(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087685
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20220606BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20220606BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C08L9/00
C08F220/18
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199752
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓也
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131BA05
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC15
3D131BC19
4J002AC00W
4J002AC08W
4J002BG04X
4J002BG05X
4J002GN01
4J100AL03Q
4J100AL04P
4J100AL62R
4J100AL66R
4J100BA08R
4J100CA05
4J100DA25
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗性能(低燃費性)、及びウエットグリップ性能のバランスに優れたタイヤが得られる、ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対して、ガラス転移点が-70℃~0℃の重合体からなる微粒子を1~100質量部含有し、上記重合体が、構成単位Aと構成単位Bと構成単位Cとを少なくとも含む3種以上の構成単位から構成されたランダム共重合体からなり、上記構成単位Aは、単独重合した重合体のガラス転移点が-50℃~0℃であるアルキルメタクリレートに由来し、上記構成単位Bは、単独重合した重合体のガラス転移点が-70℃~-50℃であるアルキルアクリレートに由来し、上記構成単位Cは、多官能ビニルモノマーに由来する、ゴム組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対して、ガラス転移点が-70℃~0℃の重合体からなる微粒子を1~100質量部含有し、
前記重合体が、構成単位Aと構成単位Bと構成単位Cとを少なくとも含む3種以上の構成単位から構成されたランダム共重合体からなり、
前記構成単位Aは、単独重合した重合体のガラス転移点が-50℃~0℃であるアルキルメタクリレートに由来し、
前記構成単位Bは、単独重合した重合体のガラス転移点が-70℃~-50℃であるアルキルアクリレートに由来し、
前記構成単位Cは、多官能ビニルモノマーに由来する、ゴム組成物。
【請求項2】
前記微粒子の平均粒子径が、10~100nmである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記微粒子における構成単位Bの含有割合が、10~80質量%である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記構成単位Bが、アクリル酸n-ブチルに由来する、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤに用いられるゴム組成物においては、湿潤路面におけるグリップ性能(ウエットグリップ性能)と低燃費性に寄与する転がり抵抗性能を高次元でバランスさせることが求められている。しかしながら、これらは背反特性であるため、同時に改良することは容易ではない。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、常温での硬度低下と低温での弾性率上昇と転がり抵抗性能の悪化を抑えながら、ウエットグリップ性能が向上するものとして、ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対し、所定のアルキル(メタ)アクリレート単位を構成単位として有しかつ反応性シリル基を持たない(メタ)アクリレート系重合体からなる、ガラス転移点が-70~0℃かつ平均粒径が10nm以上100nm未満の微粒子を、1~100質量部含有するゴム組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、転がり抵抗性能とウエットグリップ性能のバランスに優れるものとして、ジエン系ゴム100質量部に対し、ガラス転移点が-70~0℃である微粒子1~100質量部を含み、上記微粒子は、少なくとも1種の多官能ビニルモノマーによって架橋された架橋構造を有する重合体からなり、上記架橋構造は、上記多官能ビニルモノマーの官能基間が置換基を有してもよい2~4価の脂肪族炭化水素基で連結され、かつ、2つの上記官能基を繋ぐ直鎖状部分の炭素数が7~20であるゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-110069号公報
【特許文献2】特開2020-84145号公報
【特許文献3】国際公開第2015/155965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載のゴム組成物に配合された微粒子は、構成成分や構造について十分に検討がなされておらず、転がり抵抗性能(低燃費性)やウエットグリップ性能について改善の余地があった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、転がり抵抗性能(低燃費性)、及びウエットグリップ性能のバランスに優れた空気入りタイヤが得られる、ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0008】
なお、特許文献3には、ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対し、重量平均分子量が5000~100万でありかつガラス転移点が-70~0℃である(メタ)アクリレート系重合体を1~100質量部含有するゴム組成物が記載されているが、微粒子状の重合体を配合するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対して、ガラス転移点が-70℃~0℃の重合体からなる微粒子を1~100質量部含有し、上記重合体が、構成単位Aと構成単位Bと構成単位Cとを少なくとも含む3種以上の構成単位から構成されたランダム共重合体からなり、上記構成単位Aは、単独重合した重合体のガラス転移点が-50℃~0℃であるアルキルメタクリレートに由来し、上記構成単位Bは、単独重合した重合体のガラス転移点が-70℃~-50℃であるアルキルアクリレートに由来し、上記構成単位Cは、多官能ビニルモノマーに由来するものとする。
【0010】
上記微粒子の平均粒子径は、10~100nmであるものとすることができる。
【0011】
上記微粒子における構成単位Bの含有割合は、10~80質量%であるものとすることができる。
【0012】
上記構成単位Bは、アクリル酸n-ブチルに由来するものとすることができる。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて作製されたものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のゴム組成物によれば、転がり抵抗性能(低燃費性)、及びウエットグリップ性能のバランスに優れた空気入りタイヤが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対して、ガラス転移点が-70℃~0℃の重合体からなる微粒子を1~100質量部含有し、上記重合体は、構成単位Aと構成単位Bと構成単位Cとを少なくとも含む3種以上の構成単位から構成されたランダム共重合体からなる。構成単位Aは、単独重合した重合体のガラス転移点が-50℃~0℃であるアルキルメタクリレートに由来し、構成単位Bは、単独重合した重合体のガラス転移点が-70℃~-50℃であるアルキルアクリレートに由来し、構成単位Cは多官能ビニルモノマーに由来する。
【0017】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられ、これらはいずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、NR、BR及びSBRからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
上記で列挙した各ジエン系ゴムの具体例には、その分子末端又は分子鎖中において、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、及びエポキシ基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基が導入されることで、当該官能基により変性された変性ジエン系ゴムも含まれる。変性ジエン系ゴムとしては、変性SBR及び/又は変性BRが好ましい。一実施形態において、ジエン系ゴムは、変性ジエン系ゴム単独でもよく、変性ジエン系ゴムと未変性のジエン系ゴムとのブレンドでもよい。一実施形態において、ジエン系ゴム100質量部中、変性SBRを30質量部以上含んでもよく、変性SBRを50~90質量部と未変性ジエン系ゴム(例えば、BR及び/又はNR)を50~10質量部含むものでもよい。
【0019】
本実施形態に係る微粒子をなすランダム共重合体のガラス転移点(Tg)は、-70℃~0℃の範囲内であれば特に限定されないが、-60℃~-20℃であることが好ましく、より好ましくは-55℃~-30℃である。ガラス転移点の設定は、(メタ)アクリレート系重合体を構成するモノマー組成等により行うことができる。ガラス転移点が0℃以下である場合、低温性能の悪化をより効果的に抑えやすい。また、ガラス転移点が-70℃以上である場合、ウエットグリップ性能の改善効果を高めやすい。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分(測定温度範囲:-150℃~150℃)にて測定される値である。
【0020】
微粒子をなすランダム共重合体の構成単位A及び構成単位Bは、共に、次の一般式(1)で表すことができる。
【0021】
【0022】
構成単位Aの場合、式中、R1はメチル基であり、R2は炭素数5~15のアルキル基であり、同一分子中のR2は同一でも異なっていてもよい。R2のアルキル基は直鎖でも分岐していてもよい。R2は、炭素数6~14のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数8~12のアルキル基である。
【0023】
構成単位Aを形成するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸n-ヘプチル、メタクリル酸n-オクチル、及びメタクリル酸n-ノニル等のメタクリル酸n-アルキル;メタクリル酸イソヘキシル、メタクリル酸イソヘプチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソウンデシル、メタクリル酸イソドデシル、メタクリル酸イソトリデシル、及びメタクリル酸イソテトラデシル等のメタクリル酸イソアルキル;メタクリル酸2-メチルペンチル、メタクリル酸2-メチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、及びメタクリル酸2-エチルヘプチルなどが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
ここで、イソアルキルとは、アルキル鎖端から2番目の炭素原子にメチル側鎖を有するアルキル基をいう。例えば、イソデシルとは、鎖端から2番目の炭素原子にメチル側鎖を持つ炭素数10のアルキル基をいい、8-メチルノニル基だけでなく、2,4,6-トリメチルヘプチル基も含まれる概念である。
【0025】
構成単位Bの場合、式中、R1は水素であり、R2は炭素数4~10のアルキル基であり、同一分子中のR2は同一でも異なっていてもよい。R2のアルキル基は直鎖でも分岐していてもよい。R2は、炭素数4~9のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数4~8のアルキル基である。
【0026】
構成単位Bを形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-ノニル、及びアクリル酸n-デシル等のアクリル酸n-アルキル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸イソヘプチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、及びアクリル酸イソデシル等のアクリル酸イソアルキル;アクリル酸2-メチルブチル、アクリル酸2-エチルペンチル、アクリル酸2-メチルヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びアクリル酸2-エチルヘプチルなどが挙げられ、この中でも、アクリル酸n-ブチルであることが好ましい。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
本実施形態に係る微粒子をなすランダム共重合体は架橋されたものであり、構成単位Cはその架橋点となる多官能ビニルモノマーに由来する構成単位である。すなわち、好ましい実施形態において、ランダム共重合体は、式(1)で表される構成単位とともに、多官能ビニルモノマーに由来する構成単位Cを含み、該多官能ビニルモノマーに由来する構成単位を架橋点とする架橋構造を有する。
【0028】
多官能ビニルモノマーとしては、フリーラジカル重合によって重合可能な少なくとも2個のビニル基を有する化合物が挙げられ、例えば、ジオールまたはトリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,12-ドデカンジオール、トリメチロールプロパンなど)のジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート;メチレンビス-アクリルアミドなどのアルキレンジ(メタ)アクリルアミド;ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの少なくとも2個のビニル基を持つビニル芳香族化合物などが挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
上記微粒子を構成するランダム共重合体の全構成単位(全繰り返し単位)における構成単位Aの含有割合は、20~90質量%であることが好ましく、より好ましくは40~90質量%である。構成単位Bの含有割合は、10~80質量%であることが好ましく、より好ましくは10~60質量%である。構成単位Cの含有割合は、0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1~5質量%である。なお、本発明の目的に反しない範囲内において、上記ランダム共重合体は構成単位A,B,C以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0030】
本実施形態に係るゴム組成物は、上記微粒子を含有することにより、優れた転がり抵抗性能(低燃費性)、及びウエットグリップ性能が得られる。このメカニズムは定かではないが、微粒子構造において、単独重合した場合の重合体のTgが-50℃~0℃であるアルキルメタクリレートに由来する構成単位Aを含有することで、低温域の損失係数tanδが向上しウエットグリップ性能が改善し、単独重合した場合の重合体のTgが-70℃~-50℃であるアルキルアクリレートに由来する構成単位Bを含有することで、高温域における損失係数tanδが減少し転がり抵抗性能が改善するものと推測できる。
【0031】
本実施形態に係る重合体(A)の平均粒子径は、特に限定されないが、10nm~100nmであることが好ましく、20nm~60nmであることがより好ましい。ここで、本明細書において、上記微粒子の平均粒子径とは、ラテックス中に分散するポリマー粒子の平均粒子径(ラテックス粒径(ML))のことであり、キュムラント法により求めた値とする。具体的には、動的光散乱法(DLS)により測定される粒度分布における積算値50%での粒径(50%径:D50)であり、光子相関法(JIS Z8826準拠)により測定し(入射光と検出器との角度90°)、得られた自己相関関数からキュムラント法により求めた値である。
【0032】
本実施形態に係る上記微粒子の製造方法は、特に限定されず、例えば、公知の乳化重合を利用して合成することができる。好ましい一例を挙げれば次の通りである。すなわち、構成単位Aを形成するモノマーと構成単位Bを形成するモノマーとを、構成単位Cを形成するモノマーとともに、乳化剤を溶解した水等の水性媒体に分散させ、得られたエマルションに水溶性のラジカル重合開始剤(例えば、過硫酸カリウムなどの過酸化物)を添加してラジカル重合させる。これにより、水性媒体中にアルキル(メタ)アクリレート系重合体からなるポリマー微粒子が生成される。その他のポリマー粒子の製造方法として、公知の懸濁重合や分散重合、沈殿重合、ミニエマルション重合、ソープフリー乳化重合(無乳化剤乳化重合)およびマイクロエマルション重合などの重合方法を利用することができる。
【0033】
本実施形態に係るゴム組成物において、上記微粒子の配合量は、ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対して1~100質量部であり、好ましくは2~50質量部であり、より好ましくは3~30質量部である。
【0034】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記微粒子の他に、補強性充填剤、シランカップリング剤、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0035】
補強性充填剤としては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)等のシリカやカーボンブラックが用いられる。好ましくは、転がり抵抗性能とウエットグリップ性能のバランスを向上するために、シリカ単独使用又はシリカとカーボンブラックの併用が好ましい。補強性充填剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して20~150質量部でもよく、30~100質量部でもよい。シリカの配合量も特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して20~150質量部でもよく、30~100質量部でもよい。
【0036】
シリカを配合する場合、シランカップリング剤を併用することが好ましく、その場合、シランカップリング剤の配合量は、シリカ質量の2~20質量%であることが好ましく、より好ましくは4~15質量%である。
【0037】
上記加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。また、上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0038】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、上記微粒子とともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0039】
このようにして得られたゴム組成物は、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど、各種用途・各種サイズの空気入りタイヤのトレッド部、サイドウォール部などタイヤの各部位に適用することができる。すなわち、該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140℃~180℃でグリーンタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。これらの中でも、タイヤのトレッド用配合として用いることが特に好ましい。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
[平均粒子径の測定方法]
微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法(DLS)により測定される粒度分布における積算値50%での粒径(50%径:D50)であり、下記合成例における凝固前のラテックス溶液を測定試料として用いて、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計「DLS-8000」を用いた光子相関法(JIS Z8826準拠)により測定した(入射光と検出器との角度90°)。
【0042】
[Tgの測定方法]
JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて測定した(測定温度範囲:-150℃~150℃)。
【0043】
[合成例A:ポリマーA]-50℃~0℃のメタクリル酸アルキルの単独重合体
40.0gのメタクリル酸2,4,6-トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、重合体を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としてのポリメタクリル酸イソデシルを得た。ポリメタクリル酸イソデシルのTgは-40℃であった。
【0044】
[合成例B:ポリマーB]-70℃~-50℃のアクリル酸アルキルの単独重合体
40.0gのアクリル酸n-ブチル、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、重合体を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としてのポリアクリル酸n-ブチルを得た。ポリアクリル酸n-ブチルのTgは-53℃であった。
【0045】
[合成例C:ポリマーC]-70℃~-50℃のメタクリル酸アルキルの単独重合体
40.0gのメタクリル酸ドデシル、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、重合体を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としてのポリメタクリル酸ドデシルを得た。ポリメタクリル酸ドデシルのTgは-64℃であった。
【0046】
[合成例1:微粒子1の合成](単独重合体Tg-50℃~0℃のメタクリル酸アルキルと多官能ビニルモノマーの微粒子)
40.0gのメタクリル酸2,4,6-トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、1.63gの1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、微粒子を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としての微粒子1を得た。微粒子1の平均粒子径は45nm、Tgは-37℃であった。
【0047】
[合成例2:微粒子2の合成](単独重合体Tg-70℃~-50℃のアクリル酸アルキルと多官能ビニルモノマーの微粒子)
40.0gのアクリル酸n-ブチル、1.63gの1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、微粒子を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としての微粒子2を得た。微粒子2の平均粒子径は60nm、Tgは-51℃であった。
【0048】
[合成例3:微粒子3の合成](単独重合体Tg-50℃~0℃のメタクリル酸アルキルと単独重合体Tg-70℃~-50℃のアクリル酸アルキルと多官能ビニルモノマーのランダム共重合体の微粒子)
32.0gのメタクリル酸2,4,6-トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、8.0gのアクリル酸n-ブチル、1.63gの1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、微粒子を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としての微粒子3を得た。微粒子3の平均粒子径は43nm、Tgは-42℃であった。
【0049】
[合成例4:微粒子4の合成](単独重合体Tg-50℃~0℃のメタクリル酸アルキルと単独重合体Tg-70℃~-50℃のアクリル酸アルキルと多官能ビニルモノマーのランダム共重合体の微粒子)
24.0gのメタクリル酸2,4,6-トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、16.0gのアクリル酸n-ブチル、1.63gの1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、微粒子を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としての微粒子4を得た。微粒子4の平均粒子径は44nm、Tgは-45℃であった。
【0050】
[合成例5:微粒子5の合成](単独重合体Tg-50℃~0℃のメタクリル酸アルキルと単独重合体Tg-70℃~-50℃のアクリル酸アルキルと多官能ビニルモノマーのランダム共重合体の微粒子)
16.0gのメタクリル酸2,4,6-トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、24.0gのアクリル酸n-ブチル、1.63gのポリエチレングリコール#200ジアクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、微粒子を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としての微粒子5を得た。微粒子5の平均粒子径は44nm、Tgは-49℃であった。
【0051】
[合成例6:微粒子6の合成](単独重合体Tg-50℃~0℃のメタクリル酸アルキルと単独重合体Tg-70℃~-50℃のアクリル酸アルキルと多官能ビニルモノマーのランダム共重合体の微粒子)
8.0gのメタクリル酸2,4,6-トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、32.0gのアクリル酸n-ブチル、1.63gの1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、100.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、微粒子を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としての微粒子6を得た。微粒子6の平均粒子径は49nm、Tgは-51℃であった。
【0052】
[合成例7:微粒子7の合成](単独重合体Tg-50℃~0℃のメタクリル酸アルキルと単独重合体Tg-70℃~-50℃のアクリル酸アルキルと多官能ビニルモノマーのブロック共重合体の微粒子)
20.0gのメタクリル酸2,4,6-トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、1.63gの1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、90.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で2時間撹拌した。次いで、20.0gのアクリル酸ブチル(ブチルアクリレート)を先の溶液に添加し、3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、微粒子を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としての微粒子7を得た。微粒子7の平均粒子径は52nm、Tgは-45℃であった。
【0053】
[合成例8:微粒子8の合成](単独重合体Tg-50℃~0℃のメタクリル酸アルキルと単独重合体Tg-70℃~-50℃のメタクリル酸アルキルと多官能ビニルモノマーのランダム共重合体の微粒子)
20.0gのメタクリル酸2,4,6-トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、20.0gのメタクリル酸ドデシル、1.63gの1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、90.0gの水を混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.48gの過硫酸カリウムを添加した。添加後、20分間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で3時間撹拌し、ラテックス溶液を得た。該ラテックス溶液を撹拌しているメタノール中に投入することにより、微粒子を沈殿させた。その後、ろ過により液体を除去し、真空乾燥器で70℃、1.0×103Paの条件下で乾燥することにより固形成分としての微粒子8を得た。微粒子8の平均粒子径は70nm、Tgは-50℃であった。
【0054】
ラボミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0055】
・変性SBR:JSR(株)製「HPR350」
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックジャパン(株)製「Si69」
・微粒子1~8:上記合成例1~8でそれぞれ得られた微粒子
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・硫黄:細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
・2次加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
【0056】
得られた各ゴム組成物について、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、動的粘弾性試験を行って0℃及び60℃でのtanδを測定した。測定方法は次の通りである。
【0057】
・0℃tanδ:UBM社製レオスペクトロメーターE4000を用いて、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み2%、温度0℃の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、tanδが大きく、ウエットグリップ性能に優れることを示す。
【0058】
・60℃tanδ:温度を60℃に変え、その他は0℃tanδと同様にしてtanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど、発熱しにくく、タイヤでの転がり抵抗が小さくて転がり抵抗性能(即ち、低燃費性)に優れることを示す。
【0059】
【0060】
結果は、表1に示す通りであり、構成単位Aと構成単位Bと構成単位Cとのランダム共重合体からなる微粒子を配合した実施例1~4は、転がり抵抗性能(低燃費性)、及びウエットグリップ性能のバランスに優れていた。
【0061】
比較例1は、構成単位Aと構成単位Cとのランダム共重合体からなる微粒子を配合した例であり、実施例1~4と比較して、転がり抵抗性能、及びウエットグリップ性能が劣っていた。
【0062】
比較例2は、構成単位Bと構成単位Cとのランダム共重合体からなる微粒子を配合した例であり、実施例1~4と比較して、ウエットグリップ性能が劣っていた。
【0063】
比較例3は、構成単位Aと構成単位Bと構成単位Cとのブロック共重合体からなる微粒子を配合した例であり、実施例1~4と比較して、転がり抵抗性能、及びウエットグリップ性能が劣っていた。
【0064】
比較例4は、構成単位Bに代えて、ガラス転移点が所定範囲外であるアルキルメタクリレートに由来する構成単位を含むランダム共重合体からなる微粒子を配合した例であり、実施例1~4と比較して、転がり抵抗性能、及びウエットグリップ性能が劣っていた。