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  • 特開-石積み擁壁及び石積み擁壁の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087887
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】石積み擁壁及び石積み擁壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
E02D29/02 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200010
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】303022156
【氏名又は名称】株式会社美松
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】宮田 洋志
【テーマコード(参考)】
2D048
【Fターム(参考)】
2D048AA23
(57)【要約】
【課題】複数段に積み上げられる積石同士の勾配を簡単に位置合わせして確実に固定することができ、急勾配の施工でも安全性を保持することができる石積み擁壁を提供する。
【解決手段】基礎となるコンクリート11上に積石20を複数段積み重ねて所定勾配に傾斜した石積み擁壁10であって、各段の積石20の胴の部分21をコンクリート11,12に一部が埋設されてコンクリート11,12上に露出した建築金物30で締結して固定した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎となるコンクリート上に積石を複数段積み重ねて所定勾配に傾斜した石積み擁壁であって、
前記各段の積石の胴の部分をコンクリートに一部が埋設されて前記コンクリート上に露出した建築金物で締結して固定したことを特徴とする石積み擁壁。
【請求項2】
請求項1記載の石積み擁壁であって、
前記各段の積石の胴の部分と前記コンクリートとの間に胴飼材を介在させて、前記各段の積石の前面を前記所定勾配の傾斜に合わせて成ることを特徴とする石積み擁壁。
【請求項3】
基礎となるコンクリート上に積石を複数段積み上げて所定勾配に傾斜した石積み擁壁の施工方法であって、
基礎となるコンクリートを打設する打設工程と、
前記コンクリートが硬化する前に前記コンクリートの積石の胴の部分に対応する位置に、建築金物の中間部を埋設して両端部を露出させる埋設工程と、
前記コンクリートが硬化した後で、前記建築金物の両端部間に積石を設置して前記積石の胴の部分を前記建築金物の両端部で締結して固定する固定工程と、
を有し、
最下段の積石から最上段の積石まで前記各工程を順次繰り返して前記傾斜した擁壁を完成させることを特徴とする石積み擁壁の施工方法。
【請求項4】
請求項3記載の石積み擁壁の施工方法であって、
前記各段の積石の胴の部分と前記コンクリートとの間に胴飼材を介在させる際に、前記各段の積石の前面を前記所定勾配の傾斜に合わせることを特徴とする石積み擁壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積石を複数段積み上げて成る石積み擁壁(石積み構造物)及び石積み擁壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の石積み擁壁として、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された石積み擁壁1は、図9に示すように、基礎2上に自然石から成る積石3を複数段積み上げて、例えば5分勾配(傾斜角63°)に傾斜した石積み構造物である。そして、各段の積石3の背面にはアンカー4が固定され、このアンカー4は金属線5を介して棒状の杭6で固着されている。また、各段の積石3の背面には裏込め材7が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-190181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の石積み擁壁1では、積石3の背面にアンカー4を固定し、このアンカー4を金属線5を介して棒状の杭6に固着するため、積石3の勾配の位置合わせが極めて面倒で作業性が悪く、また、アンカー4等による積石3の固定では、積石3が基礎2の浮力に負けて各段の積石3に位置ズレが発生し、安全性の観点から例えば3分勾配(傾斜角73°)等の急勾配の石積み擁壁1を施工することは難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、複数段に積み上げられる積石同士の勾配を簡単に位置合わせして確実に固定することができ、急勾配の施工でも安全性を保持することができる石積み擁壁及び石積み擁壁の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の石積み擁壁は、基礎となるコンクリート上に積石を複数段積み重ねて所定勾配に傾斜した石積み擁壁であって、前記各段の積石の胴の部分をコンクリートに一部が埋設されて前記コンクリート上に露出した建築金物で締結して固定したことを特徴とする。
【0007】
本発明の石積み擁壁の施工方法は、基礎となるコンクリート上に積石を複数段積み上げて所定勾配に傾斜した石積み擁壁の施工方法であって、基礎となるコンクリートを打設する打設工程と、前記コンクリートが硬化する前に前記コンクリートの積石の胴の部分に対応する位置に、建築金物の中間部を埋設して両端部を露出させる埋設工程と、前記コンクリートが硬化した後で、前記建築金物の両端部間に積石を設置して前記積石の胴の部分を前記建築金物の両端部で締結して固定する固定工程と、を有し、最下段の積石から最上段の積石まで前記各工程を順次繰り返して前記傾斜した擁壁を完成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数段に積み上げられる各積石の胴の部分をコンクリートに一部が埋設された建築金物で締結して固定することにより、複数段に積み上げられる積石同士の勾配を簡単に位置合わせして確実に固定することができ、急勾配の施工でも安全性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の石積み擁壁を示す側断面図である。
図2】上記石積み擁壁に用いられる建築金物の平面図である。
図3】上記石積み擁壁の基礎となるコンクリートに積石の形に切った型枠を載せた状態を示す斜視図である。
図4】上記型枠に沿ってコンクリートに印を付けている状態を示す斜視図である。
図5】上記コンクリートに複数の印を横方向に並列に付けた状態を示す斜視図である。
図6】上記コンクリートの複数の印の各後側の位置に建築金物の中間部をそれぞれ埋め込んで埋設した状態を示す斜視図である。
図7】上記各建築金物の両端部間に積石を胴飼材を介して載置した状態を示す斜視図である。
図8】上記各積石の胴の部分を建築金物で締結して固定した状態を示す斜視図である。
図9】従来の石積み擁壁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態の石積み擁壁を示す側断面図、図2は石積み擁壁に用いられる建築金物の平面図、図3は石積み擁壁の基礎となるコンクリートに積石の形に切った型枠を載せた状態を示す斜視図、図4は型枠に沿ってコンクリートに印を付けている状態を示す斜視図、図5はコンクリートに複数の印を横方向に並列に付けた状態を示す斜視図、図6はコンクリートの複数の印の各後側の位置に建築金物の中間部をそれぞれ埋め込んで埋設した状態を示す斜視図、図7は各建築金物の両端部間に積石を胴飼材を介して載置した状態を示す斜視図、図8は各積石の胴の部分を建築金物で締結して固定した状態を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、石積み擁壁10は、基礎となるコンクリート11上に自然石を加工した四角錐体(略直方体)状の間知石等から成る積石20を複数段積み重ねて3分勾配(傾斜角θ=73°)に傾斜した石積み構造物である。即ち、図1図8に示すように、最下段の1段目の積石20の凹んだ胴の部分21は、基礎となるコンクリート11に中間部(一部)31が埋設されてコンクリート11上に露出した針金(建築金物)30の両端部32,32で締結されて固定され、2段目から最上段の積石20の凹んだ胴の部分21は、裏込めコンクリートを兼ねた胴込めコンクリート12に中間部31が埋設されて胴込めコンクリート12上に露出した針金30の両端部32,32で締結されて固定されている。
【0013】
また、図1に示すように、各段の積石20の凹んだ胴の部分21と各コンクリート11,12との間には、自然石を加工した楔形状の胴飼石(胴飼材)25が介在されており、各段の積石20の前面22を3分勾配(傾斜角θ=73°)の傾斜に合わせてそれぞれ傾斜させている。さらに、基礎となるコンクリート11と胴込めコンクリート12との間、及び、上下の胴込めコンクリート12,12の間は、裏込め石(裏込め材)13で隙間なく充填されている。尚、裏込め材は、裏込め石13でなくても良く、裏込めコンクリートや他の部材でも良い。
【0014】
次に、石積み擁壁10の施工手順を図2図7及び図1に沿って説明する。
【0015】
まず、図1に示すように、施工現場の構築箇所8に傾斜した法面9を作る。そして、図2に示すように、構築箇所8に複数段積み上げられる積石20の幅よりもやや大きめの幅を有する針金(建築金物)30を予め準備しておく(準備工程)。この針金30は、図2に示すように、金属を細長く糸状に延ばしたもので、円環状の折り曲げ部31aを有する中間部31と両端部32,32とで平面略U字状に形成されている。
【0016】
次に、図3に示すように、構築箇所8に基礎となる生のコンクリート11を基準の高さで法面9の位置まで打設する(打設工程)。
【0017】
そして、図3図5に示すように、硬化する前のコンクリート11に積石20の形状に切った型枠40を載せ、この型枠40に沿って棒41によりコンクリート11に複数の目印42を横方向に並列にそれぞれ付ける(目印付与工程)。
【0018】
次に、図6に示すように、硬化する前のコンクリート11の複数の目印42の各後側の位置に針金30の中間部(一部)31をそれぞれ埋設する。詳述すると、コンクリート11が硬化する前に、コンクリート11の積石20の凹んだ胴の部分21に対応する目印42の位置に、針金30の中間部31を埋め込んで埋設し、針金30の両端部32,32をそれぞれ露出させる(埋設工程)。
【0019】
次に、図7に示すように、硬化したコンクリート11上の各針金30の両端部32,32間に積石20を楔形状の胴飼石(胴飼材)25を介して載置する(載置工程)。この積石20の凹んだ胴の部分21とコンクリート11との間に胴飼石25介在させる際に、積石20の前面22の傾斜角度を角度測定計45で測って3分勾配(傾斜角θ=73°)のの傾斜に合わせる。
【0020】
次に、図8に示すように、積石20の凹んだ胴の部分21を針金30の両端部32,32で締結し、積石20をコンクリート11上に固定する(固定工程)。このようにして、基礎となるコンクリート11上の横方向に1段目(最下段)の積石20を並列に複数個位置決めしてそれぞれ固定する。
【0021】
次に、コンクリート11上の1段目の各積石20の背面と法面9との間に、裏込め石(裏込め材)13を充填し、この裏込み石13の上に裏込めコンクリートを兼ねた生の胴込めコンクリート12を基準の高さで法面9の位置まで打設する(打設工程)。そして、1段目の積石20の場合と同様に、硬化する前の胴込めコンクリート12に型枠40を介して目印42を付け(目印付与工程)、針金30の中間部31を胴込めコンクリート12中に埋設させる(埋設工程)。その後、硬化した胴込めコンクリート12上に2段目の積石20を針金30の両端部32,32で締結して固定する(固定工程)。
【0022】
そして、3段目の積石20から最上段の積石20まで、2段目の積石20の各工程と同様の打設工程、目印付与工程、埋設工程、固定工程を順次繰り返すことで、図1に示すような3分勾配(傾斜角θ=73°)に傾斜した石積み擁壁10が完成する。
【0023】
このように、複数段に積み上げられる各積石20の胴の部分21をコンクリート11,12に中間部31が埋設された針金30の両端部32,32で締結し、各積石20をコンクリート11,12上に固定するようにしたことにより、複数段に積み上げられる積石20同士の勾配を簡単に位置合わせして確実に固定することができ、3分勾配(傾斜角θ=73°)の急勾配の施工でも安全性を保持することができる。これにより、例えば、道路の谷手側に石積み擁壁10を構築した場合に、道路用地を広く確保することができる。
【0024】
尚、前記実施形態によれば、擁壁を3分勾配(傾斜角θ=73°)に傾斜させた形成した場合について説明したが、擁壁を2分勾配(傾斜角θ=78°)に傾斜させて形成しても良い。さらに、擁壁を5分勾配(傾斜角θ=63°)に傾斜させて形成する場合に前記実施形態を適用できることは勿論である。
【0025】
また、前記実施形態によれば、積石として自然石を加工した四角錐体の間知石等の石材を用いたが、積石として間知石以外の石材を用いても良く、さらに、積石としてコンクリート製でブロック状の擬石を用いても良い。
【0026】
さらに、前記実施形態によれば、建築金物として針金を用いたが、針金以外の金物を用いても良い。
【0027】
さらに、前記実施形態によれば、胴飼材として自然石を加工した楔形状の胴飼石を用いたが、胴飼材として楔形状のコンクリート片や楔形状の硬いレンガ等を用いても良い。
【符号の説明】
【0028】
10 石積み擁壁
11 コンクリート(基礎)
12 胴込めコンクリート(コンクリート)
20 積石
21 胴の部分
22 前面
25 胴飼石(胴飼材)
30 針金(建築金物)
31 中間部(一部)
32,32 両端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9