(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087557
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】三相誘導性負荷電流制御法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220606BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199546
(22)【出願日】2020-12-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】594170185
【氏名又は名称】大西 徳生
(72)【発明者】
【氏名】大 西 徳 生
(72)【発明者】
【氏名】岡 山 正 秋
(72)【発明者】
【氏名】高 岡 謙 蔵
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA07
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770JA11Y
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電圧形インバータで抵抗とインダクタの誘導性負荷回路に給電するとき、抵抗負荷での電圧降下に比べてインダクタでの電圧降下が高い場合、動作電圧を高くしなければならず、動作周波数が、リアクタンス降下をキャパシタンス降下で抑制するときの共振周波数とずれると、正常な動作ができなくなり、三相回路においては各相間のバランス制御も難しくなるなどの課題がある。
【解決手段】三相誘導性負荷回路と直列に接続するキャパシタとの共振周波数にほぼ等しい周波数の電圧を三相電圧形インバータから給電し、PWM制御により各相電流を制御することによって、インダクタ部での電圧降下をキャパシタ部での電圧降下で打ち消すことによる残存リアクタンス電圧降下分を補償して、共振周波数の変動に対する電流のアンバランスの抑制と電源装置容量の低減を図る。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧形インバータを抵抗とインダクタからなる直列負荷回路に対してキャパシタを直列に接続し、前記インダクタンスと前記キャパシタンスによる共振周波数にほぼ等しい周波数の電圧を前記インバータから給電し、前記インダクタンスでの電圧降下を前記キャパシタでの電圧降下で打ち消した残存リアクタンス降下と前記抵抗負荷での電圧降下との合成電圧を前記電圧形インバータで発生させることにより、共振周波数の変動に対するロバスト化と電源装置容量を低減させることを特徴とする直列共振制御電源。
【請求項2】
請求項1記載の直列共振制御電源において、前記電圧形インバータを前記共振周波数にほぼ等しい周波数の正弦波電流基準波形に前記負荷電流が一致するように電流瞬時値比較PWM制御することを特徴とする負荷電流瞬時値制御方式による直列共振制御電源。
【請求項3】
請求項1記載の直列共振制御電源において、前記負荷電流の大きさが基準値と一致する大きさとなるように前記電圧形インバータの電圧パルス幅を制御することを特徴とする負荷電流実効値制御方式による直列共振制御電源。
【請求項4】
請求項1記載の直列共振制御電源において、前記負荷電流の大きさが基準値と一致する大きさとなるように前記電圧形インバータの方形波電圧の振幅を制御することを特徴とする負荷電流実効値制御方式による直列共振制御電源。
【請求項5】
請求項1および3、4記載の直列共振制御電源において、前期共振回路定数を高尖鋭度となる共振回路とすることにより、前記負荷電流を前記共振周波数にほぼ等しい周波数の正弦波交流波形に制御できることを特徴とする直列共振制御電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗とインダクタからなる直列負荷回路を駆動する電圧形インバータ電源の装置容量の低減と制御システムの安定化に貢献する技術である。
【背景技術】
【0002】
電気回路理論の基礎知識として、抵抗、インダクタおよびキャパシタが直列に接続された回路に対して、インダクタとキャパシタによる直列共振周波数と等しい周波数の交流電圧を加えると直列共振状態においては、インダクタ部とキャパシタ部におけるリアクタンス電圧降下が完全に相殺され、このとき流れる電流は印加した交流電圧を抵抗値で除した値となることは周知のことである。
【0003】
そして、この共振回路定数が抵抗値をR,インダクタンスをL,キャパシタンスをCとおくとき、尖鋭度Qは、次式で与えられる。
【数1】
【0004】
そして、尖鋭度Qが高いとき、この回路に印加する交流電圧の周波数が共振周波数と一致するときは、LC直列共振によるフィルタ効果が極めて大きいため、印加電圧の基本波成分電圧を回路抵抗で除した印加電圧の基本波と同相の正弦波状の電流波形が流れる。
【0005】
ところが、この場合は、印加する交流電圧の周波数が共振周波数と一致していないときの回路動作は、周波数偏差がプラスのときはインダクティブ動作、マイナスのときはキャパシティブ動作となり、電流振幅が大きく変化するとともに電流位相も遅れから進みの間で大きく変化する。
【0006】
このため、尖鋭度Qが高い場合、L,C,Rによる直列共振回路の定数が少しでも変化すると、印加する交流電圧の周波数が共振周波数と一致できないので共振動作から外れることになる。
【0007】
また、この場合はL,C,Rによる直列共振回路の定数が変化しなくても、印加する交流電圧の周波数が共振周波数から少しでもずれると共振動作から外れることになる。
【0008】
このため、尖鋭度Qが高い場合、負荷インダクタンスと共振用キャパシタンスの直列共振による合成リアクタンス降下を完全に打ち消すことは難しいため、電圧形インバータで一定の周波数の電圧を発生させた電圧を印加することによっては、共振状態で安定に動作させられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62-250874
【特許文献2】特許第6004309号
【非特許文献1】大西、皆元著、「電源瞬時電力脈動低減方式LC併用形アクティブフィルタの容量低減」、電気学会論文誌D,Vol.113-D,No.6, pp.760-pp.767、1993.
【0010】
直列共振回路を含むインバータの制御回路例としては、LC共振動動作を活用した幾多の制御回路が提案されているが、古いものの例として(特許文献1)を、比較的最近のものとして(特許文献2)を挙げた。
【0011】
両特許文献は、共にLC共振動作のタイミングに合わせてインバータのスイッチング素子の制御法に関するものであり、スイッチングタイミング制御によるスイッチング損失の低減が特徴となっている。
【0012】
一方、(非特許文献1)は、商用電源にLC並列共振回路を直列に接続してインバータを接続することによりインバータにかかる電圧を低減する制御手法を提案したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明では、抵抗とインダクタの直列負荷に給電するインバータの電圧を低減するために、キャパシタを直列に接続してインバータを接続することにより(非特許文献1)と同様に、直列キャパシタ回路部で電圧分担させることによりインバータにかかる電圧の抑制を目指すものである。
【0014】
本回路構成において、(特許文献1,2)とは異なり、ハードスイッチングの自由度を活かした制御を行うもので、負荷インダクタと直列に接続するキャパシタによるリアクタンス降下は符号が異なるために、インバータ電源の周波数をそれらの共振周波数と一致させることができるので、互いのリアクタンス電圧降下を互いに相殺することができるので、インバータの出力電圧値は負荷抵抗部での電圧降下に等しい値に低く抑えることができる。
【0015】
しかしながら、インバータの共振周波数は負荷回路のインダクタンス値と直列キャパシタンス値で決まるので、尖鋭度Qが高い場合は、これらの値が少しでも異なると、共振状態から大きく外れ、インバータの動作電圧、電流が大きく変動することとなる。
【0016】
三相回路では、さらに各相の抵抗とインダクタからなる3組の直列負荷回路の回路定数のばらつきがあれば、各相の負荷回路の共振周波数も異なるので、三相インバータの出力周波数を定めることができず、三相回路としての共振状態を実現することができない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
図1は、抵抗RoとインダクタンスLoからなる誘導性負荷に対して電源角周波数ωの交流電源電圧e
aを接続したときの単相回路であり、交流電流iaが流れるとき抵抗Roでの電圧降下v
RoとインダクタンスLoでの電圧降下v
Loの合成電圧voが交流電源電圧eaとなる。
【0018】
電力を消費させる抵抗負荷での電圧降下はvRoであるが、交流電流iaを流すためには、インダクタンスLoでの電圧降下vLoを含む高い電圧voを供給する必要がある。
【0019】
そこで、この回路に直列にキャパシタンスCoを接続したときの交流回路図が
図2であり、キャパシタンスCの容量性リアクタンスXcがインダクタンスLoの誘導性リアクタンスXLoと等しくなると、両リアクタンス降下は相殺されるので、交流電流iaを流すに必要な交流電源電圧eaは、抵抗負荷での電圧降下vRoと等しくなり、低く抑えることができる。
【0020】
このときの、共振角周波数ωoは次式で与えられる。
【数2】
【0021】
ところが、直列に接続するキャパシタCがCoと異なるとき、それらの差が共振状態からの過不足分となるキャパシタンスΔCとしてさらに直列に接続されたこととなり、
図3はこのときの等価回路を示している。
【0022】
このとき、インダクタンスLoの誘導性リアクタンス降下とキャパシタCoの容量性リアクタンス降下は相殺されるが、差分キャパシタΔCによるリアクタンス降下による電圧降下が抵抗Roの電圧降下に加わるため、より高い交流電源電圧eaを加えることが必要となる。
【0023】
このときの交流電源電圧eaは、抵抗での電圧降下vRoに等しい電圧eaoと差分キャパシタンスΔCでのリアクタンス降下を打ち消す電圧eacが加わることと等価となる。
【0024】
図4は、差分キャパシタンスΔC が(a)小さかった場合と(b)大きかった場合における電圧ベクトル図を示している。
【0025】
ここで、差分キャパシタンスΔCにおける電圧降下ΔVacを打ち消すための電圧Eacを含めた交流電源電圧Eaは、抵抗による電圧降下分の電圧EaoとΔVacのベクトル和で求められる。
【0026】
そして、直列キャパシタンスCによる容量性リアクタンスXcが共振リアクタンスXcoから±kcだけの差異があったとき次式で関係付けられる。
【数3】
【0027】
このとき、差分キャパシタンスΔCでのリアクタンス降下を補償する電圧Eacを含め、必要とされる交流電圧の大きさEaは、次式で示される。
【数4】
【0028】
【0029】
また、差分キャパシタンスΔCによるリアクタンス電圧降下は
【数6】
【0030】
図5は、抵抗RoとインダクタLoによる直列負荷にキャパシタCを直列に接続した回路に対して交流電源を電圧形インバータで構成した回路構成を示している。
【0031】
この回路で、尖鋭度Qがあまり高くないときには、負荷電流を検出して正弦波電基準電流波形との瞬時値比較によりインバータをPWM制御することにより必要な電流に瞬時値制御することができる。
【0032】
一方、回路の尖鋭度Qが高いときは、LC共振フィルタ効果により、インバータで共振周波数と一致した方形波電圧を加えても正弦波電流を流すことができる。
【0033】
電圧計インバータで方形波電圧のパルス幅制御や直流電圧制御によって、方形波出力電圧の基本波振幅を制御することによって、電流の大きさを制御することができる。
【0034】
いずれの場合も、大きなインダクタンスを含む誘導性負荷に対して、直列共振が実現できる程度のキャパシタを回路に直列に入れることにより、インバータ電源の動作電圧を下げることができるとともに、回路定数の変動や動作周波数のわずかな差異があっても直列共振制御電源を安定に動作させることができる。
【0035】
ここで、単相電圧形インバータの直流電圧をEdとすると、最大負荷電流Iamの大きさを決めるインバータの180度幅の方形波出力電圧の基本波成分電圧の振幅値Vsmは、フーリエ級数展開により次式で求められる。
【数7】
【0036】
この電圧が、数式5に示す負荷電流iaによる抵抗値Roでの電圧降下の最大値Eam
【数8】
に等しいことから、完全共振時におけるインバータの動作電圧Edが求められる。
【0037】
また、数式4に示す動作電圧の最大値Eam
【数9】
から、過不足リアクタンス降下kcXcoがあるときのインバータの直流動作電圧が求められる。
【0038】
次に、本発明による直列共振制御電源は、三相三線式回路の三相システムに対しても容易に構成制御することができる。
【0039】
図6は、抵抗とインダクタの直列回路の三相スター結線負荷に対して、直列に共振用キャパシタを接続した三相回路に対する三相電圧形インバータを用いた直列共振制御電源を示している。
【0040】
同図は、負荷回路に直列キャパシタを接続した回路の尖鋭度Qが高いときの制御システムを示しており、各相電流の大きさ(実効値)が各相の基準値と一致するように電圧形インバータをPWM制御することにより、インバータの動作電圧を低減させるとともに、共振回路定数に多少の変動があっても相電流毎の電圧制御がかけられるため、三相回路定数に多少のばらつきがあっても設定した共振周波数ωoで制御システムを安定に動作させることができる。
【0041】
なお、三相回路においても負荷の尖鋭度Qが低いときは、交流電流波形は正弦波とはらないので、正弦波電流を流す必要がある場合は、各相電流の基準電流波形を正弦波として各相電流との瞬時値比較によりPWM制御をかけることで各相の回路定数のばらつきがあっても基準値一定の正弦は電流を得ることができる。
【0042】
図7は、電圧形インバータとして三相ブリッジ形インバータ回路を用いた場合で、線間電圧波形が120度幅の方形波電圧のとき最大の基本波電圧振幅が得られる。
【0043】
ここで、インバータの直流電圧をEdとすると、その基本波電圧の最大値Vmは、次式となる。
【数10】
【0044】
【0045】
この数式と数式9より過不足リアクタンス降下kcXcoがあるときの三相インバータの直流動作電圧Edが決まる。
【0046】
図8は、三相電圧形インバータを単相ブリッジ形電圧形インバータの出力に変圧器を介した出力を三組で構成したもので、主回路構成は複雑化するが変圧器を用いることにより負荷で必要とする電圧電流出力を容易に得ることができるとともに絶縁して各出力を得ることができる。
【0047】
ここで、ここで、インバータの直流電圧をEdとすると、その基本波電圧の最大値Vmは、数式7で与えられるので、変圧比NTの変圧器を介した出力電圧の相電圧の最大値は
【数12】
【0048】
これが数式9に示す過不足リアクタンス降下kcXcoがあるときの動作電圧の最大値に等しいいことから、インバータの直流動作電圧Ed/NTが求まる。
【発明の効果】
【0049】
以上、本発明の直列共振制御電源では、負荷インダクティブ成分による大きなリアクタンス降下の大半を直列挿入したキャパシタによるリアクタンス降下により相殺させる上で、特に先鋭度が高い場合でも共振周波数付近での動作の安定性を図りながら装置容量の低減することが期待できる。
【0050】
本発明の直列共振制御電源では、先鋭度が高い場合は、インバータの出力電圧が方形波であっても正弦波電流となるため、方形波電圧のパルス幅制御や直流電圧を制御する振幅制御システムを組むことで容易に構成することができる。
【0051】
なお、本発明の直列共振制御電源では、先鋭度が高くない場合においても、動作周波数が高い場合は、抵抗とインダクタの直列回路に、直列にキャパシタだけでなくインダクタも付加することにより、先鋭度を高くすることにより、直列共振回路によるフィルタ作用によって回路の共振周波数付近でインバータを働かせることにより、インバータの出力電圧の波形を多パルス制御することなく大きさ制御した正弦波状の負荷電流を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図2】直列共振キャパシタによる誘導性負荷共振回路
【
図3】共振過不足キャパシタ分離誘導性負荷共振回路
【
図6】三相電圧形インバータによる三相直列共振制御回路
【
図7】三相ブリッジ形インバータで構成する三相直列共振制御回路
【
図8】単相インバータと変圧器で構成した三相直列共振制御回路
【
図9】負荷電流瞬時値制御方式直列共振制御電源システム
【
図10】負荷電流実効値制御方式直列共振制御電源システム
【
図11】負荷電流実効値制御方式三相直列共振制御電源システム
【
図12】負荷電流瞬時値制御方式直列共振制御電源のシミュレーション回路
【
図13】負荷電流瞬時値制御方式直列共振制御電源の基本動作波形
【
図14】共振キャパシタ不足時の負荷電流瞬時値制御電源の制御動作波形
【
図15】負荷電流実効値制御方式直列共振制御電源のシミュレーション回路
【
図16】負荷電流実効値制御方式直列共振制御電源の基本動作波形
【
図17】高直流電圧時の負荷電流実効値制御方式電源の制御動作波形
【
図18】超過共振キャパシタ接続時の負荷電流実効値制御方式電源の制御動作波形
【
図19】不足共振キャパシタ接続時の負荷電流実効値制御方式電源の制御動作波形
【
図20】共振周波数不変回路定数変化時の負荷電流実効値制御方式電源の制御動作波形
【
図21】負荷電流実効値制御方式三相直列共振制御電源のシミュレーション回路
【
図22】負荷電流実効値制御方式三相直列共振制御電源の基本動作波形
【
図23】超過共振キャパシタ接続時の負荷電流実効値制御方式三相電源の制御動作波形
【
図24】超過共振キャパシタ1相接続時の負荷電流実効値制御方式三相電源の制御動作波形
【
図25】不足共振キャパシタ接続時の負荷電流実効値制御方式三相電源の制御動作波形
【
図26】不足共振キャパシタ1相接続時の負荷電流実効値制御方式三相電源の制御動作波形
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明による直列共振制御電源の単相システムおよび三相システムの主回路構成と制御システムを
図9、
図10および
図11に示す。
【0054】
図9および
図10は、抵抗とインダクタからなる直列負荷に対して直列にキャパシタを挿入して単相回路に対して、単相インバータで電流制御するシステムを示している。
【0055】
図9は、回路の先鋭度が低く、正弦波電流を流すことが必要な場合は、正弦波基準電流iarと負荷電流iaが一致するようにインバータを瞬時比較PWM制御することにより、必要な大きさの正弦波電流を流すことができる。
【0056】
これに対して、
図10は、回路の先鋭度が高い場合の制御システムを示しており、負荷電流の実効値Iarmsを検出してその大きさが一定の基準電流Iarと一致するように共振角周波数ωoで方形波電圧のパルス幅制御することにより出力電圧波形の基本波成分を制御することにより、インバータの動作電圧を抑えて安定に制御することができる。
【0057】
三相システムでは、これら単相システムと同様に、回路の先鋭度が低い場合は電流の瞬時波形制御手法を、回路の先鋭度が高い場合は負荷電流の実効値制御手法の構成により、装置容量の低減を図りながら必要な電流制御することができる。
【0058】
図11は、三相ンバータの出力に抵抗とインダクティブの直列負荷回路が三組スター結線された三相負荷に接続され、各相電流の実効値を検出して、三相電流基準と一致するように三相インバータの各相単位で方形波のパルス幅制御を行う構成となっている。
【0059】
各相電流が独立に制御されるため、三相負荷回路定数に多少のバラつきがあっても、各相毎に電流振幅制御がかけられるため、各相の過不足リアクタンスによる電圧降下の補償を含めて制御することができ、各相間での共振周波数のズレに対する問題を生じることなく安定に動作させることができる。
【0060】
この場合も、直列キャパシタを接続した交流負荷回路の先鋭度が低く、正弦波電流を流す必要がある場合は、電流基準波形を三相正弦波として三相負荷電流との瞬時波形比較により三相インバータをPWM制御する制御システムを構成することで容易に制御することができる。
【0061】
共振動作ができる付近の動作周波数でインバータを働かせるとき、単相システム、三相システムともに回路定数の変動を考慮して基準電流の大きさでの残存リアクタンス電圧降下と負荷抵抗での電圧降下より算出できる合成電圧以上の最大振幅値の電圧をインバータより出力する必要がある。
【0062】
この時のインバータの直流電圧Edあるいは変圧器を含む場合はインバータの直流電圧Edと変圧器の変圧比NTを設計基準とする必要がある。
【0063】
直列キャパシタンスを含む共振回路定数に変動がある場合には交流電圧値を高くすることが必要となるが、高くしすぎると出力電圧のパルス幅制御が狭くなるので、回路定数の許容変動幅をもとにインバータの動作電圧や変圧器を設計する必要がある。
【0064】
以下には、本発明の直列共振制御電源の実施例として、1)単相電流瞬時値制御方式による制御システム(
図9)、2)単相電流実効値制御方式による制御システム(
図10)および3)三相電流実効値制御方式による制御システム(
図11)に対する基本制御特性をシミュレーション解析結果より確認する。
【0065】
【表1】
表1には、以下に示す実施例でのシミュレーション解析で用いた抵抗とインダクティブの直列負荷回路の定数とリアクタンス降下を共振周波数1kHzで100%補償する直列共振キャパシタと±5%の変動がある直列キャパシタが接続された場合の容量性リアクタンスXcと誘導政リアクタンスXLoを示している。
【実施例0066】
図12は単相負荷瞬時電流制御による直列共振制御電源の制御システムのシミュレーション回路である。
【0067】
図13は、インバータの直流電圧28Vとし、共振周波数fo=1kHzの正弦波電流を基準量として検出した負荷電流との瞬時比較制御を行なった時の基本動作波形を示している。
【0068】
同図より、リアクタンス電圧降下とキャパシタンス電圧降下は逆相関係にあるため相殺されるので残存リアクタンス電圧降下は図に示すように小さくなるが、スイッチング制御波形を含む電圧波形がキャパシタCとインダクタLoでの電圧降下となり、抵抗負荷への電流は正弦波となっていることがわかる。
【0069】
このときの電流波実効値は200Aと設定した大きさの基準値に一致した正弦波電流が流れていることがわかる。
【0070】
図14は、インバータの直流電圧を33Vと高くし、直列キャパシタによるリアクタンスが5%大きいときの動作波形であり、残存リアクタンス電圧降下をインバータで補償できており、直列キャパシタンスが完全共振状態からずれていていても安定に動作できることがわかる。
そして、直列共振動作状態にあるため、インバータは抵抗負荷での電圧降下に見合った電圧を出力すれば良いため、22Vと非常に低い電圧で安定に制御できることが分かる。