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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087619
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】壁面洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 11/38 20060101AFI20220606BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20220606BHJP
   B62D 57/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
A47L11/38
B08B3/02 E
B62D57/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199651
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光一
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA31
3B201AB51
3B201BB22
3B201BB46
3B201BB57
3B201BB90
3B201BB92
(57)【要約】
【課題】減圧装置の減圧調整によらずに、吸着を維持しながら、移動しやすい壁面洗浄装置を提供とする。
【解決手段】壁面Wとの間に内部空間を画定するハウジング2と、内部空間に配置される洗浄ユニット3と、ハウジング2の周縁部をシールするシール手段6であって、壁面Wの段差に応じて伸縮可能な伸縮部7と、壁面Wに吸着し、通気孔12を有する封止部9と、を有するシール手段6と、装置本体を支持する支持手段13と、支持手段13に連結し、壁面Wを移動する走行手段16と、壁面Wに吸着可能な吸着手段18と、ハウジング2の下部に、連結口22を介して配置される吸引手段21と、有する、壁面洗浄装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面との間に内部空間を画定するハウジングと、
前記内部空間に配置される洗浄ユニットと、
前記ハウジングの周縁部をシールするシール手段であって、
前記壁面の段差に応じて伸縮可能な伸縮部と、
前記壁面に吸着する封止部であって、通気孔を有する封止部と、
を有するシール手段と、
装置本体を支持する支持手段と、
前記支持手段に連結し、前記壁面を移動する走行手段と、
前記壁面に吸着可能な吸着手段と、
前記ハウジングの下部に、連結口を介して配置される吸引手段と、
有する、壁面洗浄装置。
【請求項2】
前記伸縮部は、湾曲形状である、
請求項1に記載の壁面洗浄装置。
【請求項3】
前記封止部は、
弾性部材からなる第一層と、
樹脂部材からなる第二層と、
を有する、請求項1または2に記載の壁面洗浄装置。
【請求項4】
前記封止部は、周縁部に均等に配置される複数の前記通気孔を有する、
請求項1~3のいずれかに記載の壁面洗浄装置。
【請求項5】
前記支持手段は、
前記ハウジングを支持するサスペンションと、
前記走行手段を支持する走行手段支持部と、を有する、
請求項1~4のいずれかに記載の壁面洗浄装置。
【請求項6】
前記走行手段を駆動する駆動源を更に有し、
前記走行手段は、前記駆動源によって回転するホイールを有する、
請求項1~5のいずれかに記載の壁面洗浄装置。
【請求項7】
前記吸着手段は、前記壁面との間にクリアランスを有するように配置される、
請求項1~6のいずれかに記載の壁面洗浄装置。
【請求項8】
前記吸着手段は、磁性体である、
請求項1~7のいずれかに記載の壁面洗浄装置。
【請求項9】
前記通気孔から取り込む前記ハウジング内の空気量を加えた前記封止部の周縁部の面積に対する吸着量に対し、前記ハウジング内の負圧が、大気圧から5~30kPa減圧される、請求項1~8のいずれか1項記載の壁面洗浄装置。
【請求項10】
前記通気孔から取り込む前記ハウジングの空気量と、前記噴射ノズルから噴射された廃液量を加えた前記封止部の周縁部の面積に対する吸着量に対し、前記ハウジング内の負圧が、大気圧から10~50kPa減圧される、請求項1~8のいずれか1項記載の壁面洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面へ吸着しながら移動し、壁面の洗浄や剥離等を行う壁面洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶、建築物あるいは大型のタンク類等の内壁面や外壁面の清掃や塗装の前処理を行う場合、対象となる壁面に壁面洗浄装置を吸着させて、洗浄や剥離等が行われていた。
【0003】
例えば、平10―249296号公報(以下、「特許文献1」)に記載の壁面洗浄装置は、自走式研掃装置であって、ケーシングと、シール部材と、減圧通路と、研掃手段と、移動手段とを有する。ケーシングは、壁面との間に空間部を形成する。シール部材は、ケーシングの周縁部もしくはその近傍に装着され、空間部を気密にシールする。減圧通路は、一端が空間部に開口し、他端側が減圧装置に連通する。研掃手段は、空間部内の壁面の研掃を行う。移動手段は、空間部内を減圧し装置本体を壁面に吸着させた状態で、装置本体を壁面に沿って移動させ得る。研掃手段は、噴流ノズルと、剥離部材とを有する。噴流ノズルは、高圧水供給装置に接続され空間部内の壁面に向かって噴流を噴射し得る。剥離部材は、壁面上の塗装被膜及び/又は異物等の付着物を剥離する。
【0004】
また、壁面洗浄装置ではないが、例えば、2018-131165号公報(以下、「特許文献2」)に記載の壁面吸着装置は、壁面が湾曲している等、平坦でない壁面にも吸着性能を維持できる。この壁面吸着装置は、隔壁と、吸引部と、スカートとを有する。隔壁は、壁面と対向する凹部空間を区画する。吸引部は、凹部空間の空気を連続して吸引することが可能である。スカートは、凹部空間の周縁部において、隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置されると共に凹部空間の周縁部の外側に向かって延在し、可撓性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の壁面洗浄装置では、シール部材の密着と減圧装置による吸着を実現している。
しかし、減圧装置の減圧力が強すぎると移動ができなくなり、減圧装置の減圧力が弱すぎると吸着力が低下し、洗浄後の廃液の吸引や封止が弱くなってしまう。
【0006】
特許文献2に記載の壁面吸着装置では、壁面の凹凸部や段差部を検知し、壁面に対する減圧力を調整する。さらに、ハウジング(凹部空間)内部の空気をできるだけ抑制することが記載されている。
しかし、壁面洗浄装置を連続的に壁面に吸着させて洗浄や剥離等を行う場合、壁面の表面形状には複数の凹凸箇所が存在する。そのため、減圧装置のみにより減圧力を調整する場合、減圧力が強すぎることによるフリーズ状態は回避できるが、洗浄後の廃液の吸引・封止力は向上できない。
【0007】
本発明は、減圧装置の減圧調整によらずに、吸着を維持しながら、移動しやすい壁面洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の壁面洗浄装置は、
壁面との間に内部空間を画定するハウジングと、
前記内部空間に配置される洗浄ユニットと、
前記ハウジングの周縁部をシールするシール手段であって、
前記壁面の段差に応じて伸縮可能な伸縮部と、
前記壁面に吸着する封止部であって、通気孔を有する封止部と、
を有するシール手段と、
装置本体を支持する支持手段と、
前記支持手段に連結し、前記壁面を移動する走行手段と、
前記壁面に吸着可能な吸着手段と、
前記ハウジングの下部に、連結口を介して配置される吸引手段と、
有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、減圧装置の減圧調整によらずに、吸着を維持しながら、移動しやすい壁面洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の壁面洗浄装置を示す正面図
図2】実施形態の壁面洗浄装置を示す断面図
図3】変形例の壁面洗浄装置を示す断面図
図4】実施形態のシール手段の詳細を示す断面図
図5】実施形態の通気孔から取り入れられることで発生するハウジング内の空気の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0012】
(壁面洗浄装置の構成)
図1に示すように、本実施形態の壁面洗浄装置1は、船舶等の壁面の表面に吸着しながら、壁面の表面を洗浄する。壁面洗浄装置1は、ハウジング2と、洗浄ユニット3と、支持手段13と、走行手段16と、吸引手段21とを有する。ハウジング2は、壁面Wとの間に内部空間を画定する。洗浄ユニット3は、ハウジング2の内部空間に配置される。支持手段13は、シール手段6と、壁面洗浄装置本体とを支持する。シール手段6は、ハウジング2の周縁部をシールする。走行手段16は、支持手段13に連結し、壁面を移動する。吸引手段21は、連結口22を介して、ハウジング2の下部に配置される。
【0013】
ハウジング2は、筒状であり、壁面Wに内部空間を画定する。ハウジング2は、内部空間を画定できればよい。ハウジング2は、例えば、円筒状、多角形状である。
壁面Wの洗浄や剥離等の作業中、ハウジング2の内部空間は、常に吸引手段21の吸引によって、負圧状態になる。また、ハウジング2の内部空間には、洗浄ユニット3から噴射される高圧水や、処理後の屑や廃液が存在する。そのため、ハウジング2の材質を金属等の硬度の高いものとすることや、ハウジング2の内部空間の容積に応じて、ハウジング2の厚みを調整してもよい。
【0014】
洗浄ユニット3は、ハウジング2の内部に配置される。洗浄ユニット3は、高圧水供給源(不図示)から供給される高圧水を、高圧水供給管4を介して噴射ノズル5から噴射することで、壁面Wの洗浄や剥離等を行う。複数の噴射ノズル5が配置されてもよい。高圧水供給管4は、例えば、十字状、L字状、環状である。ハウジング2の内部空間の範囲で壁面Wの洗浄や剥離等を行うので、洗浄効率を最大化するため、高圧水供給管4の下端に最適な数の噴射ノズル5を配置できる。
【0015】
シール手段6は、図2に示すように、ハウジング2の周縁部や、壁面Wの接触面をシールする。シール手段6の材質は、例えば、ゴム等の弾性部材である。シール手段6は、伸縮部7と、封止部9とを有する。伸縮部7は、壁面Wの段差に応じて伸縮可能である。封止部9は、壁面Wに吸着する。封止部9は、弾性部材10の一部から空気が通過し、弾性部材10と樹脂部材11の隙間を形成する通気孔12を有する。
【0016】
シール手段6の変形例を図3に示す。変形例のシール手段6は、伸縮部7と、封止部9とを有する。伸縮部7は、壁面Wの段差に応じて伸縮可能である。封止部9は、壁面Wに吸着する。封止部9は、樹脂部材11の一部から空気が通過し、弾性部材10と樹脂部材11の隙間を形成する通気孔12を有する。図2図3では、通気孔12の位置が異なる。図2では、通気孔12は、弾性部材10の表面に形成される。図3では、通気孔12は、図3の紙面に垂直な方向において、弾性部材10と樹脂部材11の間に形成される。その他、外部から空気が通過できる孔であれば、場所は問わない。
【0017】
伸縮部7は、湾曲形状であり、内部に伸縮空間8を有する。ただし、伸縮空間8を有する形状であれば、伸縮部7は湾曲形状に限られず、円弧形状、段差形状等でもよい。洗浄や剥離の対象となる壁面Wに存在する凹凸等の段差の高さに追従できる範囲の縮み代や伸び代になるように、伸縮部7は調整可能である。
壁面Wの表面形状がフラットな場合は、伸縮部7に初期縮みを与えた状態である。壁面Wの表面に凹凸等の段差がある場合は、伸縮部7が凹凸に追従して伸縮する状態となる。これにより、段差の影響で壁面Wからのハウジング2や洗浄ユニット3の距離が変動したとしても、吸着性能を維持した状態で、洗浄や剥離等を行うことができる。
【0018】
封止部9は、壁面Wと接触する。封止部9は、壁面Wの材質に対して吸着や接触に適した材質である。封止部9は、弾性部材(第一層)10と、樹脂部材(第二層)11を有する二層構造が望ましい。一般に、シール手段6は、弾性力を有し、吸着可能な材質が好ましいため、ゴム等の弾性部材が用いられる。しかし、壁面Wが金属である場合は、ゴム等の弾性部材で吸着しながら移動すると、摩擦抵抗が悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。樹脂部材11を壁面Wに接触させるように、弾性部材10と樹脂部材11の二層構造とすることで、追従性能と吸着性能を確保できる。また、二層構造とすることで、伸縮部7の物性と壁面Wに吸着しやすい物性の性能を個別に向上させることができる。壁面Wの形状に段差がある場合や球面である場合も、シール手段6の長寿命化を図ることができる。また、樹脂部材11は、通気孔12から吸引される空気をより一層取り込みやすいように、通気孔12との接触部を回避するための溝を形成することもできる。溝の形状は、円形、楕円形、多角形等を問わない。
【0019】
通気孔12は、封止部9の周縁部に形成される。通気孔12の形状は、例えば、円形状、多角形状であるが、これに限らない。吸引手段21でハウジング2内を吸引することによって、ハウジング2内に存在する洗浄後の屑や廃液が回収されることに加え、ハウジング内が減圧され、負圧が発生する。負圧により、通気孔12を介して外部の空気がハウジング2内に吸引される。ハウジング2内の負圧によって吸着が維持された状態に加えて、通気孔12を介して空気が吸引されることで、壁面洗浄装置1が特定の位置で吸着してフリーズ状態になることを抑制し、壁面洗浄装置1を移動させながら、壁面Wの洗浄や剥離等を行うことができる。
【0020】
壁面Wの表面に凹凸等の段差がある場合、特定の箇所だけに通気孔12を形成すると、壁面洗浄装置1の姿勢と壁面Wの形状によって、吸着のバランスが不均等になる可能性がある。そのため、複数の通気孔12が、封止部9の周縁部に均等に配置されることが望ましい。例えば、4~50箇所の通気孔12を個別に、封止部9の周縁部に均等に配置してもよい。また、封止部9の周縁部の4~8か所に対して、2~4箇所の通気孔12をセットで配置してもよい。
【0021】
図4に示すように、支持手段13は、装置本体を支持する枠組みであり、金属等の損傷のない部材が望ましい。本実施形態の支持手段13は、骨子状であるが、それに限られるものではなく、ケーシング等で囲われた形態でもよい。
【0022】
支持手段13は、サスペンション14と、走行手段支持部15とを有する。サスペンション14は、ハウジング2を支持する。走行手段支持部15は、走行手段16を支持する。
サスペンション14は、1点の支持ではなく、3点や4点の複数個所でハウジング2を支持する。これにより、壁面Wの凹凸状等の段差をホイール17が乗り越える場合に、ハウジング2の傾斜を抑え、ハウジング2、シール手段6の段差への追従性能が向上する。サスペンション14は、スプリング部材やシリンダ機構等により構成される。また、走行手段支持部15は、サスペンション14とは役割が異なり、支持部の母材の役割を有する。走行手段支持部15は、走行手段16に合わせて確実に壁面洗浄装置1を支持する。サスペンション14と走行手段支持部15に分けることによって、壁面Wの凹凸等の段差がある場合にハウジング2のバランスを調整できるとともに、前後左右方向に移動する走行手段16を確実に固定できる。
【0023】
走行手段16は、支持手段13に連結し、壁面Wを移動する。油圧や電動の駆動源20の起動によるホイール軸の回転に伴って、ホイール17が回転し、壁面洗浄装置1が壁面Wを移動する。また、壁面Wに壁面洗浄装置1が吸着するように、吸着手段18を配置する。壁面Wが金属である場合は、吸着手段18は、壁面洗浄装置1の重さに耐え得る磁力を有する。これにより、船舶等の大規模な洗浄、剥離等の対象の素材が金属である場合に、より強固な吸着を実現できる。
【0024】
吸着手段18は、壁面Wとの間にクリアランス19を形成できる。吸着手段18は磁力を有するため、壁面Wとの吸着力が強く、壁面に密着させると、吸着力が強すぎて壁面洗浄装置1が移動できなく(フリーズ)なり、壁面Wにも傷をつけてしまう。クリアランス19を形成することで、吸着力を最適とし、それらの弊害を回避できる。クリアランス19の高さ(吸着手段18と壁面Wの距離)は、段差乗り越えが可能な高さとし、このクリアランス19において、壁面洗浄装置1が壁面Wに十分吸着できる吸着力を確保できる強さの磁石であることが必要である。
【0025】
吸引手段21は、ハウジング2内の洗浄屑、廃液、空気等を外部に排出する。ハウジング2の下部に、連結口22を介して吸引手段21を配置する。吸引源(不図示)の起動によって、ハウジング2内の洗浄屑、廃液、空気等を吸引手段21が吸引する。吸引手段21は、例えば、市販のバキューム装置である。
【0026】
ハウジング2内の負圧を、通気孔12から取り込むハウジング2内の空気量を加えた封止部9の周縁部の面積に対する吸着量に対し、大気圧から5~30kPa減圧することによって、追従性能や吸着性能を維持することができる。
【0027】
壁面洗浄装置1は、壁面Wの洗浄や剥離等を目的としており、作業後の廃液をハウジング2内に溜め込まないようにすることが、作業性の向上に繋がる。そのため、ハウジング2内の負圧を、通気孔12から取り込むハウジング2の空気量だけでなく、噴射ノズル5から噴射された廃液量を加えた封止部9の周縁部の面積に対する吸着量に対し、大気圧から10~50kPa減圧することも効果的である。
【0028】
図5に示すように、吸引手段21の吸引によって、通気孔12からハウジング2内に取り込まれる空気の流れEが生じる。これにより、廃液が特定箇所に滞留することなく、吸引が促進される。さらに、吸引手段21の吸引量(負圧)に対して、通気孔12から供給される空気量や廃液量を考慮て負圧のボーダーを設定することによって、壁面Wに存在する凹凸等の段差を洗浄、剥離等することを含め、常時同様の設定で作業を進めることができる。外部から取り込む空気がない場合は、吸着性能が強すぎて追従性能(装置の移動)が低下してしまう。これに対し、本実施形態では外部から空気を取り込むため、吸着性能と追従性能を発揮できる。
【0029】
次に、本実施形態の洗浄工程について説明する。
壁面Wの洗浄や剥離等を行う場合、まず、作業者が、壁面Wの洗浄や剥離等を行う場所の付近の壁面Wに壁面洗浄装置1を当接する。吸着手段18の駆動源(不図示)を起動し、吸着手段18の吸着力(例えば、磁力等)が作用することで、装置全体を壁面Wに吸着させる。吸着力の強度は、洗浄や剥離等の対象となる部材の材質(金属か非金属か等)に応じて、壁面洗浄装置1の総重量や重力を加味して、吸着が実現できる値とする。
【0030】
次に、作業者が、壁面洗浄装置1とは離れた位置で、遠隔操作装置(例えば、不図示のPCや制御パネル等。)を操作して、吸引手段21、走行手段16、洗浄ユニット3を作動する。具体的には、吸引駆動源(不図示)を起動し、吸引手段21を作動することで、ハウジング2内の空気を吸引する。その後、走行駆動源20を起動し、壁面Wに対して、走行手段16を上下左右方向に移動可能にする。さらに、洗浄駆動源(不図示)を起動し、高圧水供給管4から噴射ノズル5を介して、洗浄ユニット3内に高圧水を供給可能にする。なお、洗浄や剥離等を目的とする高圧水の圧力とは、例えば、30~300MPa程度である。
【0031】
次に、洗浄や剥離等の対象位置に対して、ハウジング2内で噴射ノズル5から高圧水を噴射する。高圧水を噴射しながら、走行手段16を上下左右に移動させることで、壁面Wの洗浄や剥離等を行う。なお、走行手段16の走行速さと噴射時間は、洗浄対象の汚れや表面状況によっても変動する。船舶等の場合、貝殻等の除去が困難なものが付着していることもあり、例えば、0.5~2m/minで走行手段16を移動させながら洗浄を行う。
【0032】
ハウジング2内の負圧を負圧調整弁23で事前に設定し、ハウジング2内の圧力が基準を下回らないようにする。これにより、通気孔12による減圧力調整が不十分な場合でも、負圧調整弁12により減圧力調整をフォローでき、減圧力が強すぎることによるフリーズ状態を回避することができる。
【0033】
本実施形態では、シール手段6を伸縮部7と封止部9に分けたことによって、追従性能と吸着性能を維持し、壁面洗浄装置を壁面に吸着させながら、壁面の洗浄や剥離等を行うことができる。さらに、通気孔12、負圧調整弁23によって、吸引手段21の吸引で発生するハウジング2内の負圧を調整できる。
【0034】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 壁面洗浄装置
2 ハウジング
3 洗浄ユニット
4 高圧水供給管
5 噴射ノズル
6 シール手段
7 伸縮部
8 伸縮空間
9 封止部
10 弾性部材
11 樹脂部材
12 通気孔
13 支持手段
14 サスペンション
15 走行手段支持部
16 走行手段
17 ホイール
18 吸着手段
19 クリアランス
20 駆動源
21 吸引手段
22 連結口
W 壁面
E 空気の流れ
図1
図2
図3
図4
図5