(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008772
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】円柱状部材の処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
C03B 20/00 20060101AFI20220106BHJP
C03B 37/014 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C03B20/00 Z
C03B37/014 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110856
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】朴 秋月
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 利光
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勝博
【テーマコード(参考)】
4G014
4G021
【Fターム(参考)】
4G014AH01
4G021CA01
4G021CA03
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、処理の進行とともに円柱状部材の外径寸法が変化しても、前記円柱状部材を適切に回転させつつ処理することができる技術を提供することである。
【解決手段】本発明は、円柱状部材の処理装置(100)であって、前記円柱状部材より大径の円柱状の処理室(15)を内部に有する回転空洞体(10)と、前記処理室(15)の中心軸を横にした状態で、前記回転空洞体(10)を回転自在に支持する支持部(12、12)と、前記回転空洞体(10)を前記処理室(15)の中心軸を中心に回転させる回転駆動部(21)と、を備える。本発明によれば、円柱状部材が、例えば原料粉末、蒸留水、硬化性樹脂から成る原料溶液に硬化剤を混合し、この混合物を成形型に注入して硬化させた後、脱型して得られる固化体の場合に、その表面状態及び寸法精度を良好に保ったまま処理することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状部材の処理装置であって、
前記円柱状部材より大径の円柱状の処理室を内部に有する回転空洞体と、
前記処理室の中心軸を横にした状態で、前記回転空洞体を回転自在に支持する支持部と、
前記回転空洞体を前記中心軸を中心に回転させる回転駆動部と、
を備える、処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置において、
前記回転空洞体が、前記処理室の内部と外部とを連通する孔を備え、
前記処理室に所定のガスを供給するガス供給部を備える、処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の処理装置において、
前記処理室が液密に構成されている、処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の処理装置において、
前記回転空洞体が、前記処理室の内部を、その中心軸に沿う方向に複数の空間に分割する隔壁を有する、処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の処理装置であって、処理する前記円柱状部材が、原料粉末、蒸留水、分散剤、硬化性樹脂から成る原料溶液に硬化剤を混合し、この混合物を、成形型に注入して硬化させた後、脱型した固化体である、処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の処理装置であって、前記原料粉末がシリカガラス粉末である、処理装置。
【請求項7】
円柱状部材の処理方法であって、
前記円柱状部材より大径の円柱状の処理室を内部に有する回転空洞体の前記処理室の内部に、前記処理室の中心軸と前記円柱状部材の中心軸とが平行になるように前記円柱状部材を配置する工程と、
前記円柱状部材の中心軸及び前記処理室の中心軸を横にした状態で、前記処理室の中心軸を中心に前記回転空洞体を回転させる工程と、
を有する、円柱状部材の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型成形により円柱状部材を作製するための処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の伝送路やレーザガイド等に使用される光ファイバは、屈折率の高いコアと、その周りを取り囲む、屈折率の低いクラッド層とから構成され、共にシリカガラス、フッ化物ガラス等の非金属無機物質を主な材料とする。
【0003】
前記光ファイバは、光ファイバの母材を線引きすることにより形成される。光ファイバ母材は、通常VAD法(気相軸付け法:Vaper phase Axial Deposition method)を利用して製造されるが、より高機能な空孔アシストファイバやフォトニック結晶型ファイバ、
マルチコアファイバ等の製造の際には、例えばシリカガラス粉末、蒸留水、分散剤、硬化性樹脂から成るガラス原料溶液に硬化剤を混合し、この混合物を、コア用ロッドが配置された成形型に注入して硬化させた後、脱型し、乾燥、脱脂、焼成することにより好適に製造される(特許文献1)。
【0004】
成形型内で固化した混合物(固化体)を該成形型から脱離させた固化体は乾燥させる必要がある。固化体の表面と内部とで乾燥状態が異なると、固化体が変形したり、割れが生じたりする。そこで、従来は、固化体の変形、割れを防止するため、例えばV字溝状の載置面を有する支持台に固化体を横に寝かせた状態で、低温で且つ時間をかけてゆっくり自然乾燥させている。
【0005】
上記の支持台では、載置面をV字状にすることにより、円柱状部材の固化体の直線性を維持しながら乾燥するようにしているが、反りが発生する場合があった。また、固化体を同じ向きで支持台に寝かせたまま乾燥を続けると、固化体の外周面の乾燥状態が不均一になる。さらに、固化体の外周面のうち支持台の載置面と接触している箇所に接触痕がつく場合がある。そこで、乾燥工程の途中で固化体を回転させて支持台の載置面と接触する箇所を変更しなければならず、人手が必要となる。
【0006】
上述した問題を解決するものとして、所定の間隔を置いて平行に配置された2本の回転ローラから成る支持台で固化体を支持し、該2本の回転ローラで固化体を回転させながら乾燥させる方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-147384号公報
【特許文献2】特開平07-142247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の方法では、固化体の外周面に載置面との接触痕がついたり、乾燥状態が不均一になったりすることはない。ところが、2本の回転ローラの間で確実に固化体を支持しつつ固化体を回転させるためには、2本の回転ローラの間隔を適切に設定する必要がある。すなわち、回転ローラの間隔が広すぎると固化体が両回転ローラの間に挟まってしまい、うまく回転させることできないおそれがある。一方、回転ローラの間隔が狭すぎると、両回転ローラの外に固化体が転げ落ちてしまう。
【0009】
また、乾燥が進むと固化体は収縮するため、固化体の外径が小さくなる。そのため、収縮した固化体が両回転ローラの間に挟まってしまうことを防止するためには、乾燥工程の途中で回転ローラの間隔を変更する必要があり、やはり、人手が必要となる。
【0010】
なお、ここでは、型成形により光ファイバ母材を作製する工程の途中で得られる固化体を乾燥する場合について述べたが、型成形により作製される部材が円柱状であれば光ファイバ母材に限らない。また、型成形により円柱状部材を作製する工程の途中で行われる処理であって、その処理の進行とともに円柱状部材の外径が変化するような処理であれば、乾燥以外の処理であっても同様の問題があった。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、処理の進行とともに円柱状部材の外径寸法が変化しても、前記円柱状部材を適切に回転させつつ処理することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明は、円柱状部材の処理装置であって、
前記円柱状部材より大径の円柱状の処理室を内部に有する回転空洞体と、
前記処理室の中心軸を横にした状態で、前記回転空洞体を回転自在に支持する支持部と、
前記回転空洞体を前記中心軸を中心に回転させる回転駆動部と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の処理装置の処理の対象となる円柱状部材は、外周が円筒状であればよく、内部は中実であっても中空であっても構わない。中空の円柱状部材には、該部材の中心軸と平行で且つ該部材を貫通する1個または複数の孔を有するものも含む。回転空洞体は、内部に円柱状の処理室を有していれば、外形の断面形状は円形に限らず多角形でもよく、両端は閉鎖されていても開放されていてもよい。処理室の中心軸を横にした状態とは、典型的には、中心軸を水平にした状態を指すが、処理室に収容された円柱状部材の回転軸が該処理室の中心軸と略平行となるように円柱状部材を回転させることができれば、水平から多少傾いていてもよい。処理室は、該処理室に収容された円柱状部材の回転軸が該処理室の中心軸と略平行となるように円柱状部材を回転させることができるような大きさに設定される。具体的には、処理室の内径は、円柱状部材の外径よりも大きく設定され(つまり、円柱状部材よりも大径の円柱状の処理室とされ)、処理室の軸方向長さは、円柱状部材の軸方向長さとほぼ同じか、それよりも大きく設定される。円柱状部材の用途によっては該円柱状部材の軸方向長さよりも処理室の軸方向長さの方が小さくてもよい。回転空洞体の回転によって、その内壁面は円柱状部材と接触を繰り返す。従って、円柱状部材の外周面に滑らかさが求められる場合には、回転空洞体の内壁面は、円柱状部材との接触によって、その外周面に傷を生じさせない表面形状(つまり平滑面)であることが好ましい。一方、円柱状部材の外周面が滑らかでない場合、あるいは、滑らかにする必要がない場合は、回転空洞体の内壁面はどのような表面形状でもよい。
【0014】
本発明の処理装置では、まず、円柱状部材をその中心軸が処理室の中心軸と略平行になるようにして処理室に入れる。そして、この状態で回転空洞体を支持部で支持し、回転駆動部により回転空洞体を回転させると、処理室内の円柱状部材は、該処理室内の最低部に移動しようとして回転する。このとき、円柱状部材の外径寸法が変化しても、処理室内から逸脱することがない。処理の途中で外径寸法が変化する可能性のある円柱状部材として、型成形及び焼成を含む工程により作製される部材の途中の工程で得られる中間体、例えば原料粉末、蒸留水、硬化性樹脂から成る原料溶液に硬化剤を混合し、この混合物を成形型に注入して硬化させた後、脱型して得られる固化体が挙げられる。特に、シリカガラス粉末、蒸留水、分散剤、硬化性樹脂から成るガラス原料溶液に硬化剤を混合し、この混合物を成形型に注入して硬化させて作製する固化体の場合、脱型後の固化体を処理する工程において固化体の外径寸法が変化する(小さくなる)ことが一般的であるため、本発明の処理装置は、このような固化体の処理装置として有用である。
【0015】
ところで、2本の回転ローラの外周面に円柱状部材の外周面が接触するように回転させる従来の装置では、回転ローラの外周面と円柱状部材の外周面の接触による接触点(線)が2か所存在した状態で回転する。一般的に、回転ローラの方が円柱状部材よりも曲率が大きいため、円柱状部材の外周面に対して回転ローラの外周面は相対的に凸面となる。従って、円柱状部材は2か所の接触点において凸面と接触しつつ回転することになるため、回転に伴い、円柱状部材の外形状が変形したり、真円度が低下したりする。
【0016】
これに対して、本発明の処理装置では、円柱状部材は、その外周面が回転空洞体の内周面、つまり凹面と接触した状態で回転するため、回転に伴い円柱状部材の外周面の外形状が変形したり、真円度が損なわれたりすることがない。
また、上述した、ガラス原料溶液と硬化剤の混合物から得られる固化体の場合、該固化体の表面に微細なシリカガラス粉末が存在する。従って、このような固化体を2本の回転ローラで回転させると、固化体表面に微細変形、不均一さが発生し、場合によっては所望の寸法形状、表面性が得られなくなるおそれがあるが、本発明の処理装置ではこのような問題がなく、脱型後の固化体の良好な状態を保つことができる。
【0017】
本発明の処理装置は、例えば円柱状部材の乾燥装置や、円柱状部材を液体に浸漬して該円柱状部材に含まれる液体を置換したり、該円柱状部材の硬化を進行させたりする装置として用いることができる。
成形型から取り出した直後の未だ柔らかい固化体のような円柱状部材の場合も、回転空洞体の内周面、つまり凹面と接触しつつ回転されることにより、外周面の表面状態を良好に保つことができる
【0018】
回転空洞体が、前記処理室の内部と外部とを連通する孔を備え、前記処理室に所定のガスを供給するガス供給部を備えるようにしても良い。本発明に係る処理装置が例えば固化体の乾燥装置である場合は、処理室の内部には空気又は他のガスが供給される。
【0019】
処理装置が、円柱状部材を液体に浸漬して処理するために用いられる装置の場合は、処理室を液密に構成することが好ましい。液密な構成とは、処理室に液体を入れて回転空洞体を回転させたときに処理室から外部に液体が洩れない構造を意味し、この構造の場合は回転空洞体の両端は閉鎖される。また、回転空洞体自体を液体に浸漬した状態で回転させることで、円柱状部材を液体に浸漬する処理をすることもできる。
【0020】
さらに、処理室の内部の温度を検出するセンサと、処理室の内部を加熱する加熱要素と、センサの検出結果に応じて加熱要素を制御するコントローラ等により、処理室の内部の雰囲気の制御を行うこともできる。また、処理室の内部の雰囲気を直接的に制御する他、処理装置が配置されている空間の雰囲気を制御することにより間接的に処理室の内部の雰囲気を制御することもできる。
【0021】
上記の処理装置においては、前記回転空洞体が、前記処理室の内部をその中心軸に沿う方向に複数の空間に分割する隔壁を有することが好ましい。
この構成によれば、処理室の内部の複数の空間にそれぞれ円柱状部材を配置することができるため、複数の円柱状部材をまとめて処理することができる。
【0022】
本発明は、円柱状部材を処理する方法にも向けられる。
すなわち、本発明は、円柱状部材の処理方法であって、
前記円柱状部材より大径の円柱状の処理室を内部に有する回転空洞体の前記処理室の内部に、前記処理室の中心軸と前記円柱状部材の中心軸とが平行になるように前記円柱状部材を配置する工程と、
前記円柱状部材の中心軸及び前記処理室の中心軸を横にした状態で、前記処理室の中心軸を中心に前記回転空洞体を回転させる工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、処理の進行とともに円柱状部材の外径寸法が変化しても、前記円柱状部材を適切に回転させつつ処理させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る処理装置の一実施形態である乾燥装置の概略構成図。
【
図2】円筒状容器の回転に伴い、処理室の内部の固化体が回転する様子を示す図。
【
図3】載置面に固化体が載置された支持台を示す図。
【
図4】実施例1において、固化体の乾燥を開始してから経過した時間と固化体の重量の関係を示すグラフ。
【
図5】実施例2において、固化体の乾燥を開始してから経過した時間と固化体の重量の関係を示すグラフ。
【
図6】窒素ガスの流量を0.5L/minの区間における固化体の重量の変化直線を示すグラフ。
【
図7】窒素ガスの流量を1.0L/minの区間における固化体の重量の変化直線を示すグラフ。
【
図8】窒素ガスの流量を1.5L/minの区間における固化体の重量の変化直線を示すグラフ。
【
図9】窒素ガスの流量と固化体の重量変化速度(傾き)との関係を示すグラフ。
【
図10】乾燥装置の別の例の円筒状容器を示す概略図。
【
図11】乾燥装置のさらに別の変形例の概略構成図。
【
図12】本発明に係る処理装置を液体浸漬装置に適用した実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る処理装置を乾燥装置に適用した実施形態を示す概略図である。
この乾燥装置100は、回転空洞体としての円筒状容器10と、該円筒状容器10を横にした状態でその両端部を支持する一対の支持部12と、該一対の支持部12を同じ方向に同期して回転させる回転駆動部20とを備える。回転駆動部20は、例えばモータ21と、該モータ21の回転力を支持部12に伝導する伝導ベルト(図示せず)とを含む。
【0026】
円筒状容器10の両端面のうち一方の端面には複数の通気孔14が形成されている。また、円筒状容器10の他方の端面は開口しており、そこには着脱自在な蓋16が取り付けられている。蓋16にはガスボンベ30に接続されたチューブ32が取り付けられている。ガスボンベ30及びチューブ32は本発明のガス供給部を構成する。円筒状容器10内の空間(以下、処理室15という)に処理対象物50を出し入れするときは、該円筒状容器10から蓋16が取り外される。
【0027】
ガスボンベ30には例えば窒素ガスが収容されており、ガスボンベ30内の窒素ガスはチューブ32を通して処理室15に供給される。窒素ガスの流量は、チューブ32に取り付けられた流量調整バルブ33によって調整される。モータ21及び調整バルブ33は、制御部40によって制御される。
【0028】
上記構成の乾燥装置100は、細長い円柱状の処理対象物50を円筒状容器10の中に入れ、処理対象物50の乾燥処理に使用される。制御部40には、操作パネル、電源スイッチ等を備えた入力部41が接続されている。ユーザによる入力部41の操作信号が制御部40に入力されると、制御部40はその操作信号に応じた内容でモータ21及び流量調整バルブ33を駆動する。その結果、円筒状容器10が回転し、円筒状容器10の内部の処理室15に窒素ガスが流入する。したがって、本実施形態では、制御部40は回転駆動部20に含まれる。また、制御部40が流量調整バルブ33を制御することにより処理室15の内部の雰囲気が制御される。
【0029】
次に 上記乾燥装置100を用いて所定の処理対象物50の乾燥処理を実行した実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1は、光ファイバ母材の製造工程の一つである固化体の乾燥工程に乾燥装置100を用いた例である。この実施例では、円筒状容器10として、外径が40mm、内径が34mm、長さL1(
図1参照)が1000mmの、内周面が平滑な合成樹脂(ポリプロピレン樹脂)製のパイプを用いた。
【0030】
まず、表1に示す処方の原料溶液をボールミルに入れ、24時間混合した。そして、ボールミルから混合物を取り出した後、この混合物と硬化剤(表1参照)を円筒状の成形型に注入し、室温下に放置した。その後、成形型内で硬化した混合物を成形型から脱離させ、処理対象物50としての円柱状の固化体(以下、固化体50とする。)を得た。得られた固化体50の直径(外径)は12.3mm、長さL2(
図1参照)は500mmであった。
【0031】
【0032】
次に、乾燥装置100の円筒状容器10から蓋16を外し、上記の固化体50を横にした状態で開口から処理室15の内部に入れて蓋16をした。このとき、固化体50を処理室15の長さ方向(軸方向)の中央付近に配置した。円筒状容器10の長さが1000mmであるため、処理室15の内部の中央付近に配置された固化体50の両端部と円筒状容器10の両端部との距離はそれぞれ約250mmになる。
【0033】
続いて、流量調整バルブ33を開口してガスボンベ30内の窒素ガスを処理室15の内部に流入させるとともに、モータ21を駆動した円筒状容器10を矢印Aで示す方向に回転させ、乾燥工程を実行した(回転乾燥)。処理室15に流入した窒素ガスは、通気孔14を通って処理室15の外部に排出される。したがって、処理室15の内部の窒素ガスはガスボンベ30から送られてくる窒素ガスによって置き換えられる(つまり、窒素ガスが流通する)ことになる。
【0034】
また、
図2に示すように、円筒状容器10が矢印A方向に回転すると、処理室15の内部の固化体50は処理室15の内部の最低部に向かって移動しようとするため、円筒状容器10と同じく矢印A方向に回転することになる。
【0035】
なお、実施例1の乾燥処理との比較のため、実施例1と同じ成分、同じ方法で作製した固化体50を、
図3に示すようなV字溝状の載置面61を有する支持台60に載置した状態で、固化体50を自然乾燥させた(以下、比較例1と称する)。
実施例1及び比較例1は、いずれも、温度、湿度が一定に保たれた同じ恒温室内に乾燥装置100及び支持台60を置いて、固化体50の乾燥工程を実行した。
【0036】
実施例1及び比較例1の乾燥条件は以下の表2に示した通りである。
【表2】
【0037】
<結果>
図4は、乾燥開始からの経過時間と固化体50の重量(乾燥開始時の重量を100としたときの割合(%))との関係を示すグラフである、
図4のグラフにおいて横軸は経過時間を、縦軸は重量(%)を表している。また、グラフ中、四角の点が実施例1の重量を、丸い点が比較例1の重量を示している。
図4から分かるように、上記乾燥装置100を用いて固化体50を乾燥させた場合と、支持台60を用いて固化体50を乾燥させた場合との間に、固化体50の重量の変化の仕方(変化を表す曲線の形状)に大きな違いはなかった。
【0038】
一方、乾燥が十分に進んだ時点(
図4においてTeで示す時点)の固化体50を水平面におき、両端部と水平面との距離を測定したところ、比較例1の固化体50は、7mmの反り量があったのに対し、実施例1の固化体50の反りはほぼ見られなかった。乾燥装置100を用いたことにより、乾燥による固化体50の反りが抑えられることが分かった。
【0039】
[実施例2]
実施例2では、実施例1と同じ材料で作製した円筒状の固化体50を処理対象物とし、これを乾燥装置100を用いて乾燥させた(回転乾燥)。固化体50は、外径が37.0mm、内径が10.0mm、長さL2(
図1参照)が500mmであった。また、この実施例では、円筒状容器10として、外径が60mm、内径が54mm、長さL1(
図1参照)が700mmの、内周面が平滑な合成樹脂(ポリプロピレン樹脂)製のパイプを用いた。
【0040】
実施例1と同様、実施例2でも固化体50は、処理室15の長さ方向(軸方向)の中央付近に配置した。円筒状容器10の長さが700mmであるため、処理室15の内部の中央付近に配置された固化体50の両端部と円筒状容器10の両端部との距離はそれぞれ約100mmになる。
【0041】
実施例2の乾燥条件を表3に示す。実施例2における乾燥時の処理室15の内部の温度及び円筒状容器10の回転速度は実施例1と同じであるが、窒素ガスの流量が実施例1と異なる。具体的には、実施例2では、乾燥開始時(0分)から時間t1までは窒素ガスの流量を0.5L/min(流量(1))に、時間t1から時間t2までは流量を1.0L/min(流量(2))に、時間t2から時間t3までは流量を1.5L/min(流量(3))に調整した。また、時間t3以降は処理室15から固化体50を取り出し、支持台60(
図3参照)の上に固化体50を載置して自然乾燥を行った。なお、流量(1)で窒素ガスを流し始めてからの経過時間がt0~t1のいずれか(
図5において※印をつけた区間)でガスボンベ30からチューブ32が外れ、処理室15に窒素ガスが供給されていなかったことに気づき、時間t1においてチューブ32をつけ直して実験を継続した。
【0042】
【0043】
<結果>
図5は、乾燥開始からの経過時間(分)と固化体50の重量(乾燥開始時の重量を100としたときの割合(%))との関係を示すグラフである。
図5において、横軸は経過時間、縦軸は重量(%)を表している。
図5中、(1)~(3)は、それぞれ窒素ガスの流量を表している。また、
図6~
図8は、
図5において、窒素ガスの流量が(1)~(3)の各区間における固化体50の重量変化曲線について線形近似を行った結果を示している。さらに、
図9は、窒素ガスの流量と固化体50の重量変化速度との関係を示している。
【0044】
図5~
図9より、窒素ガスの流量を大きくすると、単位時間当たりの重量変化量(重量変化速度)が大きくなることが分かる。また、
図5に示すように、窒素ガスの供給を止めて自然乾燥に切り替えた後も、固化体50の重量が減少していた。
一方、固化体50の反りは、流量(1)で窒素ガスを流し始めた直後にわずかに見られただけだった。
【0045】
以上、本発明に係る実施形態について具体例を挙げて説明したが、本発明の趣旨の範内であれば適宜の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、ポリプロピレン樹脂製の円筒状容器(回転空洞体)を用いたが、ポリプロピレン樹脂以外の合成樹脂から円筒状容器を構成してもよい。また、金属製の円筒状容器を用いることも可能である。
【0046】
また、上記実施形態では処理室15の内部に1個の固化体50を配置したが、複数の固化体50を配置するようにしても良い。例えば、
図10は、乾燥装置の別の実施形態の円筒状容器10を示している。この円筒状容器10では、処理室15の内周面に隔壁70を有しており、これにより、処理室15の内部がその軸方向に複数(
図10では3個)に分割されている。固化体50は、処理室15の内周面に沿って回転するため、中央に開口を有する円環状の隔壁70でも、十分に、固化体50同士が接触することを防止できる。また、円環状の隔壁70にすることにより、処理室15の内部を複数に区画しつつ、該処理室15に供給されるガスを処理室15の内部の全体に行き渡らせることができる。
【0047】
図11は、乾燥装置のさらに別の実施形態を示している。この乾燥装置100Aでは、円筒状容器10を一対の回転ローラ80によって回転させている。固化体50の乾燥が進んでも、円筒状容器10の外径は変化することがないため、回転ローラ80で円筒状容器10を回転させても問題がない。この場合、回転ローラ80が本発明の処理装置の支持部と回転駆動部を兼ねている。
【0048】
図12は、本発明に係る処理装置を液体浸漬装置に適用した実施形態である。
図12は液体浸漬装置の構成要素である円筒状容器10Aを示している。この例では、処理室15の内部に液体200が収容されるため、円筒状容器10Aは密閉可能に構成されている。
【符号の説明】
【0049】
100、100A…乾燥装置
10、10A…円筒状容器
12…支持部
14…通気孔
15…処理室
16…蓋
20…回転駆動機構
21…モータ
30…ガスボンベ
32…チューブ
33…調整バルブ
33…流量調整バルブ
40…制御部
41…入力部
50…処理対象物(固化体)
60…支持台
61…載置面
70…隔壁
80…回転ローラ
【手続補正書】
【提出日】2021-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
ガスボンベ30には例えば窒素ガスが収容されており、ガスボンベ30内の窒素ガスはチューブ32を通して処理室15に供給される。窒素ガスの流量は、チューブ32に取り付けられた流量調整バルブ33によって調整される。モータ21及び流量調整バルブ33は、制御部40によって制御される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
上記構成の乾燥装置100は、細長い円柱状の処理対象物50を円筒状容器10の中に入れ、処理対象物50の乾燥処理に使用される。制御部40には、操作パネル、電源スイッチ等を備えた入力部(図示せず)が接続されている。ユーザによる入力部の操作信号が制御部40に入力されると、制御部40はその操作信号に応じた内容でモータ21及び流量調整バルブ33を駆動する。その結果、円筒状容器10が回転し、円筒状容器10の内部の処理室15に窒素ガスが流入する。したがって、本実施形態では、制御部40は回転駆動部20に含まれる。また、制御部40が流量調整バルブ33を制御することにより処理室15の内部の雰囲気が制御される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
続いて、流量調整バルブ33を開口してガスボンベ30内の窒素ガスを処理室15の内部に流入させるとともに、モータ21を駆動した円筒状容器10を矢印A
(図2参照)で示す方向に回転させ、乾燥工程を実行した(回転乾燥)。処理室15に流入した窒素ガスは、通気孔14を通って処理室15の外部に排出される。したがって、処理室15の内部の窒素ガスはガスボンベ30から送られてくる窒素ガスによって置き換えられる(つまり、窒素ガスが流通する)ことになる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
100、100A…乾燥装置
10、10A…円筒状容器
12…支持部
14…通気孔
15…処理室
16…蓋
20…回転駆動部
21…モータ
30…ガスボンベ
32…チューブ
33…流量調整バルブ
40…制御部
41…入力部
50…処理対象物(固化体)
60…支持台
61…載置面
70…隔壁
80…回転ローラ