(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087938
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】鉄道車両用歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/029 20120101AFI20220607BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20220607BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20220607BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20220607BHJP
B61C 9/38 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
F16H57/029
F16J15/447
F16C33/80
F16H57/04 J
B61C9/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200087
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】志賀 亮介
【テーマコード(参考)】
3J042
3J063
3J216
【Fターム(参考)】
3J042BA05
3J042CA10
3J042CA21
3J042CA22
3J042DA06
3J063AA07
3J063AB02
3J063AC01
3J063BA11
3J063CA01
3J063CD42
3J063CD67
3J063XE22
3J063XF14
3J216AA03
3J216AA12
3J216AB12
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA05
3J216CB07
3J216CB18
3J216CC41
3J216CC68
(57)【要約】
【課題】歯車軸41に外嵌される筒状の油切り部材9a,9bにより、第1蓋本体8a
2との間で構成されるラビリンスシールから漏出する潤滑油を歯車箱の第1側壁31側に導く導油孔10a,10bが、第1軸受7aが内嵌される第1軸受取付部8a
1の下部に設けられる鉄道車両用歯車装置1において、第1軸受取付部8a
1と第1蓋本体8a
2とを有し、歯車箱の第1側壁31に装着される第1軸受蓋8aの外へ潤滑油が漏出するのを抑制し、第1軸受蓋8aの軽量化を図る。
【解決手段】第1軸受蓋8aの第1軸受取付部8a
1の側端部で第1軸受7aよりも径方向外方に位置する部分に、環状の凹部11が設けられると共に、凹部11の開口111を閉塞するリング12が第1軸受取付部8a
1に装着され、導油孔10a,10bが、歯車箱の第1側壁31に設けられた戻し孔31aに、凹部11の下部を介して連通する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車箱を備え、駆動源の出力軸に連結される小歯車と、車軸に連結される大歯車とが互いに水平方向に噛合した状態で歯車箱内に収納される鉄道車両用歯車装置であって、
小歯車から駆動源に向かう方向を軸方向一方、その反対方向を軸方向他方として、軸方向一方側の歯車箱の第1側壁に、小歯車の歯車軸の軸方向一方側の部分を軸支する第1軸受が内嵌される第1軸受取付部と、第1軸受取付部の軸方向一方側の側端部に設けられ、第1軸受取付部から軸方向一方に突出する歯車軸を囲う第1蓋本体とを有する第1軸受蓋が装着され、軸方向他方側の歯車箱の第2側壁に、歯車軸の軸方向他方側の端部を軸支する第2軸受が内嵌される第2軸受取付部と、第2軸受取付部の軸方向他方側の側端部に設けられる第2蓋本体とを有する第2軸受蓋が装着され、
歯車軸に外嵌される筒状の油切り部材によって、第1蓋本体との間にラビリンスシールが構成され、第1軸受蓋の第1軸受取付部の下部に、ラビリンスシールから漏出する潤滑油を歯車箱の第1側壁側に導く導油孔が設けられるものにおいて、
第1軸受蓋の第1軸受取付部の軸方向他方側の側端部で第1軸受よりも径方向外方に位置する部分に、軸方向他方側に開口する環状の凹部が設けられると共に、凹部の開口を閉塞するリングが第1軸受取付部に装着され、導油孔が、歯車箱の第1側壁に設けられた、潤滑油を歯車箱内の下部に戻す戻し孔に、凹部の下部を介して連通することを特徴とする鉄道車両用歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車箱を備え、駆動源の出力軸に連結される小歯車と、車軸に連結される大歯車とが互いに水平方向に噛合した状態で歯車箱内に収納される鉄道車両用歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鉄道車両用歯車装置として、小歯車から駆動源に向かう方向を軸方向一方、その反対方向を軸方向他方として、軸方向一方側の歯車箱の第1側壁に、小歯車の歯車軸の軸方向一方側の部分を軸支する第1軸受が内嵌される第1軸受取付部と、第1軸受取付部の軸方向一方側の側端部に設けられ、第1軸受取付部から軸方向一方に突出する歯車軸を囲う第1蓋本体とを有する第1軸受蓋が装着され、軸方向他方側の歯車箱の第2側壁に、歯車軸の軸方向他方側の端部を軸支する第2軸受が内嵌される第2軸受取付部と、第2軸受取付部の軸方向他方側の側端部に設けられる第2蓋本体とを有する第2軸受蓋が装着され、歯車軸に外嵌される筒状の油切り部材によって、第1蓋本体との間にラビリンスシールが構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような鉄道車両用歯車装置の中には、第1軸受蓋の第1軸受取付部の下部に、ラビリンスシールから漏出する潤滑油を歯車箱の第1側壁側に導く導油孔が設けられるものもある。このものでは、ラビリンスシールから漏出する潤滑油を、導油孔を通じて歯車箱内の下部に戻し、潤滑油が第1軸受蓋外に漏出するのを抑制する。
【0004】
しかし、歯車箱の第1側壁には、小歯車を歯車箱内に収納するために、比較的大きな開口を開設しており、この開口に装着する第1軸受蓋は、開口の大きさに応じた大きさにする必要があるため、第1軸受蓋は、重量の嵩むものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、第1軸受蓋外への潤滑油の漏出を抑制しつつ、第1軸受蓋の軽量化が図られた鉄道車両用歯車装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、歯車箱を備え、駆動源の出力軸に連結される小歯車と、車軸に連結される大歯車とが互いに水平方向に噛合した状態で歯車箱内に収納される鉄道車両用歯車装置であって、小歯車から駆動源に向かう方向を軸方向一方、その反対方向を軸方向他方として、軸方向一方側の歯車箱の第1側壁に、小歯車の歯車軸の軸方向一方側の部分を軸支する第1軸受が内嵌される第1軸受取付部と、第1軸受取付部の軸方向一方側の側端部に設けられ、第1軸受取付部から軸方向一方に突出する歯車軸を囲う第1蓋本体とを有する第1軸受蓋が装着され、軸方向他方側の歯車箱の第2側壁に、歯車軸の軸方向他方側の端部を軸支する第2軸受が内嵌される第2軸受取付部と、第2軸受取付部の軸方向他方側の側端部に設けられる第2蓋本体とを有する第2軸受蓋が装着され、歯車軸に外嵌される筒状の油切り部材によって、第1蓋本体との間にラビリンスシールが構成され、第1軸受蓋の第1軸受取付部の下部に、ラビリンスシールから漏出する潤滑油を歯車箱の第1側壁側に導く導油孔が設けられるものにおいて、第1軸受蓋の第1軸受取付部の軸方向他方側の側端部で第1軸受よりも径方向外方に位置する部分に、軸方向他方側に開口する環状の凹部が設けられると共に、凹部の開口を閉塞するリングが第1軸受取付部に装着され、導油孔が、歯車箱の第1側壁に設けられた、潤滑油を歯車箱内の下部に戻す戻し孔に、凹部の下部を介して連通することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1軸受蓋の第1軸受取付部に環状の凹部が設けられているため、第1軸受蓋の重量は、凹部の分、軽減される。また、凹部の軸方向他方側の開口はリングによって閉塞されるため、凹部内に潤滑油が浸入する虞はない。さらに、ラビリンスシールから導油孔に漏出する潤滑油は、凹部を介して第1側壁の戻し孔から歯車箱内の下部に戻される。したがって、潤滑油が第1軸受蓋外に漏出するのが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の鉄道車両用歯車装置の一実施形態を示す側面図。
【
図2】
図1に示す鉄道車両用歯車装置のA-A断面図。
【
図3】
図1に示す鉄道車両用歯車装置のB-B要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、本発明の鉄道車両用歯車装置の一実施形態を説明する。鉄道車両用歯車装置1は、吊り装置2によって鉄道車両の床下に固定される。鉄道車両用歯車装置1は、歯車箱3を備えている。歯車箱3内には、不図示の駆動源の出力軸に連結される小歯車4と、車軸51に連結される大歯車5とが互いに水平方向に噛合した状態で歯車箱3内に収納されている。歯車箱3の上面の開口には、小歯車4及び大歯車5の上部を覆う蓋体6が締結されている。
【0011】
図2及び
図3を参照して、歯車箱3では、小歯車4から不図示の駆動源に向かう方向を軸方向一方、その反対方向を軸方向他方として、軸方向一方側の歯車箱3の第1側壁31に、小歯車4の歯車軸41の軸方向一方側の部分41aを軸支する第1軸受7aが内嵌される第1軸受取付部8a
1と、第1軸受取付部8a
1の軸方向一方側の側端部に設けられ、第1軸受取付部8a
1から軸方向一方に突出する歯車軸41を囲う第1蓋本体8a
2とを有する第1軸受蓋8aが装着されている。また、軸方向他方側の歯車箱3の第2側壁32には、歯車軸41の軸方向他方側の端部41bを軸支する第2軸受7bが内嵌される第2軸受取付部8b
1と、第2軸受取付部8b
1の軸方向他方側の側端部に設けられる第2蓋本体8b
2とを有する第2軸受蓋8bが装着されている。第1軸受蓋8aでは、第1軸受取付部8a
1と第1蓋本体8a
2が別体とされ、第1蓋本体8a
2が第1軸受取付部8a
1に締結されている。第2軸受蓋8bでは、第2軸受取付部8b
1と第2蓋本体8b
2が一体に設けられている。
【0012】
歯車箱3の第1側壁31及び第2側壁32には、夫々、小歯車4を歯車箱3内に収納するための開口が形成され、これらの開口に第1軸受蓋8aの第1軸受取付部8a1及び第2軸受蓋8bの第2軸受取付部8b1が内嵌している。また、第1軸受蓋8aでは、第1軸受取付部8a1の軸方向一方側の側端部の外周にはフランジが延在し、このフランジの軸方向他方側の側面が第1側壁31の軸方向一方側の側面に面接触され、ボルトが軸方向一方側から他方側に向けて歯車箱3の第1側壁31に螺入されて、第1軸受蓋8aが歯車箱3に締結されている。この締結は、上記フランジの周方向に所定間隔で行われる。第1軸受7aは円筒ころ軸受であり、その外輪が第1軸受取付部8a1に内嵌し、内輪が歯車軸41の軸方向一方側の部分41aに外嵌している。第2軸受7bも円筒ころ軸受であり、その外輪が第2軸受蓋8bの第2軸受取付部8b1に内嵌し、内輪が歯車軸41の軸方向他方側の端部41bに外嵌している。第1軸受蓋8aと同様に、第2軸受蓋8bの軸方向他方側の側端部、すなわち、第2蓋本体8b2の外周にもフランジが延在し、このフランジの軸方向一方側の側面が第2側壁32の軸方向他方側の側面に面接触され、ボルトが軸方向他方側から一方側に向けて歯車箱3の第2側壁32に螺入されて、第2軸受蓋8bが歯車箱3に締結されている。この締結も、第2蓋本体8b2のフランジの周方向に所定間隔で行われる。
【0013】
第1軸受蓋8aでは、歯車軸41に外嵌された油切り部材9a,9bによって、第1蓋本体8a2との間にラビリンスシールが構成されている。第1軸受蓋8aの第1軸受取付部8a1の下部には、ラビリンスシールから漏出する潤滑油Lを歯車箱3の第1側壁31側に導く複数の導油孔10a,10bが設けられている。さらに、第1軸受蓋8aの第1軸受取付部8a1には、軸方向他方側の側端部で第1軸受7aよりも径方向外方に位置する部分に、軸方向他方側に開口する環状の凹部11が設けられている。そして、凹部11の開口111を閉塞するリング12が第1軸受取付部8a1に装着されている。第1軸受取付部8a1の軸方向他方側の側端部には、凹部11の内周縁よりも内方側の部分から第1軸受取付部8a1の外周端に至るまでの側端面が、軸方向一方側に配置され、段部13が形成されている。リング12の内周縁が段部13に圧入又は焼嵌め等により外嵌して、リング12が第1軸受取付部8a1に装着される。
【0014】
また、導油孔10a,10bは、凹部11の下部の軸方向一方端に接続されている。そして、歯車箱3の第1側壁31には、第1軸受取付部8a1の外周面下部に接する部分に、潤滑油Lを歯車箱3内の下部に戻す戻し孔31aが設けられ、第1軸受取付部8a1の下部には、凹部11を戻し孔31aに接続する接続孔14が設けられている。したがって、導油孔10a,10bは、凹部11の下部を介して戻し孔31aに連通している。
【0015】
図1に戻って、歯車箱3内の下部には、潤滑油Lが貯留され、大歯車5の下部が潤滑油Lに浸漬される第1油溜り部3aと、小歯車4の下方に位置する第2油溜り部3bと、第1油溜り部3aと第2油溜り部3bを仕切る第1仕切壁3cとが設けられている。第1仕切壁3cには、第2油溜り部3bと第1油溜り部3aを連通する第1連通孔3c
1が形成されている。また、歯車箱3内の下部には、第1油溜り部3aを挟んで第2油溜り部3bと反対側に位置する第3油溜り部3dと、第3油溜り部3dと第1油溜り部3aを仕切る第2仕切壁3eと、大歯車5の一側面よりも歯車箱3の第1側壁31側の位置で、第1仕切壁3cと第2仕切壁3eに跨るように延在する隔壁3fが設けられている。
【0016】
さらに、隔壁3fと歯車箱3の第1側壁31の間には、第1油溜り部3aに対し隔壁3fで仕切られた第4油溜り部3gが画成されている。さらにまた、第2仕切壁3eには、第3油溜り部3dと第1油溜り部3aを連通する第2連通孔3e
1が形成されている。そして、
図2に示すように、第1仕切壁3c及び第2仕切壁3eの両方には、第2油溜り部3bが第4油溜り部3gを介して第3油溜り部3dに連通する第3連通孔3c
2が形成されている。戻し孔31aの第1軸受取付部8a
1と反対側に位置する戻し口31a
1は、第1仕切壁3cの第3連通孔3c
2の上方に位置している。なお、第1仕切壁3c及び第2仕切壁3eには、第3連通孔3c
2を形成せず、第4油溜り部3gに面する部分を切除して、第2油溜り部3b、第4油溜り部3g及び第3油溜り部3dを連通させることもできる。
【0017】
このような鉄道車両用歯車装置1では、第1軸受蓋8aの第1軸受取付部8a1に環状の凹部11が設けられているため、第1軸受蓋8aの重量は、凹部11の分、軽減されている。また、凹部11の軸方向他方側の開口111はリング12によって閉塞されるため、凹部11内に潤滑油が浸入する虞はない。さらに、第1軸受7aに供給され、潤滑により温度が上昇して粘度が低下し、ラビリンスシールから漏出する潤滑油Lを第1軸受蓋8aの第1軸受取付部8a1の導油孔10a,10bに導き、導油孔10a,10bに導いた潤滑油Lを、凹部11の下部から戻し孔31aを通じて第4油溜り部3gに流出させることができる。したがって、潤滑油Lが第1軸受蓋8aの外に漏出するのが抑制される。
【0018】
なお、鉄道車両用歯車装置1では、
図2に示すように、歯車軸41の軸方向他方側の端部41bにも潤滑油Lが一部供給されることを考慮して、歯車箱3の第2側壁32に第2油溜り部3bに流出させる戻し孔32aを形成してもいる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1軸受8a及び第2軸受8bに採用される軸受の種類、油切り部材9a,9bの構成及び構造等の細部については、様々な態様を採用することができる。また、歯車箱3の構成及び構造についても様々な態様を採用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1…鉄道車両用歯車装置、3…歯車箱、31…第1側壁、31a…戻し孔、32…第2側壁、4…小歯車、41…歯車軸、41a…歯車軸41の軸方向一方側の部分、41b…歯車軸41の軸方向他方側の端部、5…大歯車、51…車軸、7a…第1軸受、7b…第2軸受、8a…第1軸受蓋、8a1…第1軸受取付部、8a2…第1蓋本体、8b…第2軸受蓋、8b1…第2軸受取付部、8b2…第2蓋本体、9a,9b…油切り部材、10a,10b…導油孔、11…凹部、111…開口、12…リング、L…潤滑油。