(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087813
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】既設配管の更生工法
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20220606BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20220606BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20220606BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20220606BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20220606BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C09D163/00
B05D7/14 S
B05D7/14 K
B05D7/22 B
B05D3/04 Z
B05D1/28
B05D3/00 D
B05D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184336
(22)【出願日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020199710
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520330652
【氏名又は名称】株式会社コウセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】國光 一平
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC58
4D075AC84
4D075AC88
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4D075AC92
4D075AC94
4D075AC96
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4D075EC07
4J038DB001
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4J038KA03
4J038MA15
4J038NA11
4J038NA24
4J038PA06
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】給湯設備用の既設配管について、配管やライニングに用いられる塗料の特性に応じ、耐熱性及び熱収縮に対する追従性を考慮した施工を実現する。
【解決手段】建物内に敷設された給湯用の既設給湯配管2を更生させる工法であって、既設給湯配管2内を洗浄した後に乾燥させる工程と、既設給湯配管2内を両端からその対象位置を進行させつつ乾燥圧縮空気により研磨材を噴射させて研磨する工程と、既設給湯配管2内を両端からその対象位置を進行させつつ所定の粘性を有する塗料を圧縮空気により噴射させて塗装する工程とを含む。この工法において既設給湯配管2内に塗装されるライニング材としては、エポキシ樹脂を主成分とする主材と、変性脂環式ポリアミンを主成分とする硬化剤とを、100:50の重量比で配合したものを用い、このライニング材は、配合構造粘性比を6として、可使時間が最高発熱到達時間の70%であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に敷設された給湯用の既設配管を更生させる工法において既設配管内に塗装されるライニング材であって、
エポキシ樹脂を主成分とする主材と、変性脂環式ポリアミンを主成分とする硬化剤とを、100:50の重量比で配合し、配合構造粘性比を6として、可使時間が最高発熱到達時間の70%であることを特徴とするライニング材。
【請求項2】
前記主材の23℃の環境下における粘度が70000mPa・sであり、前記硬化剤の23℃の環境下における粘度が65000mPa・sであり、
前記主材と前記硬化剤とを配合した際の粘度が,23℃の環境下において60000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載のライニング材。
【請求項3】
前記可使時間が90分であり、塗膜硬化時間が10時間であることを特徴とする請求項1又は2に記載のライニング材。
【請求項4】
硬化後の引っ張り強さが30~35mPaであり、硬化後の最大荷重時における伸び率が5%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のライニング材。
【請求項5】
建物内に敷設された給湯用の既設配管を更生させる工法であって、
前記既設配管内を洗浄した後、乾燥させる乾燥工程と、
前記既設配管内を両端からその対象位置を進行させつつ、乾燥圧縮空気により研磨材を噴射させて研磨する研磨工程と、
前記既設配管内を両端からその対象位置を進行させつつ、所定の粘性を有する塗料を圧縮空気により噴射させて塗装する塗装工程と
を含むことを特徴とする既設配管の更生工法。
【請求項6】
前記乾燥工程に先立って前記既設配管の内部表面の状態を検査する検査工程を実行し、
前記検査工程による検査結果に応じて、前記乾燥工程における洗浄として、オゾンを用いた殺菌洗浄を実施するとともに、前記研磨工程を省略することを特徴とする請求項5に記載の既設配管の更生工法。
【請求項7】
前記研磨する工程において、前記研磨剤を噴射する前記乾燥圧縮空気の風速は100m毎秒とし、
前記塗装する工程において、前記塗料を噴射する前記圧縮空気の風速は60m毎秒とする
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の既設配管の更生工法。
【請求項8】
前記塗装する工程では、前記塗料の比重を1.25とし、前記塗料の最小膜厚が300μm以上になるように塗装することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の既設配管の更生工法。
【請求項9】
前記塗装する工程の後に、45分以上、40℃から所定時間毎に段階的に温度を高くして通湯させて硬化養生する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の既設配管の更生工法。
【請求項10】
前記硬化養生する工程では、15分ごとに10℃ずつ温度を高くしていくことを特徴とする請求項9に記載の既設配管の更生工法。
【請求項11】
前記所定の粘性を有する塗料として請求項1乃至4に記載のライニング材を用いることを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の既設配管の更生工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内に敷設された給湯用の既設配管を更生させる工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な給水管等の既設配管を更生するライニング方法として、配管の内面を研掃した後に、塗料を用いたライニングを施す方法などが知られている。例えば、ライニング工法としては、建築物内に配管された複数の支管が分岐されている既設配管の内部を研掃した後に、既設配管の一端部側から他端部側までと各分岐された支管毎に塗装区間を区分し、各区間毎に無溶剤型の二液性エポキシ樹脂塗料を配管の端部から供給し、吹き延ばしによる一次塗装と摺動部材を使用した押し延ばしによる二次塗装を行って管内部に所定厚さの塗膜を形成するものがある(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既設配管であっても給湯設備用のものは一般的な給排水用の配管とは異なり、銅管など耐熱性の素材で形成されているとともに、保温や熱効率、水圧の関係上、その管径が小さめに設定されているなどの特性がある。特に、給湯設備用配管に対するライニング工法ではライニングに用いられる塗料に耐熱性や、銅管の熱収縮に対する追従性が必要なことから、一般的な給排水用のものとは異なる特性や施工方法が要求される。ところが、従前では一般的な給排水用のライニング工法をそのまま転用して施工されているケースが大半であり、給湯用配管に適した施工方法の開発が望まれている。
【0005】
そこで、この発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、給湯設備用の既設配管について、配管やライニングに用いられる塗料の特性に応じ、耐熱性及び熱収縮に対する追従性を考慮した施工を実現する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、建物内に敷設された給湯用の既設配管を更生させる工法において既設配管内に塗装されるライニング材であって、エポキシ樹脂を主成分とする主材と、変性脂環式ポリアミンを主成分とする硬化剤とを、100:50の重量比で配合して配合構造粘性比を6とし、可使時間が最高発熱到達時間の70%であることを特徴とする。
【0007】
上記発明のライニング材では、主材の23℃の環境下における粘度が70000mPa・sであり、硬化剤の23℃の環境下における粘度が65000mPa・sであり、主材と硬化剤とを配合した際の粘度が,23℃の環境下において60000mPa・sであることが好ましい。また、上記発明のライニング材では、可使時間が90分であり、塗膜硬化時間が10時間であることが好ましく、さらに、硬化後の引っ張り強さが30~35mPaであり、硬化後の最大荷重時における伸び率が5%であることが好ましい。
【0008】
他の発明は、建物内に敷設された給湯用の既設配管を更生させる工法であって、建物内に敷設された給湯用の既設配管を更生させる工法であって、既設配管内を洗浄した後、乾燥させる工程と、既設配管内を両端からその対象位置を進行させつつ、乾燥圧縮空気により研磨材を噴射させて研磨する工程と、既設配管内を両端からその対象位置を進行させつつ、所定の粘性を有する塗料を圧縮空気により噴射させて塗装する工程とを含む。
【0009】
上記発明では、前記乾燥工程に先立って既設配管の内部表面の状態を検査する検査工程を実行し、検査工程による検査結果に応じて乾燥工程における洗浄として、オゾンを用いた殺菌洗浄を実施するとともに、研磨工程を省略することが好ましい。
【0010】
上記発明において、研磨する工程において研磨剤を噴射する乾燥圧縮空気の風速は100m毎秒とし、塗装する工程において塗料を噴射する圧縮空気の風速は60m毎秒とすることが好ましい。また、上記発明において、塗装する工程では、塗料の比重を1.25とし、塗料の最小膜厚が300μm以上になるように塗装することが好ましい。
【0011】
さらに、上記発明では、塗装する工程の後に、45分以上、40℃から所定時間毎に段階的に温度を高くして通湯させて硬化養生する工程をさらに含むことが好ましく、この硬化養生の工程では、15分ごとに10℃ずつ温度を高くしていくことが好ましい。
【0012】
なお、この発明のライニング材は、上述した発明である既設配管の更生方法における塗料として用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、既設配管内を両端からその対象位置を進行させつつ、乾燥圧縮空気により研磨材を噴射させて研磨するとともに、塗料を圧縮空気により噴射させて塗装する。この際、研磨剤を噴射する乾燥圧縮空気の風速は100m毎秒とするとともに、塗料を噴射する圧縮空気の風速は60m毎秒とすることにより、給湯用配管の径と、塗料の耐熱性及び追従性(粘性)に適した圧力で、研磨及び塗装を行うことができる。また、塗装工程の後に硬化養生することにより、段階的に塗料を適正に硬化させてライニング材としての強度を発揮させることができる。
【0014】
さらには、塗料の比重を1.25とし、塗料の最小膜厚が300μm以上になるように塗装することにより、小径で熱収縮性のある給湯管にも適切なライニングを施すことができる。これらによって、給湯設備用の既設配管について、配管やライニングに用いられる塗料の特性に応じ、耐熱性及び熱収縮に対する追従性を考慮した施工を実現することができる。
【0015】
また、本発明において、既設配管の検査結果が、腐食が無いか、或いは腐食の態様がマウンドレス型孔食である場合には、乾燥工程における洗浄として、オゾンを用いた殺菌洗浄を実施するとともに、研磨工程を省略することが好ましい。これにより、オゾンの酸化力でスライム汚れを分解、殺菌洗浄し、給水、給湯管内に酸化被膜をつくりスライム、汚れの付着を防止できる。このとき、研磨工程(S104)は実施しないため、酸化皮膜や緑青により既設配管0内が補強されている状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る更生工法が適用できる戸建住宅における給水管・給湯管の状況を略示的に示した説明図である。
【
図2】実施形態に係る更生工法の手順を示すフローチャート図である。
【
図3】実施形態に係る更生工法における研磨工程を示した説明図である。
【
図4】実施形態に係る更生工法における研磨工程を示した説明図である。
【
図5】実施形態に係る更生工法におけるライニング工程を示した説明図である。
【
図6】実施形態に係る更生工法におけるライニング工程を示した説明図である。
【
図7】実施形態に係る更生工法の対象となる給湯管を工程毎に示した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る更生工法について図を参照して説明する。
図1に戸建住宅1における給水管・給湯管等の既設配管を略示的に示す。同図では、戸建住宅1における給湯器3の取付位置Eから戸建住宅1の床下を通じて給水管11及び給湯管12が配設され、建物内のキッチンA、浴室B、洗面所Cなどの各部屋まで配管されている。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
図1に示すように、給水管11及び給湯管12は、それぞれ給水管用の分岐チーズ100及び給湯管用の分岐チーズ200を介して分岐され、各配管はエルボ接手を介して床下から室内へと立ち上げられている。分岐チーズ100及び200では、複数の支管が分岐連結されており、各支管の自由端部側(以下、「末端側」という)には一般的に蛇口等の吐出部材が取り付けられている。
【0019】
ここでは、既設給湯配管2に対して更生工法を施工する場合を例に説明する。この既設給湯配管2は、銅配管であり、給湯用分岐チーズ200から分岐された水平管201にエルボ接手202を介して垂直管203が接続されている。
【0020】
なお、垂直管203の末端側には、シングルレバー混合栓4が接続されており、このシングルレバー混合栓4には、給湯用の垂直管203と、給水配管10の垂直管10cとが接続され、レバーを左右に動かすことにより水と湯の吐出量の割合を調整して水温を変えたり、上下に動かして水量を調整したり、出し止めを行えるようになっている。
【0021】
(ライニング材)
本実施形態で使用されるライニング材は、給湯用の既設配管を更生させる工法において使用しやすいように配合されている。このライニング材は、エポキシ樹脂を主成分とする主材と、変性脂環式ポリアミンを主成分とする硬化剤とを、100:50の重量比で配合し、配合構造粘性比を6として、可使時間が最高発熱到達時間の70%となるように配合されている。
【0022】
また、本実施形態では、主材の23℃の環境下における粘度が70000mPa・sであり、前記硬化剤の23℃の環境下における粘度が65000mPa・sであり、主材と硬化剤とを配合した際の粘度が,23℃の環境下において60000mPa・sとなるように調整されている。このライニング材は、例えば缶回転型真空脱泡混合器などによって混合され、可使時間が90分であり、塗膜硬化時間が10時間となるように調整されている。さらに、硬化後の引っ張り強さが30~35mPaであり、硬化後の最大荷重時における伸び率が5%であることが好ましい。
【0023】
具体的な給水用のライニング材の性状一覧を表1に示し、給湯用のライニング材の性状一覧を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0024】
(更生工法の手順)
以上説明した戸建住宅1の既設配管に対して本発明の更生方法を実施することができる。
図2及び
図7に本実施形態に係る更生工法の手順、及びこの施工の対象となる給湯管の断面を示す。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて適宜ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0025】
本実施形態に係る更生工法は、戸建住宅1内に敷設された給湯用の既設配管(ここでは給湯管20)を更生させる工法であり、
図2に示すように、先ず既設配管の調査・診断(検査工程)を行う(S101)。
【0026】
この検査工程では、既設配管である給湯管20内部表面の状態を検査し、主に既設配管内部表面の腐食の状態(腐食の有無・態様)を判断する(S102)。この既設配管内部表面の腐食状態としては、所謂孔食(銅管等に生じる局部腐食の一種)が挙げられ、この孔食の態様は、大きく1型、2型及びマウンドレス型に分類される。1型孔食は、開口が広いすり鉢状の形を成し、孔食上部を覆うような塩基性炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2)の緑青を主な腐食生成物とし、2型孔食は、開口が狭い蛸壺状の形を成し、孔食上部を覆うような塩基性硫酸銅(CuSO4・3Cu(OH)2)の緑青を主な腐食生成物とする。また、マウンドレス孔食は、針で突いたような穴が形成され、孔食開口周囲にガラス状の緑青を主な腐食生成物とする。
【0027】
このステップS102において、腐食の態様が上述した1型若しくは2型孔食である場合には(S102における「1型・2型孔食」)、既設配管内を洗浄するとともに、乾燥させる工程(乾燥工程)を行う(S103)。この時点では、例えば、
図7(a)に示すように、給湯管20の内面には錆こぶ、スケール等の汚れが付着している。洗浄方法としては、給湯管12の全内部を、ライニングの前工程として予め適宜の研掃手段により錆こぶ、スケール等の汚れを除去し、送風するなどして内部を乾燥させて清掃した状態にする。
【0028】
そして、既設配管の研磨(研磨工程)を行う(S104)。具体的には、
図7(b)に示すように、給湯管20内において、乾燥圧縮空気により研磨材54aを移動させて管内面を研磨する。このとき、本実施形態では、研磨材54aを噴射する前記乾燥圧縮空気の風速は100m毎秒とする。
【0029】
詳述すると、この研磨工程では、例えば
図1に示した既設給湯管20a~d全ての蛇口を取り外して、それらの末端4a~4dに対して給気ホース56をそれぞれ接続する。この給気ホース56は空気分配器50の各送気口50a~50dに接続されている。この空気分配器50には供給口50eに対して空気除湿機53を介して空気圧縮機52が接続されており、空気圧縮機52から送出された圧縮空気は空気除湿機53で乾燥された後、空気分配器50で各給気ホース56に分配される。空気分配器50の各送気口50a~dは開閉バルブにより開閉可能となっており、開閉バルブを選択的に開閉することにより任意の既設配管やその他の設備に対する給気を制御できるようになっている。そして、研磨に際しては、研磨材54aを各既設給湯管の末端から投入し、空気分配器50から乾燥圧縮空気を噴射させて研磨材54aを末端から他方の末端に向けて移動させる。
【0030】
図3に示した例では、既設給湯管20aの末端4aに接続された給気ホース56の中途に研磨材投入機54を接続し、末端4aに対して研磨材54aを圧縮空気とともに吹き込めるようになっている。この既設給湯管20aの末端4aに吹き込まれた研磨材54aは、圧縮空気に押されて既設給湯配管20a内を給湯器3側へ移動していき、給湯器3側の末端4eに接続された回収ホース58を介して、研磨された錆等とともに集塵機51に回収される。このとき、他の既設給湯配管20b~20dについては、これらに接続された空気分配器50の送気口50b~dのバルブを閉めて空気が漏れないようにする。これにより末端4aに吹き込まれた空気は、抵抗の低い給湯器側末端4eに移動され、集塵機51によって集塵されることとなる。
【0031】
その後、研磨材投入機を接続する給気ホース56を、給湯管20b、20c……と順次繋ぎ替えていくとともに、開放する送気口50b、50c……と替えていくことにより、全ての既設給湯管について研磨を行う。
【0032】
また、本実施形態では、この研磨材54aによる研磨は、研磨材54aの投入側を替えて、各既設給湯管に対し両端から2回ずつ行う。すなわち2回目の研磨は、
図4に示すように、給湯器側から研磨材54aを投入する。具体的には、分岐チーズ200の給湯器側末端4eに接続された給気ホース56の中途に研磨材投入機54を接続し、給湯器側末端4eに対して研磨材54aを圧縮空気とともに吹き込むようにする。この分岐チーズ200の給湯器側末端4eに吹き込まれた研磨材54aは、圧縮空気に押されて既設給湯配管20a内を末端4a側へ移動していき、末端4aに接続された回収ホース58を介して、研磨された錆等とともに集塵機51に回収される。このとき、前述と同様に、他の既設給湯配管20b~20dについては、これらに接続された空気分配器50の送気口50b~dのバルブを閉めて空気が漏れないようにする。これにより給湯器側末端4eに吹き込まれた空気は、抵抗の低い末端4aに移動されて集塵機51によって集塵されることとなる。
【0033】
その後、集塵機51を接続する給気ホース56を、給湯管20b、20c……と順次繋ぎ替えていくとともに、開放する送気口50b、50c……と替えていくことにより、全ての既設給湯管について研磨を行う。
【0034】
このような研磨では、研磨材54aとして畦砂3号を使用して空気速度100m/sec とし、管内部の下地に生じた緑青が完全に除去されるようにする。なお、既設の給湯管の研磨では、下表を参考にして、配管の下地を形成する銅の金属光沢が見えるまで研磨し、研磨後は十分にエアーブローにより乾燥させる。
【表3】
【0035】
一方、 腐食が無いか、或いは腐食の態様が上述したマウンドレス型孔食である場合には(S102における「腐食無し・マウンドレス」)、乾燥工程(S103)における洗浄として、オゾンを用いた殺菌洗浄を実施する(S105)とともに、研磨工程(S104)を省略する。
【0036】
オゾン殺菌洗浄では、既設配管0に対して、水酸化鉄と有機物を酸化分解する効力を有する「オゾン水」と圧縮空気をインパルス状に送り剥離除去するインパルスエアーを利用し、配管内に形成された汚れ・スライムを安全・確実に減少・除去させる。オゾン水に含まれる「オゾン」は大気中に含まれる酸素を電気処理して発生する物質であり、殺菌・酸化力を有しながら、分解時間が早いため、全く残留性のない安全な物質である。このオゾン殺菌洗浄により、オゾンの酸化力でスライム汚れを分解、殺菌洗浄し、給水、給湯管内に酸化被膜をつくりスライム、汚れの付着を防止できる。酸化皮膜や緑青により既設配管0内が補強されているため、研磨工程(S104)はここでは実施しない。このオゾン殺菌洗浄の後、乾燥処理を施し、塗料によるライニング(塗装工程)に移行する。
【0037】
そして、研磨工程(S104)又はオゾン殺菌洗浄(S105)の後、塗料によるライニング(塗装工程)を行う(S106)。具体的には、
図7(c)に示すように、既設配管内を両端からその対象位置を進行させつつ、所定の粘性を有する塗料55aを圧縮空気により噴射させて塗装する。このとき、本実施形態では、塗料55aを噴射する圧縮空気の風速は60m毎秒とするとともに、塗料の比重を1.25とし、塗料55aの最小膜厚が300μm以上になるように塗装する。このライニング材は、例えば缶回転型真空脱泡混合器などによってライニング施工直前に混合される。
【0038】
このライニング施工前の脱泡処理としては、機械的なミキサーや超音波等により攪拌したり、ポンプ等で減圧して脱泡、脱気したりする他、消泡剤や脱泡剤を用いて塗料中に泡が発生するのを防いだり、発生した泡の破泡を促したりものも含まれる。なお、本実施形態では、缶回転型真空脱泡混合器を用いて、主剤と混合剤とを混練してライニング材を生成する際に、真空(減圧)と運動(混合)が同時に行うことによって、短時間で混合脱泡を行う。缶回転型真空脱泡混合器は、主剤及び混合剤が充填された真空タンク内を減圧しながら混合運動で攪拌し、缶底材料が上昇し気泡が減圧力にて表面でふくれ、さらに混合の円運動により気泡を破壊する。
【0039】
なお、本実施形態におけるライニングでは、全ての配管に対して双方向から交互に塗装を行う。例えば
図1に示す配管のような場合には、例えば
図5に示すように、先ず給湯用分岐チーズ200側を介してキッチンAの末端4a側から浴室Bの末端4bまでの塗装を行う。このときキッチンAの垂直管における末端4aから浴室Bの末端4bの中間地点までの配管の長さと予定塗膜厚さとを予め計算し、それに見合った量の塗料55aを給湯用分岐チーズ200及び垂直管203の末端の両側から投入する。そして、その塗料55aを押し延ばすために圧縮空気を噴射させつつ噴射ノズル5を導入し、所要の送気圧により塗料55aを押し延ばして塗膜を形成する。このようにキッチンA側からの塗装が終了した後に、例えば
図6に示すような浴室Bの末端4bから他の末端(チーズ200末端4e)への塗装が行われる。この塗装においても所要の送気圧により塗料55aを押し延ばして塗膜を形成する。
【0040】
このライニング工程について詳述すると、例えば
図5及び
図6に示したように、既設給湯管20a~d全ての末端4a~4dに対して給気ホース56をそれぞれ接続する。この給気ホース56は空気分配器50の各送気口50a~50dに接続されている。この空気分配器50の供給口50eに対して空気除湿機53を介して空気圧縮機52が接続されており、空気圧縮機52から送出された圧縮空気は空気除湿機53で乾燥された後、空気分配器50で各給気ホース56に分配される。空気分配器50の各送気口50a~dは開閉バルブにより開閉可能となっており、開閉バルブを選択的に開閉することにより任意の既設配管やその他の設備に対する給気を制御できるようになっている。そして、ライニングに際しては、各既設給湯管20a~dの末端4a~4dを順次選択して給気ホース56を接続して塗料を投入するとともに、各既設給湯管20a~d若しくはチーズ200の末端4a~4eを順次選択して回収容器57を接続し、空気分配器50から乾燥圧縮空気を噴射させて塗料を末端から他方の末端に向けて押し広げる。
【0041】
図5に示した例では、キッチンAの既設給湯管20aの末端4aに対して容器55を用いてライニング材を注入する。この既設給湯管20aの末端4aに注入されたライニング材は、圧縮空気に押されて給湯管20内を給湯器3側へ押し広げられながら移動していき、給湯器3側の末端4eに接続された回収容器57に吐出されて回収される。このとき、他の既設給湯配管20b~20dについては、これらに接続された空気分配器50の送気口50b~dのバルブを閉めて空気が漏れないようにする。これにより末端4aに吹き込まれた空気は、抵抗の低い給湯器側末端4eに移動され、回収容器57によって回収されることとなる。
【0042】
その後、ライニング材を注入する既設給湯管を、給湯管20b、20c……と順次替えていくとともに、開放する送気口50b、50c……と替えていくことにより、全ての既設給湯管についてライニングを行う。
【0043】
また、上述したように、本実施形態に係るライニングは、ライニング材の注入側を替えて、各既設給湯管に対してそれぞれ行う。すなわち各ライニングは、
図6に示すように、給湯器側からライニング材を注入する。具体的には、分岐チーズ200の給湯器側末端4eに接続された回収ホース58に回収容器57を接続し、末端4cに対してライニング材を圧縮空気とともに吹き込むようにする。この末端4bに吹き込まれたライニング材は、圧縮空気に押されて既設給湯配管20b内を末端4e側へ移動していき、末端4eに接続された回収ホース58を介して回収容器57に回収される。このとき、前述と同様に、他の既設給湯配管20b~20dについては、これらに接続された空気分配器50の送気口50b~dのバルブを閉めて空気が漏れないようにする。これにより末端4eに吹き込まれた空気は、抵抗の低い給湯器側末端4aに移動されてライニング材が回収容器57によって回収されることとなる。
【0044】
その後、ライニング材を注入する既設給湯管を給湯管20b、20c……と順次替えていくとともに、開放する送気口50b、50c……と替えていくことにより、全ての既設給湯管についてライニングを行う。
【0045】
なお、これらの給湯用のライニングでは、給湯用の塗料粘度が、給水塗料の1/2と低いため、空気流量を給水管の風量より落として、下表に示すように、60m/sec相当で行う。
【表4】
【0046】
このライニングの後、ライニング状況の検査を行うとともに、養生・機材の撤去を行う(S107及びS108)。ここでは、上述したステップS104における塗装する工程の後に少なくとも45分間、40℃から所定時間毎に段階的に温度を高くして通湯させることによって硬化養生する。本実施形態においてこの硬化養生する工程では、40℃から60℃まで15分~20分ごとに10℃ずつ温度を高くして湯を流通させる。なお、この硬化養生における通湯の最高温度は給湯器の性能に応じて定めることができ、一般的には60℃で十分であるが、給湯器の性能が例えば70℃であれば、さらに15分間70℃の通湯を行う。このとき、ライニング後の管端を養生テープで密閉し、所定の時間(例えば一晩程度)、そのまま硬化養生することが好ましい。なお、場合に応じて可搬型給湯器を接続し、下表に示す手順で最終的に70℃で硬化養生するようにしてもよい。
【表5】
【0047】
その後、復旧作業後に通水を行う(S109)。具体的には、このとき、温水硬化養生後、室温まで冷やしたのち、塗膜の硬化度がH 硬度以上になっていることを確認する。合格であれば当該配管を復旧する。
【0048】
なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0049】
(作用・効果)
以上説明した通り、本実施形態では、既設配管内を両端からその対象位置を進行させつつ、乾燥圧縮空気により研磨材54aを噴射させて研磨するとともに、塗料を圧縮空気により噴射させて塗装する。この際、研磨剤を噴射する乾燥圧縮空気の風速は100m毎秒とするとともに、塗料を噴射する圧縮空気の風速は60m毎秒とすることにより、給湯用配管の径と、塗料の耐熱性及び追従性(粘性)に適した圧力で、研磨及び塗装を行うことができる。
【0050】
さらには、塗料の比重を1.25とし、塗料の最小膜厚が300μm以上になるように塗装することにより、小径で熱収縮性のある給湯管にも適切なライニングを施すことができる。これらによって、給湯設備用の既設配管について、配管やライニングに用いられる塗料の特性に応じ、耐熱性及び熱収縮に対する追従性を考慮した施工を実現することができる。
【0051】
特に、本実施形態では、既設配管の検査結果が、腐食が無いか、或いは腐食の態様が上述したマウンドレス型孔食である場合に、乾燥工程における洗浄として、オゾンを用いた殺菌洗浄を実施するとともに、研磨工程を省略する。これにより、オゾンの酸化力でスライム汚れを分解、殺菌洗浄し、給水、給湯管内に酸化被膜をつくりスライム、汚れの付着を防止できる。このとき、研磨工程(S104)は実施しないため、酸化皮膜や緑青により既設配管0内が補強されている状態を維持することができる。
【0052】
なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0053】
A…キッチン
B…浴室
C…洗面所
D…外部取付位置
E…給湯器取付位置
1…戸建住宅
2…既設給湯配管
2a…鉛直管
3…給湯器
4…シングルレバー混合栓
4a~4d…給湯管末端
4e…給湯器側末端
5…噴射ノズル
10…給水配管
10c…垂直管
11…給水管
12…給湯管
20…給湯管
20a~d…既設給湯管
50…空気分配器
50a~50d…送気口
50e…供給口
51…集塵機
52…空気圧縮機
53…空気除湿機
54…研磨材投入機
54a…研磨材
55…容器
56…給気ホース
57…回収容器
58…回収ホース
100,200…分岐チーズ
201…水平管
202…エルボ接手
203…垂直管