(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087623
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】モータコアの焼鈍装置
(51)【国際特許分類】
C21D 9/00 20060101AFI20220606BHJP
C21D 1/26 20060101ALI20220606BHJP
C21D 1/42 20060101ALI20220606BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20220606BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C21D9/00 S
C21D1/26 S
C21D1/42 J
H05B6/10 331
H01F41/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199657
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】笠井 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一晃
(72)【発明者】
【氏名】竹内 護
(72)【発明者】
【氏名】谷口 寛和
【テーマコード(参考)】
3K059
4K042
5E062
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB28
3K059AD03
3K059AD05
3K059CD53
3K059CD75
4K042AA25
4K042BA13
4K042DA03
4K042DB01
4K042EA01
5E062AA06
5E062AC15
(57)【要約】
【課題】異なる外径を有する複数種類のモータコアに対して、適切にモータコアの焼鈍を行うことが可能なモータコアの焼鈍装置を提供する。
【解決手段】このステータコア1(モータコア)の焼鈍装置100は、環状のステータコア1の軸方向から見てステータコアを周状に取り囲むように設けられ、交流電源20(電流供給部)により供給された電流により発生する磁束によってステータコア1を発熱させる誘導加熱用の複数の外側コイル部10(コイル部)を備える。複数の外側コイル部10の各々は、ステータコア1の径方向に沿って移動可能に構成されている。また、複数の外側コイル部10の各々が径方向に沿って移動されることによって、複数の外側コイル部10によって取り囲まれる領域101の大きさが変化されるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流供給部と、
環状のモータコアの軸方向から見て前記モータコアを周状に取り囲むように設けられ、前記電流供給部により供給された電流により発生する磁束によって前記モータコアを発熱させる誘導加熱用の複数のコイル部と、を備え、
前記複数のコイル部の各々は、前記モータコアの径方向に沿って移動可能に構成されており、
前記複数のコイル部の各々が前記モータコアの径方向に沿って移動されることによって、前記複数のコイル部によって取り囲まれる領域の大きさが変化されるように構成されている、モータコアの焼鈍装置。
【請求項2】
前記複数のコイル部の各々が径方向に沿って移動されることによって、前記モータコアの周方向に隣り合う前記コイル部同士の前記軸方向における重なり具合が変化されることにより、前記複数のコイル部によって取り囲まれる前記領域の大きさが変化されるように構成されている、請求項1に記載のモータコアの焼鈍装置。
【請求項3】
前記複数のコイル部の各々は、周方向における所定の位置の周方向一方側に設けられる一方側部分と、前記所定の位置の周方向他方側に設けられる他方側部分とを含み、
前記複数のコイル部の各々において、前記一方側部分と前記他方側部分とは前記軸方向に交互に配列されており、
周方向に互いに隣り合う前記コイル部同士の前記一方側部分と前記他方側部分とが前記軸方向に交互に配置されるように構成されている、請求項1または2に記載のモータコアの焼鈍装置。
【請求項4】
前記複数のコイル部の各々は、周方向における所定の位置から周方向一方側に延びる第1部分と、前記第1部分の周方向一方側の端部から折り返されて前記所定の位置まで戻るとともに前記第1部分と前記軸方向に隣り合う第2部分と、を含み、
前記複数のコイル部の各々において、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられる絶縁性の磁性部材をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のモータコアの焼鈍装置。
【請求項5】
前記複数のコイル部は、径方向外側に突出するように設けられるとともに締結部材により固定される締結部材固定部を含む前記モータコアを周状に取り囲むように設けられており、
前記複数のコイル部の各々は、前記軸方向から見て、前記モータコアの前記締結部材固定部が基準位置に配置された状態で前記モータコアの前記締結部材固定部の径方向外側に配置される固定部対応部を含み、
前記固定部対応部は、前記軸方向から見て、前記モータコアの周方向において前記固定部対応部と隣接する前記コイル部の部分よりも径方向外側に設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載のモータコアの焼鈍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータコアの焼鈍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータコアを発熱させるコイル部を備えるモータコアの焼鈍装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、モータコアの径方向外側においてモータコアと同心円状に配置された環状の外側誘導コイルと、モータコアの径方向内側においてモータコアと同心円状に配置された環状の内側誘導コイルと、を備えるモータコアの焼鈍装置が開示されている。また、このモータコアの焼鈍装置は、外側誘導コイルおよび内側誘導コイルに交流電流を印加する交流電源を備える。交流電源により外側誘導コイルおよび内側誘導コイルに交流電流が印加されることによって、外側誘導コイルおよび内側誘導コイルから発生する磁束によりモータコアが発熱する。ここで、上記特許文献1には明記されていないが、外側誘導コイルの形状は変化しないので、外側誘導コイルの内径は一定であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のモータコアの焼鈍装置では、外側誘導コイルの内径が一定であるので、たとえばモータコアの外径が大きい機種の場合には、モータコアを外側誘導コイルの径方向内側に配置できず、焼鈍が行えない。また、モータコアの外径が小さい機種の場合には、外側誘導コイルとモータコアとの間の距離が大きくなるため、モータコアの発熱効率が低下し、モータコアを適切に焼鈍することが困難な場合がある。したがって、異なる外径を有する複数種類のモータコアに対して、適切にモータコアの焼鈍を行うことが可能なモータコアの焼鈍装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、異なる外径を有する複数種類のモータコアに対して、適切にモータコアの焼鈍を行うことが可能なモータコアの焼鈍装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるモータコアの焼鈍装置は、電流供給部と、環状のモータコアの軸方向から見てモータコアを周状に取り囲むように設けられ、電流供給部により供給された電流により発生する磁束によってモータコアを発熱させる誘導加熱用の複数のコイル部と、を備え、複数のコイル部の各々は、モータコアの径方向に沿って移動可能に構成されており、複数のコイル部の各々が径方向に沿って移動されることによって、複数のコイル部によって取り囲まれる領域の大きさが変化されるように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面によるモータコアの焼鈍装置では、上記のように、複数のコイル部の各々が径方向に沿って移動されることによって、複数のコイル部によって取り囲まれる領域の大きさが変化される。これにより、複数のコイル部を移動させることにより、モータコアの大きさに対応させて複数のコイル部によって取り囲まれる領域を変化させることができる。その結果、異なる外径を有する複数種類のモータコアの各々に対応するように、上記領域の大きさを、焼鈍を行うために適切な大きさに変化させることができる。これにより、異なる外径を有する複数種類のモータコアに対して、適切にモータコアの焼鈍を行うことができる。また、異なる外径を有する複数種類のモータコアに対して共通の焼鈍装置を用いることができるので、製造設備を簡素化することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異なる外径を有する複数種類のモータコアに対して、適切にモータコアの焼鈍を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態によるステータコアの焼鈍装置の構成を示す概略的な平面図である。
【
図2】第1実施形態によるステータコアの焼鈍装置(
図1よりも外径の小さいステータコアが配置されている状態)の構成を示す概略的な平面図である。
【
図3】第1実施形態によるステータコアの焼鈍装置の構成を示した概略的な斜視図である。
【
図4】
図3の周方向に隣り合う外側コイル部同士が軸方向に重なる部分の部分拡大図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4の1000-1000線に沿った断面図である。
図5(b)は、フェライトコアが設けられていない比較例の図である。
【
図6】第2実施形態によるステータコアの焼鈍装置の構成を示す概略的な平面図である。(
図6(b)は、
図6(a)よりも外径の大きいステータコアが配置されている状態の図である。)
【
図7】第3実施形態によるステータコアの焼鈍装置の構成を示す概略的な平面図である。(
図7(b)は、
図7(a)よりも外径の大きいステータコアが配置されている状態の図である。)
【
図8】第1~第3実施形態の変形例によるフェライトコアの構成を示した概略的な断面図である。
【
図9】第1~第3実施形態の変形例によるステータコアが回動される様子を示した概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1~
図5を参照して、第1実施形態によるステータコア1の焼鈍装置100について説明する。なお、焼鈍装置100による焼鈍は、ステータコア1を構成する鋼板の打ち抜きの際に生じる歪を除去するためなどに行われる。
【0013】
以下の説明では、「軸方向」とは、ステータコア1が焼鈍装置100に配置されている状態においてステータコア1の回転軸線(符号O)(C方向)に沿った方向(
図1参照)を意味する。また、「周方向」とは、ステータコア1の周方向(A方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータコア1の径方向(B方向)を意味する。なお、ステータコア1は、特許請求の範囲の「モータコア」の一例である。
【0014】
図1に示すように、焼鈍装置100は、複数の(第1実施形態では3つ)の外側コイル部10を備える。複数の外側コイル部10は、ステータコア1の軸方向から見てステータコア1を周状に取り囲むように設けられている。なお、外側コイル部10は、特許請求の範囲の「コイル部」の一例である。
【0015】
また、焼鈍装置100は、交流電源20(
図3参照)を備える。交流電源20は、複数の外側コイル部10の各々と、後述する内側コイル部30とに交流電流を供給するように構成されている。たとえば、交流電源20は、複数の外側コイル部10の各々、および、後述する内側コイル部30に直列に接続されている。また、複数の外側コイル部10は、交流電源20に対して互いに並列に接続されている。なお、交流電源20は、特許請求の範囲の「電流供給部」の一例である。
【0016】
また、複数の外側コイル部10の各々は、交流電源20により供給された交流電流により発生する磁束によって、ステータコア1を発熱させる誘導加熱用のコイルである。すなわち、複数の外側コイル部10の各々は、交流電流により発生する磁束によって径方向外側からステータコア1を発熱させるように構成されている。
【0017】
また、焼鈍装置100は、ステータコア1の径方向内側(B1側)に配置される内側コイル部30を備える。内側コイル部30は、軸方向から見て円環形状を有している。内側コイル部30は、交流電源20から供給される交流電流により発生される磁束により径方向内側からステータコア1を発熱させる誘導加熱用のコイルである。
【0018】
なお、ステータコア1は、軸方向から見て円環状に形成されている。具体的には、ステータコア1は、円環状のバックヨーク2と、バックヨーク2からB1側に突出する複数のティース3と、A方向に隣り合うティース3同士の間に形成される複数のスロット4と、を含む。また、ステータコア1は、(バックヨーク2から)径方向外側に突出するように設けられるボルト固定部5を含む。ボルト固定部5が図示しないボルトにより固定されることによって、ステータコア1が固定される。ボルト固定部5は、図示しないボルトを挿入するためのボルト挿入孔5aを含む。なお、ボルト固定部5およびボルトは、それぞれ、特許請求の範囲の「締結部材固定部」および「締結部材」の一例である。
【0019】
ここで、第1実施形態では、複数の外側コイル部10の各々は、軸方向から見て、ステータコア1のボルト固定部5が基準位置に配置された状態(
図1参照)でボルト固定部5の径方向外側に配置される固定部対応部11を含む。固定部対応部11は、軸方向から見て、ステータコア1の周方向(A方向)において固定部対応部11と隣接する外側コイル部10の部分よりも径方向外側に設けられている。なお、第1実施形態では、固定部対応部11は、U字状に形成された外側コイル部10の底部を構成する。固定部対応部11は、軸方向から見て、径方向と直交する方向に直線状に設けられている。また、基準位置とは、ボルト固定部5と外側コイル部10の周方向の中央部とが、周方向において同じ位置に配置される位置を意味する。
【0020】
これにより、ステータコア1のボルト固定部5が基準位置に配置されている状態では、ボルト固定部5の径方向外側に配置される固定部対応部11が、固定部対応部11に隣接する外側コイル部10の部分よりも径方向外側に設けられるので、ボルト固定部5と外側コイル部10(固定部対応部11)との間の距離(空間)を容易に確保することができる。その結果、ステータコア1のボルト固定部5が基準位置に配置されている状態において、ボルト固定部5が過剰に発熱されるのを防止することができる。
【0021】
また、複数の外側コイル部10の各々は、ステータコア1の径方向(B方向)に沿って移動可能に構成されている。言い換えれば、複数の外側コイル部10の各々は、軸方向から見て、ステータコア1の回転軸線(符号O)に接近する(または離間する)方向に移動可能に構成されている。なお、複数の外側コイル部10の各々は、互いに独立して径方向に移動可能に構成されている。
【0022】
ここで、第1実施形態では、
図1および
図2に示すように、焼鈍装置100は、複数の外側コイル部10の各々が径方向(B方向)に沿って移動されることによって、複数の外側コイル部10によって取り囲まれる領域101の大きさが変化されるように構成されている。
【0023】
これにより、複数の外側コイル部10を移動させることにより、ステータコア1の大きさに対応させて複数の外側コイル部10によって取り囲まれる領域101を変化させることができる。その結果、異なる外径を有する複数種類のステータコア1の各々に対応するように、上記領域101の大きさを、焼鈍を行うために適切な大きさに変化させることができる。その結果、異なる外径を有する複数種類のステータコア1に対して、適切にステータコア1の焼鈍を行うことができる。また、異なる外径を有する複数種類のステータコア1に対して共通の焼鈍装置100を用いることができるので、製造設備を簡素化することもできる。
【0024】
また、複数の外側コイル部10の各々が互いに等しい距離だけ移動されることにより、軸方向から見て、複数の外側コイル部10の各々とステータコア1との距離を互いに等しくした状態で、領域101の大きさを変化させることができる。なお、領域101の形状は、軸方向から見て略6角形形状である。
【0025】
また、第1実施形態では、焼鈍装置100は、複数の外側コイル部10の各々が径方向に沿って移動されることによって、周方向に隣り合う外側コイル部10同士の軸方向における重なり具合が変化されることにより、複数の外側コイル部10によって取り囲まれる領域101の大きさが変化されるように構成されている。
【0026】
これにより、周方向に隣り合う外側コイル部10同士の重なり具合を調整することにより、複数の外側コイル部10によって取り囲まれる領域101の大きさを容易に変化させることができる。
【0027】
具体的には、複数の外側コイル部10の各々が径方向に沿って移動されることによって、周方向に隣り合う外側コイル部10同士が重なっている部分の長さL1(
図2および
図3参照)が変化される。なお、複数の外側コイル部10は、周方向に隣り合う外側コイル部10と非接触状態で重なっている。
【0028】
図3に示すように、複数の外側コイル部10の各々は、周方向における所定の位置の周方向一方側に設けられる一方側部分12と、上記所定の位置の周方向他方側に設けられる他方側部分13とを含む。複数の外側コイル部10の各々において、一方側部分12と他方側部分13とは軸方向に交互に配列されている。具体的には、複数の外側コイル部10の各々には、3つの一方側部分12と3つの他方側部分13とが設けられている。なお、上記所定の位置とは、複数の外側コイル部10の各々の周方向における中央部である。なお、
図3および
図4では、外側コイル部10は概略的に図示されている。
【0029】
複数の外側コイル部10の各々において、一方側部分12には、外側コイル部10の中央部(上記所定の位置)の近傍に折れ曲がり部12aが設けられている。また、複数の外側コイル部10の各々において、他方側部分13には、外側コイル部10の中央部(上記所定の位置)の近傍に折れ曲がり部13aが設けられている。一方側部分12および他方側部分13の各々に折れ曲がり部(12a、13a)が設けられていることにより、固定部対応部11が形成されている。なお、複数の外側コイル部10の各々において、固定部対応部11は、周方向における外側コイル部10の中央部に設けられている。
【0030】
ここで、第1実施形態では、焼鈍装置100は、周方向に互いに隣り合う外側コイル部10同士の一方側部分12と他方側部分13とが軸方向に交互に配置されるように構成されている。
【0031】
これにより、周方向に隣り合う外側コイル部10同士の一方側部分12と他方側部分13とを軸方向に容易に重ねることができる。
【0032】
また、複数の外側コイル部10の各々は、軸方向に互いに重なり合う一方側部分12および他方側部分13の部分同士が同じ方向に延びるように設けられている。
【0033】
また、隣り合う外側コイル部10同士の一方側部分12と他方側部分13とが重なっている状態で複数の外側コイル部10の各々が径方向に移動されることによって、隣り合う外側コイル部10同士の一方側部分12と他方側部分13とが重なっている部分の長さL1の大きさが変化される。その結果、領域101を取り囲む多角形(第1実施形態では6角形)の辺(長辺)の大きさが変化されるとともに領域101の大きさが変化される。
【0034】
図4に示すように、複数の外側コイル部10の各々の一方側部分12は、外側コイル部10の中央部(上記所定の位置)から周方向一方側(すなわち上記中央部とは反対側)に延びる部分12bと、部分12bの周方向一方側の端部12cから折り返されて上記中央部まで戻るとともに部分12bと軸方向に隣り合う部分12dと、を含む。部分12dは、部分12bに対してC2側に設けられている。また、部分12bと部分12dとは、部分12bの端部12c側において、軸方向に延びる接続部12eにより接続されている。なお、部分12bおよび部分12dは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1部分」および「第2部分」の一例である。
【0035】
また、複数の外側コイル部10の各々の他方側部分13は、外側コイル部10の中央部(上記所定の位置)から周方向一方側(すなわち上記中央部とは反対側)に延びる部分13bと、部分13bの周方向一方側の端部13cから折り返されて上記中央部まで戻るとともに部分13bと軸方向に隣り合う部分13dと、を含む。部分13dは、部分13bに対してC2側に設けられている。また、部分13bと部分13dとは、部分13bの端部13c側において、軸方向に延びる接続部13eにより接続されている。なお、部分13bおよび部分13dは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1部分」および「第2部分」の一例である。
【0036】
また、
図3に示すように、複数の外側コイル部10の各々は、交流電源20と配線102により接続される正側端子14と、交流電源20と配線103により接続される負側端子15とを含む。正側端子14および負側端子15の各々は、周方向において外側コイル部10の中央部に設けられている。また、正側端子14は、複数の一方側部分12のうちの最もC1側に配置される一方側部分12の部分12bに接続されている。また、負側端子15は、複数の他方側部分13のうちの最もC2側に配置される他方側部分13の部分13dに接続されている。
【0037】
また、複数の外側コイル部10の各々は、軸方向に隣り合う一方側部分12と他方側部分13とを接続する接続部16を含む。接続部16は、外側コイル部10の周方向の中央部に設けられている。
【0038】
なお、複数の外側コイル部10の各々を構成する上記の複数の部分(部分12b、部分12d、接続部12e、部分13b、部分13d、接続部13e、正側端子14、負側端子15、および接続部16)は、一体的に形成されている。また、複数の外側コイル部10の各々は、中空形状を有している。具体的には、複数の外側コイル部10の各々の内部には、外側コイル部10を冷却するための水を流通させる流水管10a(
図5(a)参照)が設けられている。すなわち、流水管10aは、上記の複数の部分(部分12b、部分12d、接続部12e、部分13b、部分13d、接続部13e、正側端子14、負側端子15、および接続部16)を連通するように設けられている。
【0039】
複数の外側コイル部10の各々において、一方側部分12および他方側部分13の各々は、折り返されるように形成されているので、一方側部分12の部分12bおよび部分12dには互いに反対向きの電流(
図4の破線矢印参照)が流れる。また、同様に、複数の外側コイル部10の各々において、他方側部分13の部分13bおよび部分13dには互いに反対向きの電流(
図4の破線矢印参照)が流れる。
【0040】
また、
図4に示すように、複数の外側コイル部10は、周方向に隣り合う外側コイル部10同士の間において、互いに軸方向に隣り合う部分同士に流れる電流の向きが互いに同じになるように設けられている。具体的には、周方向に隣り合う外側コイル部10同士の間において、一方の外側コイル部10の部分12dに流れる電流の向きと、他方の外側コイル部10の部分13bに流れる電流の向きとが互いに同じになる。また、周方向に隣り合う外側コイル部10同士の間において、一方の外側コイル部10の部分13bに流れる電流の向きと、他方の外側コイル部10の部分12dに流れる電流の向きとが互いに同じになる。
【0041】
これにより、周方向に隣り合う外側コイル部10において発生する磁束同士の流れの向き(磁束のループの向き)が互いに同じになるので、上記磁束同士が打ち消し合うのを防止することが可能である。この場合、
図5(a)に示すように、電流の流れの向きが共通の部分全体で1つの大きな磁束ループ(
図5(a)の破線矢印参照)が形成される。これにより、互いに共通の向きに電流が流れる部分12dと部分13b(部分12bと部分13d)との間の軸方向の間隔を小さくすることが可能となる。その結果、外側コイル部10同士を密に配置することができるので、外側コイル部10によるステータコア1の発熱効率を向上させることが可能となる。
【0042】
ここで、第1実施形態では、
図5(a)に示すように、複数の外側コイル部10の各々において、部分12bと部分12dとの間、および、部分13bと部分13dとの間の各々に設けられるフェライトコア17を備える。フェライトコア17は絶縁性を有する磁性体である。なお、フェライトコア17は、特許請求の範囲の「絶縁性の磁性部材」の一例である。
【0043】
部分12b(13d)を流れる電流の向きと部分12d(13b)を流れる電流の向きとは互いに反対なので、部分12bと部分13dとの周りを流れる磁束と、部分12dと部分13bとの周りを流れる磁束とは、互いに流れる方向が反対となり、互いに打ち消し合う場合がある。そこで、部分12bと部分12dとの間(部分13bと部分13dとの間)にフェライトコア17を配置することにより、部分12bと部分13dとの周りを流れる磁束(部分12dと部分13bとの周りを流れる磁束)がフェライトコア17に引き寄せられる。その結果、フェライトコア17が設けられていない場合(
図5(b)の比較例参照)に比べて、互いに打ち消し合う磁束の量が低減される。これにより、より高密度な磁束がステータコア1(積層電磁鋼板)を透過するので、渦電流を大きくすることができるとともにステータコア1の発熱量を大きくすることができる。また、フェライトコア17が絶縁性を有していることにより、外側コイル部10を流れる電流により発生した磁束がフェライトコア17を通過することに起因して渦電流が発生するのを防止することができる。
【0044】
また、フェライトコア17は、部分12bおよび部分12d(部分13bおよび部分13d)に沿って延びるように設けられている。また、フェライトコア17は、部分12bおよび部分12d(部分13bおよび部分13d)にたとえば接着されることにより固定されている。なお、フェライトコア17の固定方法はこれに限られず、適宜変更することが可能である。
【0045】
また、第1実施形態の焼鈍装置100は、ステータコア1のボルト固定部5が基準位置(
図1参照)に配置された状態からステータコア1を回転させることが可能に構成されている。たとえば、焼鈍装置100は、ステータコア1を周方向の一方向に回転させることが可能に構成されている。
【0046】
これにより、焼鈍装置100は、ステータコア1を回転させることによって、ステータコア1のボルト固定部5と外側コイル部10との間の距離を変化させながら、ステータコア1を発熱させるように構成されている。ステータコア1のボルト固定部5と外側コイル部10との間の距離を変化させながら焼鈍が行われることにより、ボルト固定部5を通過する磁束量を変化させながら焼鈍を行うことが可能である。
【0047】
具体的には、焼鈍装置100は、ステータコア1のボルト固定部5と外側コイル部10とが接近した時にステータコア1の回転速度(角速度)を増加させるとともに、ボルト固定部5と外側コイル部10とが離間した時にステータコア1の回転速度を低下させるように構成されている。これにより、ボルト固定部5と外側コイル部10との間の距離が小さくなる時間を少なくすることができるので、ボルト固定部5が異常に昇温される(優先的に加熱される)のを防止することが可能である。その結果、ステータコア1を均一に昇温させることが可能である。これにより、焼鈍装置100の加熱出力を向上させることが可能となるとともに、ステータコア1の生産性を向上させることが可能となる。
【0048】
[第2実施形態]
次に、
図6を参照して、第2実施形態によるステータコア1の焼鈍装置200について説明する。第2実施形態の焼鈍装置200では、複数の外側コイル部10により取り囲まれる領域101が多角形形状を有するように構成される上記第1実施形態の焼鈍装置100とは異なり、複数の外側コイル部110により取り囲まれる領域201は多角形形状を有さない。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
【0049】
図6を参照して、第2実施形態によるステータコア1の焼鈍装置200について説明する。
【0050】
図6に示すように、焼鈍装置200は、複数の外側コイル部110を備える。外側コイル部110は、軸方向から見て湾曲形状を有している。なお、外側コイル部110は、特許請求の範囲の「コイル部」の一例である。
【0051】
第2実施形態では、複数の外側コイル部110の各々は、径方向外側に凸状に形成される固定部対応部111を含む。固定部対応部111は、軸方向から見て、ボルト固定部5の形状に沿って半円状に湾曲するように設けられている。
【0052】
複数の外側コイル部110の各々は、外側コイル部110の中央部(固定部対応部111)の周方向一方側に設けられる一方側部分112と、外側コイル部110の中央部(固定部対応部111)の周方向他方側に設けられる他方側部分113と、を含む。一方側部分112および他方側部分113の各々は、軸方向から見て、ステータコア1の外周に沿うように湾曲している。
【0053】
図6(a)および
図6(b)に示すように、第2実施形態では、焼鈍装置200は、複数の外側コイル部110の各々が径方向(B方向)に沿って移動されることによって、複数の外側コイル部110によって取り囲まれる領域201の大きさが変化されるように構成されている。具体的には、複数の外側コイル部110の各々が径方向に沿って移動されることによって、周方向に隣り合う外側コイル部110同士の一方側部分112と他方側部分113との軸方向における重なり具合が変化されることにより、複数の外側コイル部110によって取り囲まれる領域201の大きさが変化される。
【0054】
なお、第2実施形態では、外側コイル部110がステータコア1の形状に沿った形状を有していることにより、外側コイル部110とステータコア1との間の距離が上記第1実施形態に比べて均一なので、上記第1実施形態のようにステータコア1を回転または回動させる機構を焼鈍装置200から省略できる。
【0055】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0056】
[第3実施形態]
次に、
図7を参照して、第3実施形態によるステータコア1の焼鈍装置300について説明する。第3実施形態の焼鈍装置300では、複数の外側コイル部10自体の形状が変化しない上記第1実施形態の焼鈍装置100とは異なり、複数の外側コイル部210自体が変形可能に構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
【0057】
図7を参照して、第3実施形態によるステータコア1の焼鈍装置300について説明する。
【0058】
図7に示すように、焼鈍装置300は、複数の外側コイル部210を備える。なお、外側コイル部210は、特許請求の範囲の「コイル部」の一例である。
【0059】
第3実施形態では、複数の外側コイル部210の各々は、径方向外側に凸状に形成される固定部対応部211を含む。
【0060】
複数の外側コイル部210の各々は、外側コイル部210の中央部(固定部対応部211)の周方向一方側に設けられる一方側部分212と、外側コイル部210の中央部(固定部対応部211)の周方向他方側に設けられる他方側部分213と、を含む。第3実施形態では、一方側部分212と他方側部分213とは、互いに別個に設けられている。なお、一方側部分212および他方側部分213の各々は、軸方向から見て、直線状に形成されている。
【0061】
また、複数の外側コイル部210の各々は、外側コイル部210の中央部に設けられる回動機構214を含む。回動機構214は、一方側部分212および他方側部分213を回動させるように構成されている。具体的には、回動機構214は、一方側部分212と他方側部分213との間の角度θを変化させる(
図7(a)および
図7(b)参照)ように構成されている。
【0062】
第3実施形態では、焼鈍装置300は、複数の外側コイル部210の各々が径方向(B方向)に沿って移動されることと、一方側部分212と他方側部分213との間の角度θが変化されることにより、複数の外側コイル部210によって取り囲まれる領域301の大きさが変化されるように構成されている。
【0063】
第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0064】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0065】
たとえば、上記第1実施形態では、焼鈍装置100は、部分12bと部分12dとの間、および、部分13bと部分13dとの間の各々に設けられるフェライトコア17(絶縁性の磁性部材)を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図8に示すように、部分12bと部分12d(部分13bと部分13d)との間に設けられる部分117aに加えて、部分117aの径方向外側に設けられる部分117bを含むフェライトコア117が備えられていてもよい。部分117aと部分117bとは一体的に形成されている。部分117bは、部分12b、部分12d、および部分117a(部分13b、部分13d、および部分117a)を径方向外側から覆うように設けられる。
【0066】
これにより、部分12bと部分13dとの周りを流れる磁束(部分12dと部分13bとの周りを流れる磁束)が、部分117bを通過することによって、径方向外側に抜けずにループするように流れやすくなる。その結果、部分117bが設けられていない場合(
図5(a)参照)に比べて、磁束が互いに打ち消し合うのをより確実に防止することが可能である。これにより、より一層高密度な磁束がステータコア1(積層電磁鋼板)を透過するので、渦電流をより大きくすることができるとともにステータコア1の発熱量をより大きくすることができる。なお、フェライトコア117は、特許請求の範囲の「絶縁性の磁性部材」の一例である。
【0067】
また、上記第1~第3実施形態では、内側コイル部30が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。内側コイル部30が設けられていなくてもよい。また、内側コイル部が、複数のコイル部が円環状に配置された円環状コイル部として構成されていてもよい。この場合、複数の内側コイル部の各々が径方向に沿って移動されることにより、円環状コイル部の外径がモータコアの内径に合わせて変化するように構成されていてもよい。換言すると、円環状コイル部に取り囲まれる領域の大きさが変化されるように構成されていてもよい。
【0068】
また、上記第1~第3実施形態では、絶縁性の磁性部材としてフェライトコア17が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。絶縁性の磁性部材としてフェライトコア17以外の部材が設けられていてもよい。たとえば、絶縁性の磁性部材として圧粉磁性体(純鉄等の磁性粉末に絶縁膜を施した後、金型によりプレス成形されたもの)が設けられていてもよい。
【0069】
また、上記第1実施形態では、ステータコア1が周方向の一方向に回転する例を示したが、本発明はこれに限られない。ステータコア1を周方向の両方向に回動させてもよい。たとえば、
図9に示す例では、ボルト固定部5が、固定部対応部11の周方向位置を中心に所定の角度の範囲内において周方向に移動するように、ステータコア1が回動される。すなわち、ボルト固定部5と外側コイル部10との間の距離が一定以上に維持される範囲内をボルト固定部5が回動(移動)するようにステータコア1を回動させることが可能である。その結果、ボルト固定部5とステータコア1とが接近し過ぎることに起因してボルト固定部5が過剰に昇温されるのを防止しながら、ボルト固定部5を含めたステータコア1全体を均一に昇温させることが可能である。また、ボルト固定部5と外側コイル部10との間の距離が一定以上に維持される範囲内をボルト固定部5が回動(移動)するようにステータコア1を回動させることによって、複数の外側コイル部10をステータコア1に比較的接近させても、外側コイル部10とステータコア1(ボルト固定部5)とが干渉するのを防止することが可能である。なお、第3実施形態でも同様に構成されていてもよい。
【0070】
また、上記第1実施形態では、複数の外側コイル部10(コイル部)が、交流電源20(電流供給部)に対して互いに並列に接続されている例を示したが、本発明はこれに限られない。複数の外側コイル部10が、交流電源20(電流供給部)に対して互いに直列に接続されていてもよい。
【0071】
また、上記第1~第3実施形態では、焼鈍装置100(200、300)がステータコア1を焼鈍する例に示したが、本発明はこれに限られない。たとえば本発明の焼鈍装置によってロータコアを焼鈍してもよい。
【0072】
また、上記第1~第3実施形態において示した外側コイル部(10、110、210)(コイル部)等の構成(形状、配置等)はあくまで一例であり、これに限られるものではなく、任意に改変し得る。
【0073】
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0074】
複数のコイル部(10、110、210)は、周方向に隣り合うコイル部(10、110、210)同士の間において、互いに軸方向に隣り合う部分同士に流れる電流の向きが互いに共通になるように設けられている。
【0075】
複数のコイル部(10、110、210)の各々において、固定部対応部(11、111、211)は、周方向におけるコイル部(10、110、210)の中央部に設けられている。
【0076】
モータコア(1)の焼鈍装置(100、200、300)は、円環状のモータコア(1)の締結部材固定部(5)が基準位置に配置された状態からモータコア(1)を回転または回動させることが可能に構成されている。複数のコイル部(10、110、210)は、軸方向から見て、モータコア(1)を取り囲む領域(101、201、301)が多角形形状を有するように設けられている。モータコア(1)の焼鈍装置(100、200、300)は、モータコア(1)を回転または回動させることによって、モータコア(1)の締結部材固定部(5)とコイル部(10、110、210)との間の最短距離を変化させながら、モータコア(1)を発熱させるように構成されている。
【符号の説明】
【0077】
1…ステータコア(モータコア)、5…ボルト固定部(締結部材固定部)、10、110、210…外側コイル部(コイル部)、11、111、211…固定部対応部、12、112、212…一方側部分、12b、13b…部分(第1部分)、12c…端部(第1部分の端部)、12d、13d…部分(第2部分)、13c…端部(第2部分の端部)、17、117…フェライトコア(絶縁性の磁性部材)13、113、213…他方側部分、20…交流電源(電流供給部)、100、200、300…焼鈍装置、101、201、301…領域