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特開2022-87827粉体樹脂組成物、粉体塗料組成物及び塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087827
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】粉体樹脂組成物、粉体塗料組成物及び塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20220606BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D5/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192784
(22)【出願日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2020199637
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 敦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政義
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038GA03
4J038GA07
4J038MA02
4J038NA23
4J038NA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粉砕性及び耐ブロッキング性に優れ、得られる塗膜の光沢性に優れる粉体塗料組成物を得ることができる粉体樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)とを含有する粉体樹脂組成物であって、前記(A)がエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)を必須構成単量体とする共重合体であり、前記(B)が水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格を有するモノカルボン酸(B1)、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格を有するモノカルボン酸(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)及び前記(b)と脂肪族アミン(y)とのアミド化物(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である粉体樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)とを含有する粉体樹脂組成物であって、前記共重合体(A)がエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)を必須構成単量体とする共重合体であり、前記共重合体(A)のガラス転移点(Tg)が0~50℃であり、前記化合物(B)が水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(B1)、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)及び前記(b)と脂肪族アミン(y)とのアミド化物(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、前記化合物(B)の融点(Mp)が50~160℃であり、前記共重合体(A)の溶解性パラメータ(SP)と前記化合物(B)の溶解性パラメータ(SP)との差の絶対値が0.4~2.0(cal/cm1/2であり、前記共重合体(A)のみのガラス転移点(Tg)(℃)と、粉体樹脂組成物のガラス転移点(Tg)(℃)が下記の関係式(1)を満たし、粉体樹脂組成物中の前記共重合体(A)と前記化合物(B)との重量比(A/B)が50/50~99/1である粉体樹脂組成物。
Tg1-Tg2≦15 (1)
【請求項2】
前記共重合体(A)の数平均分子量が500~6,000である請求項1に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項3】
前記共重合体(A)の溶解性パラメータSPが9.0~12.0(cal/cm1/2である請求項1又は2に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(B)の分子式量又は数平均分子量が200~2,000である請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物(B)が水酸基を有する化合物である請求項1~4のいずれか1項に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物(B)の溶解性パラメータSPが9.0~12.0(cal/cm1/2である請求項1~5のいずれか1項に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項7】
前記共重合体(A)を構成する単量体中の前記(メタ)アクリレート(a1)と前記(メタ)アクリレート(a2)との重量比[(a1)/(a2)]が10/90~99/1である請求項1~6のいずれか1項に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項8】
前記共重合体(A)のエポキシ基濃度が1.5~7.0モル/Kgである請求項1~7のいずれか1項に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項9】
前記共重合体(A)のガラス転移点(Tg)と前記化合物(B)の融点(Mp)との差(Mp-Tg)が10~160℃である請求項1~8のいずれか1項に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項10】
前記化合物(B)が、硬化ヒマシ油、12-ヒドロキシステアリン酸、N,N’-エチレンビス(ヒドロキシステアリン酸アミド)及びN,N’-ヘキサメチレンビス(ヒドロキシステアリン酸アミド)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1~9のいずれか1項に記載の粉体樹脂組成物。
【請求項11】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)と、カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体(a6)を必須構成単量体とする重合体(C1)及び多価カルボン酸(無水物)(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリカルボン酸(無水物)(C)とを含有する粉体塗料組成物であって、前記共重合体(A)がエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)を必須構成単量体とする共重合体であり、前記共重合体(A)のガラス転移点(Tg)が0~50℃であり、前記化合物(B)が水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(B1)、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)及び前記(b)と脂肪族アミン(y)とのアミド化物(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、前記化合物(B)の融点(Mp)が50~160℃であり、前記共重合体(A)の溶解性パラメータ(SP)と前記化合物(B)の溶解性パラメータ(SP)との差の絶対値が0.4~2.0(cal/cm1/2であり、前記共重合体(A)のみのガラス転移点(Tg)(℃)と、粉体樹脂組成物のガラス転移点(Tg)(℃)が下記の関係式(1)を満たし、粉体樹脂組成物中の前記共重合体(A)と前記化合物(B)との重量比(A/B)が50/50~99/1である粉体塗料組成物。
Tg1-Tg2≦15 (1)
【請求項12】
請求項11に記載の粉体塗料組成物を硬化してなる塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体樹脂組成物、粉体塗料組成物及び塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体塗料は、溶剤型塗料と比較して無公害であること、塗料回収が容易でありリサイクル可能であること等の多くの特徴を有していることから、幅広い分野で使用されている。
また、粉体塗料では、塗膜外観のより優れたものが望まれており、グリシジル基含有アクリル系コポリマーと多価カルボン酸やカルボキシ基を有するポリエステルからなる組成物が提案されている(たとえば、特許文献1及び2)。
しかしながら、上記技術では、塗膜外観は優れるものの、グリシジル基含有アクリル系コポリマーはガラス転移点が低いため、粉砕しにくく、また、粉砕した粒子がブロッキングしてしまう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-321641号公報
【特許文献2】特許第5829401号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、粉砕性及び耐ブロッキング性に優れ、得られる塗膜の光沢性に優れる粉体塗料組成物を得ることができる粉体樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)とを含有する粉体樹脂組成物であって、前記共重合体(A)がエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)を必須構成単量体とする共重合体であり、前記共重合体(A)のガラス転移点(Tg)が0~50℃であり、前記化合物(B)が水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(B1)、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)及び前記(b)と脂肪族アミン(y)とのアミド化物(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、前記化合物(B)の融点(Mp)が50~160℃であり、前記共重合体(A)の溶解性パラメータ(SP)と前記化合物(B)の溶解性パラメータ(SP)との差の絶対値が0.4~2.0(cal/cm1/2であり、前記共重合体(A)のみのガラス転移点(Tg)(℃)と、粉体樹脂組成物のガラス転移点(Tg)(℃)が下記の関係式(1)を満たし、粉体樹脂組成物中の前記共重合体(A)と前記化合物(B)との重量比(A/B)が50/50~99/1である粉体樹脂組成物;前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、前記化合物(B)と、カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体(a6)を必須構成単量体とする重合体(C1)及び多価カルボン酸(無水物)(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリカルボン酸(無水物)(C)とを含有する粉体塗料組成物;前記粉体塗料組成物を硬化してなる塗膜である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粉体樹脂組成物を含む粉体塗料組成物は、粉砕性及び耐ブロッキング性に優れ、得られる塗膜の光沢性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の粉体樹脂組成物は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)とを含有する粉体樹脂組成物であって、前記共重合体(A)がエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)を必須構成単量体とする共重合体であり、前記共重合体(A)のガラス転移点(Tg)が0~50℃であり、前記化合物(B)が水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(B1)、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)及び前記(b)と脂肪族アミン(y)とのアミド化物(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、前記化合物(B)の融点(Mp)が50~160℃であり、前記共重合体(A)の溶解性パラメータ(SP)と前記化合物(B)の溶解性パラメータ(SP)との差の絶対値が0.4~2.0(cal/cm1/2であり、前記共重合体(A)のみのガラス転移点(Tg)(℃)と、粉体樹脂組成物のガラス転移点(Tg)(℃)が下記の関係式(1)を満たし、粉体樹脂組成物中の前記共重合体(A)と前記化合物(B)との重量比(A/B)が50/50~99/1である粉体樹脂組成物である。
Tg1-Tg2≦15 (1)
【0008】
<エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)>
本発明において、(メタ)アクリル共重合体(A)は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)を必須構成単量体とする共重合体である。
(a1)及び(a2)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は「メタクリル及び/又はアクリル」を、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート及び/又はアクリレート」を意味する。
なお、共重合体(A)においては、構成単量体として(メタ)アクリル酸等カルボキシル基を有する単量体を用いないことが好ましい。
【0009】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)としては、炭素数6~30であり、エポキシ基を1つ及び(メタ)アクリロイル基を1つ有するものが好ましく挙げられ、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
(a1)としては、耐ブロッキング性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましく、更に好ましくはグリシジルメタクリレートである。
【0010】
アルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)としては、直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a21)、アルキル基に分岐構造を有する分岐型アルキル(メタ)アクリレート(a22)等が挙げられる。
(a21)としては、例えば、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、n-ノナデシル(メタ)アクリレート、n-イコシル(メタ)アクリレート、n-ヘンイコシル(メタ)アクリレート、n-ドコシル(メタ)アクリレート、n-トリコシル(メタ)アクリレート、n-テトラコシル(メタ)アクリレート,n-ペンタコシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサコシル(メタ)アクリレート,n-ヘプタコシル(メタ)アクリレート、n-オクタコシル(メタ)アクリレート、n-ノナコシル(メタ)アクリレート、n-トリアコンチル(メタ)アクリレート、n-ヘントリアコンチル(メタ)アクリレート、n-ドトリアコンチル(メタ)アクリレート及びn-トリトリアコンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0011】
(a22)としては、例えば、2-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、2-メチルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-メチルペンタデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘプタデシル(メタ)アクリレート、2-メチルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-メチルノナデシル(メタ)アクリレート、2-メチルイコシル(メタ)アクリレート、3-メチルテトラデシル(メタ)アクリレート、4-メチルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-エチルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルドデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0012】
(a22)としては、例えば、公知の方法で製造される炭素数14~33の分岐脂肪族アルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって製造されるものであってもよい。
前記分岐脂肪族アルコールとしては、例えば、オキソ法により、エチレン、プロピレン、ブチレン、又はその他同種のもののオリゴマー化によって調製されたポリオレフィンのヒドロホルミル化により合成されたアルコールが含まれ、複数の分枝位置を有する分枝状一級アルコールが挙げられる。また、例えば、ゲルベ反応による脂肪族アルコールの2量化によって得られるゲルベアルコールが挙げられる。
【0013】
(a2)としては、平滑性と耐ブロッキング性と光沢性とのバランスの観点から、(a21)が好ましく、更に好ましくは(a21)のうち炭素数18~33のアルキル基を有するものである。
【0014】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)において、(A)を構成する単量体における(a1)と(a2)との重量比[(a1)/(a2)]は、平滑性及び耐ブロッキング性の観点から、10/90~99/1が好ましく、更に好ましくは30/70~97/3である。
【0015】
本発明において、共重合体(A)は、前記(a1)、(a2)以外に、さらにスチレン系単量体(a3)、アルキル基の炭素数が1~13のアルキル(メタ)アクリレート(a4)及びその他の単量体(a5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を構成単量体としてもよい。
(a3)~(a5)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
スチレン系単量体(a3)としては、エチレン性不飽和結合を1つ有するものが含まれ、スチレン、置換基の炭素数が1~7のハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン等)、炭素数8~15の水酸基含有スチレン化合物(例えば、ヒドロキシスチレン等)等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
アルキル基の炭素数が1~13のアルキル(メタ)アクリレート(a4)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、炭素数3~13の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(例えば、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート等)、炭素数3~13のアルキル基に分岐構造を有する分岐型アルキル(メタアクリレート(例えば、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、sec-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、tert-ペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、2-エチルオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルデシル(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
(a4)としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)のガラス転移点を調整する観点から、アルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレート(a4)が好ましく、更に好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレートである。
【0018】
その他の単量体(a5)としては、前記(a1)~(a4)以外の単量体であり、窒素原子含有単量体(a51)、水酸基含有単量体(a52)等が挙げられ、後述の単量体(a6)は含まない。
【0019】
窒素原子含有単量体(a51)としては、アクリルアミド系単量体(a511)及びアミノ基含有単量体(a512)等が挙げられる。
アクリルアミド系単量体(a511)としては、(メタ)アクリロイル基を1つ有するものが含まれ、例えば、(メタ)アクリルアミド、炭素数5~10のアミノ基含有(メタ)アクリルアミド{例えば、N-アミノアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリルアミド(例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-アミノエチル(メタ)アクリルアミド等)等が挙げられる。
アミノ基含有単量体(a512)としては、(a511)以外の(メタ)アクリロイル基を1つ有する炭素数5~15のアミノ基含有(メタ)アクリレートが含まれ、例えば、アミノアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリレート(例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート等)、アルキル(炭素数1~6)アミノアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリレート(例えば、t-ブチルアミノエチルメタクリレート等)、ジアルキル(アルキルの炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
【0020】
水酸基含有単量体(a52)としては、(メタ)アクリロイル基を1つ有するものが含まれ、例えば、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(オキシアルキレン基の炭素数2~4)鎖を有する水酸基含有単量体(例えば、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
【0021】
共重合体(A)において、構成単量体中のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)の重量割合は、共重合体(A)の重量を基準として、得られる塗膜の平滑性と強度の観点から、28~71重量%が好ましく、更に好ましくは35~65重量%である。
共重合体(A)において、構成単量体中のアルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)の重量割合は、共重合体(A)の重量を基準として、得られる塗膜の平滑性及び強度並びに耐ブロッキング性の観点から、0.1~54重量%が好ましく、更に好ましくは2~30重量%である。
共重合体(A)において、構成単量体中の(a1)と(a2)との合計重量割合は、共重合体(A)の重量を基準として、得られる塗膜の平滑性及び強度並びに耐ブロッキング性の観点から、28~100重量%が好ましく、更に好ましくは40~80重量%である。
共重合体(A)において、構成単量体中のスチレン系単量体(a3)の重量割合は、共重合体(A)の重量を基準として、得られる塗膜の強度及び耐ブロッキング性の観点から、72重量%以下が好ましく、更に好ましくは20~60重量%である。
共重合体(A)において、構成単量体中のスチレン系単量体(a3)の重量割合は、構成単量体中の(a1)と(a2)との合計重量を基準として、得られる塗膜の強度及び耐ブロッキング性の観点から、250重量%以下が好ましく、更に好ましくは25~150重量%である。
共重合体(A)において、構成単量体中の炭素数1~13のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a4)の重量割合は、共重合体(A)の重量を基準として、得られる塗膜の強度及び耐ブロッキング性の観点から、72重量%以下が好ましく、更に好ましくは20~60重量%である。
共重合体(A)において、構成単量体中の炭素数1~13のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a4)の重量割合は、構成単量体中の(a1)と(a2)との合計重量を基準として、得られる塗膜の強度及び耐ブロッキング性の観点から、0~250重量%が好ましく、更に好ましくは25~150重量%である。
共重合体(A)において、構成単量体中のその他の単量体(a5)の重量割合は、共重合体(A)の重量を基準として、得られる塗膜の強度及び耐ブロッキング性の観点から、10重量%以下が好ましく、更に好ましくは5重量%以下である。
【0022】
共重合体(A)は、(a1)及び(a2)を含む単量体成分を公知の方法で重合して得ることができ、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の一般的な重合法が挙げられる。これらの内で好ましいのは溶液重合である。
溶液重合としては、例えば溶剤中に単量体((a1)及び(a2)並びに必要により(a3)~(a5))と重合開始剤とを滴下して重合する方法が挙げられる。
重合温度は、エポキシ基保護の観点から、好ましくは70~230℃、さらに好ましくは80~180℃である。
【0023】
共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、粉砕性、耐ブロッキング性及び塗膜の光沢性と平滑性との両立の観点から、好ましくは500~6,000、更に好ましくは1,000~4,000である。
共重合体(A)のMnは、重合温度などの種々の重合条件によって調整することができる。Mnを小さくする方法として、具体的には、重合温度を上げる、重合濃度を下げる、滴下重合の場合は単量体及び開始剤の滴下速度を遅くする等が挙げられる。また、Mnを大きくする方法としては、重合温度を下げる、重合濃度を上げる、滴下速度を早くする等が挙げられる。
【0024】
共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、得られる塗膜の平滑性及び光沢性の観点から、1~4が好ましく、更に好ましくは1~3である。
なお、Mn及び分子量分布(Mw/Mn)は共重合体(A)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、それを試料溶液として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置 : 東ソー(株)製 HLC-8120
カラム : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量: 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン
[TSKstandard POLYSTYRENE]12点(分子量:500,1050,2800,5970,9100,18100,37900,96400,190000,355000,1090000,2890000)
【0025】
共重合体(A)のエポキシ基濃度(モル/kg)は、共重合体(A)の重量を基準として、得られる塗膜の光沢性及び強度の観点から、1.5~7.0モル/kgが好ましく、更に好ましくは2.5~4.8モル/kg、特に好ましくは3.0~4.5モル/kgである。
なお、エポキシ基濃度は、JIS K 7236に準拠した方法により測定したエポキシ当量(g/eq)から、下記式により求めることができる。
エポキシ基濃度(モル/kg)=1000/エポキシ当量
【0026】
共重合体(A)のガラス転移点(Tg)は、0~50℃であり、15~50℃が好ましく、更に好ましくは20~50℃である。共重合体(A)のガラス転移点(Tg)が0℃未満では粉砕性及び耐ブロッキング性が劣る傾向があり、50℃を超えると得られる塗膜の平滑性、光沢性及び強度が劣る傾向がある。
なお、本発明において共重合体(A)のガラス転移点は、セイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定した、中間点温度(midpoint tenperature)[Tm(Tg)]とする。また、共重合体(A)のガラス転移点が2個以上存在する場合は、最も吸熱量が大きい吸熱ピークから算出した温度をガラス転移点Tgとする。
なお、共重合体(A)のガラス転移点は、例えば、構成単量体としてホモポリマーのガラス転移点が低い単量体を多く用いれば低くすることができ、ホモポリマーのガラス転移点が高い単量体を多く用いれば高くすることができる。また、共重合体(A)の分子量を小さくするとガラス転移点を低くすることができ、分子量を大きくするとガラス転移点を高くすることができる。
【0027】
共重合体(A)の溶解度パラメータ(以下においてSP値と略記する)SP(cal/cm1/2は、得られる塗膜の光沢性の観点から、9.0~12.0が好ましく、更に好ましくは9.5~11.5である。
【0028】
SP値とは、solubility parameter(溶解性パラメーター)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す値であり、Robert F Fedorsらの著によるPolymer engineering and science第14巻、151~154ページに記載されている方法で計算した25℃における値である。
共重合体(A)のSP値は、各単量体のSP値を用いて、共重合体(A)を構成する単量体中における固形分重量比を元に平均値を算出することによって求めることができる。
また、共重合体(A)のSP値は、用いる単量体の種類及び量により調整可能である。具体的には、アルキル基の炭素数の長いものを多く用いれば小さくすることができ、アルキル基の炭素数が短いものや、極性基等の割合が多いものを多く用いれば大きくすることができる。
【0029】
<化合物(B)>
本発明において、化合物(B)は、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(B1)、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)及び前記(b)と脂肪族アミン(y)とのアミド化物(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、化合物(B)の融点(Mp)は50~160℃である。
(B)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、化合物(B)が炭素数13~32の鎖状炭化水素骨格を有するので、アルキル基の炭素数が14~33の共重合体(A)との親和性が高く、溶融混練時には相溶するものの、化合物(B)の融点が上記範囲であることで、冷却時に共重合体(A)がガラス状態となるよりも先に化合物(B)が結晶化し、化合物(B)の結晶が共重合体(A)中で適度に分散された状態で結晶化することで、粉砕性が高くなると推察される。また、粉砕する際、化合物(B)がきっかけとなり割れて粒子状になり、粒子表面には化合物(B)が存在しやすく、融点の高い化合物(B)が粒子表面に適度に存在することで、粉体の耐ブロッキング性が良好になるものと推察される。
(B)としては、共重合体(A)中での分散性の観点から、水酸基を有しているものが好ましい。水酸基を有していると、化合物(B)の(A)中での分散性がよく、得られる粉体樹脂組成物及び粉体塗料組成物の粒度分布がシャープになりやすい傾向がある。
【0030】
水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(B1)としては、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい炭素数14~33の鎖状脂肪族モノカルボン酸が含まれ、例えば、炭素数14~33の飽和直鎖脂肪族モノカルボン酸(例えば、n-テトラデカン酸(融点:54℃)、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸(融点:63℃)、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸(融点:70℃)、n-ノナデカン酸、n-エイコサン酸(融点:76℃)、n-ヘンエイコサン酸、n-ドコサン酸(融点:82℃)、n-トリコサン酸、n-テトラコサン酸(融点:86℃)、n-ペンタコサン酸、n-ヘキサコサン酸、n-ヘプタコサン酸、n-オクタコサン酸、n-ノナコサン酸、n-トリアコンタン酸(融点:92℃)、n-ヘントリアコンタン酸、n-ドトリアコンタン酸、n-トリトリアコンタン酸等)、炭素数14~33の飽和分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸(例えば、2-メチルオクタデカン酸(融点:57℃)等)、炭素数14~33の不飽和直鎖脂肪族モノカルボン酸(例えば、trans-9-trans-11-オクタデカジエン酸(融点:53℃)等)、水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数14~33の鎖状脂肪族モノカルボン酸{例えば、炭素数14~33の飽和鎖状脂肪族ヒドロキシ酸(例えば、3-ヒドロキシテトラデカン酸(融点:80℃)、12-ヒドロキシステアリン酸(融点:75℃)、2-ヒドロキシテトラコサン酸(融点:103℃)等)等}等が挙げられる。
(B1)としては、共重合体(A)中での分散性の観点から、炭素数14~33の飽和直鎖脂肪族モノカルボン酸及び飽和鎖状脂肪族ヒドロキシ酸が好ましく、更に好ましくは炭素数14~33の飽和鎖状脂肪族ヒドロキシ酸である。
【0031】
水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)において、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(b)としては、前記(B1)に加えて、融点が50℃未満の水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい炭素数14~33の鎖状脂肪族モノカルボン酸(b2)が含まれる。
(b2)としては、例えば、炭素数14~33の不飽和直鎖脂肪族モノカルボン酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルシン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等)、炭素数14~33の不飽和分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸、水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数14~33の鎖状脂肪族モノカルボン酸{炭素数14~33の不飽和鎖状脂肪族ヒドロキシ酸(例えば、リシノール酸、11-ヒドロキシ-8-オクタデセン酸、11-ヒドロキシ-12-オクタデセン酸、9,10,11-トリヒドロキシ-12-オクタデセン酸、11-ヒドロキシ-8-ヘプタデセン酸等)等}等が挙げられる。
これらのうち、共重合体(A)中での分散性の観点から、炭素数14~33の鎖状脂肪族ヒドロキシ酸が好ましい。
【0032】
(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)において、脂肪族アルコール(x)としては、炭素数1~10の脂肪族モノアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール等)、炭素数2~10の脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコール等)、炭素数3~10の脂肪族多価アルコール{例えば、3価アルコール(例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等)、炭素数3~10の4~8価アルコール(例えば、ペンタエリスリト―ル、ソルビト―ル及びショ糖等)等}等が挙げられる。
これらのうち、共重合体(A)中での分散性の観点から、炭素数3~10の脂肪族3価アルコールが好ましく、さらに好ましくはグリセリンである。
【0033】
(B2)として、具体的には、ドコサン酸メチル(融点:55℃)、ドコサン酸エチル(融点:50℃)、水添ナタネ種子油{エルシン酸が少ないナタネ種子油(オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等を主成分として含有する脂肪酸とグリセリンとのエステル化物)の水素添加物、融点:67℃)、エルシン酸の多いナタネ種子油(エルシン酸、オレイン酸及びリノール酸等を主成分として含有する脂肪酸とグリセリンとのエステル化物)の水素添加物、融点:61℃}、水添パーム油(パルミチン酸、オレイン酸及びリノール酸等を主成分として含有する脂肪酸とグリセリンとのエステル化物の水素添加物、融点:57℃)、水添大豆油(リノール酸、オレイン酸及びパルミチン酸等を主成分として含有する脂肪酸とグリセリンとのエステル化物の水素添加物、融点:68℃)、炭素数14~33の鎖状脂肪族ヒドロキシ酸を含むモノカルボン酸成分と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物{硬化ヒマシ油(ヒマシ油(リシノール酸を87~91重量%含有する脂肪酸とグリセリンとのエステル化物)の水素添加物、融点:約85℃)等}等が挙げられる。
(B2)としては、共重合体(A)中での分散性の観点から、好ましくは炭素数14~33の鎖状脂肪族ヒドロキシ酸を含むモノカルボン酸成分と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物であり、更に好ましくは硬化ヒマシ油である。
【0034】
(b)と脂肪族アミン(y)とのアミド化物(B3)において、脂肪族アミン(y)としては、炭素数1~10のものが含まれ、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
(B3)として、具体的には、N,N’-メチレンビス(ステアリン酸アミド)(融点:142℃)、N,N’-エチレンビス(ステアリン酸アミド)(融点:145℃)、N,N-エチレンビス(オレイン酸アミド)(融点:118℃)、N,N’-エチレンビス(ヒドロキシステアリン酸アミド)(融点:145℃)、N,N’-エチレンビス(ベヘン酸アミド)(融点:142℃)、N,N’-ヘキサメチレンビス(ステアリン酸アミド)(融点:140℃)、N,N’-ヘキサメチレンビス(ヒドロキシステアリン酸アミド)(融点:135℃)等が挙げられる。
(B3)としては、共重合体(A)中での分散性の観点から、好ましくは炭素数14~33の鎖状脂肪族ヒドロキシ酸と脂肪族アミン(y)とのアミド化物であり、さらに好ましくはN,N’-エチレンビス(ヒドロキシステアリン酸アミド)及びN,N’-ヘキサメチレンビス(ヒドロキシステアリン酸アミド)であり、次に更に好ましくはN,N’-エチレンビス(ヒドロキシステアリン酸アミド)である。
【0035】
化合物(B)の分子式量又は数平均分子量は、得られる塗膜の平滑性の観点から、200~2,000が好ましく、更に好ましくは200~1,500である。
【0036】
化合物(B)の融点(Mp)は、50~160℃であり、55~155℃が好ましく、更に好ましくは60~150℃である。
融点Mpが50℃未満であると、共重合体(A)中に適度に分散せず粉砕性および耐ブロッキング性が不十分であり、160℃を超えると、塗膜形成時に完全に溶融せず塗膜の平滑性が悪化する。
なお、化合物(B)の融点は、JIS K7121(2012)に記載の融解温度の測定に準拠して測定される。
【0037】
化合物(B)の溶解性パラメータSP((cal/cm1/2)は、共重合体(A)中への分散性の観点から、9.0~12.0が好ましく、更に好ましくは9.5~11.5である。
【0038】
化合物(B)の水酸基価は、得られる塗膜の平滑性の観点から、0~400mgKOH/gが好ましく、さらに好ましくは100~200mgKOH/gである。
なお、化合物(B)の水酸基価は、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0039】
<粉体樹脂組成物>
本発明の粉体樹脂組成物は、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)とを含有する。
前記共重合体(A)の溶解性パラメータSPと前記化合物(B)の溶解性パラメータSPとの差の絶対値((cal/cm1/2)は、0.4~2.0(cal/cm1/2であり、0.4~1.8が好ましく、更に好ましくは0.4~1.5、粒度分布をシャープにする観点から特に好ましくは0.6~1.0である。
上記値が0.4未満であると、共重合体(A)中に適度に分散せず粉砕性および耐ブロッキング性が不十分であり、2.0を超えると、溶融混練時および塗膜形成時に相溶せず粉砕性、耐ブロッキング性、および塗膜の光沢性が不十分である。
【0040】
本発明において、前記共重合体(A)のみのガラス転移点(Tg)(℃)と、粉体樹脂組成物のガラス転移点(Tg)(℃)が下記の関係式(1)を満たす。
共重合体(A)のガラス転移点が2個以上存在する場合は、最も吸熱量が大きい吸熱ピークから算出した温度をガラス転移点(Tg)とし、同様に粉体樹脂組成物のガラス転移点が2個以上存在する場合は、最も吸熱量が大きい吸熱ピークから算出した温度をガラス転移点(Tg)とする。
Tg1-Tg2≦15 (1)
なお、共重合体(A)のガラス転移点(Tg)(℃)と(Tg)(℃)との関係を上記関係式(1)を満たすものとする方法としては、共重合体(A)と化合物(B)とを相溶しにくくする方法等が挙げられ、例えば、共重合体(A)の溶解性パラメータSPと前記化合物(B)の溶解性パラメータSPとの差の絶対値を上記範囲とする方法等が挙げられる。
【0041】
粉体樹脂組成物のガラス転移点は、セイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定した、中間点温度(midpoint tenperature)[Tm(Tg)]とする。
【0042】
前記共重合体(A)のガラス転移点(Tg)と前記化合物(B)の融点(Mp)との差(Mp-Tg)は、粉砕性及び耐ブロッキング性の観点から、10~160℃が好ましく、更に好ましくは30~140℃である。
【0043】
粉体樹脂組成物中の前記共重合体(A)と前記化合物(B)との重量比(A/B)は、50/50~99/1であり、55/45~95/5が好ましく、更に好ましくは60/40~90/10である。
重量比(A/B)が50/50未満では、塗膜の平滑性及び塗膜強度が不十分であり、99/1を超えると粉砕性、耐ブロッキング性及び塗膜の光沢性が不十分である。
【0044】
本発明の粉体樹脂組成物は、前記共重合体(A)と前記化合物(B)とを含有することにより、粉砕性に優れ、さらに得られた粒子は耐ブロッキング性に優れることから、粉体塗料用の主剤となる粉体塗料主剤組成物として好適に用いることができる。
【0045】
<粉体塗料組成物>
本発明の粉体塗料組成物は、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、前記化合物(B)と、カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体(a6)を必須構成単量体とする重合体(C1)及び多価カルボン酸(無水物)(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種であるポリカルボン酸(無水物)(C)とを含有する。
すなわち、本発明の粉体塗料組成物は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)と、カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体(a6)を必須構成単量体とする重合体(C1)及び多価カルボン酸(無水物)(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリカルボン酸(無水物)(C)とを含有する粉体塗料組成物であって、前記共重合体(A)がエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2)を必須構成単量体とする共重合体であり、前記共重合体(A)のガラス転移点(Tg)が0~50℃であり、前記化合物(B)が水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(B1)、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい鎖状炭化水素骨格(炭素数13~32)を有するモノカルボン酸(b)と脂肪族アルコール(x)とのエステル化物(B2)及び前記(b)と脂肪族アミン(y)とのアミド化物(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、前記化合物(B)の融点(Mp)が50~160℃であり、前記共重合体(A)の溶解性パラメータ(SP)と前記化合物(B)の溶解性パラメータ(SP)との差の絶対値が0.4~2.0(cal/cm1/2であり、前記共重合体(A)のみのガラス転移点(Tg)(℃)と、粉体樹脂組成物のガラス転移点(Tg)(℃)が下記の関係式(1)を満たし、粉体樹脂組成物中の前記共重合体(A)と前記化合物(B)との重量比(A/B)が50/50~99/1である粉体塗料組成物である。
Tg1-Tg2≦15 (1)
なお、カルボン酸(無水物)はカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物を意味する。
ポリカルボン酸(無水物)(C)を含有することで、(C)中のカルボキシル基と共重合体(A)中のエポキシ基とが反応して硬化し、塗膜を得ることができる。
【0046】
重合体(C1)としては、カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体(a6)を必須構成単量体とし、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1)を構成単量体としない重合体である。
単量体(a6)としては、炭素数3~15の不飽和モノカルボン酸{例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等};炭素数3~30の不飽和ジカルボン酸(無水物)[例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸及びメサコン酸等];及び炭素数3~10の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~10)エステル(例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノデシルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル及びシトラコン酸モノデシルエステル等)等が挙げられる。
これらのうち、(C1)の製造のしやすさ及びエポキシ基との反応性の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0047】
(C1)は、単量体(a6)以外に、上記(a2)~(a5)を構成単量体として含んでもよい。(A)との相溶性の観点から、(a2)を構成単量体として含むことが好ましい。
(C1)において、構成単量体中の(a6)の重量割合は、得られる塗膜の平滑性及び強度の観点から、10~80重量%が好ましく、更に好ましくは20~70重量%である。
構成単量体中の(a2)の重量割合は、得られる塗膜の平滑性及び耐ブロッキング性の観点から、0.1~50重量%が好ましく、更に好ましくは0.1~30重量%である。
構成単量体中の(a3)~(a5)の重量割合は、得られる塗膜の強度の観点から、50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは40重量%以下である。
【0048】
(C1)の数平均分子量は、得られる塗膜の平滑性、光沢性及び強度の観点から、200~20,000が好ましく、更に好ましくは500~10,000である。
(C1)のカルボキシル基濃度は、得られる塗膜の平滑性、光沢性及び強度観点から、0.5~5.0モル/Kgが好ましく、更に好ましくは1.0~5.0モル/Kgである。
【0049】
多価カルボン酸(無水物)(C2)としては、炭素数2~20の飽和脂肪族多価(2~8価又はそれ以上)カルボン酸{2価カルボン酸(例えば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸等)、3価以上カルボン酸(例えば、1,2,3-プロパントリカルボン酸等)等}、炭素数3~30の不飽和脂肪族多価(2~8価又はそれ以上)カルボン酸(例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等)、炭素数8~20の芳香族多価(2~6価)カルボン酸(例えば、フタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸等)、およびこれらの無水物等が挙げられる。
【0050】
上記(C)のうち、得られる塗膜の平滑性および光沢性の観点から、好ましいのは(C2)であり、更に好ましくは炭素数2~20の飽和脂肪族2価カルボン酸である。
また、(C)のカルボキシル基濃度は、得られる塗膜の光沢性の観点から、好ましくは0.3~20モル/kg、更に好ましくは0.4~15モル/kg、特に好ましくは0.5~10モル/kgである。なお、(C)がカルボン酸無水物基を有する場合、その1個は2個のカルボン酸基(カルボキシル基)としてカウントする。
【0051】
粉体塗料組成物中の前記共重合体(A)の含有量は、得られる塗膜の強度の観点から、(A)、(B)及び(C)の合計重量を基準として、20~90重量%が好ましく、更に好ましくは25~80重量%、特に好ましくは35~65重量%である。
粉体塗料組成物中の前記化合物(B)の含有量は、得られる塗膜の平滑性及び強度の観点から、(A)、(B)及び(C)の合計重量を基準として、1~60重量%が好ましく、更に好ましくは1~50重量%である。
粉体塗料組成物中の前記ポリカルボン酸(無水物)(C)の含有量は、得られる塗膜の強度の観点から、(A)、(B)及び(C)の合計重量を基準として、20~90重量%が好ましく、更に好ましくは25~80重量%である。
粉体塗料組成物中の前記共重合体(A)と前記化合物(B)との重量比(A/B)は、50/50~99/1であり、55/45~95/5が好ましく、更に好ましくは60/40~90/10である。
重量比(A/B)が50/50未満では、得られる塗膜の強度が不十分であり、99/1を超えると粉砕性及び耐ブロッキング性が不十分である。
粉体塗料組成物中の前記共重合体(A)のエポキシ基のモル数とポリカルボン酸(無水物)(C)のカルボキシル基のモル数との比(エポキシ基/カルボキシル基)は、得られる塗膜の強度の観点から、70/30~30/70が好ましく、更に好ましくは55/45~35/65である。
なお、酸無水物基1モルはカルボキシル基2モルとして算出する。
【0052】
本発明の粉体樹脂組成物及び粉体塗料組成物中には、その他の添加剤(D)を含有してもよい。その他の添加剤(D)としては、硬化触媒、硬化剤成分、着色剤としての着色顔料、実質的に着色力を有さない体質顔料、無機充填剤、レベリング剤、消泡剤等の一般的な粉体塗料組成物に使用され得る既知の添加剤が挙げられる。
【0053】
硬化触媒は、粉体塗料組成物のゲルタイムを調整することができるものであり、例えば、160℃におけるゲルタイムを50秒以上100秒以下とすることができる。
なお、粉体塗料組成物のゲルタイムは、JIS K 5600-9-1(所定温度での熱硬化性粉体塗料のゲルタイム測定方法)に準じて測定した、160℃での値である。
硬化触媒としては、イミダゾール化合物、イミダゾール化合物の金属塩複合体、イミダゾリン化合物、イミダゾリン化合物の金属塩複合体、3級ホスフィン化合物、4級ホスホニウム塩化合物及び4級アンモニウム塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化触媒が挙げられる。
【0054】
イミダゾール化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール等のアルキルイミダゾール、1-(2-カルバミルエチル)イミダゾール等のカルバミルアルキル置換イミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のシアノアルキル置換イミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等の芳香族置換イミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール等のアルケニル置換イミダゾール、1-アリル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のアリル置換イミダゾール及びポリイミダゾール等を挙げることができるが、好ましくは、アルキルイミダゾール、芳香族置換イミダゾールが挙げられる。また、市販製品を用いてもよい。市販製品としては、例えば、キュアゾールシリーズ(四国化成工業(株)製)である2MZ-H(2-メチルイミダゾール)、C11Z(2-ウンデシルイミダゾール)、C17Z(2-ヘプタデシルイミダゾール)、1.2DMZ(1,2-ジメチルイミダゾール)、2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール)、2P4MZ(2-フェニル-4-メチルイミダゾール)、1B2MZ(1-ベンジル-2-メチルイミダゾール)、1B2PZ(1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)等が挙げられる。
【0055】
イミダゾリン化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾリン、2-ウンデシルイミダゾリン、2-ヘプタデシルイミダゾリン等が挙げられる。また、市販製品を用いてもよい。市販製品としては、例えば、キュアゾール2PZL-T(四国化成工業(株)製;2-フェニルイミダゾリン)等が挙げられる。
【0056】
金属塩複合体としては、前記イミダゾール化合物又は前記イミダゾリン化合物を金属塩によって複合させたものを例示することができる。係る金属塩としては、特に限定されないが、例えば、銅、ニッケル、コバルト、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、銀、クロム、マンガン、錫、鉄、チタン、アンチモン、アルミニウム等の金属と、クロライド、ブロマイド、フルオライド、サルフェート、ニトレート、アセテート、マレート、ステアレート、ベンゾエート、メタクリレート等の塩とからなるもの等が挙げられる。
【0057】
3級ホスフィン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等が挙げられる。
【0058】
4級ホスホニウム塩化合物としては、特に限定されないが、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0059】
4級アンモニウム塩化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0060】
硬化触媒としては、低温での硬化性の観点から、イミダゾール化合物及びイミダゾリン化合物のうち少なくとも1種であることが好ましい。
【0061】
粉体塗料組成物中の硬化触媒の量は、粉体塗料組成物の重量を基準として、得られる塗膜の平滑性の観点から、20重量%以下が好ましく、更に好ましくは15重量%以下である。
【0062】
本発明の粉体塗料組成物中には、硬化剤成分を含有してもよい。
硬化剤成分としては、アミン硬化剤成分、酸硬化剤成分、ブロックイソシアネート硬化剤成分、フェノール樹脂硬化剤成分等が挙げられる。
【0063】
アミン硬化剤成分としては、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、ケチミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、ポリアミド及びβ-ヒドロキシアルキルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン硬化剤成分が挙げられる。
【0064】
酸硬化剤成分としては、脂肪族多価カルボン酸(炭素数10~30のものが含まれ、例えば、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等)、多価カルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
【0065】
ブロックイソシアネート硬化剤成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物のヌレート化合物を、ε-カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム等のブロック剤でブロック化して得られるブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。
【0066】
粉体塗料組成物中の硬化剤成分の含有量は、ポリカルボン酸(無水物)(C)の重量を基準として、得られる塗膜の強度の観点から、10重量%以下が好ましく、更に好ましくは0.5~5重量%である。
【0067】
着色顔料としては、一般的に粉体塗料組成物に使用される既知の無機系顔料と有機系顔料を用いることができる。
有彩色の無機系顔料としては、べんがら、クロムチタンイエロー、黄色酸化鉄等が、無彩色の無機系顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック等が、それぞれ挙げられる。
有彩色の有機系顔料としては、アゾ系、ペリレン系、縮合アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサン系等の顔料が挙げられ、具体的には、アゾ系顔料としてはレーキレッド、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントレッド等、ニトロ系顔料としてはナフトールイエロー等、ニトロソ系顔料としてはピグメントグリーンB、ナフトールグリーン等、フタロシアニン系顔料としてはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等、アントラキノン系顔料としてはインダスレンブルー、ジアントラキノニルレッド等、キナクリドン系顔料としてはキナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット等、ジオキサン系顔料としてはカルバゾールジオキサジンバイオレット等が、それぞれ挙げられる。
粉体塗料組成物における着色剤の含有量は、その種類により異なるが、得られる塗膜の平滑性及び強度の観点から、粉体塗料組成物の(A)及び(C)の合計100重量部に対して、無機系顔料では、好ましくは0.05重量部以上60重量部以下、有機系顔料では好ましくは0.05重量部以上20重量部以下である。
【0068】
体質顔料は、粉体樹脂組成物及び粉体塗料組成物の比重の調整に有効であり、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0069】
無機充填剤は、腐食因子の遮断に寄与して耐薬品性を向上させ得る。無機充填剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ等の体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等の防錆顔料等を挙げることができる。
無機充填剤の量は、得られる塗膜の平滑性及び強度の観点から、粉体塗料組成物の(A)及び(C)の合計100重量部に対して、好ましくは5重量部以上60重量部以下であり、更に好ましくは5重量部以上50重量部以下であり、次に更に好ましくは5重量部以上35重量部以下である。
【0070】
レベリング剤としては、例えば、Mnが100~1,000のポリオレフィン樹脂[ポリエチレン、ポリプロピレン等]、オレフィン-(メタ)アクリル酸共重合体[エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等]、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
レベリング剤の重量は、耐ブロッキング性、平滑性、光沢性及び強度の観点から、粉体塗料組成物の(A)及び(C)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1~6重量部であり、さらに好ましくは0.5~3重量部である。
【0071】
消泡剤としては、ミネラルオイル、シリコーンオイル、ベンゾイン等が挙げられる。
消泡剤の重量は、耐ブロッキング性並びに得られる塗膜の平滑性、光沢性及び強度の観点から、粉体樹脂組成物の(A)及び(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1~6重量部であり、さらに好ましくは0.5~3重量部である。
消泡剤の重量は、耐ブロッキング性並びに得られる塗膜の平滑性、光沢性及び強度の観点から、粉体塗料組成物の(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1~6重量部であり、さらに好ましくは0.5~3重量部である。
【0072】
本発明の粉体樹脂組成物及び粉体塗料組成物の製造方法としては、例えば以下の(1)~(2)の方法が挙げられる。
(1)前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)とを溶融混練し、冷却し、粉砕することにより粉体樹脂組成物を得る。さらに、粉体樹脂組成物と後述のポリカルボン酸(無水物)(C)と、必要に応じて1種以上の添加剤(D)を予備混合し、溶融混練し、冷却し、粉砕し、分級を行うことで粉体塗料組成物を得る。
(2)前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)と、化合物(B)と、ポリカルボン酸(無水物)(C)と、必要に応じて1種以上の添加剤(D)を予備混合し、溶融混練し、冷却し、粉砕し、分級を行うことで粉体塗料組成物を得る。
予備混合工程は、各種原料を混合機に仕込み予備的に混合する工程であり、混合機としては、例えばスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
溶融混練工程は、予備的に混合された原料を加熱下で混合し、共重合体(A)中に化合物(B)やポリカルボン酸(無水物)(C)を分散する工程である。溶融混練機としては、例えばエクルトルーダー、ブスコニーダー等が挙げられる。
溶融混練時の温度は、混練性及び混練時の反応を防ぐ観点から、好ましくは80℃以上140℃以下であり、更に好ましくは90℃以上130℃以下である。
冷却工程は溶融混練された樹脂組成物を加圧ロールにてシート状に形成し、冷却固化する工程である。
粉砕工程は、塗料の用途に応じて最適な粒度分布に微粉砕する工程である。粉砕機としては、例えばアトマイザー、ターボミル、ジェットミル等が挙げられる。
粒度分布調整のための分級工程は、粗大粒子および/または微小粒子を取り除くために行われる。分級には、空気分級機、振動フルイ及び超音波フルイ等を使用することができる。
なお、上記(1)及び(2)のうち、共重合体(A)の耐ブロッキング性の観点から、(1)の製造方法が好ましい。
【0073】
粉体塗料組成物の体積平均粒径は、得られる塗膜の平滑性、光沢性及び作業性の観点から、好ましくは5~60μm、さらに好ましくは15~40μmである。なお、実施例における該体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法を利用した粒度分布測定器[商品名「マイクロトラックMT3000II 粒度分析計」、日機装(株)製]を用いて測定した値である(単位:μm)。
【0074】
<塗膜>
本発明の塗膜は、前記本発明の粉体塗料組成物が硬化したものである。
具体的には、粉体塗料組成物を、被塗物に塗布した後、加熱等により硬化させ、塗膜(硬化塗膜)を形成することができる。
【0075】
本発明の粉体塗料組成物を塗装する被塗物は特に限定されない。被塗装物としては、特に限定されず、具体的には、鉄板、鋼板、アルミニウム板、セラミック板等及びそれらを表面処理したもの等が挙げられる。被塗装物への塗膜形成は、本発明の粉体塗料組成物からなる1層であっても良好な保護機能を有するが、下塗り塗膜の上に、本発明の粉体塗料組成物を上塗り塗料として塗布してもよい。下塗り塗膜を形成する下塗り塗料としては、電着塗料やプライマー等の公知のものを用いることができる。更に、これらを複雑な形状に加工した部材等が挙げられる。
塗布方法としては、スプレー塗装、静電粉体塗装、流動浸漬塗装する方法等が挙げられ、塗装効率の観点から静電粉体塗装が好ましい。
【0076】
本発明の粉体塗料組成物を塗装する際の塗装膜厚は、塗膜のまだら感及び透けを防止し、また塗膜表面又は内部の泡の発生を防止する観点から、好ましくは10μm以上150μm以下であり、更に好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0077】
硬化温度及び時間は、用いる硬化剤の種類及び量により異なるが、温度は、塗膜硬化性及び工業上の観点から、好ましくは100℃以上230℃以下であり、更に好ましくは140℃以上200℃以下である。
硬化時間は、硬化温度に応じて適宜設定することができるが、例えば、上記硬化温度であれば、硬化時間は、塗膜硬化性及び工業上の観点から、好ましくは6分~60分、更に好ましくは8~30分、特に好ましくは10~20分である。
【0078】
本発明の粉体樹脂組成物を含む粉体塗料組成物は、粉砕性に優れ、得られた粒子は耐ブロッキング性に優れ、得られる塗膜は光沢性に優れ、さらに平滑性及び強度にも優れるので、本発明の粉体塗料組成物を用いれば、被塗物上に、本発明の粉体塗料組成物を塗装し、加熱して硬化塗膜を形成することにより、光沢性並びに平滑性及び強度に優れる塗膜を有する建築材料、電気製品、事務用機器、自動車の車体、外板及び部品等を製造できる。
【実施例0079】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部を示す。
【0080】
<製造例1~7、比較製造例1~3>
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(A)の製造
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた耐圧反応容器に、キシレン66.7部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、加熱還流後容器を密閉状態にし、150℃まで昇温した後、表1の配合組成(部)にしたがって、各単量体、重合開始剤を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに同温度で2時間反応を継続した。 さらに、減圧下、脱溶剤をして、共重合体(A-1)~(A-7)及び(比A-1)~(比A-3)を得た。得られた共重合体のSP値(SP)、Mn、エポキシ基濃度、Tgを表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
なお、製造例で使用した原料と、その記号は以下のとおり。
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(a1):
(a1-1):グリシジルメタクリレート
【0083】
アルキル基の炭素数が14~33のアルキル(メタ)アクリレート(a2):
(a21-1):ヘキサデシルメタクリレート
(a21-2):オクタデシルメタクリレート
(a22-1):2-デシル-1-テトラデシルメタクリレート
(a22-2):2-テトラデシル-1-オクタデシルメタクリレート
スチレン系単量体(a3):
(a3-1):スチレン
アルキル基の炭素数が1~13のアルキル(メタ)アクリレート(a4):
(a4-1):メチルメタクリレート
(a4-2):ブチルアクリレート
【0084】
<製造例8>
重合体(C1-1)の製造
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、イソプロパノール66.7部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、加熱還流後容器を密閉状態にし、100℃まで昇温し加熱還流した後、メタクリル酸25部、オクタデシルメタクリレート25部、メタクリル酸メチル50部、およびアゾビスイソブチロニトリル0.5部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに同温度で2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤をして、重合体(C1-1)(Mn4,000、カルボキシル基濃度2.9モル/Kg)を得た。
【0085】
<実施例1~17、比較例1~6>
表2の配合組成(部)にしたがって、共重合体(A)と、化合物(B)とを仕込み、溶融混練機コニーダー[ブス社製]を用いて120℃で溶融混練し、樹脂組成物(X-1)~(X-17)及び比較用の樹脂組成物(比X-1)~(比X-6)を得た。
得られた樹脂組成物(X-1)~(X-17)及び(比X-1)~(比X-6)を以下の評価方法(1)~(2)にしたがって評価した。結果を表2に示す。
【0086】
<評価方法>
(1)粉砕性
各樹脂組成物(X又は比X)を粗粉砕した後、パワーミル[(株)昭和化学機械工作所製]、目開き4.0mmヘリンボーンスクリーンを用いて粉砕した。得られた粉体樹脂組成物(Y-1)~(Y-17)及び(比Y-1)~(比Y-6)を、8.6メッシュ[目開き2000μm]、16メッシュ[目開き1000μm]、30メッシュ[目開き500μm]、60メッシュ[目開き250μm]のタイラー標準ふるいを上から順に重ね、得られた粉砕物を、最上段から投入し、ふるい振とう機ロータップ型[(株)飯田製作所製]を用いて10分間分級した。
各メッシュ上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各メッシュ上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が累積重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、累積重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、重量平均粒子径[50%粒径:D50]として、以下の評価基準で評価した。
【0087】
<評価基準>
◎:1000μm未満
○:1000μm以上、1500μm未満
△:1500μm以上、2000μm未満
×:2000μm以上
(2)塗料の耐ブロッキング性
上記(1)で得られた分級前の粉体樹脂組成物(Y-1)~(Y-17)及び(比Y-1)~(比Y-6)をインキュベータにて30℃で2週間保管したものについて、振動ふるいを用いてふるい通過試験を行った。4.7メッシュ[目開き4.00mm]を通過した割合から、以下の評価基準で耐ブロッキング性を評価した。
<評価基準>
◎:95%以上
○:90%以上、95%未満
△:80%以上、90%未満
×:80%未満
【0088】
【表2】
【0089】
<実施例18~34、比較例7~12>
表3の配合組成(部)にしたがって、粉体樹脂組成物(Y-1)~(Y-17)又は(比Y-1)~(比Y-6)と、ポリカルボン酸(無水物)(C)と、添加剤(D)とを仕込み、溶融混練機コニーダー[ブス社製]を用いて120℃で溶融混練し、樹脂組成物(Q-1)~(Q-17)及び比較用の樹脂組成物(比Q-1)~(比Q-6)を得た。
得られた樹脂組成物(Q-1)~(Q-17)及び比較用の樹脂組成物(比Q-1)~(比Q-6)を以下の評価方法(3)~(7)にしたがって評価した。結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
なお、実施例で使用した原料と、その記号は以下のとおり。
化合物(B)
(B-1)水添ヒマシ油ワックス:[商品名「ヒマシ硬化油」、伊藤製油(株)製、SP値:10.1、融点:85℃]
(B-2)12-ヒドロキシステアリン酸:[商品名「12-ヒドロキシステアリン酸」、伊藤製油(株)製、SP値:10.3、融点:75℃]
(B-3)3-ヒドロキシテトラデカン酸:[商品名「3-ヒドロキシテトラデカン酸」、東京化成工業(株)製、SP値:10.8、融点:80℃]
(B-4)テトラデカン酸:[商品名「ミリスチン酸」、東京化成工業(株)製、SP値:9.3、融点:54℃]
(B-5)ステアリン酸:[商品名「STEARIC ACID 98%」、ミヨシ油脂(株)製、SP値:9.1、融点:70℃]
(B-6)n-トリアコンタン酸:[商品名「メリシン酸」、東京化成工業(株)製、SP値:8.9、融点:92℃]
(B-7)N,N’-エチレンビス(ヒドロキシステアリン酸アミド):[商品名「スリパックスH」、三菱ケミカル(株)製、SP値:10.8、融点:145℃]
(B-8)N,N’-エチレンビス(ステアリン酸アミド):[商品名「スリパックスE」、三菱ケミカル(株)製、SP値:9.6、融点:145℃]
(比B-1)N,N’-エチレンビス(カプリン酸アミド):「商品名「スリパックスC10」、三菱ケミカル(株)製、SP値:10.3、融点:161℃]
(比B-2)n-ラウリン酸:[商品名「ラウリン酸」、東京化成工業(株)製、SP値:9.3、融点:43℃]

ポリカルボン酸(無水物)(C)
(C1-1):製造例8で得た重合体
(C2-1):ドデカン二酸[商品名「1、12-ドデカン二酸」、宇部興産(株)製、カルボキシル基濃度:8.68モル/Kg]

添加剤(D)
顔料:
(D-1):二酸化チタン
[商品名「タイペークCR-90」、石原産業(株)製]
レベリング剤:
(D-2):レべリング剤(アクリル重合体)
[商品名「アクロナール4F」、BASF社製]
消泡剤:
(D-3):ベンゾイン
【0092】
<評価方法>
(3)粉砕性
各樹脂組成物(Q又は比Q)を粗粉砕した後、粉砕機アトマイザー[不二パウダル(株)製]を用いて粉砕した。32メッシュ[目開き500μm]、60メッシュ[目開き250μm]、150メッシュ[目開き105μm]、325メッシュ[目開き44μm]、400メッシュ[目開き37μm]のタイラー標準ふるいを上から順に重ね、得られた粉砕物を、最上段から投入し、ふるい振とう機ロータップ型[(株)飯田製作所製]を用いて10分間分級した。
各メッシュ上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各メッシュ上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が累積重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、(3-1)重量平均粒子径[50%粒径:D50](累積重量分率が50重量%に対応する粒子径)と、(3-2)粒度分布のシャープさ[D90(90%粒径)/D10(10%粒経)](累積重量分率が90重量%に対応する粒子径/累積重量分率が10重量%に対応する粒子径)を求め、以下の評価基準で評価した。
【0093】
<評価基準>
(3-1)D50
◎:70μm未満
○:70μm以上、75μm未満
△:75μm以上、85μm未満
×:85μm以上
<評価基準>
(3-2)D90/D10
◎:2.2以上、2.5未満
○:2.5以上、2.8未満
△:2.8以上、3.1未満
×:3.1以上
【0094】
(4)塗料の耐ブロッキング性
上記(3)の粉砕機アトマイザー[不二パウダル(株)製]を用いて粉砕した後の粉体のうち、325メッシュのタイラー標準ふるい[目開き44μm]を通過したものを気流分級機DS-2型[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて分級し、微小粒子を除去することによって、粉体塗料組成物(Z-1)~(Z-17)及び比較用の粉体塗料組成物(比Z-1)~(比Z-6)を得た。
粉体塗料組成物(Z-1)~(Z-17)及び(比Z-1)~(比Z-6)をインキュベータにて30℃で2週間保管したものについて、150メッシュのタイラー標準ふるい上に投入し、振動ふるいを用いてふるい通過試験を行った。150メッシュを通過した割合から、以下の評価基準で耐ブロッキング性を評価した。
<評価基準>
◎:95%以上
○:90%以上、95%未満
△:80%以上、90%未満
×:80%未満
【0095】
(5)塗膜の平滑性(目視)
試験鋼板[JIS G3141に規定する0.5mm×80mm×150mmの冷間圧 延鋼板(SPCC-SD)]に、得られた粉体塗料組成物(Z-1)~(Z-17)及び(比Z-1)~(比Z-6)をコロナ帯電型塗装ガン[「GX116」、パーカーライジング(株)製]を用いて、硬化膜厚60μmとなるように塗装量を調節して塗装した。
次に、塗装された被塗装物を、160℃、20分間焼付けて、塗膜付きの試験綱板を得た。この試験綱板の塗膜の平滑性について、以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:全体が均一で平滑である
○:ごく僅かなゆず肌が見られるが、全体としてほぼ均一である
△:一部にゆず肌が見られる
×:目立ったへこみが見られる
【0096】
(6)塗膜の光沢性(60度鏡面光沢度)
(5)で得た塗膜について、JIS K5600-4-7に規定する方法で、入射角と受光角とがそれぞれ60度のとき反射率(鏡面光沢度)(%)を測定した。数値が大きいほど光沢性に優れていることを意味する。
【0097】
(7)塗膜の強度(エリクセン試験[耐カッピング性試験])
(5)で得た塗膜について、JIS K5600-5-2に規定する方法で、塗膜の割れ、塗膜の鋼板からのはがれが始まる押し込み器の深さ(mm)を測定した。数値が大きいほど塗膜の強度が優れていることを意味する。
【0098】
表2の結果から、本発明の粉体樹脂組成物は、粉砕性及び耐ブロッキング性に優れることがわかる。
また、表3の結果から、本発明の粉体塗料組成物は、比較のものと比べて、粉砕性及び耐ブロッキング性に優れており、さらに得られる塗膜の平滑性、光沢性及び強度が優れていることがわかる。一方、アルキル(メタ)アクリレート(a2)を構成単量体として含まない共重合体を用いた比較例7の粉体塗料組成物は、それ以外((A)のTg、用いる化合物(B)、重量比率(A)/(B)等)はほぼ同じ実施例19の粉体塗料組成物と比較して、塗膜の平滑性及び光沢性が劣ることが分かる。また、共重合体(比A)のTgが下限範囲外である比較例8の粉体塗料組成物は、それ以外(用いる化合物(B)、重量比率(A)/(B))はほぼ同じ実施例18の粉体樹脂組成物と比較して、粉砕性及び耐ブロッキング性が劣り、得られる塗膜の強度も劣ることが分かる。また、共重合体(比A)のTgが上限範囲外である比較例9の粉体塗料組成物は、それ以外((A)のSP値、用いる化合物(B)、重量比率(A)/(B))はほぼ同じ実施例18の粉体樹脂組成物と比較して、塗膜の平滑性、光沢性及び強度が劣ることが分かる。
また、化合物(B)を用いていない比較例10、化合物(B)の融点が上限を超える比較例11、化合物(B)の融点が下限を下回る比較例12は、粉砕性、耐ブロッキング性、塗膜の平滑性、光沢性及び強度を両立することができないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の粉体樹脂組成物及び粉体塗料組成物は、粉砕性及び耐ブロッキング性に優れ、本発明の粉体塗料組成物を用いて得られる塗膜は光沢性に優れ、さらに平滑性及び強度にも優れるので、特に、土木、建築物や家電製品等の塗装用途に好適に用いることができ、極めて有用である。