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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087574
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20220606BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220606BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220606BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20220606BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20220606BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220606BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220606BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
H01L29/78 618C
H01L29/78 616L
H01L29/78 618B
H01L29/78 612Z
H01L29/78 616V
H01L21/28 K
H01L21/28 301B
H01L29/44 P
H01L29/50 M
H01L21/28 301S
H01L27/32
H05B33/14 A
G09F9/30 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199568
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】花田 明紘
(72)【発明者】
【氏名】海東 拓生
【テーマコード(参考)】
3K107
4M104
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC36
3K107EE04
4M104AA03
4M104AA08
4M104AA09
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB13
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB17
4M104BB18
4M104CC01
4M104CC05
4M104DD77
4M104DD78
4M104DD83
4M104DD88
4M104EE03
4M104EE06
4M104EE12
4M104EE14
4M104EE17
4M104FF11
4M104GG09
4M104GG14
4M104HH20
5C094AA31
5C094BA03
5C094CA19
5C094DA13
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB12
5C094FB14
5F110AA04
5F110AA14
5F110BB01
5F110CC07
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD03
5F110DD04
5F110DD05
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE06
5F110EE14
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF09
5F110GG01
5F110GG22
5F110GG23
5F110GG26
5F110GG29
5F110GG30
5F110GG37
5F110HJ07
5F110HJ30
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK06
5F110HK21
5F110HK22
5F110HK42
5F110HM02
5F110HM04
5F110HM05
5F110HM13
5F110NN03
5F110NN05
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN27
5F110NN58
5F110NN71
5F110NN73
(57)【要約】
【課題】薄膜トランジスタの占有面積を抑えつつ表示装置の信頼性を向上させること。
【解決手段】各画素に薄膜トランジスタを有する表示装置であって、前記薄膜トランジスタは、酸化物半導体層と、ゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層を介して前記酸化物半導体層に重畳するゲート電極と、前記酸化物半導体層に接するソース電極と、前記酸化物半導体層に接するドレイン電極と、前記酸化物半導体層に接するとともに、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、前記酸化物半導体層を横切るように配置されたn(nは、自然数)個の金属層と、を有し、平面視において、前記酸化物半導体層は、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、(n+1)個のチャネル領域を有する。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各画素に薄膜トランジスタを有する表示装置であって、
前記薄膜トランジスタは、
酸化物半導体層と、
ゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層を介して前記酸化物半導体層に重畳するゲート電極と、
前記酸化物半導体層に接するソース電極と、
前記酸化物半導体層に接するドレイン電極と、
前記酸化物半導体層に接するとともに、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に前記酸化物半導体層を横切るように配置されたn(nは、自然数)個の金属層と、
を有し、
平面視において、前記酸化物半導体層は、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、(n+1)個のチャネル領域を有する、表示装置。
【請求項2】
前記nが1である場合、平面視において、前記酸化物半導体層は、前記ソース電極と前記金属層との間に第1チャネル領域を有し、前記ドレイン電極と前記金属層との間に第2チャネル領域を有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記nが2である場合、平面視において、前記酸化物半導体層は、前記ソース電極と第1金属層との間に第1チャネル領域を有し、前記ドレイン電極と第2金属層との間に第2チャネル領域を有し、前記第1金属層と前記第2金属層との間に第3チャネル領域を有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記金属層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同一の層に設けられている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記金属層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同一の金属材料で構成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記金属層は、電気的にフローティングである、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記(n+1)個のチャネル領域は、それぞれ前記n個の金属層に接する分離領域によって分離されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記金属層の材料は、チタン又はモリブデンを含む、請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、各画素に薄膜トランジスタを有する表示装置に関する。特に、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、モバイル端末等のディスプレイとして、液晶表示装置及び有機発光ダイオード(OLED)表示装置が一般的に使用されている。これらの表示装置は、表示部に複数の画素を有し、各画素の明状態及び暗状態の制御を薄膜トランジスタにより実行している。そのため、薄膜トランジスタに短絡等の欠陥が発生すると、その薄膜トランジスタを有する画素が常に明状態又は暗状態となり、画素として正常に機能しなくなるという問題がある。
【0003】
このような問題に対し、薄膜トランジスタに冗長性を与えることにより画素を正常に機能させる技術が開発されている。例えば、特許文献1には、ソースバスラインと画素電極との間に2つの薄膜トランジスタを直列に接続した画素構造が開示されている。この画素構造によれば、一方の薄膜トランジスタが短絡等により故障したとしても、他方の薄膜トランジスタが正常に動作すれば、画素として正常な動作を維持することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2834756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、従来の画素構造は、互いに独立して動作する複数の薄膜トランジスタを直列に接続することにより各画素に冗長性をもたせている。しかしながら、従来の画素構造は、各薄膜トランジスタの半導体層が互いに物理的に分離しているため、各画素における薄膜トランジスタの占有面積が大きい。したがって、従来の画素構造を採用した場合、画素の有効面積が狭くなり、画像表示の際の輝度が低下するという問題を有する。
【0006】
本発明の課題の一つは、薄膜トランジスタの占有面積を抑えつつ表示装置の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における表示装置は、各画素に薄膜トランジスタを有する表示装置であって、前記薄膜トランジスタは、酸化物半導体層と、ゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層を介して前記酸化物半導体層に重畳するゲート電極と、前記酸化物半導体層に接するソース電極と、前記酸化物半導体層に接するドレイン電極と、前記酸化物半導体層に接するとともに、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に前記酸化物半導体層を横切るように配置されたn(nは、自然数)個の金属層と、を有し、平面視において、前記酸化物半導体層は、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、(n+1)個のチャネル領域を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態の表示装置の構成を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態の表示装置における画素の回路構成を示す回路図である。
図3】本発明の第1実施形態の表示装置における表示部の構成を示す断面図である。
図4A】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
図4B】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの構成を示す平面図である。
図5A】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す断面図である。
図5B】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す平面図である。
図6A】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す断面図である。
図6B】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す平面図である。
図7A】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す断面図である。
図7B】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す平面図である。
図8A】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す断面図である。
図8B】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す平面図である。
図9A】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す断面図である。
図9B】本発明の第1実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す平面図である。
図10A】本発明の第2実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す平面図である。
図10B】本発明の第2実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタの製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができる。本発明は、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかしながら、図面は、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
本発明の実施形態の説明において、基板から発光素子に向かう方向を「上」とし、その逆の方向を「下」と定義する。ただし、「上に」又は「下に」という表現は、単に、各要素の上限関係を説明しているにすぎない。例えば、基板の上に発光素子が配置されるという表現は、基板と発光素子との間に他の部材が介在する場合も含む。さらに、「上に」又は「下に」という表現は、平面視において各要素が重畳する場合だけでなく、重畳しない場合をも含む。
【0011】
本発明の実施形態の説明において、既に説明した要素と同様の機能を備えた要素については、同一の符号又は同一の符号にアルファベット等の記号を付して、説明を省略することがある。
【0012】
本発明の実施形態の説明において、ある一つの膜に対してエッチング等の加工処理を施すことにより形成された複数の要素(element)は、それぞれ異なる機能又は役割を有する要素として記載される場合がある。これら複数の要素は、同一の層構造及び同一の材料で構成されたものである。したがって、ある一つの膜から形成された複数の要素は、「同一の層」に設けられた要素と呼ぶ場合がある。
【0013】
本発明の実施形態の説明において、「αはA、B又はCを含む」、「αはA、B及びCのいずれかを含む」、「αはA、B及びCからなる群から選択される一つを含む」といった表現は、特に明示が無い限り、αはA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0014】
本発明の実施形態の説明において、「表示装置」とは、画像を表示する装置を指す。すなわち、「表示装置」は、表示パネル又は表示モジュールだけでなく、表示パネル又は表示モジュールに他の光学部材(例えば、偏光部材、タッチパネルなど)を取り付けた装置も含む。
【0015】
<第1実施形態>
[表示装置100の構成]
図1は、本発明の第1実施形態の表示装置100の構成を示す平面図である。表示装置100は、表示部120、駆動回路部130及び端子部140を含む。表示部120、駆動回路部130及び端子部140は、基板110の上に設けられる。
【0016】
表示部120は、複数の画素200R、200G及び200Bを有する。画素200Rは、赤色に発光する画素に対応する。画素200Gは、緑色に発光する画素に対応する。画素200Bは、青色に発光する画素に対応する。表示部120は、複数の画素200R、200G及び200Bの発光及び非発光を制御することにより画像を表示する。本実施形態では、特にRGB各色を区別する必要がない場合は、単に画素200と記載する場合がある。各画素200の構成については後述する。
【0017】
駆動回路部130は、表示部120の各画素200を制御する。駆動回路部130は、例えば、ゲート線駆動回路などを含む。図1では図示を省略するが、駆動回路部130は、データ線駆動回路を含んでいてもよい。
【0018】
端子部140は、表示部120及び駆動回路部130に供給する信号を外部から受信する端子として機能する。端子部140は、複数の端子141を含む。。端子部140には、フレキシブルプリント回路基板150が接続され、複数の端子141はそれぞれ、フレキシブルプリント回路基板150側の対応する端子と接続される。本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板150の上に、ドライバICチップ160が設けられている。ただし、この例に限らず、ドライバICチップ160は、省略されてもよい。
【0019】
図1では、表示装置100の全体の構成を平面的に示しているが、表示部120と端子部140との間で、基板110を折り曲げられるようにしてもよい。この場合、基板110として、樹脂基板などの可撓性基板を用いればよい。このような構成とした場合、端子部140及びフレキシブルプリント回路基板150を表示装置100の裏面側に折り畳むことができ、表示装置100を小型化することができる。
【0020】
[画素回路300の構成]
図2は、本発明の第1実施形態の表示装置100における画素200の回路構成を示す回路図である。画素回路300は、選択トランジスタ310、駆動トランジスタ320、キャパシタ330及び発光素子340を含む。
【0021】
選択トランジスタ310は、ゲート線312及びデータ線314に接続される。具体的には、ゲート線312は、選択トランジスタ310のゲートに接続される。データ線314は、選択トランジスタ310のソースに接続される。選択トランジスタ310は、画素回路300にデータ信号(映像信号Vs)を入力するか否かを選択するためのスイッチとして機能する。選択トランジスタ310のドレインは、駆動トランジスタ320のゲート及びキャパシタ330に接続される。
【0022】
駆動トランジスタ320は、アノード電源線322、発光素子340及びキャパシタ330に接続される。具体的には、アノード電源線322は、駆動トランジスタ320のドレインに接続される。発光素子340は、駆動トランジスタ320のソースに接続される。キャパシタ330は、駆動トランジスタ320のゲートとソースとの間に接続される。駆動トランジスタ320は、発光素子340に流れる電流量を制御するためのバルブとして機能する。アノード電源線322には、高電位の電源電圧(PVDD)が印加される。
【0023】
本実施形態において、選択トランジスタ310及び駆動トランジスタ320は、実質的には、2つの薄膜トランジスタが直列に接続された構造を有する。その理由については、後述する。
【0024】
キャパシタ330は、選択トランジスタ310を経由して入力されたデータ信号を保持する役割を有する。キャパシタ330に保持されたデータ信号に対応する電圧が駆動トランジスタ320のゲートに印加される。これにより、駆動トランジスタ320を経由して流れる電流量がデータ信号に応じて制御される。
【0025】
発光素子340は、駆動トランジスタ320とカソード電源線324との間に接続される。具体的には、発光素子340のアノードは、駆動トランジスタ320のソースに接続される。すなわち、発光素子340のアノードは、駆動トランジスタ320を介してアノード電源線322に接続される。発光素子340のカソードは、カソード電源線324に接続される。カソード電源線324には、低電位の電源電圧(PVSS)が印加される。
【0026】
画素回路300において、選択トランジスタ310がオン状態になると、データ線314からデータ信号が入力される。入力されたデータ信号に対応する電圧は、キャパシタ330によって保持される。その後、発光期間において、キャパシタ330に保持された電圧により駆動トランジスタ320のゲートが制御され、駆動トランジスタ320を介してデータ信号に応じた電流が流れる。発光素子340に電流が流れると、発光素子340は、電流量に応じた輝度で発光する。
【0027】
[画素200の構成]
図3は、本発明の第1実施形態の表示装置100における表示部120の構成を示す断面図である。具体的には、図3に示す断面構造は、図1に示した表示部120を一点鎖線A-Aで切断した断面図に対応する。各画素200R、200G及び200Bの基本的な構造は同じであるため、図3では緑色に発光する画素200Gに着目して説明する。
【0028】
図3に示すように、基板110の上には、駆動トランジスタ320が設けられている。図3には図示を省略しているが、基板110の上には、選択トランジスタ310及びキャパシタ330などの画素回路300を構成する各要素も設けられている。
【0029】
駆動トランジスタ320は、樹脂層を含む絶縁層121で覆われている。絶縁層121に含まれる樹脂層は、駆動トランジスタ320などに起因する起伏を平坦化する役割を有する。絶縁層121は、無機絶縁層と樹脂層との積層構造を有していてもよい。無機絶縁層の材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンなどのシリコン系無機材料を用いることができる。樹脂層の材料としては、例えば、アクリル又はポリイミドなどの感光性の有機材料を用いることができる。
【0030】
絶縁層121の上には、アノード電極122が設けられている。アノード電極122は、発光素子340のアノードであると共に、画素200の画素電極としても機能する。アノード電極122は、絶縁層121に設けられたコンタクトホールを介して駆動トランジスタ320のソース電極と電気的に接続される。本実施形態において、アノード電極122は、透明導電層で構成される。ただし、この例に限らず、アノード電極122は、金属層で構成されてもよいし、透明導電層と金属層との積層構造を有していてもよい。例えば、アノード電極122として、金属酸化物を含む透明導電層を用いることができる。本実施形態では、アノード電極122として、銀を含む金属層とITO(Indium Tin Oxide)で構成される透明導電層とを積層した導電層を用いる。この場合、後述する有機層124に接する側の導電層を透明導電層とする。
【0031】
アノード電極122の上には、隔壁層123が設けられている。隔壁層123は、アノード電極122の表面の一部が露出されるように開口部を有する。つまり、隔壁層123は、アノード電極122の端部を覆うように設けられている。隔壁層123の開口部の内壁は、緩やかなテーパー形状であることが好ましい。隔壁層123の開口部の内壁をテーパー形状とすることにより、アノード電極122の上に形成される有機層124又はカソード電極125のカバレッジ不良を低減することができる。隔壁層123は、バンクまたはリブと呼ばれる場合もある。
【0032】
アノード電極122上には、少なくとも正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機層124が設けられている。画素200Gの場合、有機層124の発光層は、緑色に発光する有機材料で構成される。同様に、画素200R及び画素200Bの場合、それぞれ有機層124の発光層は、赤色に発光する有機材料及び青色に発光する有機材料で構成される。有機層124に含まれる正孔輸送層及び電子輸送層は、各画素200に跨るように設けられてもよい。また、有機層124には、電子注入層、電子ブロッキング層、正孔注入層又は正孔ブロッキング層などの機能層がさらに含まれてもよい。
【0033】
有機層124の上には、カソード電極125が設けられる。カソード電極125は、各画素200に跨るように設けられてもよい。本実施形態において、カソード電極125は、金属層で構成される。ただし、この例に限らず、カソード電極125は、透明導電層で構成されてもよいし、透明導電層と金属層との積層構造を有していてもよい。例えば、カソード電極125として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む金属層を用いることができる。本実施形態では、カソード電極125として、MgAg合金(マグネシウム及び銀を含む合金)で構成される金属層を用いる。この場合、カソード電極125の膜厚は、可視光を透過し得る程度とする。
【0034】
カソード電極125の上には、封止層126が設けられている。封止層126は、例えば、無機絶縁層126a、有機絶縁層126b及び無機絶縁層126cを積層した構造を有する。無機絶縁層126a及び無機絶縁層126cの材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンなどのシリコン系無機材料を用いることができる。無機絶縁層126a及び無機絶縁層126cは、外部からの水分の侵入を防ぐ役割を有する。そのため、無機絶縁層126a及び無機絶縁層126cとしては、膜質が緻密な絶縁層を用いることが好ましい。有機絶縁層126bの材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂又はシロキサン樹脂などの樹脂材料を用いることができる。
【0035】
本実施形態では、封止層126の上には、接着層127を介してカバーガラス128が設けられている。図3では図示を省略するが、カバーガラス128の上方、又は、下方に、さらに偏光板又はタッチセンサなどの光学部材が設けられてもよい。
【0036】
[薄膜トランジスタ10の構成]
図4Aは、本発明の第1実施形態の表示装置100に用いる薄膜トランジスタ10の構成を示す断面図である。図4Bは、本発明の第1実施形態の表示装置100に用いる薄膜トランジスタ10の構成を示す平面図である。図4Bでは、説明の便宜上、図4Aに示した絶縁層17及び18の図示を省略する。薄膜トランジスタ10は、図2に示した選択トランジスタ310及び駆動トランジスタ320の少なくとも一方に用いることができる。図4A及び図4Bに示す薄膜トランジスタ10は、ボトムゲート型トランジスタの一例である。
【0037】
絶縁表面を有する基板110の上には、ゲート電極11が設けられる。基板110として、例えば、ガラス、石英又はサファイアなどで構成される透光性基板を用いることができる。ただし、基板110として、シリコン又はセラミックスなどで構成される非透光性基板を用いてもよい。さらに、基板110として、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂又はフッ素樹脂などの樹脂材料で構成される可撓性基板を用いてもよい。
【0038】
ゲート電極11は、例えば、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、バナジウム、アルミニウム、銅又はニオブ等の金属材料、又は、これらの金属を含む合金材料で構成される。ゲート電極11は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0039】
ゲート電極11は、絶縁層12及び13で覆われる。本実施形態において、絶縁層12は、窒化シリコン層である。絶縁層13は、酸化シリコン層である。本実施形態では、絶縁層12及び13を積層して、ゲート絶縁層として機能させる。ただし、この例に限らず、ゲート絶縁層として、絶縁層13を単層で用いてもよい。
【0040】
絶縁層13の上には、酸化物半導体層30が設けられる。酸化物半導体層30の材料として、例えば、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)、酸化インジウムスズ亜鉛(ITZO)、酸化インジウムアルミニウム亜鉛(IAZO)、または酸化亜鉛(ZnO)などを用いることができる。また、酸化物半導体層30は、単層であってもよく、積層であってもよい。本実施形態では、酸化物半導体層30として、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)を用いる。そのため、本実施形態の薄膜トランジスタ10は、多数キャリアを電子とするNチャネル型トランジスタとして動作する。酸化物半導体層30の構造の詳細については、後述する。
【0041】
酸化物半導体層30の上には、酸化物半導体層30の端部に接するようにソース電極14及びドレイン電極15が設けられる。具体的には、断面視において、酸化物半導体層30の第1端部に接するようにソース電極14が設けられ、第1端部とは反対側の第2端部に接するようにドレイン電極15が設けられる。本実施形態では、酸化物半導体層30の端部において、3つの辺を覆うようにソース電極14及びドレイン電極15を設けているが、この例に限られるものではない。例えば、ソース電極14及びドレイン電極15は、酸化物半導体層30を横切るように(すなわち、2辺を覆うように)設けられてもよい。
【0042】
ソース電極14及びドレイン電極15の材料としては、チタン、アルミニウム、タンタル、タングステン、モリブデン、バナジウム、アルミニウム、銅又はニオブ等の金属材料、又は、これらの金属を含む合金材料で構成される。ソース電極14及びドレイン電極15は、単層構造であっても積層構造であってもよい。本実施形態では、ソース電極14及びドレイン電極15として、チタン/アルミニウム/チタンの三層構造を有する金属層を用いる。
【0043】
本実施形態では、ソース電極14及びドレイン電極15と同時に金属層16が形成される。つまり、金属層16は、ソース電極14及びドレイン電極15と同一の層に設けられる。したがって、本実施形態における金属層16は、ソース電極14及びドレイン電極15と同様に、チタン/アルミニウム/チタンの三層構造を有する。つまり、金属層16は、最下層のチタン層が酸化物半導体層30に接する構成となっている。ただし、この例に限らず、金属層16は、ソース電極14及びドレイン電極15とは別の金属材料で形成されてもよい。後述するように、酸化物半導体層30の内部を水素が移動することを防ぐためには、金属層16の材料として、チタン又はモリブデンのように、水素を吸収しやすい金属材料を用いることが好ましい。
【0044】
金属層16は、酸化物半導体層30に接するとともに、ソース電極14及びドレイン電極15から離間して配置される。具体的には、本実施形態では、金属層16が、ソース電極14及びドレイン電極15と略等しい距離で離間するように配置される。ただし、この例に限らず、金属層16は、ソース電極14又はドレイン電極15のいずれかに近い方に寄っていてもよい。
【0045】
図4Bに示すように、金属層16は、酸化物半導体層30を横切るように配置される。ここで、酸化物半導体層30の長手方向(ソース電極14とドレイン電極15とを結ぶ方向)をD1方向とすると、金属層16は、D1方向と交差するD2方向に長手方向を有する。つまり、金属層16は、D2方向に沿って酸化物半導体層30を横切るように配置される。
【0046】
本実施形態において、金属層16は、電気的にフローティングである。ただし、この例に限らず、金属層16は、一定の電位に固定されていてもよい。金属層16の幅には、特に制限はない。本実施形態において、金属層16の幅は、1.0μm以上3.0μm以下である。ただし、金属層16の幅の下限は、露光可能な最小限の幅であってもよい。
【0047】
ソース電極14、ドレイン電極15及び金属層16の上には、絶縁層17及び18が設けられる。絶縁層17及び18は、それぞれパッシベーション層として機能する。本実施形態では、絶縁層17として、酸化シリコン層を用いる。また、絶縁層18として、窒化シリコン層を用いる。絶縁層17は、パッシベーション層としての役割に加えて、酸化物半導体層30に酸素を供給する役割を有する。そのため、絶縁層17の材料としては、酸化シリコン、酸窒化シリコンなどの比較的酸素の含有量が多い材料を用いることが好ましい。これに対し、絶縁層18は、パッシベーション層としての役割が主である。そのため、絶縁層18は、膜質が緻密な窒化シリコン層を用いることが好ましい。
【0048】
[酸化物半導体層30の構成]
本実施形態の薄膜トランジスタ10は、酸化物半導体層30が、金属層16によって複数のチャネル領域に分割される。具体的には、本実施形態の酸化物半導体層30は、1つの金属層16によって、2つのチャネル領域(チャネル領域31及びチャネル領域32)に分割される。チャネル領域31とチャネル領域32との間には、分離領域33が設けられる。分離領域33は、金属層16が接する領域に対応する。すなわち、分離領域33は、図4Bに示したD2方向に沿って酸化物半導体層30を横切るように配置される。したがって、チャネル領域31とチャネル領域32とは、分離領域33により互いに分離される。
【0049】
本実施形態の酸化物半導体層30は、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)であるため、層内部から外部へと酸素が脱離すると、酸素が脱離した部分の電気抵抗が低下するという物性を有する。したがって、酸化物半導体層30に対して他の金属層が接すると、他の金属層の酸化に伴い、酸化物半導体層30の内部から酸素が脱離するという現象が起こる。すなわち、本実施形態の酸化物半導体層30は、他の金属層が接する部分及びその近傍の電気抵抗が低下するという物性を有する。したがって、本実施形態の酸化物半導体層30には、ソース電極14、ドレイン電極15及び金属層16の影響により、チャネル領域31及び32よりも電気抵抗の低い領域が複数形成される。
【0050】
具体的には、図4Aに示すように、酸化物半導体層30のうち、ソース電極14及びドレイン電極15と接する領域には、それぞれソース領域34及びドレイン領域35が形成される。また、金属層16と接する領域には、前述の分離領域33が形成される。この場合、分離領域33、ソース領域34及びドレイン領域35は、いずれも実質的に同一の電気抵抗(電気伝導度)を有する。
【0051】
また、酸化物半導体層30のうち、分離領域33、ソース領域34及びドレイン領域35に隣接する領域には、それぞれ低抵抗領域36~39が形成される。低抵抗領域36~39は、ソース電極14、ドレイン電極15及び金属層16の影響により酸素が脱離した領域である。低抵抗領域36~39は、いずれもチャネル領域31及び32よりも低い電気抵抗を有すると共に、分離領域33、ソース領域34及びドレイン領域35よりも高い電気抵抗を有する。低抵抗領域36~39は、ドレイン領域35の近傍における電界集中を緩和するバッファ領域として機能する。このようなバッファ領域は、ホットキャリア対策として有効である。
【0052】
前述のとおり、分離領域33、ソース領域34、ドレイン領域35、並びに、低抵抗領域36~39は、酸化物半導体層30の内部から酸素が脱離することにより形成される。そのため、これらの領域の酸素濃度は、チャネル領域31及び32の酸素濃度よりも低い。また、低抵抗領域36~39の酸素濃度は、分離領域33、ソース領域34及びドレイン領域35よりも高く、チャネル領域31及び32よりも低い。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の薄膜トランジスタ10は、1つの酸化物半導体層30の内部に2つのチャネル領域31及び32を有する。ここで、ゲート電極11は、絶縁層12及び13を介して、チャネル領域31及び32の両方に重畳する。したがって、本実施形態の薄膜トランジスタ10は、実質的に、2つの薄膜トランジスタを直列に接続した構造を有する。この場合、分離領域33は、薄膜トランジスタ10-1のドレイン領域として機能し、薄膜トランジスタ10-2のソース領域として機能する。
【0054】
本実施形態の薄膜トランジスタ10は、薄膜トランジスタ10-1と薄膜トランジスタ10-2とが直列に接続された構造を有するため、一方の薄膜トランジスタに短絡等の異常が発生しても、他方の薄膜トランジスタが正常に動作していれば、全体としてスイッチング素子としての機能を維持することができる。つまり、本実施形態の薄膜トランジスタ10は、薄膜トランジスタ10-1及び薄膜トランジスタ10-2の少なくともいずれか1つが正常に動作すればよい。このように、薄膜トランジスタ10は、冗長性を有している。
【0055】
薄膜トランジスタ10-1又は10-2の動作に異常が生じる原因としては、例えば、チャネル領域31又は32が、水素の影響により、薄膜トランジスタ10-1又は10-2がデプレッション型の動作に変化してしまうことが挙げられる。つまり、チャネル領域31又は32に水素が混入することにより、薄膜トランジスタ10-1又は10-2が常時オン状態になってしまう場合がある。
【0056】
前述のような水素の混入は、例えば、水素を含む不純物がチャネル領域31又は32に対して付着又は混入した場合に起こり得る。不純物としては、例えば、絶縁層12、絶縁層13、絶縁層17又は絶縁層18の形成に起因するパーティクルなどが考えられる。これらの絶縁層(酸化シリコン層又は窒化シリコン層)は、形成時の原料ガスに水素が含まれている。したがって、これらの絶縁層に起因するパーティクルがチャネル領域31又は32に対して付着又は混入すると、パーティクルが水素の供給源となってしまう。
【0057】
しかしながら、本実施形態では、仮に、薄膜トランジスタ10-2のチャネル領域32が水素の影響によりデプレッション化してしまっても、水素の拡散が分離領域33で止まるため、隣接するチャネル領域31には影響を与えない。つまり、分離領域33が、チャネル領域31とチャネル領域32との間を水素が移動することに関して障壁として機能する。さらに、金属層16の材料として、チタン、モリブデンなどの水素を吸収し得る金属材料を用いるため、金属層16も水素の移動を妨げる障壁として機能する。
【0058】
したがって、薄膜トランジスタ10-1及び10-2は、相互に補完して動作することが可能であり、薄膜トランジスタ10の動作に冗長性を与えている。また、本実施形態によれば、酸化物半導体層30を物理的に分離させる必要はなく、単に金属層16を設けるだけで済むため、薄膜トランジスタ10のサイズを小型化することができる。このように、本実施形態によれば、薄膜トランジスタ10の占有面積を抑えつつ表示装置100の信頼性を向上させることができる。
【0059】
[薄膜トランジスタ10の製造方法]
図5A図6A図7A図8A及び図9Aは、本発明の第1実施形態の表示装置100に用いる薄膜トランジスタ10の製造方法を示す断面図である。図5B図6B図7B図8B及び図9Bは、本発明の第1実施形態の表示装置100に用いる薄膜トランジスタ10の製造方法を示す平面図である。
【0060】
まず、図5A及び図5Bに示すように、基板110の上にゲート電極11を形成する。具体的には、ゲート電極11を構成する金属材料(本実施形態では、金属材料としてアルミニウムとチタン)を含む金属層を形成する。その後、アルミニウムとチタンが積層された金属層に対してエッチング加工を行ってゲート電極11を形成する。
【0061】
次に、図6A及び図6Bに示すように、ゲート電極11を覆うように、絶縁層12及び13を形成する。本実施形態では、まず、絶縁層12として、窒化シリコン層を形成する。その後、絶縁層12の上に、絶縁層13として酸化シリコン層を形成する。絶縁層13を形成した後、絶縁層13の上に酸化物半導体層30を形成する。本実施形態では、まず、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)で構成される酸化物半導体層を40nm以上100nm以下の厚さで形成する。その後、酸化物半導体層に対してエッチング加工を行って酸化物半導体層30を形成する。
【0062】
次に、図7A及び図7Bに示すように、酸化物半導体層30を覆うように、金属層20を形成する。金属層20は、下層から順に、チタン層、アルミニウム層及びチタン層を積層して形成する。本実施形態では、最下層にチタン層を設けることにより、酸化物半導体層30とアルミニウム層とが直接接触しないようにする。これにより、アルミニウム層の酸化に伴う酸化物半導体層30からの過剰な酸素の脱離を防ぐことができる。また、前述のように、チタン層が酸化物半導体層30に接することにより、隣接するチャネル領域間を水素が移動することを防ぐことができる。
【0063】
次に、図8A及び図8Bに示すように、金属層20に対してエッチング加工を行ってソース電極14、ドレイン電極15及び金属層16を形成する。このとき、図8Bに示すように、金属層16は、酸化物半導体層30をD2方向に横切るように形成される。本実施形態では、ソース電極14及びドレイン電極15からの距離が略等しくなるように金属層16を形成する。
【0064】
次に、図9A及び図9Bに示すようにソース電極14、ドレイン電極15、金属層16及び酸化物半導体層30を覆うように、絶縁層17を形成する。本実施形態では、絶縁層17として、酸化シリコン層を100nm以上300nm以下の厚さで形成する。本実施形態では、絶縁層17の形成プロセスの最中に、酸化物半導体層30に、チャネル領域31及び32、分離領域33、ソース領域34、ドレイン領域35、並びに、低抵抗領域36~39が形成される。絶縁層17を形成した後、絶縁層17に対してベークプロセスを行ってもよい。
【0065】
上述した絶縁層17の形成プロセス及び絶縁層17に対するベークプロセスでは、チャネル領域31及び32に対し、絶縁層17である酸化シリコン層から酸素が供給される。これにより、チャネル領域31及び32が正常にチャネルとして機能するように、チャネル領域31及び32の電気抵抗を調整することができる。絶縁層17から放出される酸素は、分離領域33及び低抵抗領域36~39にも供給される。しかしながら、分離領域33及び低抵抗領域36~39からは金属層16の影響により酸素が脱離する。したがって、分離領域33及び低抵抗領域36~39の電気抵抗は、チャネル領域31及32の電気抵抗よりも低くなる。
【0066】
図9A及び図9Bのプロセスを完了したら、絶縁層17の上に絶縁層18を形成する。本実施形態では、絶縁層18として、窒化シリコン層を100nm以上200nm以下の厚さで形成する。これにより、図4A及び図4Bを用いて説明した構造の薄膜トランジスタ10が完成する。
【0067】
(変形例1)
本実施形態では、金属層16の材料として、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、バナジウム又はニオブ等の金属材料、又は、これらの金属を含む合金材料を例示した。しかしながら、水素の移動を妨げる効果をより高めるために、金属層16の材料として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含んでもよい。例えば、マグネシウム、カルシウム、ランタン等の金属材料、又は、これらの金属を含む合金材料を用いてもよい。この場合、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む金属層を、より安定なチタン、モリブデン等の金属層で挟んだ積層構造としてもよい。
【0068】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の薄膜トランジスタ10a及び10bを備えた表示装置について説明する。具体的には、本実施形態の薄膜トランジスタ10a及び10bは、ソース電極とドレイン電極との間に、酸化物半導体層30に接する複数の金属層を有する。本実施形態では、主として、第1実施形態と相違する部分について説明する。本実施形態の説明に用いる図面について、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
図10Aは、本発明の第2実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタ10aの構成を示す平面図である。図10Bは、本発明の第2実施形態の表示装置に用いる薄膜トランジスタ10bの構成を示す平面図である。本実施形態では、説明の便宜上、第1実施形態で説明した低抵抗領域の図示を省略する。
【0070】
図10Aに示す薄膜トランジスタ10aは、ソース電極14とドレイン電極15との間に、2つの金属層41a及び41bを有する。金属層41a及び41bの材料については、第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。2つの金属層41a及び41bを配置することにより、酸化物半導体層30には、3つのチャネル領域51a、51b及び51cが形成される。すなわち、薄膜トランジスタ10aは、実質的に、3つの薄膜トランジスタ10a-1、10a-2及び10a-3を直列に接続した構造を有する。この場合、薄膜トランジスタ10aは、3つの薄膜トランジスタ10a-1、10a-2及び10a-3のうち、いずれか少なくとも1つが正常に動作すれば、スイッチング素子としての機能を維持することができる。
【0071】
図10Bに示す薄膜トランジスタ10bは、ソース電極14とドレイン電極15との間に、3つの金属層42a、42b及び42cを有する。金属層42a、42b及び42cの材料については、第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。3つの金属層42a、42b及び42cを配置することにより、酸化物半導体層30には、4つのチャネル領域52a、52b、52c及び52dが形成される。すなわち、薄膜トランジスタ10bは、実質的に、4つの薄膜トランジスタ10b-1、10b-2、10b-3及び10b-4を直列に接続した構造を有する。この場合、薄膜トランジスタ10bは、4つの薄膜トランジスタ10b-1、10b-2、10b-3及び10b-4のうち、いずれか少なくとも1つが正常に動作すれば、スイッチング素子としての機能を維持することができる。
【0072】
以上のとおり、酸化物半導体層30に重ねて配置する金属層の数を増やせば、その分だけチャネル領域の数も増える。具体的には、n個(nは、自然数)の金属層を酸化物半導体層30に重ねて配置することにより、平面視において、(n+1)個のチャネル領域をソース領域とドレイン領域との間に設けることができる。このように、本実施形態によれば、金属層の数を増加させることにより、薄膜トランジスタの冗長性を向上させることができる。その結果、冗長性の高い薄膜トランジスタをスイッチング素子として各画素に有する表示装置の信頼性を向上させることができる。
【0073】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0074】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0075】
10、10-1、10-2、10a、10a-1、10a-2、10a-3、10b、10b-1、10b-2、10b-3、10b-4…薄膜トランジスタ、11…ゲート電極、12、13…絶縁層、14…ソース電極、15…ドレイン電極、16…金属層、17、18…絶縁層、30…酸化物半導体層、31、32…チャネル領域、33…分離領域、34…ソース領域、35…ドレイン領域、36~39…低抵抗領域、41a、41b、42a、42b、42c…金属層、51a、51b、51c、52a、52b、52c、52d…チャネル領域、100…表示装置、110…基板、120…表示部、121…絶縁層、122…アノード電極、123…隔壁層、124…有機層、125…カソード電極、126…封止層、126a、126c…無機絶縁層、126b…有機絶縁層、127…接着層、128…カバーガラス、130…駆動回路部、140…端子部、141…端子、150…フレキシブルプリント回路基板、160…ドライバICチップ、200、200R、200G、200B…画素、300…画素回路、310…選択トランジスタ、312…ゲート線、314…データ線、320…駆動トランジスタ、322…アノード電源線、324…カソード電源線、330…キャパシタ、340…発光素子
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B