(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087956
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】トンネルハウス用杭打機
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
A01G13/02 L
A01G13/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200117
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108958
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 英一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 明
(72)【発明者】
【氏名】井上 典子
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024EB02
(57)【要約】
【課題】 操作対象付近で作業者が安心して手動操作可能にする。
【解決手段】 本発明のトンネルハウス用杭打機1は保持部2及び打込部3を備える。保持部2は、一直線状の杭Pの両端部を保持する左右一対の保持手段11と、該一対の保持手段11をそれぞれ回動可能に支持するとともに、前記一直線状の杭Pを前記逆U字状に折曲させる一対の回動手段13と、杭Pを前記逆U字状に折曲させた状態で該一対の回動手段13の回動位置を係止する係止手段と、一対の回動手段13を前記逆U字状への回動以前の状態にそれぞれ復帰させるように付勢する付勢手段とを含む。打込部3は、該保持部2を昇降移動可能に支持する打込手段と、前記昇降移動における下死点近傍で前記係止を解除する係止解除手段と、保持部2が前記下死点近傍から上昇移動するときに、一対の回動手段13を徐々に前記回動以前の状態にそれぞれ復帰させる回動規制手段とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一直線状の杭の両端部を保持するとともに、該杭を逆U字状に折曲するように構成されている保持部と、該保持部とともに該保持部により保持された杭を下降させ、該杭の両端側を圃場に打ち込むように構成されている打込部とを備えており、
保持部は、一直線状の杭の両端部における保持部位をそれぞれ保持可能に構成されている左右一対の保持手段と、該一対の保持手段をそれぞれ回動可能に支持するとともに該回動が手動操作可能に構成されており、互いに逆方向へ略90°それぞれ回動させると前記一直線状の杭を前記逆U字状に折曲させるようになっている一対の回動手段と、前記杭を前記逆U字状に折曲させた状態で該一対の回動手段の回動位置を係脱可能に係止する係止手段と、前記一対の回動手段を前記逆U字状への回動以前の状態にそれぞれ復帰させるように付勢する付勢手段とを含んでおり、
打込部は、該保持部を手動操作での昇降移動可能に支持する打込手段と、前記昇降移動における下死点近傍において前記係止手段による前記係止を解除する係止解除手段と、前記保持部が前記下死点近傍から上昇移動するときに、該上昇に伴って前記一対の回動手段を徐々に前記回動以前の状態にそれぞれ復帰させる回動規制手段とを含んでいるトンネルハウス用杭打機。
【請求項2】
前記保持部及び打込部は、左右の前輪及び後輪により圃場を走行可能に構成された走行機体の後端部に設けられるとともに、作業者が該走行機体の左右いずれか一側方において操作可能に構成されており、
前記一側方側の後輪は、もう一方の後輪に対し、相対的に、車軸が前記保持部及び打込部に近接させて設けられている請求項1記載のトンネルハウス用杭打機。
【請求項3】
前記一側方側の後輪は、前記もう一方の後輪に対して相対的に小径に形成されている請求項2記載のトンネルハウス用杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝を跨ぐ逆U字状の杭を圃場に所定間隔をおいて手動操作により打ち込むように構成されたトンネルハウス用杭打機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルハウスを設置する場合、圃場の土中に逆U字状に杭を人手で差し込んでいる(大半がこの作業形態)。杭を人手で差し込む場合は、細い(直径が8mm位)杭を手で握って保持し土中へ差し込む作業を連続して行う必要があり、しかもそれが腰を屈めての作業となるため、大変な重労働作業となっている。例えば、淡路島のレタス栽培では一反に1200本の杭を打つときに、杭一本につき左右2カ所の差し込みを行うため、2400回もの差し込みが必要となる。
【0003】
この作業負荷を軽減するための従来の装置として、特許文献1に記載されたトンネルマルチ用支柱打込装置101を例示する。この装置101は、
図12に示すように、杭(支柱)Pを保持可能な支柱保持部111、117及び杭Pを地面に打ち込む支柱打込部115を備えている。そして、支柱保持部111、117は、杭Pの長手方向一端側を受け止める受け部111と、該受け部111の上方に位置して、前記杭Pの長手方向他端部が前記一端側の斜め上方に位置するように杭Pの長手方向中途を支持する支持部117とからなる。支柱打込部115の下端には、杭Pの中央及び中央の両側方をそれぞれ押す押込部137が設けられ、前記三カ所で杭Pを押して杭Pを地面に押し込むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のトンネルマルチ用支柱打込装置101は4輪台車(自走式)にエンジン、モーター、走行駆動部、油圧シリンダー他を装備しての複雑な構成の機械となっているため、高価になっているという課題がある。
【0006】
そこで、手動操作により杭を圃場に打ち込むように構成することが考えられ、その場合はバネや錘を利用して作業者の作業負担を軽減したり、作業速度を速めたりすることが好ましいが、そうすると、バネや錘の作用による機械の急激な動作により、それを操作する作業者に機械が衝突したり、同機械の動きや動作音が作業者を驚かせたりするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のトンネルハウス用杭打機は、
一直線状の杭の両端部を保持するとともに、該杭を逆U字状に折曲するように構成されている保持部と、該保持部とともに該保持部により保持された杭を下降させ、該杭の両端側を圃場に打ち込むように構成されている打込部とを備えており、
保持部は、一直線状の杭の両端部における保持部位をそれぞれ保持可能に構成されている左右一対の保持手段と、該一対の保持手段をそれぞれ回動可能に支持するとともに該回動が手動操作可能に構成されており、互いに逆方向へ略90°それぞれ回動させると前記一直線状の杭を前記逆U字状に折曲させるようになっている一対の回動手段と、前記杭を前記逆U字状に折曲させた状態で該一対の回動手段の回動位置を係脱可能に係止する係止手段と、前記一対の回動手段を前記逆U字状への回動以前の状態にそれぞれ復帰させるように付勢する付勢手段とを含んでおり、
打込部は、該保持部を手動操作での昇降移動可能に支持する打込手段と、前記昇降移動における下死点近傍において前記係止手段による前記係止を解除する係止解除手段と、前記保持部が前記下死点近傍から上昇移動するときに、該上昇に伴って前記一対の回動手段を徐々に前記回動以前の状態にそれぞれ復帰させる回動規制手段とを含んでいる。
【0008】
前記「上昇に伴って前記一対の回動手段を徐々に前記回動以前の状態にそれぞれ復帰させる」とは、特に限定されないが、連続的な動作により徐々に復帰させる態様や、段階的な動作により徐々に復帰させる態様や、それらの動作を組み合わせた態様等を例示する。
【0009】
この構成によれば、手動操作により前記逆U字状の杭を圃場に打ち込んだ後、前記保持部が上昇移動するとき、前記回動規制手段により前記一対の回動手段の復帰動作が徐々になされるように規制されており、急激な復帰動作が行われないようになっている。そのため、復帰動作中の前記回動手段が作業者に衝突したり、同回動手段の動きや動作音が作業者を驚かせたりすることを防止でき、手動操作対象の付近で作業者が安心して手動操作ができる。
【0010】
本発明のトンネルハウス用杭打機としては、
前記保持部及び打込部は、左右の前輪及び後輪により圃場を走行可能に構成された走行機体の後端部に設けられるとともに、作業者が該走行機体の左右いずれか一側方において操作可能に構成されており、
前記一側方側の後輪は、もう一方の後輪に対し、相対的に、車軸が前記保持部及び打込部に近接させて設けられている態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、作業者が前記走行機体の前記一側方側において前記保持部及び打込部の近傍に位置することができ、それらを容易に操作することができる。
【0012】
本発明のトンネルハウス用杭打機としては、
前記一側方側の後輪は、前記もう一方の後輪に対して相対的に小径に形成されている態様を例示する。
【0013】
この構成によれば、作業者が前記一側方側において前記保持部及び打込部の近傍に位置することができ、それらを容易に操作することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るトンネルハウス用杭打機によれば、操作対象の付近で作業者が安心して手動操作ができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を具体化した一実施形態に係るトンネルハウス用杭打機の背面図である。
【
図3】同トンネルハウス用杭打機の右側部を表した右側面図である。
【
図4】同トンネルハウス用杭打機の左側部を表した左側面図である。
【
図5】同トンネルハウス用杭打機の保持部の要部を拡大した図であり、(a)は背面図、(b)は平面図である。
【
図6】同トンネルハウス用杭打機が杭を逆U字状に折曲した状態を示す背面図である。
【
図7】同トンネルハウス用杭打機が杭を圃場に打ち込んだ状態を示す背面図である。
【
図8】同トンネルハウス用杭打機が杭打ち込み後の復帰中の状態を示す背面図である。
【
図9】同トンネルハウス用杭打機の回動規制手段の作用を段階的に示す要部背面図である。
【
図10】同トンネルハウス用杭打機を軽トラックの荷台に搭載した状態を示す図である。
【
図11】同トンネルハウス用杭打機の転倒防止部の作用を示す図である。
【
図12】従来のトンネルマルチ支柱打込装置の全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図11は本発明を歩行型の機械として具体化した一実施形態のトンネルハウス用杭打機1を示している。
図1~
図4に示すように、本発明のトンネルハウス用杭打機1は、一直線状の杭Pの両端部を保持するとともに、該杭Pを逆U字状に折曲するように構成されている保持部2と、該保持部2とともに該保持部2により保持された杭Pを下降させ、該杭Pの両端側を圃場に打ち込むように構成されている打込部3と、保持部2及び打込部3を畝Uに沿って圃場を走行可能に支持する走行機体4とを備えている。本例では、エンジン、モーター等の動力源なしに手動操作で杭Pの打ち込みができるように構成された態様を示している。なお、各図において、矢印Fは走行機体4の前側を指し示している。
【0017】
杭Pとしては、本例では、樹脂製であって形状復元性を有する一直線状のものを用いている。
【0018】
保持部2は、一直線状の杭Pの両端部における保持部位をそれぞれ保持可能に構成されている左右一対の保持手段11と、該一対の保持手段11をそれぞれ回動可能に支持するとともに該回動が手動操作可能に構成されており、互いに逆方向へ略90°それぞれ回動させると前記一直線状の杭Pを前記逆U字状に折曲させるようになっている一対の回動手段13と、杭Pを前記逆U字状に折曲させた状態で該一対の回動手段13の回動位置を係脱可能に係止する係止手段14と、一対の回動手段13を前記逆U字状への回動以前の状態にそれぞれ復帰させるように付勢する付勢手段15とを含んでいる。
【0019】
本例の保持部位は、杭Pにおける両端からそれぞれ圃場への埋め込み深さ以上の間隔(例えば、両端からそれぞれ25cm~30cm位の間隔)をおいた部位に設定されている。
【0020】
保持手段11は、
図5に示すように杭Pの上下にそれぞれ配置された保持板11a及び保持ピン11bを備えている。保持ピン11bの先端部には、杭Pを位置決めするための窪み(図示略)が形成されている。保持板11a及び保持ピン11bは、杭Pが逆U字状に折曲された状態になると、杭Pに接触して保持するようになっている。保持ピン11bは、その長さ方向の途中部に設けられた支軸11cを介して同図(a)及び同図(b)に実線で示す保持状態と同図(b)に二点鎖線で示す開放状態との間で回動可能に構成されるとともに、前記保持状態になるように付勢手段(図示略)で付勢されている。保持ピン11bの後端にはローラ11dが回動自在に設けられており、後述する保持解除手段によりローラ11dを介して保持ピン11bの後端が押されることにより保持ピン11bが開放状態になって杭Pを開放するようになっている。
【0021】
また、保持手段11には、保持板11a及び保持ピン11bの間における保持位置に杭Pを位置決めするためのガイド手段16が設けられている。ガイド手段16は、保持ピン11bの前方に延び、杭Pを保持ピン11bの上側までガイドするガイドロッド17と、保持板11aの前方に延び、杭Pを保持板11aの下側までガイドするガイドバー18とを備えている。ガイドバー18は、
図5において左右方向に延びる軸18aを中心に上下に揺動可能に支持されるとともに、付勢手段(図示略)により
図5の状態になるように付勢されている。該付勢手段による付勢の強さは、左右一対のガイドバー18が少なくとも杭Pの重量を支持可能な程度であって、かつ、圃場に杭Pが打ち込まれた後に保持部2が上昇するときに、該杭Pを開放可能な程度に設定されている。
【0022】
位置決め部12は、一方の保持手段11の側方に設けられた位置決め板12aを備え、該位置決め板12aに杭Pの一方端を当てると、一対の保持手段11に対して杭Pを左右均等に配置できるように構成されている。
【0023】
一対の回動手段13は、前後方向に延びる左右一対の支軸21にそれぞれ回動可能に支持された左右一対の回動体22と、一対の回動体22を互いに逆方向へ回動させるように連動させるリンク機構23とを備えている。左右一対の回動体22には左右一対の保持手段11がそれぞれ支持されている。一方の回動体22には、操作レバー25が取り付けられている。
【0024】
左右一対の回動手段13を
図1~
図4に示す状態にすると、左右一対の保持手段11が一直線状の杭Pを受け入れ可能な状態になる。そして、左右一対の保持手段11の間に一直線状の杭Pを配置しておき、操作レバー25によって一方の回動手段13を回動させると、リンク機構23により他方の回動手段13も連動し、
図6に示すように杭Pを逆U字状に曲げるとともに、左右一対の保持手段11が杭Pをそれぞれ保持するように構成されている。
【0025】
係止手段14は、後述する昇降移動部31に設けられた係止部位14aと、操作レバー25に設けられ、該係止部位14aに係脱可能に係止される被係止部位14b(操作レバー25の基端部)とにより構成されている。操作レバー25は、支軸21と直交方向に延びる状態と、該直交方向よりも走行機体4の後方へ傾斜した状態との間で傾動可能に基端部が傾動軸24で支持されるとともに、前記直交方向に延びる状態となるように付勢手段(図示略)により付勢されており、操作レバー25を傾斜させた状態で係止部位14aと被係止部位14bの位置を合わせ、操作レバー25の傾斜を戻すと、係止部位14a及び被係止部位14bを係合させることができ、その逆の操作により該係合を解除させることができるように構成されている。また、操作レバー25には、後述する係止解除手段が作用する被作用部25aとしてのループ状部材が設けられている。
【0026】
付勢手段15は、本例では、操作レバー25が設けられている回動体22と打込部3の昇降移動部31との間に架け渡されたバネとなっている。
【0027】
打込部3は、該保持部2を手動操作での昇降移動可能に支持する打込手段26と、前記昇降移動における下死点近傍において保持手段11による杭Pの保持を解除する保持解除手段27と、前記昇降移動における下死点近傍において係止手段14による前記係止を解除する係止解除手段28と、保持部2が前記下死点近傍から上昇移動するときに、該上昇に伴って一対の回動手段13を徐々に前記回動以前の状態にそれぞれ復帰させる回動規制手段29とを含んでいる。
【0028】
打込手段26は、該保持部2を支持する昇降移動部31と、該昇降移動部31を昇降移動可能にガイドする昇降ガイド部32とを含んでいる。
【0029】
昇降移動部31は、本例では正面視で矩形枠状に形成されており、その左右における上下両端にガイドローラ31aが配設されている。昇降移動部31の後面には、後方へ突設された昇降ハンドル31bと、円弧状に形成された帯板状の杭位置決め押さえ部31cとが設けられている。昇降ハンドル31bは、打込部3の昇降を手動操作するためのものである。杭位置決め押さえ部31cの下面には、等間隔をおいた3カ所に杭Pを位置決めするための突片31dが設けられている。杭位置決め押さえ部31cは、杭Pの折曲時には、その上端における折曲部位を位置決めし、杭Pの打込時には該折曲部位を上から押さえるようになっている。
【0030】
昇降ガイド部32は、走行機体4の最後端部に設けられた、上下方向に延びる左右一対のガイドレール32aを備えており、該ガイドレール32a内でガイドローラ31aが転動することにより、昇降移動部31がガイドレール32aに沿って円滑に上下動するように構成されている。昇降ガイド部32の上端部には、予備の杭Pを置くための、予備杭置き座35が設けられている。
【0031】
保持解除手段27は、本例では、昇降ガイド部32の下端部に設けられた凸部となっている。
図7に示すように、この凸部が保持ピン11bの後端のローラ11dに接触することにより、保持ピン11bが回動され、保持板11aから杭Pが開放されるようになっている。
【0032】
係止解除手段28は、本例では、昇降ガイド部32の下端部に設けられ、操作レバー25の被作用部25aに作用する傾斜面となっている。
図7に示すように、この傾斜面が被作用部25aを介して操作レバー25を傾動させることにより、係止部位14a及び被係止部位14bの係合を解除するようになっている。
【0033】
回動規制手段29は、本例では、
図8及び
図9に示すように、昇降ガイド部32の下端部に設けられ、回動手段13の被規制部位30に作用する突部となっている。
図8及び
図9(a)に示すように、回動手段13が復帰動作の開始から略45°回動した状態でこの突部が回動手段13を一時的に係止し、その後、
図9(b)に示すように回動手段13の上昇に伴って、被規制部位30における被係止位置がずれることにより残りの復帰動作を徐々に行うようになっている。
【0034】
走行機体4は、左右一対の前輪36と、左右一対の後輪37とにより圃場を走行可能に支持されている機体フレーム38を備えており、該機体フレーム38には、自重補償機構41、転倒防止部46及び打込間隔目印47が搭載されている。
【0035】
機体フレーム38は、機体操縦用ハンドル48が設けられるとともに、左右一対の前輪36と、左右一対の後輪37とをそれぞれ支持する横方向のフレーム38a、38bの両端部が伸縮可能に構成されている。それにより、左右一対の前輪36の間隔と、左右一対の後輪37の間隔が、畝Uの幅に応じて調節可能になっている。本例では、作業者が該走行機体の左側において保持部2及び打込部3が操作可能に構成されており、左側の後輪37は、右側の後輪37に対し、相対的に、車軸が保持部2及び打込部3に近接させて設けられている。また、左側の後輪37は、右側の後輪37に対して相対的に小径かつ幅広に形成されている。
【0036】
自重補償機構41は、保持部2及び昇降移動部31を含む昇降部位全体を、機体フレーム38に取り付けた滑車43を介して線状連結手段44(チェン、ワイヤーなど)の一端側に吊り下げて、該昇降部位全体と釣り合う重量より少し重たい重量(例えば、+10~20%程度)のウエート45を該線状連結手段44の他端側に連結し、垂らしている。これにより、自重補償機構41は、保持部2と、打込部3における保持部2とともに昇降する部位とを上昇させるときに、それらの総自重により発生する力のモーメントを打ち消すように構成されている。
【0037】
転倒防止部46は、走行機体の前方への転倒を防止するために設けられている。本例のトンネルハウス用杭打機1が転倒防止部46を備えている理由は、走行機体の小型化や軽量化することにより、走行時の取り回しの良さ、運搬時や収納時のスペース効率(
図10参照)等を向上させるために、前後方向のサイズを極力短く設定しているが、作業者の作業負担を軽減するために作業者が腰をかがめずに比較的高位置で作業できるように構成しているため、重心がやや高くなっており、バランスをくずすと前方に転倒する可能性があるからである。この転倒防止部46は、機体フレーム38の前方に延びる伸縮アーム46aと該伸縮アーム46aの先端に設けられた接地板46bとにより構成されている。伸縮アーム46aは前方への突出長さが調整可能になっている。そして、伸縮アーム46aの突出長を調整することにより、接地板46bを前輪36の前端位置よりも前方に突出させておくと、走行機体4が前方へ傾斜しても、
図11に示すように接地板46bが接地することで、転倒を防止するように構成されている。転倒防止部46は、伸縮アーム46aの突出長が調整可能になっているので、転倒を防止するときの走行機体4の傾斜角度を調節したり、該走行機体4の運搬時や収納時に転倒防止部46の先端位置を後退させて機体の占有スペースを小さくしたりすることができる。
【0038】
打込間隔目印47は、伸縮アーム46aの後端部に伸縮長さ調節可能に設けられている。この目印の長さを杭Pの打込間隔に合わせて調整しておくと、該目印を目安に打込間隔を安定的に定間隔にすることができる。
【0039】
次に、本例のトンネルハウス用杭打機1の使用方法について説明する。初期状態では、一対の回動手段13は
図1~
図4に示す状態になっているものとする。
(1)杭Pの一方端を位置決め板12aに当てるとともに、杭Pをガイド手段16によってガイドさせることにより、杭Pを左右一対の保持手段11が保持可能な位置に配置する。
(2)
図6に示すように、操作レバー25を介して一対の回動手段13を回動させることにより杭Pを逆U字形に曲げると、左右一対の保持手段11により杭Pが保持されるので、係止手段14によりその状態で係止させる。
(3)
図7に示すように、打込部3の昇降移動部31を介して、保持手段11及び回動手段13を含む保持部2全体を押し下げて、杭Pを土中に打ち込む。
(4)昇降移動部31の昇降移動における下死点の近傍において、保持解除手段27により杭Pの保持が解除され、係止解除手段28により一対の回動手段13の係止が解除される。すると、自重補償機構41により保持部2全体は自然に上昇し始めるとともに、回動手段13が復帰動作を開始するが、
図8及び
図9に示すように回動規制手段29により、該復帰動作が規制される。その後、保持部2は最終的に定位置(昇降移動における上死点位置であって、作業者が腰を屈めなくても杭Pを保持部2へ供給できる位置)まで上昇し、止まる。
(5)打込間隔目印47を目安にして走行機体4を前進させる。すると、杭Pは土中に逆U字形に打ち込まれた状態で残る。
(6)以上の(1)~(5)を繰り返すと、圃場に所定距離をおいて杭Pを打ち込むことができる。
【0040】
以上のように構成された本例のトンネルハウス用杭打機1によれば、手動操作により前記逆U字状の杭Pを圃場に打ち込んだ後、保持部2が上昇移動するとき、回動規制手段29により一対の回動手段13の復帰動作が規制されており、急激な復帰動作が行われないようになっている。そのため、復帰動作中の回動手段13が作業者に衝突したり、同回動手段13の動きや動作音が作業者を驚かせたりすることを防止でき、手動操作対象の付近で作業者が安心して手動操作ができる。
【0041】
また、保持部2及び打込部3は、左右の前輪36及び後輪37により圃場を走行可能に構成された走行機体4の後端部に設けられるとともに、作業者が該走行機体4の左側において操作可能に構成されており、左側の後輪37は、右側の後輪37に対し、相対的に、車軸が保持部2及び打込部3に近接させて設けられている。この構成によれば、作業者が走行機体4の左側において保持部2及び打込部3の近傍に位置することができ、それらを容易に操作することができる。
【0042】
さらに、左側の後輪37は、右側の後輪37に対して相対的に小径に形成されているので、作業者が左側において保持部2及び打込部3の近傍に位置することができ、それらを容易に操作することができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)畝Uを往復移動させ、往動時にトンネルハウスのシート(又は網等)を下側から支持する杭Pを打ち込み、復動時に同シート(又は網等)を上側から押さえる杭Pを打ち込むように構成すること。
(2)保持部2及び打込部3における左右の両側から各種操作が可能に構成すること。
(3)回動規制手段29を、その復帰動作が3段階以上の段階で段階的に動作するように構成すること。
(4)回動規制手段29を、その復帰動作全体が連続的に動作するように構成すること。
【符号の説明】
【0044】
1 トンネルハウス用杭打機
2 保持部
3 打込部
4 走行機体
11 保持手段
11a 保持板
11b 保持ピン
12 位置決め部
12a 位置決め板
13 回動手段
14 係止手段
14a 係止部位
14b 被係止部位
15 付勢手段
16 ガイド手段
17 ガイドロッド
18 ガイドバー
21 支軸
22 回動体
23 リンク機構
25 操作レバー
25a 被作用部
26 打込手段
27 保持解除手段
28 係止解除手段
29 回動規制手段
31 昇降移動部
31a ガイドローラ
31b 昇降ハンドル
31c 杭位置決め押さえ部
32 昇降ガイド部
32a ガイドレール
35 予備杭置き座
36 前輪
37 後輪
38 機体フレーム
38a フレーム
38b フレーム
41 自重補償機構
43 滑車
44 線状連結手段
45 ウエート
46 転倒防止部
46a 伸縮アーム
46b 接地板
47 打込間隔目印
48 機体操縦用ハンドル
F 走行機体の前側
P 杭
U 畝