糖パルミチン酸エステル)がより好ましく挙げられる。また、本明細書における「構成脂肪酸」には、脂肪酸の他に、便宜上、イソ酪酸や酢酸等のカルボン酸も含まれる。
【0015】
上記のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンの平均重合度が2~20(好ましくは3~10)であるポリグリセリン脂肪酸エステルもしくは、構成脂肪酸が炭素数2~22の飽和または不飽和の脂肪酸からなる群から選択される1種または2種以上の物質の組合せであるポリグリセリン脂肪酸エステルもしくは、構成脂肪酸の50重量%以上(好ましくは70重量%以上)が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸からなる群から選択される1種または2種の物質の組合せであるポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンの平均重合度が2~20(好ましくは3~10)であり、かつ、構成脂肪酸が前記と同様に炭素数2~22の飽和または不飽和の脂肪酸からなる群から選択される1種または2種以上の物質の組合せであるポリグリセリン脂肪酸エステルや、ポリグリセリンの平均重合度が2~20(好ましくは3~10)であり、かつ、構成脂肪酸の50重量%以上(好ましくは70重量%以上)が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸からなる群から選択される1種または2種以上の物質の組合せであるポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられ、より好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンの平均重合度が2~20(好ましくは3~10)であり、かつ、構成脂肪酸が前記と同様に炭素数2~22の飽和または不飽和の脂肪酸であり、かつ、構成脂肪酸の50重量%以上(好ましくは70重量%以上)が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸からなる群から選択される1種または2種以上の物質の組合せであるポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、構成脂肪酸の50重量%以上(好ましくは70重量%以上)が、パルミチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく挙げられ、加えて、ポリグリセリンの平均重合度が2~20(好ましくは3~10)であるポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましく挙げられる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、構成脂肪酸がパルミチン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンパルミチン酸エステル)がより好ましく挙げられ、加えて、ポリグリセリンの平均重合度が2~20(好ましくは3~10)であるポリグリセリン脂肪酸エステルがさらに好ましく挙げられる。
【0016】
上記のモノグリセリン脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸が炭素数2~22の飽和または不飽和の脂肪酸からなる群から選択される1種または2種以上の物質の組合せであるモノグリセリン脂肪酸エステルもしくは、構成脂肪酸の50重量%以上(好ましくは70重量%以上)が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸からなる群から選択される1種または2種の物質の組合せであるモノグリセリン脂肪酸エステルが好ましく挙げられる。また、モノグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸モノエステルや、モノグリセリン脂肪酸ジエステルが好ましく挙げられるまた、モノグリセリン脂肪酸エステルとして、構成脂肪酸の50重量%以上(好ましくは70重量%以上)がパルミチン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステルが好ましく挙げられ、構成脂肪酸がパルミチン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリンパルミチン酸エステル)がより好ましく挙げられる。
【0017】
本発明の大豆成分含有飲料は、原材料として少なくとも増粘成分を含んでなるものとすることができる。ここで、増粘成分とは増粘作用を有し、かつ、食品として許容される成分を意味し、食品でも食品添加物であってもよく、増粘多糖類、増粘安定剤、安定剤、増粘剤、糊料およびゲル化剤を含む意味で用いられるものとする。増粘成分の例としては、カラギナン、ジェランガム、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、カードラン、ゼラチン、アラビアガム、グァーガム、ガティガム、加工でんぷん、ペクチンが挙げられる。本発明の大豆成分含有飲料における増粘成分の配合量は、粘度とLST値が後記の所定の範囲を満たすように調整することができる。例えば、固形分換算で飲料全体に対して、カラギナンの場合は0.06~0.7質量%(好ましくは0.1~0.7質量%、より好ましくは0.15~0.5質量%)、ジェランガムの場合は0.07~0.3質量%(好ましくは0.1~0.15質量%)、寒天の場合は0.1~0.5質量%(好ましくは0.17~0.22質量%)とすることができる。なお、増粘剤の配合量は、大豆固形分量や乳化剤の配合量等を踏まえて、適宜、調整することができる。
【0018】
本発明の大豆成分含有飲料はまた、原材料として調味料を含んでなるものとすることができる。ここで、調味料としては、例えば、糖類および糖類を含有する食品素材や、食塩、うまみ調味料等が挙げられ、糖類および糖類含有食品素材の具体例としては、砂糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合高果糖液糖、ブドウ糖、水あめ、乳糖、麦芽糖、ハチミツ、黒糖が挙げられる。本発明の大豆成分含有飲料における調味料の含有量は、固形分換算で、飲料全体に対して0.1~15質量%(好ましくは0.5~10質量%)とすることができる。
【0019】
本発明の大豆成分含有飲料は、増粘成分に加えて、原材料としてさらに風味原料を含んでなるものとすることができる。ここで、風味原料としては、例えば、果実の搾汁、野菜の搾汁、果肉、コーヒー、茶類、ココア、牛乳、粉乳、穀類粉末、抹茶、コンブ粉末、きなこ、植物乾燥粉末および抽出濃縮物、ヨーグルト等の乳製品が挙げられる。
【0020】
本発明の大豆成分含有飲料は、上記以外に、食品として許容される成分や素材を含有させることができる。このような成分や素材は、本発明の大豆成分含有飲料が前記[1]に記載の関係式(A)を満たす限り特に制限はなく、例えば、食用植物油脂、消泡剤、pH調整剤、品質改良剤、酸味料、甘味料、着色料、香料が挙げられる。なお、本発明の大豆成分含有飲料では静菌性乳化剤に由来する苦味を苦味マスキング成分の配合によらずに低減できるが、本発明では静菌性乳化剤に由来する苦味を低減させる成分や素材の配合を妨げるものではない。
【0021】
本発明の大豆成分含有飲料はまた、せん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式(A):
-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353;
好ましくは、下記関係式(B):-0.071X+39.353≦Y≦-0.071X+45.353
(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)
を満たすものであるという特徴を有する。前記式(A)および(B)は、後記実施例において本願発明の効果が確認された試験区4~10、12~16、22、23、27、28、31、32、36、47~54および60~63の飲料の粘度およびLST値に基づいて最小二乗法により相関式:Y=-0.071X+42.353(R2=0.8361)を算出し、次いで、該相関式を中心として、後記実施例において本願発明の効果が確認された試験区の飲料が包含されるように、前記相関式の傾き(-0.071)を維持しつつ切片(42.353)を前記式(A)は±6増減し、前記式(B)は±3増減することにより導き出される。本発明によれば、飲料の粘度とLST値をこの数値範囲内に調整することで、静菌性乳化剤由来の苦味を低減することができる。静菌性乳化剤の配合により飲料の経時的安定性の向上や微生物リスクの低減を図ることができるが、本発明の大豆成分含有飲料によればこれらの目的を達しつつ、静菌性乳化剤に由来する苦味を苦味マスキング成分の配合によらずに低減できる点で有利である。また、本発明の飲料は、殺菌工程において静菌性乳化剤に由来する苦味が増強される傾向にあるが、殺菌工程に起因する苦味の増強を抑制できる点でも有利である。前記粘度は好ましくは60~250mPa・sであり、より好ましくは90~166mPa・sである。前記LST値は好ましくは25~37mmであり、より好ましくは28~35mmであり、さらに好ましくは30~35mmである。
【0022】
本発明の大豆成分含有飲料においては、後記実施例の記載に従って、飲料中のタンパク質濃度等の調整や飲料への増粘成分等の配合により、せん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)を所定の範囲内に調整することができる。
【0023】
本発明の大豆成分含有飲料はさらに、せん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式(C):
-0.0733X+36.686≦Y≦-0.0733X+48.686;
好ましくは、下記関係式(D):-0.0733X+39.686≦Y≦-0.0733X+45.686
(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)
を満たすものとすることができる。前記式(C)および(D)は、後記実施例において本願発明の効果が確認された試験区4~10、12~16、22および23の飲料の粘度およびLST値に基づいて最小二乗法により相関式:Y=-0.0733X+42.686(R2=0.8063)を算出し、次いで、該相関式を中心として、後記実施例において本願発明の効果が確認された試験区の飲料が包含されるように、前記相関式の傾き(-0.0733)を維持しつつ切片(42.686)を前記式(C)は±6増減し、前記式(D)は±3増減することにより導き出される。上記の大豆成分含有飲料は、大豆固形分2~8%、好ましくは4~6%とすることができる。上記の大豆成分含有飲料に含まれる静菌性乳化剤は、HLB値が14~18、好ましくは15~17のものが挙げられる。
【0024】
本発明の大豆成分含有飲料は、せん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式を満たすものとすることができる。
・増粘剤としてカラギナンを使用した場合:-0.0751X+40.396≦Y≦-0.0751X+46.396(18≦X≦250)(R2=0.8832)
・増粘剤として寒天を使用した場合:-0.0267x+31.753≦y≦-0.0267x+37.753(60≦X≦100)(R2=1)
・増粘剤としてジェランガムを使用した場合:-0.1109X+42.786≦Y≦-0.1109X+48.786(20≦X≦100)(R2=0.9558)
(上記式において、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表す)。これらの式は、後記実施例において本願発明の効果が確認された試験区の飲料の粘度およびLST値に基づいて導き出される。具体的には、カラギナンを使用した場合は試験区4~10、27、28、31、32および36の飲料の、寒天を使用した場合は試験区22および23の飲料の、ジェランガムを使用した場合は試験区12~16の飲料のそれぞれの粘度およびLST値に基づいて最小二乗法により相関式を算出し、次いで、該相関式を中心として、後記実施例において本願発明の効果が確認された試験区の飲料が包含されるように、前記各関係式の傾きを維持しつつ切片を±3増減することにより導き出される。上記の大豆成分含有飲料は、大豆固形分が2~8%、好ましくは4~6%とすることができる。
【0025】
本発明の大豆成分含有飲料の粘度は、所定のせん断速度における粘度を測定できる測定装置(回転粘度計)を用いて測定することができ、例えば、例1の(3)アの記載に従って測定することができる。
【0026】
本発明の大豆成分含有飲料のLST値は、ラインスプレッドテスト(Line Spread Test、本明細書では単に「LST」ということがある)により測定することができる。LST値は、例えば、「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」、日摂食嚥下リハ会誌、17(3):255-267(2013)に記載された方法に従ってLST値を測定することができる。LST値は、分析対象食品のとろみの指標であり、この数値が小さいほど飲料にとろみが付与されているといえる。
【0027】
本発明の大豆成分含有飲料のpHは、中性領域(例えばpH5~9、好ましくはpH6~8)に調整することができる。pH調整は、重曹等のpH調整剤を用いて実施することができる。
【0028】
本発明の大豆成分含有飲料は、容器詰め飲料の形態で提供することができる。容器としては、紙パック、ペットボトル、スチール缶、アルミ缶等の缶、ガラス瓶、パウチ、カップ等のいずれの態様であってもよい。
【0029】
本発明においては、容器詰めされた大豆成分含有飲料をレトルト殺菌またはパストライザー殺菌してもよく、あるいは、殺菌処理した大豆成分含有飲料を前記容器に無菌充填またはホットパック充填してもよい。容器詰めや殺菌処理は常法に従って実施することができる。
【0030】
本発明の大豆成分含有飲料は、粘度およびLST値を所定の範囲内に調整すること以外は、通常の大豆成分含有飲料の製造手順に従って製造することができる。本発明においては、例えば、大豆成分を含む原材料を準備し、混合し、場合によってはpH調整、濾過、均一化、冷却等の任意工程を実施することにより、所定の粘度およびLST値に調整された、本発明の大豆成分含有飲料を製造することができる。原材料のうち大豆成分は豆乳を用いることができ、豆乳は液体であっても粉体であっても、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。静菌性乳化剤の原材料への配合タイミングは限定されないが、大豆成分を含む原材料を調合する段階で配合することが好ましい。
【0031】
本発明の別の側面によると、静菌性乳化剤を含有する容器詰め大豆成分含有飲料の製造方法であって、静菌性乳化剤を配合する工程と、前記飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式:
-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353
(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)
を満たすように前記粘度とLST値を調整する工程とを含む、製造方法が提供される。本発明の製造方法は、本発明の大豆成分含有飲料に関する記載に従って実施することができる。
【0032】
本発明のさらに別の側面によると、静菌性乳化剤を含有する容器詰め大豆成分含有飲料の苦味低減方法であって、前記飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式:
-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353
(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)
を満たすように前記粘度とLST値を調整する工程を含む、苦味低減方法が提供される。本発明の苦味低減方法は、本発明の大豆成分含有飲料に関する記載に従って実施することができる。
【実施例0033】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0034】
例1:豆乳含有飲料における苦味低減効果の検討(1)
例1では、静菌性乳化剤(以下、単に「乳化剤」ということがある)としてショ糖パルミチン酸エステルを添加した豆乳含有飲料について苦味低減効果を検討した。
【0035】
(1)試験飲料の調製
表1に示す配合量で原材料を準備し、乳化剤および増粘剤を適当な溶解処理または膨潤処理を施した後に表2~5に示す種類および添加率で添加した。次いで、上記のようにして得られた原材料の混合物にイオン交換水を加えて合計1kgの調合液を得た。調合液100gに含まれる大豆に由来するタンパク質(以下、「大豆由来タンパク質」ということがある。)量は2.4g(大豆固形分5%)であった。得られた調合液を飲料試作用のガラス瓶に充填した後、レトルト殺菌機を用いて121℃で20分間殺菌することにより、容器詰め豆乳含有飲料(試験区1~20)を得た。なお、例1および2において、液体豆乳は「おいしい無調整豆乳(大豆固形分8%)」(キッコーマン)を、粉体豆乳は「IM-100(大豆固形分100%)」(井村屋)を、乳化剤はショ糖パルミチン酸エステル(リョートーシュガーエステルP-1670、三菱ケミカルフーズ)をそれぞれ用いた。また、増粘剤としてカラギナンはカラギニンCS-396(三栄源エフ・エフ・アイ社)を、ジェランガムはケルコゲルHM(三栄源エフ・エフ・アイ社)を、キサンタンガムはキサンタンガム(マルゴコーポレーション社)を、寒天はかんてんパウダー(伊那食品工業社)をそれぞれ用いた。
【0036】
【0037】
(2)官能評価
豆乳含有飲料の官能評価は以下のように行った。
得られた試験区1~23の各豆乳含有飲料について、4名の専門パネルにより、豆乳含有飲料の苦味の抑制の程度について官能評価試験を行った。また、試験区1~10の各豆乳含有飲料について、4名の専門パネルにより、飲料適性について官能評価試験を行った。苦味の抑制の程度は、試験区1~20については試験区1(表2)の豆乳含有飲料を基準として、試験区21~23については試験区21(表5)の豆乳含有飲料を基準として、それぞれの増粘剤を添加した際について、各試験区の豆乳含有飲料の苦味が抑制されている程度を以下の基準により評価した。飲料適性は、以下の基準により評価した。各パネルの評価のばらつきを低減するために、苦味の抑制の程度および飲料適性が既知の複数種の豆乳含有飲料の苦味の抑制の程度を各パネルで評価した後、その評価点を比較し、各パネルの評価基準に大きな乖離が生じないように確認し、また、各パネルの評価点の標準偏差が0.5以内であることも確認した。
【0038】
苦味の評価基準:苦味の抑制の程度
4点:非常に大きく抑制している
3点:大きく抑制している
2点:抑制している
1点:わずかに抑制している
0点:抑制していない
【0039】
飲料適性
3点:喉の通りがかなり良く、非常に飲用しやすい
2点:喉の通りが良く、飲用しやすい
1点:喉の通りが少し悪いものの、飲用には影響はない
0点:喉の通りが悪く、飲用しにくい
【0040】
苦味の抑制の程度および飲料適性は、各豆乳含有飲料について4名の専門パネルの評価点の平均点を算出し、その平均点に応じ、0~1点を×、1~2点を△、2~3点を○、3~4点を◎とし、その豆乳含有飲料の評価とした。なお、点数が整数となった場合、評価結果は上位の結果として扱った。(例えば、平均点が1点ちょうどの場合、×ではなく△とした。)
【0041】
(3)機器評価
豆乳含有飲料の機器評価は以下のように行った。
ア 粘度
上記(1)で得られた飲料の粘度は、精密回転粘度計(RST-CC、ブルックフィールド)を用いて測定した。測定は二重円筒スピンドルCCT-DGを使用して行った。また、測定条件は、せん断速度0.1(1/s)~2000(1/s)、測定温度:20℃、液量:15.7mL、シアレート制御(log)にて測定時間250秒、測定ポイント数50ポイントであった。せん断速度96(1/s)のときの粘度を測定した。
【0042】
イ LST値
上記(1)で得られた飲料のとろみの程度を評価した。「とろみ測定板」(サラヤ)を用いて測定温度:5℃においてラインスプレッドテストを実施し、LST値(mm)を求めた(「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」、日摂食嚥下リハ会誌、17(3):255-267(2013)参照)。具体的には以下の通り行った。まず、目盛のついたシートを用い、直径30mmのリングに20mLの測定したい溶液を入れた。リングに溶液を注入した後は、リング内で液体の流動を止めるため30秒間待ち、次いで、リングを持ち上げ、30秒後に溶液の広がりを計測した。シートには6方向に目盛がついているので、その6点の値を読み、平均値を算出した。本評価では液体の広がりを計測するので、水平な場所で測定した。
【0043】
(4)結果
官能評価および機器評価の結果は、表2~5に示す通りであった。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
これらの結果から、乳化剤を含有する大豆成分含有飲料において、せん断速度96m/sにおける粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式:-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)を満たすときに、乳化剤由来の苦味を低減できることが確認された。
【0049】
例2:豆乳含有飲料における苦味低減効果の検討(2)
例2では、例1と異なる静菌性乳化剤を添加した豆乳含有飲料について苦味低減効果を検討した。
【0050】
(1)試験飲料の調製
表6~8に示す乳化剤および増粘剤を用いた以外は、例1(1)に記載の手順に従って、試験飲料(試験区24~36)を調製した。乳化剤は、トリグリセリンパルミチン酸エステル(TRP-97RF、理研ビタミン社)、コハク酸脂肪酸モノグリセライド(ポエムB-10、理研ビタミン社)およびポリグリセリン脂肪酸エステル(DP-95RF、理研ビタミン社)を用いた。
【0051】
(2)官能評価
苦味の抑制の程度は、試験区24~28については試験区24(表6)の豆乳含有飲料を基準として、試験区29~32については試験区29(表7)の豆乳含有飲料を基準として、試験区33~36については試験区33(表8)の豆乳含有飲料を基準として、それぞれの増粘剤を添加した際について、各試験区の豆乳含有飲料の苦味が抑制されている程度を評価したこと以外は、豆乳含有飲料の官能評価は例1(2)に記載の基準および手順に従って実施した。
【0052】
(3)機器評価
豆乳含有飲料の機器評価は例1(3)に記載の手順に従って実施した。
【0053】
(4)結果
官能評価および機器評価の結果は、表6~8に示す通りであった。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
これらの結果から、例1と異なる乳化剤を用いた場合でも、せん断速度96m/sにおける粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式:-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)を満たすときに、乳化剤を含有する大豆成分含有飲料において乳化剤由来の苦味を低減できることが確認された。
【0058】
例3:豆乳含有飲料における苦味低減効果の検討(3)
例3では、複数種類の増粘剤添加による豆乳含有飲料の苦味低減効果を検討した。
【0059】
(1)試験飲料の調製
表9に示す複数種類の増粘剤を用いた以外は、例1(1)に記載の手順に従って、試験飲料(試験区37~43)を調製した。
(2)官能評価
苦味の抑制の程度は、試験区37~43について試験区1(表2)の豆乳含有飲料を基準として、それぞれの増粘剤を添加した際について、各試験区の豆乳含有飲料の苦味が抑制されている程度を評価したこと以外は、豆乳含有飲料の官能評価は例1(2)に記載の基準および手順に従って実施した。
【0060】
(3)機器評価
豆乳含有飲料の機器評価は例1(3)に記載の手順に従って実施した。
【0061】
(4)結果
官能評価および機器評価の結果は、表9に示す通りであった。
【0062】
【0063】
これらの結果から、複数種類の増粘剤添加による豆乳含有飲料についても、せん断速度96m/sにおける粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式:-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)を満たすときに、乳化剤由来の苦味を低減できることが確認された。
【0064】
例4:豆乳含有飲料における苦味低減効果の検討(4)
例4では、例1と異なる大豆固形分の豆乳含有飲料について苦味低減効果を検討した。
【0065】
(1)試験飲料の調製
表10(大豆固形分:2%)および表11(大豆固形分:8%)に示す配合量で原材料を準備し、静菌性乳化剤および増粘剤を適当な溶解処理または膨潤処理を施した後に表12および13に示す種類および添加率で添加した以外は、例1(1)に記載の手順に従って、試験飲料(試験区44~63)を調製した。
【0066】
【0067】
【0068】
(2)官能評価
苦味の抑制の程度は、試験区44~54については試験区44(表12)の豆乳含有飲料を基準として、試験区55~63については試験区55(表13)の豆乳含有飲料を基準として、それぞれの増粘剤を添加した際について、各試験区の豆乳含有飲料の苦味が抑制されている程度を評価したこと以外は、豆乳含有飲料の官能評価は例1(2)に記載の基準および手順に従って実施した。
【0069】
(3)機器評価
豆乳含有飲料の機器評価は例1(3)に記載の手順に従って実施した。
【0070】
(4)結果
官能評価および機器評価の結果は、表12および13に示す通りであった。
【0071】
【0072】
【0073】
これらの結果から、例1と異なる大豆固形分の豆乳含有飲料についても、せん断速度96m/sにおける粘度(20℃)とLST値(5℃)が下記関係式:-0.071X+36.353≦Y≦-0.071X+48.353(上記式中、Xは飲料のせん断速度96(1/s)における粘度(20℃)を表し、YはLST値(5℃)を表し、Xの範囲は18≦X≦250である)を満たすときに、乳化剤由来の苦味を低減できることが確認された。
【0074】
例5:豆乳含有飲料の苦味に殺菌が与える影響
豆乳含有飲料に含まれる静菌性乳化剤に由来する苦味に殺菌が与える影響について、異なる殺菌条件下で比較検討した。
【0075】
(1)試験飲料の調製
殺菌条件を表14および15としたこと、および、増粘剤を添加しなかったこと以外は例1(1)に記載の手順に従って、試験飲料(試験区64~78)を調製した。
【0076】
(2)官能評価
豆乳含有飲料の官能評価は以下のように行った。得られた試験区64~78の各豆乳含有飲料について、4名の専門パネルにより、豆乳含有飲料の苦味の程度について官能評価試験を行った。苦味の程度は、乳化剤の各添加量における殺菌条件α(殺菌処理なし)の豆乳含有飲料を基準として、殺菌条件βとγの苦味の程度を評価した。
【0077】
【0078】
【0079】
(3)結果
官能評価の結果は次の通りであった。乳化剤にP-1670(試験区64~69)とTRP-97R(試験区70~78)を使用した場合、いずれの添加率においても殺菌条件αに対して殺菌条件βとγで苦味が強くなることが確認された。特に殺菌条件βの場合に苦味が強くなる傾向があった。