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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087717
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】止水板連結用中柱
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20220606BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199823
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 直人
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA08
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】複数の止水板を連結して設置する場合に出隅状でも入隅状でも設置することを可能にする止水板連結用中柱を提供する。
【解決手段】止水板連結用中柱は、浸水防止領域を囲む複数の止水板の幅方向の連結位置に配置され、止水板の幅方向の側端辺部と接続可能である。止水板連結用中柱は、複数の止水板のうち一方の止水板の幅方向に延在し、かつ幅方向の端部に側端辺部が接続される第一の接続面を備える第一の柱部と、幅方向において第一の接続面と逆側で第一の柱部に対して、略直交する方向に延在し、複数の止水板のうち他方の止水板の側端辺部が接続される第二の接続面を備える第二の柱部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水防止領域を囲む複数の止水板の幅方向の連結位置に配置され、前記止水板の幅方向の側端辺部と接続可能な止水板連結用中柱であって、
複数の前記止水板のうち一方の前記止水板の前記幅方向に延在し、かつ前記幅方向の端部に前記側端辺部が接続される第一の接続面を備える第一の柱部と、
前記幅方向において前記第一の接続面と逆側で前記第一の柱部に対して、略直交する方向に延在し、複数の前記止水板のうち他方の前記止水板の前記側端辺部が接続される第二の接続面を備える第二の柱部と、
を備える、止水板連結用中柱。
【請求項2】
前記第一の柱部の底面と前記第二の柱部の底面を支持する支持プレートと、備え、
前記支持プレートは、
前記第一の柱部の底面および前記第二の柱部の底面の形状に対応した柱支持部と、
前記第一の柱部と前記第二の柱部とが略直交状態で連結された屈曲部の内側の位置で、前記柱支持部と連結された第一の柱固定部と、
前記屈曲部の外側の位置で、前記柱支持部と連結された第二の柱固定部と、
を備える、請求項1に記載の止水板連結用中柱。
【請求項3】
前記支持プレートは、前記止水板連結用中柱を設置する床面との間に弾性を備える止水部材を備える、請求項2に記載の止水板連結用中柱。
【請求項4】
前記第一の柱固定部と前記第二の柱固定部とは、それぞれ締結部材装着部を備え、
前記第一の柱固定部と前記第二の柱固定部の前記締結部材装着部は、前記柱支持部に対して対称の位置に形成されている、請求項2または請求項3に記載の止水板連結用中柱。
【請求項5】
前記第一の柱固定部と前記第二の柱固定部の少なくとも一方には、設置位置における設置姿勢を示す指標が設けられている、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の止水板連結用中柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水板連結用中柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の開口部に設置して当該構造物の内側への浸水を抑制する止水板(止水装置、防水板)が知られている。また、開口部の幅が1枚の止水板の幅より大きい場合、開口部の幅方向の例えば中間位置に中柱(中間支柱)を設置して、複数の止水板を幅方向に連結して設置することを可能する構成が知られている。また、中柱の部分で接続する止水板同士に角度を付け、出隅状(二つの止水板の受水面(壁)が外向きに配置されている状態)の開口部において止水を可能にする構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-127788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように複数の止水板を連結して用いる場合、中柱の部分で角度を付けることにより出隅状の開口部において利用可能となるが、止水板を設置する位置や建造物の壁面の配置、周辺に存在する物体との位置関係等によっては、止水板を入隅状(二つの止水板の受水面(壁)が内向きに向き合うように配置されている状態)に配置する必要が生じる場合がある。このように入隅状に止水板を配置する場合、中柱を用いても隣接する止水板の端部同士が干渉したり、中柱の床面に対する固定部と止水板とが干渉したりして、止水板の設置が難くなったり、設置できなくなったりする場合があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、複数の止水板を連結して設置する場合に出隅状態でも入隅状態でも設置することを可能にする止水板連結用中柱を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本実施形態に係る止水板連結用中柱は、例えば、浸水防止領域を囲む複数の止水板の幅方向の連結位置に配置され、上記止水板の幅方向の側端辺部と接続可能である。止水板連結用中柱は、複数の上記止水板のうち一方の上記止水板の上記幅方向に延在し、かつ上記幅方向の端部に上記側端辺部が接続される第一の接続面を備える第一の柱部と、上記幅方向において上記第一の接続面と逆側で上記第一の柱部に対して、略直交する方向に延在し、複数の上記止水板のうち他方の上記止水板の上記側端辺部が接続される第二の接続面を備える第二の柱部と、を備える。この構成によれば、例えば、止水板連結用中柱は、略直交する方向に延在する第一の柱部と第二の柱部とによって、各止水板の側端辺部が第一の柱部および第二の柱部の延在長さに応じて離間可能となる。その結果、隣接する止水板の端部同士が干渉することが回避しやすくなり、設置が容易になる。
【0007】
また、本実施形態に係る止水板連結用中柱は、上記第一の柱部の底面と上記第二の柱部の底面を支持する支持プレートと、備え、上記支持プレートは、例えば、上記第一の柱部の底面および上記第二の柱部の底面の形状に対応した柱支持部と、上記第一の柱部と上記第二の柱部とが略直交状態で連結された屈曲部の内側の位置で、上記柱支持部と連結された第一の柱固定部と、上記屈曲部の外側の位置で、上記柱支持部と連結された第二の柱固定部と、を備える。この構成によれば、例えば、第一の柱部側に固定された止水板が浸水時に受ける水圧によって生じる押圧力と、この止水板と略直交する関係で存在する第二の柱部側に固定された止水板が浸水時に受ける水圧によって生じる押圧力の合力が止水板連結用中柱に作用する。このとき、止水板連結用中柱の屈曲部の内外に第一の固定部と第二の固定部が存在するため、浸水時に止水板連結用中柱に作用する合力をしっかりと受け止めることができる。つまり、支持プレートで、第一の柱部および第二の柱部を強固に支持することができる。なお、第一の柱部の底面と第二の柱部の底面を支持プレートで支持することにより、支持プレートと止水板とが干渉することが回避しやすくなり、設置が容易になる。
【0008】
また、本実施形態に係る止水板連結用中柱の上記支持プレートは、上記止水板連結用中柱を設置する床面との間に弾性を備える止水部材を備える。この構成によれば、止水板連結用中柱の設置位置においても止水板と同様な止水を行うことができる。
【0009】
また、本実施形態に係る止水板連結用中柱の上記第一の柱固定部と上記第二の柱固定部とは、例えば、それぞれ締結部材装着部を備え、上記第一の柱固定部と上記第二の柱固定部の上記締結部材装着部は、上記柱支持部に対して対称の位置に形成されている。この構成によれば、例えば、止水板連結用中柱が止水板を出隅状態に配置する場合および入隅状態に配置する場合でも、第一の柱固定部および第二の柱固定部は、浸水防止領域に向けて作用する水圧を同様に受けることができる。その結果、止水板連結用中柱が出隅状態で利用される場合でも入隅状態で利用される場合でも、止水板連結用中柱を安定的かつ強固に支持することができる。
【0010】
また、本実施形態に係る止水板連結用中柱の上記第一の柱固定部と上記第二の柱固定部の少なくとも一方には、例えば、設置位置における配置姿勢を示す指標が設けられている。指標は、例えば、「出隅」、「入隅」を示す文字やマークであってもよいし、浸水防止領域の方向を示す文字やマークであってもよい。この構成によれば、例えば、止水板連結用中柱が入隅および出隅の両方の場合で利用可能な共用部品とされる場合でも、止水板連結用中柱を設置する際の設置姿勢(設置向き)を適切かつ容易に、利用者に把握させ易くなる。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成によれば、複数の止水板を連結して設置する場合に出隅状態でも入隅状態でも設置することを可能な止水板連結用中柱が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る止水板連結用中柱を用いて、建造物の壁面に対して複数の止水板を出隅状態に配置した場合を示す例示的かつ模式的な図である。
図2図2は、図1に示す止水板を出隅状態に配置する場合の止水板連結用中柱と各止水板の接続態様を示す例示的かつ模式的な部分的な詳細図である。
図3図3は、図2に示す止水板連結用中柱と各止水板の接続態様を示す例示的かつ模式的な部分的な側面図である。
図4図4は、実施形態に係る止水板連結用中柱を用いて、建造物の壁面に対して複数の止水板を入隅状態に配置した場合を示す例示的かつ模式的な図である。
図5図5は、図4に示す止水板を入隅状態に配置する場合の止水板連結用中柱と各止水板の接続態様を示す例示的かつ模式的な部分的な詳細図である。
図6図6は、実施形態に係る止水板連結用中柱の柱部本体部を示す例示的かつ模式的な図な斜視図である。
図7図7は、実施形態に係る止水板連結用中柱の支持プレートの形状を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図8図8は、図7に示す支持プレートに第一の柱部と第二の柱部とからなる柱本体部を接続した状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
本実施形態の止水板連結用中柱は、複数の止水板(少なくとも2枚)を出隅状態または入隅状態に支持して設置することにより、例えば、建造物の壁面の近傍や建造物の開口部で、浸水を回避したい浸水防止領域を複数の止水板で囲むことができる。止水板は、当該止水板を境に内側と外側を区切り、雨水等が止水板の内側に侵入することを防止または軽減する板状の部材である。
【0015】
例えば、構造物の内側と外側とを連通する開口部を閉塞するように止水板を設置する場合、開口部の外側で当該開口部の幅方向に沿って、一方の止水板の幅方向の一端を壁面等に固定し、他端を中柱に固定する。また他方の止水板の幅方向の一端を中柱に固定し、他端を壁面等に固定する。また、別の例では、建造物の例えば壁面に沿って配置された物体、例えば、浸水した場合にダメージを受けやすい機器や構造物、造形物等を囲むように止水板を設置する場合、一方の止水板の幅方向の一端を壁面等に固定し、他端を中柱に固定し、他方の止水板の幅方向の一端を中柱に固定し、他端を壁面等に固定する。
【0016】
また、本実施形態の止水板連結用中柱を用いて、複数の止水板を接続して配置する場合、中柱の部分で止水板の設置角度を変更する。例えば、一方の止水板に対して他方の止水板を略直交する方向に配置することができる。この場合、止水板を設置する位置や建造物の壁面の配置、周辺に存在する物体との位置関係等によって、止水板を入隅状態に配置したり、出隅状態に配置したりすることが可能である。その結果、複数の止水板で開口部の閉塞や浸水防止領域の囲い込みを適切に行うことができる。
【0017】
なお、止水板の一方の端部を壁面等に固定する場合、壁面に凹凸が存在したり、止水板固定する押圧部材を装着する直角部分が存在しなかったりする場合がある。そのような場合、補助部材(中柱と類似する部材)を壁面等に装着し、押圧部材を装着する直角部分を形成することで、止水板の設置を行うことができる。
【0018】
図1は、本実施形態の止水板連結用中柱10を用いて、例えば2枚の止水板100(100a,100b)を「出隅状態」に配置して、建造物の略直交した壁面W(W1,W2)で形成される凹部に設置された、例えば配電設備M1を囲んでいる例示的かつ模式的な図である。なお、図1において、壁面W1,W2および止水板100a,100bで囲まれた領域が浸水時に雨水の侵入を回避したい浸水防止領域E1である。
【0019】
図1およびそれ以降の図において、略直方体のパネル状の止水板100aの幅方向(長手方向)をX方向、止水板100bの幅方向(長手方向)をY方向、止水板100aおよび止水板100bの高さ方向(短手方向)をZ方向として説明する。この場合、上述したように、図中X方向に沿った平面部を備える板状の止水板100aの一端は、壁面W1の角部に固定され、止水板100aの他端は、止水板連結用中柱10の一部(後述する第一の柱部)に固定される。同様に、図中Y方向に沿った平面部を備える板状の止水板100bの一端は、壁面W2の角部に固定され、止水板100bの他端は、止水板連結用中柱10の一部(後述する第二の柱部)に固定される。なお、各止水板100は、浸水防止領域E1に対して外側に配置されることにより、浸水時の水圧Sにより押圧される。その結果、止水板100が浸水防止領域E1を形成する壁面や止水板連結用中柱10に密着し、浸水時の水圧を利用して止水性能をさらに向上することができる。なお、建造物は、例えば、住宅や、ビル、車庫、工場、倉庫、店舗等のほか、壁単体、および壁面を有する物体等を含む。
【0020】
図2は、止水板100(止水板100aおよび止水板100b)を出隅状に配置する場合の止水板連結用中柱10と各止水板100の接続態様を示す例示的かつ模式的な部分的な詳細図である。また、図3は、図2に示す止水板連結用中柱10と止水板100の接続態様を示す例示的かつ模式的な部分的な側面図である。なお、止水板連結用中柱10の詳細については後述する。
【0021】
まず、止水板100の構成について説明する。止水板100aは、例えば、止水板本体100pや、保持機構102、止水シール104、止水シール106(図3参照)、運搬用取っ手108(図3参照)等で構成される。
【0022】
前述したように、止水板本体100pは、例えば、幅方向(止水板100aの場合、例えば図中X方向、止水板100bの場合Y方向)に長い略直方体のパネル状に構成されている。止水板本体100pの幅は、例えば、1枚で建造物の開口部(一般的な出入り口等)を閉塞できるように、開口部の幅よりも大きく設定される。例えば、1m~数m程度で、単体でパネル表面(受圧面)に水圧を受けた場合でも、受圧方向(パネル面の表裏方向)の撓み量が所定の許容範囲内(止水シール104,106の止水機能が維持できる範囲)に納まる強度が確保できる長さに設定される。また、止水板本体100pの高さ(Z方向の長さ)は、開口部や浸水防止領域の一部を構成する床面から所定の高さで、例えば、推定される浸水高さより所定の余裕を持たせた高さで設定される。なお、出入り口等の開口部に設置する止水板100の場合は、利用者が跨いで出入りできるような高さ(例えば、40cmから60cm程度)に設定される場合がある。なお、止水板100は、パネルには限定されず、例えば、遮水性および可撓性を有した止水シート等であってもよい。
【0023】
止水板100(止水板本体100p)は、持ち運び自在な重量とすることが望ましく、浸水時の水圧に耐えうる剛性を有している。止水板100は、例えば、アルミニウム、ステール、ステンレス、ポリカーボネート、強化繊維プラスチック(FRP)、炭素繊維等で形成可能である。また、止水板本体100pは、例えば、アルミニウムを含む防錆性を有する軽量の金属板を断面形状がコの字型の骨材に加工して、四つの骨材を組み合わせた四角形のフレームを有する。このフレームの正面および背面の開口部が四角形のアルミニウムやステンレス等の金属や樹脂で構成されるパネルで、それぞれ閉塞され、止水板本体100pが構成される。また、フレームとパネルとで囲われた内部の空間に充填剤を充填することで、止水板本体100pは、軽量で剛性の高いものとすることができる。
【0024】
止水板100は、当該止水板100を壁面や止水板連結用中柱10に設置固定するための機構として、保持機構102を備える。保持機構102は、止水板100の幅方向の両端領域に一つずつ設けられている。
【0025】
保持機構102は、止水板本体100pを設置姿勢である起立状態で止水板連結用中柱10の角部や壁面Wの角部に固定するための機構である。保持機構102は、図2に示されるように、止水板連結用中柱10の角部と係合可能な、上面視で例えば略L字形状の押圧部材102aと、当該押圧部材102aに接続され止水板本体100pの幅方向外側に押圧部材102aを移動(押圧)する、例えばねじ部を操作するノブ102bで構成されている。押圧部材102aが接続されたねじ部は、止水板本体100pに固定された保持機構102の本体部分から幅方向外側に進出させることで止水板100を固定する。同様に、止水板本体100pの他方側に設けられた保持機構102の押圧部材102aを他方の装着面である壁面Wに当接させ、ノブ102bを操作して押圧部材102aを幅方向外側(壁面側)に進出させる。その結果、一対の保持機構102で止水板連結用中柱10と壁面の間を突っ張ることになり、止水板100を固定することができる。逆にノブ102bを逆方向に操作し、ねじ部材を幅方向内側に退避させることで、止水板100の固定を解除することができる。なお、保持機構102は、周知の機構であり、同様に止水板100を固定する機構であれば、他の機構でもよい。
【0026】
止水板本体100pの浸水防止領域E1(屋内側等)の面における幅方向(止水板100aの場合はX方向、止水板100bの場合はY方向)の両端部には、止水シール104(図2参照)が設けられている。止水シール104は、止水板本体100pの幅方向に所定の幅を有し、Z方向に細長く延びた帯板状に構成されている。止水シール104は、止水板100が止水板連結用中柱10や壁面Wに装着された状態で、止水板本体100pと止水板連結用中柱10や壁面Wとの間に介在する。
【0027】
止水シール104は、止水板本体100pと止水板連結用中柱10または壁面Wとの間に挟まれることで、止水板本体100pの厚み方向(止水板100aの場合はY方向、止水板100bの場合はX方向)に弾性的に圧縮され、面圧を生じる。この面圧によって、止水板本体100pと止水板連結用中柱10との間または止水板本体100pと壁面Wとの間から浸水防止領域E1側に水が浸入するのが抑制される。止水シール104は、柔軟性や、可撓性、弾性を有する材料、例えばゴムや、エラストマ、柔軟性樹脂等で構成されている。
【0028】
また、止水板本体100pの下端部には、止水シール106(図3参照)が設けられている。止水シール106は、止水板本体100pの厚み方向(止水板100aの場合はY方向、止水板100bの場合はX方向)に所定の幅を有し、幅方向に細長く延びた帯板状に構成されている。止水シール106は、止水板100が止水板連結用中柱10や壁面Wに装着された状態で、止水板本体100pと床面Gとの間に介在し、この状態で、床面Gと100P2との間に介在する。
【0029】
止水シール106は、床面Gと止水板本体100pとの間に挟まれることで、Z方向に弾性的に圧縮され、面圧を生じる。この面圧によって、床面Gと止水板本体100pとの間から浸水防止領域E1に水が浸入するのが抑制される。止水シール106は、例えば、止水シール104と同様の材料によって構成されてもよいし、他の材料で構成されてもよい。
【0030】
次に、図4図5を用いて、止水板連結用中柱10を用いて止水板100(止水板100aおよび止水板100b)を入隅状態に配置する場合を説明する。
【0031】
図4は、本実施形態の止水板連結用中柱10を用いて、例えば2枚の止水板100(止水板100a,100b)を「入隅状態」に配置した場合を示す例示的かつ模式的な図である。また、図5は、図4に示す止水板100を「入隅状態」に配置する場合の止水板連結用中柱10と各止水板100の接続態様を示す例示的かつ模式的な部分的な詳細図である。図4に示すように、建造物の壁面W(W3,W4,W5,W6)によって略L時形状に凹んだ領域が存在し、その凹んだ領域に例えば配電設備M2,M3が存在する場合、その領域に雨水等が浸水することを抑制する必要がある。したがって、図4において、壁面W3,W4,W5,W6および止水板100a,100bで囲まれた領域が浸水防止領域E2である。この場合、図中矢印X方向に沿った平面部を備える板状の止水板100aの一端は、壁面W3の角部に固定され、止水板100aの他端は、止水板連結用中柱10の一部(後述する第一の柱部)に固定される。同様に、図中矢印Y方向に沿った平面部を備える板状の止水板100bの一端は、壁面W6の角部に固定され、止水板100bの他端は、止水板連結用中柱10の一部(後述する第二の柱部)に固定される。なお、各止水板100は、浸水防止領域E2に対して外側に配置されることにより、浸水時の水圧Sにより押圧される。その結果、止水板100が浸水防止領域E2を形成する壁面や止水板連結用中柱10に密着し、浸水時の水圧を利用して止水性能を向上することができる。
【0032】
入隅状態に止水板100を配置する場合、図5に示されるように、浸水防止領域E2に対する止水板連結用中柱10の略L字形状の屈曲部の向きが、図2に示す場合と異なり、止水板連結用中柱10に対する保持機構102の押圧部材102aの装着位置が異なるのみで、各止水板100の固定方法は図2で説明した出隅状態に止水板100を配置する場合と同じである。したがって、止水板100の詳細な説明は省略する。
【0033】
続いて、図6図8を加え、止水板連結用中柱10の詳細について説明する。図6は、止水板連結用中柱10を構成する柱本体部12を示す例示的かつ模式的な図な斜視図である。また、図7は、止水板連結用中柱10の支持プレート14の形状を示す例示的かつ模式的な上面図である。図8は、図7に示す支持プレート14に図6に示す柱本体部12を接続した状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【0034】
上述したように、本実施形態の止水板連結用中柱10は、例えば、2枚の止水板100(止水板100a、止水板100b)を略直交方向に配置するために、上面視で略L字形状の柱本体部12を備える。柱本体部12は、例えば、持ち運び自在な重量とすることが望ましく、浸水時の水圧に耐えうる剛性を有している。柱本体部12は、例えば、ステンレスやアルミニウムを含む防錆性を有する金属板で構成可能である。柱本体部12は、軽量化のために、例えば、断面形状がコの字型に加工した骨材を組み合わせて骨格を形成し、その表面をステンレスやアルミニウム等の金属板で覆う、中空構造としてもよい。また、骨格の内部空間に充填剤等を充填することで、剛性を向上するようにしてもよい。
【0035】
柱本体部12は、図2図6に示されるように、複数の止水板100のうち一方の止水板100aの幅方向(図2のX方向)に延在し、かつ幅方向の端部に止水板100aの側端辺部(例えば保持機構102の押圧部材102a)が接続される第一の接続面12acを備える第一の柱部12aを備える。また、柱本体部12は、第一の接続面12acと逆側で第一の柱部12aに対して、略直交する方向に延在し、複数の止水板100のうち他方の止水板100bの側端辺部(例えば保持機構102の押圧部材102a)が接続される第二の接続面12bcを備える第二の柱部12bを備える。
【0036】
このように柱本体部12が延在部としての第一の柱部12aと第二の柱部12bを備えることにより、図2示すように「出隅状態」で利用する場合でも、図5に示すように「入隅状態」で使用する場合でも、第一の柱部12aの延在長および第二の柱部12bの延在長によって、支持する止水板100aと止水板100bとを離間させることができる。つまり、止水板100aと止水板100bとが設置時に接触することを容易に回避することができる。特に図5に示すように止水板100を「入隅状態」で利用する場合は、相互の干渉を確実に回避することできる。
【0037】
柱本体部12のZ方向の高さhは、止水板連結用中柱10に装着される止水板100のZ方向の高さより高く、押圧部材102aが第一の接続面12acおよび第二の接続面12bcに安定的に装着できる高さに設定される。また、第一の接続面12acのY方向の厚みtは、止水板100aの押圧部材102aを安定して装着できるように、押圧部材102aの装着面102aa(図2図5参照)のY方向の幅より広く設定されている。同様に、第二の接続面12bcのX方向の厚みtは、止水板100bの押圧部材102aを安定して装着できるように、押圧部材102aの装着面102ab(図2図5参照)のX方向の幅より広く設定されている。
【0038】
支持プレート14は、図7に示されるように、第一の柱部12aの底面と第二の柱部12bの底面を支持する部材であり、例えば、ステンレス等の板材で構成される。支持プレート14は、第一の柱部12aの底面の形状に対応した支持部14a1および第二の柱部12bの底面の形状に対応した支持部14a2を備える、略L字形状(柱本体部12の形状に対応)の柱支持部14aを備える。また、支持プレート14は、第一の柱部12aを支持する支持部14a1と第二の柱部12bを支持する支持部14a2とが略直交状態で連結された屈曲部内側の位置S1で、柱支持部14aと連結された第一の柱固定部14bを備える。同様に、屈曲部外側の位置S2で、柱支持部14aと連結された第二の柱固定部14cを備える。
【0039】
第一の柱固定部14bは、支持プレート14のL字形状の屈曲部内側に接触する略四角形の板状領域で、止水板連結用中柱10を床面Gに固定する際に用いるアンカーボルト16(図3参照)が挿入される締結部材装着部として機能するアンカー用開口16aが複数設けられている。また、第一の柱固定部14bには、止水板連結用中柱10(支持プレート14)を床面Gに対して平行に設置するためのアジャスタ18(図3参照)を装着するためのアジャスト部材装着部として機能するアジャスタ用ねじ部18aが複数設けられている。図7の場合、アンカー用開口16aが3箇所、当該アンカー用開口16aに挟まれる位置にアジャスタ用ねじ部18aが2箇所に設けられている。
【0040】
同様に、第二の柱固定部14cは、支持プレート14のL字形状の屈曲部外側に接触し、柱支持部14aによって一部が切り欠かれた略四角形の板状領域で、アンカー用開口16aおよびアジャスタ用ねじ部18aが複数設けられている。
【0041】
なお、図7示される第一の柱固定部14bおよび第二の柱固定部14cには、それぞれアンカー用開口16aが3箇所、当該アンカー用開口16aに挟まれる位置にアジャスタ用ねじ部18aが2箇所に設けられている。そして、第一の柱固定部14bと第二の柱固定部14cのアンカー用開口16aとアジャスタ用ねじ部18aとは、支持プレート14の基準点Rに対して対称の位置に形成されている。例えば、図2に示されるように、止水板連結用中柱10が出隅状態に止水板100を固定するために設置される場合、第一の柱部12a側に固定された止水板100aが浸水時に水圧Sを受けて、Y方向の押圧力が生じる。また、止水板100aと略直交する関係で存在する第二の柱部12b側に固定された止水板100bが浸水時に水圧Sを受けて、X方向の押圧力を受ける。その結果、止水板連結用中柱10には、各押圧力の合力(XY平面で45°方向の力)を受ける。図5に示されるように、止水板連結用中柱10が入隅状態に止水板100を固定するために設置される場合も同様である。そして、支持プレート14には、止水板連結用中柱10の屈曲部の内外に第一の柱固定部14bと第二の柱固定部14cが存在するため、浸水時に止水板連結用中柱10に作用する合力をしっかりと受け止めることができる。つまり、支持プレートで、第一の柱部および第二の柱部を強固に支持することができる。また、アンカー用開口16aは、合力の方向(45°方向)に沿って内外に配置され、さらにそのアンカー用開口16aを挟んで2個のアンカー用開口16aが配置されている。そして、各アンカー用開口16aにアンカーボルト16が挿入され固定される。その結果、止水板連結用中柱10は、「出隅状態」で使用された場合でも「入隅状態」で使用された場合でも、作用する合力によって45°方向に浮き上がることが抑制される。
【0042】
このように、支持プレート14において第一の柱固定部14bの構成と第二の柱固定部14cの構成を対称とすることにより、止水板連結用中柱10を出隅状態と入隅状態の両方で利用できる共用部品とすることができる。その結果、止水板連結用中柱10の標準化に寄与できる。また、入隅状態と出隅状態の共用化による製品コストの削減、止水板連結用中柱10の管理コストの削減等に寄与することができる。
【0043】
なお、アンカー用開口16aの数は、止水板連結用中柱10が床面Gに固定される場合の固定強度、すなわち、最大水圧に耐え得る固定強度を確保できるアンカーボルト16の数に対応して適宜選択可能である。同様にアジャスタ用ねじ部18aの数も止水板連結用中柱10の水平度が調整できればよく例えば2箇所以上であれば、適宜選択可能である。なお、図3では、アンカーボルト16の数やアジャスタ18の数が、図7に示されるアンカー用開口16aやアジャスタ用ねじ部18aの数と異なる例が示されている。
【0044】
図3に示されるように、支持プレート14の柱支持部14aの下面には、柱本体部12の底面形状に対応する金属板等で構成されるスペーサ部材20が例えば溶接等により固定されている。また、このスペーサ部材20の下面には、止水板連結用中柱10の設置位置における止水を行うために止水部材22が、例えば、接着剤や両面テープ等により固定されている。止水部材22は、例えば、止水シール104や止水シール106と同様に、柔軟性や、可撓性、弾性を有する材料、例えばゴムや、エラストマ、柔軟性樹脂等で構成されている。止水板連結用中柱10の底面に止水部材22が設けられることより、止水板連結用中柱10の位置においても止水板100と同様の止水効果を得ることができる。その結果、止水板連結用中柱10を用いる場合でも浸水防止領域E1や浸水防止領域E2への浸水を確実に抑制することができる。
【0045】
図8は、図7に示す支持プレート14に第一の柱部12aと第二の柱部12bとからなる柱本体部12を接続した状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。前述したよいに、柱支持部14aの形状は、柱本体部12の底面の形状に対応させて形成されているので、柱本体部12を安定的に支持し、止水板100の装着により水圧Sが係った場合でも当該止水板100を安定的に支持し止水することができる。
【0046】
図8に示されるように、柱本体部12の例えば上面には、止水板連結用中柱10を設置位置に運搬する場合、または設置位置から保管位置に運搬する場合等に利用する取っ手24が設けられている。図8の場合、止水板連結用中柱10の運搬を容易にするために、例えば第一の柱部12aおよび第二の柱部12bの端部にそれぞれ取っ手24が形成されている。なお、取っ手24の数や位置は適宜変更可能である。
【0047】
また、本実施形態の止水板連結用中柱10は、設置する場所の状況により「出隅状態」で使用するか「入隅状態」で使用するが決定される。そこで、第一の柱固定部14bと第二の柱固定部14cの少なくとも一方には、設置位置における設置姿勢を示す指標26が設けられてもよい。例えば、図2に示されるように、止水板連結用中柱10を出隅の姿勢で設置する場合、図8に示されるように、出隅側の第二の柱固定部14cに、出隅を示す指標26として「OUT」とを付する。また、図5に示されるように、止水板連結用中柱10を入隅の姿勢で設置する場合、入隅側の第二の柱固定部14cに、入隅を示す指標26として「IN」とを付する。また別の例では、浸水防止領域E1や浸水防止領域E2の方向を示す指標26として、矢印等のマークを付してもよい。例えば、図2のように出隅状態で止水板連結用中柱10を使用する場合、浸水防止領域E1は、第一の柱固定部14b側になるので、第一の柱固定部14bに指標26を付す。また図5のように入隅状態で止水板連結用中柱10を使用する場合、浸水防止領域E2は、第二の柱固定部14c側になるので、第二の柱固定部14cに指標26を付す。なお、指標26は、設置位置における止水板連結用中柱10の設置姿勢が示されればよく、文字や数宇、マーク、模様等でもよく、同様の効果を得ることができる。なお、指標26は、印刷やシール等で形成することにより、同一形状の止水板連結用中柱10を「出隅用」、「入隅用」として容易に使い分けすることができる。その結果、製造コスト、管理コスト等の軽減に寄与することができる。
【0048】
このように本実施形態の止水板連結用中柱10は、「入隅状態」でも「出隅状態」でも構成を変えることなく利用することができる。その結果、止水板100の関連部品の汎用性を向上することができる。また、支持プレート14の第一の柱固定部14bのアンカーボルト16による固定態様と第二の柱固定部14cのアンカーボルト16による固定態様を柱支持部14aに対して対称の態様にすることにより、「入隅状態」で利用する場合でも「出隅状態」で利用する場合でも浸水時の水圧に耐得る強度を同等とすることができる。その結果、使用状態による性能差を抑制し、品質向上に寄与することができる。
【0049】
なお、上述した例では、1つの止水板連結用中柱10と2枚の止水板100を用いて止水を行う例を示したが、浸水防止領域の形状に応じて、例えば、「入隅状態」で配置する止水板連結用中柱10と「出隅状態」で配置する止水板連結用中柱10とを組合せて用いてもよい。その結果、より広い浸水防止領域や複雑な形状の浸水防止領域を複数の止水板100で囲み込むことが可能となる。なお、このような場合も止水板100の両端は、壁面Wまたは、止水板連結用中柱10によって支持されるため、各止水板100は水圧による撓みを発生することなく、止水を行うことができる。
【0050】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10 止水板連結用中柱
12 柱本体部
12a 第一の柱部
12ac 第一の接続面
12b 第二の柱部
12bc 第二の接続面
14 支持プレート
14a1,14a2 支持部
14a 柱支持部
14b 第一の柱固定部
14c 第二の柱固定部
16a アンカー用開口
26 指標
100 止水板
E1,E2 浸水防止領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8