(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008777
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】遮蔽手段
(51)【国際特許分類】
A47B 96/04 20060101AFI20220106BHJP
A47B 13/08 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A47B96/04 B
A47B13/08 Z
A47B96/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111024
(22)【出願日】2020-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・販売 販売日:令和2年6月2日 販売した場所:株式会社カナル(山形県米沢市中田町504-8) ・パンフレットの発送による配布 発送日:令和2年6月4日 発送した場所:株式会社カナル(山形県米沢市中田町504-8) ・新聞記事の掲載(1) 掲載日:令和2年6月7日 新聞名等:米澤新聞(第3面) ・新聞記事の掲載(2) 掲載日:令和2年6月7日 新聞名等:山形新聞(第12面) ・テレビ放送 放送日:令和2年6月11日(18時~) 放送局:NCV(株式会社ニューメディア)
(71)【出願人】
【識別番号】520203389
【氏名又は名称】株式会社カナル
(74)【代理人】
【識別番号】100146732
【弁理士】
【氏名又は名称】横島 重信
(72)【発明者】
【氏名】大亀 賢徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 総一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】厚さの薄い透光部材を使用してウイルス等の感染防止のための遮蔽手段を提供すること。
【解決手段】机の天板20に装着して使用される、透光部材3によって構成される透光部を含む遮蔽手段1であって、当該遮蔽手段は少なくとも一対の開口部2を有し、当該開口部を机の天板の異なる角部分にそれぞれ貫入することによって当該透光部を当該天板に起立して設置されることを特徴とする遮蔽手段。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
机の天板に装着して使用される、透光部材によって構成される透光部を含む遮蔽手段であって、
当該遮蔽手段は少なくとも一対の開口部を有し、当該開口部を机の天板の異なる角部分にそれぞれ貫入することによって当該透光部を当該天板に起立して設置されることを特徴とする遮蔽手段
【請求項2】
上記遮蔽手段の有する開口部は、机の天板の隣接する二つの角部分にそれぞれ貫入されることを特徴とする請求項1に記載の遮蔽手段。
【請求項3】
上記遮蔽手段は、上記透光部材に上記開口部を有すると共に、開口部を有する保持具を有し、当該透光部材の開口部を机の天板の角部分に貫入する際に、当該保持具が当該透光部材の開口部の両面又は片面において当該机の天板の角部分に貫入されることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の遮蔽手段。
【請求項4】
上記開口部を有する保持具は、上記透光部材の開口部周辺を挟持するように板状部材により形成され、当該透光部材の開口部の両面において机の天板の角部分に貫入されることを特徴とする請求項3に記載の遮蔽手段。
【請求項5】
上記保持具は少なくとも一対の上記開口部を有することにより、机の天板の角部分に貫入された上記透光部材の一対の開口部分を連通して保持することを特徴とする請求項4に記載の遮蔽手段。
【請求項6】
上記遮蔽手段は、上記透光部材と、当該透光部材の一部を挟持するように板状部材により形成される保持具であって、少なくとも一対の開口部を有する保持具とを含み、
当該保持具に設けられた開口部を机の天板の異なる角部分にそれぞれ貫入することによって上記透光部が当該天板に起立して設置されることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の遮蔽手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習机等に簡便に取り付け可能な遮蔽手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が広がり、この感染拡大を抑制するために一般の生活においても生活様式の対応が迫られている。ヒトへのウイルスの感染経路として、ウイルスで汚染された物品やウイルス感染者との直接的な接触によって生じる接触感染の他、ウイルス感染者が咳、くしゃみ、会話等をした際に飛散するウイルスを含む飛沫を吸引することで生じる飛沫感染が存在することが知られている。
【0003】
また、ウイルス感染から発症までの間の潜伏期間の存在や、更にウイルス感染によっても無症状の無症状感染者が存在する等の理由により、ウイルス感染者が自らの感染を意識しないままにウイルスを含む飛沫を飛散させ、これに起因して感染拡大を生じることが問題として指摘されている。
【0004】
このため、ウイルスの感染拡大を抑制する観点から、ウイルス感染の自覚症状がないことによって感染が積極的に疑われない個人においても、自身がウイルスに感染しているかもしれないという擬制に立つと共に、外見的にウイルス感染の症状が見られない他者についてもウイルス感染しているかもしれないという擬制に立って、他者と対面する際に飛沫の交換等のウイルス感染の経路になり得る行為を積極的に回避する努力が求められている。
【0005】
口腔等から飛散する飛沫を抑制し、また他者から飛散した飛沫の吸引を抑制する最も簡便且つ有効な手段としていわゆるマスクが広く使用され、呼気に含まれる飛沫をフィルタリングすることにより飛沫の交換が抑制されている。しかしながら、一般のマスクによっては必ずしも吸気(呼気)の全量がフィルタリングされない等の課題が存在する。また、常にマスクを着用していることの不快感や、マスク着用により熱中症の発生が助長される等の理由により、対面者間での飛沫の交換を抑制してマスクの機能を代替又は補うための簡便な手段が求められている。
【0006】
上記手段として、例えば、透明なフェイスシールドを着用することや、対面する他者との間に透明な材質で構成された衝立等を設置することにより飛沫を遮蔽して、飛沫の交換を抑制する手段が知られている。例えば、特許文献1には、対面販売や対面接客するための対面位置に、透視可能な遮蔽用シールド具を設け、このシールド具を感染症対策用の防護部材することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
対面する者の間に透光性を有する板状の遮蔽手段を配置することにより、一方の対面者から飛散した飛沫は当該部材によって遮断され、他方の対面者への到達が高い確率で防止される。このため、飛散する飛沫を有効に遮断可能であり、且つ十分な透光性を有する板状の部材を適宜の手段により設置することで、飛沫を遮蔽した状態で対面を行うという基本的な機能を得ることが可能である。
【0009】
しかしながら、ウイルスの感染拡大の抑制のためには、生活に関連する広汎な場面で飛沫の遮蔽を継続して行う必要があり、それぞれの場面に応じた良好な使い勝手を有する遮蔽手段が求められ、更にそのコストや環境負担が低いことが求められる。
【0010】
本発明は、上記要請を満たし得る新規な構造を有する遮蔽手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、机の天板に装着して使用される、透光部材によって構成される透光部を含む遮蔽手段であって、当該遮蔽手段は少なくとも一対の開口部を有し、当該開口部を机の天板の異なる角部分にそれぞれ貫入することによって当該透光部を当該天板に起立して設置されることを特徴とする遮蔽手段を提供する。
【0012】
また、上記遮蔽手段の有する開口部が、机の天板の隣接する二つの角部分にそれぞれ貫入されるものである上記の遮蔽手段を提供する。
【0013】
また、上記遮蔽手段は上記透光部材に上記開口部を有すると共に、開口部を有する保持具を有し、当該透光部材の開口部を机の天板の角部分に貫入する際に、当該保持具が当該透光部材の開口部の両面又は片面において当該机の天板の角部分に貫入されるものである上記の遮蔽手段を提供する。
【0014】
また、上記開口部を有する保持具が、上記透光部材の開口部周辺を挟持するように板状部材により形成され、当該透光部材の開口部の両面において机の天板の角部分に貫入されるものである上記の遮蔽手段を提供する。
【0015】
上記保持具は少なくとも一対の上記開口部を有することにより、机の天板の角部分に貫入された上記透光部材の一対の開口部分を連通して保持するものである上記の遮蔽手段を提供する。
【0016】
上記遮蔽手段は、上記透光部材と、当該透光部材の一部を挟持するように板状部材により形成される保持具であって、少なくとも一対の開口部を有する保持具とを含み、当該保持具に設けられた開口部を机の天板の異なる角部分にそれぞれ貫入することによって上記透光部が当該天板に起立して設置されるものである上記の遮蔽手段を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、厚みの薄い透光部材を使用した際にも机などに良好に設置可能な遮蔽手段を構成可能であり、学校等でのウイルス感染の拡大等を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明に係る遮蔽手段の一形態を示す図である。
【
図1B】本発明に係る遮蔽手段の一形態を示す図である。
【
図2】本発明に係る遮蔽手段の使用の一形態を示す図である。
【
図3】本発明に係る遮蔽手段を机の天板に嵌合した際の状態を示す図である。
【
図4A】本発明に係る遮蔽手段に使用する保持具の一形態を示す図である。
【
図4B】本発明に係る遮蔽手段に使用する保持具の一形態を示す図である。
【
図4C】本発明に係る遮蔽手段に使用する保持具の一形態を示す図である。
【
図5】本発明に係る遮蔽手段に使用する保持具の一形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例えば、小学校、中学校、高等学校や学習塾等(以下、「学校等」と記載する場合がある。)においては、その生徒が比較的高密度で学習机に座った状態で教室内に長時間滞在し、教師等と対面した状態で授業が行われたり、生徒同士が机を対面させて授業を受講したり給食を食べたりする等、飛沫の交換に起因するウイルスの感染拡大が心配される環境であり、上記のような透光性を有する遮蔽手段等により相互に飛沫を遮断することが望まれる。
【0020】
一方、学校等においては、教室が種々の目的に使用され、また掃除等の目的で学習机を頻繁に移動する必要があるため、容易に移動可能な個別の一人用の学習机を各生徒が使用することが一般的である。このような学習机の全てに対して、例えば特許文献1に記載の防護パネルを設置して、生徒と教師間に生じる飛沫を遮蔽しようとした場合には、透光性を有する遮蔽手段を机に固定するための保持部材等を予め机に固定する必要があり、通常の学習机の使用性を損なう等の問題を生じる。
【0021】
また、所定の厚みを有することにより自立性を有する透光性の部材で衝立状の物品を構成し、これを各学習机上に設置することによって飛沫は遮蔽可能であるが、各学習机上に継続的に重量物を設置して日常の活動を行うことは現実的ではない。また、厚みのある透光性の部材を使用した際には、その厚みの増加に従って音声の伝達が阻害される程度が高くなる点でも透光性部材の厚みを増すことは望ましくない。
【0022】
一方、上記重量の大きい遮蔽部材を避けて軽量の透明フィルム等を使用し、これを金属や樹脂、段ボール等で構成されるフレーム材により保持してなる遮蔽手段の使用も提案されている。しかしながら、このようなフレーム材を必須とする構造によっては、このフレーム材によって視野が遮られたり、当該フレーム材を学習机に取り付けるための各種治具などが必要となる等の問題を生じる。
【0023】
このように、学校等で使用される学習机等に透光性を有する遮蔽手段を設置しようとした場合には、主に当該透光性を有する部材の「自立性」に関連したトレードオフが存在し、軽量で簡便な取り扱い性を有すると共に、良好な視野を確保可能な遮蔽手段は必ずしも知られていない。つまり、遮蔽手段の遮蔽性と透光性をのみを考慮した際には、薄い透光部材によってもこれを満たすことが可能であるが、当該透光部材を自立させようとした際には、厚い透光部材の使用が必要になって重量が増したり、フレーム材によって透光部材を補強した場合には視野が遮られたりするというような問題を生じる。
【0024】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、学習机等に設置される透光部を有する遮蔽手段において、当該学習机等の天板を遮蔽手段に含まれる透光部材を支持する部材として活用する構造とすることにより、単体では必ずしも十分な自立性を有しない軽量な遮蔽手段であっても、これを机に設置して組み合わせることにより起立した遮蔽手段を構成可能とするものである。
【0025】
学校等で使用される学習机は、一般的に各生徒毎の一人用の物が使用され、その構造は略長方形の天板を適宜の脚部で支持する構造を有している。本発明に係る遮蔽手段では、略平面状である遮蔽手段の適宜の位置に、当該学習机の天板の大きさに応じた間隔で、当該天板の厚み等に応じた大きさの開口部が少なくとも一対設けられている。そして、当該開口部を、例えば当該天板の隣接する二つの角の部分に貫入させることによって、天板のフチ部分に沿って遮蔽手段を保持させることを特徴とするものである。
【0026】
上記のように、一対の開口部を、例えば天板の隣接する二つの角の部分に貫入させることで遮蔽手段を保持させる際の具体的な手段として、例えば、当該開口部の天板の厚さ方向に対応する開口長さ(開口高さ)を、使用する机の厚みに応じた長さにすることによって、当該開口部を天板の角部分に貫入させることで、結果として遮蔽手段の自重等によって開口部が天板の角部分から抜けて脱落しないようにすることによって行われる。
【0027】
本発明に係る遮蔽手段においては、机の天板の一辺の両側の角部分等に対して、透光部を含む遮蔽手段に設けた一対の開口部を貫入して保持する結果として遮蔽手段の面内に曲面を生じるため、当該透光部分等として自立性に乏しい薄板状の透光材料を使用した場合にも、遮蔽手段を構成するために十分な自立性を発揮させることが可能となる。
【0028】
本発明によれば、例えば特許文献1に記載されるような、板状の透明部材を略箱型形状等にして自立性を持たせた遮蔽手段をカウンター等に設置する形態と比較して、より単純な構成で、自立性に乏しい薄板状の透光部材を用いて遮蔽手段を構成することが可能となる。これによって遮蔽手段がより軽量にできるために、机の重心位置が上方に移動することによる机の不安定化や、机上から落下等した際の遮蔽手段の損傷や事故の発生等が防止され、設置により安全性が阻害されることが防止される。また、透光部材として主に使用される透明樹脂の量が減少するために、コストが抑制されると共に、プラスチックの使用量が抑制されることで環境負荷の増大を抑制することが可能となる。
【0029】
また、本発明に係る遮蔽手段では、机の天板面を占有する面積が少ないと共に、遮蔽手段の左右の端部が机の外部に向かうため、圧迫感の発生を抑制しながら遮蔽手段を使用することが可能となる。
【0030】
図1A,Bには、本発明に係る遮蔽手段の一例についての概略図を示す。
図1A,Bに記載する遮蔽手段1は、透光部材3によって構成されている。透光部材3を構成する材質として、所定の透光性を有すると共に、弾性的に変形可能なものであれば特に制限無く使用することが可能であり、透光性を有する樹脂材料が好ましく使用される。透光性を有する樹脂材料として、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、PET樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられるが、使用中の破損等を防止する点からは、耐衝撃性等に優れるポリカーボネート、PET樹脂、ポリ塩化ビニル等が好ましく使用される。
【0031】
本発明に係る遮蔽手段においては、遮蔽手段1に少なくとも一対の開口部2を有することを特徴としている。遮蔽手段を設置する机の天板の厚さと比較した際に、当該開口部2の開口高さを天板の厚さと略同一から天板の厚さの90%程度の範囲とすることにより、当該開口部を天板の角部分に貫入することで主に開口部の弾性変形等により開口部2が天板の角部分に嵌合して両者を固定することが可能となる。
【0032】
本発明に係る遮蔽手段においては、机の天板に組み合わせて起立させた際に、遮蔽手段の上端が机の使用者の頭部よりも高くなる程度の高さを有することが好ましく、上記開口部2から遮蔽手段の上端までの高さによりこれを調整することができる。一方、机の天板から下側の遮蔽手段の長さは、遮蔽手段が床に接しない範囲で、上記開口部2から遮蔽手段の下端までの長さにより適宜決定することができる。一般に机の天板から下側の遮蔽手段の長さを長くすること(
図1B)により、遮蔽手段の重心が低くなり、机に組み合わせた際の安定性が増加するが、飛沫の交換を抑制する観点からは、開口部2の周辺の強度が確保できる範囲で机の天板から下側の長さを短くしてもよい(
図1A)。
図1A,Bにおいては、それぞれ一対の開口部を有する遮蔽手段が記載されるが、本発明はこれに限定されず、例えば、複数対の開口部を有することで机に設置した際の遮蔽手段の上端部の高さを調整可能としてもよい。
【0033】
また、本発明に係る遮蔽手段においては、机の天板に取り付けた際に、遮蔽手段の開口部から外側の部分を机の天板から横方向に突出させて設置することが可能であり、横方向への飛沫の散乱の抑制を行うことが可能である。当該天板から横方向に突出させて設置される遮蔽手段の大きさは、使用する透光部材の大きさによって適宜決定することが可能であり、遮蔽手段の中央部の面に対して概ね30~60度程度の角度で設置されるように開口部の位置や大きさを設定することが望ましい。
【0034】
図2には、本発明に係る遮蔽手段を学習机20に設置した状態の模式図を示す。上記一対の開口部を遮蔽手段を設置する机の天板の大きさに対応した間隔で設けると共に、各開口部を天板の角部分に貫入させることにより、容易に遮蔽手段を机に設置することが可能である。上記開口部の間隔は、天板の大きさや、遮蔽手段1を構成する透光部材3の材質や厚さ等を考慮して決定することができる。一般には開口部の中心間の距離(
図1中の「d」)を、遮蔽手段を設置する机の天板の辺の長さと同一程度の長さにすることで、両側の開口部を天板の角部分に良好に嵌合させることができる。
【0035】
図3には、本発明に係る遮蔽手段1を学習机20に設置した際の、開口部2と天板の角部分との嵌合部分の斜視図を示す。
図3に示すように、遮蔽手段1の開口部2を天板の角部分に貫入させることにより、開口部2から天板の角部分が突出し、予め開口部2の開口高さを適切に設定することにより、天板の表面(裏面)と開口部間の摩擦力等によって遮蔽手段が天板に保持される。また、遮蔽手段1が天板に接する面を両面テープ等で粘着させることによっても更に安定して遮蔽手段を天板に保持することができる。
【0036】
上記の際に、開口部2の水平方向の開口長さ(開口幅)を長くすることにより天板との嵌合部分の長さが増加して遮蔽手段1をより安定して保持することが可能である一方で、天板の有効面積が減少する。このため、遮蔽手段1の材質や厚さ、面積等に応じて開口部2の開口幅を適宜決定することが望ましい。当該開口幅を、例えば5cm程度とすることで、比較的小面積の遮蔽手段を保持することが可能である。一方、開口部2の水平方向の開口長さを、例えば15cm程度以上とすることで大面積の遮蔽手段を保持することが可能となる。
【0037】
十分な厚みを有する板状物では当該板状物に固有の形態を維持しようとする保形力(張り)によって重力等の外力による変形が抑制され、板状物単体でも容易に起立等をさせることができる。一方で、その厚みが減少するに従って保形力が低下し、容易に屈曲などの変形を生じることが知られている。このために、例えば、平板状に衝立等を構成する際には、十分な保形力を発揮する程度の厚みの構成材料を用いることが必要とされる。
【0038】
一方、
図2,3等から明らかなように、本発明に係る遮蔽手段においては、薄板状の透光部材3等から構成される遮蔽手段1を、当該遮蔽手段1に設けた一対の開口部を天板の角部分に嵌合させることによって机の天板に設置する構造を有している。当該構造により、机の天板に設置された際に、一対の開口部の近傍において遮蔽手段1が折り曲げられて強制的に立体的な形状が付与されるため、平板の状態では遮蔽手段として机に起立するために十分な保形力を有しない透光部材3等を用いた場合でも、有効な遮蔽手段として機能することができる。
【0039】
なお、本発明において、遮蔽手段が天板に「起立」する等と記載する際には、当該遮蔽手段が付与された所定の角度等を維持して、天板上で衝立状に自立することを意味するものとする 。また、本発明において「天板の角部分」と記載される部分は、一般的な直角の角部分の他、遮蔽手段に設けられた開口部により、遮蔽手段を折り曲げた状態で保持可能な部分であれば、直角を基準として鋭角の角や鈍角の角であってもよく、曲線の一部分を成す部分であってもよい。
【0040】
つまり、本発明は、遮蔽手段1が設置される机の天板を遮蔽手段1の保形力を高めるためのフレーム材として活用し、天板の剛直性によって遮蔽手段1に強制的に三次元的な形状を付与することにより、単独では十分な保形力を有しないような厚みの透光部材3等を用いた場合でも天板に対して起立可能となり、有効な遮蔽手段を構成可能とするものである。以下の実施例で示すように、本発明によれば、厚みが1mm以下の保形力に乏しい透光部材を使用した場合であっても、机の着席者を十分に遮蔽する程度の面積を有する遮蔽手段を構成することが可能となる。
【0041】
上記のように、本発明に係る遮蔽手段は、机の天板を遮蔽手段1の保形力を高めるためのフレーム材として活用してするものであり、机の天板と遮蔽手段の嵌合部の拘束力を高めることによって、更に透光部材の厚みを低下させることが可能となる。
机の天板と遮蔽手段に設けられた開口部との嵌合部の拘束力を高める手段として、使用する透光部材の大きさや厚み、材質等に応じて、適宜の手段を用いることができる。例えば、上記のように、開口部の開口高さを天板の厚みに対して所定の割合で小さくすることにより、開口部を天板の角部分に嵌合する際に所定の力で圧入することで、嵌合後の開口部の周辺に圧縮応力が残留し、開口部が天板の角部分から脱落することを防止することができる。
【0042】
また、
図3に図示するように、遮蔽手段に設けられた開口部の外側の付近に適宜の開孔4を設けて、この開孔4を用いて遮蔽手段を天板に対してピン止め等することで、開口部が天板の角部分から脱落することを確実に防止することができる。更に、嵌合時に開口部から突出した天板の角部分に、紙の結束等に使用されるクリップ等を付設することによって開口部の天板の角部分からの脱落を防止することも有効である。遮蔽手段1に設けられた一対の開口部2が天板の角部分に嵌合して保持される際には、遮蔽手段1が当該開口部2の付近等で屈曲して立体形状が付与されるため、厚みが薄い透光部材によって遮蔽手段を構成した際にも十分な保形力が発揮され、垂れ下がり等を防止することが可能となる。
【0043】
また、
図1,2に示すように、遮蔽手段1を構成する透光部材において、上記開口部2の付近での屈曲に一致するように、予め高さ方向に折り目10を設けることも有効である。当該折り目10は、透光部材のリブとして機能して保形力を高めると共に、天板の角部分に嵌合した開口部2が脱離しようとする力を弱めることにより天板への遮蔽手段1の保持を容易にする効果を発揮する。
【0044】
上記折り目10は、遮蔽手段1の開口部2の付近で生じる屈曲に一致するように直線的に、又は曲線部分を含んで透光部材を塑性的に折り曲げることによって設けることができる。また、複数の部分に分けて形成された透光部材を柔軟な粘着テープ等によって組み合わせることによって上記折り目10を形成することで、透光部材の歪みに起因する見え難さを緩和することができる。
【0045】
図4Aには、遮蔽手段1に設けた開口部2を机の角部分に嵌合した際に、当該嵌合部を補強するための保持具5の一例を示す。保持具5は、例えば、発泡スチロールや段ボールの積層体等、所定の弾性変形域を有すると共に、一定以上の変形を受けた際に塑性変形を生じるような板状部材により、数mm~数cm程度の厚みを持って構成されることができる。保持具5には、遮蔽手段1を机の天板20に嵌合した際に開口部から突出しする角部分に圧入されて嵌合するための開口部6が設けられ、当該開口部6の内面と天板20の間に生じる摩擦力等により、天板の角部分に保持されるように形成される。
【0046】
例えば、
図3に示すように遮蔽手段1の開口部2を机の角部分に嵌合させた後、更に上記保持具5を開口部2から突出した角部分に嵌合させることにより、遮蔽手段1の開口部2と面接触してその変形を抑制することで確実に机の角部分に保持することが可能である。そして、保持具5により机の天板に対して遮蔽手段を拘束する拘束力が高められる結果、遮蔽手段を構成する透光部材の保形力を高めることができる。
【0047】
上記保持具を構成する板状部材としては、発泡スチロールや発泡ポリエチレン等のように、比較的強度が高い材質内に発泡等によって微少な気泡を複合化することで全体として弾性を付与した材質や、紙製や樹脂製のいわゆる段ボールのように内部にリブ構造の空隙を有することで補強された材質が好ましく使用される。部材の内部の微細な気泡を形成する肉薄の気泡壁や、段ボール内部のリブ構造を有する板状部材を用いることで、机の天板部に貫入させた際の天板表面との摩擦力が確保され、天板に対する遮蔽手段の拘束力を高めることができる。
【0048】
また、上記保持具を構成する板状部材として、ゴムやジェルから構成される弾性体を用いることも好ましい。ゴムやジェルから構成される弾性体を用いることで、当該弾性体が机の天板や遮蔽手段に対して密着し、安定して遮蔽手段を天板に拘束することができる。
【0049】
図4Aや、以下に説明する
図4B,Cに示すような保持具により遮蔽手段を机の天板に拘束する際には、天板に保持具を取り付けた際に、その変形によって遮蔽手段に接する保持具の面が極端に変形しない範囲で、保持具に設ける開口の開口高さが天板の厚さに対して60~95%程度になるようにして、天板に圧入して使用することが好ましい。
【0050】
図4Bには、遮蔽手段1に設けた開口部2を机の角部分に貫入する際に、当該嵌合部を補強するための保持具の他の例を示す。
図4Bに示す保持具7は、特に一対の保持具により構成されており、机の角部分に貫入される遮蔽手段1の開口部2を両面から拘束するように机の角部分に貫入して使用することができる。保持具7は、それぞれ上記のような板状部材を用いて作成することができる。遮蔽手段1の開口部2を両面から拘束することで、遮蔽手段1の開口部周辺が変形することをより有効に防止して、厚みの薄い透光部材等を用いた際にも安定してこれを天板に対し起立させることができる。
【0051】
図4Bに示す保持具7を使用する際には、遮蔽手段の内側に位置する保持具(保持具7’)の端部を適宜折り曲げることにより、透光部材の折れ曲がり部を阻害せずに机の天板に設置することができる。また、
図4Bに示す保持具7は必ずしも一対のものとして使用する必要はなく、透光部材の外側又は内側の一方にのみ設置することも可能である。
【0052】
図4Cには、遮蔽手段1に設けた開口部2を机の角部分に貫入する際に、当該嵌合部を補強するための保持具の更に他の例を示す。
図4Cに示す保持具8は、机の角部分に貫入される遮蔽手段1(透光部材3)の開口部2を両面から挟持する形態を有し、例えば板状部材を折り曲げること等により形成されている。なお、遮蔽手段1(透光部材3)を両面から「挟持」すると記載する場合には、遮蔽手段1の表裏面側に保持具が存在すると共に、当該表裏面側の保持具が相互に連通する等によって拘束されている状態を意味するものとする。
【0053】
保持具8の形態とすることにより、遮蔽手段1の表裏に存在する保持具が相互に拘束し合うことから、透光部材3に設けられた開口部周辺の変形を有効に抑制可能であり、遮蔽手段1をより確実に机の天板に拘束することが可能となる。
図4Cには、天板に貫入した際に保持具8の下面となる位置で表裏面が連通する例を示すが、これに限定されず、天板に貫入した際に縦方向に向く端面を連通させ、又は、その両方において表裏面を連通させても良い。
【0054】
図5には、机の天板に遮蔽手段1を構成する透光部材を保持させるための保持具9を示す。保持具9は、透光部材3の下部の少なくとも一部を表裏面から挟持可能となるように上記板状部材を折り畳むことで構成されている。保持具9の形態は、上記保持具8を左右一体に連通させたものに相当する。
【0055】
保持具9は、透光部材3の下部を上記板状部材によって表裏面から挟持した状態で、更に各開口部6の内側の端面付近で屈曲することで天板の角部分に嵌合し、透光部材3と共に天板に保持することで使用される。つまり、保持具9は、透光部材の一部を挟持するように板状部材により形成され、少なくとも一対の開口部を有する保持具であって、当該保持具に設けられた開口部を机の天板の異なる角部分にそれぞれ貫入することによって透光部を当該天板に起立して設置するものである 。
【0056】
保持具9においては、上記透光部材の下部を板状部材によって表裏面から挟持した状態で、更にその両端部を屈曲させる構造とすることで、当該保持具9を構成する板状部材の厚みに起因して、当該屈曲の内側となる板状部材には圧縮応力、外側となる板状部材には引張応力を生じることとなる。そして、当該屈曲の内側部分と外側部分は下部で連通して相互に拘束されている結果、当該圧縮応力と引張応力は当該屈曲の内側部分と外側部分とを押し付ける力として作用し、当該内側部分と外側部分に挟持された透光部材3を強く把持することが可能となる。
【0057】
以上のように、保持具9は、その二カ所の開口部6によって安定して天板に設置可能であり、且つ、上記のように挟持された透光部材3を強く把持することが可能であることにより、三次元的な形状が付与された透光部材3を安定して保持することが可能となる。また、保持具9によって透光部材3が保持されるために、保持具9を使用する際には開口部2が設けられていない透光部材3を用いることでも、良好な遮蔽手段を構成可能である。また、保持具9は机の天板付近に存在するために実質的に着席者の視界を遮ることがない一方で、透光部材3に高い保形力を付加することが可能であることによって、より厚みの少ない透光部材3の使用を可能とすることができる。
【0058】
上記説明した保持具5~9を使用する際には、上記のように各保持具を構成する板状部材の弾性力等によって透光部材3と接触して透光部材3を拘束してもよく、また保持具と透光部材3を粘着等することによって透光部材3を拘束することで、より確実に透光部材3を拘束可能な遮蔽手段とすることができる。保持具を透光部材の開口部付近に粘着等することにより、厚みの少ない保持具によっても有効に当該開口部の付近の変形を抑制できるために、より薄い板状部材によって保持具を形成することが可能となり、例えば透光部材と同一の透光部材を保持具として開口部付近に粘着することによっても透光部材3を有効に拘束可能となる。
【0059】
上記説明したように、本発明に係る遮蔽手段は、少なくとも一対の開口部を有することにより机の天板に組み合わせて使用することを特徴とするものであるが、当該遮蔽手段には様々な形態的、材質的な工夫を加えることが可能である。例えば、本発明に係る遮蔽手段の機能を損なわない範囲で、遮蔽手段の適宜の箇所に窓部を設けることで、遮蔽手段を介した資料の受け渡しを容易にすることができる。また、遮蔽手段の上部に必要に応じて屋根状の部分を付加することによって、飛沫の散乱をより有効に防止し、また遮蔽手段の自立性を補助する等が可能である。当該屋根状の部分は、軽量であることが好ましく、遮蔽手段を構成する透明部材と同一の素材等を用いて形成することができる。
【0060】
また、
図1に示すように、遮蔽手段に設ける一対の略矩形状の開口部を一直線上に配置する以外に、相互に所定の角度を付けて配置することで天板に設置した際の遮蔽手段の天板に対する角度を調整する等することも可能である。また、遮蔽手段を設けた机の周囲での移動性を確保するために、机の天板の横方向に突出して設置される遮蔽手段の部分について、当該部分の適宜の場所に紐等を取り付けて、この紐等を机の天板に結びつけたり、当該場所を天板にピンなどで固定することも有効である。
【0061】
本発明に係る遮蔽手段が設置される机は、その天板が長方形や正方形であり、直線的な辺の両端に角部分を有するものに限定されず、一定の曲率を有する辺を含むものであっても、その両端に遮蔽手段が有する開口部を貫入することで遮蔽手段に立体形状を付与できる角部分を有する天板を有する机であれば本発明に係る遮蔽手段を使用することができる。なお、本発明に係る遮蔽手段が設置される机には、遮蔽手段の開口部が貫入される天板部分を有するものであれば、例えば、引出などが設けられていないことでテーブル等と称されるものや、その他の形態のものも含むものとする。
また、遮蔽手段が有する開口部を貫入した際に、これを有効に保持するための突起等の手段を予め天板の角部分に設けることで、本発明に係る遮蔽手段をより有効に使用することができる。その際に、遮蔽手段に設けられる開口部の形状は矩形等である必要はなく、当該机の天板に設けられた手段に応じた形状とすることが望ましい。
【0062】
以下、本発明に係る遮蔽手段の実施例を参照して、本発明を具体的に説明する。なお、以下に示す各実施例は本発明の実施形態を例示するものであって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0063】
本発明に係る遮蔽手段を検証するために、広く学校等で使用される個人用の学習机を使用して以下の検証を行った。
検証に使用した学習机は、天板の幅650mm、奥行き450mm、厚み20mmであり、各角部分にR20mm程度の円弧部を有するものである。当該学習机に対して、各種の厚さを有する幅1400mm、高さが700mmの透光部材(PET樹脂製)を設置して、その安定性等を検証した。学習机に設置した際の当該透光部材は、その上端の高さが天板から約600mmであり、且つ、天板の長辺の両端の角部分に開口部が貫入されるように、当該開口部の内側端間の距離を約540mmとした。この結果、学習机に設置した際の当該透光部材は、天板の長辺に沿う部分の幅が約540mmであり、当該部分から左右にそれぞれ約430mm程度づつ突出して設置されるものである。
【0064】
実施例1に係る遮蔽手段は、上記大きさを有するPET樹脂製の各透光部材(厚さ1.5mm,1.0mm,0.7mm,0.5mm,0.3mm)について、机の天板に嵌合するための開口部として、カッターナイフで90×20mmの開口部を
図1に示すような形態で設けた。その際に開口部の中心間の距離(d)は630mmとし、開口部の上辺を透光部材の上辺から600mmの位置になるようにした。更に当該透光板に設けた各開口部の内側の縁に沿って、放置した際に透光部材の両端部が約45度程度の角度となるように高さ方向に折り目を付けて遮蔽手段とした。
【0065】
検証は、各厚さを有する透光部材について、その左右の開口部を机の天板の角部分に貫入して嵌合すると共に、開口部から突出した天板の角部分を市販のダブルクリップで把持して透光部材と天板の嵌合の外れを防止した状態で、透光部材の形状安定性を評価することで行った。
【0066】
表1には、上記評価の結果を示す。表1において、「○」は、上記取り付けた透光部材が安定して天板に起立して設置されたことを示す。また、「△」は、透光部材を天板に起立して設置可能であるが、外力が掛かった際には座屈等を生じて遮蔽手段として機能しないことを示す。また、「×」は、透光部材を天板に起立して設置不能であったことを示す。
【0067】
実施例1の形態は、実質的に透光部材に設けた開口部と天板の角部分の嵌合強度のみによって透光部材を机の長辺に起立して設置しようとするものである。その結果、表1に示すように、厚さ1.0mm以上の透光部材については安定的に天板に設置可能であった。その一方で、0.5mm以下の透光部材については、開口部を天板に圧入した直後から当該開口部の周囲に変形を生じ、自重によって透光部材が座屈することが観察され、遮蔽手段を構成困難であった。
【0068】
実施例1で作成した厚みの異なる各透光部材について、その左右の開口部を机の天板の角部分に圧入して嵌合した後、同様に上記保持具を天板の角部分に圧入することで透光部材が保持具と面接触する状態として、透光部材の形状安定性を評価した。
上記評価を行った結果を表1に併せて示す。表1に示すように、上記の保持具を透光部材に接触して使用することにより、実施例1と比較して透光部材の開口部の周囲の変形を生じ難くなり、より薄い透光部材(0.7mm厚)を用いた場合にも安定的に天板に起立して設置可能であり、遮蔽手段を構成することができた。