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  • 特開-膜電極接合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087567
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】膜電極接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/23 20210101AFI20220606BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20220606BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20220606BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20220606BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20220606BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20220606BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20220606BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220606BHJP
【FI】
C25B9/10
H01M4/88 K
H01M8/1004
H01M4/90 Y
H01M4/92
C25B1/10
C25B13/08 302
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199560
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】520473889
【氏名又は名称】フェニックス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126620
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 豪
(72)【発明者】
【氏名】望月 慎介
【テーマコード(参考)】
4K021
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB10
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB53
5H018BB08
5H018EE03
5H018EE11
5H018EE16
5H018EE18
5H018HH08
5H018HH10
5H126BB06
5H126FF05
5H126GG11
5H126GG17
5H126GG19
5H126HH04
5H126JJ08
5H126JJ10
(57)【要約】
【課題】剥落が発生しづらい膜電極接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】高分子電解質膜に、第1温度の無機金属化合物の溶液を第1時間にわたって噴射する第1工程と、高分子電解質膜に、第2温度の純水を第2時間にわたって噴射する第2工程と、を有し、所定時間にわたって、第1工程と第2工程を交互に繰り返すことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜に、第1温度の無機金属化合物の溶液を第1時間にわたって噴射する第1工程と、
前記高分子電解質膜に、第2温度の純水を第2時間にわたって噴射する第2工程と、を有し、
所定時間にわたって、前記第1工程と前記第2工程を交互に繰り返すことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の温度及び前記第2の温度は、常温であることを特徴とする請求項1記載の膜電極接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1時間及び前記第2時間は、3分以上10分以下となる時間であることを特徴とする請求項1又は2記載の膜電極接合体の製造方法。
【請求項4】
前記所定時間は、12時間以上であることを特徴とする請求項3記載の膜電極接合体の製造方法。
【請求項5】
高分子電解質膜に、常温のヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物を第1時間にわたって噴射する第1工程と、
前記高分子電解質膜に、常温の純水を第2時間にわたって噴射する第2工程と、を有し、
前記第1時間及び前記第2時間は、3分以上7分以下となる時間であって、
15時間以上にわたって、前記第1工程と前記第2工程を交互に繰り返すことで、前記高分子電解質膜にPtを含侵させることを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電極接合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子電解質膜としてのイオン交換膜と一対の電極板を用いて、電解槽において水を電気分解することで水素ガスを発生させ、発生した水素ガスを種々の用途に利用するために送出する水素ガス発生装置が知られている(特許文献1を参照)。
また、水素ガス発生装置において生成する水素ガスの純度を高めるため、膜電極接合体をイオン交換膜として用いることもある。
【0003】
そして、膜電極接合体の製造方法としては、熱圧力法(ホットプレス)によってイオン交換膜に触媒電極層をコーティングする方法が知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-114462号公報
【特許文献2】特開2001-196070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の熱圧力法による膜電極接合体の製造方法にあっては、熱圧着でイオン交換膜に触媒電極層をコーティングしているため、膜電極接合体であるイオン交換膜を長時間にわたって使用するとコーティングが剥がれてしまう、すなわち剥落が発生してしまうという問題がある。よって、長時間にわたって使用をしても剥落が発生しづらい膜電極接合体が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、剥落が発生しづらい膜電極接合体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は次のように構成されている。
【0008】
(1)本発明は、高分子電解質膜に、第1温度の無機金属化合物の溶液を第1時間にわたって噴射する第1工程と、前記高分子電解質膜に、第2温度の純水を第2時間にわたって噴射する第2工程と、を有し、所定時間にわたって、前記第1工程と前記第2工程を交互に繰り返すことを特徴とする膜電極接合体の製造方法である。
【0009】
(2)また、本発明に係る膜電極接合体の製造方法は、前記第1の温度及び前記第2の温度は、常温であることを特徴とする。
【0010】
(3)また、本発明に係る膜電極接合体の製造方法は、前記第1時間及び前記第2時間は、3分以上10分以下となる時間であることを特徴とする。
【0011】
(4)また、本発明に係る膜電極接合体は、前記所定時間は、12時間以上であることを特徴とする。
【0012】
(5)また、本発明は高分子電解質膜に、常温のヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物を第1時間にわたって噴射する第1工程と、前記高分子電解質膜に、常温の純水を第2時間にわたって噴射する第2工程と、を有し、前記第1時間及び前記第2時間は、3分以上7分以下となる時間であって、15時間以上にわたって、前記第1工程と前記第2工程を交互に繰り返すことで、前記高分子電解質膜にPtを含侵させることを特徴とする膜電極接合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、剥落が発生しづらい膜電極接合体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】水素ガス発生装置を示す模式的な構成図である。
図2】純度高度化装置の模式的な側面図である。
図3】化学沈澱法によるコーティング方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の説明により、本発明がそれに限定されるものではなく、当業者にとって容易に実施できる程度の設計変更は本発明の技術的思想に属するものである。
【0016】
(水素ガス発生装置1の概要)
図1は、本発明の水素ガス発生装置1を示す模式的な構成図である。また、図2は、本発明の純度高度化装置40の模式的な側面図である。
なお、本明細書において、純度高度化装置40に設けられた各構成部品についての、前後(正面背面)、左右(側面)、上下(天面底面)の方向は、各構成部品を純度高度化装置40に設置した状態で純度高度化装置40を正面視したときの方向を示すものとする。
【0017】
水素ガス発生装置1は、その外観が略直方体形状の筐体(図示省略)により構成され、その筐体の内部に図1に示す各構成部品等が設置される。筐体の寸法は横250mm×奥行550mm×高さ500mm程度となっており、家庭内や各種施設において容易に設置することが可能な大きさとなっている。
【0018】
図1のように、水素ガス発生装置1は、電気分解をするための水を貯留する水タンク10を備える。注水口2から水タンク10に貯留された水は、循環ポンプ(図示省略)の作用によって第1送水管3を通りフィルター(図示省略)を経て電解槽20へ注水される。電解槽20は、イオン交換膜22(高分子電解質膜)と、イオン交換膜22の両面に一体的に接合される触媒電極層である陽極側触媒層21及び陰極側触媒層23と、イオン交換膜22を挟むように配置される一対の電極板である陽極電極板24及び陰極電極板26によって仕切られており、水タンク10から注水された水は陽極電極板24側の空間である酸素ガス発生空間20aに注水される。
【0019】
一対の電極板のうち、陽極電極板24は制御装置50の一部を構成するDC電源装置(図示省略)の+側と接続され、また陰極電極板26は-側と接続されている。両電極間に直流電圧を印加することで電気分解が行われ、陽極側では酸素ガスが発生し、陰極側では水素ガスが発生する。発生した酸素ガスと、電気分解で使用されなかった水は酸素ガス発生空間20aから第2送水管4を通って水タンク10に戻る。その後、水タンク10において気液分離され酸素ガスは大気に放出される。
【0020】
発生した水素ガスは、水素ガス発生空間20bに移動した少量の水と共に水素ガス発生空間20bから第1送出路5を通って気液分離装置30へ送出される。気液分離装置30では気液分離により水素ガスから水分が除去され、その後に水素ガスは第2送出路6を通って純度高度化装置40へ送出される。また、気液分離装置30において水が一定量以上になると弁(図示省略)が開放され、溜まった水がサイフォンの原理によって水タンク10に戻る。
【0021】
純度高度化装置40に送出された水素ガスは純度高度化装置40によって除湿が行われ、その後に水素ガスは第3送出路7を通って筐体の外に送出される。第3送出路7にチューブ等を接続することで、適宜に水素ガスを利用することが可能となる。
【0022】
なお、本実施形態の水素ガス発生装置1においては、水タンク10に戻った酸素ガスは酸素ガス送出路8を通って筐体の外部に送出されるため、酸素ガス送出路8にチューブ等を接続することで酸素ガスを適宜利用することが可能であり、酸素ガス発生装置としても機能することが可能となる。
【0023】
また、第3送出路7には圧力計60が接続されており、圧力計60の計測結果は筐体の外部から視認可能となっている。他にも、筐体には水素ガスの発生量を表示可能な表示機や水素ガス発生装置1のON/OFFスイッチ、内部冷却用のファン(いずれも図示省略)が設けられている。
水素ガス発生装置1の使用時においては、水素ガスの発生量は分間約330mlとなり、表示機においてリアルタイムに現在の分間発生量を確認するすることができる。また、水素ガスの発生圧力は150~300KPaとなり、圧力計60において確認することができる。
水素ガス発生装置1の使用後においては、第1送水管3と接続されている排水ドレン70を介して水タンク10に貯留されている水を排出することが可能となっている。
【0024】
(陽極側触媒層21、陰極側触媒層23)
図1に示すように、陽極側触媒層21及び陰極側触媒層23はイオン交換膜22の両面に一体となるように接合される触媒電極である。陽極電極板24及び陰極電極板26によって電解槽20は酸素ガス発生空間20aと水素ガス発生空間20bに仕切られており、陽極側触媒層21及び陽極電極板24側である酸素ガス発生空間20aが陽極側となり、陰極側触媒層23及び陰極電極板26側である水素ガス発生空間20bが陰極側となる。
【0025】
陽極側触媒層21及び陰極側触媒層23は白金族金属から成る触媒電極であり、本実施形態においては白金(Pt)が材料として用いられている。
なお、陽極電極板24及び陰極電極板26の材料には水を電気分解することができる範囲において種々の材料を用いることが可能であり、白金(Pt)及びイリジウム(Ir)の混合物を用いたり、白金族金属以外の材料を用いることも可能である。
【0026】
(イオン交換膜22)
イオン交換膜22は高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane)であって、本実施形態においてはフッ素樹脂系陽イオン交換膜となる。電気分解が行われる際にはイオン交換膜22が緻密な隔膜となり、生成されたHは陽極側からイオン交換膜22を通って陰極側へ移動し、陰極にて電子を得て水素となる。
【0027】
イオン交換膜22には、例えばデュポン社の「Nafion」等の市販品を用いることができる。また、フッ素樹脂系陽イオン交換膜に限られず、プロトン伝導性の高分子膜であれば適宜採用をすることが可能である。
そして、本実施形態におけるイオン交換膜22は後述する方法によって白金(Pt)がコーティングされることで膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)として構成されている。これにより、通常のイオン交換膜よりも水素ガスの生成及び耐久面において優れた効果が発揮されることになる。
【0028】
(純度高度化装置40)
図1に示すように、純度高度化装置40は第2送出路6と第3送出路7の間に設置され、第2送出路6を通って送出された水素ガスを除湿することで水素ガスの純度(濃度)を高めるための装置である。
図2に示すように、純度高度化装置40はその構成物品が本体部46とベース部45の2つに大きく分けられており、本体部46とベース部45は着脱が可能となっている。着脱構造については公知の方法を採用することが可能であり、嵌め込み構造やねじ込み構造、固定具を介しての着脱等を用いることができる。
【0029】
ベース部45は主に水素ガスの送出経路を形成する。
図2に示すように、ベース部45は上面を有する円筒形状をしており、その内部には内部経路44が設けられている。またベース部45の側面には、第2送出路6と内部経路44とを接続するための第1接続口41と、第3送出路7と内部経路44とを接続するための第2接続口42とが設けられている。そして、ベース部45の上面には、内部経路44と接続し、内部経路44と本体部46の内部空間とを空間的につなげるため第3接続口43が設けられている。
【0030】
内部経路44は、第2送出路6を通り第1接続口41を介して送出された水素ガスを、第2接続口42を介して第3送出路7へ送出するための送出経路である。経路の途中において上方に分岐する分岐経路が存在する。分岐経路と接続する第3接続口43を介してベース部45の外部と内部経路44とが空間的につながるため、内部経路44を通る水素ガスの一部がベース部45の外部に流出することになる。
本実施形態では、本体部46がベース部45の上面において第3接続口43を内部空間に収めるように取り付けられ、また本体部46の内部空間は閉じられているため、ベース部45の外部に流出する水素ガスは本体部46の内部に流出することになる。従って、内部経路44と本体部46の内部空間とは空間的につながることになる。
【0031】
本体部46は主に水素ガスを除湿するための機能を構成する。
図2に示すように、本体部46は底面を有する円筒形状をしており、底面には第3接続口43を通すことが可能な挿通孔(図示省略)が設けられている。挿通孔の大きさは第3接続口43の外径と略同一となっている。
一方、本体部46の上方は開放をしているが蓋部47を着脱が可能となっており、蓋部47が取り付けられることで閉じられる。従って、蓋部47を取り付けた状態で本体部46がベース部45に取り付けられた際には、本体部46の内部空間は、第3接続口43を介して内部経路44とつながるのみとなる。
なお、蓋部47の着脱構造については公知の方法を採用することが可能であり、嵌め込み構造やねじ込み構造、固定具を介しての着脱等を用いることができる。
【0032】
本体部46の内部には、水素ガスを除湿するための材料となる竹炭49が充填され、また竹炭49の上方には脱脂綿48aが設けられ、そして下方には脱脂綿48bが設けられている。
より具体的には、蓋部47を取り外し、本体部46の内部において、脱脂綿48bが本体部46の底面と接するように敷き詰め、脱脂綿48bの上に竹炭49を積み重ねる。そして、竹炭49の最上段の上に脱脂綿48aを敷き詰めることで、脱脂綿48a及び脱脂綿48bによって竹炭49は挟まれるようにして充填される。
【0033】
竹炭49は原材料となる竹を約600℃~800℃の温度で焼き上げられることによって炭化した炭化材であって、炭化した後に粉砕されたものが本体部46に充填される。竹炭49を充填することで、除湿効果及び脱臭効果が機能として発揮される。
【0034】
具体的には、内部経路44を通る水素ガスの一部は分岐経路から第3接続口43を介して本体部46の内部に送出される。送出された水素ガスは気液分離装置30にて気液分離されているが、微量の水分を含み高純度(高濃度)化の余地がある水素ガスである。
本体部46には竹炭49が充填されているため、その除湿効果によって本体部46の内部の空気中における水分が吸着される。すなわち、送出された水素ガスから更に水分が除湿されることになる。除湿された水素ガスは第3接続口43を介して再び内部経路44へ戻り、その後は第2接続口42を介して第3送出路7へ送出される。
【0035】
従って、単に気液分離されただけの水素ガスと比較してより高純度(高濃度)となった水素ガスを生成することが可能となる。一例として、単に気液分離されただけの水素ガスの水素純度が90%程度であったとき、純度高度化装置40によって除湿することで水素純度は99.9%程度まで高まる。そして、高純度(高濃度)となった水素ガスを筐体の外に送出することで、水素ガスの吸引や水素水の生成においてより効果的な結果を得ることが可能となる。
【0036】
また、脱臭効果によって水素ガスの脱臭も行われるため、外部に送出される水素ガスの臭いという面においても従来よりも好適な結果を得ることが可能となる。
【0037】
また、竹炭49の上方及び下方には脱脂綿48aと脱脂綿48bが設けられているため、竹炭49が内部経路44に移動するのを防ぐだけではなく、水分を吸着した竹炭49が乾燥することで水分が放出される際には脱脂綿48a及び脱脂綿48bによって吸水されるため、内部経路44等に水分が流入することが回避できる。
【0038】
なお、本体部46に充填する材料については竹炭49に限られず、除湿をすることが可能な材料を適宜採用することができる。
例えば、竹炭49の代わりに活性炭や備長炭等を採用することが考えられる。また、炭化材に限らず、種々の除湿剤を用いてもよい。
【0039】
なお、内部経路44を通る一部の水素ガスについて本体部46に送出されるような経路としたが、これに限られず、全ての水素ガスが必ず高純度化装置40を経由して送出されるようにしてもよい。
例えば、第1接続口41と第2接続口42が内部経路44を介して直通せず、第2送出路6を通り第1接続口41を介して送出された水素ガスは全て第3接続口43へ向かうような内部経路とすることが可能である。そして、本体部46に別途設けた接続口と第3送出路7を接続するで、高純度化装置40において高純度(高濃度)化した水素ガスを送出するようにしてもよい。
【0040】
(制御装置50)
制御装置50はDC電源装置と制御回路(図示省略)によって構成される。制御回路と接続されているON/OFFスイッチの操作に応じてDC電源装置から両電極間に直流電圧を印可する。
また、電解槽20に供給する電力は、水素ガス圧が一定となるように制御される。具体的には、陽極電極板24及び陰極電極板26の下部の導電帯に電力供給される規定値を下回った場合には負荷を上げ、規定値を上回った場合には負荷を下げるよう、DC電源装置の出力を比例制御する。
そして、水素ガス圧が限界値に達した場合には、非常停止するように制御する。
【0041】
なお、制御装置50において制御する内容はこれに限られず、水素ガス発生装置1に種々の公知のセンサを設け、水素ガス発生装置1の動作状態を監視することで例えば筐体内部の温度の上昇や水温の上昇等に基づいてアラームを発したり、異常の内容を外部に表示したりするように制御することも可能である。
【0042】
(イオン交換膜22のコーティング方法)
本実施形態におけるイオン交換膜22には触媒電極となる白金(Pt)がコーティングされており、膜電極接合体として構成される。
ここで、イオン交換膜に触媒電極となる素材をコーティングする方法としては「熱圧力法(ホットプレス)」が公知の技術となっているが、本実施形態におけるイオン交換膜22は熱圧力法とは異なる方法である「化学沈澱法」によってコーティングを行っている。以下に、化学沈澱法によるコーティング方法と、熱圧力法によってコーティングしたイオン交換膜や一般的なイオン交換膜との相違を示す。
【0043】
イオン交換膜22に白金(Pt)をコーティングするにあたり、HPtCl・6HO液(ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物)と純水を利用する。イオン交換膜22に対して所定温度のHPtCl・6HO液と純水を一定の時間間隔ごとに交互に噴射し、これを所定時間にわたって継続することで白金(Pt)が被膜として含侵されるまでコーティングする。
【0044】
より具体的には、図3に示すように、イオン交換膜を所定の容器80に入れる。材料タンク91には常温(ここでは、15℃~30℃)のHPtCl・6HO液が貯められている。また、純粋タンク92には常温(ここでは、15℃~30℃)の純水が貯められている
そして、第1ポンプ85の作用によってHPtCl・6HO液をイオン交換膜22に向けて5分間噴射する。次に、第2ポンプ86の作用によって純水をイオン交換膜22に向けて5分間噴射する。その後、更に第1ポンプ85の作用によってHPtCl・6HO液をイオン交換膜22に向けて5分間噴射する。このように、HPtCl・6HO液をイオン交換膜22に向けて噴射する工程と純水をイオン交換膜22に向けて噴射する工程とを5分間隔で交互に繰り返す。このHPtCl・6HO液又は純水を噴射する工程において、噴射のタイミングで排水口93から排水が行われることにより、噴射される液体の勢いも相まって容器80内における液体の循環が行われる。
その後、HPtCl・6HO液をイオン交換膜22に向けて噴射する工程と純水をイオン交換膜22に向けて噴射する工程が15時間にわたって継続して行われると、イオン交換膜22に白金(Pt)が被膜として含侵されることになる。
【0045】
なお、排水口93は別の容器80に接続されており、複数のイオン交換膜に対して同時にHPtCl・6HO液と純水の噴射を行えるようにしてよい。この場合においては、一の容器80の排水口93が他の容器80における注入口にチューブ等を介して接続されており、一の容器80に対して各ポンプの作用によってHPtCl・6HO液又は純水が噴射されると、そのときに一の容器80を満たしていたHPtCl・6HO液又は純水が排水口93から排水され、他の容器80へ移動することになる。そして、他の容器80へ移動したHPtCl・6HO液又は純水が他の容器80に入れられたイオン交換膜に噴射されることになる。
【0046】
以下の表1を参照しつつ、前述の条件である常温(15℃~30℃)のHPtCl・6HO液及び純水を5分間隔で噴射した場合のイオン交換膜22に対する白金(Pt)の付着率について説明する。
なお、噴射時間の合計とはHPtCl・6HO液を噴射した時間と純水を噴射した時間の合計のことを指し、例えば、噴射時間の合計が1時間ならば、HPtCl・6HO液の噴射と純水の噴射を交互に6回ずつ行ったことを表している。また、発明の効果を分かりやすく示すため、付着率(%)については厳密な値ではなく、大よその値としている。これらについては、表2及び表3においても同じである。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示すように、HPtCl・6HO液及び純水の噴射を開始してから3時間以下の状況では付着率は0%となっている。しかし、3.5時間が経過したところからイオン交換膜22に対する白金(Pt)の付着率が15%となり、付着し始めたことが分かる。
ここから5時間に達するまで0.5時間(30分)ごとに5%の付着率の向上が見られる。そして、開始から5時間が経過してから9時間に達するまで1時間ごとに10%の向上が見られ、9時間に達するころには付着率が70%に達する。その後は付着率の向上割合の低下が見られるものの、1時間ごとに付着率が5%ほど向上し、開始から15時間に達する時点において付着率が100%となり工程は終了となる。
【0049】
以下の表2を参照しつつ、前述の条件のうち、HPtCl・6HO液及び純水の噴射の間隔を変更した場合におけるイオン交換膜22に対する白金(Pt)の付着率について説明する。なお、温度については表1の場合と同じである。また比較対象として、表1と同じく噴射の間隔を5分とした場合についても同時に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示すように、HPtCl・6HO液及び純水の噴射の間隔を1分間隔にした場合には、開始から12時間が経過した時点では付着率は0%となっている。その後、開始から13時間に達することでようやく付着率が10%に到達する。更に噴射を続けて14時間に達しても付着率は1%しか向上せず、11%にとどまってしまう。また15時間に達しても付着率は13%にとどまってしまう。
従って、噴射の間隔を5分間隔よりも短い1分間隔の噴射とした場合では、5分間隔の場合と比較して、イオン交換膜22に対して白金(Pt)の付着まで多くの時間が必要となり、また付着がされても付着率の向上割合も著しく低い結果となってしまう。
具体的には、5分間隔の場合には開始から3.5時間経過することで付着が見られるのに対して、1分間隔では開始から13時間を要するため、9.5時間も多い時間が必要となる。そして、5分間隔の場合には付着が見られてから1時間あたり少なくとも5%の付着率の向上が見られるが、1分間隔の場合は1時間あたり1~2%の付着率の向上にとどまり、効率的な付着を行うことができないという結果となる。よって、化学沈澱法によるコーティングを実施するにあたり、HPtCl・6HO液及び純水の噴射の間隔を1分間隔のような短い間隔とすることでは効果を得づらいことが分かる。
【0052】
また、表2に示すように、HPtCl・6HO液及び純水の噴射の間隔を10分間隔にした場合には、開始から9時間が経過した時点では付着率は0%となっている。その後、開始から10時間に達することで付着率が15%に到達する。更に噴射を続けて11時間に達すると付着率は10%の向上が見られ25%となる。12時間に達すると付着率は25%の向上が見られ50%となる。このように、開始から10時間が経過してから12時間に達するまでに急激な付着率の向上が見られる。しかし、この後は付着率の低下が見られ、開始から13時間に達するころには付着率は42%に低下し、15時間に達することには付着率が40%となる。
従って、噴射の間隔を5分間隔よりも長い10分間隔の噴射とした場合では、5分間隔の場合と比較して、イオン交換膜22に対して白金(Pt)の付着まで多くの時間が必要となる。しかし、付着が見られてから一定の期間については急激に付着率が向上するため、その後の付着率の低下が見られるようになる前に噴射を終了すれば、白金(Pt)の付着について一定の効果が有ると言える。
具体的には、5分間隔の場合には開始から3.5時間経過することで付着が見られるのに対して、10分間隔では開始から10時間を要するため、6.5時間も多い時間が必要となる。しかし、5分間隔の場合には付着が見られてから1時間あたり少なくとも5%の付着率の向上が見られるのに対して、10分間隔の場合は一定の期間ではあるが1時間あたり10%以上の付着率の向上が見られる。よって、化学沈澱法によるコーティングを実施するにあたり、HPtCl・6HO液及び純水の噴射の間隔を10分間隔のような長い間隔とすると、5分間隔程の効果は得られないが、一定の効果があることが分かる。
【0053】
なお、表2においてHPtCl・6HO液及び純水の噴射の間隔を5分間隔にした場合の効果が最も高いことが示されているが、このような高い効果を得るための噴射の間隔は5分間に限られない。表における記載は省略しているが、噴射の間隔を3分間隔とした場合や7分間隔とした場合であっても、5分間隔にした場合と同様の効果を得られる。
すなわち、HPtCl・6HO液及び純水の噴射の間隔については、1分間隔を超える時間であり、かつ10分間隔を下回る時間となる範囲内において、5分間隔と前後する時間間隔であっても5分間隔にした場合と同様の効果を得られる場合がある。
【0054】
また、表2においてはHPtCl・6HO液及び純水の噴射の間隔を同じ時間間隔にして噴射を行った場合の結果を示しているが、噴射の間隔を同じ時間間隔にせずとも同様の結果を得ることができる。例えば、HPtCl・6HO液を6分噴射し、その後に純水を4分噴射するようにして、これを交互に繰り返すようにしてもよい。
【0055】
以下の表3を参照しつつ、前述の条件のうち、HPtCl・6HO液及び純水の温度を常温(15℃~30℃)の範囲外の温度に変更した場合におけるイオン交換膜22に対する白金(Pt)の付着率について説明する。表3においては、一例として温度が7℃の場合を示している。なお、噴射の間隔については表1の場合と同じである。また比較対象として、表1と同じく温度を常温(15℃~30℃)とした場合についても同時に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3に示すように、HPtCl・6HO液及び純水の温度を常温(15℃~30℃)の範囲外の温度にした場合には、開始から6時間が経過した時点では付着率は0%となっている。開始から7時間に達することでようやく付着率が10%に到達する。更に噴射を続けて8時間に達すると付着率は5%の向上が見られ15%となる。9時間に達すると付着率は10%の向上が見られ25%となる。そして10時間に達すると付着率は5%の向上が見られ30%となる。このように、開始から7時間が経過してから10時間に達するまで順調な付着率の向上が見られる。しかし、この後は付着率の低下と向上が見られ、開始から12時間に達するころには付着率は25%に低下するが、13時間に達することには付着率が40%となる。15時間に達するころには付着率は32%となっている。
従って、HPtCl・6HO液及び純水の温度を常温(15℃~30℃)の範囲外の温度にした場合では、常温の場合と比較して、イオン交換膜22に対して白金(Pt)の付着まで多くの時間が必要となり、また付着がされても付着率は30%程度にとどまるという結果となってしまう。
具体的には、常温の場合には開始から3.5時間経過することで付着が見られるのに対して、常温の範囲外の温度では開始から7時間を要するため、3.5時間も多い時間が必要となる。そして、常温の場合には付着が見られてから1時間あたり少なくとも5%の付着率の向上が継続的に見られるが、常温の範囲外の温度では付着率が30%に達するまでは1時間あたり少なくとも5%の付着率の向上が見られるものの、その後は付着率の低下と向上が見られ、継続的な付着率の向上が無く低い付着率にとどまり、効率的な付着を行うことができないという結果となる。よって、化学沈澱法によるコーティングを実施するにあたり、HPtCl・6HO液及び純水の温度を常温(15℃~30℃)の範囲外の温度することでは効果を得づらいことが分かる。
なお、HPtCl・6HO液及び純水の温度は同一である必要はなく、異なる温度であっても常温(15℃~30℃)であれば表3に示す結果を得ることができる。
【0058】
(化学沈澱法と熱圧力法の比較)
以下の表4及び表5を参照しつつ、化学沈澱法によって白金(Pt)をコーティングしたイオン交換膜22と熱圧力法によって白金(Pt)をコーティングしたイオン交換膜との性能を比較する。また、比較対象として一般的なイオン交換膜(白金(Pt)をコーティングしていないイオン交換膜)も加えている。
表4においては、電気分解を行った場合における、時間経過による電解効率の変化について示している。また、表5においては、電気分解を行った場合における、時間経過による水素純度の変化について示している。
なお、連続運転時間とは、水素ガス発生装置1を起動して陽極と陰極の両電極間に電圧を印加し続けている時間のことを指す。また表4の電解効率の欄における電解効率(%)及び表5の水素純度の欄における水素純度(%)については厳密な値ではなく、大よその値としている。
【0059】
【表4】
【0060】
表4に示すように、コーティングをしていない一般的なイオン交換膜では、連続運転時間が1時間に達した時点の電解効率は60%であり、その後に連続運転時間が6時間に達すると1時間のときの半分である30%まで低下してしまう。そして、連続運転時間が12時間に達すると焼け付いた状態となってしまい、通電せず電解効率は0%となってしまう。
これに対して、熱圧力法によって白金(Pt)をコーティングしたイオン交換膜では、連続運転時間が1時間に達した時点の電解効率は100%であり、連続運転時間が2日に達しても電解効率は100%のままであった。その後、連続運転時間が4日に達すると電解効率の低下が見られ、4日に達した時点で電解効率は90%となり、以降は連続運転時間の経過に伴って徐々に低下していき、連続運転時間が50日に達すると電解効率は開始時の半分以下となる45%まで低下していた。
これらから、イオン交換膜に白金(Pt)をコーティングすることで、運転の開始時から、コーティングをしていないイオン交換膜と比較して高い電解効率を発揮するだけでなく、長時間にわたって電気分解を行えることが分かる。
【0061】
ここで、化学沈澱法によって白金(Pt)をコーティングしたイオン交換膜22における電解効率を見ると、連続運転時間が1時間に達した時点の電解効率は100%となり熱圧力法による場合と同じであるが、熱圧力法の場合では電解効率の低下が見られた連続運転時間が4日に達した時点においても電解効率が100%で維持されているのが分かる。
熱圧力法の場合では4日以降から徐々に電解効率が低下してしまったのに対して、化学沈澱法では、その後に連続運転時間が40日に達しても電解効率は100%のままであった。そして、連続運転時間が50日に達すると電解効率の低下が見られたが、それでも電解効率は99%と高い数値であった。これは連続運転時間が50日に達すると電解効率が45%まで低下してしまった熱圧力法の場合と比較すると倍以上の高い数値となる。
これらから、イオン交換膜に白金(Pt)をコーティングした場合であっても、化学沈澱法によってコーティングをした場合と熱圧力法によってコーティングをした場合とで性能の違いが見られた。
具体的には、長時間の連続運転をしたときの電解効率の低下傾向に大きな差が見られ、化学沈澱法によってコーティングをした場合の方が長期にわたって高い電解効率を維持できることが分かる。
【0062】
【表5】
【0063】
表5に示すように、コーティングをしていない一般的なイオン交換膜では、連続運転時間にかかわらず水素純度は66.6%となる。
これに対して、熱圧力法によって白金(Pt)をコーティングしたイオン交換膜では、連続運転時間が1時間に達した時点の水素純度は99.9%であり、連続運転時間が1日に達しても水素純度は99.9%のままであった。その後、連続運転時間が2日に達すると水素純度の低下が見られ、2日に達した時点で水素純度は90%となり、以降は連続運転時間の経過に伴って徐々に低下していき、連続運転時間が40日に達すると水素純度はコーティングをしていない場合と同じ66.6%となった。なお、この66.6%という数値は正常に電気分解が行われた場合の数値であり、連続運転によってイオン交換膜が変形等した場合においてはこれよりも低い数値又は0となってしまう。
これらから、イオン交換膜に白金(Pt)をコーティングをすることで、運転の開始時から一定期間にわたって、コーティングをしていないイオン交換膜と比較して高純度(高濃度)の水素ガスを生成できることが分かる。
【0064】
ここで、化学沈澱法によって白金(Pt)をコーティングしたイオン交換膜22における電解効率を見ると、連続運転時間が1時間に達した時点の水素純度は99.9%となり熱圧力法による場合と同じであるが、熱圧力法の場合では水素純度の低下が見られた連続運転時間が2日に達した時点においても水素純度は99.9%で維持されているのが分かる。
熱圧力法の場合では4日以降から徐々に電解効率が低下してしまったのに対して、化学沈澱法では、その後に連続運転時間が50日に達しても水素純度は低下せず99.9%のままであった。
これらから、イオン交換膜に白金(Pt)をコーティングした場合であっても、化学沈澱法によってコーティングをした場合と熱圧力法によってコーティングをした場合とで性能の違いが見られた。
具体的には、長時間の連続運転をしたときの水素純度の低下傾向に大きな差が見られ、化学沈澱法によってコーティングをした場合の方が長期にわたって高い水素純度を維持できることが分かる。
【0065】
以上のように、化学沈澱法によってコーティングをした場合の方が熱圧力法によってコーティングをした場合よりも、連続運転時間が長時間になるほど性能に差が生じることが分かる。この理由として、長時間の使用に伴うコーティング素材である白金(Pt)の剥落が挙げられる。
具体的には、熱圧力法によってコーティングをした場合では、表5から分かるように水素純度の低下が見られる連続運転時間が2日に達した時期からコーティング素材の剥落が発生する。この後も連続運転時間が経過することによりコーティング素材の剥落も進むため、水素純度の低下のみならず電解効率の低下も進行する。これに対して学沈澱法によってコーティングをした場合では、コーティング素材の剥落がほとんど発生せず、表4から分かるように連続運転時間が50日に達した時期にて非常に僅かな剥落が発生する程度である。
従って、化学沈澱法によるコーティング方法ではイオン交換膜22に白金(Pt)が被膜としてイオン交換膜の芯まで含侵されるため、熱圧力法によるコーティング方法と比較して格段にコーティング素材の剥落が発生しにくいことが分かる。
なお、水素純度の低下や電解効率の低下はコーティング素材の剥落によって電極触媒に対する通電不良や不安定な通電による過剰な電力供給が発生するためであり、通電不良や過剰な電力供給が要因となり、イオン交換膜の組成の変化や溶解、変形が発生してしまうこともある。
【0066】
コーティング素材の剥落が発生しにくいことによる利点は上述のように電解効率の低下や水素純度の低下を防げることが挙げられるが、水素ガス発生装置1においてコーティングしたイオン交換膜を利用する場合には、剥落が発生することで剥がれてしまったコーティング素材が異物として水素ガスに混入することが防げるという点も挙げられる。
具体的には、水素ガス発生装置1によって生成された水素ガスは直接体内に吸引されたり、水素水の生成に利用されるため、長時間の水素ガス発生装置1の運転によってイオン交換膜にコーティングされた白金(Pt)が剥がれてしまい生成された水素ガスに混入してしまうと、その水素ガスを体内に吸引したり、その水素ガスから生成した水素水を飲むことで体内に白金(Pt)を取り込んでしまう恐れがある。よって、剥落が発生しにくい(化学沈澱法にあっては、ほとんど発生しない)ことは、水素ガスを利用するにあたって非常に重要となる。
そして、化学沈澱法をコーティング方法として利用することで、イオン交換膜に白金(Pt)をコーティングすることでコーティングしない場合よりも高い電解効率及び高純度(高濃度)の水素ガスを得つつ、かつ問題となる長時間の利用に伴う剥落の発生を防ぐことが可能となる。
【0067】
最後に、上述の実施の形態の変形例について説明する。
上述の実施の形態では、酸素ガス発生空間20aから水タンク10に戻る水及び気液分離装置30から水タンク10に戻る水は共に第2送水管4を通るようになっているが、これに限定されるものではなく、別々の送水管を通って水タンク10に戻るようにしてもよい。
また、排水ドレン70は第1送水管3と接続されているが、これに限定されるものではなく、水タンク10に専用の排水管を介して接続されるようにしてもよい。
【0068】
上述の実施の形態では、水素ガス発生装置1に、化学沈澱法によって白金(Pt)がコーティングされたイオン交換膜22と純度高度化装置40の両方を備えることで水素ガスの高純度(高濃度)化を実現しているが、これに限られるものではなく、水素ガス発生装置1に化学沈澱法によって白金(Pt)がコーティングされたイオン交換膜22のみを備えるようにしたり、水素ガス発生装置1に純度高度化装置40のみを備えるようにしたりしてもよい。どちらか一方であっても、従来の水素ガス発生装置よりも水素ガスの高純度(高濃度)化を実現することが可能となる。
なお、水素ガス発生装置1に純度高度化装置40のみを備える場合においては、陽極電極板24及び陰極電極板26をイオン交換膜22の両面に一体となるように配置することで触媒電極とすることができる。
【0069】
上述の実施の形態では、化学沈澱法をイオン交換膜に対して白金(Pt)のコーティングするために利用したが、化学沈澱法は他の用途にも利用することができる。
例えば、イオン交換膜に白金(Pt)とイリジウム(Ir)との混合物をコーティングするために利用することもできる。この場合には、水素ガス発生装置1におけるイオン交換膜22として利用することが考えられる。
他にも、高分子電解質膜に種々の触媒(金(Au)、銀(Ag)、等)をコーティングする際に、化学沈澱法を利用することができる。この場合には、水素ガス発生装置に利用する以外の他の用途において、コーティングした高分子電解質膜をMEAとして利用することが考えられる。例えば、燃料電池等である。このような場合においては、イオン交換膜に含侵させたい無機金属(金(Au)、銀(Ag)、等)を含有する溶液と純水を交互に噴射することになる。
【符号の説明】
【0070】
1 水素ガス発生装置
5 第1送出路
6 第2送出路
7 第3送出路
10 水タンク
20 電解槽
21 陽極側触媒層
22 イオン交換膜
23 陰極側触媒層
24 陽極電極板
25 陰極電極板
30 気液分離装置
40 純度高度化装置
50 制御装置
80 容器
85 第1ポンプ
86 第2ポンプ
91 材料タンク
92 純水タンク
93 排水口
図1
図2
図3