(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087847
(43)【公開日】2022-06-13
(54)【発明の名称】ポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー、アクリル系ポリマー、アクリル系粘着剤組成物及びアクリル系粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C08F 20/26 20060101AFI20220606BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220606BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C08F20/26
C09J7/38
C09J4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195390
(22)【出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020199428
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】六浦 弘太郎
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB06
4J004BA02
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA05
4J040FA081
4J040FA272
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA11
4J040NA19
4J100AL03Q
4J100AL08P
4J100BA03P
4J100BA04P
4J100BA05P
4J100BA22P
4J100BA38P
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA05
(57)【要約】
【課題】基材への塗工性に優れるとともに、アクリル系粘着テープとした際の耐オレイン酸の性能に優れる、カーボネート構造を有するアクリル系粘着剤組成物、並びに当該粘着剤組成物を得るために有用なアクリル系モノマー及びアクリル系ポリマーを提供する。
【解決手段】下記一般式(1):
〔式中、R
1は置換基を有していてもよい、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基である。Xは置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。nは1~100の整数である。Yは(メタ)アクリレート基を有する構造である。〕
で示されることを特徴とするポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
〔式中、R
1は置換基を有していてもよい、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基である。Xは置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。nは1~100の整数である。Yは(メタ)アクリレート基を有する構造である。〕
で示されることを特徴とするポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー。
【請求項2】
前記Yは、下記(2-1)~(2-5):
【化2】
で示されるいずれかの構造を有する、請求項1に記載のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマーに由来する構成単位と、粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーに由来する構成単位と、電離放射線架橋性モノマーに由来する構成単位とを含有する電離放射線硬化型アクリル系ポリマーであって、前記ポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマーに由来する構成単位の含有割合が1重量%以上である、電離放射線硬化型アクリル系ポリマー。
【請求項4】
請求項3に記載の電離放射線硬化型アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマーと、粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーと、架橋剤と、前記架橋剤と反応する反応性官能基を有するモノマーとを含有するアクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
基材上に少なくとも請求項4又は5に記載のアクリル系粘着剤組成物の硬化塗膜を備えたアクリル系粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー、当該重合性モノマーに由来する構成単位を含有するアクリル系ポリマー、当該重合性モノマー又は当該アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤組成物、及びアクリル系粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクリル系粘着テープの用途は、木工、紙加工等だけでなく、電子材料分野にも拡大されている。電子材料分野に適用する場合には、電子材料の製造時、加工時及び製造後の使用の際にアクリル系粘着テープに耐溶剤性が要求されている。これは、特にスマートフォンなどの小型デバイスの発達に伴って人の皮脂、汗等に触れる機会が増えているためであり、耐溶剤性の中でも耐オレイン酸への要求が高まっている。
【0003】
上記に関して、アクリル系ポリマーに耐溶剤性を付与する手法として、モノマーの一部に脂環式骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルを導入すること(特許文献1)、アクリル系ポリマーの架橋密度を高めること(特許文献2)等が一般的に知られている。
【0004】
アクリル系粘着テープの製法としては、溶剤重合によりアクリル系モノマーを重合することにより得られたアクリル系ポリマーを基材に塗工し、塗膜を乾燥させた後、予め共重合させておいた反応性官能基と架橋剤とを反応させる手法;予め紫外線架橋性アクリルモノマーを共重合させることによって得られる紫外線硬化型アクリルポリマーに対して紫外線照射を行う手法等により塗膜を硬化させてテープを得る方法が一般に知られている。
【0005】
上記方法は、アクリル系粘着テープの高機能化を目指す上でポリマーの分子設計を精緻に調整できる点で有用な方法であるが、アクリル系モノマーが多官能モノマーである場合にはモノマーを重合する際にゲル化して基材への塗工性が低下するという問題がある。即ち、基材への塗工の容易性はアクリル系粘着テープの製造において重要性が高い。
【0006】
ところで、ポリウレタン系の粘着テープの分野ではあるが、カーボネート結合を有するポリウレタン構造を有する粘着テープが耐オレイン酸の性能を高められることが報告されている(特許文献3)。詳細には、特許文献3には、カーボネート結合を有するポリウレタン構造(A)、及び、含窒素複素環式構造(B)を含有する粘着剤層を有することを特徴とする粘着テープが開示されている。
【0007】
よって、アクリル系粘着テープの分野においてもポリマーにカーボネート構造を有することにより耐オレイン酸の性能を高められることが予想されるが、アクリル系においてはモノマー合成の都合上、2官能以上の多官能モノマーが知られているため(特許文献4の特許請求の範囲、特許文献5の[0036]~[0041]段落等)、前述の製法でアクリル系粘着テープを作製しようとすると、基材への塗工性の観点で実用化が困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-119572号公報
【特許文献2】特開2004-223974号公報
【特許文献3】国際公開第2016/063784号
【特許文献4】特開平3-181517号公報
【特許文献5】特開2012-11321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、基材への塗工性に優れるとともに、アクリル系粘着テープとした際の耐オレイン酸の性能に優れる、カーボネート構造を有するアクリル系粘着剤組成物、並びに当該粘着剤組成物を得るために有用なアクリル系モノマー及びアクリル系ポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来技術の問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマーを用いる場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー、アクリル系ポリマー、アクリル系粘着剤組成物及びアクリル系粘着テープに関する。
1.下記一般式(1):
【0012】
【0013】
〔式中、R1は置換基を有していてもよい、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基である。Xは置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。nは1~100の整数である。Yは(メタ)アクリレート基を有する構造である。〕
で示されることを特徴とするポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー。
2.前記Yは、下記(2-1)~(2-5):
【0014】
【0015】
で示されるいずれかの構造を有する、上記項1に記載のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー。
3.上記項1又は2に記載のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマーに由来する構成単位と、粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーに由来する構成単位と、電離放射線架橋性モノマーに由来する構成単位とを含有する電離放射線硬化型アクリル系ポリマーであって、前記ポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマーに由来する構成単位の含有割合が1重量%以上である、電離放射線硬化型アクリル系ポリマー。
4.上記項3に記載の電離放射線硬化型アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤組成物。
5.上記項1又は2に記載のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマーと、粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーと、架橋剤と、前記架橋剤と反応する反応性官能基を有するモノマーとを含有するアクリル系粘着剤組成物。
6.基材上に少なくとも上記項4又は5に記載のアクリル系粘着剤組成物の硬化塗膜を備えたアクリル系粘着テープ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマーは単官能モノマーであるため、当該モノマーを重合する際にゲル化が抑制されており、粘着剤組成物の基材への塗布性に優れている。また、当該モノマーを用いて得られる粘着剤組成物はポリ(オリゴ)カーボネート基を有することにより粘着テープとした際に耐オレイン酸の性能に優れており、電子材料分野においてスマートフォンなどの小型デバイスへの適用にも有用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー、アクリル系ポリマー、アクリル系粘着剤組成物及びアクリル系粘着テープについて詳細に説明する。
【0018】
ポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー
本発明のポリ(オリゴ)カーボネート基を有する単官能アクリル重合性モノマー(以下、「本発明のモノマー」ともいう)は、下記一般式(1):
【0019】
【0020】
〔式中、R1は置換基を有していてもよい、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基である。Xは置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。nは1~100の整数である。Yは(メタ)アクリレート基を有する構造である。〕
で示されることを特徴とする。なお、本発明のモノマーは、電離放射線照射によって架橋しないモノマー(電離放射線非架橋性モノマー)である。
【0021】
上記特徴を有する本発明のモノマーは、単官能モノマーであるため、当該モノマーを重合する際にゲル化が抑制されており、粘着剤組成物の基材への塗布性に優れている。また、当該モノマーを用いて得られる粘着剤組成物はポリ(オリゴ)カーボネート基を有することにより粘着テープとした際に耐オレイン酸の性能に優れており、電子材料分野においてスマートフォンなどの小型デバイスへの適用にも有用性が高い。
【0022】
一般式(1)中、上記R1は置換基を有していてもよい、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基である。
【0023】
上記炭素数1~8のアルキル基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
【0024】
また、R1が置換基を有していてもよいフェニル基である場合には、例えば、
【0025】
【0026】
で示される2-(4-メトキシフェニル)エタンを含む構造が挙げられる。
【0027】
上記Xは置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。上記炭素数1~4のアルキル基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0028】
上記nは繰り返し単位の数を示す1~100の整数である。nは1~100の範囲であればよいが、本発明のモノマーの重量平均分子量Mwが500~2,000の範囲が好ましい点からは、nは3~6の範囲が好ましい。なお、本発明のモノマーの数平均分子量Mnは上記Mwと同様に500~2,000の範囲が好ましい。本明細書におけるMw、Mnの測定方法については実施例欄で後述する。本発明では、nの数により本発明のモノマーがポリカーボネート基を有する場合に加えて、オリゴカーボネート基を有する場合が想定される。よって、本発明ではそれらを包括する用語としてポリ(オリゴ)カーボネート基の用語を使用している。nが5以上であれば、ポリカーボネート基といえると考えられる。
【0029】
上記Yは本発明のモノマーにおいて単官能の重合性の官能基となる部分であり(メタ)アクリレート基を有する構造であればよいが、その中でも下記(2-1)~(2-5):
【0030】
【0031】
で示されるいずれかの構造を有することが好ましい。なお、(メタ)アクリレート基は、アクリレート基及び/又はメタクリレート基を意味する。
【0032】
従来、カーボネート構造を有するアクリル系モノマーについては、モノマー合成の都合から2官能以上の多官能モノマーばかりが知られているが、本発明では、例えば、下記の合成手順により、環状カーボネート化合物を触媒の存在下、開環重合することにより片末端に水酸基が付いたポリ(オリゴ)カーボネート基を合成し、次いで片末端の水酸基の部分に公知の手法により所望のアクリル基を導入することにより本発明のモノマーの一例を合成することができる。
【0033】
【0034】
アクリル系ポリマー
本発明のアクリル系ポリマーは、上記本発明のモノマーに由来する構成単位を含有するアクリル系ポリマーであって、当該構成単位の含有割合が1重量%以上であることを特徴とする。なお、本発明のアクリル系ポリマーは、アクリル系粘着剤組成物の主成分として使用することを前提としているため、本発明のアクリル系ポリマーには、本発明のモノマーに由来する構成単位に加えて粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーに由来する構成単位が含まれている。また、アクリル系粘着剤組成物に架橋剤を含まない場合には、本発明のアクリル系ポリマーには、電離放射線架橋性モノマーに由来する構成単位を含むように設計し、アクリル系粘着剤組成物の塗膜(粘着剤層前駆体)に電離放射線を照射することにより硬化塗膜(粘着剤層)を得ることができる。他方、アクリル系粘着剤組成物に架橋剤(例えばイソシアネート系架橋剤)を含む場合には、本発明のアクリル系ポリマーには、当該架橋剤と反応する反応性官能基(例えば水酸基)を有するモノマーに由来する構成単位が含まれるように設計することができる。この場合には、架橋剤を含むアクリル系粘着剤組成物の塗膜(粘着剤層前駆体)を静置又は加熱することにより硬化塗膜(粘着剤層)を得ることができる。
【0035】
上記本発明のモノマーは単官能の重合性の官能基を有しているため、当該モノマーを重合した際にリニアに重合する点でゲル化が抑制されている。よって、本発明のアクリル系ポリマーを含有する後記のアクリル系粘着組成物は基材に塗布する際の塗布性に優れるという効果を有する。
【0036】
本発明のアクリル系ポリマーの製造方法は限定的ではないが、例えば、本発明のモノマーを含有するモノマー組成物を、チオール化合物などの連鎖移動剤、及び重合開始剤の存在下、溶媒中でラジカル重合させることによって製造することができる。なお、モノマー組成物のラジカル重合は、汎用の重合方法を用いて行えばよい。重合開始剤は、ラジカル重合に用いられる公知の重合開始剤から選択することができる。
【0037】
上記ラジカル重合において用いられる溶媒としては、従来からラジカル重合に用いられている溶媒であれば限定的ではなく、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒などが挙げられ、特に酢酸エチルが好ましい。
【0038】
上記モノマー組成物には、前述の通り、粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーが含まれるとともに、アクリル系粘着剤組成物に架橋剤を含まない場合には、モノマー組成物には電離放射線架橋性モノマーが含まれる。また、アクリル系粘着剤組成物に架橋剤を含む場合には、モノマー組成物には当該架橋剤と反応する反応性官能基を有するモノマーが含まれる。
【0039】
粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーとしては、公知の単官能の(メタ)アクリレートモノマーの中でも、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、特にアルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。アルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレートは、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチルアクリレートがより好ましい。これらの粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーは単独又は二種以上で併用してもよい。
【0040】
他方、電離放射線架橋性モノマーとしては、例えば、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン等が挙げられる。
【0041】
上記モノマー組成物における本発明のモノマーの含有割合は限定的ではないが、後記のアクリル系粘着組成物の基材への塗布性、及び後記のアクリル系粘着テープの耐オレイン酸及び所望の粘着性能を確保する点では、モノマー全量を100質量%とした場合に(1)本発明のモノマーを1質量%以上含有することが好ましい。例えば、1~15質量%、1~10質量%等と設定することができる。また、(2)粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーは99質量%以下含有することが好ましい。例えば、80~99質量%、89~99質量%と設定することができる。また、(3)電離放射線架橋性モノマーを含有する場合には、電離放射線架橋性モノマーは0.01質量%以上含有することが好ましい。例えば、0.01~0.5質量%、0.01~0.3質量%と設定することができる。また、(4)架橋剤と反応する反応性官能基を有するモノマーを含有する場合には、当該反応性官能基を有するモノマーは0.01質量%以上含有することが好ましい。例えば、0.01~0.5質量%、0.01~0.3質量%と設定することができる。これらの各モノマーの含有量は、最終製品のアクリル系粘着テープの特性に応じて適宜調整することができる。
【0042】
本発明のアクリル系ポリマーの分子量は限定的ではないが、重量平均分子量Mwは500,000~10,000が好ましく、200,000~100,000がより好ましい。また、本発明のアクリル系ポリマーの数平均分子量Mnは300,000~5,000が好ましく、90,000~30,000がより好ましい。本発明のアクリル系ポリマーのMw及びMnが上記範囲内であると、後記のアクリル系粘着剤組成物とした場合に適度な粘度を有し塗工性がより向上する。また、本発明のアクリル系ポリマーの分散度(Mw/Mn)は10~1が好ましく、3~1がより好ましい。
【0043】
本発明のアクリル系ポリマーのゲル分率は、本発明のアクリル系ポリマーが架橋していない(すなわち、2官能モノマーに由来する構成単位を実質的に含まない)点からは10~0%が好ましく、1~0%がより好ましい。
【0044】
アクリル系粘着剤組成物
本発明のアクリル系粘着剤組成物(以下、「本発明の粘着剤組成物」ともいう。)は、本発明のアクリル系ポリマーを含有する態様と、本発明のモノマーを含有する態様とに大別することができる。
【0045】
上記本発明のアクリル系ポリマーを含有する態様においては、
(1)本発明のアクリル系ポリマーが電離放射線架橋性モノマーに由来する構成単位を含む場合には、本発明のアクリル系ポリマーに溶剤と、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等の本分野の公知の添加剤とを任意に含有する組成物をアクリル系粘着剤組成物とすることができる。この場合には、アクリル系粘着剤組成物の塗膜(粘着剤層前駆体)に電離放射線を照射することにより硬化塗膜(粘着剤層)を得ることができる。また、
(2)本発明のアクリル系ポリマーが架橋剤と反応する反応性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含む場合には、本発明のアクリル系ポリマーに架橋剤と、溶剤と、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等の本分野の公知の添加剤とを任意に含有する組成物をアクリル系粘着剤組成物とすることができる。この場合には、架橋剤を含むアクリル系粘着剤組成物の塗膜(粘着剤層前駆体)を静置又は加熱することにより硬化塗膜(粘着剤層)を得ることができる。
【0046】
本発明の粘着組成物に含まれる溶媒としては、前述のラジカル重合に用いられる溶媒がそのまま使用でき、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒などが挙げられ、特に酢酸エチルが好ましい。
【0047】
他方、(3)上記本発明のモノマーを含有する態様においては、本発明のモノマーと、粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーと、架橋剤と、溶剤と、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等の本分野の公知の添加剤とを任意に含有する組成物をアクリル系粘着剤組成物とすることができる。この場合には、アクリル系粘着剤組成物の塗膜(粘着剤層前駆体)に電離放射線を照射することにより硬化塗膜(粘着剤層)を得ることができる。
【0048】
アクリル系粘着テープ
本発明のアクリル系粘着テープ(以下、「本発明の粘着テープ」ともいう。)は、基材上に少なくとも上記本発明のアクリル系粘着剤組成物の硬化塗膜(粘着剤層)を備えていることを特徴とする。なお、粘着剤層は基材の片面又は両面のいずれに備えてもよい。
【0049】
基材の種類は特に限定されず、使用時に必要とされる性能(耐熱性等)に応じて適宜選定すれば良い。例えば、本発明の粘着テープの使用温度が150℃未満の場合は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の公知の樹脂基材を用いてもよい。粘着テープの使用温度が150℃以上の場合は、耐熱性に優れた樹脂基材が好ましく、具体的には、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン及びポリイミドからなる群より選ばれる樹脂で構成される基材が好ましい。中でも、ポリイミドで構成される基材が特に好ましい。基材の厚さは、12.5~125μmが好ましく、17.5~50μmがより好ましい。
【0050】
上記粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物の硬化塗膜(架橋反応による硬化塗膜)により形成されている。例えば、上記(1)、(3)に示した本発明の粘着剤組成物を用いる場合には、アクリル系粘着剤組成物の塗膜(粘着剤層前駆体)に電離放射線を照射することにより硬化塗膜(粘着剤層)を得ることができる。他方、上記(2)に示した本発明の粘着剤組成物を用いる場合には、架橋剤を含むアクリル系粘着剤組成物の塗膜(粘着剤層前駆体)を静置又は加熱することにより硬化塗膜(粘着剤層)を得ることができる。加熱する場合には、常温(例えば20℃)~300℃程度で加熱すればよい。
【0051】
アクリル系粘着剤組成物の硬化塗膜(粘着剤層)は、粘着テープの基材表面に直接形成してもよいし、一旦離型紙又はその他のフィルム上に形成した後に粘着剤層を粘着テープの基材表面に転写により貼り合わせてもよい。
【0052】
電離放射線照射装置としては限定されず公知の紫外線照射装置又は電子線照射装置が広く使用できる。なお、粘着剤組成物を塗布した後、電離放射線を照射をする前に適宜、乾燥により塗膜に含まれる溶剤を除去することができる。粘着剤組成物の塗布には、例えば、ロールコーター、ダイコーター、リップコーター等の塗布装置を使用できる。硬化塗膜としての粘着剤層の厚さ(粘着剤層を基材の両面に形成する場合には片面の厚さ)は、2~60μmが好ましく、3~50μmがより好ましい。
【0053】
本発明の粘着テープの粘着剤層(架橋後)のゲル分率は、50~100%が好ましく、70~100%がより好ましい。このような本発明の粘着テープの粘着剤層は耐溶剤性(特に耐オレイン酸)に優れており、後記する測定方法におけるオレイン酸に対する膨潤率は0~500%程度と耐オレイン酸に優れている。ゲル分率及び膨潤率の測定方法は実施例欄で後述する。
【0054】
本発明の粘着テープは木工、紙加工等の用途だけでなく、電子材料にも好適に適用することができる。本発明の粘着テープは耐溶剤性(特に耐オレイン酸)に優れているため、電子材料の製造時、加工時及び製造後の使用の際、とりわけ人の皮脂、汗等に触れる機会が多いスマートフォンなどの小型デバイスへも好適に適用することができる。
【実施例0055】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0056】
実施例1~5及び比較例1~3
<本発明のアクリル系モノマー1(単官能)>
本発明のアクリル系モノマー1として下記物質を合成した。
【0057】
【0058】
〔但し、Rはn-ヘプチル基である。nは約5である。〕
本発明のアクリル系モノマー1の合成手順は下記の通りである。
【0059】
第1工程:片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基の合成
窒素雰囲気下、1,3-ジオキサン-2-オン(20.4g,0.200mol)、トルエン(200mL)及びメタンスルホン酸(884mg,9.20mmol)を順に加えた。この混合物に対してn-ヘプタノール(4.65g,0.0400mol)を加え60℃で5時間攪拌した。その後、この反応混合物に対して炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した後、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮することにより片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基を得た。前記オリゴカーボネート基の物性は、淡黄色透明液体,収量=25.0g,Mn=911,Mw=1475,分散度1.62,水酸価=88.8mgKOH/gであった。なお、本明細書における分子量測定は下記測定方法により行った。
【0060】
重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、対象物0.01gを採取し、採取した対象物を試験管に供給した上で、試験管にTHF(テトラヒドロフラン)を加えてモノマーを200倍に希釈し、0.2μmメンブレンフィルターにてろ過を行って、測定試料を作製した。
【0061】
この測定試料を用いてGPC法によって、本発明重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。測定は下記の装置、条件で行った。
測定装置 島津製作所社製 LC-20A(CL)システム
測定条件 カラム:昭和電工社製 Shodex GPC KF-803F
移動相:テトラヒドロフラン使用 0.5mL/分
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
また、水酸基価の測定は、JIS K007-1992に従い測定した。
【0062】
第2工程:アクリル基の導入
窒素雰囲気下、第1工程で得られた片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基10.0gにカレンズAOI(イソシアネートアクリレート、昭和電工株式会社製)2.70gを加え、80℃で2.5時間攪拌した。その後、加熱を止め反応を停止して本発明のアクリル系モノマー1を得た。本発明のアクリル系モノマー1の物性は、淡黄色透明液体,Mn=1029,Mw=1638,分散度(Mw/Mn)=1.59であった。
【0063】
<本発明のアクリル系モノマー2(単官能)>
本発明のアクリル系モノマー2として下記物質を合成した。
【0064】
【0065】
〔但し、Rはn-ヘプチル基である。nは約5である。〕
本発明のアクリル系モノマー2の合成手順は下記の通りである。
【0066】
第1工程:片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基の合成
窒素雰囲気下、1,3-ジオキサン-2-オン(20.4g,0.200mol)、トルエン(200mL)及びメタンスルホン酸(884mg,9.20mmol)を順に加えた。この混合物に対してn-ヘプタノール(4.65g,0.0400mol)を加え60℃で5時間攪拌した。その後、この反応混合物に対して炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した後、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮することにより片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基を得た。前記オリゴカーボネート基の物性は、淡黄色透明液体,収量=25.0g,Mn=911,Mw=1475,分散度1.62,水酸価=88.8mgKOH/gであった。分子量及び水酸基価の測定方法は前述した通りである。
【0067】
第2工程:アクリル基の導入
第1工程で得られた片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基(10.0g)、アクリル酸(4.27g,59.3mmol)、4-メトキシフェノール(45.3mg)、トルエン(200mL)を順に加えた。この混合物に対してメタンスルホン酸(220mg,2.29mmol)を加えて、窒素気流下、100℃で7時間攪拌した。その後、この反応混合物を室温まで冷却し炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した後、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(60g,酢酸エチル600mL)にて精製を行った。回収した酢酸エチル溶液を濃縮することによって本発明のアクリル系モノマー2を得た。本発明のアクリル系モノマー2の物性は、淡黄色透明液体,収量=9.24g,Mn=822,Mw=1,485,分散度(Mw/Mn)=1.81であった。分子量の測定方法は前述した通りである。
【0068】
<本発明のアクリル系モノマー3(単官能)>
本発明のアクリル系モノマー3として下記物質を合成した。
【0069】
【0070】
〔但し、Rは
【0071】
【0072】
である。nは約5である。〕
本発明のアクリル系モノマー3の合成手順は下記の通りである。
【0073】
第1工程:片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基の合成
窒素雰囲気下、1,3-ジオキサン-2-オン(11.3g,0.110mol)、トルエン(100mL)及びメタンスルホン酸(482mg,5.02mmol)を順に加えた。この混合物に対して4-メトキシフェネチルアルコール(3.04g,0.0220mol)を加え60℃で5時間攪拌した。その後、この反応混合物に対して炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した後、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮することにより片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基を得た。前記オリゴカーボネート基の物性は、淡黄色透明液体,収量=13.4g,Mn=769,Mw=1,563,分散度(Mw/Mn)2.03,水酸基価=85.0mgKOH/gであった。分子量及び水酸基価の測定方法は前述した通りである。
【0074】
第2工程:アクリル基の導入
窒素雰囲気下、第1工程で得られた片末端に水酸基が付いたオリゴカーボネート基5.80gにカレンズAOI(イソシアネートアクリレート、昭和電工株式会社製)1.05gを加え、80℃で6時間攪拌した。その後、加熱を止め反応を停止して本発明のアクリル系モノマーを得た。本発明のアクリル系モノマー3の物性は、淡黄色透明液体,Mn=869,Mw=1,616,分散度(Mw/Mn)=1.86であった。分子量の測定方法は前述した通りである。
【0075】
<比較品のアクリル系モノマー(2官能)>
比較品のアクリル系モノマー(2官能)の合成手順は下記の通りである。
【0076】
窒素雰囲気下、kuraraypolyolC-590(ポリカーボネートジオール、平均分子量500、水酸基価=224.4、株式会社クラレ製)105.3gに対してカレンズAOI(イソシアネートアクリレート、昭和電工株式会社製)を67.5g加え、80℃で2.5時間攪拌した。その後、加熱を止め反応を停止して比較品のアクリル系モノマー(2官能)を得た。比較品のアクリル系モノマー(2官能)の物性は、淡黄色透明液体,Mn=1068,Mw=1465,分散度(Mw/Mn)=1.37であった。
【0077】
<アクリル系粘着剤組成物の調製>
攪拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入口を備えたセパラブルフラスコに、電離放射線非架橋性モノマーであるブチルアクリレート;本発明のアクリル系モノマー1~3(単官能);比較品のアクリル系モノマー(2官能);電離放射線架橋性モノマーである4-アクリロイルオキシベンゾフェノン;連鎖移動剤である1-ドデカンチオール;溶剤である酢酸エチルをそれぞれ表1に示した配合量(質量部)ずつ供給し、攪拌して反応液を作製した。セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換した後、ウォーターバスを用いて反応液を65℃に保持した。次に、セパラブルフラスコ内の反応液に重合開始剤である2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を表1に示した配合量(質量部)供給して重合を開始した。反応液を表1に示す時間に亘って65℃に保持し、重合体(電離放射線硬化型アクリル系ポリマー)をそれぞれ得た。
【0078】
【0079】
〔表中、ブチルアクリレートは粘着力を発現する電離放射線非架橋性モノマーである。4-Acryloyloxy Benzophenoneは電離放射線架橋性モノマーである。1-Dodecanethiolは連鎖移動剤(分子量調整剤)である。AIBNは開始剤である。酢酸エチルは溶媒である。〕
【0080】
<電離放射線の照射による粘着剤層の形成>
(塗工及び照射条件)
電離放射線硬化型アクリル系ポリマーのそれぞれを、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に厚み20μmとなるように塗工した。次に紫外線照射装置(へレウス(旧フュージョンUVシステムズ)社製 商品名「Ligth Hamer6」(Hバルブ使用))を用いて、UV-C照射強度:約48mW/cm2、積算光量:約100mJ/cm2となるように電離放射線硬化型アクリル系ポリマーに紫外線(UV-C)を照射して、電離放射線硬化型アクリル系ポリマーを硬化させた。
【0081】
物性測定及び試験例
(重合体の分子量測定)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、電離放射線硬化型アクリル系ポリマー0.01gを採取し、採取した電離放射線硬化型アクリル系ポリマーを試験管に供給した上で、試験管にTHF(テトラヒドロフラン)を加えて電離放射線硬化型アクリル系ポリマーを500倍に希釈し、0.2μmメンブレンフィルターフィルタリングを行って、測定試料を作製した。
【0082】
この測定試料を用いてGPC法によって、重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。測定は下記の装置、条件で行った。
測定装置 Waters社製 ACQUITY APCシステム
測定条件 カラム:Waters社製 HSPgel(TM)HR MB-M
移動相:テトラヒドロフラン使用 0.5mL/分
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
【0083】
(膨潤率及びゲル分率の測定)
粘着剤層を離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上より約0.2g(Ag)剥離し、ガラス瓶に採取した。ガラス瓶に各種溶剤を30mLをそそぎ、採取した粘着剤層を十分膨潤させた。膨潤した粘着剤層を各種溶剤ごと200メッシュの金網へ注ぎゲル分を採取した。採取したゲル分の質量(Bg)を測定した。採取したゲルを80℃に設定されたオーブンに2時間投入し、溶剤を十分に除去した。乾燥後のゲルの質量(Cg)を測定した。下記式に基づいて紫外線硬化後の電離放射線硬化型アクリル系ポリマーの膨潤率及びゲル分率を算出した。
膨潤率(質量%)=100×(B-A)/A
ゲル分率(質量%)=100×C/A
【0084】
【0085】
試験例の結果から明らかな通り、本発明のアクリル系モノマー1~3(単官能)は単官能モノマーであるため、これらのモノマーを重合する際にゲル化が抑制されている。また、本発明のアクリル系モノマー1~3を用いて得られる実施例1~5の重合体(電離放射線硬化型アクリル系ポリマー)の塗膜を紫外線硬化させてなる粘着剤層は、特にオレイン酸に対する膨潤率は0~500%程度の範囲であり耐オレイン酸に優れていることが分かる。これに対して、本発明のアクリル系モノマー(単官能)を有していない比較例1及び3の重合体の塗膜を紫外線硬化させてなる粘着剤層は、特にオレイン酸に対する膨潤率が1,000%を超えており、耐オレイン酸に劣ることが分かる。更に、比較品のアクリル系モノマー(2官能)(比較例2)は、このモノマーを重合する際にゲル化が生じており所望の粘着剤層を形成することができなかった。