(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087611
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】断熱箱体、冷却貯蔵庫、及び断熱箱体の製造方法
(51)【国際特許分類】
F25D 23/06 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
F25D23/06 D
F25D23/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199629
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519020616
【氏名又は名称】TechMagic株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 聖大
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 達郎
(72)【発明者】
【氏名】石渡 英治
【テーマコード(参考)】
3L102
【Fターム(参考)】
3L102JA01
3L102LB13
3L102LB22
3L102MA01
3L102MB17
(57)【要約】
【課題】被貯蔵物が開口から容易に放出可能な断熱箱体、及びこれを備える冷蔵庫を実現する。
【解決手段】断熱壁60から構成され、内部に被貯蔵物Fが収容される断熱箱体11であって、断熱壁60のうち水平方向と交わる上下方向に延在する第1側壁63には、第1開口12が設けられ、断熱壁60のうち水平方向と交わる上下方向に延在し、第1側壁63と異なる第2側壁64には、第1開口12より小さく、少なくとも被貯蔵物Fが通過可能な大きさを有する第2開口13が設けられており、第2開口13の開口縁の下部に、第2側壁64の厚さ方向について下方に傾斜する傾斜面73Aを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱壁から構成され、内部に被貯蔵物が収容される断熱箱体であって、
前記断熱壁のうち水平方向と交わる上下方向に延在する第1側壁には、第1開口が設けられ、
前記断熱壁のうち水平方向と交わる上下方向に延在し、前記第1側壁と異なる第2側壁には、前記第1開口より小さく、少なくとも前記被貯蔵物が通過可能な大きさを有する第2開口が設けられており、
前記第2開口の開口縁の下部に、前記第2側壁の厚さ方向について下方に傾斜する傾斜面を備える断熱箱体。
【請求項2】
前記傾斜面は、一定の傾斜角度で傾斜しており、
前記傾斜角度は、前記傾斜面と、前記傾斜面における前記被貯蔵物の重心を通り重力に沿って延びる重力線との交点が、当該被貯蔵物の前記傾斜面との接触部分の下端より下方に位置しないように設定されている請求項1に記載の断熱箱体。
【請求項3】
前記被貯蔵物が載置される棚を備え、
前記水平方向のうち前記第2側壁の厚さ方向と交わる方向を前後方向とするとき、
前記第2開口の前記前後方向の寸法は、前記棚の前記前後方向の寸法以上とされる請求項1または請求項2に記載の断熱箱体。
【請求項4】
前記第2開口は、上下方向に間隔を空けて並ぶ形で複数設けられ、
前記傾斜面は、前記第2開口毎に設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の断熱箱体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の断熱箱体と、
前記断熱箱体内を冷却するための冷却装置と、を備える冷却貯蔵庫。
【請求項6】
内箱を構成する内板に、所定の幅を有する枠状の内板切抜部を形成し、
前記内箱より大きい外箱を構成する外板に、前記内板切抜部の形状及び大きさに倣う枠状の外板切抜部を形成し、
前記内板切抜部と前記外板切抜部とが重なる形で、前記内板及び前記外板が間隙を空けて対向するように、前記外箱に前記内箱を内設した後、前記間隙に断熱材を充填して断熱壁を形成し、
前記内板切抜部及び前記外板切抜部に沿って前記断熱壁を貫通する切り込みを入れ、前記切り込みによって囲まれた前記断熱壁を切り抜いて切抜開口を形成し、
形成された前記切抜開口の開口縁の下部に、前記断熱壁の厚さ方向について下方に傾斜する傾斜面を設ける断熱箱体の製造方法。
【請求項7】
前記内板切抜部は、前記内板が切り抜かれず前記内板が部分的に残存する内板残存部を含むように形成され、
前記外板切抜部は、前記外板が切り抜かれず前記外板が部分的に残存する外板残存部を含むように形成される請求項6に記載の断熱箱体の製造方法。
【請求項8】
前記内板切抜部、及び前記外板切抜部はそれぞれ、各々の外形縁が前記開口縁と所定の間隔を空けて前記開口縁を取り囲むように形成される請求項6または請求項7に記載の断熱箱体の製造方法。
【請求項9】
前記内板切抜部、及び前記外板切抜部はそれぞれ、前記間隔が2mmから3mmの範囲であり、かつ前記外形縁と内径縁との距離が5mmとなるように形成される請求項8に記載の断熱箱体の製造方法。
【請求項10】
前記切抜開口を形成後、前記傾斜面を配する前に、切り抜かれた前記断熱壁の切断面を覆うように、カバー部材を設ける請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の断熱箱体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に記載の技術は、断熱箱体、これを備える冷却貯蔵庫、及び断熱箱体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却貯蔵庫(冷蔵庫)において、被貯蔵物を出し入れするための開口を開閉する扉が、本体(断熱箱体)の異なる面に複数設けられているものが知られている。その一例である特許文献1に記載の冷蔵庫は、バン型トラックの荷室に内蔵される冷蔵庫であって、荷室内で開閉する大型の上開きドア(第1扉)と、トラックの側部(荷室外)から開閉可能な小型の側面ドア(第2扉)と、を備えている。第1扉によって荷物の整理作業を安全かつ容易に行うことができると共に、第2扉によって荷物の出し入れが容易になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第1扉と第2扉とを備える冷蔵庫の別の例として、第1扉を人(使用者)によって開閉される相対的に大きな扉とし、第2扉を機械的に自動開閉される相対的に小さな扉とする冷蔵庫が考えられる。このような冷蔵庫を用いると、第1扉から被貯蔵物を収容した後、何らかの搬送手段によって被貯蔵物を第2扉まで搬送すれば、第2扉から被貯蔵物が自動的に取り出される(放出される)冷蔵庫を実現できると想定される。
【0005】
しかしながら、このような冷蔵庫を実現しようとすると、第2扉を開いても被貯蔵物が開口からうまく放出されないのが実情である。より詳しくは、開口が形成されている壁は、断熱性を高めるために所定の厚みを有するため、被貯蔵物が所定の通過長を有する開口を通り抜けられずに途中で静止してしまうことがある。また、静止した被貯蔵物に対して別の被貯蔵物が搬送されると、開口付近に複数の被貯蔵物が留まってしまったり、逆に、留まっていた被貯蔵物が、別の被貯蔵物の押し出しによって意図しないタイミングでまとめて放出されてしまうことがある。
【0006】
本願明細書に記載の技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、被貯蔵物が開口から容易に放出可能な断熱箱体、及びこれを備える冷蔵庫を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に記載の技術に関わる断熱箱体は、断熱壁から構成され、内部に被貯蔵物が収容される断熱箱体であって、前記断熱壁のうち水平方向と交わる上下方向に延在する第1側壁には、第1開口が設けられ、前記断熱壁のうち水平方向と交わる上下方向に延在し、前記第1側壁と異なる第2側壁には、前記第1開口より小さく、少なくとも前記被貯蔵物が通過可能な大きさを有する第2開口が設けられており、前記第2開口の開口縁の下部に、前記第2側壁の厚さ方向について下方に傾斜する傾斜面を備える。
【0008】
このようにすれば、被貯蔵物が第2開口を通過する際には、第2側壁の開口縁の下部に備えられた下方に傾斜する傾斜面に沿って滑降可能となる。これにより、被貯蔵物は第2開口を容易に通り抜けて放出されるようになり、第2開口を、被貯蔵物を断熱箱体から自動的に放出するための開口として用いることができるようになる。
【0009】
また、上記した断熱箱体の一態様において、前記傾斜面は、一定の傾斜角度で傾斜しており、前記傾斜角度は、前記傾斜面と、前記傾斜面における前記被貯蔵物の重心を通り重力に沿って延びる重力線との交点が、当該被貯蔵物の前記傾斜面との接触部分の下端より下方に位置しないように設定されている。このようにすれば、想定される被貯蔵物が傾斜面を滑降する際に、転倒して、破損してしまう事態を抑制できる。
【0010】
また、上記した断熱箱体の一態様において、前記被貯蔵物が載置される棚を備え、前記水平方向のうち前記第2側壁の厚さ方向と交わる方向を前後方向とするとき、前記第2開口の前記前後方向の寸法は、前記棚の前記前後方向の寸法以上とされる。このようにすれば、棚に載置された被貯蔵物が第2開口の開口縁周辺部に突き当たることなく、第2開口から確実に放出されるようになる。
【0011】
また、上記した断熱箱体の一態様において、前記第2開口は、上下方向に間隔を空けて並ぶ形で複数設けられ、前記傾斜面は、前記第2開口毎に設けられている。このようにすれば、第2開口が複数ある場合に、被貯蔵物がどの第2開口を通過しても容易に放出可能となる。
【0012】
本願明細書に記載の技術に関わる冷却貯蔵庫は、上記いずれか1つの態様の断熱箱体と、前記断熱箱体内を冷却するための冷却装置と、を備える。このようにすれば、上記した効果を奏する断熱箱体を備える冷却貯蔵庫を実現できる。
【0013】
本願明細書に記載の技術に関わる断熱箱体の製造方法は、内箱を構成する内板に、所定の幅を有する枠状の内板切抜部を形成し、前記内箱より大きい外箱を構成する外板に、前記内板切抜部の形状及び大きさに倣う枠状の外板切抜部を形成し、前記内板切抜部と前記外板切抜部とが重なる形で、前記内板及び前記外板が間隙を空けて対向するように、前記外箱に前記内箱を内設した後、前記間隙に断熱材を充填して断熱壁を形成し、前記内板切抜部及び前記外板切抜部に沿って前記断熱壁を貫通する切り込みを入れ、前記切り込みによって囲まれた前記断熱壁を切り抜いて切抜開口を形成し、形成された前記切抜開口の開口縁の下部に、前記断熱壁の厚さ方向について下方に傾斜する傾斜面を設ける。
【0014】
このようにすれば、切抜開口は、断熱箱体の断熱壁を形成した後、断熱箱体の断熱壁を切り抜いて形成されるため、仮に、開口を有する断熱壁と、開口を有しない断熱壁とを別々に形成し、両者を溶接加工で接続して断熱箱体を形成する場合に比べて、溶接加工等が不要となり、生産性を向上できる。また、形成された切抜開口の開口縁の下部には傾斜面が設けられるため、断熱箱体に収容された被貯蔵物が開口を通過する際には、傾斜面に沿って滑降し、開口を容易に通り抜けて放出されるようになる。
【0015】
また、上記した製造方法の一態様において、前記内板切抜部は、前記内板が切り抜かれず前記内板が部分的に残存する内板残存部を含むように形成され、前記外板切抜部は、前記外板が切り抜かれず前記外板が部分的に残存する外板残存部を含むように形成される。このようにすれば、内板残存部によって内板切抜部で囲まれた部分が支持され、外板残存部によって外板切抜部で囲まれた部分が支持されるため、これらの部分を一時的に(断熱壁を貫通する切り込みを入れるまでの間)支持しておくための措置が不要となる。
【0016】
また、上記した製造方法の一態様において、前記内板切抜部、及び前記外板切抜部はそれぞれ、各々の外形縁が前記開口縁と所定の間隔を空けて前記開口縁を取り囲むように形成される。このようにすれば、切抜開口の大きさを精度よく形成できる。
【0017】
また、上記した製造方法の一態様において、前記内板切抜部、及び前記外板切抜部はそれぞれ、前記間隔が2mmから3mmの範囲であり、かつ前記外形縁と内径縁との距離が5mmとなるように形成される。このようにすれば、好適に切抜開口を形成できる。
【0018】
また、上記した製造方法の一態様において、前記切抜開口を形成後、前記傾斜面を配する前に、切り抜かれた前記断熱壁の切断面を覆うように、カバー部材を設ける。切抜開口の形成時に切り抜かれた断熱壁の切断面には、内板と外板の切断面が含まれるが、これら内板と外板の切断面にはバリが発生してしまう。カバー部材によってバリが覆われ、露出しないようにすることで、安全性を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本願明細書に記載の技術によれば、被貯蔵物が開口から容易に放出可能な断熱箱体、及びこれを備える冷却貯蔵庫を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図5】側面扉が開かれた状態において、
図4の囲み線Cを拡大した断面図
【
図6】側面扉が開かれた状態において、
図4の囲み線Dを拡大した断面図
【
図8】被貯蔵物が傾斜面を滑降する様子を示す断面図
【
図10】
図9の内板切抜部の角部付近を拡大した平面図
【
図17】仕切り壁及び傾斜部材を配設した状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る断熱箱体11、及びこれを備える冷却貯蔵庫10について
図1から
図17を参照して説明する。各図の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向とする。
【0022】
冷却貯蔵庫10は、
図1及び
図2に示すように、冷蔵庫本体である断熱箱体11と、機械室15と、冷却装置20と、電装箱30と、断熱性の前面扉40と、断熱性の側面扉50と、脚部90と、を備える。断熱箱体11は、全体として縦長の直方体状の箱体であって、その内部空間には、食品等の被貯蔵物Fを載置するための棚14が上下方向に並んで複数段(具体的には3段)設けられている。断熱箱体11には、被貯蔵物Fを棚14に収容したり、棚14から取り出したりするための開口として、前方に開口された前方開口12(第1開口の一例)と、側方(より詳しくは正面視で右側方)に開口された側方開口13(第2開口の一例)と、が形成されている。前方開口12は、断熱箱体11の前面の大部分を占める大きさで1つ形成され、側方開口13は、断熱箱体11の右側面に上下方向に並ぶ形で3つ形成されている。各側方開口13は、各段の棚14にそれぞれ対応する位置に形成されており、その大きさは、前方開口12に比して十分小さいものとなっている。脚部90は、断熱箱体11の下方に設けられ、設置床面に載置されて冷却貯蔵庫10を支持する。
【0023】
断熱箱体11は、
図2に示すように、ステンレス鋼板製の内箱60Aと外箱60Bとの間に発泡ウレタン等の断熱材60Cが充填された断熱壁60から構成されている。内箱60Aは、縦長の直方体状をなしており、内箱60Aの内部空間が断熱箱体11の内部空間となっている。外箱60Bは、内箱60Aを収容可能に内箱60Aよりひと回り大きく形成されている。断熱壁60の上下方向に延在する4つの側壁のうち、前壁63(第1側壁の一例)に前方開口12が、右側壁64(第2側壁の一例)に側方開口13が形成されている。
【0024】
前面扉40は、
図1に示すように、前方開口12を覆う大きさを有する左開き扉であり、その右部には取手41が設けられている。前面扉40は、その左側縁部40Aを中心(揺動軸)として揺動開閉することで前方開口12を開閉可能となっている。側面扉50は、上下方向に並ぶ形で3つ設けられており、各側面扉50は、各側方開口13を覆う大きさを有する上開き扉である。各側面扉50は、その上縁部50Aを中心(揺動軸)として揺動開閉することで各側方開口13を開閉可能となっている。なお、前面扉40及び側面扉50は、所定の厚みを有し内部に断熱材が充填されているが、これらの断熱材の図示は省略されている。
【0025】
機械室15は、
図1及び
図2に示すように、断熱箱体11の上方に配され、その内部には断熱箱体11内を冷却するための冷却装置20の一部、及び電装箱30が収容されている。機械室15は、上方が開放され、下方が断熱箱体11の断熱壁60(より詳しくは天井壁61)によって覆われ、前方、左方、及び右方がパネル壁16によって覆われている。機械室15の後方には、左方及び右方のパネル壁16を接続する横フレームが設けられているが、パネル壁は設けられておらず、機械室15の後方は開放されている。
【0026】
冷却装置20は、
図1及び
図2に示すように、主に、冷却器21と、圧縮機22と、凝縮器ファン23と、凝縮器24と、から構成され、冷媒を所定の循環方向に循環させて、既知の冷凍サイクルを形成している。圧縮機22、凝縮器ファン23、及び凝縮器24は、機械室15内に配されており、冷却器21は、機械室15の下方において、天井壁61を貫通して(より詳しくは、天井壁61に形成された天井開口61Hを通って)、断熱箱体11内に張り出す形で設けられている冷却器室17内に配されている。冷却器室17には、前側に冷却器21が、後側に庫内ファン29が収容されている。庫内ファン29が駆動すると、断熱箱体11内の空気は冷却器室17の吸込口17Aから冷却器室17内へ吸い込まれる(
図2における矢線W1)。吸い込まれた空気は、冷却器21を通過することで冷却されて、冷却器室17の吹出口17Bから断熱箱体11内に吹き出される(
図2における矢線W2)。このようにして断熱箱体11内が冷却される。
【0027】
電装箱30には、冷却貯蔵庫10の各部を制御する制御基板、及び電源トランス等の電気部品が収容されている。制御基板には、CPUを主体に構成され、冷却貯蔵庫10の各部と電気的に接続される制御部、及びROMやRAM等からなる記憶部が実装されている。制御部は、記憶部に記録された制御プログラムを実行することで、各センサ(温度センサ等)の検出結果等に基づいて、圧縮機22、凝縮器ファン23、及び庫内ファン29等の駆動を制御する。
【0028】
また、冷却貯蔵庫10は、
図3に示すように、棚14に収容された被貯蔵物Fを側方開口13に向かって搬送するための搬送機構35を備える。各段の棚14は、上面(X-Y面)視で全体として矩形状をなしており、前面扉40及び後壁65と間隔を空けつつ、左側壁62から右側壁64に延出している。搬送機構35は、各段の棚14に対して、それぞれ4つの回転軸部35Aと、4つの螺旋状回転体35Bと、を備える。回転軸部35Aは、断熱箱体11の左側壁62を貫通して外部から棚14に向かって延出しており、外部の動力源(より詳しくはモーター)によって回転駆動する(
図3の矢線W3参照)。左側壁62には、回転軸部35Aが挿通される貫通孔62Hが形成されている。回転軸部35Aの一方の端部(外部側の端部)には、外部の動力源が接続され、他方の端部(棚14側の端部)には、螺旋状回転体35Bが接続される。螺旋状回転体35Bは、左右方向(X軸方向)に延在するように棚14に配されており、回転軸部35Aと共に回転する。これにより、棚14上に載置された被貯蔵物Fは、回転する螺旋状回転体35Bに沿って左から右方向へ、側方開口13に向かって搬送される。なお、
図2においては搬送機構35の図示は省略されている。
【0029】
本実施形態において、前面扉40は、使用者(人)が取手41を把持して開閉し、棚14に被貯蔵物Fを載置したり、棚14上の被貯蔵物Fを整理したりするために用いられる。一方で、側面扉50は、被貯蔵物Fを自動的に取り出す(放出する)ために用いられる。使用に際して、各側面扉50には、人力を用いずに側面扉50を自動開閉させるための開閉手段(例えばアクチュエーター、エアシリンダ等)が接続され、冷却貯蔵庫10の右方には、側面扉50から放出された被貯蔵物Fが搬入される外部部材又は外部装置が設置されることが好ましいが、これに限定されない。例えば、使用者が側面扉50を開き、自動的に放出された被貯蔵物Fを使用者が保持する容器に落下させるような使用方法であっても構わない。
【0030】
次に、断熱箱体11の側方開口13周辺部の構成について詳しく説明する。3つの側方開口13は、後述する製造方法にて詳しく説明するように、右側壁64を切り抜いて形成された1つの切抜開口64Hを2つの仕切り壁68によって3つに区切ることで形成されている(
図15及び
図17)。仕切り壁68は、
図2及び
図17に示すように、前後方向(Y軸方向)に沿って延在する断面矩形状の断熱壁である。側方開口13は、側面(Y-Z面)に視て縦長の矩形状をなす切抜開口64Hが、2つの仕切り壁68によって3等分に区切られることで、横長の矩形状に3つ形成されている。
【0031】
各側方開口13の開口縁の下部(下側開口縁)には、
図4から
図6に示すように、傾斜部材70が1つずつ設けられている。各傾斜部材70は、
図3及び
図17に示すように各側方開口13の開口縁の下部に沿って前後方向(Y軸方向)に延在しており、当該開口縁の下部を上方から覆っている。各傾斜部材70は、
図7に示すように、金属製の板状部材(より詳しくはステンレス鋼板)を折り曲げる形で形成されており、固定部71と、平坦部72と、傾斜部73と、垂下部74と、を有する。固定部71は、傾斜部材70(より詳しくは平坦部72)のY軸方向についての両端部に設けられており、側方開口13の開口縁に締結部材(ビス、ネジ等)によって固定されている。平坦部72は細長い板状をなし、
図8に示すように、その上面72Aの高さが棚14の上面14Aと同じ高さに配される。被貯蔵物Fは、搬送機構35によって棚14上を搬送され、そのまま惰性によって平坦部72に搬入されるが、その際、2つの上面14A,72Aの高さが同じであるため、被貯蔵物Fは平坦部72に円滑に搬入される。傾斜部73は、平坦部72から外側(庫外)に向かって下方に傾斜する細長い板状をなしている。被貯蔵物Fは、平坦部72を通過後、傾斜部73の上面の傾斜面73Aに沿って滑降する。これにより、被貯蔵物Fは、側方開口13を容易に通り抜けて放出され、側方開口13は、被貯蔵物Fを断熱箱体11から自動的に放出するための開口として利用可能となる。垂下部74は、平坦部72の傾斜部73と反対側の辺部から垂直に立ち下がっている。
【0032】
傾斜面73Aは、
図8に示すように、右側壁64の厚さ方向(X軸方向)について一定の傾斜角度θで下方に傾斜している。傾斜角度θは、傾斜面73Aと、傾斜面73Aにおける被貯蔵物Fの重心Pを通り重力に沿って延びる重力線Gとの交点が、被貯蔵物Fの傾斜面73Aとの接触部分の下端F1より下方に位置しないように設定されている。当該交点は、
図8においては下端F1と一致しており、下端F1より下方に位置していない。収容が想定される被貯蔵物Fに対して、上記したように傾斜角度θを所定の角度に設定することで、被貯蔵物Fが傾斜面73Aを滑降する際に、転倒して、破損してしまう事態を抑制できる。
【0033】
また、側方開口13は、
図3に示すように、その前後方向(Y軸方向、水平方向のうち右側壁64の厚さ方向と交わる方向)の寸法L13が、棚14の前後方向の寸法L14以上となるように形成されている。これにより、棚14に載置された被貯蔵物Fが側方開口13の開口縁周辺部に突き当たることなく、側方開口13から確実に放出されるようになる。なお、後述するように側方開口13の開口縁の表面(端面)には、連結部材96が取り付けられるため、上記した側方開口13の寸法L13は、
図3に示すように対向する連結部材96間の距離となる。
【0034】
続いて、上記した構成の断熱箱体11の側方開口13周辺部の製造方法について、詳しく説明する。側方開口13は、右側壁64を切り抜いた1つの切抜開口64Hを仕切り壁68によって区切ることで形成されるため、最初に、右側壁64に切抜開口64Hを形成する方法について説明する。まず、内箱60Aを構成する内板であって右側壁64の一部となる内板64Aに対して、
図9に示すように、内板切抜部80Aを形成する。内板切抜部80Aは、全体として、切抜開口64Hの開口縁64H1の形状に倣う枠状に内板64Aを切り抜くことで形成される。また、内板切抜部80Aは、内板64Aが部分的に残存する内板残存部84Aを含むように枠状に形成される。より詳しくは、内板切抜部80Aは、全体として矩形の枠状をなし、
図9では、上下の短辺部分について1辺あたり3カ所、左右の長辺部分について1辺あたり4カ所の内板残存部84Aが形成されている。
【0035】
内板切抜部80Aは、
図10に示すように、所定の幅S2を有し、その外形縁81Aが切抜開口64Hの開口縁64H1より僅かに大きくなるように形成される。より詳しくは、内板切抜部80Aは、その外形縁81Aが開口縁64H1と2mmから3mmの間隔S1を空けて開口縁64H1を取り囲み、かつ外形縁81Aと内形縁82Aとの距離(幅)S2が5mm程度になるように形成される。
【0036】
次に、
図11の左部分に示すように、内板64A、及びそれ以外の内板(より詳しくは、天井壁61、左側壁62、後壁65、底壁66の各々の一部である内板61A,62A,65A,66A)を箱状に組み立てて、内箱60Aを形成する。なお、内板64A以外の内板61A,62A,65Aには、内箱60Aの組み立て前に、それぞれ天井開口61H、貫通孔62H、冷却器21からの除霜水を排水する配管を通す排出口65H等が形成されているものとされる。なお、内箱60Aは、前方には内板を具備していない。
【0037】
また、外箱60Bを構成する外板であって右側壁64の一部となる外板64Bに対して、内板切抜部80Aと同様に外板切抜部80Bを形成する。外板切抜部80Bの構成は、内板切抜部80Aと同じであるため、詳しい説明は省略する。そして、
図11の右図に示すように、外板64B、及びそれ以外の外板(より詳しくは、天井壁61、左側壁62、前壁63、後壁65、底壁66の各々の一部である外板61B,62B,63B,65B,66B)を箱状に組み立てて、外箱60Bを形成する。なお、外板64B以外の外板61B,62Bには、内箱60Aの組み立て前に、それぞれ天井開口61H、貫通孔62H等が形成されているものとされる。また、外板63Bは、前方開口12が形成されるように枠状に設けられる。
【0038】
外箱60Bは、
図12に示すように、内箱60Aを内設するように組み立てられる(
図11においては、内箱60A及び外箱60Bの構成を明示するために、内箱60Aを内設せずに組み立てた状態を示している)。外箱60Bに内箱60Aを内設する際には、内板切抜部80Aと外板切抜部80Bとが重なる形で、内板64A及び外板64Bが所定の間隙を空けて対向するものとされる。そして、
図13に示すように、当該間隙を含む、内箱60A及び外箱60Bとの間に断熱材60Cを充填して断熱壁60を形成する。なお、断熱材60Cの充填時には、天井開口61H及び前方開口12の開口縁には、内箱60Aと外箱60Bとを連結する連結部材92,93が取り付けられる。また、内板切抜部80A及び外板切抜部80Bには目張り用のテープ状部材が剥離可能に接着される。
図13においては、当該テープ状部材は剥離された状態を示している。
【0039】
次に、
図14に示すように、外板切抜部80B及びこれと重なる内板切抜部80Aに沿って右側壁64を貫通し、外板残存部84B及び内板残存部84Aを切断するように切り込みを入れる。そして、切り込みによって囲まれた右側壁64を切り抜いて切抜開口64Hを形成する。このように断熱壁(右側壁64)を形成後に、断熱壁を切り抜いて開口(切抜開口64H)を形成することで、仮に、開口を有する右側壁と、それ以外の断熱箱体の部分とを別々に形成し、両者を溶接加工で接続して断熱箱体を形成する場合に比べて、溶接加工等が不要となり、生産性を向上できる。
【0040】
ところで、上記した切り込みは、外板切抜部80Bの外形縁81B及び内板切抜部80Aの外形縁81Aに沿って形成されるが、製造上、切り込みは外形縁81B,81Aと完全に一致せず、外形縁81B,81Aより僅かに小さく(すなわち内形縁82B,82A寄りに)形成されてしまう。そこで、本実施形態では上記したように、外形縁81B,81Aを切抜開口64Hの開口縁64H1より僅かに大きく形成することで、切り込みが開口縁64H1とほぼ一致して、切抜開口64Hの大きさを精度よく形成できるようになっている。
【0041】
また、切り込みを入れて切抜開口64Hを形成する前の段階では、内板切抜部80Aで囲まれた部分、及び外板切抜部80Bで囲まれた部分は、それぞれ内板残存部84A、及び外板残存部84Bによって支持されている。内板残存部84A、及び外板残存部84Bを設けることで、切り込みを入れる前まで、内板切抜部80Aで囲まれた部分、外板切抜部80Bで囲まれた部分を支持しておくための措置が不要となる。
【0042】
切抜開口64Hの形成後は、
図15及び
図16に示すように、切り抜かれた右側壁64の切断面のうち、少なくとも内板64A及び外板64Bの切断面を覆うように、複数のカバー部材95を配設する。各カバー部材95は、断面L字状をなし(
図5)、複数のカバー部材95の半数は、内板64Aの切断面を断熱箱体11の内側から覆い、残りの半数は、外板64Bの切断面を断熱箱体11の外側から覆うように締結部材(ビス、ネジ等)によって固定される。右側壁64を切り抜くことで切抜開口64Hを形成すると、内板64A及び外板64Bの切断面にはバリが発生してしまう。特に、内板残存部84A、及び外板残存部84B付近には、大きなバリが発生しやすくなる。そこで、カバー部材95によってバリを覆い、露出しないようにすることで、安全性を向上できる。
【0043】
その後、
図17に示すように、2つの仕切り壁68を取り付けて切抜開口64Hを区切ることで3つの側方開口13を形成する。また、切抜開口64Hの開口縁64H1において露出した断熱材60Cを覆うように内板64A側と外板64B側とを連結する連結部材96を取り付ける。そして、開口縁64H1の下部に取り付けられた連結部材96の上方、及び各仕切り壁68の上方に位置するように、それぞれ傾斜部材70を取り付ける(
図5及び
図6)。これにより、傾斜部材70は、全ての側方開口13に設けられ、被貯蔵物Fがいずれの側方開口13からも容易に放出可能となる。
【0044】
<他の実施形態>
本願明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0045】
(1)傾斜部材70は、傾斜面73Aを含んでいれば他の形状であっても構わない。また、傾斜部材70は別体でなく、他の部材(例えば、仕切り壁68、連結部材96等)と一体形成されていても構わない。換言すると、傾斜面73Aは、傾斜部材70の一部ではなく、他の部材の一部として形成されていても構わない。
【0046】
(2)傾斜面73A(傾斜部材70)の材質は、被貯蔵物Fとの接触時に被貯蔵物Fに異物を付着させないように非腐食性を有するものが好ましく、ステンレスに限らず、例えば樹脂であっても構わない。
【0047】
(3)前方開口12、並びに側方開口13の数、大きさ及び形状は、適宜変更可能である。側方開口13が1つの場合、仕切り壁68は設けられず、また、複数の側方開口13は、仕切り壁68を用いずに、側方開口13と同等の大きさを有する切抜開口64Hを複数切り抜くことで形成されても構わない。さらには、側方開口13は、前方開口12が形成される側壁と異なっていれば、右側壁64以外の側壁(例えば左側壁62、後壁65)に形成されても構わない。
【0048】
(4)搬送機構35は、他の構成であっても構わず、側方開口13が右側壁64以外の側壁に形成される場合には、搬送方向もそれに応じて適宜設計変更されるものとされる。
【0049】
(5)前面扉40、並びに側面扉50の数、大きさ、形状、及び開閉方向は、各々が開閉する前方開口12、側方開口13の設計に応じて適宜変更可能である。また、他の種類の扉(スライド扉等)であっても構わない。
【0050】
(6)内板残存部84A、及び外板残存部84Bの数、及び間隔は、適宜変更可能である。
【0051】
(7)本願明細書に記載の技術は、断熱箱体を備える冷蔵庫以外の装置(例えば、温蔵庫、温冷蔵庫、温冷配膳車)に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10:冷蔵庫(冷却貯蔵庫)、11:断熱箱体、12:前方開口(第1開口)、13:側方開口(第2開口)、14:棚、20:冷却装置、60:断熱壁、60A:内箱、60B:外箱、60C:断熱材、63:前壁(第1側壁)、64:右側壁(第2側壁)、64A:内板、64B:外板、64H:切抜開口、64H1:切抜開口の開口縁、70:傾斜部材、73A…傾斜面、80A:内板切抜部、80B:外板切抜部、81A,81B:外形縁、82A,82B:内形縁、84A:内板残存部、84B:外板残存部、95:カバー部材、G:重力線