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  • 特開-電気自動車用の耐久性潤滑流体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087840
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】電気自動車用の耐久性潤滑流体
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20220606BHJP
   C10M 135/36 20060101ALI20220606BHJP
   C10M 137/08 20060101ALI20220606BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20220606BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220606BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M135/36
C10M137/08
C10N40:00 D
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195051
(22)【出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】17/108,596
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】アタヌ・アドヴァリウ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・クリーブランド
(72)【発明者】
【氏名】ユンワン・クァク
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB23A
4H104BB24A
4H104BG19C
4H104BH05C
4H104DA06A
4H104LA20
4H104PA39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、電気モータ用またはハイブリッド電気モータ用の潤滑流体としてエージング後も低い伝導率を維持する耐久性潤滑流体を提供する。
【解決手段】潤滑粘度の油、チアジアゾールまたはその誘導体、およびリン酸のアミン塩を含み、少なくとも2.3の、硫黄およびリンと、窒素との重量比((S+P)/N)を有する、耐久性潤滑組成物とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物であって、
潤滑粘度の基油と、
少なくとも約0.7重量パーセントのチアジアゾールまたはその誘導体と、
前記耐久性潤滑組成物に少なくとも約100ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、を含み、
少なくとも2.3の、硫黄およびリンと、窒素との重量比((S+P)/N)を有し、
少なくとも約150ppmのリンおよび少なくとも約2000ppmの硫黄、ならびに
約50,000pS/m以下の導電率耐久性を有する、電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項2】
前記チアジアゾールが、モノヒドロカルビルチオール置換チアジアゾール、ビスヒドロカルビルチオール置換チアジアゾール、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項3】
前記チアジアゾールが、1,3,4-チアジアゾールまたはその誘導体である、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項4】
前記チアジアゾールが、前記耐久性潤滑組成物に少なくとも約2000ppmの硫黄を提供する、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項5】
前記耐久性潤滑組成物が、最大約3500ppmの全硫黄、および最大約300ppmの全リンを含み、かつ/または前記潤滑組成物が、約1重量パーセント以下の前記チアジアゾールまたはその誘導体を含む、請求項4に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項6】
前記チアジアゾールまたはその誘導体が、式Iの構造を有する1種以上の化合物を含み、
【化1】
式中、
各Rが、独立して、水素または硫黄であり、
各Rが、独立して、アルキル基であり、
nが、0または1の整数であり、Rが、水素である場合、隣接のR部分の前記整数nは、0であり、Rが、硫黄である場合、前記隣接のR部分の前記nは、1であり、
少なくとも1つのRが、硫黄である、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項7】
リン酸エステルの前記アミン塩が、モノアルキルリン酸エステルおよび/またはジアルキルリン酸エステルのうちの1種以上を含み、その前記アルキル基が、直鎖状または分岐鎖状であり得る、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項8】
リン酸エステルの前記アミン塩が、式IIで表され、
【化2】
式中、
およびRが、独立して、水素、または直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状ヒドロカルビル基であり得、
mが、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、
、R、R、およびRが、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり得、R~Rのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基である、請求項7に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項9】
およびRが、独立して、C3~C10アルキル基であり得、かつ/またはR、R、R、およびRのうちの少なくとも1つが、C10~C20アルキル基である、請求項8に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項10】
、R、R、およびRのうちの2つが、独立して、C10~C20アルキル基である、請求項9に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項11】
リン酸エステルの前記アミン塩が、前記耐久性潤滑組成物中の前記全リンの約40~約90重量%を提供する、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項12】
前記チアジアゾールまたはその誘導体が、前記耐久性潤滑組成物中の前記全硫黄の少なくとも約99重量%を提供する、請求項11に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項13】
前記潤滑組成物が、約0.25~約0.5重量パーセントのリン酸エステルの前記アミン塩を含む、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項14】
前記潤滑組成物が、ASTM D2624-15に従って、1.5ボルト、20Hz、および160℃で測定された場合、約150,000以下の、エージング前の初期導電率を有する、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。
【請求項15】
前記導電率耐久性が、初期導電率と最終導電率との間の差であり、前記初期および最終導電率が、ATSM D2624-15に従って、1.5ボルト、20Hz、および160℃で測定され、前記最終導電率が、前記潤滑組成物がエージングされた後に、CEC L-48-A-00に従って、170℃、192時間で測定される、請求項1に記載の電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気モータ用またはハイブリッド電気モータ用の耐久性潤滑流体に関する。開示された技術は、潤滑粘度の油と、チアジアゾールまたはその誘導体と、リン酸エステルのアミン塩とを含み、少なくとも2.3の、硫黄およびリンと、窒素との重量比((S+P)/N)を有する耐久性潤滑流体に関する。このような潤滑剤は、50,000pS/mの電気伝導率耐久性を有する。
【背景技術】
【0002】
電気モータまたはハイブリッド電気モータの潤滑剤を開発する場合の主な課題は、エージング後も比較的低い電気伝導率を維持する潤滑剤を開発することである。これらのタイプの潤滑剤は、潤滑剤の寿命にわたって比較的低い電気伝導率(または逆に、比較的高い電気抵抗率)を維持して、電気またはハイブリッド電気モータに見られる電化部品内での静電気の蓄積と放電を抑制する。
【0003】
従来の内燃機関用の潤滑流体は、一般的に添加剤を用いて、機械部品に摩耗保護および極圧保護を提供するのに十分な量の硫黄およびリンを提供する。しかしながら、電気モータ用またはハイブリッド電気モータ用の潤滑流体中のこのような添加剤は、活性硫黄およびリン化合物が、電気および/またはハイブリッド電気モータで使用される銅ワイヤおよび銅系合金に対して多くの場合化学的に攻撃的であるため、問題を提起し得る。加えて、硫黄およびリン化合物は、多くの場合導電性であり、潤滑剤に活性硫黄およびリン化合物を含めることによって、潤滑剤の電気伝導率が望ましくないほど増加することにつながり得る。したがって、電気およびハイブリッド電気モータ用の潤滑流体は、依然として銅部品を保護し、機械部品への十分な保護を提供しながら、比較的低い電気伝導率を維持するという追加の課題を有する。
【発明の概要】
【0004】
一態様または実施形態では、電気自動車用またはハイブリッド電気自動車用の耐久性潤滑組成物が本明細書に記載される。実施形態では、潤滑組成物は、潤滑粘度の基油と、少なくとも約0.7重量パーセントのチアジアゾールまたはその誘導体と、耐久性潤滑組成物に少なくとも約100ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、を含み、少なくとも2.3の、硫黄およびリンと、窒素との重量比((S+P)/N)を有し、潤滑組成物は、少なくとも約150ppmのリンおよび少なくとも約2000ppmの硫黄、ならびに約50,000pS/m以下の導電率耐久性を有する。導電率耐久性は、初期導電率と最終導電率との間の差として定義され、初期および最終導電率は、ATSM D2624-15に従って、1.5ボルト、20Hz、および160℃で測定され、最終導電率は、潤滑組成物がエージングされた後に、CEC L-48-A-00に従って、170℃、192時間で測定される。
【0005】
他の態様または実施形態では、耐久性潤滑組成物のチアジアゾールは、モノヒドロカルビルチオール置換チアジアゾール、ビスヒドロカルビルチオール置換チアジアゾール、もしくはこれらの組み合わせから選択され得、かつ/またはチアジアゾールは、1,3,4-チアジアゾールもしくはその誘導体であり、かつ/またはチアジアゾールは、耐久性潤滑組成物に少なくとも約2000ppmの硫黄を提供し、かつ/または潤滑組成物は、約0.5重量%超~約1重量%のチアジアゾールもしくはその誘導体を含み、かつ/またはチアジアゾールもしくはその誘導体は、式Iの構造を有する1種以上の化合物を含み、
【化1】
式中、各Rは、独立して、水素または硫黄であり、各Rは、独立して、アルキル基であり、nは、0または1の整数であり、Rが、水素である場合、隣接のR部分の整数nは、0であり、Rが、硫黄である場合、隣接のR部分のnは、1であり、少なくとも1つのRは、硫黄であり、かつ/またはチアジアゾールもしくはその誘導体は、耐久性潤滑組成物に硫黄の少なくとも約99重量%を提供する。
【0006】
他の態様または実施形態では、本明細書の任意の実施形態の耐久性潤滑組成物は、最大約3500ppmの全硫黄および最大約300ppmの全リンを含み得る。
【0007】
さらなる態様または実施形態では、本明細書の任意の実施形態のリン酸エステルのアミン塩は、モノアルキルリン酸エステルおよび/またはジアルキルリン酸エステルのうちの1種以上を含み、そのアルキル基は、直鎖状もしくは分岐鎖状であり得、かつ/またはリン酸エステルのアミン塩は、式IIで表され、
【化2】
式中、RおよびRは、独立して、水素、または直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状ヒドロカルビル基であり得、mは、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、R、R、R、およびRは、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり得、R~Rのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基であり、かつ/またはRおよびRは、独立して、C3~C10アルキル基であり得、かつ/またはRおよびRは、C6アルキル基であり、かつ/またはR、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、C10~C20アルキル基であり、かつ/またはR、R、R、およびRのうちの2つは、独立して、C10~C20アルキル基であり、かつ/またはR、R、R、およびRのうちの2つは、独立して、C12~C14アルキル基であり、かつ/またはリン酸エステルのアミン塩は、耐久性潤滑組成物中の全リンの約40~約90重量%を提供し、かつ/または潤滑組成物は、約0.25~約0.5重量パーセントのリン酸エステルのアミン塩を含む。
【0008】
他の態様または実施形態では、任意の実施形態の耐久性潤滑組成物は、ASTM D2624-15に従って、160℃で測定された場合またはASTM D2624-15に従って、160℃で測定された場合よりも少ない場合、約150,000pS/m以下の初期導電率を有し得る。
【0009】
さらに他の態様または実施形態では、本開示は、電気またはハイブリッド電気モータにおける耐久性潤滑組成物(または潤滑方法)の使用を提供し、耐久性潤滑組成物は、潤滑粘度の基油と、少なくとも約0.7重量パーセントのチアジアゾールまたはその誘導体と、耐久性潤滑組成物に少なくとも約100ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、を含み、少なくとも2.3の、硫黄およびリンと、窒素との重量比((S+P)/N)を有し、潤滑組成物は、少なくとも約150ppmのリンおよび少なくとも約2000ppmの硫黄、ならびに約50,000pS/m以下の導電率耐久性を有する。導電率耐久性は、初期導電率と最終導電率との間の差として定義され、初期および最終導電率は、ASTM D2624-15に従って、1.5ボルト、20Hz、および160℃で測定され、最終導電率は、潤滑組成物がエージングされた後に、CEC L-48-A-00に従って、170℃、192時間で測定される。本明細書の使用または方法はまた、この発明の概要に記載されるような任意の実施形態の任意の特徴のいずれかを含み得る。
【0010】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考察および本明細書に開示される本発明の実施から、当業者に明らかになるであろう。
【0011】
本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために、以下の用語の定義が提供される。
【0012】
「潤滑油」、「潤滑組成物(lubricant composition)」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「潤滑剤」、および「潤滑および冷却流体」は、主要量の基油と少量の添加剤組成物とを含む完成した潤滑生成物を指す。
【0013】
本明細書で用いられる場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、および「伝達流体添加剤パッケージ」という用語は、主要量の基油を除いた潤滑油組成物の一部分を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は当業者に既知の通常の意味で使用される。具体的には、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素特性を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、独立して炭化水素置換基から選択され、置換炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、および窒素のうちの1つ以上を含有し、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に2つ以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」という用語は、他に明確に述べられていない限り、記載された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0016】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、または「分散性」という用語は、化合物または添加剤が可溶性、溶解性、混和性、または油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、油が採油される環境において意図された効果を発揮するのに十分な程度に、油中で可溶性、懸濁性、溶解性、または安定に分散性であることを意味する。さらに、必要に応じて、他の添加剤を追加で組み込むことで、特定の添加剤のより高いレベルの配合が可能となり得る。
【0017】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、約1~約200個の炭素原子の直鎖、分枝鎖、環状、および/または置換飽和鎖部分を指す。
【0018】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、約3~約30個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、および/または置換不飽和鎖部分を指す。
【0019】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、および/またはこれらに限定されないが、窒素および酸素が挙げられるヘテロ原子を含み得る、単環式および多環式の芳香族化合物を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「数平均分子量」または「Mn」は、市販のポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000のMnを用いて)を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって決定される。付加的に、GPC方法は、分子量分布情報を提供し、例えばまた、参照により本明細書に組み込まれる、W.W.Yau、J.J.Kirkland and D.D.Bly、“Modern Size Exclusion Liquid Chromatography”、John Wiley and Sons、New York、1979も参照のこと。
【0021】
本開示の全体を通して、「備える(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」などの用語は、制限のないものとみなされ、明確に列挙されていない任意の要素、ステップ、または成分を含む。「から本質的に成る(consists essentially of)」という語句は、明確に列記された任意の要素、ステップ、または成分、ならびに本発明の基本的および新規な態様に実質的に影響を及ぼさない任意の追加の要素、ステップ、または成分を含むことを意味する。本開示はまた、「備える(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」という用語を使用して説明される任意の組成物もまた、その具体的に列挙された成分「から本質的に成る(consisting essentially of)」または「から成る(consisting of)」同じ組成物の開示を含むと解釈されるべきであることを想到する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】硫黄、リン、および窒素のレベルに対する導電率耐久性のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に開示されるのは、電気自動車またはハイブリッド電気自動車における使用に好適な耐久性潤滑流体である。耐久性潤滑流体は、摩耗保護を提供するために硫黄およびリンを含有しているが、潤滑剤がエージングしても、予想外にこのような比較的低い導電率を維持する様式で提供される。
【0024】
一態様または実施形態では、本明細書の耐久性潤滑流体は、潤滑粘度の基油と、少なくとも約0.7重量パーセントの、硫黄および窒素を流体に提供するチアジアゾールまたはその誘導体と、リンおよび窒素を流体に提供するリン酸エステルのアミン塩と、を含む。流体はまた、少なくとも2.3の、硫黄およびリンと、窒素との重量比((S+P)/N)を有し、少なくとも約150ppmのリンおよび少なくとも約2000ppmの硫黄を有する。流体が、少なくともこれらの添加剤、および提供された硫黄、リン、および窒素間の比を含む場合、流体は、約50,000pS/m以下の導電率耐久性(本明細書でより詳細に記載される)を示す。他の態様または実施形態では、流体が、上記のチアジアゾールまたはその誘導体と、リン酸アミン塩添加剤と、上記の指定された硫黄、リン、および窒素の比と、を含む限り、本明細書の流体はまた、他のリン、窒素、および/または硫黄供給源を含有し得る。
【0025】
他の手法では、流体のリン含有量は、最大300ppm、最大290ppm、最大270ppm、最大260ppm、最大250ppm、最大240ppm、最大230ppm、最大220ppm、最大200ppm、最大190、または最大180であり得る。流体はまた、少なくとも150ppmの全リン、または150ppm~300ppmのリン、または180~300ppmのリン、またはそれらの間の任意の範囲を含み得る。リンの少なくとも一部は、本明細書に記載されるようなリン酸アミン塩添加剤によって提供される。
【0026】
他の手法では、流体の硫黄含有量は、最大5000ppm、最大4500ppm、最大4000ppm、最大3500ppm、最大3000ppm、または最大2600ppmであり得る。流体はまた、少なくとも約2000ppmの硫黄、または約2000ppm~5000ppmの硫黄量、またはそれらの間の任意の範囲を含み得る。いくつかの手法では、硫黄の少なくとも一部、および硫黄の大部分は、本明細書に記載されるようなチアジアゾールまたはその誘導体によって提供される。いくつかの手法では、本明細書に記載されるようなチアジアゾールまたはその誘導体は、流体に全硫黄の少なくとも約98パーセントを提供し得る。
【0027】
以下でさらに考察されるように、基油と、少なくともチアジアゾールまたはその誘導体と、リン酸エステルのアミン塩添加剤と、を有する本明細書の流体の実施形態は、一般に、100℃で4.5cSt~6.0cStの動粘度を有し、ASTM D2624-15に従って、(Flucon Fluid Control GmbHのEpsilon+電気伝導率計または同等の計量器を使用して、1.5ボルト、20Hz、および160℃で)測定された場合、約150,000pS/m以下の初期導電率を示し、流体を、CEC L-48-A-00に従って、170℃、192時間エージングした後、約50,000pS/m未満の導電率耐久性(絶対値であり、以下により詳細に考察される)を示す。電気モータまたはハイブリッド電気モータ用の流体に関して、比較的低い導電率(すなわち、より高い抵抗率)を有する流体、およびエージングしても導電率の変化が最も小さい(すなわち、耐久性)流体が所望される。
【0028】
基油:
本開示による電気およびハイブリッド電気モータ自動車で使用するための耐久性潤滑流体の配合に使用するのに好適な基油または潤滑粘度の基油は、好適な潤滑粘度を有する好適な合成もしくは天然油またはこれらの混合物のいずれかから選択され得る。天然油は、動物油、および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、ならびに液体石油およびパラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン-ナフテン型の溶媒処理もしくは酸処理した鉱物潤滑油などの鉱物油を含んでいてもよい。
【0029】
石炭またはシェール由来の油もまた好適であり得る。さらに、フィッシャー・トロプシュの気液法から得られた油も好適である。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、HおよびCOを含有する合成ガスから作製される。そのような炭化水素は、典型的には基油として有用であるためにさらなる処理を必要とする。これらのタイプの油は、一般に天然ガス液体燃料化(GTL)と呼ばれる。基油は、ASTM D2270-10(2016)で測定した場合、100℃で2~15cStの動粘度を持っていてもよい。
【0030】
本明細書に記載される流体で使用される基油は、単一の基油であり得るか、または2種以上の基油の混合物であり得る。具体的には、1種以上の基油は、望ましくは、American Petroleum Institute(API)基油互換性ガイドラインに指定されているグループII~Vの基油のいずれかから選択され得る。そのような基油グループを、以下のように表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
一変形例では、本明細書の実施形態のいずれかにおいて、基油は、II群~V群の基油、またはこれらの基油の混合物から選択され得る。一実施形態では、基油は、III群の基油、またはIII群の基油と、II群、IV群、および/もしくはV群の基油とのブレンドを含む。
【0033】
API III群基油は、フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から誘導される油を含み得る。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、HおよびCOを含有する合成ガスから作製される。そのような炭化水素は、典型的には基油として有用であるためにさらなる処理を必要とする。これらのタイプの油は、一般に天然ガス液体燃料化(GTL)と呼ばれる。例えば、炭化水素は、米国特許第6,103,099号または同第6,180,575号に開示されているプロセスを使用して水素異性化され得るか、米国特許第4,943,672号または同第6,096,940号に開示されているプロセスを使用して水素化分解され、水素異性化され得るか、米国特許第5,882,505号に開示されるプロセスを使用して脱ロウされ得るか、または米国特許第6,013,171号、同第6,080,301号、もしくは同第6,165,949号に開示されているプロセスを使用して水素化異性化および脱ロウされ得る。
【0034】
API IV群基油である、PAOは、典型的には、4~30個、または4~20個、または6~16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。本発明で使用され得るPAOの例としては、オクテン、デセン、これらの混合物などから誘導されるものが挙げられる。PAOは、ASTM D2270-10で測定した場合、100℃で、2~15、または3~12、または4~8cStの動粘度を有し得る。PAOの例としては、100℃で4cStのPAO、100℃で6cStのPAO、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
グループVの基油には、合成および天然のエステル基液が含まれる。合成エステルは、ジカルボン酸と一価アルコールとのエステルを含んでいてもよい。これらのエステルの具体例には、ジブチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ-n-ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジイコシルセバケート、およびリノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステルが含まれる。他の号英エステルは、C~C12モノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどから生成されるものも含む。エステルは、モノカルボン酸と一価アルコールのモノエステルでもある。
【0036】
天然エステルとは、石油または同等の原材料に由来する材料とは異なり、再生可能な生物資源、生物、または実体に由来する材料を指す。天然エステルには、脂肪酸トリグリセリド、加水分解または部分的に加水分解されたトリグリセリド、または脂肪酸メチルエステル(またはFAME)などのエステル交換されたトリグリセリドエステルが含まれる。好適なトリグリセリドには、パーム油、大豆油、ひまわり油、菜種油、オリーブ油、亜麻仁油、および関連材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
基油は、本明細書の実施形態において開示されるように、選択された硫黄およびリンを提供する添加剤、ならびに他の任意の添加剤と組み合わされて、電気モータ自動車に使用する潤滑流体を提供し得る。したがって、基油は、潤滑流体の総重量に基づいて、約80重量%超、または約90重量%以上の量で潤滑流体中に存在し得る。いくつかの実施形態では、基油は、潤滑流体の総重量に基づいて約95重量%を超える量で潤滑流体中に存在し得る。
【0038】
チアジアゾール添加剤:
本明細書の耐久性潤滑組成物は、約0.7重量%以上の量でチアジアゾールまたはその誘導体を含む。いくつかの手法では、約0.7重量%~約1重量%、または約0.7重量%~約0.9重量%のチアジアゾールまたはその誘導体が、耐久性潤滑組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、チアジアゾールまたはその誘導体は、チアジアゾール化合物および/またはそのヒドロカルビル置換誘導体の混合物である。
【0039】
いくつかの手法では、チアジアゾールまたはその誘導体は、耐久性潤滑組成物に少なくとも約2000ppmの硫黄を提供し、他の手法では、少なくとも約2200ppmの硫黄、少なくとも約2400ppmの硫黄、少なくとも約2600ppmの硫黄、少なくとも約2800ppmの硫黄、または少なくとも約2900ppmの硫黄を提供する。他の手法では、チアジアゾールまたはその誘導体はまた、耐久性潤滑組成物に約3500ppm以下の硫黄を提供し得、他の手法では、約3150ppm以下の硫黄を提供し得る。
【0040】
驚くべきことに、チアジアゾールまたはその誘導体の形態および量は、潤滑組成物の電気伝導率耐久性に寄与すると同時に、硫黄を提供して、摩耗性能特性を提供する。手法では、チアジアゾールまたはその誘導体は、式Iの構造を有する1種以上の化合物を含み、
【化3】
式中、各Rは、独立して、水素または硫黄であり、各Rは、独立して、アルキル基であり、nは、0または1の整数であり、Rが、水素である場合、隣接のR部分の整数nは、0であり、Rが、硫黄である場合、隣接のR部分のnは、1であり、ただし、少なくとも1つのRは、硫黄である。他の手法では、チアジアゾール添加剤は、以下に示される式Iaおよび式Ibの化合物のブレンドであり、
【化4】
式Ia中、各整数nは、1であり、各Rは、硫黄であり、各Rは、C5~C15アルキル基、好ましくはC8~C12アルキル基であり、
【化5】
式Ib中、1つの整数nは、1であり、関連するR基は、C5~C15アルキル基(好ましくは、C8~C12アルキル基)であり、関連するR基は、硫黄であり、他の整数nは、0であり、関連するR基は、水素である。いくつかの実施形態では、チアジアゾールまたはその誘導体は、式IaおよびIbのブレンドを含み、式Iaがブレンドの大部分であり、他の手法では、IaおよびIbのブレンドは、約75~約90重量パーセントのIaおよび約10~約25重量パーセントのIb(またはその中の他の範囲)である。別の手法では、チアジアゾールは、2,5-ビス-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(約75~約90%など)と、2,5-モノ-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(約10~約25%など)とのブレンドを含む、2,5ジメルカプト1,3,4チアジアゾールである。他の手法または実施形態では、本明細書の流体において使用され得るチアジアゾール化合物の例としては、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(ヒドロカルビルチオ)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(ヒドロカルビルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、これらの変形物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。1,3,4-チアジアゾールは、一般的にヒドラジンと二硫化炭素から既知の方法により合成される。例えば、米国特許第2,765,289号、同第2,749,311号、同第2,760,933号、同第2,850,453号、同第2,910,439号、同第3,663,561号、同第3,862,798号、および同第3,840,549号を参照されたい。
【0041】
さらに他の手法では、チアジアゾールまたはその誘導体はまた、本明細書の耐久性潤滑組成物に硫黄の大部分を提供し得る。いくつかの手法では、本明細書の選択されたチアジアゾールまたは誘導体は、潤滑組成物中の全硫黄の少なくとも約98重量%、または全硫黄の少なくとも約99重量%を提供し得る。以下でさらに考察されるように、本明細書の組成物はまた、堅牢な電気伝導率耐久性性能を達成するために、窒素に対する硫黄およびリンの選択された関係も有する。
【0042】
手法または実施形態では、本明細書の流体は、少なくとも約0.7重量パーセント、少なくとも約0.8重量パーセント、または少なくとも約0.85重量パーセントのチアジアゾールまたはその誘導体を含み、いくつかの実施形態では、約1重量パーセント未満、約0.95重量パーセント未満、または約0.9重量パーセント未満のチアジアゾールまたはその誘導体を含む。
【0043】
リン添加剤:
本明細書の耐久性潤滑組成物はまた、約0.25重量%~約0.5重量%の量でリン添加剤を含む。手法または実施形態では、選択されたリン添加剤は、耐久性潤滑組成物に少なくとも約100ppmのリン(他の手法では、本明細書の潤滑組成物に約130ppmのリン~約160ppmのリン)を提供する量でのリン酸エステルのアミン塩である。リン酸エステルのアミン塩としては、1種以上のモノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、および/またはこれらの混合物を挙げることができ、これらのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、または環状であり得る。本明細書の流体はまた、リンを提供する他の化合物を含み得るが、いくつかの実施形態では、本明細書のリン酸エステルのアミン塩は、耐久性潤滑組成物中の全リンの約40~約90重量%(他の実施形態では、本明細書の潤滑組成物中のリンの約50~約80重量%、またはリンの約50~約70重量%)を提供する。
【0044】
手法または実施形態では、リン酸エステルのアミン塩は、式IIで表され得、
【化6】
式中、RおよびRは、独立して、水素、または直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状ヒドロカルビル基であり得、mは、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、R、R、R、およびRは、独立して水素またはヒドロカルビル基であり得、R~Rのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基である。Rおよび/またはRに好適なアルキルまたはヒドロカルビル基の例としては、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、および/またはデシル基などであるが、これらに限定されない直鎖状または分岐鎖状アルキル基が挙げられる。さらに別の例示的な手法では、RおよびRは、環状ヒドロカルビル基であり得、例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルエチルシクロペンチル、ジエチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、メチルエチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、ジメチルシクロヘプチル、メチルエチル-シクロヘプチル、および/またはジエチルシクロヘプチルが挙げられる。いくつかの手法または実施形態では、リン酸エステルの好適なアミン塩は、モノアルキルおよびジアルキルリン酸エステルの混合物である。モノアルキルおよびジアルキル基は、上記のような、直鎖状、分岐鎖状、または環状であり得る。
【0045】
リン酸エステルのアミン塩は、当業者には既知であり、一級、二級、もしくは三級アミン、またはそれらの混合物から誘導され得る。塩に好適な例示的なアミンは、脂肪族、環状、芳香族、または非芳香族であり得るが、一般的には脂肪族アミンである。好適な一級アミンの例としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ならびにn-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、またはオレイアミンなどの脂肪アミンが挙げられる。好適な二級アミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、N-メチル-1-アミノ-シクロヘキサン、および/またはエチルアミルアミンが挙げられる。二級アミンはまた、ピペリジン、ピペラジン、およびモルホリンなどの環状アミンであり得る。好適な三級アミンの例としては、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-デシルアミン、トリ-ラウリルアミン、トリ-ヘキサデシルアミン、および/またはジメチル-オレイルアミンを挙げることができる。
【0046】
いくつかの手法では、上記の式IIのアミンは、C10~C20アルキル基であるR、R、R、またはR基のうちの少なくとも1つを有し得、他の手法または実施形態では、R、R、R、またはR基のうちの少なくとも2つは、独立して、C10~C20アルキル基である。いくつかの実施形態では、R、R、R、またはR基のうちの少なくとも2つは、独立して、C12~C14アルキル基である。
【0047】
リン酸エステルのアミン塩は、参照により本明細書に組み込まれるUS9,574,156に記載されている通りであり得、好適なリン化合物をアミンと反応させて、リン酸エステルのアミン塩を形成することによって調製され得る。一実施形態では、リン酸エステルのアミン塩は、式(II)のものであり得、式中、RおよびRは、独立して、C6または水素であり得、mは、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、R、R、R、およびRは、独立して、水素またはC12~C14のヒドロカルビル基であり得、R~Rのうちの少なくとも1つは、C12~C14のヒドロカルビル基である。手法では、リン酸エステルのアミン塩は、本明細書の耐久性潤滑流体中に、潤滑組成物の少なくとも約0.25重量パーセント、または少なくとも約0.3重量パーセント、または最大約0.5重量パーセント、または最大約0.35重量パーセントの量で存在し得る。
【0048】
潤滑油組成物:
本明細書の耐久性潤滑組成物は、大部分として潤滑粘度の基油と、硫黄および窒素を流体に提供するチアジアゾールまたはその誘導体と、リンおよび窒素を流体に提供するリン酸エステルのアミン塩と、を含む。潤滑組成物は、必要に応じて他の添加剤を含み得る。電気またはハイブリッド電気モータ用の流体では、比較的低い導電率を維持するために硫黄およびリンが問題になり得ることがあるが、リンおよび硫黄が、少なくともこれらの添加剤によって提供され、流体がまた、少なくとも約2.3の、硫黄およびリンと、窒素との選択された重量比((S+P)/N)で提供されるリン、硫黄、および窒素のレベルを含む場合、流体は、驚くべきことに、エージング後の電気伝導率において小さい変化を示すことが見出された。例えば、ASTM D2624-15に従って、1.5ボルト、20Hz、および160℃で測定された場合、流体は、比較的低い初期電気伝導率を有する。流体の電気伝導率は、同じ手順に従って再度測定されるが、流体がエージングされた後である。エージングプロセスは、CEC L-48-A-00に従い、170℃、192時間である。初期導電率測定とエージング後の導電率測定との間の導電率の変化は、約50,000pS/m以下である。したがって、これらの流体は、エージング後も比較的低い電気伝導率特性を維持し、耐久性潤滑組成物であるとみなされる。他の実施形態では、流体耐久性を達成するための選択重量比は、少なくとも約2.4、少なくとも約2.7、または少なくとも約2.9、好ましくは4.0未満、3.5未満、3.3未満、3.1未満、または3.0未満である。
【0049】
実施形態では、本明細書の流体はまた、約140,000pS/m以下、または約70,000pS/m以下、いくつかの手法では、約50,000pS/m以上、または約60,000pS/m以上の初期導電率を示し得る。他の実施形態では、流体はまた、50,000pS/m以下、約40,000pS/m以下、約30,000pS/m以下、または約20,000pS/m以下、約10,000pS/m以下、約5,000pS/m以下、またはさらに約2,000pS/m以下の電気伝導率耐久性(上述の初期導電率とエージング後の導電率との間の差として測定される)を示す。
【0050】
他の添加剤:本明細書に記載される潤滑流体はまた、1種以上のさらなる添加剤も含み得る。例えば、流体は、酸化防止剤、摩擦調整剤、洗浄剤、腐食防止剤、銅の腐食防止剤、消泡剤、シール膨潤剤、極圧剤、耐摩耗剤、粘度調整剤、分散剤、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種の成分を含み得る。他の性能添加剤は、上記で特定されたものに加えて、金属不活性化剤、解乳化剤、流動点降下剤、およびそれらの混合物のうちの1つ以上も含んでいてもよい。
【0051】
酸化防止剤:いくつかの実施形態では、潤滑流体は、1種以上の酸化防止剤を含有する。好適な酸化防止剤としては、とりわけ、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、および有機亜リン酸エステルが挙げられる。
【0052】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、第三ブチル化フェノールの液体混合物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ter-t-ブチルフェノール)、および混合メチレン架橋ポリアルキルフェノール、および4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)が挙げられる。N、N‘-ジ-sec-ブチル-フェニレンジアミン、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、および環アルキル化ジフェニルアミン。例としては、立体障害性第三ブチル化フェノール、ビスフェノール、およびケイ皮酸誘導体、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
芳香族アミン系酸化防止剤には、次式を有するジアリールアミンが含まれるが、これらに限定されず、
【化7】
式中、R’およびR’’は、それぞれ独立して、6~30個の炭素原子を有する置換または非置換のアリール基を表す。アリール基の置換基の例には、1~30個の炭素原子を有するアルキル、ヒドロキシ基、ハロゲン基、カルボン酸もしくはエステル基、またはニトロ基のような脂肪族炭化水素基が含まれる。
【0054】
アリール基は、好ましくは置換または非置換のフェニルまたはナフチル、特に一方または両方のアリール基が4~30個、好ましくは4~18個の炭素原子、最も好ましくは4~9個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルで置換されているものである。一方または両方のアリール基、例えばモノ-アルキル化ジフェニルアミン、ジ-アルキル化ジフェニルアミン、またはモノ-およびジ-アルキル化ジフェニルアミンの混合物が置換されていることが好ましい。
【0055】
使用され得るジアリールアミンの例としては、限定されないが、ジフェニルアミン、各種アルキル化ジフェニルアミン、3-ヒドロキシジフェニルアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、モノブチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、モノテトラデシルジフェニルアミン、ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、モノオクチルフェニル-アルファナフチルアミン、フェニル-ベータ-ナフチルアミン、モノヘプチルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、p-配向スチレン化ジフェニルアミン、混合ブチルオクチルジフェニルアミン、および混合オクチルスチリルジフェニルアミン、が挙げられる。
【0056】
硫黄含有酸化防止剤としては、それらの生産に使用されるオレフィンの種類および酸化防止剤の最終硫黄含有量によって特徴付けられる硫化オレフィン類が挙げられるが、これらに限定されない。高分子量オレフィン、すなわち168~351g/モルの平均分子量を有するオレフィンが好ましい。使用可能なオレフィンの例には、アルファ-オレフィン、異性化アルファ-オレフィン、分岐オレフィン、環状オレフィン、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0057】
アルファオレフィンとしては、任意のC4~C25アルファオレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。アルファオレ-フィン類は、硫化反応の前または硫化反応の間に異性化され得る。内部二重結合および/または分岐を含有するアルファオレフィンの構造異性体および/または配座異性体もまた使用され得る。例えば、イソブチレンは、アルファ-オレフィン1-ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0058】
オレフィン類の硫化反応に使用することができる硫黄源には、元素状硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、および硫化プロセスの異なる段階で一緒に添加されるこれらの混合物が含まれる。
【0059】
不飽和油は、それらの不飽和のために、硫化されそして酸化防止剤として使用されてもよい。使用できる油脂の例には、コーン油、キャノーラ油、綿実油、グレープシード油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ココナッツ油、菜種油、ベニバナ種子油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ種子油、獣脂、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0060】
本明細書に記載の潤滑流体中の酸化防止剤の総量は、最大200ppmの窒素、または最大175ppmの窒素、または150~200ppmの窒素を送達する量で存在し得る。
【0061】
摩擦調整剤:好適な追加の摩擦調整剤は、金属含有および金属を含まない摩擦調整剤を含み、イミダゾリン、脂肪族脂肪酸アミド、脂肪族アミン、スクシンイミド、アルコキシル化脂肪族アミン、エーテルアミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第4級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホン酸塩、金属含有化合物、グリセリンエステル、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ひまわり油などの天然由来の動植物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1種以上の脂肪族または芳香族カルボン酸とのエステルまたは部分エステルなどを含んでいてもよい。
【0062】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分枝鎖、または芳香族のヒドロカルビル基から選択されるヒドロカルビル基、またはこれらの混合物を含有し得、このようなヒドロカルビル基は、飽和または不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素のようなヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は、12~25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステルであっても、ジエステルであっても、(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであり得る。
【0063】
他の好適な摩擦調整剤は、有機、無灰(金属不含)、窒素非含有有機摩擦調整剤を含んでもよい。かかる摩擦調整剤は、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み得、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-およびトリ-エステルを含み得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0064】
アミン系摩擦調整剤はアミンまたはポリアミンを含んでもよい。そのような化合物は、飽和または不飽和のいずれかの直鎖、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、12~25個の炭素原子を含有することができる。好適な摩擦調整剤のさらなる例には、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが含まれる。そのような化合物は、飽和、不飽和、またはこれらの混合物のいずれかの直鎖であるヒドロカルビル基を有することができる。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0065】
アミンおよびアミドは、それ自体として、または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸またはホウ酸モノ-、ジ-またはトリ-アルキルなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用することができる。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0066】
追加の摩擦調整剤が窒素を含む場合、そのような追加の摩擦調整剤は、最大200ppmの窒素、または最大150ppmの窒素、または100~150ppmの窒素を送達する量で潤滑流体中に存在し得る。
【0067】
洗浄剤:本明細書に記載されている潤滑流体に含まれる金属洗浄剤は、一般に、極性頭部と長い疎水性尾部を含み、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩からなる。塩は、実質的に化学量論量の金属を含有していてもよく、その場合それらは通常は、通常のまたは中性の塩として記載され、典型的には約0~約150未満の全塩基価またはTBN(ASTM D2896により測定)を有する。酸化物または水酸化物のような過剰の金属化合物を、二酸化炭素のような酸性ガスと反応させることによって大量の金属塩基を含ませることができる。得られる過塩基性洗浄剤は、無機金属塩基(例えば、水和炭酸塩)のコアを取り囲む中和された洗浄剤のミセルを含む。そのような過塩基性洗浄剤は、約150以上、例えば約150~約450以上のTBNを有していてもよい。
【0068】
本実施形態での使用に好適であり得る洗浄剤には、油溶性過塩基性、低塩基性および中性のスルホネート類、フェネート類、硫化フェネート類、および特にアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムのサリチレート類が含まれる。1つより多い金属、例えばカルシウムとマグネシウムの両方が存在してもよい。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物もまた好適であり得る。好適な金属洗浄剤は、150~450TBNのTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムスルホネート、150~300TBNのTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムフェネートまたは硫化フェネート、および130~350のTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムサリチレートであり得る。そのような塩の混合物も使用することができる。
【0069】
金属含有洗浄剤は、流体の防錆性能を改善するのに十分な量で潤滑流体中に存在し得る。金属含有洗浄剤は、潤滑流体の総重量に基づいて、最大200ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で流体中に存在し得る。一例では、金属含有洗浄剤は、100~200ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で存在し得る。別の実施形態では、金属含有洗浄剤は、100~150ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0070】
腐食抑制剤:防錆剤または腐食抑制剤もまた、本明細書に記載された潤滑組成物に含まれ得る。このような物質は、モノカルボン酸およびポリカルボン酸を含む。適切なモノカルボン酸の例は、オクタン酸、デカン酸およびドデカン酸である。適切なポリカルボン酸は、トール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸のような酸から製造される二量体および三量体酸を含む。好適な銅の腐食抑制剤としては、エーテルアミン、ポリエトキシル化化合物、例えば、エトキシル化アミンおよびエトキシル化アルコール、イミダゾリン、モノアルキル、およびジアルキルチアジアゾールなどが挙げられる。追加の化合物は、モノカルボン酸およびポリカルボン酸を含む。適切なモノカルボン酸の例は、オクタン酸、デカン酸およびドデカン酸である。適切なポリカルボン酸は、トール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸のような酸から製造される二量体および三量体酸を含む。
【0071】
チアゾールおよびトリアゾールも、潤滑剤に使用され得る。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、および2-メルカプトベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0072】
別の有用な種類の防錆剤は、例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸無水物などの、アルケニルコハク酸およびアルケニルコハク酸無水物腐食防止剤であり得る。アルケニル基中に8~24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸とポリグリコールのようなアルコールとの半エステルも有用である。他の適切な防錆剤または腐食防止剤は、エーテルアミン、酸性リン酸、アミン、エトキシル化アミン、エトキシル化フェノール、エトキシル化アルコールのようなポリエトキシル化化合物、イミダゾリン、アミノコハク酸またはその誘導体などを含む。
【0073】
このような防錆剤または腐食抑制因子の混合物が使用され得る。本明細書に記載された潤滑組成物中に存在する場合の腐食防止剤の総量は、潤滑組成物の総重量に基づいて、最大1.0重量%、または0.01~0.5重量%の範囲であり得る。
【0074】
極圧剤:本明細書に記載の潤滑流体は、任意で、1種以上の極圧(EP)剤を含んでいてもよい。油に可溶性であるEP剤は、硫黄およびクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、ならびにリンEP剤を含む。そのようなEP剤の例としては、塩素化ワックス;ジベンジルジスルフィド、二硫化ビス(クロロベンジル)、三硫化ジブチル、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、および硫化ディールス-アルダー付加物のような有機硫化物および多硫化物;硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物のようなリン硫化炭化水素;亜リン酸ジヒドロカルビルおよびトリヒドロカルビル、例えば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニルのようなリンエステル;亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリル、およびポリプロピレン置換亜リン酸フェニル;ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびバリウムヘプチルフェノール二酸のような金属チオカルバミン酸塩;例えば、ジアルキルジチオリン酸と酸化プロピレンとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキルおよびジアルキルリン酸のアミン塩;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0075】
耐摩耗剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に1種以上の追加の耐摩耗剤を含有し得る。好適な耐摩耗剤の例としては、リン酸エステルまたはその塩;リン酸エステル;ホスファイト;ホスホネート、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミド;リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン;チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを含む、チオカルバメート含有化合物;ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
耐摩耗剤は、約0重量%~約1重量%、他の手法では、約0.01重量%~約0.8重量%、さらに他の手法では約0.05重量%~約0.5重量%、または、さらなる手法では、潤滑油組成物の約0.1重量%~約0.3重量%を含む範囲内に存在し得る。
【0077】
粘度調整剤:潤滑流体は、任意で1種以上の粘度調整剤を含んでいてもよい。好適な粘度指数改善剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役コポリマー、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。粘度指数改善剤は星型ポリマーを含んでいてもよく、好適な例は、米国公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0078】
本明細書に記載の潤滑流体はまた、任意で、粘度調整剤に加えて、または粘度調整剤の代わりに、1種以上の分散剤粘度調整剤を含んでいてもよい。好適な分散剤粘度調整剤としては、官能化ポリオレフィン、例えばアシル化剤(例えば無水マレイン酸)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応したエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーを含んでいてもよい。
【0079】
粘度調整剤および/または分散剤粘度調整剤の総量は、存在する場合、潤滑流体の総重量に基づいて、最大1.0重量%、または最大0.5重量%、または最大0.3重量%でよい。
【0080】
分散剤:潤滑流体は、1種以上の分散剤を含み得る。分散剤は、比較的高い分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を有する無灰分散剤であり得る。そのような分散剤の例は、N置換長鎖アルケニルスクシンイミド、コハク酸エステル分散剤、コハク酸エステル-アミド分散剤、マンニッヒ塩基分散剤、高分子ポリアミン分散剤、それらのリン酸化形態、およびそれらのホウ素化形態である。分散剤は、二級アミノ基と反応することができる酸性分子でキャップすることができる。
【0081】
N置換長鎖アルケニルスクシンイミドは、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が約500~5000の範囲内にあるポリイソブチレン(PIB)置換基を含み得る。分散剤に使用されるPIB置換基はまた、ASTM D445を用いて決定される約2100~約2700cStの100℃での粘度を有する。
【0082】
分散剤中のポリイソブチレン部分は、好ましくは、重量平均分子量(Mw)の、数平均分子量(Mn)に対する比によって判定されるように、多分散度とも呼ばれる狭い分子量分布(MWD)を有する。2.2未満、好ましくは2.0未満のMw/Mnを有するポリマーが最も望ましい。好適なポリイソブチレン置換基は、約1.5から2.1、または約1.6から約1.8の多分散度を有する。
【0083】
ジカルボン酸または無水物は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸、エチルマレイン酸、無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など、対応する酸ハライドやC-C脂肪族エステルを含むカルボン酸系反応物から選択することができる。ヒドロカルビルジカルボン酸または無水物を製造するために使用される反応混合物におけるジカルボン酸または無水物とヒドロカルビル部分のモル比は、大きく変化してもよい。したがって、モル比は、5:1~1:5、例えば3:1~1:3に変化し得る。酸または無水物とヒドロカルビル部分のモル比は、1:1から1.6:1未満が特に好適である。ジカルボン酸または無水物とヒドロカルビル部分との別の有用なモル比は、1.3:1~1.7:1、または1.3:1~1.6:1、または1.3:1~1.5:1である。
【0084】
多数のポリアルキレンポリアミンのいずれかを、分散剤添加剤の調製に使用することができる。非限定的な例示的ポリアミンとしては、アミノグアニジンビカーボネート(AGBC)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)および重質ポリアミン類が挙げられ得る。重質ポリアミンは、TEPAおよびPEHAなどの少量のポリアミンオリゴマーを有するが、主に1分子当たり7個以上の窒素原子、2個以上の第1級アミンを有するオリゴマーを有し、かつ従来のポリアミン混合物よりも広範囲の分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。一般的に、これらの重いポリアミンは、1分子あたり平均6.5個の窒素原子を持っている。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用されてもよい追加の非限定的ポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示され、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。ヒドロカルビルジカルボン酸または無水物とポリアルキレンポリアミンとのモル比は、約1:1~約3.0:1でもよい。
【0085】
マンニッヒ塩基分散剤は、典型的には環上に長鎖アルキル置換基を有するアルキルフェノールと、約1~約7個の炭素原子を含む1種以上の脂肪族アルデヒド(特にホルムアルデヒドおよびその誘導体)との反応生成物、およびポリアミン(特にポリアルキレンポリアミン)でもよい。例えば、マンニッヒ塩基無灰分散剤は、約1モルの割合の長鎖炭化水素置換フェノールを、約1~約2.5モルのホルムアルデヒドおよび約0.5~約2モルのポリアルキレンポリアミンと縮合させることによって形成することができる。
【0086】
本明細書に記載される分散剤は、ボレート化および/またはリン酸化され得る。これらの分散剤は、一般に、i)少なくとも1つのリン化合物および/またはホウ素化合物、および、ii)少なくとも1つの無灰分散剤との反応生成物である。
【0087】
本明細書における分散剤を形成するのに有用な適切なホウ素化合物は、ホウ素含有種を無灰分散剤に導入することができるいずれかのホウ素化合物またはホウ素化合物の混合物を含む。そのような反応を受けることができる有機または無機の任意のホウ素化合物を使用することができる。したがって、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、ボロン酸などのHBFホウ素酸(例えば、アルキル-B(OH)、またはアリール-B(OH))、ホウ酸(すなわち、HBO)、四ホウ酸(すなわち、H)、メタホウ酸(すなわち、HBO)、そのようなホウ素酸のアンモニウム塩、およびそのようなホウ素酸のエステルを使用することができる。三ハロゲン化ホウ素とエーテル、有機酸、無機酸、または炭化水素との錯体の使用は、ホウ素反応物質を反応混合物に導入する便利な手段である。このような錯体は知られており、そして三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素-フェノール、三フッ化ホウ素-リン酸、三塩化ホウ素-クロロ酢酸、三臭化ホウ素-ジオキサンおよび三フッ化ホウ素-メチルエチルエーテルにより例示される。
【0088】
本明細書における分散剤を形成するための適切なリン化合物としては、リン含有種を無灰分散剤に導入することができるリン化合物またはリン化合物の混合物が挙げられる。したがって、そのような反応を行うことができる有機または無機のいずれかのリン化合物を使用することができる。したがって、そのような無機リン化合物を、無機リン酸、およびその水和物を含む無機酸化リンとして使用することができる。典型的な有機リン化合物としては、リン酸の完全および部分エステル、例えば、リン酸、チオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、テトラチオリン酸のモノ、ジ、トリエステル、リン酸、チオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸のモノ、ジ、トリエステル、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド、トリヒドロカルビルホスフィンサルファイド、モノおよびジヒドロカルビルホスホネート、(RPO(OR′)(OR″)、ここでRおよびR′はヒドロカルビルであり、R″は水素原子またはヒドロカルビル基である)、ならびにそれらのモノ、ジおよびトリチオ類似体、モノおよびジヒドロカルビルホスホナイト、(RP(OR′)(OR″)、ここで、RおよびR′はヒドロカルビルであり、R″は水素原子またはヒドロカルビル基である)ならびにそれらのモノおよびジチオ類似体などを含む。したがって、そのような化合物を、例えば、亜リン酸(HPO、H(HPO)と表されることもあり、オルト-亜リン酸またはホスホン酸と呼ばれることもある)、リン酸(HPO、オルトリン酸と呼ばれることもある)、次リン酸(H)、メタリン酸(HPO)、ピロリン酸(H)、次亜リン酸(HPO、ホスフィン酸と呼ばれることもある)、ピロ亜リン酸(H、ピロホスホン酸と呼ばれることもある)、亜ホスフィン酸(HPO)、トリポリリン酸(H10)、テトラポリリン酸(H13)、トリメタリン酸(H)、三酸化リン、四酸化リン、五酸化リンなどとして使用することができる。ホスホロテトラチオ酸(HPS)、ホスホロモノチオ酸(HPOS)、ホスホロジチオ酸(HPO)、ホスホロトリチオ酸(HPOS)、セスキ硫化リン、七硫化リン、および五硫化リン(P、P10と称されることもある)のような部分または全硫黄類似体も、本開示のための分散剤の形成に使用することができる。PCl、PBr、POCl、PSClなどのような無機ハロゲン化リン化合物も使用可能である。
【0089】
同様に、リン酸のモノ、ジ、およびトリエステル(例えば、トリヒドロカルビルホスフェート、ジヒドロカルビルモノアシッドホスフェート、モノヒドロカルビルジアシッドホスフェート、およびそれらの混合物)、モノ、ジ、およびトリエステルなどの有機リン化合物を使用することができる。亜リン酸(例えば、トリヒドロカルビルホスファイト、ジヒドロカルビル水素ホスファイト、ヒドロカルビル二酸ホスファイト、およびそれらの混合物)、ホスホン酸のエステル(「一次」、RP(O)(OR)、および「二次」の両方)。RP(O)(OR))、ホスフィン酸のエステル、ホスホニルハロゲン化物(例えば、RP(O)ClおよびRP(O)Cl)、ハロリン酸塩(例えば、(RO)PClおよび(RO)PCl)、ハロホスフェート(例えば、ROP(O)Clおよび(RO)P(O)Cl)、第三級ピロホスフェートエステル(例えば、(RO)P(O)-O-P(O)(OR))、および前述の有機リン化合物のいずれかの全硫黄または部分硫黄の類似体などであって、各ヒドロカルビル基が最大約100個の炭素原子、好ましくは最大約50個の炭素原子、より好ましくは最大約24個の炭素原子を含む、前述の有機リン化合物のいずれかの全または部分硫黄類似体、および最も好ましくは最大約12個の炭素原子を含む。ハロゲン化ハロホスフィン(例えば、四ハロゲン化ヒドロカルビルリン、三ハロゲン化ジヒドロカルビルリン、および二ハロゲン化トリヒドロカルビルリン)、およびハロホスフィン(モノハロホスフィンおよびジハロホスフィン)も使用可能である。
【0090】
本明細書の潤滑剤は、非ホウ素化および非リン酸化分散剤と組み合わせた上記の1種以上のホウ素化およびリン酸化分散剤の混合物を含んでいてもよい。
【0091】
使用される場合、上述の分散剤の処理率は、潤滑剤中、約1~約5重量パーセント、他の手法では、約1~約3重量パーセント、また他の手法では、約1~約2重量パーセントで提供される。
【0092】
消泡剤:安定した泡の形成を低減または防止するために使用される消泡剤には、シリコーン、ポリアクリレート、または有機ポリマーが含まれる。本発明の組成物において有用であり得る発泡抑制剤には、ポリシロキサン、アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルのコポリマー、および場合により酢酸ビニルが含まれる。存在する場合、潤滑流体中の消泡剤の量は、潤滑流体の総重量に基づいて、最大0.1重量、最大0.08重量%、または.07重量%未満であり得る。
【0093】
シール膨潤剤:本開示の流体は、シール膨潤剤をさらに含んでいてもよい。エステル、アジペート、セバケート、アゼアレート、フタレート、スルホン、アルコール、アルキルベンゼン、置換スルホラン、芳香族化合物、または鉱油などのシール膨潤剤は、様々なエンジン、モータ、トランスミッションのシールとして使用されるエラストマー材料の膨張を引き起こす。
【0094】
アルコール系シール膨潤剤は、一般に、デシルアルコール、トリデシルアルコール、およびテトラデシルアルコールのような低揮発性直鎖アルキルアルコールである。シール膨潤剤として有用なアルキルベンゼンとしては、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニル-ベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼンなどが挙げられる。置換スルホラン(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,029,588号に記載されるもの)も同様に、本発明による組成物におけるシール膨潤剤として有用である。本開示においてシール膨潤剤として有用な鉱物油は、高いナフテンまたは芳香族含有量を有する低粘度鉱物油を含む。
【0095】
流動点降下剤:本明細書に記載される潤滑剤は、任意選択的に1種以上の流動点降下剤を含有し得る。好適な流動点降下剤としては、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレートもしくはポリアクリルアミド、またはこれらの混合物が挙げられる。流動点降下剤が存在する場合、潤滑剤の総重量に基づいて、約0.001重量%~約0.04重量%の量で存在し得る。
【0096】
一般的に、本明細書に記載される電気またはハイブリッド電気モータ用途用の耐久性潤滑流体は、表2に列挙される範囲内の添加剤成分を含み得る。
【0097】
【表2】
【0098】
上記の各成分の割合は、記載された成分を含む潤滑流体の総重量を基準とした、各成分の重量パーセントを表す。本明細書に記載の組成物の配合に使用される添加剤は、基油に個々にまたは様々なサブコンビネーションで混合され得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒のような希釈剤)を使用して、成分のすべてを同時に混合することが好適であり得る。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態である場合には成分の組み合わせによってもたらされる相互相溶性を利用する。また、濃縮物の使用は、混合時間を短縮し、混合エラーの可能性を低減する。
【実施例0099】
以下の非限定的な実施例は、本開示の1つ以上の実施形態の特徴および利点をさらに例示すために提供される。特記されないかまたは考察の文脈から明らかでない限り、本開示の実施例および他の場所に記載されるすべてのパーセンテージ、比率および部は重量によるものである。
【0100】
本明細書で選択された流体が、どのように所望の導電率を示したかを実証するために、例示的な完成した流体を配合し、エージングし、評価した。
【0101】
以下の実施例では、いくつかの配合物をブレンドした。各配合物について、第1の潤滑剤試料を採取し、Epsilon+電気伝導率計(Flucon Fluid Control GmbH)または同等の計量器を使用して、ASTM D2624-15(燃料ではなく潤滑剤を試験するように変更)に従って、1.5ボルト、20Hz、および160℃で初期電気伝導率を測定して、少なくとも1つの導電率の読み取り値を得た。次いで、各配合物から第2の潤滑剤試料を採取し、CEC L-48-A-00に従って、170℃、192時間エージングした。エージング後、流体を室温まで冷却させた。冷却後、Epsilon+電気伝導率計(Flucon Fluid Control GmbH)または同等の計量器を使用して、ASTM D2624-15(燃料ではなく潤滑剤を試験するように変更)に従って、1.5ボルト、20Hz、および160℃で各エージング後の流体の導電率を測定して、評価対象の各エージング後の流体の少なくとも1つの導電率の読み取り値を得た。
【0102】
実施例1
以下の表3で試験される配合物はすべて、摩擦調整剤、洗浄剤、酸化防止剤、リン酸化およびボレート化分散剤、腐食防止剤、およびプロセス油を含有する同じ基本添加剤パッケージを含有していた。基本添加剤パッケージに加えて、配合物は、表3に記載される追加の添加剤を含有していた。配合物は、配合物に含有されているチアジアゾールもしくはその誘導体および/またはリン酸アミン塩の量に応じて、完成した流体の約1.75~約0.43重量パーセントの範囲で、プロセス油処理率に小さな変動を有した。配合物は、約5~約5.5重量パーセントの全添加剤処理率を有し、約4.9~5.9cStの間の100℃での動粘度を達成するために同様の基油および粘度調整剤を含んでいた。
【0103】
表3の添加剤を、電気伝導率耐久性、またはエージング後に比較的低い電気伝導率を維持する流体の能力を決定するために、初期およびエージング後の導電率について評価した。低い導電率耐久性が望まれ、これは、流体がエージングしても導電率性能を維持することを意味する。表3は、完成した流体中のチアジアゾールおよびリン酸アミン塩の重量パーセントを報告し、これはまた、上記で報告されたような添加剤パッケージおよび基油を含む。全硫黄、リン、および窒素、ならびに上記の比は、完成した流体の様々な成分によって提供されるこのような元素の量に基づいて計算される。導電率結果を、表4に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
図1に示されるように、全窒素に対する全流体の硫黄およびリンの、流体の導電率耐久性に与える影響(すなわち、160℃でのエージング後の導電率と比較した160℃での初期導電率の絶対値)は、2.3以上の比および流体中のチアジアゾールの少なくとも約0.7重量パーセントを有する本発明の試料について実質的に改善される。この結果は、これらの元素が導電性である傾向があることを考えると、このようなレベルの流体の全硫黄およびリンでは驚くべきことである。さらに、チアジアゾールの低分子量を考えると、流体の導電率は、エージング後に許容できないほど高くなると予期されたであろう。
【0107】
本開示の潤滑組成物は、その詳細な説明および本明細書における要約と共に記載されているが、前述の記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される、本開示の範囲を説明することが意図され、これを限定するものではないと理解するべきである。他の態様、利点、および修正は特許請求の範囲内にある。本明細書および実施例は、例示のみとして考えられ、本開示の真の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0108】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書に開示される実施形態の実施から当業者に明らかとなるであろう。明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「a」および/または「an」は、1つまたは1つ以上を指すことができる。他に指示がない限り、本明細書で使用される成分の量、分子量、パーセント、比、反応条件などのような特性を表すすべての数字は、「約」という用語が存在するか否かにかかわらず、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。せめて、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁の数字を考慮し、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。広範囲の開示を記載する数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、所定の誤差を本質的に含有する。
【0109】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、もしくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0110】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、1~4の範囲は、1、2、3、および4の値の、ならびに1~4、1~3、1~2、2~4、2~3などのような値のいずれかの範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0111】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限および各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、または各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって誘導されるすべての範囲の開示として解釈されるべきである。
【0112】
さらに、説明または実施例において開示される成分、化合物、置換基、またはパラメータの特定量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲または特定量/値の任意の他の下限または上限と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲を形成することができる。

図1
【外国語明細書】