(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087696
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】電極付きハニカム基材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/02 20060101AFI20220606BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20220606BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220606BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20220606BHJP
C04B 41/89 20060101ALI20220606BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
B01J35/02 G ZAB
B01J37/08
B01J35/04 301F
C04B38/00 303Z
C04B41/89 A
F01N3/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199768
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 幸司
(72)【発明者】
【氏名】今 正大
【テーマコード(参考)】
3G091
4G019
4G169
【Fターム(参考)】
3G091BA07
3G091CA03
3G091GA06
3G091GB17X
4G019FA12
4G169AA01
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB15A
4G169BC58A
4G169BC68A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BD03A
4G169BD05A
4G169CA03
4G169EA18
4G169EA26
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EC30
4G169ED10
4G169FA01
4G169FB30
4G169FB33
4G169FB67
(57)【要約】
【課題】保持部材が吸水した場合でも、通電加熱時におけるハニカム基材の温度上昇の遅れを抑制可能な電極付きハニカム基材、また、その製造方法を提供する。
【解決手段】電極付きハニカム基材1は、通電によって発熱するハニカム基材2と、ハニカム基材2の外周面に対向して設けられた一対の電極30と、ハニカム基材2および電極30の少なくとも一方を覆うセラミックス被膜4と、を有している。電極付きハニカム基材1では、セラミックス被膜4の吸水率は、ハニカム基材2の吸水率よりも小さい。ハニカム基材2と電極30とセラミックス被膜4とは、同時焼結により形成される、あるいは、ハニカム基材2と電極30とが同時焼結により形成された後、セラミックス被膜4が焼結により形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって発熱するハニカム基材(2)と、
上記ハニカム基材の外周面に対向して設けられた一対の電極(30)と、
上記ハニカム基材および上記電極の少なくとも一方を覆うセラミックス被膜(4)と、を有しており、
上記セラミックス被膜の吸水率は、上記ハニカム基材の吸水率よりも小さい、
電極付きハニカム基材(1)。
【請求項2】
上記セラミックス被膜の吸水率が8%以下である、
請求項1に記載の電極付きハニカム基材。
【請求項3】
上記セラミックス被膜の膜厚が100μm以上である、
請求項1または請求項2に記載の電極付きハニカム基材。
【請求項4】
上記ハニカム基材の吸水率が10%以上である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電極付きハニカム基材。
【請求項5】
上記セラミックス被膜の主成分がSiO2である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電極付きハニカム基材。
【請求項6】
上記セラミックス被膜は、上記ハニカム基材を覆っており、
上記ハニカム基材は、SiO2を含む、
請求項5に記載の電極付きハニカム基材。
【請求項7】
上記セラミックス被膜は、上記ハニカム基材を覆っており、
上記ハニカム基材は、導電材を含み、
上記導電材の主成分がSiである、
請求項5または請求項6に記載の電極付きハニカム基材。
【請求項8】
上記ハニカム基材および上記電極の電気抵抗の和が、1Ω以上100Ω以下の範囲にある、
請求項1から請求項7のいずれ1項に記載の電極付きハニカム基材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電極付ハニカム基材の製造方法であって、
上記ハニカム基材と上記電極と上記セラミックス被膜とが同時焼結により形成される、あるいは、
上記ハニカム基材と上記電極とが同時焼結により形成された後、上記セラミックス被膜が焼結により形成される、
電極付きハニカム基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極付きハニカム基材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等の内燃機関で生じた排ガスを浄化するための触媒装置では、触媒を担持させたハニカム基材を通電により発熱させる技術が知られている。この場合、ハニカム基材に電圧を印加するため、ハニカム基材の外周面に一対の電極が設けられる。また、ハニカム基材に一対の電極が設けられた電極付きハニカム基材は、通常、排気管の途中に取り付けられたケース筒体内に収容され、ケース筒体との間に配置されたマット状の保持部材によって保持されている。
【0003】
上述した保持部材は、通常、乾燥状態において絶縁材として機能する。そのため、保持部材が乾燥状態にある場合には、電極付きハニカム基材とケース筒体との絶縁を確保することができる。しかしながら、排ガス中に含まれる水蒸気が冷却されて生じた凝縮水により保持部材が被水し、吸水した場合には、保持部材の絶縁性が低下する。保持部材の絶縁性の低下は電流漏洩を招き、ハニカム基材の通電加熱が難しくなる。
【0004】
本願に先行する特許文献1には、ハニカム基材とケース筒体との間に介在する保持部材が水分を吸収してもハニカム基材とケース筒体との間の絶縁を確保するため、ケース筒体と保持部材との間に、ガラス成分を含む絶縁材料で形成され、かつ、水分を吸収しないように設けられた絶縁層を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の従来技術では、保持部材が吸水した場合に、吸水した保持部材に接するハニカム基材が吸水しやすい。ハニカム基材が吸水すると、その分熱容量が増加し、通電加熱時にハニカム基材の温度上昇に遅れが生じる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、保持部材が吸水した場合でも、通電加熱時におけるハニカム基材の温度上昇の遅れを抑制可能な電極付きハニカム基材、また、その製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、通電によって発熱するハニカム基材(2)と、
上記ハニカム基材の外周面に対向して設けられた一対の電極(30)と、
上記ハニカム基材および上記電極の少なくとも一方を覆うセラミックス被膜(4)と、を有しており、
上記セラミックス被膜の吸水率は、上記ハニカム基材の吸水率よりも小さい、
電極付きハニカム基材(1)にある。
【0009】
本発明の他の態様は、上記電極付ハニカム基材の製造方法であって、
上記ハニカム基材と上記電極と上記セラミックス被膜とが同時焼結により形成される、あるいは、
上記ハニカム基材と上記電極とが同時焼結により形成された後、上記セラミックス被膜が焼結により形成される、
電極付きハニカム基材の製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
上記電極付きハニカム基材は、上記構成を有する。そのため、上記電極付きハニカム基材は、上記セラミックス被膜により、セラミックス被膜で覆われていない電極付きハニカム基材に比べ、吸水した保持部材に起因するハニカム基材の吸水を抑制することができる。そのため、上記電極付きハニカム基材によれば、ハニカム基材の吸水による熱容量の増加が抑制され、通電加熱時におけるハニカム基材の温度上昇の遅れを抑制することができる。
【0011】
上記電極付きハニカム基材の製造方法は、上記構成を有する。そのため、上記電極付きハニカム基材の製造方法によれば、保持部材が吸水した場合でも、通電加熱時におけるハニカム基材の温度上昇の遅れを抑制可能な上記電極付きハニカム基材が得られる。
【0012】
なお、特許請求の範囲および課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る電極付きハニカム基材の基材軸方向と直交する直交断面を模式的に示した図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る電極付きハニカム基材を適用した電気加熱式触媒装置の一例を模式的に示した図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III線矢視断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る電極付きハニカム基材の作用効果を説明するための図である。
【
図5】
図5は、セラミックス被膜の吸水率の測定方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る電極付きハニカム基材の基材軸方向と直交する直交断面を模式的に示した図である。
【
図7】
図7は、実験例において、セラミックス被膜の吸水率の測定時にセラミックス被膜に吸水させている状況の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態1の電極付きハニカム基材について、
図1~
図5を用いて説明する。本実施形態の電極付きハニカム基材1は、
図1~
図3に例示されるように、通電によって発熱するハニカム基材2と、一対の電極30と、セラミックス被膜4と、を有している。
【0015】
電極付きハニカム基材1は、例えば、触媒(白金、パラジウム、ロジウム等)が担持された状態で、
図2に例示されるように、エンジン等の内燃機関(不図示)などで生じた排ガスFを浄化するために排気管91に設けられた電気加熱式触媒装置9に適用されることができる。なお、
図2中、矢印Gの方向が、電極付きハニカム基材1におけるガス流れ方向Gとされる。
【0016】
具体的には、
図2および
図3では、排気管91の途中に電気加熱式触媒装置9のケース筒体92が取り付けられ、ケース筒体92内に電極付きハニカム基材1が収容されている例が示されている。電極付きハニカム基材1とケース筒体92との間には保持部材93が配置されており、この保持部材93により電極付きハニカム基材1が保持されている。保持部材93は、例えば、アルミナファイバー等からマット状に構成されており、乾燥状態において絶縁性を有している。保持部材93は、吸水性を有している。つまり、電極付きハニカム基材1は、吸水性を有する保持部材93により保持されて使用される。
【0017】
また、
図2および
図3では、電極付きハニカム基材1における各電極30のそれぞれに電極端子31が電気的に接続されている例が示されている。電極端子31における電極30側とは反対側の端部は、保持部材93の外側に突出している。保持部材93から突出した電極端子31の部分は、ケース筒体92に設けられた電極室921内に配置され、外部より保護されている。また、
図2では、バッテリー等の電源94からの電力が、スイッチング回路95、遮断回路96、リード線97を介して一対の電極端子31に給電されるように構成されている例が示されている。本実施形態では、一対の電極端子31を介して一対の電極30間に電圧が印加され、これによる通電によってハニカム基材2が発熱可能とされている。外部電圧の印加方式は、直流方式、交流方式、パルス方式等、いずれの方式であってもよい。なお、電極室921とリード線97との間には、排ガスFのリークを防止するためのガス封止材98が設けられている。ガス封止材98の材料としては、例えば、セラミックス、ガラスなどを例示することができる。
【0018】
電極付きハニカム基材1において、ハニカム基材2は、
図1および
図2に例示されるように、複数のセル21を区画形成する隔壁22と、隔壁22の外周を取り囲む外周壁23と、を備える構成とすることができる。セル21は、
図2に示される排ガスFが流される流路である。例えば、
図1では、隔壁22が、ハニカム基材2の基材軸と直交する直交断面(以下、単に「直交断面」ということがある。)で見て、正方形状の複数のセル21を区画形成する例が示されている。つまり、
図1では、隔壁22は、格子状に形成されている。隔壁22は、他にも、六角形状の複数のセル等、公知の形状の複数のセル21を区画形成するように構成されることもできる。なお、
図1において、隔壁22は、便宜上、線によって表されており、壁厚等は省略されている。また、基材軸は、
図2に示されるガス流れ方向Gと同方向である。
【0019】
ハニカム基材2は、直交断面で見て、例えば、円形状、楕円状、矩形上、レーストラック形状などの断面形状を有することができる。
図1および
図2では、円形状の断面形状を有するハニカム基材2の例が示されている。なお、レーストラック形状は、直交断面で見て、外周壁23が、互いに離間された状態で平行に配置された一対の側面部(不図示)と、一対の側面部における同じ側にある端縁間をそれぞれ連結する一対の円形部(不図示)とを有する形状である。
【0020】
電極付きハニカム基材1において、電極30は、ハニカム基材2の外周面に対向して設けられる。つまり、電極30は、ハニカム基材2における外周壁23の外表面に対向して設けられる。したがって、ハニカム基材2の外周面には、電極30が形成された面部分と、電極30が形成されていない面部分とが存在している。なお、上述した断面形状がレーストラック形状であるハニカム基材2では、外周壁23を構成する各円形部の外周面にそれぞれ電極30を設けることができる。電極30は、
図2に例示されるように、ハニカム基材2の外周面上において基材軸方向に延びるように形成されることができる。電極30は、ハニカム基材2の外周面に接合されることができる。なお、上述した電極端子31は、電極30に接合されていてもよいし、接合されていなくてもよい。電極端子31は、電極30の表面における中心に配置されることができる。電極端子31は、例えば、棒状等の形状に形成されることができる。
【0021】
電極付きハニカム基材1において、セラミックス被膜4は、ハニカム基材2および電極30の少なくとも一方を覆っている。つまり、セラミックス被膜4は、電極30の表面を覆わず、ハニカム基材2の外周面における電極30が形成されていない面部分のみを覆っていてもよいし、電極30の表面のみを覆っていてもよいし、ハニカム基材2の外周面における電極30が形成されていない面部分と電極30の表面との両方を覆っていてもよい。
図1および
図2では、セラミックス被膜4が、ハニカム基材2の外周面における電極30が形成されていない面部分と電極30の表面との両方を直接覆っている例が示されている。この構成によれば、セラミックス被膜4がハニカム基材2および電極30のいずれか一方を直接覆っている場合に比べ、吸水した保持部材93に起因するハニカム基材2の吸水を抑制しやすくなる。また、
図1~
図3では、セラミックス被膜4が、ハニカム基材2および電極30のみならず、電極端子31も直接覆っている例が示されている。具体的には、セラミックス被膜4は、電極端子31とリード線97との接続部分を除いて、電極端子31の表面を覆うことができる。セラミックス被膜4が、ハニカム基材2、電極30、および、電極端子31を覆っている構成によれば、セラミックス被膜4が電極端子31を覆っていない場合に比べ、吸水した保持部材93に起因するハニカム基材2の吸水を抑制しやすくなる。なお、セラミックス被膜4によって覆われる各部位は、各部位の全体がセラミックス被膜4により覆われていてもよいし、各部位が部分的にセラミックス被膜4により覆われていてもよい。好ましくは、前者である。また、セラミックス被膜4は、さらに、ハニカム基材2の端面、具体的には、ハニカム基材2の端面における隔壁22の表面などを覆っていてもよい。
【0022】
ここで、電極付きハニカム基材1において、セラミックス被膜4の吸水率は、ハニカム基材2の吸水率よりも小さい。
【0023】
セラミックス被膜4で覆われていない電極付きハニカム基材を、比較形態1の電極付きハニカム基材とする。また、セラミックス被膜4の吸水率がハニカム基材2の吸水率以上である電極付きハニカム基材を、比較形態2の電極付きハニカム基材とする。比較形態1、比較形態2の電極付きハニカム基材では、保持部材93が吸水した場合に、吸水した保持部材93に接するハニカム基材2が吸水する。ハニカム基材2が吸水すると、その分熱容量が増加し、通電加熱時にハニカム基材2の温度上昇に遅れが生じる。つまり、ハニカム基材2が吸水すると、
図4に示されるように、通電加熱時に、ハニカム基材2に吸水された水およびハニカム基材2を温めるための時間T1と、ハニカム基材2に吸収された水を飛ばすための時間T2とが余分に必要になる。そのため、比較形態1、2の電極付きハニカム基材は、所定温度まで通電加熱する際の時間に遅れが生じる。これに対し、本実施形態の電極付きハニカム基材1によれば、セラミックス被膜4により、吸水した保持部材93に起因するハニカム基材2の吸水を抑制することができる。そのため、本実施形態の電極付きハニカム基材1によれば、ハニカム基材2の吸水による熱容量の増加が抑制され、
図4に例示されるように、通電加熱時におけるハニカム基材2の温度上昇の遅れを抑制することができる。
【0024】
セラミックス被膜4の吸水率は、具体的には、8%以下とすることができる。この構成によれば、緻密性の高いセラミックス被膜4により、吸水した保持部材93からハニカム基材2への水の移動抑制を確実なものとすることができる。そのため、この構成によれば、保持部材93が吸水した場合でも、通電加熱時におけるハニカム基材2の温度上昇の遅れ抑制を確実なものとすることができる。
【0025】
セラミックス被膜4の吸水率は、セラミックス被膜4の緻密性向上などの観点から、好ましくは、7%以下、より好ましくは、6%以下、さらに好ましくは、5%以下、さらにより好ましくは、4%以下、さらにより好ましくは、3%以下とすることができる。
【0026】
セラミックス被膜4の吸水率は、以下のようにして測定することができる。
図5(a)に示されるように、電極付きハニカム基材1からセラミックス被膜4の一部を含むサンプルS1を切り出す。例えば、セラミックス被膜4がハニカム基材2を直接覆っている場合には、サンプルS1は、セラミックス被膜4の一部とハニカム基材2の一部を含む。なお、
図5(a)では、サンプルS1におけるセラミックス被膜4が省略されているが、サンプルS1の上面側にセラミックス被膜4が形成されているものとする。次いで、サンプルS1の質量を測定する。次いて、
図5(b)に示されるように、ピペットPを用いてサンプルS1の上面側の表面に蒸留水Wを滴下する。次いで、20mm×20mmの面積に蒸留水Wを延ばし、室温下にて10分間放置する。次いで、
図5(c)に示されるように、紙製のウエスKを用い、サンプルS1の表面に吸水されずに残っている蒸留水Wをふき取る。次いで、サンプルS1の質量を再び測定する。そして、サンプルS1の質量増加分をセラミックス被膜4の吸水質量とする。セラミックス被膜4の吸水率(%)は、100×(サンプルS1によるセラミックス被膜4の吸水質量)/(サンプルS1によるセラミックス被膜4の吸水前の質量)の式より算出することができる。なお、セラミックス被膜4の吸水前の質量は、次の式により算出することができる。セラミックス被膜4の吸水前の質量=セラミックス被膜4の真密度×(1-セラミックス被膜4の気孔率/100)×サンプルS1上のセラミックス被膜4の被覆面積×セラミックス被膜4の平均膜厚。この式において、セラミックス被膜4の真密度は、サンプルS1上から剥離させた一部のセラミックス被膜4のサンプルを用いてピクノメーターにより測定した値を用いる。セラミックス被膜4の気孔率は、同サンプルを用いて水銀圧入法により測定し得られた気孔体積から算出した値を用いる。サンプルS1上のセラミックス被膜4の被覆面積は、幾何学計算により算出した値を用いる。セラミックス被膜4の平均膜厚は、サンプルS1の側面4断面についてマイクロスコープ観察を実施し、各断面9点の膜厚の算術平均値である。
【0027】
電極付きハニカム基材1において、ハニカム基材2の吸水率は、10%以上とすることができる。このように吸水率の高いハニカム基材2を用いた電極付きハニカム基材1は、ハニカム基材2の吸水率が10%未満である電極付きハニカム基材1に比べ、セラミックス被膜4が有効に作用しやすい。ハニカム基材2の吸水率は、好ましくは、12%以上、より好ましくは、15%以上、さらに好ましくは、18%以上とすることができる。ハニカム基材2の吸水率は、気孔の増大によるハニカム基材強度の低下抑制などの観点から、好ましくは、30%以下、より好ましくは、28%以下、さらに好ましくは、25%以下とすることができる。
【0028】
ハニカム基材2の吸水率は、次のようにして測定することができる。具体的には、電極付きハニカム基材1からハニカム基材2のサンプルを切り出す。次いで、このサンプルの質量を測定する。次いで、このサンプルを純水に浸漬させ、2分間超音波により脱気する。脱気後のサンプルを水から取り出し、サンプル表面についている水分、セル内部に毛管凝集している水分を10cm程度の距離からエアブローにて除去する。次いで、サンプルの質量を再び測定する。そして、サンプルの質量増加分をハニカム基材2の吸水質量(測定値)とする。オーブンにてサンプルを110℃で24時間乾燥後、同様の測定を2回繰り返す。そして、3回の測定によって得られた吸水質量(測定値)の算術平均値を、ハニカム基材2の吸水質量とする。ハニカム基材2の吸水率(%)は、100×(サンプルによるハニカム基材2の吸水質量)/(サンプルによるハニカム基材2の吸水前の質量)の式より算出することができる。
【0029】
電極付きハニカム基材1において、セラミックス被膜4の膜厚は、100μm以上とすることができる。セラミックス被膜4の膜厚が100μm以上あれば、セラミックス被膜4の厚膜化により、セラミックス被膜4より内部にあるハニカム基材2へ水が拡散する際の拡散距離を稼ぐことができる。その結果、ハニカム基材2の吸水をより抑制しやすくなる。セラミックス被膜4の膜厚は、ハニカム基材2の吸水抑制、耐衝撃強度確保などの観点から、好ましくは、150μm以上、より好ましくは、200μm以上、さらに好ましくは、250μm以上とすることができる。なお、セラミックス被膜4の膜厚は、熱応力によるセラミックス被膜4の割れ抑制などの観点から、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、450μm以下、さらに好ましくは、400μm以下とすることができる。なお、セラミックス被膜4の膜厚は、ハニカム基材2の基材軸と直交する直交断面において、任意の10か所について測定したセラミックス被膜4の厚み測定値の算術平均値である。
【0030】
電極付きハニカム基材1において、セラミックス被膜4は、具体的には、絶縁性セラミックスより形成されることができる。この構成によれば、ハニカム基材2外部への電流漏洩を抑制することができ、吸水した保持部材93に電流が流れ難くなる。そのため、この構成によれば、通電加熱時の昇温機能を損ない難い電極付きハニカム基材1が得られる。
【0031】
セラミックス被膜4は、例えば、SiO2(シリカ、溶融シリカも含む)、Al2O3(アルミナ)、TiO2(チタニア)、コーディエライト、SiC(炭化ケイ素)、ムライト、ZrO2(ジルコニア)などの絶縁性セラミックスを含むことができる。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。セラミックス被膜4は、好ましくは、その主成分がSiO2であるとよい。SiO2は、数ある絶縁性セラミックスの中でも、溶融性が高く、緻密な被膜を形成しやすい。そのため、この構成によれば、より吸水率が低く、緻密なセラミックス被膜4を形成することが可能となり、上述した作用効果を確実なものとすることができる。なお、セラミックス被膜4の主成分とは、セラミックス被膜4を構成する成分のうち、質量%で、最も含有量が多い成分をいう。
【0032】
電極付きハニカム基材1において、ハニカム基材2および電極30は、いずれも導電材と絶縁材とを含む構成とすることができる。具体的には、ハニカム基材2および電極30は、導電材と絶縁材とを含むセラミックスより形成されることができる。また、電極端子31は、導電材と絶縁材とを含む構成とすることができる。具体的には、電極端子31は、導電材と絶縁材とを含むセラミックスより形成されることができる。なお、電極端子31は、上記以外にも、例えば、金属等より形成されることもできる。
【0033】
ハニカム基材2、電極30、および、電極端子31に含まれる導電材としては、例えば、Si(シリコン)、SiとB(ホウ素)とを含む酸化物、Si等の導電性元素がドープされたSiC(炭化ケイ素)、金属シリサイド等のシリサイド化合物やニッケルクロム合金等をはじめとする各種抵抗体などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。ハニカム基材2、電極30、および、電極端子31に含まれる絶縁材としては、例えば、例えば、SiO2(シリカ、溶融シリカも含む)、Al2O3(アルミナ)、TiO2(チタニア)、コーディエライト、MgO(マグネシア)、ZrO2(ジルコニア)、ムライト、SiC(炭化ケイ素)などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。なお、ハニカム基材2と電極30とは、同じ材料から形成されていてもよいし、異なる材料から形成されていてもよい。また、電極30と電極端子31とは、同じ材料から形成されていてもよいし、異なる材料から形成されていてもよい。
【0034】
上述したように、セラミックス被膜4の主成分がSiO2である場合、セラミックス被膜4がハニカム基材2を覆っており、かつ、ハニカム基材2がSiO2を含む構成とすることができる。この構成によれば、セラミックス被膜4とハニカム基材2とが同種材を含むことにより、電極付きハニカム基材1の製造時に、セラミックス被膜4とハニカム基材2と間にSiO2の共有結合の形成を促すことができる。そのため、この構成によれば、セラミックス被膜4の接合強度が増し、ハニカム基材2の外周面上にセラミックス被膜4を成膜しやすくなる。
【0035】
また、セラミックス被膜4の主成分がSiO2である場合、セラミックス被膜4が電極30を覆っており、かつ、電極30がSiO2を含む構成とすることができる。この構成によれば、セラミックス被膜4と電極30とが同種材を含むことにより、電極付きハニカム基材1の製造時に、セラミックス被膜4と電極30と間にSiO2の共有結合の形成を促すことができる。そのため、この構成によれば、セラミックス被膜4の接合強度が増し、電極30の表面上にセラミックス被膜4を成膜しやすくなる。
【0036】
これらの構成において、電極30に含まれるSiO2の含有量は、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下、さらにより好ましくは、15質量%以下、さらにより好ましくは、10質量%以下とすることができる。この場合には、セラミックス被膜4の接合強度の向上、セラミックス被膜4の成膜性確保、ハニカム基材2の発熱性などに有利である。また、電極30に含まれるSiO2の含有量は、ハニカム基材2への電流分配性、エネルギー効率などの観点から、好ましくは、5質量%以上とすることができる。また、ハニカム基材2に含まれるSiO2の含有量は、ハニカム基材2の耐熱衝撃性の向上などの観点から、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上とすることができる。また、ハニカム基材2に含まれるSiO2の含有量は、電気抵抗確保などの観点から、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下、さらに好ましくは、60質量%以下とすることができる。これらの構成によれば、ハニカム基材2および電極30の電気抵抗の和を、車両に搭載される車両搭載電源によって効率的に昇温しやすい範囲に調整しやすくなる。
【0037】
また、セラミックス被膜4の主成分がSiO2である場合、セラミックス被膜4がハニカム基材2を覆っており、かつ、ハニカム基材2が導電材を含み、当該導電材の主成分がSiである構成とすることができる。この構成によれば、電極付きハニカム基材1の製造時に、ハニカム基材2のSiとセラミックス被膜4のSiO2との間で共有結合の形成を促すことができる。そのため、この構成によれば、セラミックス被膜4の接合強度が増し、ハニカム基材2の外周面上にセラミックス被膜4を成膜しやすくなる。なお、ハニカム基材2に含まれる導電材の主成分とは、ハニカム基材2に含まれる導電材を構成する成分のうち、質量%で、最も含有量が多い成分をいう。
【0038】
また、セラミックス被膜4の主成分がSiO2である場合、セラミックス被膜4が電極30を覆っており、かつ、電極30が導電材を含み、当該導電材の主成分がSiである構成とすることができる。この構成によれば、電極付きハニカム基材1の製造時に、電極30のSiとセラミックス被膜4のSiO2との間で共有結合の形成を促すことができる。そのため、この構成によれば、セラミックス被膜4の接合強度が増し、電極30の表面上にセラミックス被膜4を成膜しやすくなる。なお、電極30に含まれる導電材の主成分とは、電極30に含まれる導電材を構成する成分のうち、質量%で、最も含有量が多い成分をいう。
【0039】
電極付きハニカム基材1において、ハニカム基材2および電極30の電気抵抗の和は、例えば、車両に搭載される車両搭載電源にて効率的に昇温することができるなどの観点から、好ましくは、1Ω以上100Ω以下、より好ましくは、1Ω以上80Ω以下、さらに好ましくは、1Ω以上60Ω以下とすることができる。上記のような電気抵抗を持つ電極付きハニカム基材1は、車両搭載電源の電圧仕様で効率的に昇温することができるため、変圧機等を要せず、経済的に早期の触媒活性化を図ることができる。
【0040】
(実施形態2)
実施形態2の電極付きハニカム基材について、
図6を用いて説明する。なお、実施形態2以降において用いられる符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0041】
図6に例示されるように、本実施形態の電極付きハニカム基材1は、セラミックス被膜4が、ハニカム基材2および電極30を覆っており、電極端子31を覆っていない例である。その他の構成は、実施形態1と同様である。この場合についても、吸水した保持部材93に起因するハニカム基材2の吸水を抑制することができる。そのため、本実施形態の電極付きハニカム基材1によれば、ハニカム基材2の吸水による熱容量の増加が抑制され、通電加熱時におけるハニカム基材2の温度上昇の遅れを抑制することができる。その他の作用効果は、実施形態1と同様である。
【0042】
(実施形態3)
実施形態3の電極付きハニカム基材の製造方法について説明する。
【0043】
本実施形態の電極付きハニカム基材の製造方法は、上述した実施形態1または実施形態2の電極付きハニカム基材を製造することができる製造方法である。本実施形態の電極付きハニカム基材の製造方法では、ハニカム基材と電極とセラミックス被膜とが同時焼結により形成される。以下、これについて詳説する。以下、これについて詳説する。
【0044】
ハニカム基材と電極とセラミックス被膜とを同時焼結により形成する方法としては、例えば、仮焼(仮焼成)されたハニカム基材に電極形成用材料を塗布し、次いで、セラミックス被膜形成用材料を塗布し、次いで、必要に応じて脱脂のための焼成を行い、次いで、仮焼されたハニカム基材と電極形成用材料とセラミックス被膜形成用材料とを同時焼結する方法などを例示することができる。なお、セラミックス被膜形成用材料の塗布は、仮焼されたハニカム基材の外周面の表面のうち電極形成用材料が塗布されずに露出した部分、および、塗布された電極形成用材料の表面のうち少なくとも一方である。なお、電極端子の表面にセラミックス被膜を形成する場合には、成形した電極端子形成用材料を電極形成用材料に貼り付け、電極端子形成用材料の表面にもセラミックス被膜形成用材料を塗布すればよい。この場合、ハニカム基材と電極とセラミックス被膜と電極端子とが同時焼結により形成されることができる。セラミックス被膜を形成する部位の詳細については、実施形態1および実施形態2を適宜参照することができる。
【0045】
仮焼されたハニカム基材は、仮焼成されているが、未だ本焼結がなされていない。仮焼されたハニカム基材は、例えば、ハニカム基材形成用材料をハニカム状に成形し、得られたハニカム成形体を乾燥後、必要に応じて脱脂のために焼成し、アルゴン雰囲気下、1000℃以上1300℃以下の温度、好ましくは、1250℃以上1300℃以下の温度にて仮焼することなどにより準備することができる。脱脂のための焼成は、有機分を除去するために行う焼成であり(以下同様)、例えば、酸化雰囲気下、500℃以上800℃以下、好ましくは、600℃以上700℃以下の温度などにて実施することができる。
【0046】
ハニカム基材形成用材料は、ハニカム基材を形成するための材料である。ハニカム基材形成用材料は、具体的には、例えば、導電材と絶縁材とバインダーとを含む坏土状に調製されることができる。電極形成用材料は、電極を形成するための材料である。電極形成用材料は、具体的には、例えば、導電材と絶縁材とバインダーとを含むペースト状に調製されることができる。電極端子形成用材料は、電極端子を形成するための材料である。電極端子形成用材料は、具体的には、例えば、導電材と絶縁材とバインダーとを含む坏土状に調製されることができる。セラミックス被膜形成用材料は、セラミックス被膜を形成するための材料である。セラミックス被膜形成用材料は、具体的には、例えば、絶縁性セラミックスとバインダーとを含むペースト状に調製されることができる。
【0047】
より具体的には、セラミックス被膜形成用材料は、セラミックス被膜の主成分がSiO2となるように、SiO2を含むことができる。また、ハニカム基材形成用材料は、導電材と絶縁材とを含むハニカム基材における絶縁材がSiO2を含むように、SiO2を含むことができる。また、ハニカム基材形成用材料は、導電材と絶縁材とを含むハニカム基材における導電材の主成分がSiとなるように、Siを含むことができる。
【0048】
上記同時焼結は、仮焼温度よりも高い温度で行うことができる。上記同時焼結の温度は、好ましくは、仮焼温度よりも10℃以上高い温度とすることができる。上記同時焼結は、具体的には、アルゴン雰囲気下、1300℃以上の温度、好ましくは、1325℃以上1375℃以下の温度にて実施することができる。
【0049】
本実施形態の電極付きハニカム基材の製造方法によれば、同時焼結により、ハニカム基材および電極のうちセラミックス被膜にて覆われた方とセラミックス被膜との間にて相互焼結による結合が生じ、セラミックス被膜の接合強度が増す。そのため、本実施形態の電極付きハニカム基材の製造方法によれば、セラミックス被膜を成膜しやすくなる。また、本実施形態の電極付きハニカム基材の製造方法によれば、上記同時焼結により、形成されるセラミックス被膜の吸水率をより低くすることができる。
【0050】
(実施形態4)
実施形態4の電極付きハニカム基材の製造方法について説明する。
【0051】
本実施形態の電極付きハニカム基材の製造方法は、上述した実施形態1または実施形態2の電極付きハニカム基材を製造することができる製造方法である。本実施形態の電極付きハニカム基材の製造方法では、ハニカム基材と電極とが同時焼結により形成された後、セラミックス被膜が焼結により形成される。つまり、本実施形態では、ハニカム基材と電極とが先に同時焼結により形成された後、セラミックス被膜が後焼結により形成される。以下、これについて詳説する。
【0052】
ハニカム基材と電極とを同時焼結により形成した後、セラミックス被膜を焼結により形成する方法としては、例えば、仮焼成されたハニカム基材に電極形成用材料を塗布し、次いで、必要に応じて脱脂のための焼成を行い、次いで、仮焼されたハニカム基材と電極形成用材料とを同時焼結し、次いで、セラミックス被膜形成用材料を塗布し、次いで、必要に応じて脱脂のための焼成を行い、次いで、セラミックス被膜形成用材料を焼結する方法などを例示することができる。その他の構成については、実施形態3を適宜参照することができる。
【0053】
本実施形態の電極付きハニカム基材の製造方法によれば、セラミックス被膜の接合強度が増し、セラミックス被膜を成膜しやすくなる。
【0054】
(実験例)
-試料1の作製-
導電材としてのシリコン粉末とホウ酸と、絶縁材としてのシリカ粉末とを、18:6:76の質量比で混合し、得られた混合物にバインダーとしてメチルセルロースを4質量%添加し、水を加え、十分に混練することにより坏土状のハニカム基材形成用材料を調製した。
【0055】
また、導電材としてのシリコン粉末とホウ酸と、絶縁材としてのシリカ粉末とを、40:10:50の質量比で混合し、得られた混合物にバインダーとしてメチルセルロースを1.87質量%添加し、水を加え、十分に混合することによりペースト状の電極形成用材料を調製した。
【0056】
また、絶縁材としてのシリカ粉末にバインダーとしてメチルセルロースを1.87質量%添加し、水を加え、十分に混合することによりペースト状のセラミックス被膜形成用材料を調製した。
【0057】
上記ハニカム基材形成用材料を押出成形にてハニカム状に成形することによりハニカム成形体を得た。次いで、このハニカム成形体を乾燥させた後、大気雰囲気下、600℃の温度にて脱脂焼成した。次いで、脱脂焼成したハニカム成形体を、アルゴン雰囲気下、1250℃の温度にて仮焼することにより、仮焼されたハニカム基材を得た。次いで、仮焼されたハニカム基材の外周面に電極形成用材料を塗布した後、さらに、セラミックス被膜形成用材料を塗布した。本例では、セラミックス被膜形成用材料の塗布は、仮焼されたハニカム基材の外周面の表面のうち電極形成用材料が塗布されずに露出した部分、および、塗布された電極形成用材料の表面の両方とした。この際、セラミックス被膜形成用材料の塗布は、形成されるセラミックス被膜が膜厚100μmとなるように調整した。なお、本例では、試験簡略化のため、電極端子の形成は省略した。次いで、電極形成用材料およびセラミックス被膜形成用材料が塗布された、仮焼されたハニカム基材を、大気雰囲気下、600℃の温度にて脱脂焼成した。次いで、脱脂焼成したハニカム基材を、アルゴン雰囲気下、1350℃の温度にて本焼成することにより、試料1の電極付きハニカム基材(ハニカム基材および電極の電気抵抗の和:8.4Ω)を得た。つまり、本例では、ハニカム基材と電極とセラミックス被膜とを同時焼結により形成した。
【0058】
-試料2の作製-
試料1の電極付きハニカム基材の作製と同様にして各材料を準備するとともに、仮焼されたハニカム基材を形成した。次いで、仮焼されたハニカム基材の外周面に電極形成用材料を塗布した後、アルゴン雰囲気下、1350℃の温度にて焼成することにより、ハニカム基材と電極とを同時焼結させた。次いで、ハニカム基材の外周面の表面のうち電極が形成されずに露出した部分、および、電極の表面の両方に、セラミックス被膜形成用材料を塗布した。この際、セラミックス被膜形成用材料の塗布は、形成されるセラミックス被膜が膜厚100μmとなるように調整した。次いで、これを大気雰囲気下、600℃の温度にて脱脂焼成した後、アルゴン雰囲気下、1350℃の温度にて焼成することにより、セラミックス被膜を焼結させ、試料2の電極付きハニカム基材(ハニカム基材および電極の電気抵抗の和:8.1Ω)を得た。つまり、本例では、ハニカム基材と電極とを先に同時焼結により形成した後、セラミックス被膜を後焼結により形成した。
【0059】
-試料1Cの作製-
試料2の作製において、セラミックス被膜を形成しなかった点以外は同様にして、試料1Cの電極付きハニカム基材(ハニカム基材および電極の電気抵抗の和:8.6Ω)を得た。
【0060】
-セラミックス被膜の吸水率の測定-
上述した方法により、各電極付きハニカム基材におけるセラミックス被膜の吸水率を測定した。なお、
図7に、セラミックス被膜の吸水率の測定時において、サンプルS1における20mm×20mmの面積に蒸留水を延ばし、室温下にて10分間放置している様子を示す。
【0061】
-ハニカム基材の吸水率の測定-
上述した方法により、各電極付きハニカム基材におけるハニカム基材の吸水率を測定した。
【0062】
-電極付きハニカム基材の総吸水率の測定-
電極付きハニカム基材の質量を測定した。次いで、この電極付きハニカム基材を純水に浸漬させ、2分間超音波により脱気した。脱気後の電極付きハニカム基材を水から取り出し、電極付きハニカム基材表面についている水分、セル内部に毛管凝集している水分を10cm程度の距離からエアブローにて除去した。次いで、電極付きハニカム基材の質量を再び測定した。そして、電極付きハニカム基材の質量増加分を電極付きハニカム基材の総吸水質量(測定値)とした。オーブンにて電極付きハニカム基材を110℃で24時間乾燥後、同様の測定を2回繰り返した。そして、3回の測定によって得られた総吸水質量(測定値)の算術平均値を、電極付きハニカム基材の総吸水質量とした。電極付きハニカム基材の総吸水率(%)は、100×(電極付きハニカム基材の総吸水質量)/(電極付きハニカム基材の吸水前の質量)の式より算出した。
【0063】
表1に、上記試験結果をまとめて示す。
【0064】
【0065】
表1によれば、試料1Cは、セラミックス被膜を有していない。そのため、試料1Cは、総吸水率が高い。つまり、試料1Cは、吸水した保持部材に接することによるハニカム基材の吸水を抑制することが困難であるといえる。
【0066】
これに対し、試料1および試料2では、ハニカム基材および電極の少なくとも一方が、ハニカム基材の吸水率よりも小さい吸水率を有するセラミックス被膜により覆われている。そのため、試料1および試料2は、試料1Cに比べて、総吸水率が低い。つまり、試料1および試料2は、試料1Cに比べて、吸水した保持部材に接することによるハニカム基材の吸水を抑制することができるといえる。そのため、試料1および試料2によれば、ハニカム基材の吸水による熱容量の増加が抑制され、通電加熱時におけるハニカム基材の温度上昇の遅れを抑制することが可能になるといえる。
【0067】
また、試料1および試料2の結果を比較した場合、ハニカム基材と電極とを先に同時焼結により形成した後、セラミックス被膜を後焼結により形成するよりも、ハニカム基材と電極とセラミックス被膜とを同時焼結により形成した方が、より吸水率の低いセラミックス被膜を有する電極付きハニカム基材が得られることが確認された。
【0068】
本発明は、上記各実施形態、各実験例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、各実施形態、各実験例に示される各構成は、それぞれ任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 電極付きハニカム基材
2 ハニカム基材
30 電極
4 セラミックス被膜