(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008773
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物及び光硬化型3次元立体造形物並びに光硬化型3次元立体造形物の作製キット
(51)【国際特許分類】
B29C 64/264 20170101AFI20220106BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220106BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220106BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20220106BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20220106BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20220106BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20220106BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220106BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220106BHJP
【FI】
B29C64/264
C08F290/06
C08G18/48
C08G18/42
C08G18/67 010
C08G18/79 010
B29C64/106
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111009
(22)【出願日】2020-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 配布物:(添付資料V1,V2)販促用資料 (添付資料W1)サンプル送付状及びサンプル (添付資料W2)サンプル送付状及びサンプル (添付資料W3)販促用資料 (添付資料W4)販促用資料 (添付資料W5)安全データシート (添付資料W6)取扱説明書 (添付資料X)取扱説明書 (添付資料Y)取扱説明書 (添付資料Z1)公開者WEB (添付資料Z2)インスタグラム投稿記事 (添付資料Z3)インスタグラム投稿記事 (添付資料Z4)インスタグラム投稿記事 (添付資料Z5)インスタグラム投稿記事 配布日:V1)2019年9月4日 V2)2019年9月17日 W1)2019年11月26日 W2)2019年12月17日 W3)2020年 2月21日 W4)2020年 3月19日 W5)2020年 4月15日 W6)2020年 5月14日 X)2020年 6月19日 Y)2020年 3月27日 Z1)2020年(令和2年)4月10日 Z2)2019年(令和1年)11月20日 Z3)2020年(令和2年)3月25日 Z4)2020年(令和2年)4月17日 Z5)2020年(令和2年)6月24日 配布先:V1),V2)中央化成株式会社 W1)~W6)松村工芸株式会社 X)株式会社ABCクラフト Y)株式会社ワールドビューティワークス Z1)~Z5)WEB公開
(71)【出願人】
【識別番号】509140700
【氏名又は名称】ケーエスエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113044
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 智子
(72)【発明者】
【氏名】中谷 三輪子
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 泰一
【テーマコード(参考)】
4F213
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
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4J127CB151
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4J127FA06
(57)【要約】
【課題】短時間かつワンステップ又は少ないステップで一気に大スケール(大量)での硬化も可能な、新規光硬化性樹脂組成物及びそれを利用した、容器や型枠等から取り出した後も、設計したままの形状を維持できる光硬化型3次元立体造形物等を提供すること。
【解決手段】光硬化型3次元立体造形物を成形するための光硬化性樹脂組成物であって、下記の(A)及び(B)を含み、かつ(A)のウレタン結合のうちの少なくとも1つが、1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物由来であることを特徴とする、光硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた、容器や型枠等から取り出した後も、設計したままの形状を維持できる光硬化型3次元立体造形物である。
(A)ウレタン(メタ)アクリレート
(B)光重合開始剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型3次元立体造形物を成形するための光硬化性樹脂組成物であって、下記の(A)及び(B)を含み、かつ(A)のウレタン結合のうちの少なくとも1つが、1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物由来であることを特徴とする、光硬化性樹脂組成物。
(A)ウレタン(メタ)アクリレート
(B)光重合開始剤
【請求項2】
(A)が、1分子内に、少なくとも1種以上の繰り返し単位を有するものであることを特徴とする、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
繰り返し単位が、ポリ(繰り返し数2以上)エーテル骨格及び/又はポリ(繰り返し数2以上)エステル骨格を含むものであることを特徴とする、請求項2記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル基の数が、7以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル当量が、100~5000であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
更に下記の(C)を含有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
(C)反応性希釈剤
【請求項7】
光硬化により成形した造形物であって、下記の(i)を構成成分として含むことを特徴とする、光硬化型3次元立体造形物。
(i)請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物
【請求項8】
更に、下記の(ii)を有することを特徴とする、請求項7記載の光硬化型3次元立体造形物。
(ii)光硬化性樹脂組成物とは別個独立して識別可能な内包物
【請求項9】
(ii)の内包物が、下記のグループに属するものから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項8記載の光硬化型3次元立体造形物。
(グループA)有機物、無機物、又はこれらの混合物
(グループB)天然物、天然物加工品、人工物、又はこれらの混合物
(グループC)動物、植物、微生物、鉱物、岩石、又はこれらの混合物
(グループD)非乾燥状態の物質、半乾燥状態の物質、乾燥状態の物質、又はこれらの混合物
(グループE)気泡
【請求項10】
下記(I)を構成材料として含むことを特徴とする、光硬化型3次元立体造形物の作製キット。
(I)請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物
【請求項11】
更に下記(II)及び/又は(III)を構成材料として含むことを特徴とする、請求項10記載の光硬化型3次元立体造形物の作製キット。
(II)造形用の容器又は型枠
(III)内包物
【請求項12】
1分子内に2つ以上の直接又は間接的に互いに連結されたイソシアヌレート骨格を有し、且つウレタン結合のうちの少なくとも1つが、当該イソシアヌレート由来であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器や型枠等から取り出した後も、設計したままの形状を維持できる光硬化型3次元立体造形物に用いられる樹脂組成物であって、太陽光、UVライト等を含む紫外線、或いはLEDライト等の照射によって、短時間で一気に大スケール(大量)での硬化が可能な、新規光硬化性樹脂組成物及びそれを利用した光硬化型3次元立体造形物等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動植物・鉱物等の天然物や人工的に製造したパーツ等を、透明性を有する樹脂等によって固め、型から取りだし、鑑賞用の製品やアクセサリー等のクラフト製品等に用いる試みがなされている。
【0003】
これまでそれらの用途に使用されてきた硬化性樹脂は、シリコーンゴム系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の二液混合型樹脂が一般的であって、これらの樹脂を用いる方法には、温度管理が難しく、作業環境が限定される点や、二液の計量・混合工程が余分に必要である点、この混合工程自体に数分から10分程度要するほか、そもそも樹脂の硬化自体に、早くても数時間かかるという欠点があった。
【0004】
また、樹脂ワックス等を用いる方法もあるが、高温で溶解する必要がある点で、作業環境上のリスクがあった。
【0005】
一方、二液混合型ではない光硬化性樹脂を用い、種々の立体造形物を作る技術が開発されている(特許文献1、2等)。
【0006】
しかしながら、特許文献1は、3Dプリンターを応用したいわゆる「光造形」と呼ばれるものであり、複雑な形状の造形物を作製するために、敢えて薄層を積層していくものであるため、一度の硬化で形成しうる厚みは、一般的に、せいぜい数十μm~数百μm程度であり、目的とする立体造形物を得るためには、(当該立体造形物の大きさにもよるが)、多くの場合、硬化処理工程を、数百回程度繰り返す必要があると考えられることから、短時間で一気に大スケール(大量)で硬化する技術ではない。
【0007】
また、特許文献2は、特に小物等のクラフト用途に特化したものであるためか、小物から大物まで、幅広いスケールの硬化に対応したものでは無かった。また、反り防止のためには、光硬化性樹脂組成物として、ビニルエーテル樹脂とアクリレート樹脂を、併用しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2015-232080号公報
【特許文献2】特開2019-137761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的とするところは、太陽光、UVライト等を含む紫外線、或いはLEDライト等の照射によって、短時間かつワンステップ又は少ないステップで一気に大スケール(大量)での硬化も可能な、新規光硬化性樹脂組成物及びそれを利用した、容器や型枠等から取り出した後も、設計したままの形状を維持できる光硬化型3次元立体造形物等を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は、下記第一の発明から第十二の発明によって達成される。
【0011】
<第一の発明>
光硬化型3次元立体造形物を成形するための光硬化性樹脂組成物であって、下記の(A)及び(B)を含み、かつ(A)のウレタン結合のうちの少なくとも1つが、1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物由来であることを特徴とする、光硬化性樹脂組成物。
(A)ウレタン(メタ)アクリレート
(B)光重合開始剤
【0012】
<第二の発明>
(A)が、1分子内に、少なくとも1種以上の繰り返し単位を有するものであることを特徴とする、第一の発明に記載の光硬化性樹脂組成物。
【0013】
<第三の発明>
繰り返し単位が、ポリ(繰り返し数2以上)エーテル骨格及び/又はポリ(繰り返し数2以上)エステル骨格を含むものであることを特徴とする、第二の発明に記載の光硬化性樹脂組成物。
【0014】
<第四の発明>
ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル基の数が、7以下であることを特徴とする、第一の発明乃至第三の発明のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【0015】
<第五の発明>
ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル当量が、100~5000であることを特徴とする、第一の発明乃至第四の発明のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【0016】
<第六の発明>
更に下記の(C)を含有することを特徴とする、第一の発明乃至第五の発明のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
(C)反応性希釈剤
【0017】
<第七の発明>
光硬化により成形した造形物であって、下記の(i)を構成成分として含むことを特徴とする、光硬化型3次元立体造形物。
(i)第一の発明乃至第六の発明のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物
【0018】
<第八の発明>
更に、下記の(ii)を有することを特徴とする、第七の発明に記載の光硬化型3次元立体造形物。
(ii)光硬化性樹脂組成物とは別個独立して識別可能な内包物
【0019】
<第九の発明>
(ii)の内包物が、下記のグループに属するものから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、第八の発明に記載の光硬化型3次元立体造形物。
(グループA)有機物、無機物、又はこれらの混合物
(グループB)天然物、天然物加工品、人工物、又はこれらの混合物
(グループC)動物、植物、微生物、鉱物、岩石、又はこれらの混合物
(グループD)非乾燥状態の物質、半乾燥状態の物質、乾燥状態の物質、又はこれらの混合物
(グループE)気泡
【0020】
<第十の発明>
下記(I)を構成材料として含むことを特徴とする、光硬化型3次元立体造形物の作製キット。
(I)第一の発明乃至第六の発明のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物
【0021】
<第十一の発明>
更に下記(II)及び/又は(III)を構成材料として含むことを特徴とする、第十の発明に記載の光硬化型3次元立体造形物の作製キット。
(II)造形用の容器又は型枠
(III)内包物
【0022】
<第十二の発明>
1分子内に2つ以上の直接又は間接的に互いに連結されたイソシアヌレート骨格を有し、且つウレタン結合のうちの少なくとも1つが、当該イソシアヌレート由来であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、太陽光、UVライト等を含む紫外線、或いはLEDライト等の照射によって、短時間で一気に大スケール(大量)で硬化することが可能であり、また、硬化時の発熱も少なく、作業環境の安全性に優れるものである。
また、硬化収縮による樹脂のヒビ、割れ、収縮、又は変形等も少ない(又はほぼ見られない)ため、容器や型枠等から取り出した後も、設計した通りの(容器や型枠の)形状を維持できる美しい光硬化型3次元立体造形物を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の、光硬化型3次元立体造形物の作製方法の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の、光硬化型3次元立体造形物の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2の光硬化型3次元立体造形物を、別の角度から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
[本発明の光硬化性樹脂組成物]
本発明の「光硬化性樹脂組成物」は、光硬化型3次元立体造形物を成形するための光硬化性樹脂組成物であって、下記の(A)及び(B)を含み、かつ(A)のウレタン結合のうちの少なくとも1つが、1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物由来であることを特徴とするものである。
(A)ウレタン(メタ)アクリレート
(B)光重合開始剤
【0027】
「(A)のウレタン結合のうちの少なくとも1つが、1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物由来である」とは、「(A)のウレタン結合の原料のうちの少なくとも1部が、1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物である」ことを意味するものである。
【0028】
尚、この原料成分である「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」には、一時的に1分子内のイソシアネート基の一部を連結、封鎖、又は構造変更等しておき(原料イソシアネート化合物のイソシアネート基数を形式的に3つ未満とする)、フリーのイソシアネート基を用いて一旦ウレタン結合を形成後、あらためて封鎖或いは構造変更したイソシアネート基を復活させてウレタン結合を形成し得るようなもの含まれる。
【0029】
つまり、結果として得られた(A)のウレタン(メタ)アクリレートの構造において、イソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物由来の構造と同等の構造が読み取れるようなものであれば良い。
【0030】
尚、1つのウレタン結合には、3つ以上あるうちの、1つのイソシアネート基が使用される。
【0031】
≪(A)ウレタン(メタ)アクリレート≫
「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」は、本発明の「光硬化性樹脂組成物」に、光硬化性を付与するために用いるものである。
尚、本発明においては、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を、便宜的に単に「アクリレート」と記載する場合がある。
【0032】
本発明の「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」は、(A)のウレタン結合のうちの少なくとも1つが、「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」由来であることが必要であるが、これは、(A)の製造に際し、原料のうちの少なくとも1つに「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」を用いることで得ることができる。
【0033】
尚、「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」由来のウレタン結合の数は、2つ以上が好ましく、より好ましくは3つ以上である。
【0034】
「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」が原料の少なくとも一部として必要なのは、1分子内の「イソシアネート基」の数が2つ以下であると、そもそも硬化性が低いばかりか、離型できる程度の硬化性は有するものの、表面又は内部の硬化が不十分であったり、硬化した樹脂に変形、へこみ、亀裂等が生じ易い(硬化収縮が起こる)からである。
【0035】
1分子内の「イソシアネート基」の数以外の、樹脂組成物中のその他の要素を工夫することによって、硬化収縮を防止することも考えられるが、硬化収縮を防止しようとすると、表面の硬化性が低下したり、逆に表面硬化性を上げようとすると、硬化収縮防止性が得られない等、硬化物に要求される複数の性能をバランス良く達成することがかなり困難となる。
【0036】
つまり、1分子内のイソシアネート基数の多い「イソシアネート化合物」を使用して設計することによって、硬化性と硬化収縮の防止という一見相反する性質を両立させることが、容易となるのである。
【0037】
「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」の代表的な例としては、下記の[化1]ビウレット体、[化2]イソシアヌレート体、[化3]アダクト体等のトリイソシアネート等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
上記[化1]~[化3]において、Rは、特に限定されるものではなく、ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素で構成される、置換又は非置換の、鎖状(直鎖又は分岐鎖)又は環状の、脂肪族又は芳香族炭化水素基等を表すが、「ポリ(繰り返し数2以上)エーテル骨格」、「ポリ(繰り返し数2以上)エステル骨格」、又は「ポリ(繰り返し数2以上)オレフィン骨格」等の、少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するものであっても良い。
市販されている[化1]~[化3]の、Rの具体例としては、例えば「-(CH2)6-」に代表される「-(CH2)n1-」等の炭化水素基等が挙げられる。
尚、「繰り返し単位」の内容については、後述する。
【0042】
尚、n1は1以上の整数である。
【0043】
また、R’も、酸素原子3つと結合する一級炭素を含む以外、特に限定されるものではなく、ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素で構成される、置換又は非置換の鎖状(直鎖又は分岐鎖)又は環状の、脂肪族又は芳香族炭化水素基等である。
尚、一級炭素とは、「他の炭素原子と結合していない炭素原子」、及び「結合している他の炭素原子の数が1個である炭素原子」を意味する。
【0044】
尚、同一分子内において、R同士は、同一であっても異なっていても良い。
【0045】
「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」は、上記の[化1]~[化3]のほか、[化1]~[化3]において、各構造式中の少なくとも1つのイソシアネート基に、後述する「繰り返し単位を有するジオール(化7の一種)」等を付加し、付加されたジオールの残ったOH末端に、更にジイソシアネートを付加することによって得られる、「ジオール」由来の「繰り返し単位」を有する「イソシアネート化合物」であっても良い。
【0046】
上記のような「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」は、市場から入手することもできるが、例えば下記のような公知の「ジイソシアネート化合物」を用いて製造される。
【0047】
公知の「ジイソシアネート化合物」としては、
ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、
1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、
リジンジイソシアネート、
等の脂肪族ジイソシアネート化合物、
イソホロンジイソシアネート(別称:3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート)、
シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、
ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、
メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、
等の脂環式ジイソシアネート化合物、
トルエンジイソシアネート、
ジフェニルメタンジイソシアネート、
キシレンジイソシアネート、
ナフタレンジイソシアネート、
テトラメチルキシレンジイソシアネート、
等の芳香族ジイソシアネート化合物、
等が挙げられる。
【0048】
[化1]のビウレット体は、上記のジイソシアネート化合物と水との反応により得られる。
【0049】
[化2]のイソシアヌレート体は、上記ジイソシアネート化合物を、三量化触媒等を用いた公知の方法等によって三量化させて得られる。
【0050】
[化3]のアダクト体は、上記ジイソシアネート化合物と3価以上のアルコールとを反応させて得られる。
アダクト体に使用される3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0051】
「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」としては、[化1]~[化3]以外に、
1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、
リジンエステルトリイソシアネート、
1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、
1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、
トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、
1,3,5-トリイソシナトベンゼン、
2,4,6-トリイソシアナトトルエン、
4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート、
等も使用できる。
【0052】
((A)ウレタン(メタ)アクリレート中の構成成分)
「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」としては、一般的に知られている公知のものであれば使用できるが、1分子内に、少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するものが、硬化収縮防止性に優れる点で好ましい。
【0053】
「繰り返し単位」としては、例えば
「ポリ(繰り返し数2以上)エーテル骨格(以下、単に「ポリエーテル骨格」と記載することがある)」を有するもの
「ポリ(繰り返し数2以上)エステル骨格(以下、単に「ポリエステル骨格」と記載することがある)」を有するもの
「ポリ(繰り返し数2以上)オレフィン」骨格(以下、単に「ポリオレフィン骨格」と記載することがある)を有するもの
等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0054】
本発明の光硬化性樹脂組成物に用いられる(A)としては、
「ポリエーテル骨格」を有するもの、
「ポリエステル骨格」を有するもの、
或いは「ポリエーテル骨格」及び「ポリエステル骨格」を有するもの
等がより好ましいものとして挙げられる。
【0055】
「ポリエーテル骨格を有する」とは、分子内に、「-(R1O)n2-」(R1は、特に限定されるものではなく、炭素数1以上の、ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素で構成される、置換又は非置換の、鎖状(直鎖又は分岐鎖)又は環状の、脂肪族又は芳香族炭化水素基、n2は2以上の整数)という構造を有することを意味するが、炭素数は2以上のものが好ましく、またR1は2種類以上のものが混在していても良い。
【0056】
具体的な「ポリエーテル骨格」としては、特に下記のものが好ましい例として挙げられる。
【0057】
ポリオキシエチレン(POE)基(又はポリエチレンオキシド(PEO)基とも言う):
「-(C2H4O)n3-」(n3は2以上の整数)
【0058】
ポリオキシプロピレン(POP)基(又はポリプロピレンオキシド(PPO)基)とも言う):
(C3 H6 O)n4(n4は2以上の整数)
ポリオキシブチレン(POB)基(又はポリブチレンオキシド(PBO)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMOとも言う):
【0059】
「ポリエステル骨格」を有するとは、分子内に、
「-(R2COO)n5-」という構造)(n5は2以上の整数)
又は
「-(COO)n6-」という構造(ポリカーボネート等)(n6は2以上の整数)
等を有することを意味する。
【0060】
R2は、炭素数1以上の、ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素で構成される、置換又は非置換の、鎖状(直鎖又は分岐鎖)又は環状の、脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は、2以上のものが好ましい。
【0061】
具体的な「ポリエステル骨格」としては、下記のものが挙げられる。
【0062】
ポリカプロラクトン
ポリカーボネート
低分子量ジオールと酸成分との反応物
【0063】
「ポリオレフィン骨格」を有するものとしては、例えば、ポリプロプレン、ポリブタジエン等が挙げられる。
【0064】
本発明の「光硬化性樹脂組成物」が、高い粘度を必要とする場合や、透明性を重視する場合には、
「ポリエステル骨格」を有するものからの方が選択し易いが、必ずしも「ポリエステル骨格」を有するものに限られるものではない。
【0065】
また、本発明の「光硬化性樹脂組成物」を用いて製造する「光硬化型3次元立体造形物」が、耐久性を重視する場合には、
「ポリエーテル骨格」を有するもの又は、
耐久性の高い「ポリエステル骨格」(カプロラクトン、カーボネート等)を有するもの
等を用いることが好ましいが、必ずしもこれらに限られるものではない。
【0066】
尚、後述するように、「繰り返し単位」は、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの原料である、イソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体、アルコール成分、ジオール成分のいずれかに含まれていれば良い。
【0067】
((A)ウレタン(メタ)アクリレートの製法)
本発明で用いられる「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」は、ウレタン結合のうちの少なくとも1つが、「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」、つまり下記の[化4]等に代表されるイソシアネート化合物に由来するものである。
【0068】
【0069】
上記[化4]中、R3、R4は、特に限定されるものではなく、ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素で構成される、置換又は非置換の、鎖状(直鎖又は分岐鎖)又は環状の、脂肪族又は芳香族炭化水素基等を表すが、R4は、「ポリ(繰り返し数2以上)エーテル骨格」、「ポリ(繰り返し数2以上)エステル骨格」、又は「ポリ(繰り返し数2以上)オレフィン骨格」等の、少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するものであっても良い。
「繰り返し単位」は、上述の「((A)ウレタン(メタ)アクリレート中の構成成分)」の項で説明したものと同様のものである。
【0070】
また、「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」は、[化4]の構造式中の少なくとも1つのイソシアネート基に、後述する「繰り返し単位を有するジオール(化7の一種)」等を付加し、付加されたジオールの残ったOH末端に、更にジイソシアネートを付加することによって得られる、「ジオール由来の繰り返し単位」を有する「イソシアネート化合物」であっても良く、以下で単に[化4]と記載する場合でも、このようなものも含むものである。
【0071】
またn7は3以上の整数である。
【0072】
尚、[化4]1分子中の、複数のR4は、全て同一であっても、異なっていても良い。
【0073】
本発明で用いられる「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」は、上記「1分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物」に下記[化5]で示される水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体を付加させることで製造することができる。
【0074】
【0075】
上記[化5]中、R5は特に限定されるものではなく、ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素で構成される、置換又は非置換の、鎖状(直鎖又は分岐鎖)又は環状の、脂肪族又は芳香族炭化水素基等を表すが、「ポリ(繰り返し数2以上)エーテル骨格」、「ポリ(繰り返し数2以上)エステル骨格」、又は「ポリ(繰り返し数2以上)オレフィン骨格」等の、少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するものが好ましい。
「繰り返し単位」は、上述の「((A)ウレタン(メタ)アクリレート中の構成成分)」の項で説明したものと同様のものである。
Aは(メタ)アクリル基を表す。
【0076】
水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体は1種類又は複数併用してもよい。すなわち得られた「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」1分子中のR5やAは、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。
【0077】
[化4]中のイソシアネート基は、
i)[化5]の水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体のOH基を、イソシアネート基と同当量付加することで、全てのイソシアネート基についてウレタン結合を生じさせるか、
ii)一部のイソシアネート基にのみ[化5]の水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体のOH基を付加してウレタン結合を生じさせ、
残存したイソシアネート基には、下記[化6]で示されるアルコールを付加してウレタン結合を生じさせる(アクリル基を導入せずに不活性化)か、
又は
iii)下記[化7]で示されるジオールを付加することにより、[化4]のイソシアネート化合物の分子内又は分子間の2つのイソシアネート基を接続するのに用いることができる。
尚、上記iii)の残ったイソシアネート基は、i)やii)のために用いることができる。
但しその場合であっても、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの1分子内に、[化4]に由来するウレタン結合が、少なくとも1つ存在することが必要であり、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上存在することが好適である。
【0078】
【0079】
【0080】
上記[化6]及び[化7]中、R5は、上述の[化5]に記載したものと同様のものを表す。
【0081】
尚、「繰り返し単位」は、ウレタン(メタ)アクリレートの全ての原料化合物中に含まれている必要は無く、
[化4]等に代表される「イソシアネート化合物」、
[化5]等に代表される「水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体」、
[化6]等に代表される「アルコール」、
又は[化7]等に代表される「ジオール」
の、少なくともいずれかに含まれていれば良い。
【0082】
以下、好ましい製法の例として、イソシアネート化合物として上記[化2]のイソシアヌレート体を用いた製造例を示す。
【0083】
製法1)
下記[化8]の反応式に示すように、イソシアヌレート1当量に対して、[化5]の水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体を3当量付加する方法。
【0084】
【0085】
尚、上記反応式中、「A」、「R4」、「R5」は、上述したものと同様である。
また、1分子中の、複数の「A」、「R4」、「R5」は、それぞれ全て同一であっても、異なっていても良い。
【0086】
また、式中の「eq」とは「当量」を意味する。
【0087】
つまり、上記の製法によれば、「イソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物由来のウレタン結合」を、3つ有する(A)ウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。
【0088】
製法2)
下記[化9]の反応式に示すように、イソシアヌレート1当量に対して、[化5]の「水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体」を2当量付加させた後、[化7]の「ジオール」を0.5当量付加する方法。
【0089】
この際、主生成物は「ジオール」のOHにイソシアヌレートが1つずつ付加し、1分子中に、2つのイソシアヌレート骨格を含むことになる。
【0090】
【0091】
尚、上記反応式中、「A」、「R4」、「R5」は、上述したものと同様である。
また、1分子中の、複数の「A」、「R4」、「R5」は、それぞれ全て同一であっても、異なっていても良い。
【0092】
また、式中の「eq」とは「当量」を意味する。
【0093】
つまり、上記の製法によれば、「イソシアネート基を3つ以上有するイソシアネート化合物由来のウレタン結合」を、1分子内に6つ有する(A)ウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。
【0094】
尚、製法1又は2で用いられる付加反応は、公知の方法に従って行うことができ、特に限定されるものではない。
【0095】
製法1又は2或いはその他の、(A)の合成方法において用いられるイソシアヌレート以外の原料化合物(化5、化6、化7))の具体例としては、例えば下記のものが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0096】
(水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体[化5])
上記の「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の合成において用いられる、「水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体」としては、
例えば下記のような
i)単官能(メタ)アクリレート
ii)多官能(メタ)アクリレート
等が挙げられ、これらは市場から入手することができる。
【0097】
i-1)モノ(単官能)(メタ)アクリレート類:
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(2-HEA、2-HEMA)、
2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(2-HPA、2-HPMA)、
2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(2-HBA、2-HBMA)、
4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(4-HBA、4-HBMA)、
6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート(6-HHA、6-HHMA)、
1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、
2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、
グリセリンモノ(メタ)アクリレート、
N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等
【0098】
i-2)尚、モノ(メタ)アクリレートの中でも、下記のように分子内に少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するものが好ましいもものとして挙げられる。
i-2―a):ポリエーテル骨格を有するモノ(メタ)アクリレート類:
ポリエチレンレングリコールモノ(メタ)アクリレート(AE-400等)、
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ブレンマー(登録商標)PP-1000等)
【0099】
i-2―b)ポリエステル骨格を有するモノ(メタ)アクリレート類:
ラクトン類の開環重合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(2-HEMA、2-HEA等)を付加したもの((株)ダイセル製 プラクセルFシリーズ)等
【0100】
ii)多官能(メタ)アクリレート類:
グリセリンジ(メタ)アクリレート
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(PETA等)、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(DPPA等)、
等が挙げられる。
【0101】
(アルコール[化6])
アルコールとしては、特に限定されるものではなく、一般的に「ウレタン(メタ)アクリレート」の合成に用いられる公知のものを使用することができ、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール-モノアルキルエーテル等が挙げられるが、例えば下記のような、少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するものが好ましく、これらは市場から入手することができる。
具体的には、例えばポリエチレングリコール-モノメチルエーテル、ポリエチレングリコール-モノエチルエーテル、ポリエチレングリコール-モノプロピルエーテル、ポリエチレングリコール-モノブチルエーテル、ポリプロピレングリコール-モノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール-モノエチルエーテル、ポリプロピレングリコール-モノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール-モノブチルエーテル等が挙げられる。
【0102】
(ジオール[化7])
また、「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の合成に用いられる、「ジオール」としては、特に限定されるものではなく、一般的に「ウレタン(メタ)アクリレート」の合成に用いられる公知のものを使用することができるが、例えば下記のような「ポリエーテル骨格」又は「ポリエステル骨格」等の、少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するジオール等が好ましいものとして挙げられ、これらは市場から入手することができる。
【0103】
「ポリエーテル骨格」を有するものとしては、具体的には、
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、又はポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等の「単独重合体(ホモポリマー)」
或いは、
エチレングリコール、プロピレングリコール、又はブチレングリコール等を構成成分とする「共重合体(コポリマー)」
等が挙げられる。
「ポリエステル骨格」を有するものとしては、具体的には
ポリカーボネートジオール(PCD)、
ポリカプロラクトンジオール(PCL)、
等が挙げられる。
【0104】
((A)中の(メタ)アクリレート基の数)
本発明の「光硬化性樹脂組成物」に用いられる「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の(メタ)アクリレート基の数としては、特に制限されるものではないが、1分子中の(メタ)アクリレート基の数が7以下のものが好ましく、より好ましくは2乃至5、更に好ましくは3乃至4である。
【0105】
1分子中の(メタ)アクリレート基の数が7以下の場合に、過度な硬化収縮が抑制され易く、容器や型枠から取り出した後の、成形物全体としての型崩れのリスクが、より少なくなるからである。
【0106】
((A)の(メタ)アクリル当量)
本発明の「光硬化性樹脂組成物」に用いられる「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」としては、(メタ)アクリル当量が、100~5000のものが好ましく、より好ましくは200~3000、更に好ましくは400~2000である。
【0107】
尚、本発明において「(メタ)アクリル当量」とは、(メタ)アクリレート基1つあたりの数平均分子量を意味する。
【0108】
100以上の場合に、硬化による過度な収縮が抑制され、硬化熱の抑制効果にも優れ、また本発明の「光硬化型3次元立体造形物」を作製する場合の、容器や型枠から取り出した後の、「光硬化型3次元立体造形物」自体の硬化収縮によるヒビ、割れ等の型崩れ等のリスクが、より顕著に抑えられ、5000以下の場合に、適度な硬化性を有し、容器や型枠等から取り出した後の、自立性に優れ、設計時の形状の維持性に、より優れるからである。
【0109】
((A)ウレタン(メタ)アクリレートの分子量)
本発明の「光硬化性樹脂組成物」に用いられる「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」としては、数平均分子量(Mn)が、1000~10000であるものが好ましく、より好ましくは1200~3500である。
【0110】
1000以上で、硬化収縮の防止性、反応熱の抑制性がより向上するからである。
また、10000以下で、硬化物の硬度(強度が)及び組成物の粘度が適度に抑えられ、「光硬化型3次元立体造形物」の作製において、作業性がより向上するからである。
【0111】
尚、3500以下であるものは、硬化性と硬化収縮の防止性のバランスに優れているという点で、より好ましい。
【0112】
尚、本発明において「数平均分子量(Mn)」とは、下記の測定方法によって測定した値を言う。
「数平均分子量(Mn)」測定方法:
市販の標準ポリスチレンで作成した検量線を用いて、Waters Corporation製「ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)」で測定した結果から算出した。
溶離液:テトラヒドロフラン(流速1mL/分)
カラム:日立化成テクノサービス株式会社製 GelPack GL-A150-S
【0113】
((A)ウレタン(メタ)アクリレートの含有量)
本発明の「光硬化性樹脂組成物」における、上記「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の含有量は、本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化性を担う、主たる成分として用いられることから、本発明の光硬化性樹脂組成物全体を100として、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~80重量%、更に好ましくは30~65重量%である。
【0114】
10重量%以上の場合に、(C)反応性希釈剤を含有する場合の樹脂の硬化収縮が適度に抑えられ、樹脂のヒビ、割れ、変形のリスクが、より抑えられ、95重量%以下で、取り扱いやすい粘度となり、硬化後の立体造形物に過剰な気泡を混入することを防ぐことができるからである。
【0115】
上述の「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」は、1種又は2種以上を併用して用いることもできる。
【0116】
尚、本発明の光硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、上述の特定の「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」に加えて、上述した以外の「ウレタン(メタ)アクリレート」、或いはその他の硬化性樹脂を含有させることもできる。
他の硬化性樹脂としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
1)(メタ)アクリレートモノマー:
【0118】
2)エポキシ(メタ)アクリレート:
【0119】
3)その他(メタ)アクリレート基を有する化合物:
ポリエステル(メタ)アクリレート、共重合(メタ)アクリレート、反応性ポリマー等
【0120】
≪(B)光重合開始剤≫
本発明の「光硬化性樹脂組成物」に用いられる(B)の光重合開始剤は、光硬化性樹脂組成物の硬化をスタートさせるために必要な成分であり、通常「光硬化性樹脂組成物」に用いられているものを使用することができる。
【0121】
具体的には、下記のようなものが挙げられるが、特に制限されるものではない。
アセトフェノン、
2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、
p-ジメチルアミノプロピオフェノン、
ジクロロアセトフェノン、
2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、
又は2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン
等のアセトフェノン類、
【0122】
ベンゾフェノン、
2-クロロベンゾフェノン、
4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、
4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、
4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、
又は3,3’-ジメチル-4―メトキシ-ベンゾフェノン、
等のベンゾフェノン類、
【0123】
ベンジル、
ベンゾイン、
ベンゾインメチルエーテル、
又はベンゾインイソブチルエーテル
等のベンゾインエーテル類、
【0124】
ベンジルジメチルケタール等のケタール類、
【0125】
チオキサントン、
2-クロロチオキサントン、
2,4-ジエチルチオキサントン、
又は2-イソプロピルチオキサントン、
等のチオキサントン類
【0126】
1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(具体例:Omnirad 184(former Irgacure 184):IGM Regins B.V.社製)、
1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、
2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、
又は2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(具体例:Omnirad 1173(former Irgacure 1173):IGM Regins B.V.社製)、
等のヒドロキシケトン類
【0127】
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Omnirad TPO H(former Irgacure TPO):IGM Regins B.V.社製)、
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、
等のアシルホスフィンオキサイド類
【0128】
メチルフェニルグリオキシレート(ベンゾイルぎ酸メチル:Omnirad MBF(former Irgacure MBF):IGM Regins B.V.社製)、
2-(2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシエチル)オキシフェニル酢酸エチルエステル、
[4-(4-メトキシオキサリル-フェノキシ)-フェニル]-オキソ-酢酸メチルエステル、
等のフェニルグリオキシレート類
【0129】
(B)成分としては、上記のほか、アントラキノン、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、又は2,4,6-トリス-S-トリアジン等も挙げられる。
【0130】
(複数の光重合開始剤(B)成分の併用)
尚、本発明の「光硬化性樹脂組成物」は、太陽光(自然光源)によっても十分に硬化させることができるが、下記のLEDライトやUVライト等の人工光源を用いて硬化させることももちろん可能である。
従って、光重合開始剤としては、硬化条件(光源の種類)や硬化させたい樹脂組成物の種類等によって、適宜、上述したものを単独で、或いは2種以上を併用して用いることができる。
【0131】
(B)光重合開始剤の併用の効果:
(B)成分を併用することによるメリットとしては、例えば下記のような点が挙げられる。
【0132】
1)複数の人工光源や、太陽光を用いた硬化に適している。
2)樹脂組成物の「内部における硬化性」に優れた(B)成分と、樹脂組成物の「表面における硬化性」に優れた(B)成分を併用することによって、表面及び内部の硬化性の両方において、より優れた硬化性を発揮させることができる。
【0133】
(B)光重合開始剤の併用例:
複数の光重合開始剤(B)成分の併用方法としては、吸収波長域の異なる2種以上を併用することが、太陽光を用いた硬化の場合に適するほか、幅広い波長の光源(ライト)での硬化に対応できるようになる点で好ましく、中でも、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(吸収波長:UV短波長領域)と2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(吸収波長:UV長波長領域)との併用等が、幅広い波長の光源(ライト)での硬化に対応できると共に、良好な硬化性をも得られるため、特に好ましい。
【0134】
業務用に使用されている光源は、波長が約405±5nm付近のLEDライト等が主流であり、またキット等を用いて一般家庭やクラフト教室等において光硬化型3次元立体造形物を作製する場合には、古くから使用されている、波長が365nm付近のUVライト等を使用することも多いため、幅広い波長において硬化が可能であることが、製品として望ましいからである。
【0135】
((B)光重合開始剤の含有量)
本発明の「光硬化性樹脂組成物」における、(B)光重合開始剤の含有量は、本発明の光硬化性樹脂組成物全体を100として、好ましくは0.05~7重量%、より好ましくは0.1~6重量%、更に好ましくは1~5重量%である。
0.05重量%以上の場合で、本発明の造形物の作製に、より十分な硬化性が得られ、7重量%以下の場合で、硬化時の発熱がより低減され、硬化後の樹脂のヒビ、割れ、又は変形等のリスクも、より抑えられるほか、光重合開始剤自身に由来する着色を防止し、光硬化型3次元立体造形物の透明性をより確保できるからである。
【0136】
≪(C)反応性希釈剤≫
本発明の「光硬化性樹脂組成物」には、(C)反応性希釈剤を更に含有させることが好ましい。
(C)反応性希釈剤は、組成物の粘度を下げ、取り扱いを容易にするために用いられるが、光硬化時の化学反応によって分子中に組み込まれるため、非反応性希釈剤等のような単なる可塑剤と違って、組成物本来の性能の低下を防ぎつつ粘度を下げることができる点で好ましい。
【0137】
(C)反応性希釈剤としては、特に限定されるものではなく、例えば単官能、多官能の(メタ)アクリレート類等が用いられ、具体的には下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
(単官能の(メタ)アクリレートモノマー)
メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、
プロピル(メタ)アクリレート、
ブチル(メタ)アクリレート、
へキシル(メタ)アクリレート、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、
オクチル(メタ)アクリレート、
エチルへキシル(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート、
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(2-HEA、2-HEMA)、
2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(2-HPA、2-HPMA)、
4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(4-HBA、4-HBMA)、
6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート(6-HHA、6-HHMA)、
(メタ)アクリルアミド、
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド
(メタ)アクリロイルモルフォリン、
ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、
イソボルニル(メタ)アクリレート、
(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
ラクトン類の開環重合物に水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体(2-HEMA、2-HEA等)を付加したもの((株)ダイセル製 プラクセルFシリーズ)等
【0139】
(2官能の(メタ)アクリレートモノマー)
(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、
【0140】
(3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー)
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート(PETA、PETRA等)、
ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート(DPPA、DPHA等)、
【0141】
尚、これらの(C)反応性希釈剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0142】
((C)反応性希釈剤の含有量)
本発明の「光硬化性樹脂組成物」における、上記「(C)反応性希釈剤」の含有量は、本発明の光硬化性樹脂組成物全体を100として、好ましくは5~75重量%、より好ましくは9~70重量%、更に好ましくは9.5~60重量%である。
【0143】
5重量%以上の場合に、組成物の粘度を下げることで、取り扱いが一層容易となり、組成物に十分な硬化性を加えることができ、75重量%以下で、組成物中のウレタン(メタ)アクリレートが性能を発揮するのに十分な濃度を維持でき、適度な硬化性と硬化収縮防止性が得られるとともに、過度な反応熱の抑制ができるからである。
【0144】
≪非反応性希釈剤≫
本発明の「光硬化性樹脂組成物」には、光硬化性樹脂組成物の硬化速度を抑えたり、硬化時の発熱や、硬化による過度な収縮を抑えるために、非反応性希釈剤を更に含有させることができる。
【0145】
本発明の「光硬化性樹脂組成物」に用いられる非反応性希釈剤としては、公知の各種のものを使用することができ、具体的には、(A)のウレタン(メタ)アクリレートとの反応性を有しない溶媒であれば良く、特に限定されるものではないが、高沸点で臭気が少なく、粘度が低めの溶媒が好ましい。
【0146】
(非反応性希釈剤の含有量)
本発明の「光硬化性樹脂組成物」における、上記「非反応性希釈剤」の含有量は、特に制限されないが、(A)~(C)成分の機能を阻害しない程度に留めるのが好ましい。
【0147】
また、本発明の「光硬化性樹脂組成物」は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記以外の樹脂成分を含有していても良い。
【0148】
≪その他の成分≫
本発明の「光硬化性樹脂組成物」には、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知の各種添加剤その他の成分を更に含有させることができる。
【0149】
その他の成分としては、例えばエポキシ樹脂、オキセタン、ビニルエーテル等の、光反応性化合物、(メタ)アクリルポリマー、チオール化合物、無機フィラー、各種樹脂用添加剤、染料や顔料等の色素成分等が挙げられる。
【0150】
チオール化合物は、組成物の硬化性を向上させることができ、特に1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物が好ましい。
【0151】
多官能チオール化合物の具体的な例としては、例えば
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、
トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、
テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、
1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、
1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナンー2,4,6-トリオン、
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、
等が挙げられる。
【0152】
≪光硬化性樹脂組成物の透明性≫
本発明の「光硬化性樹脂組成物」は、例えば後述する本発明の「光硬化型3次元立体造形物」の材料として使用する場合、中でも「光硬化型3次元立体造形物」が後述する「内包物」(動植物・鉱物等の天然物や人工的に製造したパーツ等)を有する場合には、特に透明性の高い樹脂を用いることが好ましい。
【0153】
尚、透明性の確保には、(A)、(B)、(C)等のそれぞれの構成成分について、「それ自体が透明性に優れる成分」を選択することのほか、(A)、(B)、(C)、或いは本発明の「光硬化性樹脂組成物」に用いられるその他の成分間の相溶性を加味して、「光硬化性樹脂組成物」全体としての透明性が向上するような組み合わせを選択することも重要である。
【0154】
≪光硬化性樹脂組成物の粘度≫
本発明の「光硬化性樹脂組成物」の粘度は、特に限定されるものでは無いが、複雑な形状の容器や型枠内で硬化させる場合、容器や型枠に「光硬化性樹脂組成物」を投入する際の操作性を向上させたい場合、或いは意匠的に気泡を必要としない場合の泡がみ(気泡の残存)を少なくし、また泡切れを速くしたい場合等には、低粘度であることが好ましく、例えば100~37000mPa・sが好ましく、より好ましくは150~10000mPa・sである。
【0155】
≪本発明の光硬化性樹脂組成物の用途≫
本発明の「光硬化性樹脂組成物」は、光硬化型3次元立体造形物をワンステップ又は少ないステップの硬化によって成形するのに適したものである。
【0156】
「光硬化型3次元立体造形物」については、後述する本発明の「光硬化型3次元立体造形物」のところで詳述する。
【0157】
なお、本発明の「光硬化性樹脂組成物」には、クラフト教室や家庭内で、自由にハンドメイド成形する際に使用される、いわゆる「クラフト(用)レジン」も含むものである。
【0158】
ここで、「ワンステップ」とは、例えば3Dプリンター等に用いられるような、薄い樹脂層を一層ずつ、例えば数百回程度、繰り返し硬化・積層させて作製するいわゆる「光造形」等とは異なる、ある程度の厚みや大きさの造形物を、一度の硬化で作製することを意味する。
【0159】
「少ないステップ」とは、せいぜい2~10ステップ、好ましくは2~5ステップ、より好ましくは、2~3ステップを想定しており、いずれにせよ、従来の3Dプリンターを利用した「光造形」の数百回程度と比較すれば、はるかに少ない回数で良いことを意味している。
【0160】
本発明の「光硬化性樹脂組成物」であれば、一回の硬化で造形物を作製可能であるが、例えば
図1で示すように、敢えて複数回に分けて硬化することによって、レイアウトの自由度が飛躍的に向上する。
【0161】
≪本発明の光硬化性樹脂組成物の製造方法≫
本発明の「光硬化性樹脂組成物」は、下記の方法によって製造することができる。
【0162】
(1)下記(A)、(B)、場合によっては(C)を含む全ての原料を、均一に混合する。
(2)例えば、70℃程度まで加温する。
【0163】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート
(B)光重合開始剤
(C)反応性希釈剤
【0164】
[本発明の光硬化型3次元立体造形物]
本発明の「光硬化型3次元立体造形物」は、下記の(i)を構成成分として含むことを特徴とするものである。
(i)本発明の光硬化性樹脂組成物
【0165】
≪3次元立体造形物≫
本発明の「光硬化型3次元立体造形物」において、「3次元立体造形物」とは、3Dプリンターなどで形成される薄い層や、それらの数百層からなる積層体とは異なる、ワンステップ又は少ないステップで、ある程度の厚みや大きさ等に成形された造形物を意味するものであるが、具体的な厚みや大きさの例については、後述する。
【0166】
≪(i)本発明の光硬化性樹脂組成物≫
本発明の「光硬化型3次元立体造形物」には、上述の本発明の「光硬化性樹脂組成物」が用いられる。
【0167】
≪硬化時に用いる用具≫
本発明の「光硬化型3次元立体造形物」は、例えば下記のような容器又は型枠を用いることによって製造することができる。
【0168】
(容器)
「容器」とは、物体を入れることのできる器を意味するが、特に本発明においては、液状の「光硬化性樹脂組成物」を、少なくとも離型できる程度に硬化するまでの間、保持することのできる部位を有する物を意味する。
【0169】
(型枠)
「型枠」とは、一般に液状物を硬化させる際に、所定の形状になるように誘導する部材や枠組みのことを意味するが、本発明においては、例えばクラフト作製用として使用される、光硬化性樹脂組成物を成形する際に用いられる枠組みのことを意味する。
【0170】
具体的な形状としては、例えば、少なくとも一面が、枠内に含まれる光硬化性樹脂組成物や内包物が見えるように解放されている、皿状又はトレー状の構造物等が挙げられる。
【0171】
(容器・型枠の材質)
容器・型枠の材質には、特に制限は無いが、「光硬化型3次元立体造形物」に「内包物」を包含させる場合には、「内包物」のレイアウトや硬化の進み具合を確認しながら製造できる点で、光を透過でき、中身を観察又は鑑賞できる程度の透明性を有するものが好ましい場合もある。
【0172】
上記のような透明性を要する場合も含めて、着色でも無着色でも良い。
【0173】
具体的な材質としては、例えば、金属、ガラス、シリコーンゴム、プラスチック等が挙げられる。
【0174】
金属製のものとしては、クッキー型のような型枠等が挙げられる。
【0175】
ガラスやプラスチックとしては、耐熱性のガラスやプラスチックを用いても良いが、例えば非反応性希釈剤の併用、光重合開始剤の使用量の調整、その他の方法によって硬化時の発熱を抑制した場合等には、汎用のガラス容器、プラスチック容器でも十分に使用可能である。
【0176】
尚、シリコーンゴムは、それ自体耐熱性が高く、硬化時の発熱にも耐えられ、また柔軟性があるため離型時の操作が容易となる点で好ましい。
【0177】
また、プラチックも、金属やガラスに比べて柔軟性があるため、離型時の操作が容易となる点で好ましい。
【0178】
(容器・型枠の形状)
容器の形状は、特に限定されるものでは無く、望みの形状の容器を使用することができる。
【0179】
具体的には、例えばキューブ状(立方体)、直方体、球状、半球状、紡錘状、円柱・角柱等の柱状、ピラミッド型、円錐・角錐等の錐状、リング状、或いはこれらの組み合わせ等、種々のものが挙げられるが、これらに分類できない不規則、又は複雑な形状であっても良い。
【0180】
本発明の3次元立体造形物は、3Dプリンターを用いたいわゆる光造形とは異なり、目的とする形状の容器や型枠を用いるだけで、容易に複雑な形状の3次元立体造形物を作製できるというメリットがある。
【0181】
特に、本発明の光硬化性樹脂組成物の粘度を、例えば、上記したような低い値に保つことによって、かなり複雑な形状の容器又は型枠であっても、使用することができる。
【0182】
(容器・型枠の厚み)
容器・型枠の厚みは、特に限定されるものでは無いが、例えば0.1mm~12mmが好ましく、より好ましくは0.2~11mm、更に好ましくは0.3~10mmである。
【0183】
0.1mm以上で、樹脂を注いだ際の形の保持力が十分得られ、また硬化時の発熱に対する耐性(容器等の変形防止性)がより高く、12mm以下で、離型時の操作が容易となるからである。
【0184】
(型枠の大きさ)
型枠の大きさは、特に限定されるものでは無いが、本発明の「光硬化性樹脂組成物」の、ワンステップ又は少ないステップで一気に短時間で硬化できるという機能がより活かされるという点で、例えば、硬化した光硬化性樹脂組成物が見える部分の表面積は、例えば1cm2以上、厚みは、3mm以上であることが好ましく、より好ましくは5mm以上である。
【0185】
(容器の大きさ)
本発明の容器の大きさは特に限定されるものではなく、その容量が、後述する「光硬型3次元立体造形物」の大きさと同等以上であれば良いが、本発明の「光硬化性樹脂組成物」の、ワンステップ又は少ないステップで一気に短時間で硬化できるという機能がより活かされるという点で、例えば、内径が1cm以上であることが好ましく、より好ましくは2cm以上、更に好ましくは5cm以上、特に好ましくは7cm以上である。
【0186】
内径1cm以上とは、例えば直径1cmの球体形状の内容物を封入し得る程度の大きさであることを意味している。
【0187】
(容器・型枠の構造)
容器・型枠は、一体成形されたものであっても、2つ以上の複数のパーツが組み合わせられてできたものであっても良い。複数パーツからなるものの場合、「樹脂組成物」を投入したり硬化後の「3次元立体造形物」を取り出すための開閉部(扉や蓋等)を設けたり、硬化後の「3次元立体造形物」を取り出せるように、少なくとも一部が着脱又は分解できる、分解式のものであることが好ましい。
【0188】
(光硬化型3次元立体造形物の大きさ)
本発明の「光硬化型3次元立体造形物」の大きさ、つまり使用する容器又は型枠の容量は、本発明の光硬化性樹脂組成物の、ワンステップ又は少ないステップで一気に短時間で硬化できるという機能がより活かされるという点で、少なくとも1cm3の体積を有することが好ましく、より好ましくは10cm3以上、更に好ましくは100cm3以上、特に好ましくは200cm3以上である。
【0189】
≪(ii)内包物≫
本発明の「光硬化型3次元立体造形物」には、更に光硬化性樹脂組成物と「別個独立して識別可能な内包物」を含有させることができる。
【0190】
「別個独立して識別可能な」とは、目視又は拡大鏡或いは顕微鏡その他の手段で、樹脂とは区別して認識できることを言う。
【0191】
「内包物」とは、例えば研究用標本における研究・観察対象の動・植物(昆虫等を含む)等のほか、鑑賞用のあらゆる物質、或いは装飾材料等を意味するものである。
【0192】
(内包物の分類)
「内包物」は、具体的には例えば下記のようなものに分類されるが、必ずしもこれらの分類に属するものに限定されるものではなく、また分類方法には、時代や理論によって、色々な基準があることから、下記の分類中の物質が他の分類と判断しうる場合もある。
【0193】
(グループA)
「内包物」としては、有機物、無機物、又はこれらの混合物からなるグループから選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0194】
尚、「混合物」とは、複数種類の内包物が、物理的或いは化学的に強固に或いは容易に分離しない程度に緩く結合し、容器内で渾然一体となって存在し得るものを意味する。
【0195】
(グループB)
また、「内包物」は、天然物、天然物加工品、人工物、又はこれらの混合物からなるグループから選択される少なくとも1種であっても良い。
【0196】
(グループC)
また、「内包物」は、動物、植物、微生物、鉱物、岩石、又はこれらの混合物からなるグループから選択される少なくとも1種であっても良い。
【0197】
(グループD)
また、「内包物」は、非乾燥状態の物質、半乾燥状態の物質、乾燥状態の物質、又はこれらの混合物からなるグループから選択される少なくとも1種であっても良い。
【0198】
(グループE)
更に「内包物」には、「気泡」(gas bubbles)等も含まれる。
原則的に、気泡を含まないほうが、他の「内包物」を引き立てることができるため好ましいが、意匠的な効果を狙って、敢えて気泡を含ませる場合もあるからである。
【0199】
(内包物の具体例)
「内包物」としては、具体的には下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0200】
動物:
哺乳類、両生類、爬虫類、昆虫、魚類、鳥類、貝類等
【0201】
植物:
花卉(花の咲く草)を含む草類等の種子植物、シダ類、コケ類、海藻等の藻類
(生の花卉、セミドライフラワー、ドライフラワー、押し花、プリザーブドフラワー、
乾燥野菜、ドライフルーツ、乾燥した草木の実、葉、又は樹皮、
乾燥唐辛子(鷹の爪、ししとう、ハバネロ等)、ドライ山椒、ドライシナモン、又はバニラビーンズ等の、フレッシュ(生)又はドライ(乾燥)の香辛料(ハーブやスパイス)、
プレスした野菜やフルーツ、
木材チップ
等の特殊加工品等、形態は問わない)等
【0202】
微生物:
キノコ等の菌類等
【0203】
鉱物:
石英、長石、雲母、方解石、岩塩等
【0204】
岩石:
花崗岩、大理石等
【0205】
上記以外の有機物:
貝殻、シェルパウダー等
【0206】
無機物:
金属製の造形物、金属片、金箔等の金属箔、金粉等の金属製のパウダー、土、星砂その他の砂等
【0207】
人工物:
ガラス、シーグラス、ラメパウダー等のラメ素材、グリッター、ビーズ、ワイヤー、紙、プラスチック製品、ループヤーン等の加工糸を含む糸、繊維、織編物等の布帛、金メッキや銀メッキ等を含むメッキモール、紙テープ、造花、フィルム、写真、絵画、ホログラム製品、電飾用のライト又はコード等
【0208】
(光硬化型3次元立体造形物の製品例)
本発明の、内包物を有する「光硬化型3次元立体造形物」の代表的な例としては、具体的には、動・植物の標本、置物・ハーバリウム等の観賞用造形物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0209】
≪本発明の光硬化型3次元立体造形物の作製方法≫
本発明の「光硬化型3次元立体造形物」は、例えば下記1)乃至5)の工程に沿って作製することができるが、1)と2)の順序は入れ替えても良く、また1)、2)の工程を交互に複数回繰り返しても良い。
【0210】
尚、内包物は、必ずしも樹脂組成物(硬化液)中に完全に埋没させる必要は無く、一部が露出していても良い。また、内包物を用いない場合には、1)は省略することができる。
また、3)の工程を設けることによって、硬化時に空気が遮断されて表面硬化性が上がる場合があるが、3)は省略することも可能である。
【0211】
1)容器又は型枠内に、目的とする「内包物」を入れる。
2)本発明の「光硬化性樹脂組成物(硬化液)」を容器内に注ぐ。
3)必要に応じて、容器に蓋をするか或いはプラスチックフィルム等によって密閉する。
4)太陽光又はUVライト,或いはLEDライトで光硬化させる。(硬化時間目安:5~30分間)
5)硬化物を容器又は型枠等から取り出す(離型)。
【0212】
尚、4)の光硬化は、必ずしも完全に硬化させる必要は無く、容器や型枠があることで底面や内部まで十分に光があたらない場合には、4)で離型し得る程度にまで一旦硬化し、5)の離型後に再び光をあてて表面硬化、内部硬化を完了させても良い。この離型後の硬化は4)より短時間(硬化時間目安:1~10分間)で行うことができる。
【0213】
また、上記のように、本発明の「光硬化性樹脂組成物」を使用すれば、ワンステップで一気に大容量の「光硬化型3次元立体造形物」を硬化成形することができるが、内包物のレイアウトを調整しながら、4)の光硬化工程を、敢えて複数回(但し、せいぜい2~10回の少ないステップ)に分けて硬化することもできる。
そうすることで、レイアウト(デザイン)の自由度が大幅に向上することがあるからである。
【0214】
以下、
図1に沿って、レイアウトの微調整によって、より設計時のイメージに近い外観で硬化させることができるように、敢えて硬化回数を2回に分けた場合の、本発明の「光硬化型3次元立体造形物」の作製方法について説明する。
【0215】
1)ボトル等の容器や型枠を用意し、中に目的とする「内包物」を投入する。
2)本発明の「光硬化性樹脂組成物(硬化液)を、「内包物」を固定したい位置まで注入する。
この段階で、気泡の混入を好まない造形品の場合には、気泡が上がって来た場合は、爪楊枝、竹串、マチ針等の針状物などの先の尖った用具等を用いて、気泡を潰しながら取り除くと、綺麗に作製できるため好ましい。
3)太陽光又はUVライト,或いはLEDライトで硬化させ、一旦「内包物」を固定する。(硬化1回目/硬化時間目安:3分~8分)
4)硬化させた上に、追加の「内包物」及び「硬化液」を投入する。
5)フィルム等で容器を密閉する
6)再び全体を光硬化させる(硬化2回目/硬化時間目安:10~15分間)。
7)容器又は型枠から、硬化した光硬化型3次元立体造形物を取り出す。
【0216】
尚、2回目の硬化時間を少し長めにするのは、完全に硬化させる為である。
【0217】
また、容器の底部や細部にまで硬化用の光が届きにくそうな場合には、
図1に示したように2回目の硬化を前半:6-1)と後半:6-2)に分け、後半は容器の天地を逆にひっくり返して硬化することが好ましい場合もある。
【0218】
[本発明の光硬化型3次元立体造形物の作製キット]
本発明の「光硬化型3次元立体造形物の作製キット」は、下記(I)を構成材料として含むことを特徴とするものである。
【0219】
(I)本発明の光硬化性樹脂組成物
【0220】
また、本発明の「光硬化型3次元立体造形物の作製キット」には、更に下記(II)及び/又は(III)を含んでいることが、すぐに製作が始められるという点で好ましいが、既存の型枠や容器等を用いても良く、また内包物は必ずしも必要ではないため、必ずしもこれらを含んでいる必要は無い。
【0221】
(II)造形用の容器又は型枠
(III)内包物
【0222】
(II)又は(III)としては、上述の本発明の「光硬化型3次元立体造形物」において記載したようなものが挙げられる。
【0223】
[本発明のウレタン(メタ)アクリレート]
本発明の新規ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子内に2つ以上の直接又は間接的に互いに連結されたイソシアヌレート骨格を有し、且つウレタン結合のうちの少なくとも1つが、当該イソシアヌレート由来であることを特徴とするものである。
【0224】
本発明の新規ウレタン(メタ)アクリレートは、上記製法2)等で製造することができるものであって、具体的には、例えば[化9]の右端の構造を有する生成物等が挙げられるが、中でも1分子内に少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するものが好ましい(実施例10~14で用いたX6,X7等)。
【0225】
本発明の新規ウレタン(メタ)アクリレートは、上記「本発明の光硬化性樹脂組成物」又は「本発明の光硬化型3次元立体造形物」を製造するのに好適である。
【実施例0226】
以下、具体的な実施例を用いて。本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものでは無い。
【0227】
また、実施例に先立って、本発明の光硬化性樹脂組成物に使用した「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の製造方法、及び各光硬化型3次元立体造形物の評価に用いた基準について記載する。
【0228】
[(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成]
下記の製法1及び製法2に従って、実施例に用いるための「(A)ウレタン(メタ)アクリレート:X1~X7」を製造した。より具体的には下記のようにして実施した。
【0229】
製法1:「(A)ウレタン(メタ)アクリレート:X1~X5」([化8]の右端の構造)の合成
撹拌機、温度計、還流菅を備えた1L四つ口フラスコに、下記[表1]に記載の当量となるイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体、重合禁止剤として200ppmのMEHQを撹拌混合した後、触媒として50ppmのDBTDLを添加した。オイルバス50℃にて30分間、更に85℃にて2時間加熱撹拌し、「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」を得た。
【0230】
【0231】
製法2:「(A)ウレタン(メタ)アクリレート:X6~X7」(本発明のウレタン(メタ)アクリレート:[化9]の右端の構造)の合成
撹拌機、温度計、還流菅を備えた1L四つ口フラスコに、下記[表2]に記載の当量となるイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体、重合禁止剤として200ppmのMEHQを撹拌混合した後、触媒として50ppmのDBTDLを添加した。オイルバス50℃にて1時間撹拌した後、表2記載の当量となるポリオールを添加した。更にオイルバス85℃にて2時間加熱撹拌し、本発明の新規な「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」を得た。
【0232】
【0233】
また、下記の製法3及び4に従って、比較例に用いるための「(A)ウレタン(メタ)アクリレート:Y1~Y3」を製造した。より具体的には下記のようにして実施した。
【0234】
製法3:「(A)ウレタン(メタ)アクリレート:Y1」の合成
撹拌機、温度計、還流菅を備えた1L四つ口フラスコに、下記[表3]に記載の当量となるイソシアネート化合物、ポリオール、重合禁止剤として200ppmのMEHQを撹拌混合した後、触媒として100ppmのDBTDLを添加した。オイルバス60℃にて30分間、85℃にて2時間撹拌した後、表3記載の当量となる水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体を添加した。更にオイルバス85℃にて2時間加熱撹拌し、「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」を得た。
【0235】
製法4:「(A)ウレタン(メタ)アクリレート:Y2~Y3」の合成
撹拌機、温度計、還流菅を備えた1L四つ口フラスコに、下記[表3]に記載の当量となるイソシアネート化合物、重合禁止剤として200ppmのMEHQを撹拌混合した後、室温にてポリオールを少量ずつ添加した。触媒として100ppmのDBTDLを添加した後、オイルバス60℃にて30分間、85℃にて2時間撹拌した後、表3記載の当量となる水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体を少量ずつ添加した。更にオイルバス85℃にて2時間加熱撹拌し、「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」を得た。
【0236】
【0237】
尚、上記「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の合成(製法1~4)で用いた重合禁止剤、触媒の略称は、下記の化合物を 意味する。
【0238】
(重合禁止剤)MEHQ:メトキノン 精工化学株式会社製
(触媒)DBTDL:ジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ 日東化成株式会社製 ネオスタン U-100
【0239】
[光硬化型3次元立体造形物の評価基準]
≪硬化性≫
〇 固形状に硬化。
× 硬化せず。
【0240】
≪表面硬化性(表面タック)≫
脱脂した指先で表面に触れ、べたつきの有無を評価した。
〇 表面のべたつきなし。
△ わずかに指紋がつく。
× 表面に未硬化成分が残る。
【0241】
≪硬化収縮防止性(形状維持性)≫
〇 硬化した樹脂に変形、へこみ、亀裂等見られず。
△ 硬化した樹脂に変形、へこみ、亀裂等あり。
× 硬化した樹脂の全体に変形、へこみ、亀裂等あり。
【0242】
≪外観(透明性・着色)≫
〇 硬化した樹脂に濁りや、意図した以外の着色等が見られない。
△ 硬化した樹脂にわずかに濁り、意図した以外の着色等が見られる。
× 全体的に明らかな濁り、意図した以外の着色等が見られる。
【0243】
[実施例1~17、比較例1~6:光硬化性樹脂組成物及び光硬化型3次元立体造形物]
表4に記載した組成にて、実施例又は比較例の「光硬化性樹脂組成物」を製造し、更にそれを用いて実施例又は比較例の「光硬化型3次元立体造形物」を作製した。
【0244】
具体的には、下記の工程に従って作製した。
【0245】
≪UVライトでの硬化(実施例1~14、比較例1~5)≫
1)上述の方法で得られた「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」、及び「(B)光重合開始剤」、更に場合によっては「(C)反応性希釈剤」を、70℃にて均一に溶解・混合し、[表4]記載の組成比を有する実施例又は比較例の「光硬化性樹脂組成物(硬化液)」を調製した。
2)内径2.5cm四方(厚さ3mm)のシリコーン製の型枠に、各硬化液を注いだ。
3)UVライト(36W)にて15分間光照射し、粗熱がとれたら型枠から外して裏面に更に5分間光照射した。
4)硬化完了後、実施例又は比較例の「光硬化型3次元立体造形物」を得た。
【0246】
上述の基準に従って、硬化性、表面硬化性(表面タック)、硬化収縮防止性(形状維持性)、外観(透明性・着色)を評価した結果を、合わせて[表4]に記載した。
【0247】
【0248】
≪屋外・太陽光での硬化(実施例15~17、比較例6)≫
1)上述の方法で得られた「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」、「(B)光重合開始剤」、及び「(C)反応性希釈剤」を、70℃にて均一に溶解・混合し、[表5]記載の組成比を有する実施例又は比較例の「光硬化性樹脂組成物(硬化液)」を調製した。
2)内径2.5cm四方(厚3mm)のシリコーン製の型枠に、各硬化液を注ぎ、離型フィルム(東洋クロス株式会社製、SP4107)で密閉した。
3)屋外にて2)に20~60分間太陽光をあて、硬化させた。
4)硬化完了後、粗熱がとれたら離型フィルムをはがし、型枠から取り出して、実施例又は比較例の「光硬化型3次元立体造形物」を得た。
【0249】
上述の基準に従って、硬化性、表面硬化性(表面タック)、硬化収縮防止性(形状維持性)、外観(透明性・着色)を評価した結果を、合わせて[表5]に記載した。
【0250】
【0251】
尚、[表1]~[表5]に記載した化合物の略称は、下記の化合物を意味する。
【0252】
[表1]~[表3]記載化合物:
(A)の材料(イソシアネート化合物):
TPA-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(旭化成ケミカルズ株式会社製 デュラネートTPA-100)
TLA-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(旭化成ケミカルズ株式会社製 デュラネートTLA-100)
IPDI:イソホロンジイソシアネート、住化コベストロウレタン株式会社製 デスモジュールI
TDI:トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製 コスモネート(登録商標)T-80)
【0253】
(A)の材料(水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体)
AE-400:ポリエチレングリコールモノアクリレート(日油株式会社製 ブレンマー(登録商標)AE-400)
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックス(登録商標)M305)
PP-1000:ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製 ブレンマー(登録商標)PP-1000)
FA2D:不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン((株)ダイセル製 プラクセルFA2D)
2-HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製 HEA)
2-HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱ガス化学株式会社製 2-HEMA)
DPPA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックス(登録商標)M403)
【0254】
(A)の材料(ジオール)
PPG700:ポリプロピレングリコール 数平均分子量700(日油株式会社製 ユニオール(登録商標)D-700)
PPG2000:ポリプロピレングリコール 数平均分子量2000(日油株式会社製 ユニオール(登録商標D-2000)
PTMG650:ポリテトラメチレンエーテルグリコール 数平均分子量650(三菱ケミカル株式会社製 PTMG650)
PTMG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール 数平均分子量1000(三菱ケミカル株式会社製 PTMG1000)
【0255】
[表4]~[表5]記載化合物:
(B)光重合開始剤
184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(Omnirad 184(former Irgacure 184):IGM Regins B.V.社製)
MBF:メチルフェニルグリオキシレート(ベンゾイルぎ酸メチル:東京化成工業株製)
【0256】
(C)反応性希釈剤
PDE-600:ポリエチレングリコールジメタクリレート POE約14個(日油株式会社製 ブレンマー(登録商標)PDE-60)
4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製 4-HBA)
2-HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱ガス化学株式会社製 2-HEMA)
【0257】
(結果)
[表4]、[表5]の結果から、「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の原料として、「イソシアネート基」を3つ以上有する「イソシアネート化合物」を使用した実施例の光硬化性樹脂組成物が、UVライト(表4)のみならず、太陽光(表5)でも十分に硬化できることが分かった。
【0258】
また、実施例の光硬化性樹脂組成物によって作製した光硬化型3次元立体造形物が、従来のシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等を用いた方法と比較して、はるかに簡便かつ短時間で作製(1~2回:合計20~60分間の硬化のみ)できる上、十分な性能(硬化性、表面硬化性、硬化収縮防止性(形状維持性)、良好な外観)を有していることが判明した。
【0259】
尚、「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の原料である「イソシアネート化合物」として、「イソシアネート基」の数が3つ未満の「Y1」を使用した比較例1、2、3の場合も、「Y1」中に柔軟なポリプロピレングリコール骨格を導入することによって、硬化収縮防止性は得られたものの、そもそもイソシアネート基が少ないため、表面硬化性に劣っていた。
【0260】
また、「Y1」の硬化性不足を補うために「(C)反応性希釈剤」の含有比率を上げた比較例1では、「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」と「(C)反応性希釈剤」との相溶性が低かったため、透明性や外観着色性にも劣っていた。
【0261】
「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の原料である「イソシアネート化合物」として、「イソシアネート基」の数が3つ未満の「Y2」を使用した比較例4の場合、硬化収縮防止性が不十分であり、また黄変が起こった。
【0262】
同様に「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」の原料である「イソシアネート化合物」として、「イソシアネート基」の数が3つ未満の「Y3」を使用した比較例5、6の場合、末端のアクリル基数を上げることで表面硬化性は十分に得られたが、硬化収縮防止性が著しく低く、また黄変も起こった。
つまり、単純に末端アクリル基を増やすのではなく、実施例のように、イソシアネート基数の多い原料を使用して設計することによって、硬化性と硬化収縮の防止という一見相反する性質を両立させることが容易となるのである。
【0263】
尚、上記の比較例4、5、6における黄変は、「Y2」、「Y3」中の芳香環の存在、或いは光重合開始剤や重合禁止剤との相性等の複合的な要因によるものと考えられる。
【0264】
また、(A)として、1分子内に「ポリエーテル骨格」又は「ポリエステル骨格」等の、少なくとも1種以上の「繰り返し単位」を有するウレタン(メタ)アクリレート(X1~4,6~7)を用いた、実施例1~8,実施例10~17の「光硬化性樹脂組成物」のほうが、1分子内に繰り返し単位を有しないウレタン(メタ)アクリレート(X5)を使用した実施例9の「光硬化性樹脂組成物」よりも、硬化収縮防止性において、より優れていることも判明した。
【0265】
尚、(C)反応性希釈剤を添加した実施例(1~3,5,7,9~11,13,14)では、粘度が低くなるため、表中には記載していないが、組成物注入時の操作性が向上するばかりか、硬化前の樹脂の「泡がみ」(気泡の残存)が少なく「泡切れ」も速かったことから、得られた「光硬化型3次元立体造形物」中への意図しない気泡の混入も殆ど無かった。
【0266】
(考察)
つまり、本発明の「光硬化性樹脂組成物」は、従来の光硬化性樹脂組成物と比較して、光硬化型3次元立体造形物の作製に、より適していることが明らかである。
【0267】
[実施例18:光硬化型3次元立体造形物]
図1の方法に従って作製した、本発明の「光硬化型3次元立体造形物」:実施例18)を2つの方向から見た図を、
図2及び
図3に示す。
【0268】
尚、実施例18の「光硬化型3次元立体造形物」の構成材料と硬化方法は、下記の通りである。
【0269】
硬化液:実施例16の光硬化性樹脂組成物
型:プラスチック製、内径:縦5.5cm×横5.5cm×高さ5.5cmサイズ(容量約166ml)
内包物:プリザーブドフラワー
硬化回数:2回
硬化手順:
図1と同様の方法で行った。
硬化時間:硬化1回目で5分間、硬化2回目で10分間(合計15分間)
(尚、硬化2回目は、途中で天地を逆にして各5分間ずつ硬化した。)
硬化手段:太陽光
【0270】
上記の通り、2ステップという少ない硬化工程で、しかも短時間で、設計イメージ通りの、美しい外観の造形物を得ることができ、しかも型から取り出した後も、ヒビ、割れ、変形又は収縮等もなく、設計した形状を保っていた。
【0271】
(考察)
つまり、本発明の光硬化性樹脂組成物は、少ない工程かつ短時間で十分に硬化し、内包物を適度かつ自由に固定することができることから、デザインの維持性及び自由度(多様性)が飛躍的に高まり、しかも型から外した後も、設計した形状を維持し得る(硬化収縮防止性に優れる)ことが明らかである。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、太陽光、UVライト等を含む紫外線、或いはLEDライト等の照射によって、短時間で一気に大スケール(大量)で硬化することが可能であり、また、硬化後の形状維持性に優れるものである。
また、未硬化部分が残存することによる表面のべたつきもないため、美しい光硬化型3次元立体造形物を作製することができる。
更に本発明の新規ウレタン(メタ)アクリレートは、上記「本発明の光硬化性樹脂組成物」又は「本発明の光硬化型3次元立体造形物」を製造するのに好適である。