(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087618
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】紙ワイパー
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
A47L13/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199644
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【テーマコード(参考)】
3B074
【Fターム(参考)】
3B074AA04
3B074AB01
(57)【要約】
【課題】吸水性が高く、使用感が良く、丈夫であり、発塵が少ないワイパーを提供する。
【解決手段】3枚の原紙11,12,13を重ねた3プライの紙ワイパー1であり、紙ワイパー1にはエンボス20が形成されており、紙ワイパー1の3プライ合計の坪量が、56.0g/m
2以上80.0g/m
2以下であり、紙ワイパー1の3プライ合計の紙厚が、0.40mm以上0.62mm以下であり、紙ワイパー1の3プライ合計の乾燥状態における縦強度が、31.4N/25mm以上54.9N/25mm以下であり、紙ワイパー1の3プライ合計の乾燥状態における横強度が、7.8N/25mm以上19.6N/25mm以下である、紙ワイパー1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3枚の原紙を重ねた3プライの紙ワイパーであり、
前記紙ワイパーにはエンボスが形成されており、
前記紙ワイパーの3プライ合計の坪量が、56.0g/m2以上80.0g/m2以下であり、
前記紙ワイパーの3プライ合計の紙厚が、0.40mm以上0.62mm以下であり、
前記紙ワイパーの3プライ合計の乾燥状態における縦強度が、31.4N/25mm以上54.9N/25mm以下であり、
前記紙ワイパーの3プライ合計の乾燥状態における横強度が、7.8N/25mm以上19.6N/25mm以下である、
紙ワイパー。
【請求項2】
前記エンボスが、ピンエンボスである、
請求項1に記載の紙ワイパー。
【請求項3】
前記エンボスのエンボス深さが、300μm以上850μm以下である、
請求項1又は2に記載の紙ワイパー。
【請求項4】
前記エンボスのエンボス面積率が、0.42%以上1.40%以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の紙ワイパー。
【請求項5】
前記エンボスは、隣接するエンボス同士のピッチ間隔が、1.0mm以上3.8mm以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の紙ワイパー。
【請求項6】
プライアップされる前の前記原紙1枚あたりの坪量が、18.7g/m2以上26.7g/m2以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の紙ワイパー。
【請求項7】
プライアップされる前の前記原紙1枚あたりの紙厚が、0.78mm/10プライ以上1.25mm/10プライ以下である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の紙ワイパー。
【請求項8】
前記紙ワイパーは、前記原紙を3枚に重ねて、4つ折りにされている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の紙ワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
パルプや古紙等を原料とする紙ワイパーは、例えば、医療現場、企業や大学等の研究室、各種製造工場、食品製造工場、食品加工工場等において産業用ワイパー等として使用されている。このような紙ワイパーとしては、通常、2プライ以上6プライ以下のプライ数の紙ワイパーが使用されており、種々の商品形態のものが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、構成繊維100質量部に対して、湿潤紙力増強剤を0.125~1.25質量部、柔軟剤を0.01~0.5質量部添加して抄紙され、キャレンダー処理を施されることを特徴とする産業用紙ワイプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した紙ワイパーは、吸水性、手触りや拭き心地等の使用感、丈夫さ、発塵の少なさ(例えば、紙粉等が紙ワイパーから脱落すること等が少ないこと)が求められるところ、従来の紙ワイパーは、これら全てを満たすことができていないのが実情である。そのため、これら要求全てを高いレベルで満たすことができる紙ワイパーの開発が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、吸水性が高く、使用感が良く、丈夫であり、発塵が少ない紙ワイパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、3枚の原紙を重ねた3プライの紙ワイパーであり、紙ワイパーにはエンボスが形成されており、紙ワイパーの3プライ合計の坪量が、56.0g/m2以上80.0g/m2以下であり、紙ワイパーの3プライ合計の紙厚が、0.40mm以上0.62mm以下であり、紙ワイパーの3プライ合計の乾燥状態における縦強度が、31.4N/25mm以上54.9N/25mm以下であり、紙ワイパーの3プライ合計の乾燥状態における横強度が、7.8N/25mm以上19.6N/25mm以下である紙ワイパーとすることに知見を得て、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
(1)
3枚の原紙を重ねた3プライの紙ワイパーであり、前記紙ワイパーにはエンボスが形成されており、前記紙ワイパーの3プライ合計の坪量が、56.0g/m2以上80.0g/m2以下であり、前記紙ワイパーの3プライ合計の紙厚が、0.40mm以上0.62mm以下であり、前記紙ワイパーの3プライ合計の乾燥状態における縦強度が、31.4N/25mm以上54.9N/25mm以下であり、前記紙ワイパーの3プライ合計の乾燥状態における横強度が、7.8N/25mm以上19.6N/25mm以下である、紙ワイパーである。
(2)
前記エンボスが、ピンエンボスである、(1)に記載の紙ワイパーである。
(3)
前記エンボスのエンボス深さが、300μm以上850μm以下である、(1)又は(2)に記載の紙ワイパーである。
(4)
前記エンボスのエンボス面積率が、0.42%以上1.40%以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の紙ワイパーである。
(5)
前記エンボスは、隣接するエンボス同士のピッチ間隔が、1.0mm以上3.8mm以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の紙ワイパーである。
(6)
プライアップされる前の前記原紙1枚あたりの坪量が、18.7g/m2以上26.7g/m2以下である、(1)~(5)のいずれかに記載の紙ワイパーである。
(7)
プライアップされる前の前記原紙1枚あたりの紙厚が、0.78mm/10プライ以上1.25mm/10プライ以下である、(1)~(6)のいずれかに記載の紙ワイパーである。
(8)
前記紙ワイパーは、前記原紙を3枚に重ねて、4つ折りにされている、(1)~(7)のいずれか記載の紙ワイパーである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸水性が高く、使用感が良く、丈夫であり、発塵が少ない紙ワイパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る紙ワイパーの概略断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る紙ワイパーの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0013】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0015】
(紙ワイパー)
【0016】
図1は、本実施形態に係る紙ワイパーの概略断面図であり、
図2は、本実施形態に係る紙ワイパーの概略上面図である。
【0017】
本実施形態に係る紙ワイパー1は、3枚の原紙11,12,13を重ねた3プライの紙ワイパー1であり、紙ワイパー1にはエンボス20が形成されており、紙ワイパー1の3プライ合計の坪量が、56.0g/m2以上80.0g/m2以下であり、紙ワイパー1の3プライ合計の紙厚が、0.40mm以上0.62mm以下であり、紙ワイパー1の3プライ合計の乾燥状態における縦強度が、31.4N/25mm以上54.9N/25mm以下であり、紙ワイパー1の3プライ合計の乾燥状態における横強度が、7.8N/25mm以上19.6N/25mm以下である、紙ワイパー1である。
【0018】
本実施形態によれば、原紙11,12,13を3プライにしてエンボスを施し、特定の坪量、紙厚、縦強度及び横強度を有する紙ワイパー1とすることで、吸水性、手触りや拭き心地等の使用感、丈夫さ、発塵の少なさといった全ての要求を高いレベルで満たすことができる。なお、ここでいう発塵とは、使用時や製造時等に紙ワイパー1から脱落する紙粉(脱落紙粉)等のことをいい、紙粉には、例えば、紙ワイパー1の繊維片及び填料粉末等も包含される。
【0019】
そして、原紙11,12,13が、ドライヤー面及びフェルト面を構成可能な抄紙機を用いて抄紙される場合、3プライの原紙11,12,13を重ねる際の紙面の配置については、最表面及び再裏面ともに、その表面がドライヤー面であることが好ましい。
図1の場合、最上位の原紙11の表面側の面がドライヤー面であり、かつ、最下位の原紙13の裏面側の面がドライヤー面であることが好ましい。このような配置とすることによって、紙ワイパー1の表面(例えば、原紙11の表面)及び裏面(例えば、原紙13の裏面)ともに、手触りが向上し、拭き心地もより優れたものとなる。なお、最上位の原紙11及び最下位の原紙13によって挟み込まれている中間位の原紙12については、その紙面の配置は特に限定されずともよい。
【0020】
紙ワイパー1の3プライ合計(プライアップされた3枚の原紙11,12,13の合計)の坪量は、56.0g/m2以上80.0g/m2以下である。この坪量は、60.0g/m2以上76.0g/m2以下であることが好ましい。この坪量は、紙ワイパー1の製品坪量である。
【0021】
紙ワイパー1の3プライ合計の紙厚は、0.40mm以上0.62mm以下である。この紙厚は、0.45mm以上0.57mm以下であることが好ましい。この紙厚は、紙ワイパー1の製品紙厚である。紙ワイパー1の製品坪量、製品紙厚を上記範囲とすることにより、吸水性、手触りや拭き心地等の使用感が良好であり、かつ、発塵が少ない紙ワイパーとなる。
【0022】
紙ワイパー1の3プライ合計の乾燥状態における縦強度は、31.4N/25mm以上54.9N/25mm以下である。この縦強度は、35.2N/25mm以上51.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0023】
なお、ここでいう縦強度とは、紙ワイパー1の3プライについて乾燥時の縦幅方向の引っ張り強さである。縦強度は、JIS P 8113に準拠して測定することができる。縦幅方向とは、紙ワイパー1の製造時の流れ方向(MD;Machine Direction)をいう。
【0024】
紙ワイパー1の3プライ合計の乾燥状態における横強度は、7.8N/25mm以上19.6N/25mm以下である。この横強度は、9.8N/25mm以上15.7N/25mm以下であることが好ましい。紙ワイパー1の縦強度、横強度を上記範囲とすることにより、手触りや拭き心地等の使用感が良好であり、かつ、丈夫な紙ワイパーとなる。
【0025】
なお、ここでいう横強度とは、紙ワイパー1の3プライについて乾燥時の横幅方向の引っ張り強さである。横強度は、JIS P 8113に準拠して測定することができる。横幅方向とは、紙ワイパー1の製造時の流れ方向に垂直な方向(CD;Cross Direction)をいう。
【0026】
紙ワイパー1には、3枚の原紙11,12,13が重ねられた基材10に、エンボス20が形成されている。このエンボス20は、
図1に示すように、3枚の原紙11,12,13に対して形成されている。紙ワイパー1にエンボスを形成することで、紙ワイパー1の紙厚、強度が適切な範囲に調整され、吸水性、手触りや拭き心地等の使用感が良好であり、かつ、丈夫な発塵の少ない紙ワイパーとなる。
【0027】
エンボスの形状は、特に限定されず、例えば、ピンエンボス、ドット状エンボス、デコレーションエンボス等を採用することができる。ピンエンボスとは、3枚の原紙11,12,13を、それぞれに形成されたエンボス21,22,23によって一体化する凹形状をいい、その形状がピン状(略円錐形、とがった針で突き刺すタイプ)となっているものを指す。ドット状エンボスとは、同じく3枚の原紙11,12,13を、それぞれに形成されたエンボス21,22,23によって一体化する凹形状をいい、形状は特に限定されないが、直方体型、円柱型、三角柱型等(平面で押し付けるタイプ)であるエンボスをいう。デコレーションエンボスとは、押しつけ形状が何等かの模様(花形、企業のロゴ、キャラクター等)となっているエンボスをいう。これらの中でも、3枚の原紙にエンボスを施し一体化した際に紙厚が高く、吸水量が多くなるという観点から、ピンエンボスを用いることが好ましい。
【0028】
エンボス深さDは、300μm以上850μm以下であることが好ましく、420μm以上700μm以下であることがより好ましい。エンボス深さDをこのような範囲とすることで、吸水性、手触りや拭き心地等の使用感が良好であり、かつ、丈夫な紙ワイパーとすることができる。ここでいうエンボス深さDとは、3枚の原紙11,12,13が重ね合わされた状態において、その最下層(最下位)である原紙13のエンボス23の外表面の最下部から、最上層(最上位)である原紙11の外表面までの深さをいう(
図1参照)。なお、エンボス深さDは、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、紙ワイパー1の表面に、エンボス深さDが浅い部位と、エンボス深さDが深い部位とを設けてもよい。あるいは、エンボス深さDが徐々に浅くなるよう(あるいは深くなるよう)に傾斜をつけてエンボス賦形してもよい。このように異なるエンボス深さDを有する紙ワイパー1の場合、上述した条件を満たすエンボスを少なくとも有していればよい。さらに、本実施形態によれば、紙ワイパー1のエンボス全体の50%以上のエンボスが上述した条件を満たすことが好ましく、70%以上のエンボスが上述した条件を満たすことがより好ましく、90%以上のエンボスが上述した条件を満たすことが更に好ましく、100%のエンボス(全てのエンボス)が上述した条件を満たすことがより更に好ましい。
【0030】
エンボス20のエンボス面積率は、0.42%以上1.40%以下であることが好ましく、0.57%以上1.05%以下であることがより好ましい。このエンボス面積率をこのような範囲とすることで、吸水性、手触りや拭き心地等の使用感が良好であり、かつ、丈夫な紙ワイパーとすることができる。なお、エンボス面積率は、紙ワイパー1の上面視(
図2参照)において、その単位面積あたりに占めるエンボス20の面積の総数が占める割合(単位面積あたりのエンボス面積の総数;%)をいう。具体的には、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定された、30点のエンボスにおける面積率である。
【0031】
なお、本実施形態では、紙ワイパー1の表面に、エンボス面積率が低い部位(エンボスの配置が疎)と、エンボス面積率が高い部位(エンボスの配置が密)とを設けてもよい。あるいは、エンボス面積率が徐々に低くなるよう(あるいは高くなるよう)に傾斜をつけてエンボス賦形してもよい。このようにエンボス面積率が異なる部位を有する紙ワイパー1の場合、紙ワイパー1のエンボス領域(エンボス賦形された全領域)のうち、30点の隣接するエンボスのエンボス面積率が上述した条件を満たせばよい。さらに、本実施形態によれば、紙ワイパー1のエンボス領域の50%以上の領域が上述した条件を満たすことが好ましく、70%以上の領域が上述した条件を満たすことがより好ましく、90%以上の領域が上述した条件を満たすことが更に好ましく、100%の領域(エンボス領域の全て)が上述した条件を満たすことがより更に好ましい。
【0032】
エンボス20は、隣接するエンボス201,202同士のピッチ間隔Pが、1.0mm以上3.8mm以下であることが好ましく、1.5mm以上3.2mm以下であることがより好ましい。このピッチ間隔Pをこのような範囲とすることで、吸水性、手触りや拭き心地等の使用感が良好であり、かつ、丈夫な紙ワイパーとすることができる。ここでいうピッチ間隔Pとは、隣接するエンボス201,202のそれぞれの重心O1,O2の直線距離をいい、基材10の上に配置されているエンボス20同士のピッチ間隔Pの最小値である。なお、ピッチ間隔Pは、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、紙ワイパー1の表面に、ピッチ間隔Pが小さい部位(エンボスの配置が密)と、ピッチ間隔Pが大きい部位(エンボスの配置が密)とを設けてもよい。あるいは、ピッチ間隔Pが徐々に小さくなるよう(あるいは大きくなるよう)に傾斜をつけてエンボス賦形してもよい。このようにピッチ間隔Pが異なる部位を有する紙ワイパー1の場合、紙ワイパー1のエンボス領域(エンボス賦形された全領域)において、最も小さいピッチ間隔P(ピッチ間隔Pの最小値)が上述した条件を満たせばよい。さらに、本実施形態によれば、紙ワイパー1のエンボス領域の50%以上の領域が上述したピッチ間隔Pの条件を満たすことが好ましく、70%以上の領域が上述したピッチ間隔Pの条件を満たすことがより好ましく、90%以上の領域が上述したピッチ間隔Pの条件を満たすことが更に好ましく、100%の領域(エンボス領域の全て)が上述したピッチ間隔Pの条件を満たすことがより更に好ましい。
【0034】
(原紙)
【0035】
続いて、プライアップされる前の原紙11,12,13について説明する。
【0036】
プライアップされる前の原紙11,12,13の1枚あたりの坪量は、18.7g/m2以上26.7g/m2以下であることが好ましく、20.0g/m2以上25.3g/m2以下であることがより好ましい。この坪量をこのような範囲とすることで、3枚の原紙を重ねて紙ワイパー1を作製した際の吸水性、手触りや拭き心地等の使用感が良好であり、かつ、発塵が少ない紙ワイパーとすることができる。
【0037】
プライアップされる前の原紙11,12,13の1枚あたりの紙厚は、0.78mm/10プライ以上1.25mm/10プライ以下であることが好ましく、0.89mm/10プライ以上1.13mm/10プライ以下であることがより好ましい。この紙厚をこのような範囲とすることで、3枚の原紙を重ねて紙ワイパー1を作製した際の吸水性、手触りや拭き心地等の使用感が良好であり、かつ、発塵が少ない紙ワイパーとすることができる。なお、ここでいう紙厚は、1枚の原紙11,12,13を10枚積層したときの厚さをいい、1枚の原紙11,12,13を10枚積層した厚さ(10プライ)に相当する。
【0038】
紙ワイパー1を構成する原紙11,12,13の材料としては、例えば、木材パルプ(針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等)、非木材パルプ(例えば、麻パルプ、竹パルプ等)、化学繊維(例えば、セルロース系繊維、オレフィン系化学繊維、ポリエステル系繊維等)等を用いることができる。これらの中でも吸水性が特に優れる木材パルプを用いることが好ましい。
【0039】
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)の材種は、ユーカリ、ポプラ、アカシア、及びカシ等の広葉樹から作製されるパルプであることが好ましい。針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の材種は、モミ、マツ、スギ、及びヒノキ等の針葉樹から作製されるパルプであることが好ましい。
【0040】
原紙11,12,13は、木材パルプの含有率が、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0041】
そして、原紙11,12,13がNBKPを含む場合、その含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0042】
そして、原紙11,12,13がLBKPを含む場合、その含有率は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0043】
さらに、原紙11,12,13は、ミルクカートン由来の古紙パルプを含有してもよいが、この古紙パルプの含有量は20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことがより更に好ましい。古紙パルプの含有量をこのような範囲に制御することにより、紙ワイパー1の吸水性、丈夫さ、発塵の少なさ等のバランスが一層向上する。
【0044】
なお、本実施形態における古紙パルプとは、ミルクカートン由来の古紙パルプであるものをいう。ミルクカートン由来の古紙パルプは、針葉樹パルプが主体であり、紙ワイパー1の強度を確保しやすい一方、品質のばらつきが大きく、含有割合が高すぎると製品の品質に影響する傾向にあるので、上記範囲の含有率にすることが好ましい。よって、例えば、上述したNBKP及びLBKPは、ここでいう古紙パルプには該当しない。
【0045】
紙ワイパー1の色調等は、特に限定されず、原紙11,12,13に晒パルプ等を用いることによって得られる白色でもよいし、原紙11,12,13に未晒パルプ等を用いることによって得られる茶色等であってもよい。
【0046】
また、紙ワイパー1は、本実施形態の効果を阻害しない範囲であれば、その他の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、柔軟剤、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤等が挙げられる。しかし、添加剤合計の含有量は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0047】
原紙11,12,13は、抄紙機を用いた抄造工程によって製造することができる。抄造工程では、ドライヤー面及びフェルト面を構成可能な抄紙機を用いることが好ましい。例えば、プレスロールとフェルトによって脱水するプレス工程、ヤンキードライヤーを用いて乾燥させる乾燥工程を行うことが好ましく、かかる装置を備える抄紙機を用いることが好ましい。これにより、原紙11,12,13に、ドライヤー面やフェルト面を形成させることができるため、手触りが向上し、拭き心地もより優れたものとすることができる。
【0048】
抄造工程において、例えば、原紙11,12,13の坪量は、例えば、使用パルプの量を増やすこと等によって大きくすることができる。そして、原紙11,12,13の紙厚は、例えば、使用パルプの量を増やすこと等によって大きくすることができる。また、縦強度及び横強度は、使用パルプの量を増やすこと、DDR等により叩解を強めること、湿潤紙力剤や乾燥紙力剤等を添加すること等によって大きくすることができる。
【0049】
(製品形態等)
【0050】
上述した紙ワイパー1は、原紙11,12,13をプライアップして、エンボス20を形成したものであればよいが、必要に応じて、プライアップされた原紙11,12,13を複数枚に折りたたまれたもの(例えば、3つ折り、4つ折り等)でもよい。その好適な態様の一例は、原紙11,12,13を3枚に重ねて、4つ折りにされている紙ワイパー1が挙げられる。
【0051】
4つ折りとしては、例えば、略矩形の紙ワイパー1を2つ折りした後、さらに垂直に2つ折りする態様が採用でき、例えば、クロス折り、直角四つ折り、十字折り等と呼ばれる態様を採用できる。その他にも、外四つ折り(W折り等)、巻き四つ折り、巻々四つ折り、観音折り等のような態様を採用できる。このように、製品の用途等に応じて適宜好適な折り方を選択できる。
【0052】
紙ワイパー1は、製品としての寸法形状は特に限定されず、使用態様や使用目的等を考慮して、その商品に適した形状とすることができる。例えば、矩形状(長方形状、正方形状)、円形状、楕円形状、多角形状等であってもよいが、ポップアップ式の紙ワイパー入り収納箱に使用する場合等には、矩形状であることが好ましい。
【0053】
例えば、本実施形態に係る紙ワイパー1が矩形状である場合、紙ワイパー1の縦幅は、320mm以上350mm以下であることが好ましく、325mm以上345mm以下であることがより好ましい。そして、紙ワイパー1の横幅は、370mm以上395mm以下であることが好ましく、375mm以上390mm以下であることがより好ましい。さらには、縦幅及び横幅が、いずれも上述した範囲にあることが好ましい。
【0054】
以上説明してきたように、本実施形態に係る紙ワイパー1は、吸水性が高く、使用感が良く、丈夫であり、発塵が少ないものである。よって、本実施形態に係る紙ワイパー1は、ラボ等の研究所、電子部品、化粧品、医薬品、食品、その他各種材料及び各種製品の製造工場、病院や介護施設等の医療施設等において好適に使用することができる。
【実施例0055】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
【0057】
(紙ワイパー1の作製)
【0058】
まず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を材料として用い、プレスロールとフェルトによって脱水するプレス工程、ヤンキードライヤーを用いて乾燥させる乾燥工程を行うことによって、ドライヤー面及びフェルト面を原紙に構成できる抄紙機によって原紙11,12,13を作製した。そして、これらの原紙11,12,13を3プライ重ね合わせ、積層体とした。3プライの原紙11,12,13を重ねる際の紙面の配置については、積層体の最表面(
図1において最上位の原紙11の表面)及び再裏面(
図1において最下位の原紙13の裏面)の両面がドライヤー面となるように配置した。具体的には、
図1において、最上位の原紙11の上面(すなわち積層体の最表面)がドライヤー面であり下面がフェルト面、中間位の原紙12の上面がフェルト面であり下面がドライヤー面、及び、最下位の原紙13の上面がフェルト面であり下面(すなわち積層体の再裏面)がドライヤー面となるように配置した。続いて、この積層体に、ピンエンボス、又はドット状エンボスによって、エンボス加工を施して、4つ折り形状にすることによって、
図1及び
図2に示す構造を有する紙ワイパー1を作製した。
【0059】
(物性の測定)
【0060】
製品坪量は、紙ワイパー1の3プライ合計(プライアップされた3枚の原紙11,12,13の合計)の坪量であり、JIS P 8124に準拠して測定した。
【0061】
製品紙厚は、紙ワイパー1の3プライ合計(プライアップされた3枚の原紙11,12,13の合計)の紙厚であり、JIS P 8111の条件下(23±1℃、50±2%相対湿度でシックネスゲージ(尾崎製作所製のアップライト ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK R1-B型」)を用い、測定子に3.7kPaの圧力を加えて測定した。
【0062】
紙ワイパー1の3プライ合計の乾燥状態における縦強度(製品強度の縦強度)は、紙ワイパー1(原紙11,12,13の3プライ)について乾燥時の縦幅方向の引っ張り強さであり、JIS P 8113に準拠して測定した。ここでいう縦幅方向とは、紙ワイパー1の製造時の流れ方向(MD;Machine Direction)をいい、紙ワイパー1の短手方向(縦幅方向)の強度をいう。
【0063】
紙ワイパー1の3プライ合計の乾燥状態における横強度(製品強度の横強度)は、紙ワイパー1(原紙11,12,13の3プライ)について乾燥時の横幅方向の引っ張り強さであり、JIS P 8113に準拠して測定した。ここでいう横幅方向とは、紙ワイパー1の製造時の流れ方向に垂直な方向(CD;Cross Direction)をいい、紙ワイパー1の長手方向(横幅方向)の強度をいう。
【0064】
エンボス形状について、「ピンエンボス」は円錐形状であり、「ドット状エンボス」は円柱形状である。
【0065】
エンボス形状のピッチ間隔は、測定対象である紙ワイパー1の表面を上面視した状態(
図2参照)で、顕微鏡(キーエンス社製、デジタルマイクロスコープ「VHX-6000」)を用いて倍率20倍の条件で撮像し、得られた撮像画像において、隣接するエンボス201,202の重心O1,O2の直線距離を測定した。このようにして、30点のピッチ間隔を点測定し、これらの算術平均をピッチ間隔とした。
【0066】
エンボス形状のエンボス面積率は、測定対象である紙ワイパー1の表面を上面視した状態(
図2参照)で、顕微鏡(キーエンス社製、デジタルマイクロスコープ「VHX-6000」)を用いて倍率20倍の条件で撮像し、得られた撮像画像において、3枚の原紙11,12,13のうち最表面の原紙11に形成されたエンボス21について、上面視した際の面積を求めた。このようにして求めた30点の合計値を、単位面積あたりの割合(面積率%)に換算した。
具体的には、撮像画像中の隣り合うエンボス21を30点選択し、これら30点のエンボス全てを包含する最小の外接矩形(長方形又は正方形)を仮想し、これを単位面積とした。そして、以下の式に基づきエンボス面積率を求めた。
エンボス面積率(%)=隣り合うエンボス30点の面積の合計/30点のエンボス全てを包含する最小の外接矩形の面積×100
【0067】
エンボス形状のエンボス深さは、測定対象である紙ワイパー1の表面を断面視した状態(
図1参照)で、ワンショット3D形状測定機(キーエンス社製、デジタルマイクロスコープ「VR-3000」)を用いて倍率12倍の条件で撮像し、得られた撮像画像において、3枚の原紙11,12,13が重ね合わされた状態において、その最下層(最下位)である原紙13のエンボス23の外表面の最下部から、最上層(最上位)である原紙11の外表面までの深さDを測定した。このようにして、30点のエンボス深さDを測定し、これらの算術平均をエンボス深さとした。
【0068】
原紙坪量は、原紙11,12,13について、1枚の坪量をJIS P 8124に準拠して測定した。
【0069】
原紙紙厚は、原紙11,12,13について、1枚の紙厚をJIS P 8111の条件下(23±1℃、50±2%相対湿度でシックネスゲージ(尾崎製作所製のアップライト ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK R1-B型」)を用い、測定子に3.7kPaの圧力を加えて測定した。
【0070】
なお、特に断りがない限り、本実施例における測定・評価は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持した後に行った。
【0071】
<実施例2~8、比較例1~5>
【0072】
表1及び表2に記載した条件となるよう変更した点以外は、実施例1と同様にして紙ワイパーを作製した。
【0073】
<評価>
【0074】
(吸水率(TWA;Total Water Absorbency)
吸水性(TWA)は、まず、得られた紙ワイパー1を76×76mmの正方形の試験片に切断し、乾燥質量(W1)を測定した。その後、この試験片を蒸留水中に2分間浸漬した後、試験片の1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態(RH100%)で吊るし、30分放置後の質量(W2)を測定した。そして、(W2-W1)の値を算出し、この値をサンプル1m2あたりの保水量(g/m2)に換算し、吸水率とした。
【0075】
以下の項目は、60名を対象とする官能評価として行った。各項目について、60名が以下の基準に基づき1点から5点で評価し、その平均点を求めた。その平均点から以下の基準に基づき評価した。
【0076】
(拭き心地の評価)
上記条件で作製したサンプルを準備した。このサンプルを用いて23±1℃、50±2%RHの条件で対象物(50mLの水をこぼしたブラスチック性のデスク)を拭き取り、その際の拭き心地を1点から5点の5段階で評価した。
・4点、5点:拭き心地が特に良く、対象物をスムーズに拭くことができた。
・3点:拭き心地が良く、対象物をスムーズに拭くことができた。
・1点、2点:対象物の拭き心地が悪かった。
総合評価
・「◎」:60名の平均点が4.0点以上
・「〇」:60名の平均点が3.0点以上4.0点未満
・「×」:60名の平均点が3.0点未満
【0077】
(丈夫さの評価)
上記条件で作製したサンプルを準備した。このサンプルを用いて23±1℃、50±2%RHの条件で対象物(50mLの水をこぼしたブラスチック性のデスク)を拭き取り、その際のサンプルの丈夫さを1点から5点の5段階で評価した。
・4点、5点:対象物を拭いた際、特に破れづらく感じた。
・3点:対象物を拭いた際、破れづらく感じた。
・1点、2点:対象物を拭いた際、破れた又は破れやすく感じた。
総合評価
・「◎」:60名の平均点が4.0点以上
・「〇」:60名の平均点が3.0点以上4.0点未満
・「×」:60名の平均点が3.0点未満
【0078】
(発塵の少なさの評価)
上記条件で作製したサンプルを準備した。このサンプルを用いて23±1℃、50±2%RHの条件で対象物(50mLの水をこぼしたブラスチック性のデスク)を拭き取り、その際の発塵の有無を1点から5点の5段階で評価した。
・4点、5点:対象物を拭いた際、特に毛羽立ちが少なかった。
・3点:対象物を拭いた際、毛羽立ちが少なかった。
・1点、2点:対象物を拭いた際、特に毛羽立ちが多く、対象物に紙粉等の発塵が確認された。
総合評価
・「◎」:60名の平均点が4.0点以上
・「〇」:60名の平均点が3.0点以上4.0点未満
・「×」:60名の平均点が3.0点未満
【0079】
各実施例及び各比較例の条件及び評価結果を、表1及び表2に示す。なお、表中の「ピン」とはピンエンボスを意味し、「ドット状」とはドット状エンボス(円柱形状)を意味する。
【0080】
【0081】
【0082】
以上より、本実施例の紙ワイパー1は、少なくとも吸水性が高く、使用感が良く、丈夫であり、さらには発塵が少ないことが、少なくとも確認された。