(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008764
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】太陽光発電所の日射量推定方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/10 20060101AFI20220106BHJP
H02S 50/00 20140101ALI20220106BHJP
【FI】
G01W1/10 H
H02S50/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020050853
(22)【出願日】2020-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】519321937
【氏名又は名称】春禾科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】李佳龍
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151KA08
5F151KA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】太陽光発電所の日射量推定方法を開示する。
【解決手段】当該方法は、測定時間内における太陽光発電所の各第1ソーラーモジュールの個々の発電量を取得するステップS11と、当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断するステップS12と、当該太陽光発電所の第1推定日射量を算出するステップS13であって、第1推定日射量の公式から当該第1推定日射量を算出するステップと、当該第1推定日射量を修正するステップS14、を含む。本発明では、各第1ソーラーモジュールの当該個々の発電量に当該第1推定日射量の公式を組み合わせることで、当該太陽光発電所の日射量を正確に推測可能としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電所の日射量推定方法であって、
測定時間内における太陽光発電所の各第1ソーラーモジュールの個々の発電量を取得するステップと、
当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断するステップと、
当該太陽光発電所の第1推定日射量を算出するステップであって、第1推定日射量の公式から当該第1推定日射量を算出し、当該第1推定日射量の公式は下記の通りであり、
[数1]
当該定格発電容量とは当該太陽光発電所の定格発電容量であり、標準日射量は1000W/m
2であり、RA1は予め設定された運転指標であり、当該総発電量とは当該複数の個々の発電量の総和であるステップと、
当該第1推定日射量を修正するステップであって、基準太陽光発電所の発電効率と当該太陽光発電所の発電効率との差に基づき回帰演算を行うことで当該第1推定日射量を修正するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
未知の太陽光発電所の座標位置と当該第1推定日射量を用い、逆距離の公式から当該未知の太陽光発電所の第2推定日射量を算出するステップであって、当該未知の太陽光発電所は複数の第2ソーラーモジュールを含むステップ、を更に含む請求項1に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項3】
当該第2推定日射量を算出するステップは、更に、当該未知の太陽光発電所の当該座標位置を取得するステップと、複数の太陽光発電所各々の当該第1推定日射量及び当該複数の太陽光発電所各々の位置を読み取るステップであって、当該複数の太陽光発電所は当該未知の太陽光発電所と隣接しているステップと、各第1推定日射量に対応する当該複数の第1ソーラーモジュールの設置方向が当該複数の第2ソーラーモジュールの設置方向と同じか否かを判断し、同じ場合には続けて次のステップを実行し、同じでない場合には当該第2推定日射量の算出を停止するステップと、当該複数の太陽光発電所の数が閾値以上か否かを判断し、閾値以上の場合には続けて次のステップを実行し、閾値以上でない場合には第2推定日射量の算出を停止するステップと、当該逆距離の公式から、当該未知の太陽光発電所の当該第2推定日射量を算出するステップ、を含む請求項2に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項4】
当該第1推定日射量を修正するステップは、更に、複数の基準ソーラーモジュールを含む当該基準太陽光発電所において、当該測定周期内に測定した総基準発電量及び基準日射量を取得するステップであって、当該総基準発電量とは、当該複数の第1ソーラーモジュールと設置方向が同じ当該複数の基準ソーラーモジュールで発生したものであり、当該基準日射量は、一定時間内に当該基準太陽光発電所が受けた日射量を当該基準太陽光発電所に設置された基準日射計で予め測定することで得られるステップと、基準運転指標と実際の運転指標を算出するステップと、日照公差値を増加させるごとに、対応する当該基準運転指標と当該実際の運転指標との差分値を算出するステップと、対応する基準運転指標と実際の運転指標との差分値を線形回帰演算することで回帰モデルを取得するステップ、を含む請求項1~3のいずれかに記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項5】
当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断するステップは、更に、個々の発電量の変動係数を算出するステップと、当該個々の発電量の変動係数と発電量の変動係数の閾値を比較し、当該個々の発電量の変動係数が当該個々の発電量の変動係数の閾値よりも大きい場合には、当該第1推定日射量の算出を停止し、当該個々の発電量の変動係数が当該個々の発電量の変動係数の閾値よりも小さい場合には、当該太陽光発電所の当該第1推定日射量を算出するステップを続いて実行する請求項4に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項6】
当該太陽光発電所の日射量推定方法は、当該太陽光発電所の当該複数の第1ソーラーモジュール、複数の電流センサ及び演算サーバにより実行され、各当該第1ソーラーモジュールは1又は複数のソーラーパネルを含み、各電流センサは、各第1ソーラーモジュールにそれぞれ電気的に接続されて、各第1ソーラーモジュールの個々の発電量を測定し、当該演算サーバは、有線又は無線方式で各電流センサに接続され、各電流センサを通じて各第1ソーラーモジュールの当該個々の発電量を受信する請求項5に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項7】
当該基準運転指標の公式は下記の通りであり、
[数2]
当該基準定格発電容量とは当該基準太陽光発電所の定格発電容量であり、標準日射量は1000W/m
2である請求項6に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項8】
当該実際の運転指標の公式は下記の通りであり、
[数3]
当該定格発電容量とは当該太陽光発電所の定格発電容量であり、標準日射量は1000W/m
2であり、当該実際の運転指標は当該太陽光発電所の実際の発電効率指標を表し、当該実際の日射量は、当該太陽光発電所に設置されている日射計で当該測定周期内に測定して得た日射量であり、当該日射計の設置方向は、当該複数の第1ソーラーモジュールの設置方向と同じである請求項7に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項9】
当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断するステップでは、当該複数の個々の発電量の平均値と標準偏差を算出し、当該標準偏差を当該平均値で割ることで当該個々の発電量の変動係数を取得する請求項8に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電所の日射量推定方法に関し、特に、各第1ソーラーモジュールの個々の発電量を利用して当該太陽光発電所の現在の日射量を推計する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日射計とは、太陽に向かって太陽光発電所に常設され、太陽光発電所が受ける日射量を専門的に測定するものである。一般的に、太陽光発電所の発電量は日射量に比例する。日射量が大きいほど太陽光発電所の発電効率は向上し、逆の場合には発電効率が低下する。そのため、日射計で測定する日射量を太陽光発電所の発電量と組み合わせることで、当該太陽光発電所の発電効率を評価することが可能となる。太陽光発電所の発電量が日射量に見合わない場合には、太陽光発電所のソーラーパネルに異常が生じていると推測される。
【0003】
大多数の太陽光発電所には、発電効率を評価するための根拠として日射計が設置されているが、実際の応用場面では問題に直面することがある。その一例が精度である。日射量を正確に測定するために、日射計は太陽光発電所に設置される。即ち、日射計は外部環境に直に晒された状況で動作するため、直射日光を受けて高温となったり、雨に濡れたりといった外部環境の影響を極めて受けやすく、頻繁に故障が発生する。よって、日射計の精度を維持するには継続的な修繕や校正が必須となり、メンテナンスコストが増大する。また、日射計は非常に高価であり、故障した日射計の代わりに新たなものを購入しようとすると、設置コストが大幅に増加する。
【0004】
一方で、日射計で測定した日射量に基づき発電効率を判断する場合には、判断を誤る恐れもある。例えば、日射量が十分であるにも関わらず太陽光発電所の発電効率が低い場合には、ソーラーパネル自体が埃や木の葉、枯れ枝、ゴミ等で覆われて発電量が低下している可能性がある。実際に、太陽光発電所の管理者は発電効率が低下したという事実のみを知り得、発電効率が低下した原因については把握できない。そのため、現場に人員を派遣してソーラーパネルの外側が外界からの物質で覆われていないかを観察したり、ソーラーパネルの回路構成の損傷有無を検証したりしなければ、クリーニング要員を招聘してソーラーパネルを洗浄させるのか、或いは専門のエンジニアを派遣してソーラーパネルを検査・修理するのかを決定できない。また、発電効率を上げるために、一般的に太陽光発電所は辺鄙且つ遮蔽物のない地域に設置されている。そのため、作業員による訪問メンテナンスの時間や交通費及び人件費が嵩んでしまう。上述したように、日射計で測定した日射量のみを発電効率評価の唯一の根拠とした場合には、精度の低下や派生的なコストの高騰といった問題に直面することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
日射計で測定した日射量のみに基づいて評価を行う際には、その後の発電効率の評価精度に支障をきたす恐れがあるとの事態を回避するために、本発明は、太陽光発電所のソーラーモジュール個々の発電量を利用して当該太陽光発電所が受けた日射量を推定するとともに、精密に校正済みの日射計で測定した日射量を修正の基準値として組み合わせることで、現在の日射量をより正確に測定且つ推定可能とする太陽光発電所の日射量推定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための、本発明における太陽光発電所の日射量推定方法は、測定時間内における太陽光発電所の各第1ソーラーモジュールの個々の発電量を取得するステップと、当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断するステップと、当該太陽光発電所の第1推定日射量を算出するステップであって、第1推定日射量の公式から当該第1推定日射量を算出するステップを含む。当該第1推定日射量の公式は下記の通りである。
【0007】
【0008】
当該定格発電容量とは当該太陽光発電所の定格発電容量である。また、標準日射量は1000W/m2であり、RA1は予め設定された運転指標である。
【0009】
また、当該方法は、当該第1推定日射量を修正するステップであって、基準太陽光発電所の発電効率と当該太陽光発電所の発電効率との差を回帰演算することで当該第1推定日射量を修正するステップ、を含む。
【0010】
更に、本発明は、未知の太陽光発電所の位置と当該第1推定日射量を用い、逆距離の公式から当該未知の太陽光発電所の第2推定日射量を算出するステップであって、当該未知の太陽光発電所は複数の第2ソーラーモジュールを含むステップを含む。
【0011】
更に、本発明は、当該未知の太陽光発電所の座標位置を取得するステップと、当該未知の太陽光発電所と隣接する複数の太陽光発電所各々の当該第1推定日射量及び当該複数の太陽光発電所各々の位置を読み取るステップと、各第1推定日射量に対応する当該複数の第1ソーラーモジュールの設置方向が当該複数の第2ソーラーモジュールと同じか否かを判断し、同じ場合には続けて次のステップを実行し、同じでない場合には推定フローを停止するステップと、当該複数の太陽光発電所の数が閾値以上か否かを判断し、閾値以上の場合には続けて次のステップを実行し、閾値以上でない場合には推定フローを停止するステップと、当該逆距離の公式から、当該未知の太陽光発電所の当該第2推定日射量を算出するステップ、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、各ソーラーモジュールの当該個々の発電量を取得し、当該第1推定日射量の公式と組み合わせて当該第1推定日射量を算出し修正することで、比較的正確な当該第1推定日射量を取得可能である。当該第1推定日射量は、現時点の発電量を推測するために、当該太陽光発電所の現在の日射量を予測するために適用可能である。
【0013】
また、個々の発電量を取得不可能な未知の太陽光発電所について、本発明では第2推定日射量を別途算出することが可能である。当該第1推定日射量、及び当該複数の太陽光発電所と当該未知の太陽光発電所との距離を利用し、当該逆距離の公式で算出及び修正することで、当該未知の太陽光発電所の当該第2推定日射量を取得可能である。これにより、当該未知の太陽光発電所に日射計が設置されていない状態であっても、当該第2推定日射量を比較的正確に予測可能となる。
【0014】
当該第1推定日射量及び当該第2推定日射量を予測することで、本発明では、日射計が設置されていない太陽光発電所において現在の日射量を予測可能としている。これにより、発電スケジュールの計画や、異常検出診断の検討及びソーラーモジュールの汚染有無、優劣、劣化等の検討が迅速になされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本発明における個々の発電量が異常か否かを判断する際のフローチャートである。
【
図4】本発明における第1推定日射量を修正する際のフローチャートである。
【
図5】本発明における東向き及び西向きの推定日射量のグラフである。
【
図6】本発明における東向き及び西向きの推定日射量と実際の日射量のグラフである。
【
図7】本発明における未知の太陽光発電所の位置と第1推定日射量を用いて、逆距離の公式から未知の太陽光発電所の第2推定日射量を算出する際のフローチャートである。
【
図8】本発明における未知の太陽光発電所及び太陽光発電所の位置分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、太陽光発電所の発電量に基づいて、当該太陽光発電所が受けた現在の日射量を推定する太陽光発電所の日射量推定方法を開示する。
図1を参照する。当該太陽光発電所1は、複数の第1ソーラーモジュール10、複数の電流センサ20及び演算サーバ30を含む。各第1ソーラーモジュール10は、1又は複数のソーラーパネル11を含む。各電流センサ20は、各第1ソーラーモジュール10にそれぞれ電気的に接続されて、各第1ソーラーモジュール10の発電量を測定する。当該演算サーバ30は、有線又は無線方式で各電流センサ20に接続可能であり、各第1ソーラーモジュール10の当該発電量を受信して本発明の方法を実行する。当該演算サーバ30は、演算機能を有するコンピュータ又は演算機能を有するクラウドサーバとする。各電流センサ20は、無線方式で当該発電量を当該クラウドサーバに伝送することが可能である。当該複数の電流センサ20と当該複数の第1ソーラーモジュール10との接続関係及び測定方式は、当業者が熟知する技術であるため、ここではこれ以上詳述しない。
【0017】
図2を参照する。本発明の第1実施例は以下のステップを含む。
【0018】
S11:測定時間内における各第1ソーラーモジュールの個々の発電量を取得する。
【0019】
S12:当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断する。
【0020】
S13:当該太陽光発電所の第1推定日射量を算出する。
【0021】
S14:当該第1推定日射量を修正する。
【0022】
ステップS11において、当該測定時間とは1つの時点であり、当該時点において、当該演算サーバ30は各第1ソーラーモジュール10の当該個々の発電量を取得する。例えば、当該演算サーバ30は、2019年12月1日12:00pm現在における当該複数の個々の発電量を取得する。更に、太陽光発電所1において、当該複数の第1ソーラーモジュール10の設置方向は一致しているとは限らない。例えば、当該太陽光発電所1の発電効率を上げるために、一部の第1ソーラーモジュール10は東向きに設置されるが、一部の第1ソーラーモジュール10は西向きに設置される。東向きの第1ソーラーモジュール10は午前中の当該発電量が高く、西向きの第1ソーラーモジュール10は午後に当該発電量が高くなる。そのため、当該複数の第1ソーラーモジュール10は、複数の東向きの第1ソーラーモジュールと複数の西向きの第1ソーラーモジュールを含み得る。且つ、各東向きの第1ソーラーモジュールはそれぞれ東向きの個々の発電量を発生させ、各西向きの第1ソーラーモジュールはそれぞれ西向きの個々の発電量を発生させる。
【0023】
更に、
図3を参照する。ステップS12は、更に以下のステップを含む。
【0024】
S121:個々の発電量の変動係数を算出する。
【0025】
S122:当該個々の発電量の変動係数が個々の発電量の変動係数の閾値よりも小さいか否かを判断する。
【0026】
ステップS121において、当該演算サーバ30は、まず当該複数の個々の発電量の平均値と標準偏差を算出し、標準偏差を平均値で割ることで当該個々の発電量の変動係数を取得する。
【0027】
ステップS122において、当該演算サーバ30は、当該個々の発電量の変動係数と当該個々の発電量の変動係数の閾値とで大きさを比較する。当該個々の発電量の変動係数の閾値は、当該演算サーバ30に予め定め設定しておく。当該個々の発電量の変動係数が当該個々の発電量の変動係数の閾値よりも大きい場合には、個々の発電量同士の差が大きすぎることを意味し、当該複数の第1ソーラーモジュール10の発電異常が原因の可能性がある。個々の発電量に誤差がある場合には参照する価値がないため、当該推定日射量の算出を停止する。
【0028】
一方、当該個々の発電量の変動係数が当該個々の発電量の変動係数の閾値よりも小さい場合には、当該複数の第1ソーラーモジュール10の発電状況が正常であり、個々の発電量同士の差が大きくないことを意味するため、続いてステップS13を実行する。
【0029】
ステップS13において、当該演算サーバ30は、当該複数の第1ソーラーモジュール10の総発電量を取得する。当該総発電量は、当該複数の電流センサ20が測定周期内に当該複数の第1ソーラーモジュール10の電流を測定することで取得する。且つ、当該総発電量は当該複数の個々の発電量の総和に等しい。当該測定周期は、1時間、4時間(半日)又は8時間(1日)とすればよいが、上記の時間に限らない。以下では、いずれも1日の場合を例として説明する。当該演算サーバ30は、当該総発電量及び第1推定日射量の公式に基づいて当該第1推定日射量を算出する。当該第1推定日射量の公式は次の通りである。
【0030】
【0031】
当該定格発電容量とは、当該太陽光発電所1の定格発電容量である。また、標準日射量は1000W/m2とする。RA1は予め設定された運転指標(performance indicator)であり、直流発電比(Array Ratio)とも称され、当該太陽光発電所1の発電効率指標を表す。実際の測定では、RA1=0.9の場合に当該第1推定日射量を最も正確な数値で算出可能であるが、0.9に限らない。
【0032】
定格発電容量、標準日射量、RA1及び当該総発電量を当該第1推定日射量の公式に代入することで、当該第1推定日射量を取得可能である。ステップS12において、当該複数の個々の発電量の数値が正常なことは確認済みのため、定格発電容量、標準日射量及びRA1はいずれも既知の定数となる。よって、上記の数値を当該第1推定日射量の公式に代入することで、比較的正確な当該第1推定日射量を取得できる。
【0033】
複数の第1ソーラーモジュール10の発電効率は温度や日照の変化といった環境要因に伴って変動する。そのため、ステップS14において当該第1推定日射量を修正する手順を行わなければ、より正確な当該第1推定日射量を得ることはできない。
【0034】
図4を参照する。ステップS14は、更に以下のステップを含む。
【0035】
S141:複数の基準ソーラーモジュールを含む基準太陽光発電所において、当該測定周期内に測定した総基準発電量及び基準日射量を取得する。当該総基準発電量とは、当該基準太陽光発電所の全基準ソーラーモジュールで発生した総発電量のことである。当該基準日射量は、一定時間内に当該基準太陽光発電所が受けた日射量を基準日射計で予め測定することで得られる。毎回の測定が正確となるよう、当該基準日射計には定期的な検査及び校正を実施する。
【0036】
S142:基準運転指標と実際の運転指標を算出する。当該基準運転指標は、当該基準太陽光発電所の発電効率指標を表し、当該実際の運転指標は、当該太陽光発電所1の実際の発電効率指標を表す。
【0037】
S143:日照公差値を増加させるごとに当該基準運転指標と当該実際の運転指標との差を比較する。
【0038】
S144:各基準運転指標と各実際の運転指標との差分値を線形回帰演算することで回帰モデルを取得する。
【0039】
ステップS141では、当該演算サーバ30が当該総基準発電量を取得する。当該総基準発電量は、基準太陽光発電所が当該測定周期内に発生させた総発電量である。当該基準太陽光発電所は当該太陽光発電所1ではない。また、当該基準太陽光発電所は当該複数の基準ソーラーモジュールを含む。当該複数の基準ソーラーモジュールの数は当該太陽光発電所1の第1ソーラーモジュール10の数及び向きと一致している。且つ、当該演算サーバ30は、当該複数の基準ソーラーモジュールが発生させた総発電量を総基準発電量として収集する。
【0040】
ステップS142では、基準運転指標の公式から当該複数の基準ソーラーモジュールの基準運転指標RA2を算出する。また、実際の運転指標の公式から当該複数の第1ソーラーモジュール10の実際の運転指標RA3を算出する。当該基準運転指標の公式は次の通りである。
【0041】
【0042】
当該基準定格発電容量とは、当該基準太陽光発電所の定格発電容量である。また、標準日射量は1000W/m2とする。RA2は基準運転指標であり、当該基準太陽光発電所の発電効率指標を表す。
【0043】
当該実際の運転指標の公式は次の通りである。
【0044】
【0045】
当該定格発電容量とは、当該太陽光発電所1の定格発電容量である。また、標準日射量は1000W/m2とする。RA3は当該実際の運転指標であり、当該太陽光発電所1の実際の発電効率指標を表す。また、当該実際の日射量は、当該太陽光発電所1に設置されている当該日射計で当該測定周期内に測定して得た日射量である。且つ、日射計の設置方向は、当該複数の第1ソーラーモジュール10の設置方向と同じである。
【0046】
ステップS143において、当該演算サーバ30は、当該基準日射量及び当該実際の日射量を当該日照公差値で順に増加させることにより、対応する当該基準運転指標RA2及び実際の運転指標RA3を取得する。初期基準日射量として900W/m2を用い、且つ、当該日照公差値が100W/m2の場合を例示すると、当該演算サーバ30が順に算出する当該基準日射量は、900±100(即ち、800W/m2、1000W/m2)、900±100*2(700W/m2、1100W/m2)、900±100*3(600W/m2、1200W/m2)・・・・・・となり、これらに対応する当該基準運転指標は下表の通りとなる。
また、当該基準日射量の範囲を500~1300W/m2とした場合には、同様に、当該基準日射量が500、600、・・・・・・1200、1300(W/m2)のときに対応する各当該基準運転指標RA2を取得可能である。また、同様に、当該実際の日射量に当該日照公差値100W/m2を組み合わせることで、対応する各当該実際の運転指標RA3を取得可能である。最後に、同一の当該測定周期における当該基準運転指標RA2と当該実際の運転指標RA3との差分値、及び当該日照公差値で増減して得られる各当該基準日射量と実際の日射量との差分値Δ1、Δ2・・・Δ9を算出する。
【0047】
【0048】
ステップS144では、各基準運転指標RA2と各実際の運転指標RA3との差分値Δ1、Δ2・・・Δ9を線形回帰演算することで当該回帰モデルを取得し、当該回帰モデルを当該演算サーバ30に導入して演算を行う。これにより、現在の当該推定日射量を予測する際に、より正確な当該推定日射量を取得可能となる。線形回帰演算は当業者が熟知する演算方式であるため、ここではこれ以上詳述しない。線形回帰演算により得られる当該回帰モデルによれば、やや異常な当該実際の日射量に直面した場合であっても比較的正確な当該推定日射量を得ることが可能である。
【0049】
図5を参照する。上記の方法によって、当該太陽光発電所1が、東向きに設置された複数の第1ソーラーモジュール10と、西向きに設置された複数の第1ソーラーモジュール10を含む場合には、異なる向きに設置された第1ソーラーモジュール10について、上記の方法により東向きの推定日射量曲線51及び西向きの推定日射量曲線52をそれぞれ算出可能である。当該東向きの推定日射量曲線51は、当該太陽光発電所1に東向きに設置された当該複数のソーラーモジュール10が1日のうちに推定した日射量の変化を表す。また、当該西向きの推定日射量曲線52は、当該太陽光発電所1に西向きに設置された当該複数のソーラーモジュール10が1日のうちに推定した日射量の変化を表す。理論的には、午前中は東側から太陽光が射し込むため、東向きに設置された当該日射計が高い日射量を示し、午後になると、西向きに設置された当該日射計が高い日射量を示すはずである。
【0050】
更に、
図6を参照する。
図5の東向きの推定日射量曲線51及び西向きの推定日射量曲線52の正確さを検証するために、本発明では、当該太陽光発電所1に隣接する別の太陽光発電所でも1日の日射量の変化を実際に測定した。当該隣接する太陽光発電所には日射計が設置されており、当該日射計によって、当該隣接する太陽光発電所における西向きのソーラーモジュールの日射量を実際に測定した。当該日射計で測定した日射量は
図6中の実際の日射量曲線53となった。当該実際の日射量曲線53で検証したところ、日射量から測定した当該実際の日射量曲線53と、本発明で算出した当該西向きの推定日射量曲線52は重なり度合が高いことが分かった。即ち、上記の方法で予測した当該西向きの推定日射量曲線52と当該実際の日射量曲線53はほぼ一致しており、予測精度が高かった。
【0051】
上記の日射量を予測する実施例は、発電情報を取得可能な太陽光発電所1に適用され、各第1ソーラーモジュール10の当該個々の発電量を利用して当該太陽光発電所1の現在の日射量を予測する。
更に、
図2及び
図7を参照する。本発明の他の好ましい実施例では、発電情報を取得不可能な太陽光発電所(以下、未知の太陽光発電所と称する)について、当該未知の太陽光発電所の日射量を予測するステップS15を更に含む。
【0052】
S15:未知の太陽光発電所の位置と当該第1推定日射量を用い、逆距離の公式から当該未知の太陽光発電所の第2推定日射量を算出する。当該未知の太陽光発電所は、複数の第2ソーラーモジュールを含む。
【0053】
ステップS15は、更に以下のステップを含む。
【0054】
S151:当該未知の太陽光発電所の座標位置を取得する。
【0055】
S152:複数の太陽光発電所各々の当該第1推定日射量及び当該複数の太陽光発電所各々の位置を読み取る。当該複数の太陽光発電所は当該未知の太陽光発電所と隣接している。
【0056】
S153:各第1推定日射量に対応する当該複数の第1ソーラーモジュールの設置方向が当該複数の第2ソーラーモジュールの設置方向と同じか否かを判断し、同じ場合には続けてステップS154を実行し、同じでない場合には推定フローを停止する。
【0057】
S154:当該複数の太陽光発電所の数が閾値以上か否かを判断し、閾値以上の場合には続けてステップS155を実行し、閾値以上でない場合には推定フローを停止する。
【0058】
S155:当該逆距離の公式から、当該未知の太陽光発電所の当該第2推定日射量を算出する。
【0059】
ステップS151では、当該演算サーバ30が当該未知の太陽光発電所の当該座標位置を取得する。当該座標位置は経度と緯度で表してもよいし、その他の座標系で表してもよい。直角座標の場合を例示すると、当該未知の太陽光発電所の当該座標位置Giは、(Gxi,Gyi)で表すことが可能である。
【0060】
更に、
図8を参照する。ステップS152において、当該演算サーバ30は、各複数の太陽光発電所1の第1推定日射量と、当該複数の太陽光発電所1各々の位置を取得する。各第1推定日射量(以下の説明ではZiで表す)は、当該複数の太陽光発電所1がステップS11~S14で算出して得た日射量である。各太陽光発電所1の位置Piは経度と緯度で表してもよいし、その他の座標系で表してもよい。直角座標の場合を例示すると、各太陽光発電所1の位置は、(X
i,Y
i)で表すことが可能である。
図8には合計4つの太陽光発電所1が存在し、各太陽光発電所1をそれぞれP
1、P
2、P
3、P
4で表している。このうち、P
1の位置は(X
1,Y
1)、P
2の位置は(X
2,Y
2)で表される。その他についても同様である。
【0061】
ステップS153において、当該未知の太陽光発電所は、設置方向が同一又は異なる複数の第2ソーラーモジュールを有している。当該複数の第2ソーラーモジュールが受けた各第2推定日射量を正確に予測するために、当該演算サーバ30は、各第2ソーラーモジュールと同じ向きに設置された各第1ソーラーモジュールを取得する必要がある。即ち、東向きの第2ソーラーモジュールが受けた当該第2推定日射量を算出するために、東向きの第1ソーラーモジュールが受けた当該第1推定日射量を用いる必要がある。西向き、南向き、北向きの第2ソーラーモジュールについても同様である。参考とする当該第1ソーラーモジュールの設置方向と当該第2ソーラーモジュールの設置方向が異なっていると、当該第2推定日射量を誤って予測してしまう。そのため、当該第1ソーラーモジュールと当該第2ソーラーモジュールの方向が異なっている場合には、当該演算サーバ30は続く算出及び判断のステップを実行しない。
【0062】
ステップS154において、当該複数の太陽光発電所1の数が少なすぎると、取得可能な当該第1推定日射量の数も少なくなり、予測時にサンプルが少なすぎることで当該第2推定日射量を正確に予測できなくなる。そこで、当該第2推定日射量が高い精度を有するよう、当該第1推定日射量を取得可能な当該複数の太陽光発電所の数は当該閾値よりも大きいことが好ましい。一実施例において、好ましい当該閾値は4とする。即ち、当該第1推定日射量を提供可能な太陽光発電所1が4つ存在する状態であれば、当該第2推定日射量の精度が最も高くなり、且つ、当該第1推定日射量の数が多すぎて当該演算サーバ30が演算に多くの時間を要することもない。ただし、当該閾値は4に限らず、3、5、6としてもよい。また、同様に、当該複数の太陽光発電所1の数が当該閾値よりも少ない場合、当該演算サーバ30は続く算出及び判断のステップを実行しない。
【0063】
ステップS155では、まず、各太陽光発電所1と当該未知の太陽光発電所との相対距離を算出する。
【0064】
【0065】
式中のDiは、i番目の当該太陽光発電所1と当該未知の太陽光発電所との相対距離である。
【0066】
次に、当該第2推定日射量を算出する。
【0067】
【0068】
式中のGziは当該第2推定日射量である。
【0069】
換言すれば、各太陽光発電所1の各第1推定日射量Ziと、各太陽光発電所1から当該未知の太陽光発電所までの距離Diとで修正することにより、当該未知の太陽光発電所の当該第2推定日射量を取得可能である。更に説明すると、全ての太陽光発電所1の各第1推定日射量Ziを各太陽光発電所1から当該未知の太陽光発電所までの距離Diで割ったあと合計することで、第1総和
を取得する。また、各太陽光発電所1から当該未知の太陽光発電所までの距離Diの逆数を合計することで第2総和
を取得する。そして、当該第1総和を第2総和で割ることで、当該未知の太陽光発電所の当該第2推定日射量を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 太陽光発電所
10 第1ソーラーモジュール
20 電流センサ
30 演算サーバ
51 東向きの推定日射量曲線
52 西向きの推定日射量曲線
53 実際の日射量曲線
Gi 座標位置
P1、P2、P3、P4 太陽光発電所の位置
【手続補正書】
【提出日】2021-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電所の日射量推定方法であって、
測定時間内における太陽光発電所の各第1ソーラーモジュールの個々の発電量を取得するステップと、
当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断するステップと、
当該太陽光発電所の第1推定日射量を算出するステップであって、第1推定日射量の公式から当該第1推定日射量を算出し、当該第1推定日射量の公式は下記の通りであり、
[数1]
当該定格発電容量とは当該太陽光発電所の定格発電容量であり、標準日射量は1000W/m
2であり、RA1は予め設定された運転指標であり、当該総発電量とは当該複数の個々の発電量の総和であるステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
未知の太陽光発電所の座標位置と当該第1推定日射量を用い、逆距離の公式から当該未知の太陽光発電所の第2推定日射量を算出するステップであって、当該未知の太陽光発電所は複数の第2ソーラーモジュールを含むステップ、を更に含む請求項1に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項3】
当該第2推定日射量を算出するステップは、更に、当該未知の太陽光発電所の当該座標位置を取得するステップと、複数の太陽光発電所各々の当該第1推定日射量及び当該複数の太陽光発電所各々の位置を読み取るステップであって、当該複数の太陽光発電所は当該未知の太陽光発電所と隣接しているステップと、各第1推定日射量に対応する当該複数の第1ソーラーモジュールの設置方向が当該複数の第2ソーラーモジュールの設置方向と同じか否かを判断し、同じ場合には続けて次のステップを実行し、同じでない場合には当該第2推定日射量の算出を停止するステップと、当該複数の太陽光発電所の数が閾値以上か否かを判断し、閾値以上の場合には続けて次のステップを実行し、閾値以上でない場合には第2推定日射量の算出を停止するステップと、当該逆距離の公式から、当該未知の太陽光発電所の当該第2推定日射量を算出するステップ、を含む請求項2に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項4】
当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断するステップは、更に、個々の発電量の変動係数を算出するステップと、当該個々の発電量の変動係数と発電量の変動係数の閾値を比較し、当該個々の発電量の変動係数が当該個々の発電量の変動係数の閾値よりも大きい場合には、当該第1推定日射量の算出を停止し、当該個々の発電量の変動係数が当該個々の発電量の変動係数の閾値よりも小さい場合には、当該太陽光発電所の当該第1推定日射量を算出するステップを続いて実行する請求項1に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項5】
当該太陽光発電所の日射量推定方法は、当該太陽光発電所の当該複数の第1ソーラーモジュール、複数の電流センサ及び演算サーバにより実行され、各当該第1ソーラーモジュールは1又は複数のソーラーパネルを含み、各電流センサは、各第1ソーラーモジュールにそれぞれ電気的に接続されて、各第1ソーラーモジュールの個々の発電量を測定し、当該演算サーバは、有線又は無線方式で各電流センサに接続され、各電流センサを通じて各第1ソーラーモジュールの当該個々の発電量を受信する請求項1に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【請求項6】
当該複数の個々の発電量が異常か否かを判断するステップでは、当該複数の個々の発電量の平均値と標準偏差を算出し、当該標準偏差を当該平均値で割ることで当該個々の発電量の変動係数を取得する請求項1に記載の太陽光発電所の日射量推定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】