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▶ 澤田 克樹の特許一覧

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  • 特開-透明な氷を製造するための製氷器構造 図1
  • 特開-透明な氷を製造するための製氷器構造 図2
  • 特開-透明な氷を製造するための製氷器構造 図3
  • 特開-透明な氷を製造するための製氷器構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087779
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】透明な氷を製造するための製氷器構造
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/24 20180101AFI20220606BHJP
【FI】
F25C1/24 307
F25C1/24 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020210783
(22)【出願日】2020-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】520501791
【氏名又は名称】澤田 克樹
(72)【発明者】
【氏名】澤田 克樹
(57)【要約】
【課題】透明な氷を作業性良く得られる信頼性の高い製氷器を提供する。
【解決手段】透明氷を得るための主製氷部と、透明氷を得た残りの水が氷結する副製氷部と、当該製氷部間を接続する通水路とを二個以上の製氷モールドを組み合わせた隙間に形成し、当該空間からの水漏れがないように止水した製氷ユニット部と、当該ユニット部を格納した際に空気の層を形成する容器を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製氷用の空間を、二個以上の製氷モールドを組み合わせて形成し、当該空間に水を注いだ際に水が漏れないような止水部を備えた製氷ユニット部と、当該ユニット部を格納した際に空気の層を形成する容器からなる製氷器。
【請求項2】
請求項1の製氷器について、製氷用の空間が、主製氷部と、副製氷部と当該製氷部間を接続する通水路からなる製氷器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用冷凍庫等に収容可能な、透明な氷を製造するための製氷器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用冷凍庫等で透明な氷を製造する場合、先に凍る部分は不純物が少なく透明度が高くなるという水が凍結する際の特性を利用し、製氷後に透明度の高い部分のみを分割し得る方法が知られている。尚、前述の特性はより長い時間を掛ける事でより顕著に現れる。不純物が少ない透明度の高い氷は見栄えも良く、雑味が少なく、また溶けにくい性質を持つことから、利用価値の高い氷と言える。
【0003】
従来技術による透明な氷を製造する具体的な実現手法としては、発泡素材等の断熱性能を具備したケースやカップ状の容器を用いて、家庭用冷凍庫等の低温環境から断熱させる面(例えば側面、底面)と、断熱しない面(例えば天面)を作り、意図的に凍結方向に指向性を持たせて、先に凍結し透明度の高い氷が得られる主製氷部をモールドで区切り、モールドの外に後で凍結する副製氷部を設け、主製氷部と副製氷部との間をモールド上に穴を設け接続する事で、主製氷部から副製氷部へ不純物の多い未凍結の水を押し出すためのつながりのある製氷型を構成し、利用価値の高い透明氷を意図した形状で形作る事を可能としている。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-003133号広報
【特許文献2】特開2005-49081号広報
【特許文献3】特開2004-183931号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、既存技術による製氷器では、凍結後モールド部と容器間に氷が固着しモールドが容器から取り出し辛く、副製氷部で凍結した氷をモールドから剥がす必要があり、さらに容器から取り出すために製氷器温度を上げる際、断熱材が邪魔をし、時間が長く掛かってしまう等の作業性の悪さがあった。
【0006】
また、氷の膨張圧を逃がすためのスペースが容器の中にないため、容器やモールドの中に膨張圧が掛かり、固着と相まって氷の取り出し辛さを助長したり、容器やモールドに応力が掛かってしまい氷の形状が歪になったり、容器やモールド破損の可能性が高まる等の、信頼性が低下する要因を払拭できなかった。
【0007】
そこで本発明は、透明氷を製造する際の作業性を向上し、また氷の膨張圧力が容器やモールドへ掛からない、使いやすく信頼性の高い製氷器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明な氷を得るための主製氷部と、透明な氷を得た後の比較的不純物を多く含む水が凍結する副製氷部とを、二個以上の製氷モールドを組み合わせた際に生じる空間に形成し、そこに注いだ水が抜け落ちないような止水部を具備する。(これらの製氷モールドと止水部を組み合わせたものを、便宜上製氷ユニット部と以後呼称する。)
【0009】
さらに、製氷ユニット部を収容する容器と、製氷ユニット部間にスペースを設ける事で、空気による断熱層を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構造を用いれば、家庭用冷凍庫等で製氷した透明氷を内包する製氷ユニット部を、容器から氷の固着無く容易に取り出すことが可能である。
【0011】
さらに、止水部の止水性能を氷の膨張圧力を通す(受け止めない)程度の設計とすることで、製氷中における水の凍結時の膨張容積分、未凍結の水を製氷ユニット部と容器間のスペースへ逃がすことができ、製氷ユニット部内の膨張圧力の高まりを防ぐ事が出来るため、得たい透明氷の形状が歪になる可能性や、トレーや容器への応力を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における製氷器の断面図である。
図2】本実施形態における、製氷ユニット部の斜視図である。
図3】本実施形態における、容器の断面図である。
図4】本実施形態における、製氷器の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、図面を用い以下の通り説明する。尚、本実施形態は本発明を実施するための良好な一手段であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な形態を別途考慮する事ができ、本発明の請求範囲は実施形態にて限定されるものでは無い。
【0014】
本実施形態における製氷器の構成を示す。図1に示すのは、製氷器1の断面図であり、右トレー2、左トレー3、止水部4、容器5、フタ6、断熱部7、注水用の口部8、主製氷部9、製氷部間通水路10、副製氷部11から構成される。また便宜上、右トレー2と左トレー3と止水部4が組み合わさった状態のものを製氷ユニット部12とする。尚、本製氷器1は、例えば家庭用冷凍庫等の氷点下環境下に設置して利用することを想定している。
【0015】
図2に示すのは、製氷ユニット部12の詳細である。右トレー2、左トレー3には、組み合わさった際に注水用の口部8、主製氷部9、製氷部間通水路10、副製氷部11が形成されるよう設計された凹状部を具備し、凹状部に水を貯めることができるよう右トレー2の凹状部の外周に止水部4を具備する。また、右トレー2と左トレー3の組み合わせ時の作業性向上のため、位置ずれ防止のために勘合ガイドとなるための凹凸部を具備していても良い。
【0016】
図3に示すのは、容器5の断面である。容器5は溝部13を具備し、容器内で製氷ユニット部12が分離せず、また適切な位置に固定され、断熱部7を正しく形成できるように保持する機能を持つ。溝部13のように、容器に製氷ユニット部12が分離しないような構造を具備することで、製氷ユニット部12の容器への格納と同時に固定を行う事ができ、ユーザーの作業数が削減できるため作業性の向上を図ることが出来る。
【0017】
図4に示すのは、全体の部品構成を表す分解図である。製氷ユニット部12を容器5に格納後、フタ6を取り付ける事で、冷気等の侵入がなく断熱機能を持った断熱部7が形成される。
【0018】
尚、フタ6は必ずしも別パーツである必要は無く、右トレー2や左トレー3、容器5等と一体化させて部材点数を削減してもよい。
【0019】
次に、製氷器1の使用方法を説明する。ユーザーは、右トレー2、左トレー3、止水部4を組み合わせ、製氷ユニット部12にする。そして製氷ユニット部12を容器5のレール状の溝に合わせて挿入する。さらに、フタを取り付けて、製氷器1を使用可能状態にする。その後注水用の口部8から水道水等の水を注ぎ入れ、主製氷部9、製氷部間通水路10、副製氷部11を満たす。注水の時点で、止水部4により水は断熱部7へ漏れ出る事は無い。ユーザーは、注水完了後の製氷器1を家庭用冷凍庫等に格納する。
【0020】
家庭用冷凍庫等に格納された後、製氷器1の内部では水の凍結が進むが、断熱部7の効果により製氷器1の下面と側面からの冷却が抑えられるため、製氷器1の上方から凍結が進む。そのため、上部に位置する主製氷部9が先に凍り、不純物の少ない透明度の高い氷が主製氷部9内に出来る。その後凍結が進行し、不純物を比較的多く含む水は製氷部間通水路10を通り、副製氷部11にて凍結する。ここで、凍結時に発生する膨張体積は、パッキンを通過させ製氷ユニット部12の外へ逃がす事で、製氷ユニット部12、容器5に応力を掛ける事無く凍結させることが可能となる。無論、通過させた水が断熱部7の断熱性能を阻害し、また製氷ユニット部12と容器5間で凍結し固着することが無い様に、下部に十分なスペースを設ける等の対処を行う。
【0021】
製氷完了後、ユーザーは製氷器1を家庭用冷凍庫等から取り出す。その後、ユーザーはフタ6を開け、製氷ユニット部12を容器5より取り出すが、氷による固着が無いため、容易に引き抜くことが出来る。その後、製氷ユニット部12から主製氷部9、製氷部間通水路10、副製氷部11がつながった形状の氷を得る事が出来るが、製氷部間通路10を細く作っておく事で、容易に折り分ける事が出来るため、ユーザーは第一製氷部9の透明度の高い氷のみを得ることが出来る。本実施形態を用いれば、このようにしてユーザーは容易に透明度の高い氷を得ることが出来る。
【0023】
一実施形態として前述の通り説明したが、本発明の要旨に沿い、例えば第一製氷部を複数個所設けて同時に複数の透明度の高い氷を作成可能にする、トレーを二個よりも多くし、複雑な氷形状に対応させる等の種々の変更が可能である。
【0024】
尚、透明な部分とそれ以外の部分を組み合わせたデザインの氷、例えば冠雪部を非透明氷で、非冠雪部を透明氷で再現した冠雪した山を模した氷等を得たい場合は、主製氷部9、製氷部間通水路10、副製氷部11を分ける必要は無く、透明としたい部分を製氷器上部、非透明としたい部分を製氷器下部とした設計のトレーを用いれば良い。
【0025】
また、断熱部7において、右トレー2や左トレー3等に衝立状のリブを立てて空気層を小分けにし、対流を抑制させて断熱性能を向上させても良い。
【0026】
得たい氷の形状の都合で天面側の空気に触れる面積が小さく、天面からの伝熱量が乏しくなってしまい、凍結方向の指向性が弱まるような場合には、フタ6の位置を下げて、主製氷部9の一部をフタ6よりも上部に位置させ外気からの伝熱面積を稼ぐことで、天面側からの伝熱量を増加させ凍結方向の指向性を強めることが出来る。
【符号の説明】
【0027】
1 製氷器
2 右トレー
3 左トレー
4 止水部
5 容器
6 フタ
7 断熱部
8 注水用の口部
9 主製氷部
10 製氷部間通水路
11 副製氷部
12 製氷ユニット部
13 溝部
図1
図2
図3
図4